JP4320211B2 - コンベヤベルトの設計支援方法およびこれを用いて設計されて作製されたコンベヤベルト - Google Patents
コンベヤベルトの設計支援方法およびこれを用いて設計されて作製されたコンベヤベルト Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベルトコンベヤに用いられるコンベヤベルトの設計支援方法およびこれを用いて設計されて作製されたコンベヤベルトに関し、特に、走行抵抗による損失エネルギが低く、消費エネルギが低いコンベヤベルトの設計支援方法およびこれを用いて設計されて作製されたコンベヤベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
鉱山等の採掘現場から数km〜10数km離れた処理施設や輸送基地等に採掘した鉱石等の資源を搬送する場合、一般にベルトコンベヤを用いる。
このベルトコンベヤは、鉱山の搬送地点と処理施設や輸送基地等の集積地点の2地点とに回転ドラムを配し、この回転ドラムにコンベヤベルトからなるエンドレスベルトが巻き付けられる。また、搬送地点と集積地点とを結ぶベルトコンベヤのラインに沿って、多数のアイドラ(従動ローラ)が設けられる。このアイドラは、鉱石等の資源を載せて負荷状態にあるコンベヤベルトを下方から支持するために、集積地点に向かって進む(順行する)キャリア側コンベヤベルトの下方面と当接して設けられ、また、集積地点から搬送地点に逆行するリターン側コンベヤベルトを円滑に移動させるためにコンベヤベルトと当接するように設けられている。
また、2地点に設けられた回転ドラムのうち、少なくとも1つには、コンベヤベルトからなるエンドレスベルトを駆動するための駆動モータが設けられている。
このように、エンドレスベルトと、駆動ローラと、多数のアイドラとを有するベルトコンベヤラインを用いて、鉱石等の資源が数km〜10数km離れた場所に安定して供給される。
【0003】
しかしながら、ベルトコンベヤラインは、搬送距離が長く、消費電力も多い。このため、ベルトコンベヤラインに用いられるコンベヤベルトには、強度および耐久性が優れることが要求されるともに、消費電力が低いことも要求されている。これに対し、特許文献1では、消費電力を低減するためのベルト用ゴム組成物が提案されている。
【0004】
特許文献1に開示されたベルト用ゴム組成物は、ベルトとローラとが接触する際に発生するエネルギーロスが小さく、省エネルギ化に有効で、しかも耐カット性等の諸特性にも優れ、コンベヤベルトのゴム材料として好適なものを提供することを目的とするものである。特許文献1においては、ベルトとローラとが接触する際に発生するエネルギーロスの指標となるゴムの特性として、損失正接(tanδ)と動的弾性率E´(N/mm2 )からなるtanδ/(E´)0.32が、−5℃において0.110以下であることが良いとされている。特許文献1に開示されたベルト用ゴム組成物は、所定の組成にすることにより、このtanδ/(E´)0.32の値を0.110以下にしてエネルギーロスを軽減し、省エネルギ化を図っている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−26670号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1は、ベルトとローラとが接触する際に発生するエネルギーロスを小さくするために必要とするコンベヤベルトのベルト用ゴム組成物のゴム組成だけを規定している。このため、このベルト用ゴム組成物を用いてもコンベヤベルトの構成またはベルトコンベヤの仕様によっては、エネルギーロスを必ずしも効率良く軽減できないという問題点がある。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、エネルギ消費量が少ないコンベヤベルトを短時間にコストをかけずに効率良く設計するコンベヤベルトの設計支援方法およびこれを用いて設計されて作製されたコンベヤベルトを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願第1の発明は、複数のアイドラを有するベルトコンベヤに用いられるコンベヤベルトの設計支援方法であって、少なくとも1つのアイドラに押圧されたコンベヤベルトを、直線上に配置された3つのアイドラモデルと、前記アイドラモデル上に設けられたコンベヤベルトモデルとを有し、両端の前記アイドラモデルに位置する前記コンベヤベルトモデルの部位が、張力が付与された状態で固定され、前記コンベヤベルトモデルは等分布荷重および前記コンベヤベルトモデルの自重が与えられ、中間部分に位置する前記アイドラモデルに押圧されている有限要素モデルを用いて再現して、押圧されたコンベヤベルトのひずみエネルギ密度を算出する工程と、前記ひずみエネルギ密度から前記コンベヤベルトの粘弾性特性を用いて前記押圧されたコンベヤベルトの損失エネルギを算出する工程とを有し、前記損失エネルギを前記コンベヤベルトの特性値として用いて、前記コンベヤベルトを設計することを特徴とするコンベヤベルトの設計支援方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明において、前記損失エネルギは、例えば、前記有限要素モデルの各有限要素のひずみエネルギ密度と、前記有限要素の面積または体積と、前記有限要素に対応する前記コンベヤベルトの構成部材の正接損失との積を累積して算出するものである。
【0011】
また、本願第2の発明は、前記第1の発明に係るコンベヤベルトの設計支援方法により設計されて作製されたことを特徴とするコンベヤベルトを提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るコンベヤベルトの設計支援方法およびこれを用いて設計されて作製されたコンベヤベルトについて、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
上述のように、ベルトコンベヤは、搬送距離が数kmにわたる場合、消費電力が多く、本願発明者等は、このベルトコンベヤのエネルギ消費の主要因がコンベヤベルトの走行抵抗であることを知見した。この知見により、コンベヤベルト自体がアイドラまたはプーリ等のコンベヤベルトに比して剛性が高いベルトコンベヤの構成部材を通過するときに、局所的変形を受け、そのときに発生する局所的損失エネルギの総和が走行抵抗において支配的になると考えられる。そこで、この局所的変形によって発生する損失エネルギを計算し、それによってコンベヤベルトの走行抵抗を評価し、コンベヤベルト材料の設計にフィードバックする一連の工程によってコンベヤベルトを設計することにより、走行抵抗を軽減できる。
【0013】
以下、本発明の実施例に係るコンベヤベルトの設計支援方法について説明する。本実施例においては、図1(a) 乃至(c)に示す構造を有するコンベヤベルトを設計する場合を例にして、コンベヤベルトの設計支援方法について説明する。
先ず、コンベヤベルトの構造について説明する。図1(a)は本実施例のコンベヤベルトの設計支援方法により設計されるコンベヤベルトを示す模式的斜視図、(b)は図1(a)のA−A線による断面図、(c)は図1(a)のB−B線による断面図である。
【0014】
図1(a)に示すように、コンベヤベルト20は、長尺な板状を呈しており、その長手方向Mと平行な方向に伸びたスチールコード34が、長手方向Mと直交する幅方向Wに所定の間隔を設けて配置されている。このスチールコード34は、複数の線材が撚られて形成されたものである。
このコンベヤベルト20は、例えば、図1(b)および(c)に示すような構成部材を有するものであり、図示例におけるコンベヤベルト20は、長手方向Mに移動する。
図1(b)および(c)に示すように、コンベヤベルト20は、トップカバーゴム22と、ボトムカバーゴム24と、トップカバーゴム22とボトムカバーゴム24との間に設けられた補強層30とを有する。本実施例においては、トップカバーゴム22とボトムカバーゴム24とは組成が同じである。
【0015】
トップカバーゴム22は、鉱石、または砂利等の搬送物が載置される部材である。ボトムカバーゴム24は、アイドラ(図示せず)の周面に接する部材である。
【0016】
補強層30は、コンベヤベルト20の強度を所定の強度にするために用いられるものである。この補強層30は、図1(b)および(c)に示すように、クッションゴム32、35、36と、スチールコード34とを有する。スチールコード34は、長手方向Mと平行な方向に延在するとともに、長手方向Mと直交する幅方向Wに所定の間隔で配置されている。これらのスチールコード34はクッションゴム35により平板状に一体化されており、トップカバーゴム22およびボトムカバーゴム24との間に、クッションゴム32、36が設けられている。クッションゴム32、35、36は、本実施例においては、組成が同じであり、トップカバーゴム22、ボトムカバーゴム24およびスチールコード34と接着し、一体化させるものである。
【0017】
次に、コンベヤベルト20のひずみエネルギ密度を求めるための解析モデルについて説明する。
図2(a)は本発明の実施例に係るコンベヤベルトの設計支援方法に用いられる解析モデルを示す模式図、(b)はコンベヤベルトの有限要素の分割の一例を示すワイヤーフレームモデルを示す模式図である。本実施例においては、後述する解析モデル10を用いて有限要素法(FEM)により、各要素におけるひずみエネルギ密度を算出する。
【0018】
図2(a)に示すように、解析モデル10は、直線上に直列に配置された3つのアイドラモデル14a、14b、14cと、このアイドラモデル14a、14b、14cの周面に接するように配置されたコンベヤベルトモデル12とを有する。アイドラモデル14a、14b、14cは、コンベヤベルトモデル12を案内をするガイドローラのモデルであり、変形しない円形の剛体モデルである。図示例のコンベヤベルトモデル12は、長手方向Mに沿って配置されるアイドラとともに延在するコンベヤベルトのうち、3つのアイドラで作られるアイドラ間のスパンを2つ備えるコンベヤベルトモデルである。
【0019】
この解析モデル10における境界条件は、端部Aにおいては、コンベヤベルトモデル12の端部を固定し、端部Bにおいては、コンベヤベルトモデル12の端部を固定するとともに、コンベヤベルトモデル12の端部に長手方向Mとは反対方向に張力Tを作用させ、中央部Cにおいては、コンベヤベルトモデル12に等分布荷重を作用させるとともに、コンベヤベルトモデル12の自重も作用させており、コンベヤベルトモデル12がアイドラモデル14bに押圧される。
この境界条件を実現するためには、先ず、端部Aおよび端部Bにおいて、コンベヤベルトモデル12を固定する。次に、端部Bにおいて、長手方向Mとは反対方向に張力Tを作用させる。次に、コンベヤベルトモデル12に等分布荷重およびコンベヤベルトモデル12の自重を作用させて中央部Cのアイドラモデル14bにコンベヤベルトモデル12がアイドラモデル14bに押圧させる。
なお、解析モデル10において、例えば、コンベヤベルトモデル12は、図2(b)に示すワイヤーフレームモデルのように四角ソリッド要素に分割された2次元モデルであり、この2次元モデルを用いて応力解析が行われて、ひずみ密度エネルギが算出される。
【0020】
なお、本発明においては、図2(a)に示す解析モデル10に限定されるものではない。図2(a)に示す解析モデル10は、好ましいものであって、コンベヤベルトモデル12における最小の繰り返し単位、またはこの単位を2単位以上連ねて、解析モデルとすればよい。図2(a)に示す解析モデル10は、最小の繰り返し単位を4単位連ねたものである。
本実施例におけるコンベヤベルトモデル12の場合、図2(a)に示す2点鎖線で囲まれる要素10aが最小の繰り返し単位である。この要素10aは、アイドラモデル14bとコンベヤベルトモデル12とを有するものである。この要素10aについて、境界条件を与えて、ひずみエネルギ密度を算出すればよい。
【0021】
次に、図2(a)に示す解析モデル10に基づいて、本実施例のコンベヤベルトの設計支援方法を工程順に説明する。図3は、本発明の実施例に係るコンベヤベルトの設計支援方法を工程順に示すフローチャートである。なお、本実施例のコンベヤベルトの設計支援方法は、コンピュータで実行可能にプログラミングされたものである。
【0022】
図3に示すように、先ず、ベルトコンベヤのシステム、すなわち、ベルトコンベヤの設置場所、搬送物、搬送距離、設計荷重、アイドラの数、アイドラの半径、およびテンション等により、ベルトコンベヤの仕様が決定され、コンベヤベルトの構造、厚さ、幅および補強層の種類等、さらには後述する損失エネルギHの目標値も指示入力されて決定される(ステップS1)。
【0023】
ステップS1において決定されるベルトコンベヤの寸法は、例えば、アイドラモデル14a、14b、14cの半径は160mmであり、アイドラモデル14a、14b、14cの間隔Dは1.4mであり、コンベヤベルトモデル12(コンベヤベルト20)の幅は900mmである。
また、コンベヤベルト20の各部材の寸法は、例えば、図1(b)および(c)に示すように、トップカバーゴム22は厚さが5mmであり、ボトムカバーゴム24は、厚さが5mmであり、クッションゴム32、36は、厚さが1mmであり、スチールコード34は、直径が4.7mmである。
【0024】
次に、ステップS1で決定されたコンベヤベルトの構造に基づいて、図1(b)および(c)に示すトップカバーゴム22、ボトムカバーゴム24、および補強層30等の各構成部材の材料定数が、オペレータから指示入力されて決定される(ステップS2)。本実施例においては、材料定数は、例えば、所定のひずみ率におけるモジュラス、せん断剛性、ポアソン比、および粘弾性特性を表す損失正接(tanδ)等である。また、材料定数としては、損失正接(tanδ)を求めるE´、E´´を粘弾性特性として損失正接(tanδ)の代わりに与えてもよく、さらにはモジュラスの代わりにヤング率を与えてもよい。
なお、補強層30については、例えば、個々の構成部材について、材料定数を設定するのではなく、一体とみなしたときの材料定数を設定するようにしてもよい。
【0025】
次に、図2(a)に示す解析モデル10のコンベヤベルトモデル12が四角形ソリッド要素で、コンベヤベルトを近似して有限要素モデルが作成され、有限要素法を用いた応力解析により、中央部Cのアイドラモデル14bにおけるコンベヤベルトモデル12の各要素のひずみエネルギ密度が求められる(ステップS3)。
コンベヤベルトモデル12は、図2(b)に示すような2次元モデルであり、後述する応力解析では、2次元解析が行われる。また、コンベヤベルト20を立体形状でモデル化した六面体ソリッド要素からなる3次元モデルを作成し、後述する応力解析では、3次元解析を行ってもよい。
【0026】
ここで、有限要素モデルの作成とは、四角形ソリッド要素、または六面体ソリッド要素等の有限要素の各頂点にあたる節点の座標値と、各節点を番号化して有限要素の形状を規定した番号の組とが求められ、さらに、構成部材の材料定数の数値データが、操作系(図示せず)から指示入力されて1つのファイルに書き込まれることをいう。
なお、応力解析は、公知の有限要素法ソルバを用いて行うことができる。
【0027】
この応力解析においては、モジュラスは、図4に示すような応力ひずみ線図によって与える。図4は、縦軸に応力をとり、横軸にひずみをとってコンベヤベルトのトップカバーゴムおよびボトムカバーゴムに用いられる材料のモジュラスを示すグラフである。図4に示す応力ひずみ線図は、JIS K6251の規定に準拠して、測定されたものである。
本実施例においては、図4に示すように、モジュラスは、非線形であるので、ひずみに応じて、応力ひずみ線図により、コンベヤベルトモデル12に用いるべき、モジュラスを逐次計算して与える。すなわち、非線形解析を行う。
【0028】
次に、図3に示すように、コンベヤベルトの損失エネルギHを下記数式1に基づいて算出する(ステップS4)。
【0029】
【数1】
【0030】
なお、上記数式1においては、Ui は、i番目の四角形ソリッド要素のひずみエネルギ密度を示し、Vi は、i番目の四角形ソリッド要素の面積(六面体ソリッド要素の場合は、体積)を示し、tanδは、正接損失を示す。
【0031】
ステップS4においては、tanδを図5に示すように、ひずみに依存しない固定値として与えられている。なお、tanδは、上述のステップS2に示すように、各部材ごとに与えられる。図5は、横軸にコンベヤベルトの種類をとり、縦軸にtanδをとって、各コンベヤベルトにおけるtanδを示すグラフである。図5に示すtanδは、試験機に東洋精機製作所製の粘度スペクトロメータを用い、20℃の試験温度で、試験片を10%伸張下、振幅±2%、周波数10Hzの振動を試験片に与えて測定されたものである。
【0032】
次に、図3に示すように、損失エネルギHと目標値とを比較する(ステップS5)。ステップS5において、算出された損失エネルギHが目標値に対して許容範囲内にあれば、設計は終了する(ステップS6)。
【0033】
一方、ステップS5において、算出された損失エネルギHが目標値に対して許容範囲外であるとき、ステップS2に戻り、損失エネルギHが目標値に対して許容範囲内になるように、コンベヤベルトの各部材のモジュラスまたはtanδの設定を変更する。そして、再度、ベルトコンベヤモデル12を再度作成し、応力解析を行い(ステップS3)、損失エネルギを算出し(ステップS4)、損失エネルギHが目標値とを比較する(ステップS5)。このように、損失エネルギHが目標値の許容範囲内に収束するまで、ステップS2乃至ステップS5の処理を繰り返し行う。
【0034】
ここで、ステップS3における応力解析結果の一例を図6(a)乃至(c)に示す。図6(a)は図4に示す材料特性を有するベルト1を用いて図2(a)に示す中央部Cでのひずみエネルギ密度分布を示す模式図、(b)は図4に示す材料特性を有するベルト2を用いて図2(a)に示す中央部Cでのひずみエネルギ密度分布を示す模式図、(c)は図4に示す材料特性を有するベルト3を用いて図2(a)に示す中央部Cでのひずみエネルギ密度分布を示す模式図である。なお、図6(a)乃至(c)においては、ハッチングの線密度が高い方がひずみエネルギ密度が高いことを示し、ひずみエネルギ密度は、塗りつぶした領域が最も高い。
図6(a)に示すように、ベルト1は、モジュラスが低く、tanδの値が大きいので、中央部Cにおけるひずみエネルギ密度が、図6(b)および(c)に示すものと比して高い。
【0035】
また、図6(a)乃至(c)に示すベルト1乃至3において、張力を変えた場合の損失エネルギHの変化を図7および表1に示す。図7は、縦軸に損失エネルギをとり、横軸に張力をとって、図6(a)乃至(c)に示すベルト1乃至3において、張力を変えた場合の損失エネルギHの変化を示すグラフである。
【0036】
【表1】
【0037】
図4および図5に示すように、ベルト1は、モジュラスが低く、tanδの値が大きいので、図7および表1に示すように、ベルト2およびベルト3に比して、損失エネルギHが大きい。
【0038】
なお、ベルト1は、ベルト2およびベルト3よりも、エネルギ消費量が大きいことが分かっており、本実施例のように、損失エネルギHを算出することにより、エネルギ消費量を評価できることは明らかである。
【0039】
上述の如く、損失エネルギHは、走行抵抗を評価し、最終的には、エネルギ消費量を評価する特性値である。
損失エネルギHを低くする場合には、tanδの値を小さくするか、またはモジュラスを高くする。
しかしながら、tanδの値を小さくし過ぎると、ゴムの特性の点からコンベヤベルトが割れやすくなるとともに、コンベヤベルトに発生した振動が減衰しにくくなる。一方、モジュラスを高くしすぎると、コンベヤベルトが硬くなって変形しにくくなる。このため、回転ドラム(プーリ)等に巻きつけられた際の一定強制変位の入力に対して、破壊しやすくなる。
このように、損失エネルギHは、必ずしも低いことが良いわけでなく、コンベヤベルトとして必要とされる強度および耐久性等の特性から、モジュラス、および正接損失(tanδ)について制限を与えて、損失エネルギHが目標値になるように調整するとよい。
【0040】
なお、本実施例においては、損失エネルギHが目標値の許容範囲外である場合、ステップS5において、損失エネルギHが目標値となるように材料定数を調整しているが、本発明は、これに限定されるものではない。ベルトコンベヤにおいて、コンベヤベルトの厚さ等の構成部材の形状を変更できる場合には、各部材の厚さを変えることにより、有限要素モデルを修正し、損失エネルギHを算出することもできる。
この場合、損失エネルギHが目標値となるように、実験計画法、またはタグチメソッド等を用いてコンベヤベルトの仕様を種々変えて、その中から損失エネルギHの低いものを求める最適化設計手法を用いて、材料定数および構成部材の形状を調整してもよい。
なお、本実施例の設計支援方法においては、補強層は、スチールコードを有するものに限定されるものではない。補強層としては、帆布からなるものであってもよく、また、スチールコードを有する場合には、積層されてもよく、さらにスチールコードの延在方向が長手方向に対して平行でなくてもよい。例えば、スチールコードを2本、配向角を変えて配置してもよい。
【0041】
さらに、コンベヤベルトモデルの有限要素の形状も、四角形ソリッド要素に限定されるものではなく、三角形ソリッド要素等種々の形状のものを利用することができる。コンベヤベルトモデルについては、計算時間の兼ね合いから、最適なものを選択すればよい。
【0042】
また、本実施例の設計支援方法により、設計されて作製されたコンベヤベルトは、損失エネルギHをできる限り小さくできるので、エネルギ消費量が少ないものとなる。
さらに、材料特性から損失エネルギHを算出し、エネルギ消費量を評価できるので、実験等の手間を省いて効率良くコンベヤベルトの製品性能を予測することができるため、短時間で、コストを削減しつつコンベヤベルトを設計できる。
【0043】
以上、本発明のコンベヤベルトの設計支援方法およびこれを用いて設計されて作製されたコンベヤベルトについて詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0044】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明のコンベヤベルトの設計支援方法によれば、エネルギ消費量が少ないコンベヤベルトを短時間にコストをかけずに効率良く設計できる。
また、コンベヤベルトの設計支援方法を用いて設計されたコンベヤベルトによれば、エネルギ消費量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本実施例のコンベヤベルトの設計支援方法により設計されるコンベヤベルトを示す模式的斜視図、(b)は図1(a)のA−A線による断面図、(c)は図1(a)のB−B線による断面図である。
【図2】 (a)は本発明の実施例に係るコンベヤベルトの設計支援方法に用いられる解析モデルを示す模式図、(b)はコンベヤベルトの有限要素の分割の一例を示すワイヤーフレームモデルを示す模式図である。
【図3】 本発明の実施例に係るコンベヤベルトの設計支援方法を工程順に示すフローチャートである。
【図4】 縦軸に応力をとり、横軸にひずみをとってコンベヤベルトのトップカバーゴムおよびボトムカバーゴムに用いられる材料のモジュラスを示すグラフである。
【図5】 横軸にコンベヤベルトの種類をとり、縦軸にtanδをとって、各コンベヤベルトにおけるtanδを示すグラフである。
【図6】 (a)は図4に示す材料特性を有するベルト1を用いて図2(a)に示す中央部Cでのひずみエネルギ密度分布を示す模式図、(b)は図4に示す材料特性を有するベルト2を用いて図2(a)に示す中央部Cでのひずみエネルギ密度分布を示す模式図、(c)は図4に示す材料特性を有するベルト3を用いて図2(a)に示す中央部Cでのひずみエネルギ密度分布を示す模式図である。
【図7】 縦軸に損失エネルギをとり、横軸に張力をとって、図6(a)乃至(c)に示すベルト1乃至3において、張力を変えた場合の損失エネルギHの変化を示すグラフである。
【符号の説明】
10 解析モデル
10a 要素
12 コンベヤモデル
14a、14b、14c アイドラモデル
20 コンベヤベルト
22 トップカバーゴム
24 ボトムカバーゴム
30 補強層
32、35、36 クッションゴム
34 スチールコード
A、B 端部
C 中央部
D 間隔
M 長手方向
W 幅方向
Claims (3)
- 複数のアイドラを有するベルトコンベヤに用いられるコンベヤベルトの設計支援方法であって、
少なくとも1つのアイドラに押圧されたコンベヤベルトを、直線上に配置された3つのアイドラモデルと、前記アイドラモデル上に設けられたコンベヤベルトモデルとを有し、両端の前記アイドラモデルに位置する前記コンベヤベルトモデルの部位が、張力が付与された状態で固定され、前記コンベヤベルトモデルは等分布荷重および前記コンベヤベルトモデルの自重が与えられ、中間部分に位置する前記アイドラモデルに押圧されている有限要素モデルを用いて再現して、押圧されたコンベヤベルトのひずみエネルギ密度を算出する工程と、
前記ひずみエネルギ密度から前記コンベヤベルトの粘弾性特性を用いて前記押圧されたコンベヤベルトの損失エネルギを算出する工程とを有し、
前記損失エネルギを前記コンベヤベルトの特性値として用いて、前記コンベヤベルトを設計することを特徴とするコンベヤベルトの設計支援方法。 - 前記損失エネルギは、前記有限要素モデルの各有限要素のひずみエネルギ密度と、前記有限要素の面積または体積と、前記有限要素に対応する前記コンベヤベルトの構成部材の正接損失との積を累積して算出する請求項1に記載のコンベヤベルトの設計支援方法。
- 請求項1または2に記載のコンベヤベルトの設計支援方法により設計されて作製されたことを特徴とするコンベヤベルト。
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