JP4318837B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に係わり、特に、被検体を撮影する時、被検体の動きによる画質の劣化を防止する磁気共鳴イメージング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)では、被検体の計測中の動きが画質劣化の原因となるので、それを防止するためにナビゲーションエコーを計測することが行われる。
【0003】
これはナビゲーションエコーの位相歪から被検体の計測中の動きを検出し、その位相歪を補正することにより達成させる。
【0004】
特に、拡散強調イメージングでは、拡敵強調パルスと呼ばれる傾斜磁場を印加するため、被検体の計測中の動きが増幅されるので、被検体の計測中の動きによるが、画質劣化を防止することが不可欠となっている。
【0005】
次に、従来のEPI(Echo Planar Imaging)を用いた拡散強調パルスシーケンスを図2及び図4を用いて説明する。なお、図2では以下に述べるエコー46を、繰り返し時間TRの間に4個計測する場合を示したものであるが、実際のEPIでは4個とは限らない。
【0006】
図2は、拡散強調のパルスシーケンスを示す図である。
図2の時刻t0において、90°高周波磁場31とスライス傾斜磁場32とを同時に印加して飽和したい領域を励起する。次に、時刻t1において、拡散強調のためのMPG(Motion Proving Gradient)33、34、35を印加する。そして、時刻t2において、180°高周波磁場36とスライス傾斜磁場37とを同時に印加して飽和したい領域を再度励起する。
【0007】
次に、時刻t3において、拡散強調のためのMPG38、39、40を再度印加する。
【0008】
なお、この時、MPG33および38、MPG34および39、MPG35および40の組み合わせにおいて、各々の時間積分値が0となるようにMPG38、39、40を印加する。
【0009】
時刻t4において、読みだし傾斜磁場41を印加する。この時、読みだし傾斜磁場41の時間積分値が0となる時刻にエコー45が発生するので、これをサンプリングし計算機6に格納する。
【0010】
ここで、エコー45をナビゲーションエコーと呼び、エコー45の位相歪から、被検体の動きの大きさを検出し、以下に述べるエコー46の位相歪を補正し、被検体の動きによる画質劣下を防止している。
【0011】
さて、時刻t5において、位相エンコード傾斜磁場42および読みだし傾斜磁場44を印加する。さらに、時刻t6において、位相エンコード傾斜磁場43をブリップ状に印加し、読みだし傾斜磁場44を振幅の極性を反転して印加する。
【0012】
以後、位相エンコード傾斜磁場43は間隔Tで印加を繰り返し、読みだし傾斜磁場44は、周期2Tで振幅の極性を反転して印加を繰り返す。
【0013】
また、傾斜磁場44の時間積分値が0となるごとにエコー46が発生するので、これらをサンプリングし計算機6に格納する。
【0014】
以上の手順を繰り返し時間TRで繰り返して行う。
ただし、傾斜磁場42の振幅は時間TRごとにステップ状に変化させるものとし、傾斜磁場43の振幅および極性は同一とする。
【0015】
さて、4個のエコー46をさらに発生時間順にエコー61、62、63、64と番号付けすると、これらは、図4の(1)〜(4)に示す位相空間上の各位置に格納される。
【0016】
ここで、エコー61、62、63、64の配列される位置は、上記位相エンコード傾斜磁場43、44の時間積分値によって決まる。
【0017】
なお、位相空間とはエコーが格納される空間を表わしており、座標軸kx、kyは、各々、読みだし傾斜磁場の時間積分値と、位相エンコード傾斜磁場の時間積分値とを表している。
【0018】
位相空間上のエコーはフーリエ変換を用いた像再構成により、実空間上の画像に変換される。さらに、上記繰り返し時間TRによる繰り返し計測により、エコー46は、図4の(5)に示す様に位相空間上の全てに配列される。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来におけるMRI装置においては、ナビゲーションエコーの計測は、通常のエコー計測、すなわち画像再構成のためのエコー計測に対して付加的に行われるので、計測時間が通常の計測時間よりも長くなってしまうという間題があった。
【0020】
本発明の目的は、ナビゲーションエコーを計測することなく、被検体の計測中の動きによる画質劣下を防止することが可能な磁気共鳴イメージング装置を実現することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
読み出し傾斜磁場と位相エンコード傾斜磁場を被検体に印加してk空間データを計測する計測制御手段と、前記k空間データを用いて前記被検体の画像を取得する信号処理手段と、を備えた磁気共鳴イメージング装置において、前記信号処理手段は、k空間の原点に関して対称な位置にある一対のデータを用いて前記被検体の体動に基づく位相ひずみを検出し、該位相ひずみを用いて前記一対のデータを位相補正する。
【0027】
本発明によれば、上記被検体の撮影したい断面を励起した後、すくなくとも2個のエコーを連続して計測し、上記第1のエコーを計測する際に印加する、読み出し傾斜磁場の振幅の極性および位相エンコード傾斜磁場の振幅の極性と、上記第2のエコーを計測する際に印加する、読み出し傾斜磁場の振幅の極性および位相エンコード傾斜磁場の振幅の極性をそれぞれ逆とすれば、エコー位相歪が無ければ第1のエコーのサンプリング開始点の値と第2のエコーのサンプリング開始点の値とは互いに複素共役となる。
【0028】
従って、第1のエコーのサンプリング開始点と第2のエコーのサンプリング開始点とが複素共役となるように補正すれば、被検体が動くことによりもたらされるエコーの位相歪を除去することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図5は、本発明の一実施形態が適用されるMRI装置の概略構成ブロック図である。このMRI装置は、被検体9の生体組織に生起される核磁気共鳴現象を利用して診断部位の断層像を得るものである。
【0030】
図5において、MRI装置は、静磁場発生手段1と、傾斜磁場発生手段2と、傾斜磁場電源3と、プローブ4と、高周波送受信部5と、計算機6と、表示器7とを有する。
【0031】
上記静磁場発生手段1は、テーブル8に寝載された被検体9の体軸方向と直交する方向に均一な静磁場を発生させるもので、上記被検体9を寝載するテーブル8の周りのある広がりをもった空間に配置され、例えば永久磁石又は磁界発生コイルからなる。
【0032】
また、傾斜磁場発生手段2は、上記被検体9に、互いに直交するX、Y、Zの3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを与えるもので、上記テーブル8の周りのある広がりをもった空間に配置されている。傾斜磁場電源3は、上記傾斜磁場発生手段2を駆動するものである。
【0033】
プローブ4は、上記被検体9の診断部位に対して高周波信号を照射すると共に、被検体9の生体組織のNMR現象により放出される高周波信号を受信するもので、内部に照射コイルと受信コイルとを有している。
【0034】
高周波送受信部5は、上記プローブ4より被検体9に対して高周波信号の照射および受信を行うものである。
【0035】
また、計算機6は、上記傾斜磁場電源3および高周波送受信部5の制御を撮像時のパルスシーケンスにしたがって行うと共に、上記プローブ4で受信した信号の画像再構成処理を行うものである。
【0036】
さらに、表示器7は、上記計算機6で生成された画像信号を入力して被検体9の断層像として表示するものである。
【0037】
次に、本発明の一実施形態によるパルスシーケンスを図1及び図3を用いて説明する。
図1の時刻t0において、90°高周波磁場11とスライス傾斜磁場12とを同時に印加して撮影したい領域を励起する。次に、時刻t1において、拡散強調のためのMPG(Motion Proving Gradient)13、14、15を印加する。
【0038】
そして、時刻t2において、180°高周波磁場16とスライス傾斜磁場17とを同時に印加して撮影したい領域を再度励起する。次に、時刻t3において、拡散強調のためのMPG18、19、20を再度印加する。
【0039】
なお、この時、MPG13および18、MPG14および19、MPG15および20の組み合わせにおいて、各々の時間積分値が0となるようにMPG18、19、20を印加する。
【0040】
次に、時刻t4において、位相エンコード傾斜磁場21および読みだし傾斜磁場23を印加する。さらに、時刻t5において、位相エンコード傾斜磁場22をブリップ状に印加し、読みだし傾斜磁場23を振幅の極性を反転して印加する。
【0041】
以後、位相エンコード傾斜磁場22は間隔Tで印加を繰り返し、読みだし傾斜磁場23は周期2Tで振幅の極性を反転して印加を繰り返す。
【0042】
また、傾斜磁場23の時間積分値が0となるごとに、エコー24が発生するので、これをサンプリングし計算機6に格納する。
【0043】
以上の手順を繰り返し時間TRで繰り返して行う。
【0044】
ただし、傾斜磁場21の振幅は、繰り返し時間TRごとにステップ状に変化させるものとし、傾斜磁場22の振幅および極性は隣り合う2個のエコーが以下で述べる位相空間(k空間)で対称となるように変化させる。
【0045】
さて、4個のエコー24をさらに発生時間順にエコー51、52、53、54と番号付けすると、これらのエコーは、図3の(1)〜(4)に示す位相空間上の各位置に格納される。
【0046】
ここで、エコー51、52、53、54の配列される位置は、上記傾斜磁場21、22の位相エンコード傾斜磁場の時間積分値によって決まる。さらに、上記繰り返し時間TRによる繰り返し計測により、エコー24は、図3の(5)に示す様に位相空間上の全てに配列される。
【0047】
ここで、第1のエコー51および第2のエコー52に着目すると、静磁場不均一等の磁場歪みが無ければ、第1のエコー51の最初のサンプリング点Aと第2のエコー52の最初のサンプリング点Bとは、位相空間の原点に対して対称の位置にあり、サンプルデータA、Bは複素共役の関係にある。
【0048】
ここで、複素共役とは複素数表示において実部の値が等しく、虚部の値の極性が異なる関係にある2個の複素数のことをいう。
【0049】
すなわち、サンプルデータの実部をR、虚部をI、虚数単位をjとするとA、Bの値SA、SBは、次式(1)、(2)の様に表わされる。
SA=R+jI −−−(1)
SB=R−jI −−−(2)
また、複素共役の関係はサンプリング点A、Bのみならず、上述のとおり、位相空間上で原点に対して対称位置にあるすべての点について成立するので、第1のサンプリング点51および第2のサンプリング点52の各サンプル点の間で、各サンプル点53および54の間で複素共役の関係が各々成立する。
【0050】
ただし、上記関係はエコー計測時の環境が理想的な場合のみ成立するものである。理想的な環境とは、上述したように、静磁場不均一等の磁場歪がないことをいう。
【0051】
さらに、本発明で間題としている被検体の動きがあると、この関係、つまり、静磁場不均一等の磁場歪みが無い環境は成立しない。ここでは静磁場不均一等の磁場歪はシミング等の磁場補正方法で除去しうるものとし、被検体の動きによるエコーの位相歪のみを考慮している。
【0052】
被検体の動きによるエコーの位相歪をθとすると、上式(1)、(2)は次式(3)、(4)の様に書き直される。
【0053】
なお、被検体の動きによるエコーの位相歪θは上記MPGの印加によって引き起こされ、繰り返し時間TRの中では一定の値で保存される。
【0054】
SA=(cos(θ)+jsin(θ))(R+jI) −−−(3)
SB=(cos(θ)+jsin(θ))(R−jI) −−−(4)
したがって、上式(3)、(4)を用いて、各対称位置にあるべきサンプルデータから位相歪θを算出して、複素共役関係のずれを補正することにより、被検体の動きによるエコーの位相歪θを除去することができる。
【0055】
つまり、第1のエコーを計測する際に印加する、読み出し傾斜磁場の振幅の極性および位相エンコード傾斜磁場の振幅の極性と、第2のエコーを計測する際に印加する、読み出し傾斜磁場の振幅の極性および位相エンコード傾斜磁場の振幅の極性をそれぞれ逆とし、第1のエコーのサンプリング開始点の値および第2のエコーのサンプリング開始点の値が、複素数共役の関係となるように補正すれば、被検体の撮影したい断面を励起した時刻と、第1のエコーの計測を開始する時刻の間に被検体が動くことによりもたらされるエコーの位相歪を除去することができる。
【0056】
以上、従来のパルスシーケンス及び本発明を実施するパルスシーケンスで示したように、本発明の一実施形態によるパルスシーケンスではナビゲーションエコーを計測せず、ブリップ状に印加する位相エンコード傾斜磁場の振幅および極性が、隣り合う2個のエコーで複素共役の関係が成立するように印加している。
【0057】
さらに、被検体の動きによって引き起こされるエコーの位相歪を、複素共役の関係を成立させるように補正することにより、被検体の動きによって引き起こされる画質劣下を防止している。
【0058】
また、ナビゲーションエコーの場合には、1次元方向のずれしか検出することができない。このため、2次元方向のずれを補正する場合には、1次元方向のものとは別個のナビゲーションエコーが必要となる。
【0059】
これに対して、本発明によれば、ナビゲーションエコー無しに、2次元方向のずれも検出でき、それにより補正することが可能となる。
【0060】
したがって、本発明の一実施形態によれば、ナビゲーションエコーを計測することなく、被検体の計測中の動きによる画質劣下を防止することが可能で、短時間でありながら、高精度の画像を得ることが可能な磁気共鳴イメージング装置を実現することができる。
【0061】
なお、本発明による磁気共鳴イメージング装置における、上記パルスシーケンスの処理プログラムを記録する記録媒体も実現することが可能である。
【0062】
つまり、上記被検体の撮影したい断面を励起した後、少なくとも2個のエコーを連続して計測し、上記連続した2個のエコーの内、第1のエコーを計測する際に印加する、読み出し傾斜磁場の振幅の極性および位相エンコード傾斜磁場の振幅の極性と、第2のエコーを計測する際に印加する、読み出し傾斜磁場の振幅の極性および位相エンコード傾斜磁場の振幅の極性をそれぞれ逆にし、第1のエコーと第2のエコーとの関係から被検体の動きによる位相ずれを検出し、検出した位相ずれにより画像を補正するパルスシーケンスの処理プログラムを記録する記録媒体も実現可能である。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、ナビゲーションエコーを計測することなく、被検体の計測中の動きによる画質劣下を防止することが可能で、短時間でありながら、高精度の画像を得ることが可能な磁気共鳴イメージング装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態が適用されたパルスシーケンスを説明するための図である。
【図2】従来のパルスシーケンスを説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態を説明するための図である。
【図4】従来の一実施形態を説明するための図である。
【図5】本発明が適用されるMRI装置の概略構成ブロック図である。
【符号の説明】
1 静磁場コイル
2 傾斜磁場コイル
3 傾斜磁場電源
4 プローブ
5 高周波送受信機
6 計算機
7 表示器
8 ベツド
9 被検体
Claims (5)
- 読み出し傾斜磁場と位相エンコード傾斜磁場を被検体に印加してk空間データを計測する計測制御手段と、
前記k空間データを用いて前記被検体の画像を取得する信号処理手段と、
を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記信号処理手段は、k空間の原点に関して対称な位置にあって連続して計測された一対のデータを共に用いて前記被検体の体動に基づく位相ひずみを検出し、該位相ひずみを用いて前記一対のデータを位相補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記信号処理手段は、前記一対のデータの複素共役性からのずれに基づいて前記位相ひずみを検出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記一対のデータの計測において、前記読み出し傾斜磁場および前記位相エンコード傾斜磁場の極性を異ならせることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記読み出し傾斜磁場の極性を反転させ、前記位相エンコード傾斜磁場をブリップ状に印加することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記計測制御手段は、前記被検体に拡散強調のためのMPGを印加することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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