JP4315294B2 - 汚染物質濃度計測工法 - Google Patents
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Description
従来の汚染土壌浄化技術として、例えば、汚染流域の土壌を採取して通水浄化の室内試験を行い、そのデータに基いて、汚染濃度の経時変化を三次元的にシミュレーションする技術が知られている(特許文献1参照)。
しかし、土壌粒子は、それ自体が格子状の構造を具備しているため、VOC等の汚染物質が当該格子内に取り込まれた場合には、当該取り込まれた汚染物質は格子構造の外部へ移動し難い。また、例えば土壌が粘土である場合、粘土粒子は電荷を持ち、その電荷によりVOC等の汚染物質を電気的に吸着している。勿論、粘土以外の土壌粒子表面にも、電気的な吸着力以外の作用によって、汚染物質が吸着する。
汚染物質が土壌粒子の格子内に取り込まれた場合や、汚染物質が土壌粒子表面に吸着した場合の何れにおいても、汚染物質が土壌粒子から分離した状態にはなり難い。そして、従来技術において行われる物理的処理、化学的処理を施したのでは、汚染物質は土壌粒子から分離し難い。
換言すれば、土壌粒子から分離せず、水中に溶出していない汚染物質は、従来技術では検出そのものが困難であり、土壌粒子から分離していない状態の汚染物質の存在をも考慮して、汚染土壌の実態に近い汚染物質濃度を計測することが出来なかった。
その結果、土壌に付着したVOC等の汚染物質は、噴流の熱及び運動エネルギーの相乗作用によって、土壌が細かく破砕される際に土壌粒子から分離或いは剥離される。
土壌粒子から分離或いは剥離された汚染物質は、スライム中に溶出した状態となり、或いは、気相となって交差噴流と共に噴射された空気と混合した状態となる。
汚染物質が溶出したスライム、及び/又は、気相の汚染物質が混合した気体は、ボーリング孔を介して地上側へ流出する。換言すれば、汚染物質は、スライム或いは気体に連行されて、原位置から地上側へ移動する。
しかし、本発明において、高温で且つ高エネルギーの噴流で粘土粒子が細断されることにより、粘土粒子へ電気的に吸着した汚染物質は、当該粘土粒子から剥離する。或いは、土壌粒子の格子状の構造が、高温で且つ高エネルギーの噴流により破壊されて、格子内部に閉じ込められた汚染物質が溶出し易くなる。
スライム中で溶出した状態であれば、曝気や電気泳動その他の各種手段によって、汚染物質は容易に且つ確実にスライム中から除去される。従って、汚染土壌に付着した状態の汚染物質よりも、スライム中に溶出している状態の汚染物質のほうが、除去が容易である。
同様に、気相汚染物質は、ブロワその他の吸引手段により吸引して、容易に除去することが出来る。
従来の汚染物質濃度計測工法では、計測が為される汚染土壌の土壌粒子に取り込まれ、或いは、土壌粒子の表面に吸着されたVOC等の汚染物質は、土壌粒子から分離し難い。そのため、従来技術では、汚染土壌の土壌粒子に取り込まれ或いは電気的に吸着されたVOC等の汚染物質は、水に溶出し難くなり、その実際の含有量を計測機器で検出することが不可能であった。
それに対して、本発明によれば、高温で且つ高エネルギーの噴流により、土壌粒子の格子構造は破壊され、粘土粒子と電気的に吸着された汚染物質が剥離或いは分離されるので、従来技術では検出不可能であった汚染物質が、計測可能な状態となる。従って、本発明による計測結果は、従来の計測方法に比較して、汚染土壌の実体をより正確に示すことが出来るのである。
先ず、図1〜図4を参照して、本発明の汚染物質濃度計測工法の第1実施形態を説明する。
図1において、汚染物質濃度計測工法を実施するための計測システムは、施工用マシン101と、掘削機1と、スライム貯留タンク4と、ガス中のVOC濃度分析装置104(例えば、「ガスクロマトグラフ−光イオン化検出法(GC−PID)」を用いた分析装置)と、スライム中のVOC濃度分析装置106とを備えている。
図1、図2において、符号Gは土壌一般を示し、符号Gpは汚染土壌或いは汚染領域を示す。
図1及び図2において、ボーリング孔HにはケーシングパイプCPが挿入されている。
充填材料Cとしては、通常の固化材のみならず、後述する第2実施形態で説明するように、浄化されたスライムを、再投入して用いることが可能である。また、浄化されたスライムは、切削流体として再投入することが可能である。
ここで、ケーシングパイプCPは、交差噴流Jcと干渉しない様に配置されている。
なお、図2では交差噴流Jcを噴射するノズル221、222は一対のみ示されているが、交差噴流Jcを噴射するノズルを複数対設けることが出来る。
図2の三重管ロッド2において、ノズル221、222から充填材料注入口21oに至る領域の機器が、充填用のモニタ20(噴射及び注入装置)を構成している。
圧縮空気のジェットJaの温度は、噴流J1、J2を構成する水を気化させない程度の温度である。ただし、圧縮空気ジェットJaは、省略することも可能である。
また、上述の内容では、三重管ロッド2において、充填材料Cが第1の管21内を流れ、高圧温水が第1の管21と第2の管22との間の環状空間を流れ、高温圧縮空気が第2の管22と第3の管23との間の環状の空間を流れているが、それに限定される訳ではない。例えば、充填材料Cを第2の管22と第3の管23の環状空間を介して供給し、高圧温水が第1の管21内を流れ、高温圧縮空気が第1の管21と第2の管22の環状空間を介して供給される様に構成しても良い。
図示はされていないが、三重管スイベル9には、充填材料供給口、超高圧水供給口、圧縮空気供給口が設けられている。第1の管21は充填材料供給口(図示せず)に連通している。第1の管と第2の管22との間の環状の空間は、図示しない超高圧水供給口に連通している。そして、第2の管22と第3の管23との間の環状空間は、図示しない圧縮空気供給口に連通している。
第3の管23とケーシングパイプCPとの間の環状空間Kは、スライム及び/又はガスが地上側へ浮上する排出流路となっている。図2において、環状の流路Kにおける矢印Sは、スライム及び/又はガスの流れの方向を示している。
接続口3oには、第1のスライム搬送管T1の一端T1aが接続されている。
万一、口元管3から有害物質を含むスライムや気体が漏れ出した場合に、漏れ出したスライム及び/または気体が飛散して、地表側や地下に浸透したり、周辺の環境を汚染することを防ぐために、カバー3Cが設けられている。
口元管3及びカバー3Cは、公知の手段、例えばフランジ等によって接続されている。
図1及び図2において、第1のスライム搬送管T1における口元管3近傍の領域には、スライムサンプル抽出装置10が介装されている。
抽出されたサンプルは、人手或いは搬送ライン等により(図1では符号Lc1を付した一点鎖線のラインを示す)、スライム中のVOC濃度分析装置106に送られる。スライム中のVOC濃度分析装置106は従来、公知の分析装置である。
スライム中のVOC濃度分析装置106において、分析のために必要な物理的処置、化学的処置が為された後、スライム中に含まれる各種汚染物質濃度が測定される。
汚染物質はスライムに溶出するが、圧縮空気ジェットJaの空気と混合して、地上側へ出てくる。そして、第1のスライム搬送管T1からは、圧縮空気ジェットJaを構成したエアが排出されるが、気化した汚染物質、例えば気相のVOC等の汚染物質が間欠的に噴出する。
ガス採取装置108はラインLc2に接続しており、ラインLc2にはブロワ等の吸引装置(図1では図示せず)が介装されている。図示しない吸引装置で気相の汚染物質を吸引し、ラインLc2を介して採取されたガス(気相の汚染物質と空気との混合ガス)を分析装置であるガス中のVOC濃度分析装置104に送り、リアルタイムで汚染物質濃度を測定する。
係る薬剤等を切削流体或いは充填材料Cに添加することにより、後述する第2実施形態において、汚染土壌の浄化工法と組み合わせて施工する際に、施工の効率が向上するからである。
汚染物質濃度の計測にあたって、先ず、汚染物質(例えばVOC)の濃度を計測するべき土壌中の領域まで、ボーリング孔H(図1)を掘削する(図3のステップS1)。そして、ボーリング孔H内に、三重管ロッド2を挿入する(ステップS2)。
図1、図2を参照して上述したように、三重管ロッド2には、交差噴流Jcを噴射する一対のノズル221、222と、充填材料Cを注入する充填材料注入口21oが設けられている。
ステップS3では、高温で且つ高エネルギーの交差噴流Jcで粘土粒子が細断され、以って、粘土粒子へ電気的に吸着した汚染物質や土壌粒子表面に吸着した各種汚染物質は、当該粘土粒子や土壌粒子の表面から剥離或いは分離する。そして、ステップS3において高温で且つ高エネルギーの交差噴流Jcで土壌粒子が細断されることにより、土壌粒子の格子状の構造が交差噴流Jcにより破壊され、格子内部に閉じ込められた汚染物質が土壌粒子から分離する。
分離した汚染物質はスライム中に溶出し、或いは、交差噴流Jcと共に噴射された空気と混合する。そして、スライムに溶出した状態で、或いは、ボーリング孔Hを上昇する気体に混合した状態で、地上側へ上昇する。
そのため、汚染物質が溶出したスライムは、沈降せずに、地上側へ浮上する。
上述した通り、汚染物質濃度は、スライム中のVOC濃度分析装置106によりスライムを分析して測定することも出来るし、或いは、汚染物質を混合した気体をガス中のVOC濃度分析装置104で分析することによっても測定できる。
スライムを分析して汚染物質濃度を測定する場合には(ステップS4で「スライム計測」)、地上側へ上昇したスライムの一部をスライムサンプル抽出装置10で抽出する(ステップS5)。
そして、抽出されたサンプルは、人手或いは搬送ライン等(Lc1)を介してスライム中のVOC濃度分析装置106に送り、必要な処理を行って汚染物質濃度を測定する(ステップS6)。
ガス採取装置108で吸引された気体は、ラインLc2を介してガス中のVOC濃度分析装置104に送られ、公知の技術により汚染物質濃度(例えば、VOC濃度)が測定される(ステップS8)。
そして、採取されたスライムをスライム中のVOC濃度分析装置106で分析して汚染物質濃度を測定すると共に、吸引された気体をガス中のVOC濃度分析装置104で処理して汚染物質濃度を測定する(ステップS10)。そして、スライム中のVOC濃度分析装置106における汚染物質濃度測定結果と、ガス中のVOC濃度分析装置104における汚染物質濃度測定結果とを参照して、汚染物質濃度を決定する。
すなわち、高温で且つ高エネルギーの交差噴流Jcで粘土粒子が細断されることにより、粘土粒子へ電気的に吸着した汚染物質は、当該粘土粒子から剥離する。或いは、土壌粒子の格子状の構造が、高温で且つ高エネルギーの交差噴流により破壊されて、格子内部に閉じ込められた汚染物質及び/又は土壌粒子表面に吸着した汚染物質が溶出し易くなる。
それに対して、上述した実施形態によれば、高温で且つ高エネルギーの交差噴流Jcにより、土壌粒子の格子構造は破壊され、例えば粘土粒子と電気的に吸着された汚染物質が剥離或いは分離されるので、従来技術では検出不可能であった汚染物質、すなわち汚染土壌の土壌粒子に取り込まれ或いは土壌粒子表面に吸着されたVOC等の汚染物質が、計測可能な状態となる。従って、従来の計測方法に比較して、汚染土壌の実体が、より正確に計測されるのである。
図4で示す実験においては、図1、図2で説明した様に採取されたスライム(図1〜図3で説明した計測法)と、原位置土の水溶液(従来技術の計測法)とにおいて、「ガスクロマトグラフ−光イオン化検出法(PID−Photo)」を用いて計測したトリクロロエチレン(TCE)の濃度(TCEの土壌溶出量)を比較している。
図4において、縦軸は汚染濃度を計測した領域の深度(縦軸の上方ほど深度が深い)を示し、横軸がTCEの土壌溶出量を示している。
そして、第1実施形態に係る計測法(本計測法)は、係る従来技術による計測が終了した後に、同一の領域において実施されている。
このことからも、本発明に係る汚染物質濃度計測工法によれば、実際の土壌汚染の実体を、より正確に把握することが出来る。
図5〜図17の第2実施形態は、図1〜図4の第1実施形態に係る汚染物質濃度計測工法を、汚染土壌の浄化工法と組み合わせて施工した実施形態である。
図5〜図17の第2実施形態では、地上側に噴出したスライム及び気体の一部を採取して、分析設備により汚染物質濃度を計測すると共に、スライム及び気体の大部分については、下流側の機器により汚染物質を除去する。そして、必要に応じて、汚染物質を除去して浄化されたスライムを、切削流体或いは充填材料として再利用している。
土壌浄化システム100は、施工用マシン101と、掘削機1と、スライム貯留タンク4と、第1のスライム曝気タンク5と、第2のスライム曝気タンク6と、重金属除去装置7と、コンクリートポンプ8とを備えている。これ等の機器は、汚染領域からのスライム及び気体を浄化して、汚染物質を除去するために設けられている。
そして、明示はされていないが、高温水噴流J1、J2の周囲を、高温の圧縮空気のジェットJaで包囲している。但し、圧縮空気ジェットJaを省略することも可能である。
第1のスライム搬送管T1の口元管3から離隔した側の端部T1bは、スライム貯留タンク4内の上方から下方に向かって開口している。
第1のスライム搬送管T1の端部T1bと、スライム貯留タンク4に貯留しているスライムSの上面とは落差が存在する。端部T1bからスライムが落下すると、落下したスライムと貯留されているスライムSとが衝突する。係る衝突によって、スライム中の土壌(粘土等)が細かく破砕される。粘土が細かく破砕され、微粒化すれば、粘土と結びついているVOC等の汚染物質は分離し易くなる。
第1の搬送ポンプP1の吸入口P1aから、スライム貯留タンク4内のスライムSが吸い込まれる。
第2のスライム搬送管T2を流れるスライム中には、粘土塊が混入しているので、そこで、高回転型のミキサー13を第2のスライム搬送管T2に介装することにより、高回転のミキサー13によってスライム中の粘土塊を破砕して、微粒化している。
スライム中の粘土塊を微粒化すれば、第1のスライム曝気タンク5及び第2のスライム曝気タンク6内における曝気処理により、スライム中のVOCが分離し易くなる。
配管加熱装置14の詳細については、図6〜図8で後述する。
配管加熱装置14の加熱作用によって、搬送管T2を流過するスライムを昇温すれば、スライムに含まれるVOCが分離し易くなる。
図示の例では、配管加熱装置14による加熱温度は、130℃程度である。
第1の曝気タンク5において、鉛直壁面51の上方には、スライム循環噴射装置15が設置されている。スライム循環噴射装置15は、水平方向へ噴射するように構成されている。
スライム循環噴射装置15の構造については、図9、図10を参照して後述する。
第2のスライム搬送管T2を流れるスライムは、第1のスライムポンプP1で加圧されており、第2のスライム搬送管2Tの端部T2bから、水平方向に噴射されたスライムも、直進して鉛直壁面52と衝突する。
分離したVOCガスは、第2の排気ダクトD2を介して、第2のVOC回収装置16に回収される。第1のスライム曝気タンク5の天蓋53において、鉛直壁面52近傍には、第2の排気ダクトD2の開口部D2bが位置している。
曝気タンク5の底部に貯留しているスライムS中ではなく、空中にスライムを噴射することにより、スライム中の土壌粒子或いはVOCが空気と接触する機会が多くなり、空気と接触する時間が長くなるので、曝気効果が良好となるからである。
第1のスライム曝気タンク5と、第2のスライム曝気タンク6とは、第3のスライム搬送管T3で連通している。
第3のスライム搬送管T3において、第1のスライム曝気タンク5側の端部には、第2の搬送ポンプP2が介装されている。第1のスライム曝気タンク5内のスライムSは、第2の搬送ポンプP2の吸入口P2aから吸い込まれ、第2のスライム曝気タンク6へ送られる。
第2のVOC回収装置16は、図示しない活性炭やゼオライト等の吸着材から成る吸着層を有し、吸着層により汚染物質を吸着・回収するように構成されている。
吸着層を有するVOC回収装置16に代えて、図17を参照して後述する様に、冷凍式VOC濃縮回収装置16Aを用いることもできる。
第2の排気ダクトD2は、分岐点Pdで第3の排気ダクトD3に分岐している。第3の排気ダクトD3は、第2のスライム曝気タンク6の上方と連通している。
衝突することにより、スライムに含まれる固形分は微粒化して、スライムに含まれる汚染物質が分離され易い状態となる。
ここで、第3のスライム搬送管T3に介装された第2のスライムポンプP2は、スライム搬送の機能の他に、搬送されるスライムとタンク6内のスライムとが衝突する際の衝撃を大きくする機能をも有する。
重金属回収装置18は、陰極18aと、陽極18bと、両極とに接続される電極ラインLeによって構成されている。
重金属や、その他のイオン化した汚染物質が電極18a、18bに一定量付着したならば、電極18a、18bを交換する。そして、第2の曝気タンク6から取り外された電極18a、18bから、重金属或いはイオン化したその他の汚染物質を除去する。
なお、重金属回収装置18で除去し切れなかった重金属やその他の汚染物質は、第4のスライム搬送管T4から排出される。
第1のスライム曝気タンク5では、第2のスライム曝気タンク6に比較して、内部のスライムは、流動が活発である。それに対して、第2のスライム曝気タンク6では、タンク内部におけるスライムSの流動はさほど為されていない。
ここで、電気泳動による重金属の分離は、流動していない状態の方が効率的に実施できる。そのため、第2のスライム曝気タンク6では、電気泳動がし易い状態となっている。そのため、下流側の第2のスライム曝気タンク6において、電気泳動による重金属の分離を行っている。
第3の搬送ポンプP3の吸入口P3aから、第2のスライム曝気タンク6内のスライムSが吸い込まれる。
第4のスライム搬送管T4において、第2のスライム曝気タンク6から離隔した側の端部T4bは、ホッパー19の上方に開口している。
第4のスライム搬送管T4において、三方弁V31と端部T4bとの間の領域には、第2の三方弁V32が介装されている。第2の三方弁V32から、分岐管T40が分岐している。
分岐管T40は、重金属除去装置7に連通している。重金属除去装置7には、スライム排出管T41が接続されており、スライム排出管T41は、ホッパー19の上方に開口している。
重金属除去装置7は、第4のスライム搬送管T4及び分岐管T40を介して供給された加熱して、スライムからVOCや重金属、PCB等を加熱分解して、除去する。重金属及びPCBが分解・除去され、汚染物質が完全に除去されたスライムは、スライム排出管T41を介してホッパー19に投入される。
処理済みのスライムの全量を図示しない産業廃棄物処理設備へ搬送する場合には、第1の三方弁V31の重金属除去装置7及び/又はホッパー19側を閉鎖して、分岐管TB側を開放する。
第4のスライム搬送管T4を流れる処理済みのスライムの一部をリサイクルし、残りは図示しない産業廃棄物処理設備へ搬送する場合には、第1の三方弁V31の重金属除去装置7及び/又はホッパー19側をリサイクル量に対応する開度だけ開放し、且つ、分岐管TB側を図示しない産業廃棄物処理設備へ搬送する量に対応した開度だけ開放する。
コンクリートポンプ8は、第6のスライム搬送管T6を介して、浄化された三重管スイベル9と接続されている。
なお、リサイクル用スライムの粘度が高い場合や、スライムの含水率が大きい場合には、リサイクル用スライムの性状に応じて、適宜、固化材その他の薬剤を添加すればよい。
図6、図7において、配管加熱装置14は、電熱線141と、薬液添加管142とを備えている。
電熱線141は、第2のスライム搬送管T2を螺旋状に包囲するように巻き回されている。電熱線141に通電することにより、第2のスライム搬送管T2を流れるスライムが、常温以上に昇温するように加熱される。
ここで、電熱線141による加熱温度は、例えば130℃程度が好ましい。電熱線141でスライムを加熱することにより、スライムに含まれるVOCの分離が促進される。
スライムサンプル抽出装置10により抽出されたサンプル(試料)を分析することにより、地上側に浮上したスライムの性状が把握出来る。そして、配管加熱装置14においては、分析されたスライムの性状に対応して、必要な薬剤を、第2のスライム搬送管T2を流れるスライムに、薬液添加管142から適宜添加している。
例えば、凝集剤、中和剤、スライム中の粘土粒子間の結合力を弱める作用を奏する薬剤等が添加される。
インラインミキサー143により、第2のスライム搬送管T2を流れるスライムSは、その微粒化が促進される。また、薬液添加管142から添加された薬剤は、インラインミキサー143により、スライムと十分に混合されるので、薬剤の薬効が速やかに顕在化する。
図9、図10において、スライム循環噴射装置15は、高圧エア噴射管151と、2本のスライム循環管路152とを備えている。2本のスライム循環管路152の各々には、スライムポンプ154が介装されている。
スライム循環管路152が高圧エア噴射管151へ合流する部分(交差合流部)Pxの近傍には、空気導入口152cが形成されている。空気導入口152cは吸込み管として構成されている。
なお、空気導入口152cに、例えば、図示しないコンプレッサから高圧空気を送り込むことも可能である。或いは、浄化作用を有する鉄粉や薬剤等を、空気導入口152cを介して送り込むことも可能である。
係る空間中にスライムを噴射することにより、スライム中の土壌粒子或いはVOCが空気と接触する機会が多くなり、空気と接触する時間が長くなるので、曝気効果が向上するからである。
図11において、第1変形例に係るスライム曝気タンク5Aは、図11中左右方向について中央が下がるように傾斜した底部54を有している。詳細には、スライム曝気タンク5Aにおける底部54の中央には、傾斜面よりも、更に深く下がった平面部54hが形成されている。
スライム曝気タンク5Aは、図9、図10で説明したスライム循環噴射装置15と同様のスライム循環噴射装置15Aを備えている。
スライム曝気タンク5Aにおいては、複数のミキサーMにより、貯留されているスライムSが滞留することなく、常に撹拌された状態となっており、スライムSがタンク5A内で確実に循環する。
図12において、第2変形例に係るスライム曝気タンク5Bは、その内部において、スライムのジェットJsと、高圧エアジェットJaとを、隣接した状態で、鉛直方向上方に噴射するように構成されている。
第2変形例に係るスライム曝気タンク5Bは、スライムの汚染物質濃度が高い場合に有効である。
ここで、スライムのジェットJs及び/又は高圧エアジェットJaを、交差噴流で構成することも可能である。
第2変形例に係るスライム曝気タンク5Bではサイロ状のタンクを用いているので、密封性が高く、防音効果も高い。
図13において、第3変形例に係るスライム曝気タンク5Cにおいて、スライム曝気タンク5Cの下方から上方に向かって、複数の高圧エアのジェットJaを噴射している。そして、スライム曝気タンク5Cの上方から下方へ向って、複数のスライムのジェットJsを噴射している。
第4変形例に係るスライム曝気タンク5Dは、図13の第3変形例における水平のエア配管Taを省略し、その代わりに、1個の高圧エアノズルNaを設けている。
高圧エアノズルNaは、タンク50内にサイクロン状の空気流Faを発生させる様に構成されている。空気流Faの旋回方向は、図14の矢印Rとは逆方向である。これに対して、スライム管Tsは、空気流Faの旋回方向の逆方向である矢印R方向へ回転する。
第4変形例によれば、スライムのジェットJsと、サイクロン状の空気流Faが好適に衝突し、曝気効果が向上し、VOCの分離が促進される。
図15、図16において、第5変形例に係る第1のスライム曝気タンク5Eは、底部に設けた高圧エア噴射ノズルNaによって、上方に向かうサイクロン状の空気流Faを形成させている。タンクの上方には、混合ジェット噴射装置Nxが配置されている。混合ジェット噴射装置Nxは、複数のノズルを有し、水平方向へ延在している。混合ジェット噴射装置Nxの複数のノズルからは、スライムと高圧エアの複合ジェットFxが噴射される。
複合ジェットFxとサイクロン状の空気流Faは、好適に衝突し、スライムが良好に曝気され、スライムに含まれるVOCの分離が促進される。
図17において、VOC回収装置16Aは、ブライン槽(冷媒槽)161を有している。ブライン槽161には、ブライン(冷媒)注入口162と、ブライン排出口163とが形成されている。ブライン槽161内には、VOC配管Lvが通されている。ブライン槽161内におけるVOC配管Lvは、つづら折状に折り曲げられて、熱交換器を構成している。
スライム中で溶出した状態であれば、スライム貯留タンク4及び第1のVOC回収装置、第1のスライム曝気タンク5(各種変形例を含む)と第2の曝気タンク6及び第2のVOC回収装置17、曝気タンク6内の電気泳動式の重金属回収装置18、重金属除去装置7によって、汚染物質は容易、且つ確実にスライム中から除去される。
また、汚染物質が気体に混合した状態であれば、当該気体が大気中に拡散する以前に吸引することにより、容易に捕集することが出来る。
汚染物質が除去されたスライムは、汚染物質を包含しておらず、原位置へ埋め戻しても、何等問題は発生しない。そして、切削流体及び/又は充填材料Cとして用いられた分だけ、産業廃棄物として処理するべきスライムの量が減少する。その結果、(産業廃棄物処理のコストが減少する分だけ、)汚染土壌浄化に必要なコストが低減化される。
第2実施形態では、図1〜図4の第1実施形態に係る汚染物質濃度計測工法を、汚染土壌の浄化工法と同時に施工しているが、汚染土壌の浄化工法で汚染物質濃度の計測結果を直接は利用していない。
それに対して、図5及び図18で示す第3実施形態では、図1〜図4の第1実施形態に係る汚染物質濃度計測工法によって計測された汚染物質濃度が、汚染土壌に浄化における制御パラメータとして用いられている。
図18のステップS1においては、その様に、交差噴流Jcによる切削、細断と、充填材料Cの注入とを、複数回に亘って繰り返し処理(施工)することを前提として、掘削と充填材料Cの注入を概略同時に行う。
図5を参照して説明したように、温水ジェットJ1、J2は、高圧エアジェットJaで包囲して噴射することも出来る。
高圧エアジェットJaを噴射する場合には、土壌粒子から分離した汚染物質であって気相の汚染物質は、高圧エアジェットJaの空気と混合して、混合気の状態でスライム貯留タンク4へ排出される。
掘削開始当初は、リサイクル用のスライムが発生していないので、充填材料として、例えば、別途供給されたセメントミルクが、コンクリートポンプ8から注入される。
図18のステップS2において、スライムを分析して汚染物質濃度等を計測することに代えて、スライム貯留タンク4に設けたガス採取装置108により、気化した汚染物質を包含する気体を採取して、ラインLc2を介してガス中のVOC濃度分析装置104に送り、汚染物質濃度を測定しても良い。
ステップS2における汚染物質濃度の測定は、図1〜図4で説明したのと同様である。
汚染物質濃度が閾値以上である場合(ステップS3でYES)、2回目の施工では、比重の大きな充填材料を使用する(ステップS4)。
汚染物質濃度が閾値以上である場合(ステップS3でYES)において、汚染物質を除去したスライムを充填材料Cとして再利用した場合には、汚染物質濃度が環境基準値を下回るまで、多数回に亘って、交差噴流Jcによる切削と充填材料Cの注入とを繰り返さなければならない恐れが存在する。
2回目の施工において、比重の大きい充填材料により施工領域における汚染土壌を完全に置換すれば、その施工領域については、交差噴流Jcによる切削と充填材料Cの注入とを繰り返す必要は無い。
図5〜図17の第2実施形態と同様に、スライム貯留タンク4に流入したスライムは、高回転型のミキサー13及び配管加熱装置14が介装されている第2のスライム搬送管T2を介して、第1のスライム曝気タンク5に送られて曝気される。そして、第2のスライム曝気タンク6において、重金属回収装置18により、重金属やイオン化した汚染物質が除去される。
さらに、スライムは必要に応じて重金属処理装置7を経由し、汚染物質が完全に除去される。汚染物質が除去されたスライム(処理済のスライム)は、コンクリートポンプ8を経由して、充填材料C、或いは切削用流体として、掘削機1に送られる。
ステップS5のサイクルを実行したならば、スライムサンプル抽出装置10により、スライムのサンプル(試料)を抽出する。そして、抽出したスライムサンプルを分析し、スライム中の汚染物質の濃度を計測する(ステップS6)。
ステップS6において、気化した汚染物質を包含する気体をガス中のVOC濃度分析装置104で分析し、汚染物質濃度を測定しても良い。
ステップS6における汚染物質濃度の測定は、図1〜図4で説明したのと同様である。
汚染物質濃度が、環境基準値以下であれば(ステップS7でYES)、浄化処理を終了する。
汚染物質濃度が、環境基準値を超えていれば(ステップS7でNO)、ステップS5以下を繰り返す。
また、浄化工法施工領域における汚染濃度を、リアルタイムで把握して、ステップS5〜S7のサイクルを繰り返す必要があるか否かを、正確に判断出来るので、不必要な作業(切削、充填から、掘削機1における再利用)を行うことなく、施工コストを節約することが出来る。
図1〜図4の第1実施形態では、汚染物質濃度は、地上側に設けられたスライム中のVOC濃度分析装置106やガス中のVOC濃度分析装置104により、測定される。これに対して、図19の第4実施形態では、スライム及び/又はガス中に包含される汚染物質濃度を、地中側に設けた計測装置310により計測している。
計測装置310による計測結果は、信号伝達ラインCL300を介して、地上側に設けたユニット320に送信される。ユニット320は、例えば演算装置、記憶装置、表示装置としての機能を有しており、計測装置310の構成と対応させて、適宜構成することが出来る。
第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図4の第1実施形態と同様である。
例えば、図示の実施形態では、切削流体の噴流は交差噴流を構成しているが、切削流体の噴流を交差させずに、そのまま、例えば水平方向へ噴射しても良い。
また、図示の実施形態では、モニタ10を回転しつつ引き上げて、円柱状の汚染土壌領域を切削、充填しているが、モニタ10を回転せずに、所定の角度だけ揺動しつつ引き上げることにより、所定幅のパネル状の汚染土壌領域を切削、充填する様に構成しても良い。
2・・・三重管ロッド
3・・・口元管
4・・・スライム貯留タンク
5・・・第1のスライム曝気タンク
6・・・第2のスライム曝気タンク
7・・・重金属除去装置
8・・・コンクリートポンプ
9・・・三重管スイベル
10・・・スライムサンプル抽出装置
11・・・第1のVOC回収装置
12・・・第1のブロワ
13・・・高回転型ミキサー
14・・・配管加熱装置
15・・・スライム循環噴射装置、
16・・・第2のVOC回収装置
17・・・第2のブロワ
18・・・重金属回収装置
20・・・同時充填用モニタ
C・・・充填材料
S・・・スライム
Claims (2)
- 半径方向外方に充填材料(C)を注入し、そして圧縮空気で周囲を包囲した切削用の高温水の交差噴流(Jc)を噴射させる三重管ロッド(2)を用い、汚染物質で汚染した汚染領域(Gp)に充填材料(C)を充填する際に発生するスライム(S)又はガスを採取して揮発性物質や重金属の汚染物質の濃度を計測する汚染物質濃度計測工法において、汚染物質の濃度を計測する土壌中の領域までボーリング孔(H)を掘削し、ボーリング孔(H)に三重管ロッド(2)を挿入し、その三重管ロッド(2)を回転させながら引き上げて圧縮空気で包囲した高温水の交差噴流によって粘土粒子や土壌粒子を細断すると共にその表面から汚染物質を分離して充填材料(C)を注入し、地上側に排出されるスライムの一部をスライムサンプル抽出装置(10)に抽出させると共にガス採取装置(108)に地上側に排出される空気と気相の汚染物質との混合気体を吸引させ、スライムサンプル抽出装置(10)で抽出したスライムを揮発性物質濃度分析装置(106)で濃度を測定し、ガス採取装置(108)で吸引された前記混合気体は別の揮発性物質濃度分析装置(104)で濃度を測定することを特徴とする汚染物質濃度計測工法。
- 半径方向外方に充填材料(C)を注入し、そして圧縮空気で周囲を包囲した切削用の高温水の交差噴流(Jc)を噴射させる三重管ロッド(2)を用い、汚染物質で汚染した汚染領域(Gp)に充填材料(C)を充填する際に発生するスライム(S)又はガスを採取して揮発性物質や重金属の汚染物質の濃度を計測する汚染物質濃度計測工法において、汚染物質の濃度を計測する土壌中の領域までボーリング孔(H)を掘削し、そのボーリング孔(H)に三重管ロッド(2)を挿入し、その三重管ロッド(2)から圧縮空気で包囲した高温水の交差噴流(Jc)を噴射させて粘土粒子や土壌粒子を細断し、そして充填材料(C)を注入しつつ回転させながら上方に引き上げる作業を行い、汚染物質を溶出したスライムを空気と共に上昇させてその一部を試料として採取してその濃度を計測し、その濃度が閾値以上であるか否かを判断し、閾値以上であれば比重の大きい充填材料を用いて2回目の汚染領域の全量置換を行い、閾値未満であれば切削、スライム処理、充填材料の再充填を繰り返し、スライム中の汚染物質の濃度を計測し、汚染物質の濃度が環境基準値以下であれば浄化処理を終了することを特徴とする汚染物質濃度計測工法。
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