JP4309822B2 - 殺菌剤 - Google Patents

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本発明は、レジオネラ菌,大腸菌若しくはサルモネラ菌等のグラム陰性菌及び黄色ブドウ球菌,バチラス菌若しくは乳酸菌等のグラム陽性菌に対して殺菌作用を発揮する殺菌剤に関するものである。
細菌類は、その細胞膜構造の違いによりグラム陰性菌とグラム陽性菌とに大別される。
ところで、上記細菌類を殺菌でき、且つ、環境や人体に優しい(分解されて自然に戻る)殺菌剤として、例えばプロタミン剤,ポリリジン若しくはリゾチーム製剤等の天然系の殺菌剤が知られている。
しかしながら、従来の天然系殺菌剤は、その性質上、グラム陰性菌若しくはグラム陽性菌のどちらか一方には十分な殺菌作用を発揮しないことがある。
従って、例えば、グラム陰性菌とグラム陽性菌の双方が存在する長期間使用された浴槽水に対し、グラム陰性菌に殺菌作用を発揮する殺菌剤若しくはグラム陽性菌に殺菌作用を発揮する殺菌剤のいずれか一方を単に添加しただけでは、当然ながら、グラム陰性菌若しくはグラム陽性菌のいずれか一方しか殺菌することができない。
そこで、グラム陽性菌とグラム陰性菌との双方を殺菌すべく、例えば、グラム陽性菌に殺菌作用を発揮する殺菌剤と、グラム陰性菌に殺菌作用を発揮する殺菌剤とを混合することも考えられるが、単にグラム陽性菌に殺菌作用を発揮する殺菌剤とグラム陰性菌に殺菌作用を発揮する殺菌剤とを混合しただけでは双方の菌を有効に殺菌できないことを確認した。
即ち、グラム陽性菌に殺菌作用を発揮する殺菌剤とグラム陰性菌に殺菌作用を発揮する殺菌剤とを混合すると、双方の殺菌作用が打ち消され、これにより、例えば、グラム陰性菌に対し、グラム陰性菌に殺菌作用を有する殺菌剤単独で用いるよりも殺菌作用が低下してしまうことがあることを実験により確認している。
本発明は、グラム陰性菌とグラム陽性菌の双方に対して殺菌作用を良好に発揮でき、更に、秀れた相乗効果が得られ、しかも、環境や人体に優しい極めて実用的な殺菌剤を提供するものである。
本発明の要旨を説明する。
ラム陰性菌に対して殺菌作用を有するフマール酸と、グラム陽性菌に対して殺菌作用を有するナイシンと、乳酸と、リン酸及びクエン酸の双方若しくはいずれか一方とを有する殺菌剤であって、前記フマール酸の濃度は0.03%乃至0.1%(w/v)、前記ナイシンの濃度は1ppm乃至100ppmに設定されており、この殺菌剤は前記グラム陰性菌及びグラム陽性菌の双方を殺菌するものであることを特徴とする殺菌剤に係るものである。
また、請求項1記載の殺菌剤において、前記フマール酸の濃度を0.1%(w/v)としたことを特徴とする殺菌剤に係るものである。
また、請求項1,2いずれか1項に記載の殺菌剤において、前記ナイシンの濃度を100ppmとしたことを特徴とする殺菌剤に係るものである。
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の殺菌剤において、前記乳酸の濃度を0.8%(w/v)としたことを特徴とする殺菌剤に係るものである。
本発明は上述のように構成したから、グラム陰性菌とグラム陽性菌の双方に対して良好に殺菌作用を発揮することができ、更に、秀れた相乗効果が得られ、しかも、環境や人体に優しい極めて実用的な殺菌剤となる。
本発明は種々の実験により得た結果を請求項としてまとめたものである。
本発明は、レジオネラ菌,大腸菌若しくはサルモネラ菌等のグラム陰性菌に殺菌作用を有するフマール酸と、黄色ブドウ球菌,バチラス菌若しくは乳酸菌等のグラム陽性菌に殺菌作用を有するナイシンとを、フマール酸の濃度を0.03%乃至0.1%(w/v)及びナイシンの濃度を1ppm〜100ppmとして混合したから、グラム陽性菌とグラム陰性菌の双方に対し殺菌作用が有効に発揮される。
更に、詳細は不明であるが、所定濃度のフマール酸とナイシンとが混合されると、フマール酸がグラム陰性菌に対して発揮する殺菌作用が、該フマール酸を単独で用いた場合に比して向上すること、また、所定濃度のフマール酸とナイシンとが混合されると、ナイシンがグラム陽性菌に対して発揮する殺菌作用が、該ナイシンを単独で用いた場合に比して向上することを実験により確認している。
また、フマール酸は食品添加物としても使用される天然系物質である為、環境や人体に対して悪影響を与える懸念がない。
また、ナイシンは乳酸菌(Lactococcus Lactis Subsp Lactis)が生産するバクテリオシン(他の細菌類の生育を阻害する物質)の一種であり、外国では精製品が食品保存料としても利用されている為、環境や人体に対して悪影響を与える懸念は生じない。
従って、本発明は、グラム陰性菌に対してもグラム陽性菌に対しても殺菌作用を良好に発揮し、更に、相乗効果によってフマール酸若しくはナイシンを単独で使用した場合に比して同じ濃度でも、より良好な殺菌作用が発揮され、しかも、環境や人体に悪影響を与える懸念を有しない極めて実用性に秀れた殺菌剤となる。
本実施例は、レジオネラ菌,大腸菌若しくはサルモネラ菌等のグラム陰性菌に殺菌作用を有するフマール酸と、黄色ブドウ球菌,バチラス菌若しくは乳酸菌等のグラム陽性菌に殺菌作用を有するナイシンとから成る殺菌剤に関するものである。
本実施例は、濃度が0.03%乃至0.1%(w/v)に設定されたフマール酸(水溶液)と、濃度が1ppm乃至100ppmに設定されたナイシン(水溶液)とを1:1の割合で混合している。
フマール酸の濃度を0.03%乃至0.1%(w/v)、ナイシンの濃度を1ppm乃至100ppmに設定したら、グラム陰性菌及びグラム陽性菌の双方に対して殺菌作用が発揮された。
フマール酸の濃度を、0.03%(w/v)よりも低い濃度とすると、フマール酸のグラム陰性菌に対する十分な殺菌作用が得られず、また、0.1%(w/v)よりも高い濃度としても、殺菌作用にそれほどの変化が見られない。
また、ナイシンの濃度を1ppmよりも低い濃度とすると、ナイシンのグラム陽性菌に対する十分な殺菌作用が得られず、また、100ppmよりも高い濃度としても、殺菌作用にそれほどの変化が見られない。
フマール酸とナイシンとの混合比率についてであるが、フマール酸及びナイシンの濃度を上記濃度に設定すれば、即ち、夫々を上記の下限濃度以上とすれば、両者の混合比率は実用上特段規定されないことを後記実験例4で確認した。
ナイシンとは、乳酸菌の一種であるLactococcus Lactis Subsp Lactisが作るバクテリオシン(他の細菌類の生育を阻害する物質)の1つで、34個のアミノ酸から構成される分子量3510の物質である。また、このナイシンは、日本においては乳酸菌の発酵液は使用可能であるが、精製してナイシンのみを取り出して食品添加物として使用することはできない。しかしながら、ナイシンは、フマール酸同様、いずれも自然界にも存在する環境や人体に対して影響の小さい物質であり、また、使用後は分解されて自然に戻る性質を有する。
本実施例では、乳酸が適量混合されている。フマール酸を混合した溶液は酸性を呈するが、水に溶けることができるフマール酸の濃度は非常に低い。従って、フマール酸に対する水の量が非常に多い状態となる為、pHは該水の影響により中性側へ上昇する。従って、溶液のpHが上昇するとフマール酸の殺菌作用が阻害される為、乳酸を添加することで、フマール酸が存在する溶液のpHの上昇を抑え、これにより、該フマール酸の殺菌作用を良好に発揮される。即ち、乳酸はフマール酸溶液のpHの上昇(これに伴い殺菌力も低下する。)を抑制する為に添加される。
本実施例では、リン酸及びクエン酸を適量混合している。
リン酸及びクエン酸を混合するのは、詳細は不明であるが、リン酸及びクエン酸を混合することで、ナイシンが発揮する殺菌作用をより巾広く種々の菌に発揮できると考えられる為である。
即ち、ナイシンの他にも、リン酸やクエン酸といった有機酸が共存することで、ナイシンが作用しないとされるグラム陰性菌の細胞壁に該ナイシンが作用し易くなり、これにより、本実施例の殺菌剤の殺菌作用がより高められると考えられる。
尚、リン酸やクエン酸の他にも、殺菌剤としての作用を高めることができる有機酸であれば適宜採用しても良く、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を採用しても良い。
本実施例は上述のように構成したから、グラム陰性菌及びグラム陽性菌に対して良好に殺菌作用を発揮することができ、更に、相乗効果によって、フマール酸やナイシンを単に単独で用いた場合に比して秀れた殺菌効果が得られ、しかも、環境,人体に対して悪影響を与える懸念もない極めて実用性に秀れた殺菌剤となる。
以下、本実施例の作用効果をより具体的に示す実験例について述べる。
実験例1
実験例1は、本実施例の殺菌剤、即ち、フマール酸とナイシンとの混合液がグラム陰性菌に対してどのような殺菌作用を発揮するのかを示すものである。
表1−1は、所定濃度のレジオネラ菌(グラム陰性菌)含有溶液1mlを、何も加えない培地(無添加)、フマール酸0.05%(w/v)含有培地、フマール酸0.05%(w/v)及びナイシン5ppm含有培地、フマール酸0.05%(w/v)及びナイシン20ppm含有培地の各々10mlに添加したものを用意し、0時間,1時間,2時間,4時間,24時間経過後の各々のレジオネラ菌の菌数を調べたものである。尚、図1は、表1−1をグラフ化したものである。
Figure 0004309822
また、表1−2は、所定濃度の大腸菌(グラム陰性菌)含有溶液1mlを、何も加えない培地(無添加)、フマール酸0.05%(w/v)含有培地、フマール酸0.05%(w/v)及びナイシン5ppm含有培地、フマール酸0.05%(w/v)及びナイシン20ppm含有培地の各々10mlに添加したものを用意し、0時間,1時間,2時間,4時間,24時間経過後の各々の大腸菌の菌数を調べたものである。尚、図2は表1−2をグラフ化したものである。
Figure 0004309822
上記表1−1,表1−2によれば、フマール酸の濃度が同一(0.05%(w/v))でありながら、該フマール酸にグラム陰性菌に対して殺菌作用を有しないとされるナイシン(5ppm及び20ppm)を加えることで、グラム陰性菌(レジオネラ菌及び大腸菌)の菌数の減少率が明らかに高くなることが確認された。
従って、フマール酸にナイシンを混合することで、フマール酸を単独で使用する場合に比して、グラム陰性菌に対して秀れた殺菌作用を発揮できるといえる(相乗効果の確認)。
実験例2
実験例2は、フマール酸とナイシンとの混合液がグラム陽性菌に対してどのような殺菌作用を発揮するのかを示すものである。
表2−1は、所定濃度の黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)含有溶液1mlを、何も加えない培地(無添加)、ナイシン20ppm含有培地、ナイシン20ppm溶液及びフマール酸0.02%(w/v)含有培地、ナイシン20ppm及びフマール酸0.05%(w/v)含有培地の各々10mlに添加したものを用意し、0時間,1時間,2時間,4時間,24時間経過後の各々の黄色ブドウ球菌の菌数を調べたものである。尚、図3は表2−1をグラフ化したものである。
Figure 0004309822
また、表2−2は、所定濃度のバチラス・ズブチリス(グラム陽性菌)含有溶液1mlを、何も加えない培地(無添加),ナイシン20ppm含有培地、ナイシン20ppm及びフマール酸0.02%(w/v)含有培地、ナイシン20ppm及びフマール酸0.05%(w/v)含有培地の各々の10mlに添加したものを用意し、0時間,1時間,2時間,4時間,24時間経過後の各々のバチラス・ズブチリスの菌数を調べたものである。尚、図4は表2−2をグラフ化したものである。
Figure 0004309822
上記表2−1,表2−2によれば、ナイシンの濃度が同一(20ppm)でありながら、該ナイシンにグラム陽性菌に対して殺菌作用を有しないとされるフマール酸(0.02%(w/v)及び0.05%(w/v))を加えることで、グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌及びバチラス・ズブチリス)の菌数の減少率が明らかに高くなることが確認された。
従って、ナイシンにフマール酸を混合することで、ナイシンを単独で使用する場合に比してグラム陽性菌に対して秀れた殺菌作用を発揮できるといえる(相乗効果の確認)。
実験例3
実験例3は、本実施例の殺菌剤を構成するフマール酸とナイシンの有効濃度範囲を確認すべく行ったものである。
実験例3は、濃度が0.03%乃至0.1%(w/v)に設定されたフマール酸と、濃度が1ppm乃至100ppmに設定されたナイシンとを、1:1の割合で夫々混合して、種々のフマール酸・ナイシン溶液を調製し、夫々のフマール酸・ナイシン溶液をレジオネラ菌及び黄色ブドウ球菌に接触させて、これら双方の菌に対して殺菌作用が維持されるか否かの実験である(下記表3,表4参照)。
Figure 0004309822
Figure 0004309822
表3,表4によれば、ナイシン濃度を100ppmに設定した場合、フマール酸の濃度が0.03%(w/v)よりも低くなるとレジオネラ菌に対する殺菌作用が良好に発揮されなくなることが確認され、また、フマール酸濃度を0.1%(w/v)に設定した場合、ナイシンの濃度が1ppmよりも低くなると、黄色ブドウ球菌に対する殺菌作用が良好に発揮されなくなることが確認された(下限濃度の確認)。
一方、ナイシン濃度を100ppmに設定した場合、フマール酸の濃度が0.1%(w/v)よりも高くなると、フマール酸のレジオネラ菌に対する殺菌作用にほとんど変化が見られなくなることが確認され、また、フマール酸濃度を0.1%(w/v)に設定した場合、ナイシンの濃度が100ppmよりも高くなると、ナイシンの黄色ブドウ球菌に対する殺菌作用にほとんど変化が見られなくなることが確認された(上限濃度の設定)。
従って、ナイシン濃度を100ppmに設定した場合、フマール酸の濃度の下限は0.03%(w/v)とし、フマール酸濃度を0.1%(w/v)に設定した場合、ナイシンの濃度の下限は1ppmとすることで、グラム陰性菌(レジオネラ菌)及びグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌)に対して良好な殺菌作用を発揮できるといえる。
また、ナイシン濃度を100ppmに設定した場合、フマール酸の濃度の上限は0.1%(w/v)とし、フマール酸濃度を0.1%(w/v)に設定した場合、ナイシンの濃度の上限は100ppmとすることで、必要以上にフマール酸及びナイシンを使用してコスト過剰となることを防止できるといえる。
尚、ナイシン濃度を1ppmに設定した場合と、フマール酸濃度を0.03%(w/v)に設定した場合とについても上記と同様の試験を行い、上記と同様の結果が得られた。
よって、フマール酸とナイシンの有効濃度範囲は、フマール酸の濃度は0.03%乃至0.1%(w/v)、ナイシンの濃度は1ppm乃至100ppmであるといえる。
実験例4
実験例4は、実験例3で確認した濃度範囲のフマール酸及びナイシンの混合割合を1:1とせずに、種々変化させて調製した場合においても良好な殺菌作用が発揮されるかどうかを確認すべく行ったものであり、具体的には実験例3で確認した濃度範囲のフマール酸及びナイシンを、種々の混合割合で混合し、レジオネラ菌及び黄色ブドウ球菌に接触させた(下記表5,表6参照)。
Figure 0004309822
Figure 0004309822
表5,表6は、0.2%(w/v)フマール酸液と10ppmナイシン液を用い、実験例3で確認した濃度範囲のフマール酸及びナイシンの混合割合を1:1とするのではなく種々の割合となるように混合した際のレジオネラ菌及び黄色ブドウ球菌に対する殺菌作用を示すものである。
表5,表6によれば、種々の混合割合で混合されたフマール酸・ナイシン混合液は、実験例3において確認した濃度範囲内で混合されているのであれば、レジオネラ菌及び黄色ブドウ球菌に対して良好な殺菌作用を発揮していることが確認された。
従って、フマール酸及びナイシンは、実験例3において確認した濃度範囲内であれば、混合割合に関係なくグラム陰性菌(レジオネラ菌)及びグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌)に対して秀れた殺菌作用を発揮できるといえる。
実験例5
実験例5は本実施例の殺菌剤に乳酸を加えることで、フマール酸の濃度が実験例3において確認された下限濃度以下であっても殺菌作用を良好に発揮できることを確認したものである。
即ち、フマール酸は、前述のように、水に溶けることができるフマール酸の濃度は非常に低く、即ち、フマール酸に対する水の量が非常に多い状態となる為、pHは該水の影響により中性側へ上昇する。
そこで、フマール酸を含む本実施例の殺菌剤に、元々液状を呈する乳酸を加えることで、当該殺菌剤のpHの上昇を抑制せしめて良好な殺菌作用を発揮することを確認する実験を行った。
表7は、フマール酸0.03%(w/v),ナイシン100ppm及び乳酸0.03%(w/v)含有溶液、フマール酸0.02%(w/v),ナイシン100ppm及び乳酸0.04%(w/v)含有溶液を調整し、夫々の溶液を、レジオネラ菌に接触させて、0分(初発),10分,30分,2時間,8時間,24時間経過後の菌数を示したものである。
Figure 0004309822
上記表7によれば、フマール酸とナイシンとを混合した本実施例の殺菌剤に乳酸を添加すると、この殺菌剤におけるフマール酸の濃度が実験例3において確認された下限濃度以下であっても、レジオネラ菌を良好に殺菌できることが確認された。
即ち、本実施例の殺菌剤に乳酸を添加することで、水に対するフマール酸の殺菌作用を良好な状態に保ち、これにより、秀れた殺菌作用を発揮できるといえる。
尚、フマール酸に乳酸を添加した場合、フマール酸のレジオネラ菌に対する殺菌効果が下記表の通り向上することを実験によって確認している。図5,6は下記表8−1,8−2をグラフ化したものである。
Figure 0004309822
Figure 0004309822
次に、本実施例の殺菌剤の具体的製法について説明する。
本実施例の殺菌剤の具体例(三例)を示す。
第一例(フマール酸の濃度0.1%(w/v),ナイシンの濃度100ppmの溶液)
先ず、75%エタノール溶液にフマール酸を4%(w/v)となるようにして溶かす。
続いて、上記フマール酸溶液を水で40倍に希釈し、ナイシンを溶かして100ppm溶解としてフマール酸・ナイシン混合液を得る。
第二例(フマール酸の濃度0.03%乃至0.1%(w/v),ナイシンの濃度100ppmの溶液)
先ず、フマール酸を湯温に溶かし0.2%(w/v)溶液を作り、ここへ乳酸を0.8%(w/v)となるように滴下混合し、希釈してフマール酸の濃度が0.03%乃至0.1%(w/v)の範囲の溶液を作る。
続いて、乳酸を滴下して希釈した溶液にナイシンを100ppm混合溶解してフマール酸・ナイシン混合液を得る。
第三例(フマール酸の濃度0.06%(w/v),ナイシンの濃度12ppmの溶液)
先ず、味噌工場等、大豆加工工場から廃出された大豆煮汁にブドウ糖及び食塩を各々3%ずつ加え溶解する。
続いて、市販の乳酸菌(Lactococcus Lactis var Lactis)を5×106個/mlレベルとなるように添加して30℃,2日間培養する。
続いて、上記培養液を100℃で10分間加熱してからろ過して透明液を得る。
続いて、上記透明液にフマール酸が0.06%(w/v)となるように加え、フマール酸・ナイシン混合液を得る。尚、このフマール酸・ナイシン混合液のナイシン濃度を検定した結果、12ppmであった。
次に、本実施例の殺菌剤の具体的使用例について説明する。
(1) 浴槽水の殺菌
レジオネラ菌が750個/100ml、黄色ブドウ球菌が3×102個/g、及び、バチルス菌が7×105個/ml検出された家庭用循環風呂の浴槽水200リットル(40℃)にフマール酸100gを溶かした後、ナイシンを10g溶かし、3時間循環して菌の検出を行った。尚、この場合の浴槽水中のフマール酸の濃度は0.05%(w/v),ナイシン濃度は50ppmである。
その結果、浴槽水からは、レジオネラ菌,黄色ブドウ球菌及びバチルス菌のいずれの菌も検出されなかった。
これにより、本実施例の殺菌剤により浴槽水を良好に殺菌できるといえる。
(2) ナスの浅漬に対する殺菌
へたを取りよく水洗いした十全ナス4個(245g)をポリ袋に入れ、該ポリ袋の中に上記第三例の殺菌剤を300ml(粉末調味料及びpH調整剤(pH5.0)を適量溶解した。)を加えて該ポリ袋を密封し、10℃で4日間保存した。
その後、漬液中の菌の検出を行ったところ、大腸菌,バチルス菌とも検出されなかった。
これにより、本実施例の殺菌剤によりナスの浅漬を良好に殺菌できるといえる。
(3) キムチ漬に対する殺菌
食塩3%で下漬した白菜を8kgを用意し、別に市販のキムチ漬けの素で調整したタレ1.0kgに、上記第一例の殺菌剤1リットルを混合し、ここに食塩60gを添加してタレ全体を良く混合した後、白菜にタレをまぶしてポリ袋に入れ密封し、10℃で4日間保存した。
その後、漬液中の菌の検出を行ったところ、大腸菌群は含まれず、バチルス菌数は1.2×101であった。
これにより、本実施例の殺菌剤によりキムチ漬を良好に殺菌できるといえる。
(4) カット野菜に対する殺菌
先ず、キャベツ1kgを常法により切断、水洗いし、該切断したキャベツを次亜塩素酸ソーダ水及びビタミンC液に浸漬した。
続いて、上記第二例の混合液を水で4倍に希釈し、該溶液に前記切断したキャベツを10分間浸漬した後、水切りしてポリ袋に詰めて密封し、10℃で4日間保存した。
その後、キャベツに付着した菌の検出を行ったところ、大腸菌群は検出されず、バチルス菌数は76個/gであった。
これにより、本実施例の殺菌剤を従来の殺菌剤と併用してもキャベツを良好に殺菌できるといえる。
(5) 茹麺に対する殺菌
先ず、常法により麺を茹で上げ、該麺を冷流水により冷やした。この麺200gを上記第一例のフマール・ナイシン混合液に約10秒程浸漬して引き上げ、直ちにポリ袋包装した。
続いて、このポリ袋包装した麺を10℃で2日間保持した。
その後、麺に付着した菌の検出を行ったところ、大腸菌群は検出されず、バチルス菌は12個/gであった。
これにより、本実施例の殺菌剤により、茹で麺を良好に殺菌できるといえる。
尚、茹麺に対する殺菌としては、生麺製造時の生地の捏ね水として、上記第一乃至第三例のフマール酸・ナイシン混合液を練り込んで用いても良い。その場合、上記第一乃至第三例のフマール酸・ナイシン混合液をそのまま用いるか、あるいは、この混合液を適宜希釈した溶液を用いているが、このように生地の捏ね水にフマール酸・ナイシン混合液を練り込んだ生麺およびこれを茹でた茹麺は、良好に殺菌されていることを上記と同様の実験により確認している。
(6) 汁器類や調理器具の殺菌
上記第一乃至第三例のフマール酸・ナイシン混合液を、汁器類や調理器具の殺菌に用いることで、汁器類や調理器具の殺菌が良好に行われることを実験により確認している。
表1−1をグラフ化したものである。 表1−2をグラフ化したものである。 表2−1をグラフ化したものである。 表2−2をグラフ化したものである。 表8−1をグラフ化したものである。 表8−2をグラフ化したものである。

Claims (4)

  1. ラム陰性菌に対して殺菌作用を有するフマール酸と、グラム陽性菌に対して殺菌作用を有するナイシンと、乳酸と、リン酸及びクエン酸の双方若しくはいずれか一方とを有する殺菌剤であって、前記フマール酸の濃度は0.03%乃至0.1%(w/v)、前記ナイシンの濃度は1ppm乃至100ppmに設定されており、この殺菌剤は前記グラム陰性菌及びグラム陽性菌の双方を殺菌するものであることを特徴とする殺菌剤
  2. 請求項1記載の殺菌剤において、前記フマール酸の濃度を0.1%(w/v)としたことを特徴とする殺菌剤
  3. 請求項1,2いずれか1項に記載の殺菌剤において、前記ナイシンの濃度を100ppmとしたことを特徴とする殺菌剤
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載の殺菌剤において、前記乳酸の濃度を0.8%(w/v)としたことを特徴とする殺菌剤
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