JP4309040B2 - 光ファイバー、それを取り付けた歯科用レーザー治療装置、その製造方法及びその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯周病、歯槽膿漏等の歯科的疾病の予防および治療に好適な歯科用レーザー治療装置に関する。さらに詳しくは、先端部分にチタン化合物が付着された光ファイバーを取り付けた歯科用レーザー治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯周病および歯槽膿漏は、歯こうにたまった細菌が原因で歯茎が侵され、炎症が起き、さらに歯の周りの組織の深部へと炎症が進み、歯周ポケットという隙間ができるに至る。近年、レーザー光を歯牙患部に照射して切開、止血、消炎等の口腔内の治療を行ったり、う触予防、歯石・歯垢の除去を行ったりしているが、これに用いる医療用レーザー装置としては、照射プローブ本体内にレーザー光発生部を設けた装置が用いられている。
【0003】
しかし、従来の歯科へのレーザー光の応用は、上記したように、歯周病、歯槽膿漏等に対しての治療というより、細菌で侵された歯茎の炎症部や歯周ポケットの外科的に処置するのに用いられているに過ぎない。
【0004】
一方、酸化チタンを歯科用治療に応用した技術としては、光の照射を受けることにより酸化力を有する二酸化チタン等の光触媒物質を、歯牙へ接触するように配置ないし被覆することにより、う触や歯周疾患の原因である歯垢を分解させ、これら疾患の予防をする技術、具体的には二酸化チタンを粉末状とし、ゴム系高分子樹脂等と混和した液状物を、使用時、歯牙に塗布等して被覆する技術がが開示されている。発光物質として、燐光物質が挙げられている。(特開平9−175923号公報)
【0005】
また、金属担持チタニア微粉を含有する硬化体に適宜可視光線を照射して、該硬化体と周辺歯部を殺菌し、う触や歯周疾患の予防、悪臭防止を図る技術が開示されている。(特開平5−32516号公報)
【0006】
これらの技術も、歯周病等の予防技術であり、歯周病、歯槽膿漏等に対しての治療とはほど遠い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、歯周病、歯槽膿漏等の歯科的疾病の予防および治療に好適な歯科用レーザー治療装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、レーザー装置の光ファイバー先端部分にレーザー光で酸化チタンを付けた装置が劇的に歯周病を治療でき、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、同心円状の構造をなし、少なくとも中心となるコアとその外側を覆ったクラッドとさらにクラッドの外側を覆った保護層から構成され、先端部分はクラッドが露出している光ファイバーであって、その先端部分にチタン化合物が付着されてなる歯科用レーザー治療装置取り付け用光ファイバーである。
【0010】
また、本発明は、レーザー光を出射する光源とレーザー光を被治療部に照射させるための導光部とを有し、該導光部の少なくとも先端部分のレーザー光放射部が光ファイバーで形成された歯科用レーザー治療装置であって、前記光ファイバーが、同心円状の構造をなし、少なくとも中心となるコアとその外側を覆ったクラッドとさらにクラッドの外側を覆った保護層から構成され、その先端部分はクラッドが露出しており、かつその先端部分にチタン化合物が付着されてなる光ファイバーである歯科用レーザー治療装置である。
【0011】
また、本発明は、レーザー光を出射する光源とレーザー光を被治療部に照射させるための導光部とを有し、該導光部の少なくとも先端部分のレーザー光放射部が光ファイバーで形成された歯科用レーザー治療装置の、前記光ファイバーの先端部分の保護層を除去しクラッドを露出させた後、その光ファイバーの先端部分を酸化チタン粉末に接触させた後レーザー光を放射させ、チタン化合物を光ファイバーの先端部分に付着させて得られた歯科用レーザー治療装置である。
【0012】
また、本発明は、レーザー光を出射する光源とレーザー光を被治療部に照射させるための導光部とを有し、該導光部の少なくとも先端部分のレーザー光放射部が光ファイバーで形成された歯科用レーザー治療装置の、前記光ファイバーの先端部分の保護層を除去しクラッドを露出させた後、その光ファイバーの先端部分を酸化チタン粉末に接触させた後レーザー光を放射させ、チタン化合物を光ファイバーの先端部分に付着させる手段をとることを特徴とする歯科用レーザー治療装置の製造方法である。
【0013】
また、本発明は、レーザー光を出射する光源とレーザー光を被治療部に照射させるための導光部とを有し、該導光部の少なくとも先端部分のレーザー光放射部が光ファイバーで形成された歯科用レーザー治療装置の、前記光ファイバーの先端部分の保護層を除去しクラッドを露出させた後、その光ファイバーの先端部分を酸化チタン粉末に接触させた後レーザー光を放射させ、チタン化合物を光ファイバーの先端部分に付着させる手段をとることを特徴とする歯科用レーザー治療装置の使用方法である。
【0014】
本発明で用いられる光ファイバーは、石英系ファイバーであることができる。
【0015】
また、チタン化合物は、光ファイバーの先端部分の少なくともクラッド部に付着されていることが好ましい。チタン化合物の付着は、光ファイバーの先端部分を酸化チタン粉末に接触させた後、レーザー光を放射する手段によることが望ましい。さらに、本発明のチタン化合物は酸化チタンであることができる。
【0016】
また、前記レーザー光放射部は、前記導光部と一体でも構わないが、前記導光部に対して着脱自在に設けた構造をとることが機能的であり、好ましい。
【0017】
本発明の治療装置においては、光ファイバーの先端部分を酸化チタン粉末に接触させレーザー光を放射した際、レーザー光が、激しいエネルギーで破壊されたクラッドの亀裂部を通してクラッドに付着された酸化チタンに接触し反応を起こさしめ、それによって生じた物質が少なくとも治療に対して大きな役割を果たしていると思われる。反応によって生じたチタン化合物は少なくとも低次酸化チタンを含んだ酸化チタンと思われる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0019】
本発明の歯科用レーザー治療装置の基本となる構造は、レーザー光を出射する光源とレーザー光を被治療部に照射させるための導光部とを有し、該導光部の少なくとも先端部分のレーザー光放射部が後述する特殊の光ファイバーで形成されているものである。本発明の歯科用レーザー治療装置に用いる制御手段は、該光源のオン・オフ、光源からレーザー光放射部までの導光部の遮断・解放や、照射時間を設定するためのタイマーやスイッチを設けることが好ましい。本発明においては、市販の歯科用レーザー治療装置を改造して使うことができる。市販装置としては、「コンタックレーズ(CONTACLASE;登録商標)」(株式会社エス・エル・ティ・ジャパン製)が挙げられる。
【0020】
本発明の歯科用レーザー治療装置に用いる光源は、特に限定されず、可視光レーザー、赤外線レーザー等いかなるものも用いることができ、例えば、Nd−YAGレーザー、ルビーレーザー、Nd−ガラスレーザー、LD−YAGレーザー、Er−YAGレーザー等が挙げられるが、Nd−YAGレーザーが好ましい。
【0021】
本発明の歯科用レーザー治療装置に用いる導光部は、光源からの光を導光部の先端部分に設けたレーザー光放射部まで光を導くものであり、そのレーザー光放射部の少なくとも先端部分は光ファイバーで形成されている。光ファイバーは、同心円状の構造をなし、少なくとも中心となるコア、その外側を覆ったクラッドとさらにクラッドの外側を覆った保護層から構成されている。そして、図1に示したように、光ファイバーの先端部分は保護層が除かれクラッドが表面に露出している。
【0022】
本発明で用いられる光ファイバーとしては、石英系の光ファイバーが好ましい。他に、ジルコニウム系のフッ化物ガラスファイバー等が挙げられる。
【0023】
光ファイバーの太さは、特に限定されないが、直径1.5mm以下のものが好ましく用いられる。さらに好ましくは1.0mm以下のものである。
【0024】
光ファイバーの長さは、特に限定されないが、導光部を患部である歯周ポケットに接触させることを考えれば、例えばハンドピースを使って施術する場合は、ハンドピース先端より5mm以上突出することが好ましい。
【0025】
光ファイバーの形状は、真っ直ぐであっても良いが、レーザー光放射部を曲率させる方が作業性がよい。
【0026】
本発明のレーザー光放射部の光ファイバーは、治療後、唾液等が付くため衛生上使い捨てであることが好ましく、したがって、その先端部分は、サファイアナイフ等のファイバーカッターで容易に切断できるようにするか、または取り外すことができるように、着脱自在とすることが好まい。これらの手段は従来公知の手段が用いられる。
【0027】
本発明の歯科用レーザー治療装置のレーザー光放射部に設けられた光ファイバーの先端部分は保護層が除かれクラッドが表面に露出されている。その光ファイバーの先端部分にはチタン化合物が付着されている。チタン化合物は、光ファイバーの少なくともクラッド部に付着されていることが必要である。保護層の除去には、ライター等の火で焼き切るにが効率的であり、操作上好ましい。
【0028】
チタン化合物を光ファイバーの先端部分に付着する方法は、歯科用レーザー治療装置のレーザー光放射部の少なくとも先端部分をなす光ファイバーの先端部分のクラッドを保護層を剥がすことにより露出させた後、該部分を酸化チタン粉末に接触させた後、レーザー光を放射させる方法がシンプルであり、また最も効果的である。このような方法で光ファイバーの先端部分にチタン化合物を付着させれば、本発明の歯科用レーザー治療装置が得られる。用いられる酸化チタンはルチル型でもアナターゼ型でもよい。酸化チタンの平均粒子径は、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0029】
本発明の装置を用いて治療を行うに際しては、治療操作中にチタン化合物を光ファイバーの先端部分に付着させることが好ましい。すなわち、前記レーザー光放射部の少なくとも先端部分をなす光ファイバーの先端部分のクラッドを保護層を剥がすことにより露出させた後、該部分を酸化チタン粉末に接触させた後、レーザー光を放射させ、チタン化合物を付着させる。次いで、レーザー光放射部を口腔内に挿入し、光ファイバー先端を患部に接触させるか、あるいは極近まで接近させた後に、患部に向けて、直接レーザー光を放射する。歯周病の場合は、光ファイバー先端を歯周ポケットに直接挿入し治療を行う。
【0030】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
市販の歯科用レーザー治療装置「コンタックレーズ(CONTACLASE;登録商標)」(株式会社エス・エル・ティ・ジャパン製)(光源Nd−YAGレーザー(波長1.06μm)、石英の光ファイバー)を用いて、該装置の導光部についた光ファイバー先端部分の保護層をライターの火で焼き切りクラッドをむき出しにした後、該光ファイバーの先端部分を酸化チタン粉末の入った25mlビンの中の粉末層に挿入させた。次いで、500mJ、10ppsのパワーでレーザー光を放射し先端部分を酸化チタンで加工した。なお、別途光ファイバーの先端部分に酸化チタン等のチタン化合物が付着していることを位相差顕微鏡で確認している。この装置を使って、歯周病に悩む患者Aさんの患部にレーザー光を放射しながら、処置したところ、うみが止まり、揺れている歯の動揺がなくなり、治癒した。その後、再発はなく、Aさんは歯周病に係わる諸症状に悩まされていない。
【0031】
(実施例2)
実施例1と同様にして歯周病に悩む患者Bさんに対して処置をした。患者Bさんの場合は、約2週間に一回の頻度で処置を行ったところ、3回目の治療を終えた30日後には、腫れ、痛みも消え、うみも止まり、揺れている歯の動揺がなくなり、完治した。その後、再発はなく、Bさんも歯周病に係わる諸症状に悩まされていない。
【0032】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明の歯科用レーザー治療装置を用いることにより、歯周病、歯槽膿漏等の疾患が容易に、かつ確実に治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の歯科用レーザー治療装置に用いる光ファイバー先端部分の構造を示す模式図である。
【符号の説明】
1…コア
2…クラッド
3…保護層
Claims (8)
- レーザー光を出射する光源とレーザー光を被治療部に照射させるための導光部とを有し、該導光部の少なくとも先端部分のレーザー光放射部が光ファイバーで形成された歯科用レーザー治療装置であって、前記光ファイバーが、同心円状の構造をなし、少なくとも中心となるコアとその外側を覆ったクラッドとさらにクラッドの外側を覆った保護層から構成され、その先端部分はクラッドが露出しており、かつその先端部分に酸化チタン粉末が付着されてなる光ファイバーである歯科用レーザー治療装置。
- 酸化チタン粉末の付着が、光ファイバーの先端部分を酸化チタン粉末に接触させた後、レーザー光を放射する手段によることを特徴とする請求項1記載の歯科用レーザー治療装置。
- レーザー光を出射する光源とレーザー光を被治療部に照射させるための導光部とを有し、該導光部の少なくとも先端部分のレーザー光放射部が光ファイバーで形成された歯科用レーザー治療装置の、前記光ファイバーの先端部分の保護層を除去しクラッドを露出させた後、その光ファイバーの先端部分を酸化チタン粉末に接触させた後レーザー光を放射させ、酸化チタン粉末を光ファイバーの先端部分に付着させて得られた歯科用レーザー治療装置。
- 光ファイバーが石英系ファイバーである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の歯科用レーザー治療装置。
- 酸化チタン粉末が光ファイバーの先端部分の少なくともクラッド部に付着されてなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の歯科用レーザー治療装置。
- 前記レーザー光放射部を前記導光部に対して着脱自在に設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の歯科用レーザー治療装置。
- レーザー光を出射する光源とレーザー光を被治療部に照射させるための導光部とを有し、該導光部の少なくとも先端部分のレーザー光放射部が光ファイバーで形成された歯科用レーザー治療装置の、前記光ファイバーの先端部分の保護層を除去しクラッドを露出させた後、その光ファイバーの先端部分を酸化チタン粉末に接触させた後レーザー光を放射させ、酸化チタン粉末を光ファイバーの先端部分に付着させる手段をとることを特徴とする歯科用レーザー治療装置の製造方法。
- レーザー光を出射する光源とレーザー光を被治療部に照射させるための導光部とを有し、該導光部の少なくとも先端部分のレーザー光放射部が光ファイバーで形成された歯科用レーザー治療装置の、前記光ファイバーの先端部分の保護層を除去しクラッドを露出させた後、その光ファイバーの先端部分を酸化チタン粉末に接触させた後レーザー光を放射させ、酸化チタン粉末を光ファイバーの先端部分に付着させる手段をとることを特徴とする歯科用レーザー治療装置の使用方法。
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