JP4304912B2 - 動きベクトル検出装置及び方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロックマッチングにより動きベクトルを検出する動きベクトル検出装置及び方法に関し、特にフィールド周波数の変換、フレーム周波数の変換、プログレッシブ画像からインタレース画像への変換技術やMPEGによる圧縮技術に適用される動きベクトル検出装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビ放送の走査方式としては、従来から水平走査線を1本おきに飛越して走査するインタレース走査方式が最も広く採用されている。このインタレース走査方式では、入力画像信号に内挿処理を施して、50GHzから100GHzへフィールド周波数の変換や、インタレース走査からプログレッシブ走査へ走査変換を行なうことにより、画面全体がちらついて見える面フリッカ妨害を抑え、画面品質の劣化を防止する。
【0003】
上述の内挿処理を行うためには、入力された画像信号において、現フィールドである参照フィールドと、現フィールドから1フレーム前の基準フィールドとの間で差分を算出し、この算出した差分に基づいて動きベクトルの検出を行う。この動きベクトルの検出は、一般に実用化されている方式として、基準フィールドを複数の基準ブロックに分割し、このブロック毎に参照フィールドにおける探索ブロックとパターンマッチングを行うブロックマッチング法が一般的に用いられている。
【0004】
以下、ブロックマッチング法について説明する。図9に示すように、基準フィールド80における基準ブロック101と、参照フィールド90における探索ブロック103はそれぞれ、M×Nの画素のサイズで表される。探索ブロック103の探索範囲104は、任意に設定される。
【0005】
このブロックマッチング法では、基準フィールド80における基準ブロック101と最も高い相関度を示すブロックを、参照フィールド90における探索範囲104内を移動する探索ブロック103の集合から検出する。そして当該検出された探索ブロック103と基準ブロック101間の位置のずれ(移動の方向と大きさ)を動きベクトルとする。
【0006】
ここで、上記基準ブロック101と最も高い相関度を示す探索ブロック103の判定は、先ず探索ブロック103の各画素値について、基準ブロック101の対応する画素値との差分をとり、その差によって示される評価値、例えば差分絶対値和を求める。次に、上述の判定操作を全ての探索ブロック103について行い、それぞれ求めた評価値和、すなわち各差分絶対値和のうちから最小のものを求める。この最小の差分絶対値和を与える探索ブロック103を、基準ブロック101と最も高い相関度を示すブロックとする。
【0007】
ここで各ブロックのサイズは、例えば図10(a)に示すように8×4画素のサイズとし、各ブロック101,103の画素位置は、水平方向と垂直方向でそれぞれ(x、y)で表される。また原点の画素の座標を、(0、0)としたときに、xは、BX1〜BX2の範囲内に位置し、またyは、BY1〜BY2の範囲内に位置することとなる。
【0008】
探索範囲104のサイズは、例えば図10(b)に示すように、16×5画素のサイズとし、各画素位置は、水平方向と垂直方向で、それぞれ(xs、ys)で表される。また原点の座標を(0,0)としたときに、xsは、MX1〜MX2の範囲内に位置し、ysはMY1〜MY2の範囲内に位置することとなる。
【0009】
図10(c)は、探索範囲104において、(MX1、MY1)の画素位置を探索する場合について示した図である。かかる場合、探索ブロック103の原点(0,0)が、探索範囲104の画素位置(MX1、MY1)に移動する。そして、基準ブロック101の画素に対応させて、探索ブロック103内の各画素位置における画素値を検出する。
【0010】
(21)式は、差分絶対値和D(xs、ys)を求める式であり、Rは参照フィールドの画素値を、Sは基準フィールドの画素値を示す。また(22)式は、最小となる差分絶対値和minD(xs、ys)を求めている。(23)式は、最小となる差分絶対値和から動きベクトルを求める式であり、Vxが動きベクトルの水平成分に相当し、Vyが動きベクトルの垂直成分に相当する。
【0011】
【数1】
【0012】
【数2】
【0013】
【数3】
【0014】
次に上述したブロックマッチング法に基づく動きベクトルを検出する動きベクトル検出回路の構成例について説明する。
【0015】
図11は、従来の動きベクトル検出回路6の全体構成である。この動きベクトル検出回路6は、画像格納用メモリ61と、演算部62と、判定部63と、動きベクトル格納用メモリ64と、制御部65とを備える。
【0016】
画像格納用メモリ61は、例えば汎用DRAMメモリ等で構成され、順次供給される基準フィールド80と参照フィールド90を所定のアドレスに格納する。
【0017】
演算部62は、制御部65から基準ブロック101の原点の座標と、探索範囲104の原点の座標を受け取る。この演算部62は、画像格納用メモリ61に格納されている基準フィールド80から、制御部65から受け取った座標を原点とする基準ブロック101を切り出す。また、この演算部62は、画像格納用メモリ61に格納されている参照フィールド90から、制御部65から受け取った座標を原点とする探索範囲104内に位置する探索ブロック103を切り出す。更に、この演算部62は、切り出した基準ブロック101と、探索ブロック103との差分絶対値和を計算する。そして算出した差分絶対値和を判定部63へ送信する。演算部62は、この操作を、探索範囲104内を移動する全ての探索ブロック103について行う。
【0018】
判定部63は、演算部62において算出された差分絶対値和を順次受け取る。またこの判定部63は、受け取った差分絶対値和の中から、最小となる差分絶対値和を与える画素を判定し、当該画素の座標(xs、ys)を特定する。また、この判定部63は、この特定した画素の座標と、基準ブロック101の原点の画素との間で動きベクトルを求める。更にこの判定部63は、求めた動きベクトルを動きベクトル格納用メモリ64に書き込む。
【0019】
動きベクトル格納用メモリ64は、判定部63から基準画素毎(ブロック単位で)に動きベクトルが書き込まれる。この動きベクトル格納用メモリ64に格納された動きベクトルは、例えば図示しない画像シフト部により読み出され、基準画素のシフトさせる際の基準となる。
【0020】
制御部65は、接続された演算部62及び判定部63に対して、基準ブロック101の原点の座標と探索範囲104の原点の座標を指示し、フローを制御する。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のブロックマッチング法は、画面全体に表示される本来の画像の動きに関係なく、単に基準ブロックと誤差の総和が最小となる探索ブロックを最優先して動きベクトルを求めるため、変換画像の画質が劣化する場合がある。
【0022】
図12は、斜め線等のエッジ中央部におい画質が劣化した例を示している。これは、基準ブロックと誤差の総和が最小となる探索ブロックを最優先して動きベクトルを求めた結果、実際の画像の動きと無関係な動きベクトルが求まり、図13に示すように動きベクトルの分布がばらついたためである。
【0023】
このため、実際の画像の動きに適合した動きベクトルを求めることにより、動きベクトルのばらつきを解消する必要があった。
【0024】
そこで本発明は、上述したような実情に鑑みて提案されたものであり、実際の画像の動きに適合した動きベクトルを求めることにより、変換画像の劣化を防止することができる動きベクトル検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の課題を解決するために、入力される基準フィールドの基準画素につき、ブロックマッチング法により動きベクトルを検出する動きベクトル検出装置において、基準フィールドから切り出した基準画素を原点とする基準ブロックと、参照フィールドから切り出した探索範囲内を移動する探索ブロックとの間で、画素値の差分絶対値和を順次演算する演算手段と、上記探索範囲において最小となる差分絶対値和と画素位置と、上記探索範囲の互いに直交する2つの方向のうちの一方の第1の方向の成分に対応する上記第1の方向と直交する第2の方向のライン毎に最小となる差分絶対値和と画素位置とを識別する識別手段と、上記探索範囲において最小となる上記差分絶対値和と、上記基準画素の上記第1の方向の負方向に隣接する画素の動きベクトルに基づく差分絶対値和との差分絶対値を求め、比較する比較手段と、上記比較手段により求めた上記差分絶対値が閾値より小さい場合に、上記基準画素における動きベクトルの第1の方向成分を、上記隣接する画素の動きベクトルの第1の方向成分に合致するように特定し、上記基準画素における動きベクトルの第2の方向成分を、特定した上記第1の方向成分に対応する第2の方向のラインにおいて差分絶対値和の最小となる画素位置の第2の方向成分に特定し、上記比較手段により求めた上記差分絶対値が閾値以上の場合は、上記探索範囲において最小となる差分絶対値和の画素位置を動きベクトルと特定する動きベクトル特定手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、入力される基準フィールドの基準画素につき、ブロックマッチング法により動きベクトルを検出する動きベクトル検出方法において、基準フィールドから切り出した基準画素を原点とする基準ブロックと、参照フィールドから切り出した探索範囲内を移動する探索ブロックとの間で、画素値の差分絶対値和を順次演算し、上記探索範囲において最小となる差分絶対値和と画素位置と、上記探索範囲の互いに直交する2つの方向のうちの一方の第1の方向の成分に対応する上記第1の方向と直交する第2の方向のライン毎に最小となる差分絶対値和と画素位置とを識別し、上記探索範囲において最小となる上記差分絶対値和と、上記基準画素の上記第1の方向の負方向に隣接する画素の動きベクトルに基づく差分絶対値和との差分絶対値を求め、求めた上記差分絶対値が閾値より小さい場合に、上記基準画素における動きベクトルの第1の方向の成分を、上記隣接する画素の動きベクトルの第1の方向の成分に合致するように特定し、上記基準画素における動きベクトルの第2の方向の成分を、特定した上記第1の方向の成分に対応する上記第1の方向と直交する第2の方向のラインにおいて差分絶対値和が最小となる画素位置の第2の方向の成分に特定し、求めた上記差分絶対値が閾値以上の場合は、上記探索範囲において最小となる差分絶対値和の画素位置を動きベクトルと特定することを特徴とする。
【0027】
本発明では、基準ブロックと探索ブロックとの間で、画素値の差分絶対値和を順次演算し、上記探索範囲において最小となる差分絶対値和と画素位置と、上記探索範囲の互いに直交する2つの方向のうちの一方の第1の方向の成分に対応する上記第1の方向と直交する第2の方向のライン毎に最小となる差分絶対値和と画素位置とを識別し、基準画素における動きベクトルの垂直成分を、上記隣接する画素の動きベクトルの第1の方向の成分に合致するように特定する。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態として、本発明を適用した動きベクトル検出方法について説明する。
【0029】
動きベクトルによる動き補正動作
本発明を適用した動きベクトル検出方法は、図1に示すように、入力された画像信号において、基準フィールド30と、参照フィールド40との間で差分を算出し、この算出した差分に基づいて動きベクトルの検出を行う。また、この動きベクトル検出方法は、ブロックマッチング法を取り入れ、基準フィールド30を複数の基準ブロック51に分割し、この基準ブロック51毎に参照フィールド40における探索ブロック53とパターンマッチングを行う。
【0030】
図1に示すように、基準フィールド30における基準ブロック51と、参照フィールド40における探索ブロック53はそれぞれ、M×Nの画素のサイズで表される。探索ブロック53の探索範囲54は任意に設定される。
【0031】
このブロックマッチング法では、基準フィールド30における基準ブロック51と最も高い相関度を示すブロックを、参照フィールド40における探索範囲54内を移動する探索ブロック53から検出する。そして当該検出された探索ブロック53と基準ブロック51間の位置のずれ(移動の方向と大きさ)を動きベクトルとする。
【0032】
ここで、上記基準ブロック51と最も高い相関度を示す探索ブロック53の判定は、先ず探索ブロック53の各画素値について、基準ブロック51の対応する画素値との差分をとり、その差によって示される評価値、例えば差分絶対値和を求める。次に、上述の判定操作を全ての探索ブロック53について行い、それぞれ求めた評価値和、すなわち各差分絶対値和のうちから最小のものを求める。この最小の差分絶対値和を与える探索ブロック53を、基準ブロック51と最も高い相関度を示すブロックとし、かかるブロックの原点の画素63と、基準ブロック51の原点の画素との間で特定することができるベクトルを動きベクトルとする。
【0033】
動きベクトルのばらつき対策
本発明を適用した動きベクトル検出方法では、上述のブロックマッチング法を利用した動きベクトル検出に加えて、更に以下のコンセプトから、動きベクトルの検出を行う。
【0034】
図2は、探索範囲54内に割り当てられた全探索ブロック53について求めた差分絶対値和の分布傾向の、基準ブロック51と探索範囲54にエッジを含む場合における一例を示している。この図2より、差分絶対値和の高い領域は、基準ブロック51と探索ブロック53との画素値が著しく異なる領域である。一方、図2において、凹部を形成している差分絶対値和の低い領域は、基準ブロック51と探索ブロック53との画素値が近似する領域である。すなわち、画素値が近似する領域に対して動きベクトルを特定することで、高画質化、高圧縮化を実現することができる。
【0035】
探索範囲54は、垂直成分(ys)に対応した水平ラインが割り当てられている。各水平ラインは、それぞれ差分絶対値和の極小値を有し、これらの極小値が上述した差分絶対値和の低い領域を形成している。以下、これらの水平ライン毎の極小値をライン極小値と称する。
【0036】
また、通常のブロックマッチング同様に探索範囲54全体の中から特定した差分絶対値和の極小値を領域極小値と称する。すなわち各ライン極小値の中で最小となる差分絶対値和は、この領域極小値に相当する。図2において示されるように、黒丸で示した領域極小値は、他のライン極小値と比較しても大差無い。このため、この領域極小値を示す画素の代わりに、ライン極小値を示す画素について、基準ブロック51の原点の画素との間で動きベクトルを特定しても、画質にほとんど影響が及ばないことになる。
【0037】
すなわち、本発明を適用した動きベクトル検出方法では、かかる性質に着目し、ライン極小値を有する画素の中から本来の画像の動きに最も適合する画素を選択し、基準ブロック51の原点の画素との間で動きベクトルを特定する。
【0038】
動きベクトルの検出手順
本発明を適用した動きベクトル検出方法における実際の検出手順について、図3に基づいて詳細に説明する。
【0039】
まず、ステップS11において、基準フィールド30における基準ブロック51と、参照フィールド40における探索範囲54内部を移動する探索ブロック53との間で、差分絶対値和を演算する。
【0040】
この差分絶対値和の演算は、例えば図4に示すように、ブロックサイズを図4(a)に示すように8×4画素のサイズとし、各ブロック51,53の画素位置は、水平方向と垂直方向でそれぞれ(x、y)で表される。また原点の画素の座標を、(0、0)としたときに、水平方向の座標xは、図4(a)に示すBX1〜BX2の範囲内に位置し、また垂直方向の座標yは、BY1〜BY2の範囲内に位置する。探索範囲54のサイズは、例えば図4(b)に示すように、16×5画素のサイズとし、探索範囲54内の各画素位置は、水平方向と垂直方向で、それぞれ(xs、ys)で表される。また原点の座標を(0,0)としたときに、xsは、図4(b)に示すMX1〜MX2の範囲内に位置し、ysはMY1〜MY2の範囲内に位置する。この探索範囲54内の座標(xs、ys)の差分絶対値和D(xs、ys)は以下の(11)式により表される。ここでRは参照フィールドの画素値を、Sは基準フィールドの画素値を示す。
【0041】
【数4】
【0042】
このステップS11において、探索範囲54内部を移動する全ての探索ブロック53につき差分絶対値和を演算した後、ステップS12に移行する。
【0043】
ステップS12では、算出した差分絶対値和の中から先ず領域極小値を選び出し、当該領域極小値を示す画素の座標を特定する。
【0044】
次にステップS13へ移行し、算出した差分絶対値和の中から、水平ライン毎にライン極小値を選び出し、当該ライン極小値を示す画素の座標を特定する。
【0045】
次にステップS14へ移行し、基準ブロック51の原点の画素から垂直負方向に隣接する基準ブロックの原点の画素(以下、この画素を隣接画素と称する)に基づいて本来の画像の動きを識別するため、動きベクトルに関する情報を取得する。図4(c)に示す基準ブロック51の各画素における動きベクトルは上段から順次求められるところ、この隣接画素は現在ブロックマッチングを行なっている基準ブロック原点の画素70よりも先に動きベクトルが求められるため、本来の画像の動きを識別するためのパラメータとなりうる。すなわち、この隣接画素の動きベクトル、及び当該動きベクトルに基づく差分絶対値和を、隣接画素情報として取得することにより、本来の画像の動きを識別することができる。ちなみに、この隣接画素の動きベクトルに基づく差分絶対値和は、隣接画素と、及び隣接画素から動きベクトル分ずらした画素69における参照フィールド40における画素69とを基準として求められる差分絶対値和である。以下、この差分絶対値和を、差分絶対値和Kと称する。
【0046】
次にステップS15に移行し、先ず差分絶対値和Kと領域極小値との差分絶対値を求める。基準ブロックの原点の画素の動きベクトルを、隣接画素の動きベクトルに合わせることにより、本来の画像の動きに適合させるためには、基準ブロックの原点の画素と隣接画素の動きのパターンが類似している必要があり、このためには、両者のライン極小値の配列傾向(差分絶対値和の分布傾向)が類似している必要がある。このライン極小値の配列傾向が類似しているか否か判別するために、差分絶対値和Kと領域極小値の差分絶対値を求めて比較を行う。
【0047】
このステップS15において、求めた差分絶対値が所定の閾値より大きい場合には、隣接画素と、基準ブロックの原点の画素におけるライン極小値の配列傾向が異なることを示唆しており、かかる場合にはステップS16へ移行する。また、求めた差分絶対値が所定の閾値より小さい場合には、隣接画素と、基準ブロックの原点の画素におけるライン極小値の配列傾向が類似していることを示唆しており、かかる場合にはステップS17に移行する。なお、この所定の閾値は、動きベクトルのばらつき具合を考慮して任意に設定される。
【0048】
ステップS16に移行した場合には、隣接画素の動きベクトルに合わせても本来の画像の動きに適合させることができないため、通常のブロックマッチング法と同様に、基準ブロック51と最も高い相関度を示す探索ブロック53により動きベクトルを求める。すなわち、領域極小値を有する画素と、基準ブロック51の原点の画素との間で求める動きベクトルを特定する。
【0049】
ステップS17に移行した場合に、求める動きベクトルを隣接画素の動きベクトルに合わせる。求める動きベクトルの水平成分、垂直成分をそれぞれ(Vx、Vy)とし、また隣接画素の動きベクトルの水平成分、垂直成分をそれぞれ(Vxu、Vyu)としたときに、Vyについては、Vy=Vyuとなるように設定する。そして、原点の座標から垂直方向にVyだけ移動させた水平ライン上においてライン極小値を有する画素へ動くように動きベクトルを合わせる。図5に示す例において、Vyu=+1である場合には、原点の座標からVyだけ移動させた水平ラインは、ys=+1の水平ラインである。この水平ラインにおけるライン極小値を有する画素の水平成分は、xs=−2である。従って、動きベクトルは、水平成分Vxが−2であり、また垂直成分Vyが+1として特定されることとなる。
【0050】
すなわち、本発明を適用した動きベクトル検出方法では、求める動きベクトルの垂直成分を隣接画素の動きベクトルに合致させ、水平成分を、特定した垂直成分に対応する水平ライン上においてライン極小値を有する画素に応じて特定する。これにより、図6に示すように、本来の画像の動きに適合させることができるため、動きベクトルのばらつきを抑えることができ、ひいては,図7に示すように、変換画像の劣化を防止することができる。
【0051】
次に、本発明に係る動きベクトル検出方法を実施するための動きベクトル検出装置について説明する。
【0052】
動きベクトル検出装置の構成例
図8は、上述の動きベクトル検出方法を用いる動きベクトル検出装置1の構成図を示している。この動きベクトル検出装置1は、画像格納用メモリ11と、演算部12と、判定部13と、動きベクトル選択部14と、動きベクトル格納用メモリ15と、制御部16と、第1のライン遅延部17と、第2のライン遅延部18とを備える。
【0053】
画像格納用メモリ11は、例えば汎用DRAMメモリ等で構成され、順次供給される基準フィールド30と参照フィールド40を所定のアドレスに格納する。
【0054】
演算部12は、制御部16から基準ブロック51の原点の座標と、探索範囲54の原点の座標を受け取る。この演算部12は、画像格納用メモリ11に格納されている基準フィールド30から、制御部16から受け取った座標を原点とする基準ブロック51を切り出す。またこの演算部12は、画像格納用メモリ11に格納されている参照フィールド40から、制御部16から受け取った座標を原点とする探索範囲54内に位置する探索ブロック53を切り出す。更に、この演算部62は、切り出した基準ブロック51と、探索ブロック53との差分絶対値の総和を計算する。そして算出した差分絶対値和を判定部13へ送信する。演算部12は、この操作を探索範囲54内を移動する全ての探索ブロック53について行う。
【0055】
判定部13は、制御部16からの制御に基づき、演算部12において算出された差分絶対値和を順次受け取る。またこの判定部13は、受け取った差分絶対値和の中から、領域極小値、ライン極小値を与える画素を判定し、当該画素の座標を特定する。また、この判定部13は、領域極小値、ライン極小値、並びにこれらの極小値を与える画素の座標を動きベクトル選択部14へ送信する。
【0056】
動きベクトル選択部14は、判定部13から、領域極小値、ライン極小値、並びにこれらの極小値を与える画素の座標を受信する。また、動きベクトル選択部14は、第1のライン遅延部17或いは第2のライン遅延部から、隣接画素の動きベクトル及び当該動きベクトルに基づく差分絶対値和Kを含む隣接画素情報を取り込む。動きベクトル選択部14は、隣接画素と、基準ブロックの原点の画素との間で、それぞれのライン極小値の配列傾向を判断した上で、ステップS16若しくはステップS17に示す方法により動きベクトルを特定する。更にこの動きベクトル選択部14は、特定した動きベクトルを動きベクトル格納用メモリ15に書き込む。
【0057】
動きベクトル格納用メモリ15は、動きベクトル選択部14において特定された動きベクトルが書き込まれる。この動きベクトル格納用メモリ15に格納された動きベクトルは、例えば図示しない画像シフト部により読み出され、基準画素のシフトさせる際の基準となる。
【0058】
制御部16は、接続された演算部12及び判定部13に対して、基準ブロック51の原点の座標と探索範囲54の原点の座標を指示し、また、動きベクトル選択装置へ隣接画素情報を送信し、更にフロー全体を制御する。
【0059】
第1のライン遅延部17は、判定部13から出力される各種情報を格納し、1ライン分遅延させて動きベクトル選択部14へ出力する。第2のライン遅延部18も同様に、隣接画素の動きベクトル格納し、1ライン分遅延させて動きベクトル選択部14へ出力する。
【0060】
すなわち、本発明に係る動きベクトル検出装置及び方法は、基準ブロックと探索ブロックとの間で演算した差分絶対値和の分布傾向を識別し、上記基準画素の垂直負方向に隣接する画素について予め識別された差分絶対値和の分布傾向と比較した上で、求める動きベクトルを隣接する画素の動きベクトルに応じて特定する。
【0061】
これにより、実際の画像の動きに適合した動きベクトルを求めることにより、動きベクトルのばらつきを解消することができ、ひいては変換画像の劣化を防止することができる。
【0062】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。基準ブロックの原点の画素と隣接画素の動きのパターンを識別する際に、差分絶対値和Kと領域極小値の差分を求めて比較を行う場合のみならず、それぞれのライン極小値の配列を切り出し、ライン極小値の配列全体を比較して識別しても良い。更に、ライン極小値に基づいて判断する場合のみならず、基準ブロックの原点の画素と隣接画素のそれぞれの探索範囲における差分絶対値の分布傾向に照らし合わせて、動きのパターンを識別しても良い。
【0063】
また、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、例えば、探索範囲54において、水平成分(xs)に対応した垂直ラインを割り当て、当該垂直ライン毎に差分絶対値のライン極小値を求めても良い。
【0064】
また、本発明は、例えばPAL(Phase Alternation by Line)方式において、フィールド周波数を50Hzから2倍の100Hzの画像信号に変換する、フィールド周波数倍速方式を採用するテレビジョン受像機に対しても適用可能である。このフィールド周波数倍速方式を採用するテレビジョンに本発明を内蔵することにより、更なる面フリッカ妨害の抑制を期しつつ、動きベクトルのばらつきを解消することができるため、相乗的に画質を向上させることができる。
【0065】
また、本発明は上述したインタレース走査方式における入力画像信号の内挿処理に適用される場合に限らず、例えば、MPEG(Moving Picture Expert Group)方式の動き補償予測によるフレーム間符号化にも適用可能である。
【0066】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る動きベクトル検出装置及び方法は、基準ブロックと探索ブロックとの間で演算した差分絶対値和の分布傾向を識別し、上記基準画素の垂直負方向に隣接する画素について予め識別された差分絶対値和の分布傾向と比較した上で、求める動きベクトルを隣接する画素の動きベクトルに応じて特定する。
【0067】
これにより、実際の画像の動きに適合した動きベクトルを求めることにより、動きベクトルのばらつきを解消することができ、ひいては変換画像の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】動きベクトルによる動き補正動作について説明するための図である。
【図2】探索範囲内に割り当てられた全探索ブロックについて求めた差分絶対値の分布傾向の一例を示した図である。
【図3】本発明を適用した動きベクトル検出方法における実際の検出手順を示したフローチャートである。
【図4】基準ブロック及び探索範囲について説明するための図である。
【図5】本発明を適用した動きベクトル検出方法において、求める動きベクトルを、隣接画素の動きベクトルに応じて特定する場合について説明するための図である。
【図6】本発明を適用した動きベクトル検出方法により特定した動きベクトルを示した図である。
【図7】本発明を適用した動きベクトル検出方法により劣化を防止した変換画像を示した図である。
【図8】本発明を適用した動きベクトル検出装置の構成例を示した図である。
【図9】ブロックマッチング法の概念について説明するための図である。
【図10】従来型のブロックマッチング法における基準ブロック及び探索範囲について説明するための図である。
【図11】従来型のブロックマッチング法を適用する動きベクトル検出回路の構成例を示した図である。
【図12】従来型のブロックマッチング法の問題点について説明するための図である。
【図13】 従来型のブロックマッチング法により求めた動きベクトルについて説明するための図である。
【符号の説明】
1 動きベクトル検出装置、11 画像格納用メモリ、12 演算部、13 判定部、14 動きベクトル選択部、15 動きベクトル格納用メモリ、16 制御部、17 第1のライン遅延部、18 第2のライン遅延部、30 基準フィールド、40 参照フィールド、51 基準ブロック、53 探索ブロック、54 探索範囲
Claims (2)
- 入力される基準フィールドの基準画素につき、ブロックマッチング法により動きベクトルを検出する動きベクトル検出装置において、
基準フィールドから切り出した基準画素を原点とする基準ブロックと、参照フィールドから切り出した探索範囲内を移動する探索ブロックとの間で、画素値の差分絶対値和を順次演算する演算手段と、
上記探索範囲において最小となる差分絶対値和と画素位置と、上記探索範囲の互いに直交する2つの方向のうちの一方の第1の方向の成分に対応する上記第1の方向と直交する第2の方向のライン毎に最小となる差分絶対値和と画素位置とを識別する識別手段と、
上記探索範囲において最小となる上記差分絶対値和と、上記基準画素の上記第1の方向の負方向に隣接する画素の動きベクトルに基づく差分絶対値和との差分絶対値を求め、比較する比較手段と、
上記比較手段により求めた上記差分絶対値が閾値より小さい場合に、上記基準画素における動きベクトルの第1の方向成分を、上記隣接する画素の動きベクトルの第1の方向成分に合致するように特定し、上記基準画素における動きベクトルの第2の方向成分を、特定した上記第1の方向成分に対応する第2の方向のラインにおいて差分絶対値和の最小となる画素位置の第2の方向成分に特定し、上記比較手段により求めた上記差分絶対値が閾値以上の場合は、上記探索範囲において最小となる差分絶対値和の画素位置を動きベクトルと特定する動きベクトル特定手段と
を備えることを特徴とする動きベクトル検出装置。 - 入力される基準フィールドの基準画素につき、ブロックマッチング法により動きベクトルを検出する動きベクトル検出方法において、
基準フィールドから切り出した基準画素を原点とする基準ブロックと、参照フィールドから切り出した探索範囲内を移動する探索ブロックとの間で、画素値の差分絶対値和を順次演算し、
上記探索範囲において最小となる差分絶対値和と画素位置と、上記探索範囲の互いに直交する2つの方向のうちの一方の第1の方向の成分に対応する上記第1の方向と直交する第2の方向のライン毎に最小となる差分絶対値和と画素位置とを識別し、
上記探索範囲において最小となる上記差分絶対値和と、上記基準画素の上記第1の方向の負方向に隣接する画素の動きベクトルに基づく差分絶対値和との差分絶対値を求め、
求めた上記差分絶対値が閾値より小さい場合に、上記基準画素における動きベクトルの第1の方向の成分を、上記隣接する画素の動きベクトルの第1の方向の成分に合致するように特定し、上記基準画素における動きベクトルの第2の方向の成分を、特定した上記第1の方向の成分に対応する上記第1の方向と直交する第2の方向のラインにおいて差分絶対値和が最小となる画素位置の第2の方向の成分に特定し、求めた上記差分絶対値が閾値以上の場合は、上記探索範囲において最小となる差分絶対値和の画素位置を動きベクトルと特定する
ことを特徴とする動きベクトル検出方法。
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