JP4304565B2 - 化学反応装置及びその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学反応装置及びその制御方法に関し、特に、微小基板に形成された反応流路における吸熱触媒反応により、水素ガス等の所望の流体物質の生成が可能な化学反応装置及びその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、化学反応工学の分野においては、流体化された混合物質を反応流路(チャネル)内に設けられた触媒による化学反応(触媒反応)により、所望の流体物質を生成する化学反応装置(流路反応器、又は、チャネルリアクタともいう)が知られている。
【0003】
近年、このような化学反応装置の技術分野に、集積回路等の半導体製造技術で蓄積された微細加工技術(マイクロテクノロジー)を適用して、微小空間にミクロンオーダーの混合器や反応流路、分析器等の各種機能要素を集積化したマイクロリアクタ(又は、マイクロチャネルリアクタともいう)の研究開発が活発に行われている。
【0004】
ここで、従来技術におけるマイクロリアクタの反応流路部の概略構成について、図20を参照して簡単に説明する。
マイクロリアクタの反応流路部は、概略、図20(a)、(b)、(c)に示すように、シリコン等の微小な基板10pの一面側にフォトエッチング技術等を用いてミクロンオーダーの幅及び深さを有する溝部からなる反応流路(マイクロチャネル)20pを形成し、該反応流路20pの内壁面に所定の膜厚で触媒(図示を省略)を付着形成した後、該基板10pの一面側に、上記反応流路20pの開放部を閉止するようにガラス等の閉止基板30pを接合した構成を有している。ここで、マイクロリアクタにおける化学反応(触媒反応)が所定の熱条件による吸熱反応を伴う場合には、化学反応時に反応流路(詳しくは、触媒)に所定の熱量を供給するために、図20(b)に示すように、各基板10p、30p間に介装して、あるいは、図20(c)に示すように、基板10pの他面側に、上記反応流路20pが形成された領域全体に対応して設けられた単一の薄膜ヒータ40p等を備えた構成が適用される。なお、図20(a)においては、反応流路20pの形状を明確化するために、便宜的にハッチングを施して示した。
【0005】
このような構成を有するマイクロリアクタにおいて、例えば、メタノールと水からなる混合物質を気化した流体物質(混合ガス)を上記反応流路の導入部20in側から導入するとともに、薄膜ヒータ40pに所定の電圧を印加して反応流路の温度が概ね300℃となるように所定の熱エネルギー(熱流束)を供給することにより、反応流路内に付着形成された触媒による吸熱触媒反応が生じて、水素ガスと少量の二酸化炭素等が生成される(メタノール水蒸気改質反応)。なお、メタノール等のアルコール系原料から上述したような水蒸気改質反応により水素ガスを生成する技術は、近年、研究開発が目覚ましい燃料改質型の燃料電池の燃料(水素)供給装置にも適用される技術である。
【0006】
このようなマイクロリアクタにおける特徴は、反応流路の構成を微細化することにより、
(1)反応流路における反応容積が小さくなるので、表面積/体積比効果が顕著となり、触媒反応時の伝熱特性が向上して反応効率が改善するという利点がある。
(2)混合物質を構成する反応分子の拡散混合時間が短くなるので、反応流路内における触媒反応の進行速度(反応速度)が向上するという利点がある。
(3)反応流路を含む構成を複数層積層することにより、スケールアップ(装置規模の大型化や流体物質の生成能力の向上)に対する煩雑な反応工学的な検討が不要となるという利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したようなマイクロリアクタにおいては、図20に示したように、反応流路20pが形成された領域を含めた基板10p全面に対応して、単一の薄膜ヒータ40pが形成された構成を適用した場合、本願発明者が各種条件を設定したところ、次に示すような問題を有していることが判明した。
【0008】
以下、従来構成におけるマイクロリアクタについての結果を示して、詳しく説明する。
図21は、図20に示したマイクロリアクタの反応流路部(流路長325mm)において、任意の流路位置に供給される熱エネルギー(熱流束)と流路温度との関係を示す。なお、この反応流路の全域において、流路温度を300℃に維持するために、薄膜ヒータから供給する熱流束を一定に設定した状態で、上述したメタノール水蒸気改質反応を行った場合について説明する。
【0009】
上述したような実験条件に基づいて、図21(a)に示すように、反応流路20pの全域で一定の温度(300℃)を維持するために、上記薄膜ヒータ40pの発熱状態を制御して、反応流路20pに供給される熱エネルギーを一定(熱流束を概ね470W/m2の一定値)に制御する。ここで、吸熱触媒反応は、周知のように、触媒に供給される熱流束に依存して、その反応の進行状態(反応効率や反応速度)が大きく変化する。
【0010】
このような実験状態において、反応流路20pに混合ガスが導入されると、薄膜ヒータ40pから反応流路20pに供給された熱エネルギーが消費されて吸熱触媒反応が進行するが、その進行状態は、反応流路20pの導入部20in側の領域(図21(b)では、流路位置が導入部20in(0mm)から概ね160mm以下の領域;特に、導入部20in近傍領域)AP1においては、吸熱触媒反応の原料となる混合ガスの濃度が高いことから、薄膜ヒータ40pから供給される熱エネルギーに比較して、より大きな熱エネルギーを吸収して上記吸熱触媒反応が急速に進行するため、図21(b)に示すように、当該領域AP1における流路温度が急激に下降して(概ね290℃以下)、吸熱触媒反応における最適な熱条件(300℃)以下となる実験結果が得られた。このことから、領域AP1においては、全体として吸熱触媒反応に必要な熱エネルギーが不足することになり、反応速度の低下を招くという問題を有していることが判明した。また、導入部20in側の領域のみの流路長では水素への転化率が十分ではないので、さらに流路を160mm以上に延長するように設定されている。
【0011】
反応流路20pの排出部20out側の領域(図21(b)では、流路位置が導入部20in(0mm)から概ね160mm以上の領域)AP2においては、上記領域AP1における吸熱触媒反応の急激な進行により、混合ガスの濃度が低くなるとともに、水素ガス等の流体物質の生成が飽和状態に近づくことにより、吸熱触媒反応の進行が鈍化して反応流路20pに供給される熱エネルギーが吸収(消費)されなくなるため、当該領域AP2における流路温度が急速に上昇して(概ね310℃以上)、吸熱触媒反応における最適な熱条件(300℃)以上に達する実験結果が得られた。
【0012】
このことから、領域AP2においては、全体として吸熱触媒反応に利用されない熱エネルギーが反応流路20p内に蓄積されて、反応流路20p内に付着形成された触媒が高温に晒されることになり、触媒特性の劣化や触媒寿命の短命化、さらには、破壊をも招くという問題を有していることが判明した。また、反応流路20pの排出部20out側への過剰の加熱のために薄膜ヒータ40pの熱利用効率も低くなるといった問題があった。
このように、従来技術における化学反応装置においては、吸熱触媒反応の進行状態に関わらず、均一な熱エネルギーを反応流路20pの全域に供給する構成を有していたため、特定の領域において反応速度の低下や触媒特性の劣化等を招き、反応流路20p全体として触媒反応の反応効率が低いものとなっていた。
【0013】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、微小空間に反応流路等の機能要素が集積化された化学反応装置において、触媒反応の反応速度の低下や触媒の特性劣化等を抑制して、反応効率の高い触媒反応を実現することができる化学反応装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る化学反応装置は、微小基板に連続して形成された反応流路内で第1の流体物質を第2の流体物質に変換する化学反応を生じる化学反応装置において、前記反応流路に対応する領域に、複数に分割して設けられ、前記反応流路に所定の熱エネルギーを供給する熱伝達手段と、前記熱伝達手段の各々の温度状態を制御する熱伝達制御手段と、を有し、前記熱伝達手段は、各々、平面形状が均一であって、膜厚が異なる薄膜状の発熱体材料からなることを特徴としている。
また微小基板に連続して形成された反応流路内で第1の流体物質を第2の流体物質に変換する吸熱化学反応を生じる化学反応装置において、前記反応流路に対応する領域に、複数に分割して設けられ、前記反応流路に所定の熱エネルギーを供給する熱伝達手段と、前記熱伝達手段の各々の温度状態を制御する熱伝達制御手段と、
を有し、前記熱伝達手段は、各々、膜厚が均一であって、平面形状が異なる薄膜状の発熱体材料からなることによって前記熱伝達手段の各々から前記反応流路に供給される熱エネルギーが、前記反応流路の導入部から排出部方向に順次小さくなるように設定されていることを特徴としている。
【0015】
すなわち、微小空間に各種機能要素が集積化された化学反応装置において、所定の吸熱反応(化学反応)を行う反応流路の形成領域に対応して複数の熱伝達手段が設けられ、熱伝達制御手段による発熱状態の制御により、複数の熱伝達手段の各々から所定の熱エネルギー(熱流束)供給されて、第1の流体物質を第2の流体物質に変換する上記吸熱反応が実現される。
【0016】
このような構成を有する化学反応装置によれば、反応流路の形成領域に対応して、複数に分割された熱伝達手段を設けた簡易な構成により、反応流路の任意の領域に対して、所望の熱エネルギーを供給することができるので、化学反応装置における反応流路部周辺の構成の複雑化や大型化を抑制しつつ、熱利用効率の高い吸熱反応を実現することができる。
【0017】
ここで、各熱伝達手段から反応流路に供給される熱エネルギーを、反応流路の導入部から排出部方向に順次小さくなるように、望ましくは、指数関数的に小さくなるように設定することにより、反応流路の導入部側から排出部方向に吸熱反応が鈍化する傾向(吸熱反応の進行状態)に良好に対応した熱エネルギーを供給することができるので、反応流路の導入部側における熱エネルギーの不足による反応速度の低下や、排出部側における熱エネルギーの蓄積による反応特性(特に、触媒特性)の劣化の発生を抑制して、反応効率の一層の向上を図ることができる。このように、吸熱反応により第2の流体物質に変換する場合、反応流路内に反応を促進する触媒を設けると、従来余剰の加熱により触媒を劣化させていたが、熱利用効率を高くしたために触媒や反応流路内の過熱を防止でき、化学反応装置の長寿命化をなし得ることができる。
【0018】
上述したような化学反応装置の構成において、前記熱伝達手段は、各々、流体からなる熱伝達制御媒体であり、前記熱伝達制御手段は、前記熱伝達制御媒体の供給量又は前記熱伝達制御媒体の温度が前記熱伝達手段の各々で互いに異なるように制御することようにしてもよい。
この場合、上記熱伝達制御手段は、熱伝達手段の各々に供給される熱伝達制御媒体の供給量を、反応流路の導入部から排出部方向に順次低くなるように、特に、指数関数的に低くなるように制御することが望ましい。
【0019】
すなわち、同一の発熱特性を有する複数の熱伝達手段の各々に対して、熱伝達制御媒体の供給量が個別に制御されることにより、反応流路の導入部から排出部方向に発生する熱エネルギーが小さくなるように設定される。これにより、各熱伝達制御手段により熱伝達制御媒体の供給量を調整する比較的簡易な構成及び制御方法で、反応流路における吸熱反応の進行状態に良好に対応した熱エネルギーを供給することができる。
【0020】
このような熱伝達手段の具体的構成としては、各々、膜厚及び平面形状が均一な薄膜状の発熱体材料からなる薄膜ヒータを良好に適用することができる。これにより、薄膜ヒータから発生する熱エネルギーを、印加電圧を調整する簡易な方法により制御することができるとともに、該薄膜ヒータの構成を、製造プロセスにおける成膜条件等の大幅な変更を伴うことなく、容易かつ安価に実現することができる。
【0021】
また、上述したような化学反応装置の構成において、前記熱伝達制御手段は、単一であってもよく、また、熱伝達手段は、各々、所定量の熱伝達制御媒体の供給に対して、異なる熱エネルギーを発生する発熱特性を有し、前記熱伝達制御手段により、熱伝達手段の各々への熱伝達制御媒体の供給量を均一に設定することにより、反応流路に供給される熱エネルギーを制御するようにしてもよい。この場合、上記熱伝達手段は、各々、熱伝達制御手段から供給される均一な供給量の熱伝達制御媒体に対して、発熱特性が反応流路の導入部から排出部方向に順次低くなるように、特に、指数関数的に低くなるように制御することが望ましい。
【0022】
すなわち、異なる発熱特性を有する複数の熱伝達手段の各々に対して、熱伝達制御媒体の供給量が均一に制御されることにより、反応流路の導入部から排出部方向に発生する熱エネルギーが小さくなるように設定される。これにより、単一の熱伝達制御手段により所定量の熱伝達制御媒体を供給する極めて簡素化された構成及び制御方法で、反応流路における吸熱反応の進行状態に良好に対応した熱エネルギーを供給することができる。
【0023】
このような熱伝達手段の具体的構成としては、各々、平面形状が均一であって、膜厚が異なる薄膜状の発熱体材料からなる薄膜ヒータや、あるいは、各々、膜厚が均一であって、平面形状が異なる薄膜状の発熱体材料からなる薄膜ヒータを適用することもできる。これにより、前者の構成を有する熱伝達手段においては、均一な電圧を印加するだけで、薄膜ヒータから発生する熱エネルギーを膜厚により規定された所定値に設定することができるとともに、該薄膜ヒータの構成を、製造プロセスにおける成膜条件を若干変更するだけで、容易に実現することができる。また、後者の構成を有する熱伝達手段においては、例えば、各々、方形形状を有し、前記熱伝達制御媒体の供給方向に対して垂直方向に延在する幅が均一であって、前記熱伝達制御媒体の供給方向に延在する長さが異なるように構成することにより、前者の構成と同様に、均一な電圧を印加するだけで、薄膜ヒータから発生する熱エネルギーを平面形状の長さにより規定された所定値に設定することができるとともに、該薄膜ヒータの構成を、製造プロセスにおける成膜条件等の大幅な変更を伴うことなく、容易かつ安価に実現することができる。
なお、熱伝達手段として、上述した薄膜ヒータの構成を適用する場合にあっては、熱伝達制御手段として、直流電圧又は交流電圧(熱伝達制御媒体)を熱伝達手段の各々に印加する電源装置が適用される。
【0024】
さらに、上述したような化学反応装置の構成において、同一の発熱特性を有する熱伝達手段、あるいは、異なる発熱特性を有する熱伝達手段の他の具体的構成としては、各々、気体又は液体からなる熱流体(熱伝達制御媒体)が通過することにより所定の熱エネルギーを発生する媒体通過流路を備えているものであってもよく、この場合、熱伝達制御手段として、熱流体を熱伝達手段の各々に供給する流体ポンプが適用される。
【0025】
そして、以上説明したような化学反応装置の構成において、上記薄膜ヒータや媒体通過流路からなる熱伝達手段が、微小基板に形成された反応流路の近傍領域に、微細加工技術を用いて形成された構成を適用することができ、また、熱伝達制御手段についても、微細加工技術を用いて形成された構成を適用することができる。これにより、化学反応装置の構成全体を微小空間に集積化することができ、例えば、ポータブル型の燃料電池への搭載等、化学反応装置の応用範囲を大幅に拡大することができる。
【0026】
なお、上述した化学反応装置は、第1の流体物質から第2の流体物質への変換が、少なくとも、所定の熱条件の下で生じる化学反応(吸熱反応)であればよく、例えば、反応流路の内壁面に所定の触媒が付着形成され、上記熱伝達手段から供給される熱エネルギーによる吸熱触媒反応により、第1の流体物質を第2の流体物質に変換するものであってもよい。
【0027】
本発明に係る化学反応装置の制御方法は、微小基板に連続して形成された反応流路内で第1の流体物質を第2の流体物質に変換する吸熱化学反応を生じる化学反応装置の制御方法において、前記化学反応装置は、前記反応流路に対応する領域に複数に分割して設けられ、各々、膜厚が均一であって、平面形状が異なる薄膜状の発熱体材料からなる前記反応流路に所定の熱エネルギーを供給する熱伝達手段を有し、前記反応流路に対応する領域を複数に分割し、各領域に対して各々異なる熱エネルギーを前記反応流路の導入部から排出部方向に順次小さくなるように供給するようにしたことを特徴としている。
すなわち、化学反応装置の制御方法において、所定の吸熱反応(化学反応)を行う反応流路の任意の領域に対して、所望の熱エネルギーを個別に供給することにより、吸熱反応が急速に進行する傾向を示す反応流路の導入部側の領域に対しては、該吸熱反応の進行状態に対応した比較的大きな熱エネルギーを供給し、一方、吸熱反応が鈍化する傾向を示す反応流路の排出部側の領域に対しては、比較的小さな熱エネルギーを供給することができるので、反応流路の各領域における反応速度の低下や反応特性の劣化等を抑制して、化学反応装置(反応流路)全体としての反応効率の向上を図ることができる。
【0028】
ここで、各熱伝達手段から反応流路に供給される熱エネルギーを、反応流路の導入部から排出部方向に順次小さくなるように、具体的には、熱伝達手段の各々に供給される熱伝達制御媒体の供給量を、指数関数的に小さくなるように設定することにより、反応流路の導入部側から排出部方向に吸熱反応が鈍化する傾向(吸熱反応の進行状態)に良好に対応した熱エネルギーを供給することができるので、反応流路の導入部側における熱エネルギーの不足による反応速度の低下や、排出部側における熱エネルギーの蓄積による反応特性(特に、触媒特性)の劣化の発生を抑制して、反応効率の一層の向上を図ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る化学反応装置及びその制御方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る化学反応装置に適用される反応流路部の第1の実施形態を示す概略構成図であり、図2は、本実施形態に適用される熱伝達手段及び熱伝達制御手段の一構成例を示す概略図であり、図3は、本実施形態に適用される薄膜ヒータの具体例を示す断面構成図である。また、図4は、本実施形態に適用される熱伝達手段(薄膜ヒータ)の各寸法を示す模式図である。なお、上述した従来技術(図20参照)と同等の構成については、同一の符号を付して説明する。また、化学反応装置の構成を明瞭にするために、反応流路及び薄膜ヒータの平面形状に対して便宜的にハッチングを施して示した。
【0030】
図1、図2に示すように、本実施形態に係る化学反応装置に適用される反応流路部は、大別して、微小基板10の一面側に所定の溝形状を有して形成された反応流路20Aと、該反応流路20Aの内壁面のうち、少なくとも一面(本実施形態においては、反応流路20Aの底面)に付着形成された触媒21と、反応流路20Aの開放端側を閉止するように微小基板10の一面側に対向して接合されたガラス基板等の閉止基板30と、微小基板10の他面側に所定の同一形状でパターニング形成された複数の薄膜ヒータ(熱伝達手段)41a、41b、41cと、該複数の薄膜ヒータ41a、41b、41cを真空状態のキャビティ51中に密閉封止するように微小基板10の他面側に接合された封止基板50と、複数の薄膜ヒータ41a、41b、41cの各々に異なる電力を供給して、各薄膜ヒータにおける発熱状態を個別に制御する複数の発熱制御部(熱伝達制御手段)61a、61b、61cと、を備えて構成されている。
【0031】
反応流路20Aは、図1(b)に示すように、シリコン等の微小基板10の一面側をフォトエッチング技術等を用いて、任意の溝形状にエッチングした後、該溝の内壁面(ここでは、底面)に、例えば、銅-亜鉛(Cu-Zn)系の触媒21を化学気相成長法(CVD)等により任意の厚さ(1μm〜100μm)に付着形成することにより、図1(a)に示したような平面パターン(ここでは、蛇行パターン)を有する反応流路20Aを形成する。ここで、反応流路20Aは、微小基板10の一面側に開放端を有しているため、この反応流路20Aの開放端を外部から遮断するために、ガラス等の閉止基板30を接合して閉止する。これにより、導入部20a及び排出部20bにのみ開口部を備えた流路が形成される。反応流路20Aの溝は、周囲に触媒21が付着するため図1(b)に示す断面での流体が移動できる面積が小さくなっているが、流体が移動できる隙間として幅100μm以下、深さ500μm以下が望ましい。
【0032】
薄膜ヒータ41a、41b、41cは、図1(b)、(c)に示すように、いずれも同一の発熱特性を有する発熱体材料により同一のパターン形状(ここでは、長方形)及び同一の膜厚を有し、かつ、相互に電気的且つ物理的に離間して形成された構成を有している。ここで、各薄膜ヒータ41a、41b、41cは、上記反応流路20Aの平面パターン(形成領域)を略3等分に分割した各領域に対応するように配置形成される。
【0033】
薄膜ヒータ41a、41b、41cの具体的な構成としては、図3に示すように、シリコン基板10の一面にシリコン酸化膜(SiO2)11及び窒化タンタル(Ta−N)12を介して、チタン-タングステン合金(Ti−W)13及び金(Au)14、チタン-タングステン合金15からなり、所定のパターン形状で積層形成された発熱部(発熱体材料)40が設けられ、該発熱部40を含むシリコン基板10全域に窒化シリコン(Si3N4)16等の絶縁膜を被覆形成した構成を良好に適用することができる。なお、発熱部40を構成する発熱体材料としては、上述した金等に限定されるものではなく、発熱制御部61a、61b、61cから供給される電力(電圧)に基づいて、所定の熱効率で発熱する、例えば、白金(Pt)、シリコン(Si)、ニッケルクロム(Ni−Cr)、炭化シリコン(SiC)、タングステン(W)等の導電性材料から選択される1又は複数の材料を良好に適用することができる。
【0034】
このようなパターン形状(長方形)を有する薄膜ヒータ41a、41b、41cにおいては、図4に示すように、電圧Vの印加方向に対して発熱体材料41の幅方向の寸法をLhx、長さ方向の寸法をLhy、膜厚寸法をδh、抵抗率をρhと設定すると、次に示す(1)式によって算出される熱流束q(本発明に係る熱エネルギーに相当)が発生し、上述した反応流路20A(詳しくは、触媒21)に供給されて、後述する吸熱触媒反応の進行に寄与する。
【0035】
【数1】
【0036】
なお、本実施形態においては、薄膜ヒータ41a、41b、41cの構成として、反応流路20Aの平面パターンを含む略均等な領域ごとに、長方形状の広がりを有して薄膜形成された発熱体材料を設けた構成のみを示したが、本発明に係る化学反応装置に適用される薄膜ヒータは、反応流路20Aの平面パターン(例えば、蛇行パターン)に対応して、該反応流路20Aの直下の位置にのみ、蛇行パターン状に薄膜形成した薄膜ヒータを、上記領域ごとに設けた構成を有するものであってもよい。
【0037】
そして、このような薄膜ヒータ41a、41b、41cは、微小基板10の他面側に封止基板50を接合することにより、真空状態に保持された単一のキャビティ51内に密閉封止されて、後述する発熱制御部61a、61b、61cからの電力の供給により発生する熱エネルギーの封止基板50側への放出を抑制するように構成されている。
【0038】
また、複数の発熱制御部61a、61b、61cは、図2に示すように、各々、薄膜ヒータ41a、41b、41cに接続され、各薄膜ヒータ41a、41b、41cに個別独立して所定の電圧V11、V12、V13(熱伝達制御媒体)を印加する制御を行う。すなわち、発熱制御部61a、61b、61cは、各々、異なる電圧V11、V12、V13を生成、出力する電源装置としての機能を有している。
【0039】
これにより、各薄膜ヒータ41a、41b、41cにおいて発生する熱エネルギーを異ならせて、反応流路20Aの各形成領域における吸熱触媒反応の進行状態に対応した熱エネルギーを供給するように制御する。具体的には、後述するように、各薄膜ヒータ41a、41b、41cにおいて発生する熱エネルギー(熱流束)が、流体物質の流下方向(反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b方向)に徐々に減少するように、各発熱制御部61a、61b、61cから各薄膜ヒータ41a、41b、41cに印加される電圧V11、V12、V13が、少なくとも、|V11|>|V12|>|V13|となる所定の関係を示すように調整する。
【0040】
なお、ここで、各発熱制御部61a、61b、61cから薄膜ヒータ41a、41b、41cの各々に印加される電圧(熱伝達制御媒体)は、直流電圧であってもよいし、交流電圧であってもよい。直流電圧を適用した場合には、薄膜ヒータ41a、41b、41cにおいて発生する熱エネルギーを時間経過に対して一定に制御することができ、一方、交流電圧を適用した場合には、交流周期に応じて上記熱流束を時間経過に対して間欠的に制御することができる。
【0041】
次に、上述したような化学反応装置における動作(吸熱触媒反応)について、上記構成(図1、図2)を参照しながら具体的に説明する。なお、ここでは、吸熱触媒反応の一例として、アルコール系原料(例えば、メタノールガス)から水素ガスを生成する水蒸気改質反応を行う場合について説明する。
【0042】
図1、図2に示した反応流路部を備えた化学反応装置において、反応流路20Aの導入部20aからメタノールガスと水蒸気の混合ガス(第1の流体物質)が導入され、かつ、反応流路20Aに所定の熱エネルギー(熱流束)が供給されることにより、反応流路20Aの内壁面に付着形成された触媒21による吸熱触媒反応が生じる。この吸熱触媒反応(水蒸気改質反応)は、具体的には、メタノール(CH3OH)と水(H2O)に加え、概ね49.4kJ/molの熱エネルギーが供給されることにより、次の(2)式に示すように、水素(H2)(第2の流体物質)及び二酸化炭素(CO2)と、微量の一酸化炭素(CO)等が生成されて、反応流路20Aの排出部20bから排出される。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 ・・・(2)
【0043】
ここで、上記(2)式に示した吸熱触媒反応を促進するために必要な熱エネルギーは、本実施形態(図1、図2)においては、反応流路20Aの形成領域に対応して略3等分に分割して設けられた各薄膜ヒータ41a、41b、41cから供給される。
ところで、反応流路20Aの導入部20a側においては、吸熱触媒反応が急激に進行する傾向にあり、一方、反応流路20Aの排出部20b側においては、吸熱触媒反応が鈍化する傾向にあることを、従来技術(図21)において示したが、本願発明者が上記(2)式に示したメタノールと水から水素を生成する吸熱触媒反応(メタノール水蒸気改質反応)について、さらに詳しく検討した結果、その進行状態が反応流路20Aの流路位置に対して概ね指数関数的に低下する傾向を有していることを見出した。
【0044】
これにより、例えば、上記(2)式に示した吸熱触媒反応において、各薄膜ヒータ41a、41b、41cから反応流路20Aに供給される熱エネルギー、すなわち、各薄膜ヒータ41a、41b、41cにおいて発生する熱流束を、反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b方向に指数関数的に徐々に(実質的には、段階的に)減少するように制御することにより、反応流路20Aの導入部20a側における急激な吸熱触媒反応の進行に伴う熱エネルギーの不足を補うことができ、一方、反応流路20Aの排出部20b側における吸熱触媒反応の鈍化に伴って反応流路20Aに蓄積される熱エネルギーを抑制することができることが判明した。なお、上記吸熱触媒反応において、反応流路に供給される熱エネルギー(熱流束)と反応流路の任意の位置における流路温度との関係については、詳しく後述する。
【0045】
したがって、本実施形態においては、各薄膜ヒータ41a、41b、41cから反応流路20Aに供給される熱エネルギーが、反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b方向に徐々に減少するように、各発熱制御部61a、61b、61cから各薄膜ヒータ41a、41b、41cに印加される電圧V11、V12、V13の絶対値を、|V11|>|V12|>|V13|の関係となるように、より望ましくは、各電圧V11、V12、V13が流路位置に対して指数関数曲線上の所定の電圧となるよう設定制御することにより、反応流路20Aにおける吸熱触媒反応の進行状態(傾向)により合致した温度制御を行うことができるので、反応流路20Aの導入部20a側における急激な吸熱触媒反応の進行に伴う流路温度の低下を抑制して、反応速度の速い吸熱触媒反応を実現することができるとともに、反応流路20Aの排出部20b側における流路温度の上昇を抑制して、触媒21の特性劣化や破壊を良好に回避することができ、反応流路20A全体として高い反応効率で吸熱触媒反応を実現することができる。
【0046】
次いで、本発明の特徴である反応流路の形成領域に対応して、均等なパターン形状を有する熱伝達手段の分割と、該熱伝達手段の各々から熱エネルギーを供給される反応流路における吸熱触媒反応の進行状態との関係について、詳しく説明する。ここでは、上述したメタノール水蒸気改質反応において、熱伝達手段の分割数を2、3、6に設定し、各分割された熱伝達手段から反応流路に任意に設定した熱エネルギー(熱流束)を供給した場合の反応流路内の温度変化を、後述する所定の計算式を用いた結果に基づいて、熱伝達手段の分割数及び供給する熱エネルギーと、吸熱触媒反応の進行状態との関係を明らかにした。また、ここでは、上述した従来技術(図21)との作用効果の差異を明確化するために、反応流路の断面形状及び流路長を、従来技術に示した場合と同等に設定する。なお、以下に示すような反応流路に供給される熱エネルギーと流路温度との関係は、上述した第1の実施形態の構成に限定されるものではなく、後述する各実施形態においても共通に適用されるものである。
【0047】
図5、図6、図7は、各々、本実施形態に適用される熱伝達手段を2等分、3等分、6等分に分割して設けた場合における各熱伝達手段の熱エネルギー(熱流束)の設定値と、その場合の反応流路の任意の位置における流路温度を示すグラフである。また、図8は、図5乃至図7に示された結果に基づく熱伝達手段の分割数と薄膜ヒータへの印加電圧の関係を示す相関図である。ここでは、従来の化学反応装置における反応流路の流路位置に対する熱流束及び流路温度の変化傾向を示す結果(図21)を適宜参照しながら説明する。
【0048】
まず、図5(a)に示すように、2等分に分割された熱伝達手段40A、40Bを、反応流路の形成領域(流路位置が導入部20in(0mm)から概ね160mm以下の領域D21と概ね160mm以上の領域D22)に対応するように設け、さらに、反応流路の任意の位置における流路温度を一定(300℃)に維持するように、各熱伝達手段40A、40Bから供給される熱エネルギーを任意に設定した場合について説明する。
ここで、従来技術において、図21(a)に示したように、単一の熱伝達手段(薄膜ヒータ40p)により一定の熱流束(概ね470W/m2)を発生させて反応流路20pに熱エネルギーを供給した場合、図21(b)に示したように、反応流路20pの導入部20a側では急激に吸熱触媒反応が進行して熱エネルギーが不足して流路温度が低下する傾向を示し、反応流路20pの排出部20b側では吸熱触媒反応の鈍化に伴って熱エネルギーが蓄積され、流路温度が上昇する傾向を示すことをすでに説明した。
【0049】
そこで、このような反応流路20pの導入部20a側と排出部20b側における流路温度の変化傾向に対応して、図5(b)に示すように、導入部20a側に設けられた熱伝達手段40Aから発生する熱流束が、排出部20b側に設けられた熱伝達手段40Bから発生する熱流束に比較して大きくなるように任意に設定する。具体的には、熱伝達手段40Aから発生する熱流束を概ね570W/m2、熱伝達手段40Bから発生する熱流束を概ね340W/m2に設定する。
そして、このような設定条件に基づいて、以下の1次元モデルの一連の連立計算式((3)、(4)、(5)式)を解くことにより、任意の流路位置における温度を解析し、図5(c)に示すような結果を得た。
【0050】
【数2】
【0051】
これにより、上記(3)、(4)、(5)式に基づいて得られる結果は、図5(c)に示すように、反応流路20Aの導入部20a側に対応する領域D21においては、十分に大きな熱エネルギー(熱流束570W/m2)が反応流路20Aに供給されることになるので、従来、導入部20a近傍において発生していた急激な吸熱触媒反応の進行に伴う流路温度の低下傾向(図21(b)における領域AP1)が抑制される(概ね290℃以上)。一方、反応流路20Aの排出部20b側に対応する領域D22においては、十分に小さな熱エネルギー(熱流束340W/m2)が反応流路20Aに供給されることになるので、従来、排出部20b側において発生していた吸熱触媒反応の鈍化に伴う流路温度の上昇傾向が抑制される(概ね310℃以下)。よって、反応流路20Aの略全域で流路温度が任意に制御されることにより、従来技術に比較して、吸熱触媒反応(メタノール水蒸気改質反応)における最適な熱条件(300℃)近傍の温度範囲(概ね290℃〜310℃)内で変化する流路温度が実現されることが判明した。
【0052】
次いで、図6(a)に示すように、本実施形態(図1)と同様に、3等分に分割された熱伝達手段40C、40D、40Eを、反応流路の形成領域(流路位置が導入部20in(0mm)から概ね110mm以下の領域D31と概ね110mm〜220mmの領域D32と概ね220mm以上の領域D33)に対応するように設け、さらに、反応流路の任意の位置における流路温度を一定(300℃)に維持するように、各熱伝達手段40C、40D、40Eから供給される熱エネルギーを任意に設定した場合について説明する。
【0053】
ここでは、上述した反応流路20Aにおける流路温度の変化傾向(図21(b)参照)に対応して、図6(b)に示すように、導入部20a側に設けられた熱伝達手段40C、中間領域に設けられた熱伝達手段40D、排出部20b側に設けられた熱伝達手段40Eの各々から発生する熱流束が順次(段階的に)小さくなるように設定する。具体的には、熱伝達手段40C、40D、40Eの各々から発生する熱流束を概ね620W/m2、410W/m2、310W/m2に設定する。
そして、このような設定条件及び上述した1次元モデルの計算式((3)、(4)、(5)式)に基づいて、図6(c)に示すような任意の流路位置における温度の変化傾向を得た。
【0054】
これにより、図6(c)に示すように、反応流路20Aの導入部20a近傍の領域D31においては、十分に大きな熱エネルギー(熱流束620W/m2)が反応流路20Aに供給されることになるので、導入部20a近傍において発生する急激な吸熱触媒反応の進行に伴う流路温度の低下傾向が比較的抑制される(概ね294℃以上)。
【0055】
一方、反応流路20Aの中間領域に対応する領域D32においては、反応流路20Aに供給される熱エネルギーが吸熱触媒反応における最適な熱条件(300℃)に対応した理想値近傍(熱流束410W/m2)に設定されることになるので、中間領域において発生する吸熱触媒反応の進行状態(反応の進行及び鈍化)による流路温度の下降や上昇が比較的抑制される(概ね298℃以上305℃以下)。また、反応流路20Aの排出部20b近傍の領域D33においては、十分に小さな熱エネルギー(熱流束310W/m2)が反応流路20Aに供給されることになるので、排出部20b近傍において発生する吸熱触媒反応の鈍化による流路温度の上昇傾向が抑制される(概ね303℃以下)。
よって、反応流路20Aの略全域で流路温度が任意に制御されることにより、吸熱触媒反応における最適な熱条件(300℃)に対して、比較的近傍の温度範囲(概ね295℃〜305℃)内で変化する流路温度が実現されることが判明した。
【0056】
さらに、図7(a)に示すように、6等分に分割された熱伝達手段40F〜40Kの各々を、反応流路の形成領域(流路位置が導入部20in(0mm)から概ね55mm以下の領域D61、概ね55mm〜110mmの領域D62、概ね110mm〜165mmの領域D63、概ね165mm〜220mmの領域D64、概ね220mm〜275mmの領域D65、概ね275mm以上の領域D66)に対応するように設けた場合には、反応流路の任意の位置における流路温度を、上述した反応流路における流路温度の変化傾向(図21(b)参照)に対応して、一定(300℃)に維持するように、図7(b)に示すように、導入部20a側から排出部20b側に順次に設けられた熱伝達手段40F〜40Kの各々から発生する熱流束が順次(段階的に)小さくなるように設定する。具体的には、熱伝達手段40F〜40Kの各々から発生する熱流束を概ね690W/m2、520W/m2、440W/m2、390W/m2、340W/m2、290W/m2に設定する。
そして、このような設定条件及び上述した1次元モデルの計算式((3)、(4)、(5)式)に基づいて、図7(c)に示すような任意の流路位置における温度の変化傾向を得た。
【0057】
これにより、図7(c)に示すように、反応流路20Aの導入部20a直近の領域D61、D62においては、十分に大きな熱エネルギー(熱流束690W/m2、520W/m2)が反応流路20Aに供給されることになるので、導入部20a近傍において発生する急激な吸熱触媒反応の進行に伴う流路温度の低下傾向が大幅に抑制される(概ね297℃以上)。
【0058】
一方、反応流路20Aの比較的中間に位置する領域に対応する領域D63、D64においては、反応流路20Aに供給される熱エネルギーが吸熱触媒反応における最適な熱条件(300℃)に対応した理想値近傍(熱流束440W/m2、390W/m2)に設定されることになるので、この領域において発生する吸熱触媒反応の進行状態(反応の進行及び鈍化)による流路温度の下降や上昇が大幅に抑制される(概ね298℃以上302℃以下)。また、反応流路20Aの排出部20b直近の領域D65、D66においては、十分に小さな熱エネルギー(熱流束340W/m2、290W/m2)が反応流路20Aに供給されることになるので、排出部20b近傍において発生する吸熱触媒反応の鈍化による流路温度の上昇傾向が大幅に抑制される(概ね302℃以下)。
よって、反応流路20Aの略全域で流路温度が細かに制御されることにより、吸熱触媒反応における最適な熱条件(300℃)に対して、極近傍の温度範囲(概ね297℃〜303℃)内で変化する流路温度が実現されることが判明した。
【0059】
以上のことから、反応流路20Aの形成領域に対応して設けられる熱伝達手段の分割数を多くし、反応流路20Aの各領域に供給される熱エネルギーを、反応流路20Aの導入部20aから排出部20b側方向に順次小さくなるように制御することにより、反応流路の全域において流路温度が安定化し、上記吸熱触媒反応の反応効率が向上することが確認された。特に、本願発明者が上記各結果を詳しく検討したところ、上述した図5(b)、図6(b)、図7(b)に示したような流路温度の変化傾向を得るためには、上述した各熱伝達手段から発生する熱流束の設定値として、反応流路20Aの各流路位置における吸熱触媒反応の進行状態に対応して、図5(a)、図6(a)、図7(a)中に破線で示すように、概ね指数関数的な減少傾向を示す値を設定することが有効であることが判明した。
【0060】
これにより、上述した第1の実施形態に示した反応流路部の構成においては、複数に分割(3等分割)された薄膜ヒータ41a、41b、41cの各々から発生する熱エネルギーを、図6(b)に示したように、反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b側方向に指数関数的に減少するように個別に設定することにより、反応流路20Aの略全域にわたって、図6(c)に示したように、流路温度を吸熱触媒反応の進行に適した比較的安定した熱条件に設定することができるので、上記図4及び(1)式に示した熱流束の計算式に基づいて、発熱制御部61a、61b、61cから各薄膜ヒータ41a(熱伝達手段40C)、41b(熱伝達手段40D)、41c(熱伝達手段40E)に印加される電圧を、例えば、図8(b)に示すような値(直流電圧、又は、交流電圧)に設定する比較的簡易な発熱制御方法により、反応流路20Aの導入部20a側における熱エネルギーの不足を抑制することができるとともに、反応流路20Aの排出部20b側における熱エネルギーの蓄積を抑制することができ、吸熱触媒反応における反応効率の向上を図りつつ、触媒の特性劣化や破壊を回避することができる。
【0061】
ここで、各薄膜ヒータ41a、41b、41cに印加される電圧(直流電圧、又は、交流電圧)の設定値は、具体的には、薄膜ヒータ41a(熱伝達手段40Cに相当)に対して直流電圧では13.2V、交流電圧では18.7Vを印加することにより、上記(1)式に基づいて620W/m2の熱流束が得られ、薄膜ヒータ41b(熱伝達手段40Dに相当)に対して直流電圧では10.7V、交流電圧では15.2Vを印加することにより、410W/m2の熱流束が得られ、薄膜ヒータ41c(熱伝達手段40Eに相当)に対して直流電圧では9.3V、交流電圧では13.2Vを印加することにより、310W/m2の熱流束が得られ、上述した図6(c)に近似した温度変化を有する流路温度が得られる。また、図8(a)は、薄膜ヒータを2分割(熱伝達手段40A、40B)した場合、さらに、図8(c)は、薄膜ヒータを6分割(熱伝達手段40F〜40K)した場合における各薄膜ヒータに印加される電圧設定値を示したものである。
【0062】
なお、上記結果においては、熱伝達手段(薄膜ヒータ)の分割数を多くして、各熱伝達手段から発生する熱流束を個別に設定することにより、反応流路の各流路位置における温度を細かく、かつ、精度よく制御することができるものの、上述したような第1の実施形態に示したように、各熱伝達手段(薄膜ヒータ)ごとに熱伝達制御手段(発熱制御部;電源装置)を設けた構成を適用する場合にあっては、熱伝達手段の分割数に応じて熱伝達制御手段の装置規模が増大するので、各吸熱触媒反応において必要とされる流路温度の設定精度と化学反応装置の装置規模とのバランスを勘案して、適当な分割数(例えば、3分割)を適用することが望ましい。
【0063】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る化学反応装置の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。
図9は、本発明に係る化学反応装置に適用される反応流路部の第2の実施形態を示す概略構成図であり、図10は、本実施形態に適用される熱伝達手段への熱流体の供給状態を示す概略図である。ここで、上述した第1の実施形態と同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
【0064】
上述した第1の実施形態(図1参照)においては、反応流路20A(触媒21)に所定の熱エネルギーを供給する熱伝達手段として、膜厚及びパターン形状が均一な複数の薄膜ヒータ41a、41b、41cを備えるとともに、該薄膜ヒータ41a、41b、41cから発生する熱流束を制御する熱伝達制御手段として、熱伝達手段の各々に所定の電圧を印加する電源機能を備えた複数の発熱制御部61a、61b、61cを備え、各薄膜ヒータ41a、41b、41cに印加する電圧を個別に制御することにより、反応流路20Aに供給される熱エネルギーを制御する構成について説明したが、本実施形態においては、熱伝達手段として上記薄膜ヒータ41a、41b、41cに替えて、熱流体流路(媒体通過流路)を備えた熱流体回路を適用した構成を有している。
【0065】
具体的には、図9、図10に示すように、本実施形態に係る化学反応装置に適用される反応流路部は、大別して、微小基板10の一面側に形成され、内壁面に触媒21が付着形成された反応流路20Aと、微小基板10の一面側に接合された閉止基板30と、反応流路20Aの形成領域に対応して分割して配策され、液体あるいは気体からなる熱流体(熱伝達制御媒体)が供給される複数組の熱流体流路(媒体通過流路)42a、42b、42cを備えた熱流体回路42が形成され、微小基板10の他面側に接合された封止基板52と、複数の熱流体流路42a、42b、42cに各々に異なる量の熱流体を供給して、各熱流体流路42a、42b、42cにおける発熱状態を個別に制御する複数の流体ポンプ(熱伝達制御手段;図示を省略)と、を備えて構成されている。ここで、反応流路20Aの構成は、上述した第1の実施形態と同等であるので、詳しい説明を省略する。また、流体ポンプは、反応流路20Aが形成される微小基板10に対して、微細加工技術を用いて形成されたマイクロポンプであってもよい。
【0066】
このような構成を有する化学反応装置において、図10に示すように、流体ポンプから複数の熱流体流路42a、42b、42cに各々供給する熱流体の量Fa、Fb、Fcを、上述により得られた吸熱触媒反応の進行状態に対応して、反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b方向に指数関数的に徐々に(実質的には、段階的に)減少するように制御することにより、反応流路20Aの導入部20a側に十分大きな熱エネルギーを供給し、反応流路20Aの排出部20b側に十分小さな熱エネルギーを供給する。ここで、各熱流体流路42a、42b、42cにおいて発生する熱エネルギーは、流体ポンプから複数の熱流体流路42a、42b、42cに各々に供給される熱流体の量に略比例する。流体の単位時間当たりの流量は、熱流体流路42a、42b、42cの流入口45a、45b、45cの径、流出口46a、46b、46cの径の設定や流体ポンプにより制御されている。
【0067】
これにより、上述した実施形態と同様に、反応流路20Aの導入部20a側における急激な吸熱触媒反応の進行に伴う熱エネルギーの不足を補い、また、反応流路20Aの排出部20b側における吸熱触媒反応の鈍化に伴って反応流路20Aに蓄積される熱エネルギーを抑制することができるので、吸熱触媒反応の速度の低下や、触媒の特性劣化や破壊を回避して、反応流路の全域において高い反応効率でメタノール水蒸気改質反応等の吸熱触媒反応を実現することができる。
【0068】
なお、本発明に係る熱伝達手段は、上述した各実施形態に示した構成に限定されるものではなく、反応流路の所定の領域に対して異なる熱エネルギーを個別に供給することができる熱源となるものであればよく、また、熱伝達制御手段は、熱伝達手段に供給される電圧や熱流体等の熱伝達制御媒体の供給量を、反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b方向に指数関数的に徐々に(実質的には、段階的に)減少するように、個別に制御することができるものであれば、他の構成を有するものであっても良好に適用することができる。
【0069】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る化学反応装置の第3の実施形態について、図面を参照して説明する。
図11は、本発明に係る化学反応装置の第3の実施形態を示す概略構成図であり、図12は、本実施形態に係る化学反応装置に適用される熱伝達手段の一構成例を示す概略図である。また、図13は、熱伝達手段の分割数と薄膜ヒータの膜厚の関係を示す相関図である。ここで、上述した実施形態と同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
【0070】
上述した第1の実施形態(図1参照)においては、膜厚及びパターン形状が均一な複数の薄膜ヒータ41a、41b、41cの各々に対して、異なる発熱制御部61a、61b、61cから印加する電圧を個別に設定することにより、各薄膜ヒータ41a、41b、41cから発生する熱流束を制御する構成について説明したが、本実施形態においては、単一の熱伝達制御手段(発熱制御部)から供給される共通の熱伝達制御媒体(電圧)に対して、各々異なる発熱特性を示す複数の熱伝達手段(薄膜ヒータ)を設けた構成を有している。
【0071】
すなわち、図11、図12に示すように、本実施形態に係る化学反応装置に適用される反応流路部は、大別して、微小基板10の一面側に形成され、内壁面に触媒21が付着形成された反応流路20Aと、微小基板10の一面側に接合された閉止基板30と、微小基板10の他面側に同一のパターン形状を有するとともに、異なる膜厚を有して形成された複数の薄膜ヒータ(熱伝達手段)43a、43b、43cと、該複数の薄膜ヒータ43a、43b、43cを真空状態のキャビティ51中に密閉封止するように微小基板10の他面側に接合された封止基板50と、複数の薄膜ヒータ43a、43b、43cの各々に均一な電力を共通に供給して、各薄膜ヒータ43a、43b、43cにおける発熱状態を一括して制御する単一の発熱制御部(熱伝達制御手段)63と、を備えて構成されている。ここで、反応流路20Aの構成は、上述した第1の実施形態と同等であるので、詳しい説明を省略する。
【0072】
複数の薄膜ヒータ43a、43b、43cは、具体的には、図11(b)、(c)に示すように、いずれも同一の発熱体材料により同一のパターン形状(ここでは、長方形)を有するとともに、反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b方向に膜厚δa、δb、δcが、δa>δb>δcとなる所定の関係を有して徐々に小さくなるように、望ましくは、薄膜ヒータ43a、43b、43cの各膜厚が流路位置に対して指数関数的に小さくなるように構成されている。そして、このような薄膜ヒータ43a、43b、43cは、図12に示すように、反応流路20Aの平面パターン(形成領域)を略3等分に分割した各領域に対応するように配置形成されるとともに、所定の電圧V31を生成、出力する電源装置としての機能を有する単一の発熱制御部63に対して並列的に接続されている。
【0073】
そして、このようなパターン形状(長方形)を有する各薄膜ヒータ43a、43b、43cから発生し、反応流路20Aの各形成領域に供給される熱エネルギー(熱流束)は、発熱制御部63から印加される電圧V31が一定の場合、上記図4及び(1)式に示した熱流束の計算式に基づいて、薄膜ヒータの膜厚δhに応じて一義的に決定されるので、各薄膜ヒータ43a、43b、43cの膜厚δa、δb、δcに応じて反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b方向に、(指数関数的に)徐々に低下するように設定される。これにより、反応流路20Aの各形成領域における吸熱触媒反応の進行状態に対応した熱エネルギーが供給されることになる。
【0074】
したがって、本実施形態に示した反応流路部の構成においては、単一の発熱制御部63から各薄膜ヒータ43a、43b、43cに均一な電圧を共通に印加する簡易な構成及び制御方法により、図6(b)に示したように、各薄膜ヒータ43a(熱伝達手段40C)、43b(熱伝達手段40D)、43c(熱伝達手段40E)から発生する熱エネルギーを、反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b側方向に指数関数的に減少するように個別に設定することができるので、反応流路20Aの略全域にわたって、図6(c)に示したように、流路温度を吸熱触媒反応の進行に適した比較的安定した熱条件に設定することができる。
【0075】
ここで、各薄膜ヒータ43a、43b、43cの膜厚δa、δb、δcの具体的な設定は、上述した結果においては、図13(b)に示すように、薄膜ヒータ43aでは膜厚δaを0.59μmに設定することにより、上記(1)式に基づいて620W/m2の熱流束が得られ、薄膜ヒータ43bでは膜厚δbを0.39μmに設定することにより、410W/m2の熱流束が得られ、薄膜ヒータ43cでは膜厚δcを0.30μmに設定することにより、310W/m2の熱流束が得られ、上述した図6(c)に近似した温度変化を有する流路温度が得られる。また、図13(a)は、薄膜ヒータを2分割(熱伝達手段40A、40B)した場合、さらに、図13(c)は、薄膜ヒータを6分割(熱伝達手段40F〜40K)した場合における各薄膜ヒータの膜厚設定値を示したものである。
【0076】
これにより、反応流路20Aの導入部20a近傍の領域においては、十分に大きな熱エネルギー(熱流束620W/m2)が供給されることになるので、導入部20a近傍における熱エネルギーの不足を抑制することができ、また、反応流路20Aの中間領域に対応する領域においては、吸熱触媒反応における最適な熱条件(300℃)に対応した熱エネルギー(熱流束410W/m2)が反応流路20Aに供給されることになるので、中間領域において発生する吸熱触媒反応の進行状態(反応の進行及び鈍化)による流路温度の下降や上昇が比較的抑制され、さらに、反応流路20Aの排出部20b近傍の領域においては、十分に小さな熱エネルギー(熱流束310W/m2)が供給されることになるので、排出部20b近傍における熱エネルギーの蓄積を抑制することができ、吸熱触媒反応における反応効率の向上を図りつつ、触媒の特性劣化や破壊を回避することができる。
【0077】
加えて、本実施形態に係る化学反応装置によれば、膜厚のみを変化させて複数の薄膜ヒータの形成することにより、各薄膜ヒータから反応流路に供給される熱エネルギーを個別に制御する構成を有しているが、このような構成によれば、単一の製造プロセスにおいて、膜厚形成条件(成膜条件)を変更するだけで、比較的容易に図11に示したような化学反応装置の構成を実現することができる。
【0078】
なお、本実施形態においては、熱伝達手段として膜厚の異なる複数の薄膜ヒータを備え、熱伝達制御手段として各薄膜ヒータに一定の電圧を共通に印加する電源機能を備えた発熱制御部を備えた構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、薄膜ヒータ以外の熱伝達手段、例えば、反応流路の形成領域に対応して分割して配策され、各々異なる密度(単位面積あたりの流量)の熱流体が流れる複数組の熱流体流路が並列に接続された熱流体回路と、熱流体回路に所定の流量の熱流体を供給するマイクロポンプ等の単一の流体ポンプとを備え、各熱流体流路から反応流路の各形成領域に供給される熱エネルギーを、上述した第2の実施形態と同様に、反応流路の導入部側から排出部方向に指数関数的に減少させるように設定した構成を適用するものであってもよい。
【0079】
また、本実施形態に適用される熱伝達手段の他の構成としては、複数の薄膜ヒータとして、パターン形状及び膜厚が均一であって、各々異なる発熱特性を有する発熱体材料により構成されているものであってもよい。ここで、各薄膜ヒータにおける発熱特性は、反応流路の導入部側から排出部方向に、発生する熱エネルギーが低下するように、望ましくは、指数関数的に低下するように発熱体材料が選択される。すなわち、図4及び(1)式に示したように、薄膜ヒータから発生する熱流束qは、薄膜ヒータを構成する発熱体材料の抵抗率ρhに対して反比例の関係を有して一義的に決定されるので、各薄膜ヒータを構成する発熱体材料の抵抗率ρhを、反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b方向に徐々に増加するように設定することにより、熱流束を(望ましくは、指数関数的に)徐々に減少するように制御することができる。この場合においても、単一の発熱制御部を備えた簡易な構成により、複数の薄膜ヒータから反応流路の各領域に供給される熱エネルギーを各々異ならせることができる。
【0080】
<第4の実施形態>
次に、本発明に係る化学反応装置の第4の実施形態について、図面を参照して説明する。
図14は、本発明に係る化学反応装置の第4の実施形態を示す概略構成図であり、図15は、本実施形態に係る化学反応装置に適用される熱伝達手段の一構成例を示す概略図である。また、図16は、熱伝達手段の分割数と薄膜ヒータのパターン長の関係を示す相関図である。ここで、上述した実施形態と同等の構成については、同一の符号を付して、その説明を簡略化又は省略する。
【0081】
上述した第1及び第3の実施形態においては、パターン形状が均一な複数の薄膜ヒータを備えた構成について説明したが、本実施形態においては、異なるパターン形状を有する複数の熱伝達手段(薄膜ヒータ)と、複数の熱伝達手段に均一な熱伝達制御媒体(電圧)を共通に供給する単一の熱伝達制御手段(発熱制御部)を備えた構成を有している。
【0082】
すなわち、図14、図15に示すように、本実施形態に係る化学反応装置に適用される反応流路部は、大別して、微小基板10の一面側に所定の平面パターンを有し、内壁面に触媒21が付着形成された反応流路20Bと、微小基板10の一面側に接合された閉止基板30と、微小基板10の他面側に同一の膜厚を有するとともに、異なるパターン形状を有して形成された複数の薄膜ヒータ(熱伝達手段)44a、44b、44cと、該複数の薄膜ヒータ44a、44b、44cを真空状態のキャビティ51中に密閉封止するように微小基板10の他面側に接合された封止基板50と、複数の薄膜ヒータ44a、44b、44cの各々に均一な電力を共通に供給して、各薄膜ヒータ44a、44b、44cにおける発熱状態を一括して制御する単一の発熱制御部(熱伝達制御手段)64と、を備えて構成されている。
【0083】
反応流路20Bは、図14(a)、(b)に示すように、微小基板10の一面側に、任意の溝形状及び任意の平面パターンを有し、内壁面に所定の触媒21が付着形成された構成を有している。ここで、反応流路20Bは、例えば、反応流路20Bの導入部20a側から排出部20b方向に、蛇行振幅(図14(a)における上下方向の流路長さ)SLが徐々に大きくなるように設定された蛇行パターンを有して構成されている。
【0084】
複数の薄膜ヒータ44a、44b、44cは、具体的には、図11(b)、(c)に示すように、いずれも同一の発熱体材料を用い、かつ、同一の膜厚及び同一のパターン幅(図14(c)における左右方向の長さ)を有した長方形状に形成され、反応流路20Bの蛇行振幅SLの変化に対応して導入部20a側から排出部20b方向にパターン長(図14(c)における上下方向の長さ)La、Lb、Lcが、La<Lb<Lcとなる所定の関係を有して徐々に大きくなるように、望ましくは、薄膜ヒータ44a、44b、44cに対応する各パターンの総流路の長さが流路位置に対して指数関数的に大きくなるように構成されている。
【0085】
そして、このような薄膜ヒータ44a、44b、44cは、図15に示すように、反応流路20Bの平面パターン(形成領域)を略3等分に分割した各領域に対応するように配置形成されるとともに、所定の電圧V41を生成、出力する電源装置としての機能を有する単一の発熱制御部64に対して並列的に接続されている。なお、図14においては、図示の関係上、薄膜ヒータ44a、44b、44cが、反応流路20Bの平面パターン(形成領域)を略3等分した領域に対応していないが、反応流路20Bの平面パターンを適当に設計することにより、反応流路20Bを流路の配索長さ方向に等分した各領域ごとに、パターン長さのみが異なる長方形状の薄膜ヒータが配置形成されているものとする。
【0086】
そして、このようなパターン形状(長方形)を有する各薄膜ヒータ44a、44b、44cから発生し、反応流路20Bの各形成領域に供給される熱エネルギー(熱流束)は、発熱制御部64から印加される電圧V41が一定の場合、上記図4及び(1)式に示した熱流束の計算式に基づいて、薄膜ヒータのパターン長さLhyに対して反比例の関係を有して一義的に決定されるので、各薄膜ヒータ44a、44b、44cのパターン長La、Lb、Lcを、反応流路20Aの導入部20a側から排出部20b方向に徐々に増加するように設定することにより、熱流束を(指数関数的に)徐々に減少するように制御される。これにより、反応流路20Bの各形成領域における吸熱触媒反応の進行状態に対応した熱エネルギーが供給されることになる。
【0087】
したがって、本実施形態に示した反応流路部の構成においては、単一の発熱制御部64から各薄膜ヒータ44a、44b、44cに均一な電圧を共通に印加する簡易な構成及び制御方法により、図6(b)に示したように、各薄膜ヒータ44a(熱伝達手段40C)、44b(熱伝達手段40D)、44c(熱伝達手段40E)から発生する熱エネルギーを、反応流路20Bの導入部20a側から排出部20b側方向に指数関数的に減少するように個別に設定することができるので、反応流路20Bの略全域にわたって、図6(c)に示したように、流路温度を吸熱触媒反応の進行に適した比較的安定した熱条件に設定することができる。
【0088】
ここで、各薄膜ヒータ44a、44b、44cのパターン長La、Lb、Lcの具体的な設定値は、上述した結果においては、図16(b)に示すように、薄膜ヒータ44aではパターン長Laを18.7mmに設定することにより、上記(1)式に基づいて620W/m2の熱流束が得られ、薄膜ヒータ44bではパターン長Lbを15.2mmに設定することにより、410W/m2の熱流束が得られ、薄膜ヒータ44cではパターン長Lcを13.2mmに設定することにより、310W/m2の熱流束が得られ、上述した図6(c)に近似した温度変化を有する流路温度が得られる。また、図16(a)は、薄膜ヒータを2分割(熱伝達手段40A、40B)した場合、さらに、図16(c)は、薄膜ヒータを6分割(熱伝達手段40F〜40K)した場合における各薄膜ヒータのパターン長の設定値を示したものである。
【0089】
これにより、反応流路20Bの導入部20a近傍の領域においては、十分に大きな熱エネルギー(熱流束620W/m2)が供給されることになるので、導入部20a近傍における熱エネルギーの不足を抑制することができ、また、反応流路20Bの中間領域に対応する領域においては、吸熱触媒反応における最適な熱条件(300℃)に対応した熱エネルギー(熱流束410W/m2)が反応流路20Bに供給されることになるので、中間領域において発生する吸熱触媒反応の進行状態(反応の進行及び鈍化)による流路温度の下降や上昇が比較的抑制され、さらに、反応流路20Bの排出部20b近傍の領域においては、十分に小さな熱エネルギー(熱流束310W/m2)が供給されることになるので、排出部20b近傍における熱エネルギーの蓄積を抑制することができ、吸熱触媒反応における反応効率の向上を図りつつ、触媒の特性劣化や破壊を回避することができる。
【0090】
加えて、本実施形態に係る化学反応装置によれば、パターン長のみを変化させて複数の薄膜ヒータを形成することにより、各薄膜ヒータから反応流路に供給される熱エネルギーを個別に制御する構成を有しているが、このような構成によれば、単一の製造プロセスにおいて、マスクパターンのパターン長を変更するだけで、極めて容易に図14に示したような化学反応装置の構成を実現することができる。
【0091】
次に、上述した各実施形態に係る化学反応装置の適用例について、図面を参照して簡単に説明する。
上述したように、本発明に係る化学反応装置は、第1の流体物質を所定の熱条件下で第2の流体物質に変換する吸熱触媒反応を、触媒特性の劣化を抑制しつつ、高い反応効率で実現することができるとともに、少なくとも反応流路を含む化学反応装置の構成を微小空間に集積化することができるので、化学物質や薬品等の生成装置、あるいは、近年、研究開発の進展が著しい燃料電池における改質器等として良好に適用することができる。以下に、本発明に係る化学反応装置を燃料電池の改質器として適用した場合について説明する。
【0092】
図17は、本発明に係る化学反応装置の適用が可能な燃料電池の要部構成を示すブロック図であり、図18は、本発明に係る化学反応装置の適用が可能な燃料電池の発電部を示す概略構成図である。また、図19は、本発明に係る化学反応装置の適用が可能な燃料電池の改質部を示す概略構成図である。なお、ここでは、燃料電池の例として、燃料改質方式を採用した固体高分子型の燃料電池の構成を示して説明する。
【0093】
図17に示すように、本発明に係る化学反応装置の適用が可能な燃料電池100は、大別して、燃料改質方式の固体高分子型燃料電池の構成を有する発電部(燃料電池本体)110と、図示を省略した燃料タンクや燃料パック等に貯蔵、封入された発電用燃料(主に、水素を含む液体燃料)の発電部110への供給量を制御する燃料制御部120と、発電部110への空気(酸素)の供給量を制御する空気制御部130と、燃料制御部120により供給された発電用燃料を改質して、発電用燃料に含有される水素をガス化して発電部110に供給する改質部140と、を有して構成されている。
【0094】
ここで、発電部110は、図18に示すように、大別して、例えば、白金や白金・ルテニウム等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなる燃料極(カソード)111と、白金等の触媒微粒子が付着した炭素電極からなる空気極(アノード)112と、燃料極111と空気極112の間に介装されたフィルム状のイオン導電膜(交換膜)113と、を有して構成されている。ここで、燃料極111には、改質部140を介して抽出された水素ガス(H2)が供給され、一方、空気極112には、空気制御部130を介して大気中の酸素ガス(O2)が供給されることにより、電気化学反応により発電が行われ、負荷200に対して所定の出力電圧/電流が供給される。
【0095】
具体的には、燃料極111に水素ガス(H2)が供給されると、次の化学反応式(6)に示すように、上記白金や白金・ルテニウム等の触媒により電子(e−)が分離した水素イオン(プロトン;H+)が発生し、イオン導電膜113を介して空気極112側に通過するとともに、燃料極111を構成する炭素電極により電子(e−)が取り出されて負荷200に供給される。
3H2 → 6H++6e− ・・・(6)
【0096】
一方、空気極112に空気が供給されると、次の化学反応式(7)に示すように、上記白金等の触媒により負荷200を経由した電子(e−)とイオン導電膜113を通過した水素イオン(H+)と空気中の酸素ガス(O2)が反応して水(H2O)が生成される。
【0097】
【数3】
【0098】
このような一連の電気化学反応((6)式及び(7)式)は、概ね60〜80℃の比較的低温の環境下で進行し、電力以外の副生成物は、基本的に水(H2O)のみとなる。
なお、上述したような電気化学反応により負荷200に供給される出力電圧/電流は、上記(6)式及び(7)式に示したように、発電部110の燃料極111に供給される水素ガス(H2)の量に依存する。
【0099】
また、燃料制御部120は、発電部110において、所定の電圧/電流を生成、出力するために必要な量の水素ガス(H2)となる分の燃料や水等を取り込んで、後述する改質部140により水素ガスに改質して、発電部110の燃料極111に供給する制御を行い、また、空気制御部130は、発電部110の空気極112に供給する酸素ガス(O2)の量を制御する。したがって、これらの制御部120、130による発電部110への水素ガス(H2)及び酸素ガス(O2)の供給量を調整することにより、発電部110における電気化学反応の進行状態を制御して、負荷200に供給される出力電圧/電流を任意に設定することができる。
【0100】
ここで、空気制御部130は、発電部110における単位時間あたりの酸素の最大消費量に相当する空気を供給可能であれば、発電部110の空気極112に供給する酸素ガスの量を制御することなく、発電部110の駆動時に常時酸素ガスを供給するものであってもよく、また、別の構成として、発電部110における電気化学反応の進行状態を、燃料制御部120において調整される水素ガスの供給量のみで制御し、空気制御部130の代わりに通気孔を設け、発電部110における電気化学反応に用いられる上記最大消費量以上の空気(大気)が通気孔を介して供給されるように構成されているものであってもよい。
【0101】
また、改質部140は、燃料制御部120により所定の供給量で供給される発電用燃料に対して、所定の吸熱触媒反応(水蒸気改質反応)を利用して発電用燃料に含まれる水素成分を抽出して上記発電部110に供給する。具体的には、メタノール等の水素を含む液体燃料(アルコール類)から、吸熱触媒反応である水蒸気改質反応を利用して、水素ガス(H2)を生成する。ここで、現在、研究開発が行われている燃料改質方式の燃料電池に適用されている発電用燃料としては、上記発電部110の構成により、比較的高いエネルギー変換効率で電気エネルギーを生成することができる燃料であって、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等の液体燃料や、ジメチルエーテル、イソブタン、天然ガス(CNG)等の液化ガス等の流体物質を良好に適用することができる。
【0102】
改質部140における水素ガスの生成に利用される吸熱触媒反応の例としては、液体燃料の一例であるメタノールを適用した場合には、次の化学反応式(8)に示すような水蒸気改質反応が生じ、また、定温常圧で気体となる液化ガスの一例であるジメチルエーテルを適用した場合には、次の化学反応式(9)に示すような水蒸気改質反応が生じる。なお、いずれの水蒸気改質反応においても、概ね300℃の熱条件の下で当該反応が良好に進行する。また、この改質反応により生成される水素以外の微量の生成物(主に、CO2)は、大気中に排出される。
CH3OH+H2O → 3H2+CO2 ・・・(8)
CH3OCH3+3H2O → 6H2+2CO2 ・・・(9)
【0103】
ここで、改質部140に適用される具体的な構成例は、例えば、図19に示すように、シリコン等の微小基板141の一面側に、微細加工技術を用いて、所定の溝形状及び所定の平面パターンを有するように設けられた燃料吐出部142a、水吐出部142b、燃料気化部143a、水気化部143b、混合部143c、改質反応流路144、水素ガス排気部146と、少なくとも、上記改質反応流路144の形成領域に対応する領域であって、例えば、微小基板141の他面側に複数に分割して設けられた発熱部145と、を備えて構成されている。
【0104】
燃料吐出部142a及び水吐出部142bは、上述したような水蒸気改質反応における発電用燃料又は水を、例えば、所定の単位量ごとに液状粒として流路内に吐出する流体吐出機構を有している。したがって、燃料吐出部142a及び水吐出部142bにおける発電用燃料又は水の吐出量に基づいて、例えば、上記(8)、(9)式に示した水蒸気改質反応の進行状態が制御されることになるため、燃料吐出部142a及び水吐出部142bは、上述した燃料制御部120における燃料供給量の制御機能の一部を担う構成を有している。
【0105】
燃料気化部143a及び水気化部143bは、燃料吐出部142a及び水吐出部142bから液状粒として吐出された発電用燃料又は水を、加熱処理あるいは減圧処理等することにより気化し、混合部143cにおいて、発電用燃料ガスと水蒸気の混合ガスを生成する。
改質反応流路144及び発熱部145は、上述した各実施形態に示した反応流路部に相当し、上記混合部143cにおいて生成された混合ガスを第1の流体物質として改質反応流路144に導入し、改質反応流路144の内壁面に付着形成された銅-亜鉛(Cu-Zn)系の触媒(図示を省略)、及び、改質反応流路144の形成領域に対応して複数に均等分割して設けられた発熱部145から、改質反応流路144の各領域に供給される所定の熱エネルギーに基づいて、例えば、上記(8)、(9)式に示した水蒸気改質反応を生じさせて、第2の流体物質として水素ガスを生成する。
【0106】
水素ガス排気部146は、改質反応流路144において生成された水素ガスを排出して、上述した発電部110に供給することにより、発電部110において、上記(6)式及び(7)式に基づく一連の電気化学反応が生じて、所定の出力電圧/電流が生成される。
そして、このような構成を有する改質部140において、改質反応流路144の形成領域に対応して複数に分割して設けられた発熱部145(例えば、上述した実施形態に示したような薄膜ヒータ)の分割数、及び、各々において発生する熱エネルギーを、上述した結果に基づく、所定の数値に設定することにより、改質反応流路144の略全域において、上記(8)、(9)式に示した水蒸気改質反応の進行状態に応じた適切な熱エネルギーが供給されることになり、反応効率の向上を図りつつ、触媒の特性劣化を抑制することができるとともに、改質部140を含む燃料電池100の構成を大幅に小型化して、汎用の乾電池の代替えとなるポータブル電源を実現することができる。
【0107】
上記各実施形態では、1つの連続した流路を複数の領域に分割して、流路と流路の間(流路の設けられていない部分)を含めた各領域毎に、複数の薄膜ヒータ或いは複数の熱流体流路を設けたが、流路上のみにヒータあるいは熱流体流路を設け配置させると、さらに熱利用効率を向上することができる。
また、上記各実施形態では、吸熱反応を促進するために薄膜ヒータ等の熱伝達手段を用いたが、発熱反応により水素等の第2の流体物質を生成するマイクロリアクタの場合、複数の熱流体流路内には流路内の発熱を吸熱するようにより低い温度に設定して、各熱流体流路毎の単位時間当たりの流量又は流体の温度を互いに異ならせることにより効率よく反応を制御することができる。
【0108】
【発明の効果】
請求項1記載の化学反応装置によれば、微細加工技術を用いて微小空間に各種機能要素が集積化された化学反応装置において、所定の吸熱反応(化学反応)を行う反応流路の形成領域に対応して複数の熱伝達手段が設けられ、熱伝達制御手段による発熱状態の制御により、複数の熱伝達手段の各々から所定の熱エネルギー(熱流束)供給されて、第1の流体物質を第2の流体物質に変換する上記吸熱反応が実現される。このように、吸熱反応により第2の流体物質に変換する場合、反応流路内に反応を促進する触媒を設けると、従来余剰の加熱により触媒を劣化させていたが、熱利用効率を高くしたために触媒や反応流路内の過熱を防止でき、化学反応装置の長寿命化をなし得ることができる。
【0109】
このような構成を有する化学反応装置によれば、反応流路の形成領域に対応して、複数に分割された熱伝達手段を設けた簡易な構成により、反応流路の任意の領域に対して、所望の熱エネルギーを供給することができるので、化学反応装置における反応流路部周辺の構成の複雑化や大型化を抑制しつつ、反応効率の高い吸熱反応を実現することができる。
【0110】
ここで、各熱伝達手段から反応流路に供給される熱エネルギーを、反応流路の導入部から排出部方向に順次小さくなるように、望ましくは、指数関数的に小さくなるように設定することにより、反応流路の導入部側から排出部方向に吸熱反応が鈍化する傾向(吸熱反応の進行状態)に良好に対応した熱エネルギーを供給することができるので、反応流路の導入部側における熱エネルギーの不足による反応速度の低下や、排出部側における熱エネルギーの蓄積による反応特性(特に、触媒特性)の劣化の発生を抑制して、反応効率の一層の向上を図ることができる。
【0111】
上述したような化学反応装置の構成において、熱伝達手段は、各々、所定量の熱伝達制御媒体の供給に対して、同一の熱エネルギーを発生する発熱特性を有し、該熱伝達手段の各々に対応して複数設けられた熱伝達制御手段により、熱伝達手段の各々への熱伝達制御媒体の供給量を個別に設定することにより、反応流路に供給される熱エネルギーを制御するようにしてもよい。
この場合、上記熱伝達制御手段は、熱伝達手段の各々に供給される熱伝達制御媒体の供給量を、反応流路の導入部から排出部方向に順次低くなるように、特に、指数関数的に低くなるように制御することが望ましい。
【0112】
すなわち、同一の発熱特性を有する複数の熱伝達手段の各々に対して、熱伝達制御媒体の供給量が個別に制御されることにより、反応流路の導入部から排出部方向に発生する熱エネルギーが小さくなるように設定される。これにより、各熱伝達制御手段により熱伝達制御媒体の供給量を調整する比較的簡易な構成及び制御方法で、反応流路における吸熱反応の進行状態に良好に対応した熱エネルギーを供給することができる。
【0113】
このような熱伝達手段の具体的構成としては、各々、膜厚及び平面形状が均一な薄膜状の発熱体材料からなる薄膜ヒータを良好に適用することができる。これにより、薄膜ヒータから発生する熱エネルギーを、印加電圧を調整する簡易な方法により制御することができるとともに、該薄膜ヒータの構成を、製造プロセスにおける成膜条件等の大幅な変更を伴うことなく、容易かつ安価に実現することができる。
【0114】
また、上述したような化学反応装置の構成において、熱伝達手段は、各々、所定量の熱伝達制御媒体の供給に対して、異なる熱エネルギーを発生する特性を有し、単一の熱伝達制御手段により、熱伝達手段の各々への熱伝達制御媒体の供給量を均一に設定することにより、反応流路に供給される熱エネルギーを制御するようにしてもよい。この場合、上記熱伝達手段は、各々、熱伝達制御手段から供給される均一な供給量の熱伝達制御媒体に対して、発熱特性が反応流路の導入部から排出部方向に順次低くなるように、特に、指数関数的に低くなるように制御することが望ましい。
【0115】
すなわち、異なる発熱特性を有する複数の熱伝達手段の各々に対して、熱伝達制御媒体の供給量が均一に制御されることにより、反応流路の導入部から排出部方向に発生する熱エネルギーが小さくなるように設定される。これにより、単一の熱伝達制御手段により所定量の熱伝達制御媒体を供給する極めて簡素化された構成及び制御方法で、反応流路における吸熱反応の進行状態に良好に対応した熱エネルギーを供給することができる。
【0116】
このような熱伝達手段の具体的構成としては、各々、平面形状が均一であって、膜厚が異なる薄膜状の発熱体材料からなる薄膜ヒータや、あるいは、各々、膜厚が均一であって、平面形状が異なる薄膜状の発熱体材料からなる薄膜ヒータを適用することもできる。これにより、前者の構成を有する熱伝達手段においては、均一な電圧を印加するだけで、薄膜ヒータから発生する熱エネルギーを膜厚により規定された所定値に設定することができるとともに、該薄膜ヒータの構成を、製造プロセスにおける成膜条件を若干変更するだけで、容易に実現することができる。また、後者の構成を有する熱伝達手段においては、例えば、各々、方形形状を有し、前記熱伝達制御媒体の供給方向に対して垂直方向に延在する幅が均一であって、前記熱伝達制御媒体の供給方向に延在する長さが異なるように構成することにより、前者の構成と同様に、均一な電圧を印加するだけで、薄膜ヒータから発生する熱エネルギーを平面形状の長さにより規定された所定値に設定することができるとともに、該薄膜ヒータの構成を、製造プロセスにおける成膜条件等の大幅な変更を伴うことなく、容易かつ安価に実現することができる。
なお、熱伝達手段として、上述した薄膜ヒータの構成を適用する場合にあっては、熱伝達制御手段として、直流電圧又は交流電圧(熱伝達制御媒体)を熱伝達手段の各々に印加する電源装置が適用される。
【0117】
さらに、上述したような化学反応装置の構成において、同一の発熱特性を有する熱伝達手段、あるいは、異なる発熱特性を有する熱伝達手段の他の具体的構成としては、各々、気体又は液体からなる熱流体(熱伝達制御媒体)が通過することにより所定の熱エネルギーを発生する媒体通過流路を備えているものであってもよく、この場合、熱伝達制御手段として、熱流体を熱伝達手段の各々に供給する流体ポンプが適用される。
【0118】
そして、以上説明したような化学反応装置の構成において、上記薄膜ヒータや媒体通過流路からなる熱伝達手段が、微小基板に形成された反応流路の近傍領域に、微細加工技術を用いて形成された構成を適用することができ、また、熱伝達制御手段についても、微細加工技術を用いて形成された構成を適用することができる。これにより、化学反応装置の構成全体を微小空間に集積化することができ、例えば、ポータブル型の燃料電池への搭載等、化学反応装置の応用範囲を大幅に拡大することができる。
【0119】
なお、上述した化学反応装置は、第1の流体物質から第2の流体物質への変換が、少なくとも、所定の熱条件の下で生じる化学反応(吸熱反応)であればよく、例えば、反応流路の内壁面に所定の触媒が付着形成され、上記熱伝達手段から供給される熱エネルギーによる吸熱触媒反応により、第1の流体物質を第2の流体物質に変換するものであってもよい。
【0120】
また、本発明に係る化学反応装置の発熱制御方法によれば、微細加工技術を用いて微小空間に各種機能要素が集積化された化学反応装置において、所定の吸熱反応(化学反応)を行う反応流路の任意の領域に対して、所望の熱エネルギーを個別に供給することにより、吸熱反応が急速に進行する傾向を示す反応流路の導入部側の領域に対しては、該吸熱反応の進行状態に対応した比較的大きな熱エネルギーを供給し、一方、吸熱反応が鈍化する傾向を示す反応流路の排出部側の領域に対しては、比較的小さな熱エネルギーを供給することができるので、反応流路の各領域における反応速度の低下や反応特性の劣化等を抑制して、化学反応装置(反応流路)全体としての反応効率の向上を図ることができる。
【0121】
ここで、各熱伝達手段から反応流路に供給される熱エネルギーを、反応流路の導入部から排出部方向に順次小さくなるように、具体的には、熱伝達手段の各々に供給される熱伝達制御媒体の供給量を、指数関数的に小さくなるように設定することにより、反応流路の導入部側から排出部方向に吸熱反応が鈍化する傾向(吸熱反応の進行状態)に良好に対応した熱エネルギーを供給することができるので、反応流路の導入部側における熱エネルギーの不足による反応速度の低下や、排出部側における熱エネルギーの蓄積による反応特性(特に、触媒特性)の劣化の発生を抑制して、反応効率の一層の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る化学反応装置に適用される反応流路部の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施形態に適用される熱伝達手段及び熱伝達制御手段の一構成例を示す概略図である。
【図3】第1の実施形態に適用される薄膜ヒータの具体例を示す断面構成図である。
【図4】第1の実施形態に適用される熱伝達手段(薄膜ヒータ)の各寸法を示す模式図である。
【図5】第1の実施形態に適用される熱伝達手段を2等分に分割して設けた場合における各熱伝達手段の熱エネルギー(熱流束)の設定値と、その場合の反応流路の任意の位置における流路温度を示すグラフである。
【図6】第1の実施形態に適用される熱伝達手段を3等分に分割して設けた場合における各熱伝達手段の熱エネルギー(熱流束)の設定値と、その場合の反応流路の任意の位置における流路温度を示すグラフである。
【図7】第1の実施形態に適用される熱伝達手段を6等分に分割して設けた場合における各熱伝達手段の熱エネルギー(熱流束)の設定値と、その場合の反応流路の任意の位置における流路温度を示すグラフである。
【図8】図5乃至図7に示された結果に基づく熱伝達手段の分割数と薄膜ヒータへの印加電圧の関係を示す相関図である。
【図9】本発明に係る化学反応装置に適用される反応流路部の第2の実施形態を示す概略構成図である。
【図10】第2の実施形態に適用される熱伝達手段への熱流体の供給状態を示す概略図である。
【図11】本発明に係る化学反応装置の第3の実施形態を示す概略構成図である。
【図12】第3の実施形態に係る化学反応装置に適用される熱伝達手段の一構成例を示す概略図である。
【図13】図5乃至図7に示された結果に基づく熱伝達手段の分割数と薄膜ヒータの膜厚の関係を示す相関図である。
【図14】本発明に係る化学反応装置の第4の実施形態を示す概略構成図である。
【図15】第4の実施形態に係る化学反応装置に適用される熱伝達手段の一構成例を示す概略図である。
【図16】図5乃至図7に示された結果に基づく熱伝達手段の分割数と薄膜ヒータのパターン長の関係を示す相関図である。
【図17】本発明に係る化学反応装置の適用が可能な燃料電池の要部構成を示すブロック図である。
【図18】本発明に係る化学反応装置の適用が可能な燃料電池の発電部を示す概略構成図である。
【図19】本発明に係る化学反応装置の適用が可能な燃料電池の改質部を示す概略構成図である。
【図20】従来技術におけるマイクロリアクタの反応流路部の概略構成を示す図である。
【図21】図20に示したマイクロリアクタの反応流路部において、任意の流路位置に供給される熱エネルギー(熱流束)と流路温度との関係を示す結果である。
【符号の説明】
10 微小基板
20A、20B 反応流路
20a 導入部
20b 排出部
21 触媒
30 閉止基板
41a〜41c、43a〜43c、44a〜44c 薄膜ヒータ
42a〜42c 熱流体流路
50、52 封止基板
51 キャビティ
61a〜61c、63、64 発熱制御部
Claims (9)
- 微小基板に連続して形成された反応流路内で第1の流体物質を第2の流体物質に変換する化学反応を生じる化学反応装置において、
前記反応流路に対応する領域に、複数に分割して設けられ、前記反応流路に所定の熱エネルギーを供給する熱伝達手段と、
前記熱伝達手段の各々の温度状態を制御する熱伝達制御手段と、
を有し、前記熱伝達手段は、各々、平面形状が均一であって、膜厚が異なる薄膜状の発熱体材料からなることを特徴とする化学反応装置。 - 前記化学反応装置は、前記熱伝達手段の各々から前記反応流路に供給される熱エネルギーが、前記反応流路の導入部から排出部方向に順次小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の化学反応装置。
- 前記熱エネルギーは、指数関数的に小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項2記載の化学反応装置。
- 前記熱伝達制御手段は、単一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化学反応装置。
- 微小基板に連続して形成された反応流路内で第1の流体物質を第2の流体物質に変換する吸熱化学反応を生じる化学反応装置において、
前記反応流路に対応する領域に、複数に分割して設けられ、前記反応流路に所定の熱エネルギーを供給する熱伝達手段と、
前記熱伝達手段の各々の温度状態を制御する熱伝達制御手段と、
を有し、
前記熱伝達手段は、各々、膜厚が均一であって、平面形状が異なる薄膜状の発熱体材料からなることによって前記熱伝達手段の各々から前記反応流路に供給される熱エネルギーが、前記反応流路の導入部から排出部方向に順次小さくなるように設定されていることを特徴とする化学反応装置。 - 前記熱伝達手段は、各々、方形形状を有し、前記熱伝達制御媒体の供給方向に対して垂直方向に延在する幅が均一であって、前記熱伝達制御媒体の供給方向に延在する長さが異なることを特徴とする請求項5記載の化学反応装置。
- 微小基板に連続して形成された反応流路内で第1の流体物質を第2の流体物質に変換する吸熱化学反応を生じる化学反応装置の制御方法において、
前記化学反応装置は、前記反応流路に対応する領域に複数に分割して設けられ、各々、膜厚が均一であって、平面形状が異なる薄膜状の発熱体材料からなる前記反応流路に所定の熱エネルギーを供給する熱伝達手段を有し、
前記反応流路に対応する領域を複数に分割し、各領域に対して各々異なる熱エネルギーを前記反応流路の導入部から排出部方向に順次小さくなるように供給するようにしたことを特徴とする化学反応装置の制御方法。 - 前記各領域に供給される前記熱エネルギーは、前記反応流路の導入部から排出部方向に、順次指数関数的に小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項7記載の化学反応装置の制御方法。
- 前記熱伝達手段の各々に供給される熱伝達制御媒体の供給量を、前記反応流路の導入部から排出部方向に順次指数関数的に低くなるように設定したことを特徴とする請求項7又は8記載の化学反応装置の制御方法。
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