以下、本発明の光制御フィルム及びバックライト装置について図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明の説明に用いる図面において、フィルムや光源など各要素のサイズ(厚み、幅、高さ等)は、説明を容易にするために必要に応じて拡大あるいは縮小されており、実際の光制御フィルム及びバックライト装置の各要素のサイズを反映したものではない。
図1(a)〜(c)は、本発明の光制御フィルム1の実施の形態の断面形状を示す模式図であり、図2はその表面形状を示す斜視図である。図示するように、本発明の光制御フィルム1は、光出射面となる表面に微細な凹凸パターンが形成されており、凹凸パターンの形状に特徴を有している。凹凸パターンの形状の特徴については後述する。光制御フィルム1の裏面は光入射面であり、平滑な面もしくはマット加工等のニュートンリングを防止するための所望の処理が施された面である。光制御フィルム1の構造は、一方の面に凹凸パターンが形成された層12を基材11に搭載した構成(図1(a)、図1(b))であっても、光制御フィルム1を構成する層12そのものに凹凸パターンが形成された構成であってもよい(図1(c))。
本発明の光制御フィルム1を用いたエッジライト型バックライト2の構成例を図3に示す。エッジライト型のバックライト2は、導光板21と、導光板21の対向する2つの端面にそれぞれ配置された2本の光源24とを有する。2本の光源24の長手方向は、導光板の端面に平行に向けられている。光制御フィルム1は、導光板21と重なるように導光板21上に配置され、裏面(光入射面)側が導光板21の上面(光出射面)側に向けられている。このような配置により、光源24から出射された光は、導光板21の2つの端面から入射して進行方向が変更されることにより導光板21の光出射面(上面)から出射され、光制御フィルム1の裏面に入射する。光制御フィルム1は、上面の凹凸パターンにより、進行方向が正面方向(光制御フィルム1の主平面に垂直な方向)に対して傾斜している光成分を正面方向に立ち上げて出射することにより、エッジライト型バックライトの正面輝度を向上させる。なお、光源24の外側にはリフレクタ25が、導光板21の下部には反射板22およびシャーシ23等がそれぞれ必要に応じて配置される。
また、本実施の形態の光制御フィルムを用いた直下型バックライトの実施の形態の断面図を図4に示す。直下型バックライトでは、複数本の光源24が裏面側に配置されたフィルム状もしくは薄板状の光拡散材31が用いられ、光制御フィルム1は、その裏面(光入射面)を光拡散材31側に向けて、光拡散材31上に重なるように配置される。光源24から出射された光は、光拡散材31によって拡散され、光拡散材31の上面から出射され、光制御フィルム1の裏面から入射する。光制御フィルム1は上面の凹凸パターンによって、進行方向が正面方向に対して傾斜している光成分を正面方向に立ち上げて出射することにより、直下型バックライトの正面輝度を向上させる。なお、必要に応じて、光源24の下部には、反射板22ならびにシャーシ23等が配置される。
つぎに、本実施の形態の光制御フィルム1の光出射面に形成されている凹凸パターンの形状について図5,図6,図7を用いて説明する。本実施の形態では、凹凸パターン形状を特定するために、図5に示したように、使用されるバックライトに合わせて所望の大きさに切断された光制御フィルム1について、表面の任意の位置に点Aを設定し、この点Aを通って任意の方向(例えばa1−a1’方向)に光制御フィルム1を横切る断面100を想定する。ただし、断面100は、光制御フィルム1の主平面(裏面と平行な面)と直交する面とする。この断面100の光出射面側縁部形状を画定する曲線(以下、断面曲線と称する)101を求める。この断面曲線101について、端部a1からa1’までを所定の間隔dLで分割する微小区間を設定し(図6参照)、各微小区間ごとに断面曲線101の傾きの絶対値を求め、全区間(端部a1〜a1’)の平均を算出する。
傾きの絶対値の平均値は、点Aを通り角度φ(例えばφ=10°)おきに設定したすべての方向の断面100(a2−a2'断面等)の断面曲線101ごとにそれぞれ求める。求めた傾きの絶対値の平均値を比較した場合に、点Aを通る断面100の方向が光源24の長手方向に対して平行方向(図7でいうx方向)から垂直方向(図7でいうy方向)に向かうにつれて、傾きの絶対値の平均が大きくなり、かつ、断面100の方向の相違による傾きの絶対値の平均の差が30度以内、好ましくは20度以内となるという条件を満たすように、凹凸パターンの形状を定める。この条件が、点Aのみならず光制御フィルム1上の実質的に全ての点について満たされるように凹凸パターンを定める。これにより、正面方向に対して大きく傾いて入射した光成分を効率的に立ち上げることができ、正面輝度を向上させることができる。
上記条件は、光制御フィルム1上のすべての点において満足されることが望ましいが、局所的に満足されない点があっても正面輝度を向上させる効果は得られる。光制御フィルムの四隅に近い点などは、方向によって得られる断面曲線101の長さが極端に短くなってしまうことがあり、傾きの絶対値の平均を算出しても凹凸パターンの特徴を示す値が得られない。このため、断面曲線101の長さが短くなる場所と方向によっては、傾きの絶対値の平均の差が30度以内にならなかったり、光源24の長手方向に対して平行方向から垂直方向に向かうにつれ上記傾きの絶対値の平均が大きくなるという異方性の条件を満たさないという現象が生じ得る。よって、フィルムの四隅などの一部の領域の点が上記条件を満たさない場合であっても、その領域が特異点である、もしくは、その領域の面積が全体面積に比較して小さいという場合は、そのような点が存在しても許容でき、正面方向に光を立ち上げる効果は得られる。また、断面曲線101の測定は、断面曲線の測定長さが十分採れる点および方向について行うことが望ましく、測定長さが十分に得られる点について上記条件が満たされていれば正面に光を立ち上げる効果が得られる凹凸パターン形状であるということができる。なお、光制御フィルム1の主平面は、裏面に平行な面であるが、裏面がマット化されている場合には、裏面の凹凸の中心線を通る面を主平面とする。
ここで、上記説明を補足する。バックライトに使用される一般的な光源24について、輝度の出射角依存性を測定した場合、測定方向が光源24の長手方向に対して平行な方向から垂直な方向に向かうにつれて、正面から傾いた出射角の光が多くなる傾向にある。例えば、図3のエッジライト型バックライトにおいて、図7に示したように光制御フィルム1の中央の点Cの位置で、導光板21から出射される光の輝度の出射角依存性を測定した場合、光源24の長手方向に対して平行なx方向については、正面方向である出射角0度の輝度と出射角60度付近の輝度の差はそれほど大きくないが、光源24の長手方向に対して垂直なy方向については、正面方向である出射角0度の輝度よりも出射角60度付近の輝度が大幅に大きいことがわかる。輝度の出射角依存性が光源24の長手方向に対して垂直な方向が平行な方向よりも大きくなる傾向は、エッジライト型バックライトの構造において特に顕著であるが、直下型バックライトにおいても生じ、特に光拡散材31の光源24上の部分にドットパターンを設けた場合等に顕著となる。本実施の形態では、上述したように、光源に対して平行方向から垂直方向に向かうにつれて上記断面曲線101の傾きの絶対値の平均が大きくなり、かつ、断面曲線の方向の相違による傾きの絶対値の平均の差が30度以内という条件を満たすように構成することにより、正面方向より大きく傾いた光をより正面方向に立ち上げて輝度の出射角依存性をキャンセルし正面輝度を向上させる作用を得ることができる。
上記傾きの絶対値の平均は、断面曲線101がy=f(x)で表れる場合には、図6の微小区間dLを無限に小さくすることにより、この曲線の傾きの関数はf(x)をxで微分したf'(x)となる。したがって、傾きの絶対値の平均(Sav)は、断面曲線101の全区間(端部a〜a’)の長さをLとすると、下記の式(数1)で表すことができる。また、曲線の傾きを角度表示した場合、角度表示した傾きの絶対値の平均(θav)は、下記の式(数2)で表すことができる。
断面曲線101が一般的な関数で表現できない場合には、以下のようにして傾きの絶対値の平均を算出することができる。まず、図5のように光制御フィルム1の凹凸パターン面上に任意の点Aを設定し、この点Aを通り光制御フィルム1を任意の方向に横切る測定ライン(図5の直線a1〜a2)を設定し、測定ラインに沿って、表面形状測定装置等を用いて、光制御フィルム1の表面形状(断面曲線101)を測定する。この断面曲線を、光制御フィルム1の主平面方向について十分短い間隔dLごとの区間に分ける。ここでいう十分に短い間隔とは、断面曲線に含まれる凹凸パターンの形状を十分正しく反映できるように、一つの凹部または凸部を少なくとも2以上の区間に分割することができる間隔であり、バックライトに使用する用途の光制御フィルム1の凹凸パターンの大きさの場合には具体的には1.0μm以下程度の間隔である。
ついで、断面曲線101の各区間ごとの傾きθ(度)を、隣り合う区間の測定点の高さデータ(zi),(zi+1)を用い、下記の式(数3)により求める。
上式により断面曲線上のすべて区間について傾きθ(度)を求め、これらの絶対値を取り、全区間について平均することにより、この断面曲線101についての傾きの絶対値の平均が算出される。例えば、図6においては、測定点Z1、Z2間の傾きは約+45度(絶対値は45度)であり、測定点Zi、Zi+1間の傾きは約−45度(絶対値は45度)である。
また、光制御フィルム1をエッジライト型バックライトに使用する場合、凹凸の傾斜面のうち光源24が配置されている側を向いた傾斜面の傾きの絶対値が、光源24から遠い凹凸よりも光源24に近い凹凸の方が大きくなるように凹凸パターンを構成することが望ましい。この条件は、必ずしも一つ一つの凹凸ごとに満たされている必要はなく、二つの光源24を結ぶy軸に平行な横断面100の断面曲線101を、予め定めた間隔に区切った場合に、区間内の上記傾きの絶対値の平均が、光源24に近い区間ほど大きくなっていればよい。また、凹凸の傾斜面のうち光源24とは逆側を向いた傾斜面の傾斜角の絶対値は、光源に近い凹凸ほど小さくなるように凹凸パターンを構成することが望ましい。この条件も一つ一つの凹凸ごとに満たされていなくても、上述した区間内の上記傾きの絶対値の平均が、光源24に近い区間ほど小さくなっていればよい。
このように傾斜の大きさを光源24に対する向き及び距離に応じて定めることにより、導光板21から出射される光のy軸方向についての輝度が光源24に近い測定点ほど正面から傾いた成分が大きくなる現象を補正することができる。これをさらに説明する。エッジライト型バックライトにおいて導光板21から光の輝度を、光制御フィルム1の位置でy軸方向(光源24の長手方向に垂直方向)について測定した場合、光制御フィルム1の中央の点Cにおいては図8(b)のように正面輝度に対する出射角が傾いた位置の最高輝度が約2倍程度であるが、光源24寄りの点Fにおいては図8(c)に示したように正面輝度に対する出射角が傾いた位置の最高輝度が4倍以上となっている。光制御フィルム1は、光源24を向いた傾斜面の傾斜が大きいほど正面方向に対して大きく傾いた光をより正面方向に立ち上げることができるため、光制御フィルム1の傾斜の大きさを上記したように光源24を向いた傾斜面の傾斜の絶対値の平均を、光源24に近づくほど大きくなるように構成することにより、光制御フィルム1全体の正面輝度を向上させることができる。同時に、光源24とは反対側の傾斜面については、傾きの絶対値の平均を光源24に近づくにつれて小さくなるように構成することにより、凹凸パターン面の凹凸の高さを一定に保つことが可能になる。
凹凸パターンの傾斜の大きさを光源24に対する向き及び距離に応じて定める構成についてさらに説明する。図9は、光源24が導光板21の片側(図面の左側)にのみ設置されている場合の断面曲線101の例であり、光源24に近い側から区間1〜7に分けられている。区間1〜7は、任意の等間隔に設定されている。図9の断面曲線101の場合、光源24側を向いた傾斜面とは、図9中の領域αの傾斜面であり、光源24と反対側の傾斜面とは、図9中の領域βの傾斜面である。よって、区間ごとに領域αの傾きの絶対値の平均値を算出した場合、光源24から遠い区間7から光源24に近い区間1に向かうにつれて、その値が大きくなっていることが好ましい。また、区間ごとに領域βの傾きの絶対値の平均値を算出した場合、区間7から区間1に向かうにつれ、その値が小さくなることが好ましい。一方、図10は、光源24が導光板の両側に設置されている(図3および図7参照)場合の断面曲線101の例である。この場合光源24側を向いた傾斜面とは、図10面の左側にある光源24を基準とした場合には領域αの傾斜面のことをいい、右側の光源24を基準とした場合には領域βの傾斜面のことをいう。したがって、領域αの傾斜面は、区間7から区間1に向かうにつれ、傾きの絶対値の平均値が大きくなることが好ましく、領域βの傾斜面は、区間1から区間7に向かうにつれ、傾きの絶対値の平均値が大きくなることが好ましい。なお、実際に傾きの絶対値の平均値を算出する際には、上式(数3)により求められる傾きθの符号(±)の違いにより、領域αと領域βとを区別できる。また、上式(数3)で求められた傾きθが0度の場合には、傾き0度の測定点の数を合計し、それをα区間とβ区間に均等に割り振ってそれぞれの絶対値の平均を求める。
上記のように傾きの絶対値を定める条件は、凹凸パターン面上の実質的に全ての点におけるy方向の断面曲線において満足されることが好ましい。また、上記条件を満たす本発明の光制御フィルム1は、特に、光源24が片側もしくは両側に配置されたエッジライト型のバックライトに好適に使用され、光源24が導光板21の両側に設置されている場合には、何れの光源24を基準とした場合にも上記条件を満たすことが好ましい。また、断面曲線101を分割する区間の数は2以上であれば任意の区間数に設定することができる。また、複数の光源を有する直下型のバックライト(図4参照)においても、光制御フィルム1に上記条件を適用することが可能である。この場合、近接する2本の光源24に挟まれた領域については両側に光源24が配置されているものとして上記条件を適用する。
凹凸パターンを構成する個々の凸部及び凹部の形状等は特に制限されないが、一例としては、一つ一つの凸部を、主平面に平行な断面の径が図7のx軸方向に長くy軸方向に短い異方性を有する形状とすることにより、断面100の方向がx軸方向からy軸方向に向かうにつれて、断面曲線の傾きの絶対値の平均が大きくなるという条件を満たす凹凸パターンを設計できる。このとき、主平面に平行な断面のx軸方向の径とy軸方向の径との比率を調整することにより、断面100の方向の相違による前記傾きの絶対値の平均の差が30度以内の条件を満たす凹凸パターンを設計することができる。また、例えば、一つ一つの凸部の頂点の位置を、凸部の基部の主平面に平行な断面の中心に対して光源24に近い側にずらすことにより、光源に向いた斜面の傾きの絶対値の平均が光源に近づくにつれて大きくなるという条件を満たす凹凸パターンを設計することができる。上記条件を満たすように設計された一つ一つの凸部を主平面方向に二次元に配置することにより、全体として上記条件を満たす凹凸パターンを設計することができる。凸部または凹部は、主平面方向にランダムに配置されていることが好ましい。凸部及び凹部をランダムに配置することにより、任意の点について断面100の方向の相違による断面曲線101の傾きの絶対値の平均の差を30度以内にしやすくなり、光制御フィルム1上の光学特性をほぼ一定にすることができる。また、凸部及び凹部をランダムに配置することにより、干渉パターンの発生を防止することもできる。例えば隣接する凸部及び凹部の間に空隙が生じるように配置してもよいし(図1(a))、一部を接するように配置してもよい(図1(b)、図1(c))。凸部の高さ、または凹部の深さは、例えば3〜100μm程度にすることが望ましい。また、凸部又は凹部の配置密度は10個〜20万個/mm2程度であることが好ましい。具体的な凹凸パターンの形状は、コンピュータシミュレーションによって設計することができる。
以上説明した光制御フィルム1の構成としては、例えば透明な基材11の上に凹凸パターンを有する層12を搭載した構成(図1(a)、図1(b))や、凹凸パターンを有する層12そのものがフィルム1である構成(図1(c))とすることが可能である。
基材11は光透過性が良好なものであれば特に制限されることなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムなどを使用することができる。
凹凸パターンを有する層12を構成する材料は、光透過性が良好なものであれば特に制限されることなく、ガラス、高分子樹脂などを使用することができるが、加工性、取扱い性の観点から高分子樹脂が好適である。
ガラスとしては、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラスなどの酸化ガラスなどがあげられる。
高分子樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などがあげられる。
凹凸パターンを有する層12には、一般的な光拡散性シートのように、有機ビーズや無機顔料などの光拡散剤を含有させることも可能であるが、本発明の光制御フィルムにおいては、光拡散剤を含有させなくても光拡散効果を発揮することができる。よって、光拡散剤を原因として他の部材を傷つけてしまったり、光拡散剤が剥がれ落ちてゴミが発生することもない。
凹凸パターンを有する層12は、平滑なシートにエンボスロールを押しあてる方法、エッチング処理、または、型による成型等を使用して製造することができるが、再現性よく所定の凹凸パターンを有する光制御フィルム1を製造できるという点で型による成型方法が好ましい。具体的には、凹凸パターンと対称的な形状を備えた型を作製し、当該型に高分子樹脂などの凹凸パターンを構成する材料を流し込んで硬化させた後、型から取り出すことにより製造することができる。透明基材11を使用する場合には、型に高分子樹脂などを流し込み、その上に透明基材を重ね合わせた後、高分子樹脂などを硬化させ、透明基材ごと型から取り出すことにより製造することができる。
凹凸パターンと対称な形状を備える型を製造する方法としては、例えばレーザー微細加工技術を用いることができる。この場合まず上記してきた凹凸パターンの要件を満たすパターン形状をコンピュータシミュレーションにより設計し、設計した凹凸パターン形状上に、加工に用いるレーザー光の集光スポット径の大きさのマトリクス状の格子を想定し、格子の一つ一つについて、平板材料をその凹凸の高さまで加工するために必要なレーザーパルス数を決定する。雄型となる平板を用意し、レーザー光束を平板上で2次元に移動させながら各格子に対応する位置にそれぞれ所定のレーザーパルス数を照射することにより、設計した凹凸パターン形状を備えた雄型を製造する。この雄型から成型用の型(雌型)を製造する。なお、レーザー光としては、設計した凹凸パターンの形状を十分に反映することができるスポット径のものを用いる。
なお、光制御フィルム1の裏面(光入射面)は、平滑であってもよいが、他の部材と接する際にニュートンリングを生じさせないように微マット処理を施したり、光透過率を向上させるため反射防止処理を施してもよい。
また、良好な正面輝度を得るため、光制御フィルムの光学特性として、ヘーズが60%以上、好ましくは70%以上であることが望ましい。ここで、ヘーズとは、JIS-K7136:2000におけるヘーズの値のことであり、ヘーズ(%)=[(τ4/τ2)−τ3(τ2/τ1)]×100の式から求められる値である(τ1:入射光の光束、τ2:試験片を透過した全光束、τ3:装置で拡散した光束、τ4:装置および試験片で拡散した光束)。
光制御フィルム1全体の厚みは特に制限されることはないが、通常20〜300μm程度である。
以上説明した本発明の光制御フィルムは、主として、液晶ディスプレイ、電飾看板などを構成するバックライトの一部品として用いられる。
バックライトは、少なくとも光制御フィルムと光源とを含んで構成される。具体的なバックライトの構成としては、例えば、すでに説明した図3のエッジライト型バックライトまたは図4の直下型バックライトの構成を用いることができる。光制御フィルム1の向きは、図3および図4のように凹凸パターン面を光出射面として用いることが好ましいが、逆向きにして、凹凸パターン面を光入射面とし裏面を光出射面として用いることも可能であり、ある程度の正面輝度向上の効果が得られる。
図3に示したエッジライト型バックライトに用いられる導光板21は、少なくとも一つの端面を光入射面とし、これと略直交する一方の面を光出射面とするように成形された略平板状のものである。このような導光板21の各面は、一様な平面ではなく複雑な表面形状をしているものであっても、ドットパターンなどの拡散のための形状が設けられたものであってもよい。このような導光板は、主としてポリメチルメタクリレートなどの高透明な樹脂から選ばれるマトリックス樹脂からなり、必要に応じてマトリックス樹脂と屈折率の異なる樹脂粒子が添加される。
光源24は、主として冷陰極管が使用される。光源の形状としては線状、L字状のものなどを用いることが可能である。
また、エッジライト型バックライトにおいては、導光板21、光源24、光制御フィルム1の他に、図3に示すように、光源リフレクタ24、反射板22、シャーシ23などを備えることが好ましい。また、目的に応じて、偏光フィルム、電磁波シールドフィルムなどを備える構成にすることもできる。
直下型のバックライトの光拡散材31は、光源24の形状が透けるのを消すためのものであり、乳白色の樹脂板、光源に対応する部分にドットパターンを形成した透明フィルム(ライティングカーテン)の他、透明基材上に凹凸の光拡散層を有するいわゆる光拡散フィルムなどを単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。光源24は、主として冷陰極管が使用される。光源の形状としては線状、L字状のものなどがあげられる。
また、直下型のバックライトにおいては、光制御フィルム1、光拡散材31、光源24の他に、図4に示すように、反射板22、シャーシ23などを備えることが好ましい。また、目的に応じて、偏光フィルム、電磁波シールドフィルムなどを備えることも可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。
[実施例]
まず、上述の実施の形態で説明した条件を満たす凹凸パターン形状を3種類設計した。ここでいう条件とは、断面曲線の傾きの絶対値の平均値を比較した場合に、任意の点を通る断面100の方向が光源24の長手方向に対して平行方向(図7でいうx方向)から垂直方向(図7でいうy方向)に向かうにつれて、傾きの絶対値の平均が大きくなり、かつ、断面100の方向の相違による傾きの絶対値の平均の差が30度以内という第1の条件、および、y軸に平行な横断面100の断面曲線101を予め定めた間隔に区切り、凹凸の傾斜面のうち光源24が配置されている側を向いた傾斜面の傾きの絶対値の平均を各区間ごと求めた場合に、光源24に近い区間ほど大きい値になるという第2の条件である。なお、第2の条件は、光制御フィルム1が、両側に光源24を備えるエッジライト型バックライトに使用されるものとして設計した。
設計した3種類の凹凸パターンの光制御フィルム1を製造するために、それぞれの凹凸パターン形状の雌型(型a、型b、型c)を作製した。型aには屈折率1.40のシリコーン樹脂、型b、型cには屈折率1.50の紫外線硬化型樹脂を流し込んだ。次いで、流し込んだ樹脂を硬化させた後、型から取り出して、外形が23cm(図7のy方向)×31cm(x方向)の光制御フィルムa〜cを得た。
この光制御フィルムa〜cの凹凸パターン形状を以下のように確認した。光制御フィルムa〜c上のA〜E点について、各方向の断面100を設定し、断面曲線101を測定した。A〜E点は、図7のように光制御フィルム上に引いた対角線を4等分し、対角線の始点及び終点を除いた5点である。断面100の方向は、光源24の長手方向(x方向)と平行な方向を始点(φ=0度)とし、再度x方向に一致する(φ=180度)まで、反時計回りに15度ごとに設定した。断面曲線101の測定は、実際に光制御フィルムを切断するのではなく、表面形状測定装置(SAS−2010 SAU−II:明伸工機社)を用いて、触針を設定した断面100方向に移動させながら凹凸パターン面の高さデータを逐次取得することにより測定した。触針の形状は、球状先端をもつ円すいであり、先端の半径は2μm、円すいのテーパ角度は60度である。この方法により、非破壊で図6に示したような断面曲線101を取得した。測定した断面曲線101について、数3を用いて光制御フィルムの主平面の傾きの絶対値の平均を算出した。なお、主平面方向の測定間隔dLは1.0μmである。光制御フィルムa〜cの各測定点について得られた結果を断面曲線の方向ごと(0度〜165度)に表1〜3に示す(単位は「度」)。
次いで、光制御フィルムa〜cのA、C、E点における90度(y方向)の断面曲線101を、y方向について7等分し、各区間1〜7ごとに、断面曲線101の光源(p)24側を向いた傾斜面、および、光源(p)と反対側を向いた(すなわち光源(q)24側を向いた)傾斜面の傾きの絶対値の平均を算出した。光制御フィルムa〜cについて得られた結果を表4〜6に示す(単位は「度」)。なお、測定結果は光源(p)24を基準にした場合と光源(q)24を基準にした場合とで分け、分割した区間は、光源(p)24から光源(q)24に向かうにつれ、区間1→区間7とした。
つぎに、光制御フィルムa〜cを用いたエッジ型バックライト(図3参照)の正面輝度を測定した。大きさは15インチであり、光源24は冷陰極管である。光制御フィルムa〜cの向きは、凹凸パターン面が光出射面となるようにした。このバックライトの光制御フィルムa〜cの光出射面上のA〜E点(図7参照)における輝度を、x方向(光源24の長手方向に平行方向)とy方向(光源24の長手方向に垂直方向)について出射角度ごと(左45度から右45度まで)に測定した。正面方向が0度である。光制御フィルムa〜cについて得られた結果を順に表7〜9に示す(単位は「cd/m2」)。
[比較例]
市販のプリズムシートe及び光拡散性シートf〜hについて、実施例と同様に、A〜E点の断面方向ごとに断面曲線の傾きの絶対値の平均を求めた。プリズムシートeについて得られた結果を表10に、光拡散性シートf〜hについて得られた結果を順に表11〜13に示す(単位は「度」)。
次いで、図3のエッジライト型バックライトに、光制御フィルム1に代えて比較例のプリズムシートeおよび光拡散性シートf〜hを搭載したものをそれぞれ作製した。サイズは15インチであり、光源24は冷陰極管である。プリズムシートeのプリズム面および光拡散性シートf〜hの向きは、凹凸面が光出射面となるようにした。実施例と同様に、バックライト上のA〜E点における輝度をx方向(光源24の長手方向と平行方向)とy方向(光源24の長手方向と垂直方向)について、出射角度ごと(左45度から右45度まで)に測定した。正面方向が0度である。プリズムシートeについて得られた結果を表14に、光拡散性シートf〜hについて得られた結果を順に表15〜17に示す(単位は「cd/m2」)。
表1〜3を見て明らかなように、実施例の光制御フィルムは、全ての測定点の全ての方向の断面100について、断面曲線101の傾きの絶対値の平均の差が30度以内であり、かつ、断面100の方向が光源24の長手方向に対して平行方向(0度、180度)から垂直方向(90度)に向かうにつれて、傾きの絶対値の平均が大きくなる特徴を有する凹凸パターンが実現されていることが確認できた。このような凹凸パターンの光制御フィルムであるため、表7〜9に示したように、光制御フィルムを1枚だけ組み込んだバックライトでありながら、いずれの測定点においても正面方向(0度方向)の正面輝度が大きく良好な正面輝度が得られている。
また、表4、5から明らかなように、光制御フィルムa、bは、光源pを基準とした場合には、区間7から区間1に向かうにつれて、光源p側の傾斜面の傾きの絶対値の平均が大きくなり、光源qを基準とした場合には、区間1から区間7に向かうにつれて、光源q側の傾斜面の傾きの絶対値の平均が大きくなるという条件を満たす形状を有する。一方、光制御フィルムcは、表6からわかるようにこの条件は満たしていない。このため、光制御フィルムa,bは、表7、8から明らかなように、光制御フィルムc(表9)と比較して、C点より光源の位置に近いA、B、D、E点においても、光源24の長手方向と垂直な方向における正面(0度)から大きく傾いた光を効率的に正面方向に向けることができており、良好な正面輝度を得ることができるものであった。具体的には、光制御フィルムa,bについて示した表7、8の輝度は、光制御フィルムcについ示した表9の輝度に比べ、C点とA、B、D、E点との正面輝度の差が小さく、また、A、B、D、E点のy方向(光源24の長手方向と垂直方向)についての上30度と下30度の輝度の差及び上45度と下45度の輝度の差が小さく、かつ正面方向(0度)の輝度の値より格段に小さい割合になっている。このことから、出射光の位置による片寄りが少なく、光が効率的に正面方向に向けられていることが分かる。
一方、表10〜13から明らかなように、比較例のものは、全ての測定点、あるいは一部の測定点において、傾きの絶対値の平均の差が30度以内でなかったり、断面曲線の方向が光源の向きに対して平行方向(0度、180度)から垂直方向(90度)に向かうにつれて、傾きの絶対値の平均が大きくならないものである。したがって、比較例のものをバックライトに組み込んでも、実施例のもの(表7〜9)に比べ、良好な正面輝度を得ることはできなかった(表14〜17)。
なお、比較例で用意したプリズムシートeおよび光拡散性シートf〜hを適宜複数枚組み合わせてバックライトに組み込むことにより、実施例と同等の正面輝度が得られることがあるが、バックライトの厚みが増してしまい、また、コストも増加してしまう。
以上のように、本発明の光制御フィルムは、凹凸パターンからなる表面形状を特定の条件を満たす形状に制御することにより、本発明の光制御フィルムのみで光を効率的に正面方向に立ち上げることができ、良好な正面輝度を得ることができる。