JP4303340B2 - 摩擦撹拌接合終端の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、摩擦撹拌接合法によって被接合材を接合一体化した際の接合終端に生じる抜き孔を塞ぐ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、金属材の溶接やロウ付けに代わる新しい接合手段として、摩擦撹拌接合(Friction Stir Welding)法が登場している。この接合法は、例えば特表平7−505090号公報に開示されているように、被加工物よりも硬い材質のプローブ(棒状物)を回転させながら被加工物に摺接させた際に、この摺接部分で発生する摩擦熱と圧力によって被加工物素材が塑性流動化するため、該プローブが被加工物中に埋入して且つこの埋入状態のまま被加工物中を移動可能になることを利用したものである。
【0003】
例えば、図1に示すように、金属板(1)(1)同士を突き合わせて接合する場合、摩擦撹拌接合ツール(2)として加工ヘッド(20)の先端に突軸状のプローブ(21)を有するものを用い、該加工ヘッド(20)を高速回転させながら接合線(L)の始端部に押し付けてプローブ(21)を埋入させ、矢印で示すように該接合線(L)に沿って移動させる。これにより、進行するプローブ(21)の前方側では摩擦熱と圧力によって金属板(1)(1)の素材が塑性流動し、撹拌混練されながらプローブ(21)の後方側へ漸次移行するが、この後方側では摩擦熱を失って急速に冷却固化するから、両金属板(1)(1)は素材金属が撹拌混練されて完全に一体化した状態で接合される。
【0004】
この場合、金属素材が塑性流動する温度は融点よりもかなり低く、接合は固相接合の範疇に入るから、接合過程を通して金属材への入熱量は少なく、且つ凝固収縮に伴う応力の発生もないから、接合部近傍の熱歪みによる変形や割れを生じにくいという利点がある。なお、図1では加工ヘッド側を移動させる例を示したが、逆に被接合材側を移動しつつ定位置に配備した加工ヘッドにて接合する方法もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような摩擦撹拌接合においては、図2(A)に示すように接合終端で加工ヘッド(20)を引き上げて埋入していたプローブ(21)を抜き出すと、該接合終端にはプローブ(21)に対応した抜き孔(3)が生じることになるが、この抜き孔(3)部分に応力が集中するために接合品の強度が低下すると共に外観体裁も悪化するため、用途面で様々な支障をきたしたり、商品価値が低下するという問題があった。
【0006】
この発明は、上述の事情に鑑みて、摩擦撹拌接合における接合終端に生じる抜き孔を簡単に且つ確実に塞ぎ、接合品の強度及び外観を大きく向上させ得る処理方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る摩擦撹拌接合終端の処理方法は、摩擦撹拌接合ツールの加工ヘッドを埋入状態で回転しつつ相対的に進行させて被接合材同士を接合一体化する摩擦撹拌接合において、接合終端での前記加工ヘッドの引き上げによって生じた抜き孔に、はんだ又はろう材を充填し、これらはんだ又はろう材を融解、固化させて被接合材に一体化させることを特徴としている。
【0008】
この処理方法によれば、摩擦撹拌接合終端の抜き孔に充填するはんだやろう材が低融点材料であるため、摩擦撹拌接合後の被接合材に残留する余熱、この余熱と外部加熱、あるいは外部加熱のみによって充填物を容易に融解でき、その固化により抜き孔位置に新生面を形成できる。従って、得られる接合品は、当初の抜き孔が消失して外観体裁に優れると共に、抜き孔位置への応力集中がなくなって強度も大きくなる。
【0009】
請求項2の発明は、上記請求項1の摩擦撹拌接合終端の処理方法において、前記抜き孔にZnを主体とするZn−Al系のはんだを充填する構成としている。この場合、使用するZn−Al系のはんだは特に低融点であるため、摩擦撹拌接合の終了直後に前記抜き孔に充填すれば、被接合材に残留する摩擦撹拌接合時の余熱のみで融解させることが可能である。
【0010】
請求項3の発明は、上記請求項1の摩擦撹拌接合終端の処理方法において、前記抜き孔にAl−Si系又はAl−Cu系のろう材を充填して加熱溶融させる構成としている。この場合、使用するろう材は比較的に融点が高いため、前記抜き孔に充填後にバーナー等で加熱する必要があるが、摩擦撹拌接合の終了直後に充填・加熱を行えば、摩擦撹拌接合の余熱があるので加熱は少なくて済む。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る摩擦撹拌接合終端の処理方法の一実施例について、図2(A)〜(C)を参照して具体的に説明する。
【0012】
図2(A)は、既述のように、アルミニウムやその合金等よりなる金属板(1)(1)を摩擦撹拌接合(図1参照)にて接合した終端において、加工ヘッド(20)を引き上げて埋入していたプローブ(21)を抜き出すことにより、得られる接合品(10)の該接合終端にプローブ(21)に対応した抜き孔(3)が生じた状態を示す。
【0013】
この接合終端の処理を行うには、まず図2(B)に示すように、抜き孔(3)に、はんだ又はろう材(4a)を充填する。そして、この充填したはんだ又はろう材(4a)を融解・固化させる。これにより、接合品(10)は、図2(B)に示すように、抜き孔(3)が融解・固化後のはんだ又はろう材(4b)で埋められ、当初の抜き孔(3)の形状が消え去った均一表面を有して外観体裁に優れると共に、抜き孔位置への応力集中がないために強度も大きいものとなる。
【0014】
ここで、上記のはんだ又はろう材(4a)は低融点材料であるため、抜き孔(3)への充填後にバーナーや加熱ごて等による外部加熱を施して容易に融解させることができるが、この融解の熱源として摩擦撹拌接合の余熱を利用できる。すなわち、摩擦撹拌接合では接合に伴って摩擦熱が発生しており、接合の終了直後では材料中に残留した余熱によって抜き孔(3)周囲がかなり高温になっているため、特に低融点の材料を選択して前記終了直後に充填すれば、外部加熱なしに余熱のみで融解させることが可能である。また、余熱のみでは融解できない材料であっても、接合の終了直後に抜き孔(3)に充填して外部加熱を施せば、前記余熱が加わるために加熱の程度及び時間は少なくて済み、それだけ処理能率が向上する。
【0015】
前記のはんだとしては、例えばZn−Al系、Zn−Sn系、Zn−Pb系、Sn−Pb系等のはんだ用合金が挙げられる。しかして、これらの中でもZnを主体とするZn−Al系のはんだ(代表組成Zn95wt%、Al5wt%)は、非常に低融点であり、摩擦撹拌接合の終了直後に抜き孔(3)に充填すれば、残留する余熱のみで確実に融解できることから、特に推奨される。
【0016】
また、前記のろう材としては、例えばAl−Si系、Al−Cu系等のろう材用合金が挙げられる。これらろう材は、一般にはんだよりも融点が高く、摩擦撹拌接合の余熱のみでは融解しにくいため、抜き孔(3)への充填後にバーナー等で加熱して融解させるのがよい。ただし、この場合でも、摩擦撹拌接合の終了直後に充填・加熱を行えば、摩擦撹拌接合の余熱があるので加熱は少なくて済む。
【0017】
なお、使用するはんだ又はろう材(4a)としては、図2ではピン状のものを例示したが、粒状や粉状のものも使用でき、また線材や棒材の形で抜き孔(3)に嵌入させることも可能である。しかして、これらはんだ又やろう材(4a)の抜き孔(3)への充填量は、融解・固化後の表面が被接合材(1)の表面レベルと略一致するように設定すべきである。
【0018】
【発明の効果】
請求項1の発明に係る摩擦撹拌接合終端の処理方法によれば、摩擦撹拌接合による被接合材同士の接合終端に生じる抜き孔に、はんだ又はろう材を充填して融解、固化させて被接合材に一体化させることから、該抜き孔を簡単に且つ確実に塞いで外観体裁及び強度に優れた接合品を提供できる上、前記融解の熱源に摩擦撹拌接合の余熱を利用して処理能率を向上させることが可能である。
【0019】
請求項2の発明によれば、上記の摩擦撹拌接合終端の処理方法において、前記抜き孔に充填する材料が特に低融点であるため、この充填を摩擦撹拌接合の終了直後に行って被接合材に残留する余熱のみで融解させることが可能であり、もって外部加熱を省略して処理工程の短縮及び処理コストの低減を図り得るという利点がある。
【0020】
請求項3の発明によれば、上記の摩擦撹拌接合終端の処理方法において、前記抜き孔に充填した材料を外部加熱によって融解させるが、摩擦撹拌接合の終了直後に充填・加熱を行うことによって加熱の度合及び時間を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】摩擦撹拌接合による金属板同士の接合を示す斜視図である。
【図2】この発明に係る摩擦撹拌接合終端の処理方法の実施例を示し、(A)図は摩擦撹拌接合の接合終端に抜き孔を生じた接合品の縦断側面図、(B)図は同接合品の抜き孔にはんだ又はろう材を充填する状態の縦断側面図、(C)図は抜き孔が塞がれた処理後の同接合品の縦断側面図である。
【符号の説明】
1 ・・・金属板(被接合材)
10 ・・・接合品
2 ・・・摩擦撹拌接合ツール
20 ・・・加工ヘッド
21 ・・・プローブ
3 ・・・抜き孔
4a ・・・充填したはんだ又はろう材
4b ・・・溶融・固化後のはんだ又はろう材

Claims (4)

  1. 摩擦撹拌接合ツールの加工ヘッドを埋入状態で回転しつつ相対的に進行させて被接合材同士を接合一体化する摩擦撹拌接合において、接合終端での前記加工ヘッドの引き上げによって生じた抜き孔に、はんだ又はろう材を充填し、前記被接合材に残留した摩擦撹拌接合の余熱のみでこれらはんだ又はろう材を融解、固化させて被接合材と一体化させることを特徴とする摩擦撹拌接合終端の処理方法。
  2. 前記抜き孔にはんだ又はろう材を摩擦撹拌接合の終了直後に充填する請求項記載の摩擦撹拌接合終端の処理方法。
  3. 前記抜き孔にZnを主体とするZn−Al系のはんだを充填する請求項1又は2記載の摩擦撹拌接合終端の処理方法。
  4. 前記抜き孔にAl−Si系又はAl−Cu系のろう材を充填する請求項1又は2記載の摩擦撹拌接合終端の処理方法。
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