JP4302299B2 - 中空樹脂製回転機構部品及び中空成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸を挿入して使用する中空樹脂製回転機構部品であって、製品の寸法精度が良好で、中空部に外部からゴミ等が入らない中空樹脂製回転機構部品、及びその成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
軸を挿入して使用する樹脂製回転機構部品としては、例えばローラーや歯車が知られている。これらは、樹脂部の肉厚が厚い場合には、通常、リブ構造などを採用し、肉厚部の肉抜きを行って成形されるが、肉抜きが好ましく無い場合がある。例えば食品関係ローラーでは肉抜き部にごみや埃が溜って、衛生上好ましくない。あるいは形状によっては肉抜きのための金型構造が非常に複雑となり、金型のメンテナンスや寿命に問題が発生する場合などがある。
一方、このような場合、金型に充填された樹脂に、加圧流体を注入して肉抜きを省略する中空成形方法がある。しかし、この方法では、通常、図3に示すように、加圧流体を注入するノズル部16によるノズル孔6が成形品の外観表面に生じ、その中にごみや食品等が入り込んで、衛生上好ましくない。また、従来の中空成形方法では、軸孔部3があると、1箇所のノズル部16より加圧流体を注入しても樹脂の壁9ができてしまうために、中空部の薄肉部と樹脂の壁との部分に収縮差が発生し、その結果外周面にヒケが発生してしまい、成形品の精度に悪影響を及ぼしてしまうという問題がある。また、ノズル部16を複数箇所設けると、金型が高価になったり、各ノズルにおける加圧流体の圧力プロファイルの違い等により注入される加圧流体の量がばらつき、中空状態が非常に不安定になるという問題が生じる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、製品の寸法精度が良好で、中空部に外部からごみ等が入り込まない中空樹脂製回転機構部品及びその成形方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、貫通する軸孔を有する中空樹脂製回転機構部品の成形方法において、軸孔部を形成するコアより製品外周部に向けて加圧ガスを注入することにより、成形品に残ったノズル孔が、挿通する軸により隠蔽されるので、ゴミなどが入らず、また中空部を、軸孔側に、均一に形成し易くなるので、真円度などが改善されることにより、上記問題点を解決しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、軸孔部を有する中空樹脂製回転機構部品の成形方法において、金型キャビティ内の樹脂に、軸孔部3を形成するための少なくとも一つのコア11に設けられたノズル部16から、加圧流体を注入する中空成形方法であって、ノズル部16が、コア11の先端と他のコア12の先端との間隙として設けられ、コア11又は12側に設けられたノズルから樹脂を充填し、樹脂充填後、コア11からノズル部16を介して加圧流体を注入することを特徴とする中空成形方法を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る中空成形方法の一例を示す図である。
図1に示すように、円柱状金型キャビティ内に軸孔部3を形成するための円管状のコア11及び円柱状のコア12が設けられ、各コア先端が互いに当接される。コア11の他端側から加圧流体Aが供給可能であり、コア11の側面の先端には、例えば3箇所に切り欠きを有し、コア12と当接されて、ノズル部16を形成する。
樹脂が樹脂ゲート15から金型キャビティ内に充填された後、コア11の他端側から供給された加圧流体Aが、ノズル部16から溶融状態の樹脂P内に注入されて中空部4が形成される。加圧流体Aは、樹脂内に、軸孔部側から成形品の外周部側に向けて、注入されるので、中空部4が、外周部2と軸孔部3の間で、軸孔部側に偏って形成される結果、外周部側に薄肉部が発生しにくく、薄肉部と厚肉部の収縮差によって発生するヒケが目立たない。
なお、樹脂ゲート15は金型内に複数箇所設けられてもよく、対称的に設けられてもよい。
円柱状コア12は、内部が密であっても、空洞であってもよいし、場合によっては円管状であってもよい。また、樹脂ゲートはコアに設けられていてもよい。
成形品を金型内で一定時間保圧、保持した後、コア11及びコア12を引き抜き、型開き可能な温度まで冷却して成形品を金型から取り出す。成形品が短尺等の場合には、成形品を金型から取り出した後、コアを引き抜くこともできる。コアの引き抜きには、加圧流体の力を利用することもできる。
【0007】
上記において、ノズル部16は切り欠きでなく、コア11の側面部分に設けられた孔であってもよい。また、孔はコア11の切り欠きとコア12の切り欠きとにより形成されてもよい。
切り欠きや孔の数には特に制限はないが、2以上、好ましくは3以上、実質的には3〜32であり、好ましくはそれらが軸を中心として等角度で設けられる。また、切り欠きは、鋸歯状に多数設けることもできる。切り欠きや孔の形状には特に制限はないが、例えば円、長円、三角、四角、これらの半切りなどが挙げられる。
ノズル部16の開口部の孔径は、樹脂が開口部にもぐり込まない大きさであれば制限はないが、好ましくは20〜100μmである。
ノズル部16の設けられる位置は、成形品によって異なるが、例えば円柱状の金型キャビティの軸方向の中間付近に設けられることにより、中空部が成形品内の両端に向けて均一に形成されやすくなる。
成形品の肉厚は、軸孔部側で0〜10mm、好ましくは0〜5mmであり、外周部側3〜15mm、好ましくは5〜10mmである。
成形品の中空率には特に制限はないが、1〜60%、好ましくは5〜45%である。
図1では、軸孔部3から外周部2まで樹脂で満たされた樹脂壁9が形成されるが、樹脂壁9は、例えば3箇所に分散して、軸孔部側に偏って形成され、且つ壁の厚みも薄いので、外周部2の表面には大きなひけは発生しにくく、真円度も良好である。
【0008】
軸孔部3は、貫通する軸孔であっても、有底の軸穴であってもよい。貫通する軸孔は、長さ方向に均一径のものであっても、異径であってもよい。コア11及びコア12が同径のものを使用すれば長さ方向に均一径のものが得られ、例えばコア11及びコア12が異径のものを使用すれば、異径のものが得られる(図5参照)。
有底の軸穴を形成するには、例えば、他端側から加圧流体が供給できて側面中間部にノズル部16を有する有底の円管状のコア11及び円柱状のコア12を、穴底7を形成するに必要な間隔を開けて設置し、樹脂を金型キャビティ内に充填することにより行われる。その後、コア11の他端側から加圧流体を供給し、ノズル部16から樹脂内に加圧流体を注入すれば、中空部4が形成される。
穴底7は、中空樹脂製回転機構部品の軸孔部6の中間に設けられても、端面であってもよい。端面である場合、穴底7は、加圧流体の注入により設けることもできる。
【0009】
図2は、本発明に係る中空成形方法の他の一例を示す図である。
図2に示すように、円柱状金型キャビティ内に軸孔部3を形成するための円管状のコア11及び円柱状のコア12が設けられ、各コアの先端が一定の間隔を開けて設置されることにより、ノズル部16が、コア11の先端と他のコア12の先端との間隙として、例えば円環状に設けられる。加圧流体Aは、コア11の他端側から供給可能である。
樹脂が金型キャビティ内に充填された後、コア11の他端側から加圧流体Aが供給され、円環状のノズル部16から溶融状態の樹脂内に注入されて中空部4が形成される。加圧流体Aが、樹脂内に軸孔部全周から注入されるので、中空部4内には樹脂壁9が形成されない。従って、表面にひけが生じにくく、成形品の寸法精度が得られやすい。
また、上記において、コア11の先端と他のコア12の先端とを予め当接させておき、金型キャビティ内に樹脂充填後、コアの一方を後退させて、コア11の先端と他のコア12の先端との間に間隙を生じさせてノズル部16を形成させてもよい。
【0010】
また、本発明では、上記図1又は図2において、何れかのコアから樹脂を充填し、樹脂充填後、樹脂注入と同じコア又は他のコアから加圧流体を注入することもできる。
例えば、図4に示すように、コア12の他端であるホットランナーゲートから樹脂を供給し、コア11の他端から加圧流体を供給することもできる。
【0011】
金型キャビティへの樹脂の注入は、ショートショットでもハーフショットでもフルショットでもよい。また、金型にはサイドキャビティを設けて、加圧流体注入時に余分の樹脂がそこに逃げるようにしてもよい。
加圧流体の上記樹脂への注入のタイミングは、金型キャビティ内に樹脂を充填する途中であっても所定量の充填終了後であってもよい。
【0012】
成形に使用する樹脂としては、中空射出成形が可能な樹脂であれば、制限はない。樹脂としては、合成樹脂でも天然に由来する樹脂でも、結晶性でも、非晶性でもよい。具体的には、合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン;塩化ビニル系樹脂;ポリスチレン、ABS等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル;シュウ酸、吉草酸等の脂肪族ジカルボン酸類、エチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール等のジオール類、及び/又は乳酸、カプロラクトン等からなる脂肪族ポリエステル;液晶性ポリエステル;ポリカーボネート;ポリアリレート;6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン、6,12−ナイロンなどのポリアミド;ポリアセタール;ポリウレタン;フッ素樹脂;ポリフェニレンオキシド;ポリアリーレンサルファイド;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリケトン;ポリエーテルケトン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリベンゾイミダゾール;シリコーン系樹脂;これらのアロイ等が挙げられる。
天然に由来する樹脂としては、微生物の産生するポリヒドロキシ酪酸のような脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
樹脂には、各種の添加剤、充填材、強化剤を配合することができる。
【0013】
加圧流体Aは、加圧ガスであっても、加圧液体であってもよい。
加圧ガスの種類は、特に制限はないが、成形品に影響を与えないもの、安全性の高いものが好ましく、空気、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。これらのガスは乾燥したものでもよい。
加圧液体としては、標準状態で液体のものが好ましく、水;水溶液;鉱物油、植物油、動物油などの油類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類;炭化水素類、塩素化炭化水素類、フッ素化炭化水素類;その他の有機液体などが挙げられる。加圧液体としては、樹脂に作用して溶解、変形などを生じないものが好ましい。
加圧流体に加える圧力は、1〜30MPa、好ましくは5〜20MPaである。
【0014】
本発明では、軸が挿入される部分を形成するコアより製品外周部に向けて加圧流体を注入し、軸が挿入される部分と連通した中空部を成形品内に形成する。このようにすれば、ニードル孔は外観表面に出ず、中空部は加圧流体の注入口の数や方向によって複数均一に作成することができ、コアの突き当て部全体から加圧流体を注入すれば、コアと同心円状に広がる中空部が形成される。又、中空部は軸孔部寄りに発生するので、外周部に薄肉部が発生しにくく、薄肉部と厚肉部の収縮差によって発生するヒケが目立たないといった利点がある。
【0015】
本発明に係る成形品は、円柱状、多角柱状等の柱状のものであり、その長さや径には特に制限はない。成形品の側面には歯車歯が設けられたり、端面にプーリー部分やフランジ部分等が設けられていてもよい。本発明の中空樹脂製回転機構部品は、例えばローラーや歯車に使用できる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示すように、全長が100mm、軸孔部の内径が20mm、外径50mmのローラーを成形する金型に、円管状コア(図で上方)と円柱状のコア(図で下方)を設けた。円管状コアの側面先端3ヶ所に40μmの隙間(切り欠き)を等間隔で設け、円管状コアと円柱状のコアを当接させて、加圧流体を通すニードルノズルを形成させた。金型内にはローラー端面に相当する3点に樹脂ゲートを設けた。
この金型を使用して、成形収縮率が2%である無充填ポリアセタールを用い、シリンダー温度を200℃、金型温度を80℃に設定し、加圧流体は10MPaに加圧した窒素を用い、中空射出成形を行った。
その結果、得られたローラーは軸孔部と連通した中空部が3ケ所、ほぼ均一にでき、それら中空部は相互に部分的に連通していた。各中空部の間に樹脂の薄い壁が部分的に3ヶ所形成されたが、中空部は軸孔部側に発生し、ローラー外周部に薄肉部ができなかったために、ヒケは目立たなかった。又、ローラーの軸方向中央部の真円度は80μmと良好な精度を示した。
【0017】
[実施例2]
図2に示す様に、円管状コア(図で上方)と円柱状のコア(図で下方)を設けて、両コアを当接させず、先端に40μmの隙間を設けた以外は実施例1と同様にして成形を行なった。
得られたローラーは、軸孔部と円環状に連通した中空部が軸孔部全体に発生し、樹脂壁は形成されず、ヒケの無い良好なサンプルが得られた。又、軸方向中央部の真円度は60μmと良好な精度を示した。
【0018】
[比較例1]
図3に示す様に、二つの円柱状のコアを当接させて軸孔を設け、加圧流体を通すニードルノズルをローラー端面に1箇所設けた以外は実施例1と同じ金型、材料、成形条件で成形を行なった。
その結果、得られたローラーは軸孔部とは連通しない中空部が形成され、また、肉厚の樹脂壁が発生し、ローラー外周部の樹脂壁のない部分は薄肉部であるため、樹脂壁部分の外周部にヒケが発生した。又、軸方向中央部の真円度は300μmと精度が悪かった。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、製品の寸法精度が良好で、中空部に外部からごみ等が入り込まない中空樹脂製回転機構部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明に係る中空成形方法の一例を示す縦断面図である。
(b)上図のB−B’断面図である。
(c)上図のコアとノズル孔の側面図及び正面図である。
【図2】(a)本発明に係る中空成形方法の他の一例を示す縦断面図である。
(b)上図のB−B’断面図である。
【図3】(a)従来の中空成形方法の一例を示す縦断面図である。
(b)上図のB−B’断面図である。
【図4】(a)本発明に係る中空成形方法のコア側から樹脂を注入する一例を示す縦断面図である。
【図5】(a)本発明に係る中空成形方法の異軸径を有する一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 中空樹脂製回転機構部品
2 外周部
3 軸孔部
4 中空部
6 ノズル孔
7 穴底
8 薄肉部
9 樹脂壁
11 コア
12 コア
15 樹脂ゲート
16 ノズル部
A 加圧流体
P 樹脂
Claims (4)
- 軸孔部を有する中空樹脂製回転機構部品の成形方法において、金型キャビティ内の樹脂に、軸孔部3を形成するための少なくとも一つのコア11に設けられたノズル部16から、加圧流体を注入する中空成形方法であって、ノズル部16が、コア11の先端と他のコア12の先端との間隙として設けられ、コア11又は12側に設けられたノズルから樹脂を充填し、樹脂充填後、コア11からノズル部16を介して加圧流体を注入することを特徴とする中空成形方法。
- ノズル部16が、コア11の側面に複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の成形方法。
- 請求項1又は2に記載の方法により成形される、軸孔部を有する中空樹脂製回転機構部品であって、ノズル孔6を軸孔部3に有する成形品。
- 中空部4が、外周部2と軸孔部3の間で、軸孔部側に偏って形成される請求項3に記載の成形品。
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