JP4299694B2 - 二酸化炭素散布装置 - Google Patents
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Description
二酸化炭素濃度の上昇を抑えるための一つの手法として、事業所や火力発電所等の二酸化炭素の固定発生源から排出された二酸化炭素ガスを回収して液化し、この液体二酸化炭素を海中に送り込んで、長期にわたって大気と隔離するという構想が提案されている。
このような二酸化炭素散布装置としては、例えば、後記の特許文献1に記載の希釈放流装置がある。
この希釈放流装置は、船舶から海中に吊り下げられた供給管に設けられたノズルから液体二酸化炭素を散布することで、所定の深さの海中に二酸化炭素を拡散させるものである。
このように広範囲に二酸化炭素を散布するためには、二酸化炭素散布装置を大型化する必要があるが、大型化に伴って、二酸化炭素散布装置の製造コストや運搬コストが増加する上、流体抵抗が大きくなって船舶による曳航も困難になってしまう恐れがある。
このため、二酸化炭素散布装置によって一度に散布することができる二酸化炭素の量には上限があった。
すなわち、本発明にかかる二酸化炭素散布装置は、船舶から海中に吊り下げられて曳航される配管に設けられ、該配管を通じて前記船舶から供給される液体二酸化炭素をノズルから散布する二酸化炭素散布装置であって、前記ノズルの近傍に、流体抵抗を受ける抵抗体が設けられていることを特徴とする。
これにより、ノズルから散布された二酸化炭素の液滴のうちの少なくとも一部が、この渦に乗って周囲に拡散させられる。
また、この渦には、二酸化炭素散布装置の周囲の海水(すなわちまだ液体二酸化炭素が拡散していない海水)が巻き込まれる。
これにより、ノズルから散布された二酸化炭素の液滴群にも、海水が巻き込まれるので、各液滴が海水と接触しやすくなり、液体二酸化炭素の希釈が効果的に行われる。
そして、この二酸化炭素散布装置には、これらのノズルのそれぞれに対応させて、単数または複数の抵抗体が設けられているので、各ノズルから散布された二酸化炭素の液滴を、抵抗体が生じさせた渦によって確実かつ効果的に拡散させることができる。
すなわち、ノズルの直近位置では海水の流れに抵抗体に由来する乱れが生じないので、ノズルから吐出された液体二酸化炭素が確実に液滴となったのちに、ノズルの後方で発生した渦によって効果的に拡散させられる。
ノズルから散布された二酸化炭素の液滴は、海水との比重差によって生じる浮力を受けてゆっくりと上昇してゆくので、この構成の二酸化炭素散布装置では、二酸化炭素の液滴がより確実に渦に巻き込まれることとなり、拡散がより効果的に行われる。
また、ノズルから散布された二酸化炭素の液滴群にも、海水が巻き込まれるので、各液滴が海水と接触しやすくなり、液体二酸化炭素の希釈が効果的に行われる。
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態について、図1から図3を用いて説明する。
本実施の形態にかかる二酸化炭素散布装置1は、図1に示すように、海上を航行する船舶Sから海中に吊り下げられて曳航される配管Pに設けられて、海洋中層(水深1000〜2500m)に保持されるものである。
船舶Sには、液体二酸化炭素が貯蔵される貯蔵タンクと、貯蔵タンク内の液体二酸化炭素を配管Pに圧送するポンプとが設けられており、二酸化炭素散布装置1には、配管Pを通じて、貯蔵タンク内の液体二酸化炭素が供給されるようになっている。
装置本体2には、配管Pから液体二酸化炭素を供給されるとともにこの液体二酸化炭素を散布する複数のノズル3が設けられている。また、装置本体2には、これらノズル3の近傍に位置させて、流体抵抗を受ける抵抗体4が設けられている。
装置本体2は、配管Pとノズル3とを接続する配管等が内部に収納されるものである。
装置本体2は、平面視した場合、略長方形板状に形成されており、その長手方向の中央部の、一長辺側に配管Pが接続されている。また、装置本体2は、配管Pに対して回転継手6を介して接続されており、回転継手6を中心として、水平面内で配管Pに対して相対的に回転可能とされている。すなわち、装置本体2は、略水平に保たれた状態で、配管Pが接続される一長辺側に曳航されるようになっている。
さらに、装置本体2の側断面は、曳航時に生じる流体抵抗を低減するために、曳航方向に対して流線型をなしている。
本実施の形態では、これらノズル3は、装置本体2の長手方向の中央部を挟んで対称にして、長手方向の一端側と他端側とに各2基ずつ、合計4基設けられていて、より広範囲に液体二酸化炭素の散布を行うことができるようになっている。
本実施の形態では、抵抗体4は円柱形状とされており、装置本体2の上面側に、装置本体2の長手方向の中央部を挟んで対称にして、4基のノズル3を間に挟んだ状態で、長手方向の一端及び他端に各1基ずつ、合計2基設けられている。
二酸化炭素散布装置1は、このようにして海中で曳航されながら、船舶S上の貯留タンクから配管Pを通じて液体二酸化炭素を供給されることで、ノズル3の吐出口から、液体二酸化炭素を吐出するものである。
ここで、二酸化炭素散布装置1による液体二酸化炭素の単位時間当たりの散布量をQとし、液滴が吐出されてから上昇した距離をh、液滴の帯の幅をbとすると、海流等の影響による自然拡散が生じる前の段階での二酸化炭素の希釈率(初期希釈率αS)は、次式(1)で表される。
αS=Q/bvh (1)
初期希釈率αSの値は、海水中における二酸化炭素濃度の上昇が海中の生態系を崩さない範囲内となるよう、その上限が定められる。
二酸化炭素の液滴の初期の径が適正(20mm程度)である場合には、液滴は、散布位置から1000m程度まで上昇する可能性があり、この場合には、液体二酸化炭素を数万倍に希釈することが可能となる。
このため、二酸化炭素散布装置1が曳航されて、抵抗体4に対する相対的な流れが生じると、図3に示すように、抵抗体4の曳航方向後方(すなわちノズル3の列の両端後方)に、渦(カルマン渦)が生じる。
この渦の大きさは、抵抗体4の抗力係数CDの値が大きいほど大きくなり、渦が大きいほど、より拡散効果が高くなる。
これにより、ノズル3から散布された二酸化炭素の液滴群にも、海水が巻き込まれるので、各液滴が海水と接触しやすくなり、液体二酸化炭素の希釈が効果的に行われる。
なお、図4に示す二酸化炭素散布装置11では、ノズル3と抵抗体4との距離が確保されるため、ノズル3の直近位置では抵抗体4が発生させる渦が発生しない。
すなわち、ノズル3の直近位置では海水の流れに抵抗体4に由来する乱れが生じないので、ノズル3から吐出された液体二酸化炭素が確実に液滴となったのちに、ノズル3の後方で発生した渦によって効果的に拡散させられる。
具体的には、抵抗体4は、必要な抵抗係数CDが得られるように、その形状や大きさ、向き等が適宜設定されるものであって、例えば、抵抗体4の断面形状は、図5に示すように、楕円も含む円形としたり、三角形や四角形とすることができる。
以下、本発明の第二実施形態について、図6及び図7を用いて説明する。
図6に示すように、本実施の形態にかかる二酸化炭素散布装置21は、第一実施形態に示した二酸化炭素散布装置1において、抵抗体4を、装置本体2上に設ける代わりに、装置本体2から曳航方向後方に張り出して設けたことを主たる特徴とするものである。
以下、本実施の形態について、第一実施形態に示す二酸化炭素散布装置1と同一または同様の構成については、同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
これら抵抗体支持部材22の、装置本体2の長手方向における位置は、ノズル3の列の両端部及び各ノズル3間とされている。すなわち、各抵抗体4は、ノズル3の列の両端部後方、及び各ノズル3間の後方に設けられており、各ノズル3から散布された二酸化炭素の液滴が、確実に抵抗体4間を通過する構成とされている。
ここで、ノズル3の後端から抵抗体4までの距離は、ノズル3から散布されて曳航方向後方に向かう液体二酸化炭素が確実に液滴となる距離、例えば50cm〜100cm程度確保されている。
すなわち、ノズル3の直近位置では海水の流れに抵抗体4に由来する乱れが生じないので、ノズル3から吐出された液体二酸化炭素が確実に適切な径の液滴となったのちに、ノズル3の後方で発生した渦によって効果的に拡散させられる。
さらに、複数設けられるノズル3のそれぞれに対応させて抵抗体4を設けているので、各ノズル3から散布される二酸化炭素の液滴を、確実かつ効果的に抵抗体4が発生させる渦にのせて拡散させることができる。
次に、本発明の第三実施形態について、図8及び図9を用いて説明する。
図8に示すように、本実施形態にかかる二酸化炭素散布装置31は、第二実施形態に示す二酸化炭素散布装置21において、抵抗体4を、ノズル4に対して上方に位置して設けたことを主たる特徴とするものである。
以下、本実施の形態について、第二実施形態に示す二酸化炭素散布装置21と同一または同様の構成については、同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
抵抗体支持部材32は、装置本体2と略平行な平面視長方形板状をなす支持部材本体33と、支持部材本体33の曳航方向後方に一端を突出させた状態にして設けられる複数の棒状部材34とを有している。そして、抵抗体4は、この棒状部材34の先端に設けられている。
ここで、ノズル3の後端から抵抗体4までの距離は、ノズル3から散布されて曳航方向後方に向かう液体二酸化炭素が確実に液滴となる距離、例えば50cm〜1m程度確保されている。
また、支持部材本体33の側断面は、曳航時に生じる流体抵抗を低減するために、曳航方向に対して流線型をなしている。
図9に示すように、ノズル3から散布された二酸化炭素の液滴は、海水との比重差によって生じる浮力を受けてゆっくりと上昇してゆくので、この構成の二酸化炭素散布装置31では、二酸化炭素の液滴がより確実に渦に巻き込まれることとなり、拡散がより効果的に行われる。
2 装置本体
3 ノズル
4 抵抗体
32 抵抗体支持部材
P 配管
S 船舶
Claims (10)
- 船舶から海中に吊り下げられて曳航される配管に設けられ、該配管を通じて前記船舶から供給される液体二酸化炭素をノズルから散布する二酸化炭素散布装置であって、
前記ノズルの近傍に、流体抵抗を受ける抵抗体が設けられていることを特徴とする二酸化炭素散布装置。 - 前記抵抗体は、曳航姿勢での上下方向に延びる柱形状をなしていることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素散布装置。
- 前記抵抗体は、断面視円形または楕円形の柱形状をなしていることを特徴とする請求項2記載の二酸化炭素散布装置。
- 前記抵抗体は、断面視が三角形以上の多角形柱形状をなしていることを特徴とする請求項2記載の二酸化炭素散布装置。
- 前記ノズルが複数設けられており、
前記抵抗体は、前記各ノズルのそれぞれに対して単数または複数ずつ設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の二酸化炭素散布装置。 - 前記抵抗体は、前記ノズルに対して曳航方向の側方に位置して設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の二酸化炭素散布装置。
- 前記抵抗体は、前記ノズルに対して曳航方向の後方に位置して設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の二酸化炭素散布装置。
- 前記抵抗体は、前記ノズルに対して上方に位置して設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の二酸化炭素散布装置。
- 前記配管に取り付けられる装置本体と、前記配管に対して前記装置本体の上方に位置して設けられる抵抗体支持部材とを有しており、
前記ノズルは前記装置本体に設けられており、
前記抵抗体は前記抵抗体支持部材に設けられていることを特徴とする請求項8記載の二酸化炭素散布装置。 - 前記装置本体及び前記抵抗体支持部材は、曳航方向に対して流線型をなしていることを特徴とする請求項9記載の二酸化炭素散布装置。
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