JP4295855B2 - レーザ発振装置、露光装置及びデバイスの製造方法 - Google Patents

レーザ発振装置、露光装置及びデバイスの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮性気体を流入出させる流路を形成し、流路途中の所定部位から噴出させるガス供給路構造、導波管から導波管壁に形成された複数の微小間隙を介して電磁波をレーザ管内に導入することにより、レーザ光を発生させるレーザ発振装置に関し、特にレーザガス励起用の電磁波としてマイクロ波を用いたレーザ発振装置、これを備えた露光装置及びデバイスの製造方法に適用して好適である。
【0002】
【従来の技術】
近時では、紫外領域で発振する唯一の高出力レーザとして、いわゆるエキシマレーザが注目されており、電子産業や化学産業、エネルギー産業等において、具体的には金属、樹脂、ガラス、セラミックス、半導体等の加工や化学反応等に応用が期待されている。
【0003】
エキシマレーザ発振装置の機能原理について説明する。先ず、マニホルド内に充填されたAr,Kr,Ne,F2 等のレーザガスを電子ビーム照射や放電等により励起状態にする。このとき、励起されたF原子は基底状態の不活性Kr,Ar原子と結合して励起状態でのみ存在する分子であるKrF* ,ArF* を生成する。この分子がエキシマと呼ばれるものである。エキシマは不安定であり、直ちに紫外光を放出して基底状態に落ちる。これをボンドフリー遷移あるいは自然発光というが、この励起分子を利用して一対の反射鏡で構成される光共振器内で位相の揃った光として増幅し、レーザ光として取り出すものがエキシマレーザ発振装置である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
エキシマレーザ発振装置について、以下に列挙するような種々の問題がある。
【0005】
(1)エキシマレーザ発振装置は、各種近代産業に用いられる光源の主流となりつつある反面、発光に伴うレーザガスの枯渇によりその発光時間が極めて短いという問題がある。即ち、エキシマレーザの中でも特にKrFレーザやArFレーザ、F2 レーザにおいては、励起分子から発光がなされた状態から元の原料ガス分子の状態に戻るまで比較的長時間を要するため、長時間の発光を維持することが困難となる。
【0006】
そこで、レーザガスを補って発光時間を延長させるには、当該レーザガスを高速度で絶えず供給する必要がある。しかしながら、高速流を発生させればそれに伴って衝撃波が生じてレーザ発振装置として機能不能、具体的にはレーザガスの継ぎ手が緩んだり、セラミクスの破損や金属疲労等が発生するおそれがあり、例えば露光等を行なう場合、それ以上に衝撃波によって発生する振動は致命的な外乱となる。現在のところ、衝撃波を防止して高速流のレーザガスを実現する十分な技術は確立しておらず、今後の鋭意検討が待たれる現況にある。
【0007】
(2)エキシマレーザ発光の際には、上記の如くレーザガスの励起源としては主にマイクロ波が用いられる。マイクロ波とは、発振周波数が数百MHz〜数十GHzの電磁波である。この場合、導波管から導波管壁に形成された間隙(スロット)を介してマイクロ波をレーザ管内に導入し、これによりレーザ管内のレーザガスをプラズマ状態に励起する。
【0008】
しかしながら、導波管壁に形成されたスロットからの電磁波の放射特性を、スロット上の全領域において均一にすることは困難であり、通常、スロット長軸方向に正弦状もしくはそれに類似した分布となる。即ち、図97(a)に示すように、スロット長軸方向の中央部における電界強度分布が最も大きく、スロット長軸方向の端部における電界強度分布が最も小さくなってしまう。
【0009】
更に、マイクロ波の電界強度分布に対して、図97(b)に示すように、励起されるプラズマはスロット長軸方向の中心に集まるという性質があり、スロット長軸方向の電界強度の不均一分布が助長されてしまう。このことは、スロットの長手方向において励起されるプラズマを均一にすることのできない大きな要因となる。
【0010】
この現象は、スロットの長手方向における中央の位置で励起源である電磁波の強度が最も強いためプラズマが中央の位置で励起され易いという性質、励起したプラズマが表面積が最小となる球状に集まり易いという性質に起因するものである。中央位置で励起したプラズマにより、スロット中央に空間のインピーダンスの低い領域が形成され、その部位で優先的にエネルギーが消費されると共に、プラズマがシールドとして働き、マイクロ波が放出される長さに設計されていたスロット長がマイクロ波にとって半分の長さとなり、マイクロ波がスロット外部に放出されなくなる。これら2つの要因によりプラズマはスロットの中央のみで形成され易く、スロット上で均一なプラズマを励起させることは極めて困難であった。
【0011】
(3)エキシマレーザ発光の際には、上記の如くレーザガスの励起源としては主にマイクロ波が用いられる。マイクロ波とは、発振周波数が数百MHz〜数十GHzの電磁波である。この場合、導波管から導波管壁に形成された間隙(スロット)を介してマイクロ波をレーザ管内に導入し、これによりレーザ管内のレーザガスをプラズマ状態に励起する。
【0012】
ここで、仮にスロットから放出されるマイクロ波の強度分布が均一であったとしても、レーザ光の共振器長を満たすだけの長い空間にマイクロ波を供給するには、共振器長軸方向に沿って複数のスロットを配置したスロットアレイ構造を形成する必要がある。この構造を図98に示す。図98において、導波管壁201に複数の微小間隙(スロット)202が等間隔に形成されており、便宜上レーザ管内を放出空間として略記する。
【0013】
このスロットアレイ構造を採用した場合、隣接するスロット202間の領域(図98中、楕円形の斜線部で示す。)は必然的にマイクロ波の非照射領域となる。従って、マイクロ波により放出空間に存するレーザガスを励起する際にも非照射領域の存在に起因してマイクロ波強度にムラが生じ、全体として不均一な分布のプラズマ放電が発生することになる。
【0014】
(4)スロット上のマイクロ波放出面直近にはプラズマが生成されるが、スロット上に形成されるプラズマシースにおいては、マイクロ波の伝播が可能であり、結果マイクロ波がシース領域を介してスロット短軸方向に広がり、投入したパワーが分散してしまうためにエキシマレーザの励起に必要なエネルギ密度を満たすことができなかった。このことは、プラズマを広い空間に拡散すると、プラズマの生成に用いるためのエネルギが分散してエキシマを励起するだけのエネルギ密度を実現することが困難となることに起因する。
【0015】
図99はプラズマシースを介してマイクロ波が伝播する様子を示す模式図であり、スロットの長手方向に対し垂直となる方向に沿った断面を示している。
【0016】
スロット上ではプラズマは電気的に接地されていないが、その外側は基本的には直接導波管801に接地しており、シースにおける電位差、シース幅などが両者で異なってくる。このため、プラズマ密度が十分でない場合、シースが厚くなり、マイクロ波が外側に不均一に漏れ易くなる。この結果、スロット開口端の直上はプラズマが薄く、外側において高密度になるという現象が発生する。
【0017】
本発明は、上記の種々の課題に鑑みてなされたものであり、以下に列挙する目的を有する。
【0018】
(1)簡易な構造で音速に近い程の高速流を形成しつつも、衝撃波の発生を抑止することを可能とするガス供給路構造(及びガス供給方法)を提供することを目的とし、更にはこのガス供給路構造を備え、発光時間の長いレーザ発振装置や、このレーザ発振装置を備えた高性能の露光装置、この露光装置を用いた高品質なデバイスの製造方法を提供する。
(2)スロットアレイ構造を採用するも、個々のスロットの長手方向にわたり全体的に均一なプラズマの励起を実現し、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光を可能とするレーザ発振装置や、このレーザ発振装置を備えた高性能の露光装置、この露光装置を用いた高品質なデバイスの製造方法を提供する。
【0019】
(3)スロットアレイ構造を採用するも、レーザ管の長手方向にわたり全体的に均一な電磁波の放射を実現し、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光を可能とするレーザ発振装置や、このレーザ発振装置を備えた高性能の露光装置、この露光装置を用いた高品質なデバイスの製造方法を提供する。
【0020】
(4)スロットアレイ構造を採用するも、スロット上に生成されるプラズマの拡散を抑止し、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光を可能とするレーザ発振装置や、このレーザ発振装置を備えた高性能の露光装置、この露光装置を用いた高品質なデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明のレーザ発振装置は、導波管から導波管壁に形成された複数の微小間隙を介してマイクロ波を、レーザガスが流入出する流路を形成するガス供給構造に導入することにより前記流路内でレーザガスを励起させてプラズマを生成し、前記プラズマから発せられる光を共振させてレーザ光を発生させるレーザ発振装置であって、前記流路はレーザ光の発光部で最も幅狭となる形状とされており、前記レーザガスを前記流路に対して双方向に流入出させるガス供給手段と、前記ガス供給手段により供給されるレーザガスを前記流路途中の前記発光部で亜音速に制御するガス供給制御手段を備え、前記ガス供給制御手段は、前記発光部の温度に応じて、前記流路の一方の端部であって前記レーザガスが流入する部分である流入口と前記流路の他方の端部であって前記レーザガスが流出する部分である流出口との圧力比を流出口断面積と発光部断面積の断面積比で与えられる臨界圧力比以下とするように前記流入口或いは前記流出口の圧力を調整し、前記流路には、前記レーザガスの流れる方向に向かって形成された開口からなる前記プラズマの遮蔽構造を備えたことを特徴とする。
【0123】
本発明の露光装置は、照明光を発する光源である前記レーザ発振装置と、所定パターンの形成されたレチクルに前記レーザ発振装置からの照明光を照射する第1光学系と、前記レチクルを通過した照明光を被照射面に照射する第2光学系とを備え、前記被照射面に前記レチクルの所定パターンを投影し露光を行う。
【0124】
本発明のデバイスの製造方法は、被照射面に感光材料を塗布する工程と、前記露光装置を用いて、前記感光材料が塗布された前記被照射面に所定パターンの露光を行う工程と、前記所定パターンの露光が行われた前記感光材料を現像する工程とを備える。
【0125】
本発明のデバイスの製造方法の一態様においては、前記被照射面をウェハ面とし、当該ウェハ面に半導体素子を形成する。
【0126】
【作用】
本発明においては、以下に列挙するような作用を有する。
【0127】
(1)本発明のレーザ発振装置においては、各微小間隙が、当該微小間隙の電磁波の放出特性が導波管内で伝搬される電磁波の強度分布と相反するような部位に形成される。ここで、微小間隙に依存した電磁波の放出特性は、上記のように微小間隙の中央部位で電磁波強度が最大値となり、微小間隙の端部へ近づくにつれて小さくなる分布を示すため、導波管内で伝搬される電磁波の強度分布がこれと相反するような位置に微小間隙を形成すれば、導波管内で伝搬される電磁波の強度分布が微小間隙に依存した電磁波の放出特性による強度分布の影響を受け、実際に各微小間隙から放出される電磁波の強度分布の均一性が当該各微小間隙の全域にわたって高まる。
【0128】
具体的には、例えばE面アンテナを想定し、各微小間隙を電磁波の導波管における管内波長又はその半波長をピッチとして一列に形成した場合、導波管内で伝搬される電磁波の強度分布の最小値が当該微小間隙のほぼ中央部位に位置するように、各微小間隙を形成する。即ち、導波管内で伝搬される電磁波の強度分布に合わせて、各微小間隙の中央部位に電磁波の放出強度分布の最大値が一致するように対応させた位置から、各微小間隙を一律にλg /4(λg :管内波長)だけずらした部位に、当該微小間隙を形成する。このような比較的容易に手法により、各微小間隙から放出される電磁波の強度分布の更なる均一化を係ることが可能となる。
【0132】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用したいくつかの具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0133】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。この実施形態では、いわゆるエキシマレーザ光を発するエキシマレーザ発振装置を例示する。
図1〜図3は、それぞれ本実施形態のエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【0134】
このエキシマレーザ発振装置は、図1〜図3に示すように、エキシマレーザガスが供給され、当該レーザガスを放電により励起させ共振させることによりレーザ光を発するレーザチャンバ1と、レーザチャンバ1にレーザガスを供給するためのガス供給手段2と、加熱させたレーザガスを冷却するための冷却器3とを備えて構成されている。本例では、後述するようにレーザガスの流動方向が交互に変化することを考慮して、レーザチャンバ1をガスの流入口と流出口とで対称形状に構成する。
【0135】
また、レーザガスの冷却は、図1の送通部28に冷却水を供給することで行い、ガス供給手段2にも放熱フィン29を設けて行なう。レーザガスの温度上昇が比較的少ない場合には、冷却器3を別途設ける必要はない。
【0136】
エキシマレーザ光を発生させる際の原料となるエキシマレーザガスは、Kr,Ar,Neから選ばれた1種以上の不活性ガスとF2 ガスとの混合気体である。これらのうち、使用したい波長により適宜ガス種を選択し組み合わせればよい。例えば、248nmの波長のレーザ光を発生させたい場合には、Kr/Ne/F2 とし、193nmの波長の場合にはAr/Ne/F2 、157の波長の場合にはNe/F2 とすればよい。
【0137】
レーザチャンバ1は、図2(b)に示すように、左右対称形状のいわゆるラバルノズル型のものでありレーザ管として機能するガス供給路構造11と、このガス供給路構造11内のレーザガスを励起してプラズマ状態とするための導波管12とを備えて構成されている。
【0138】
ガス供給路構造11は、一対の流入出口11aからレーザガスを流入出させる流路を形成し、中央部で最も幅狭となる形状とされており、この中央部でレーザガスを後述するように所定の亜音速となるように制御するノズルである。ここで、レーザガスの流速が亜音速となる前記中央部がレーザ光の発光部21となる。そして、図3に示すように、この発光部21の図中上下部位に一対の反射構造体22,23が設けられ、これら反射構造体22,23により発光部21から発する光の位相が揃えられてレーザ光が発生する。なお本実施形態では、ガス供給路構造11内におけるレーザガスの流れは左右双方向とされるため、ガス供給路構造11は左右対称形状とされており、ガス流の方向に応じて流入出口11aの一方が流入口に、他方が流出口となる。
【0139】
なお、このガス供給路構造11の発光部21におけるレーザガスの通路の高さ(上下幅)は、図1〜図3の例では所定値に固定されているが、例えば図4に示すような当該発光部21の高さを可変とする上下幅調整手段21aを設けてもよい。この上下幅調整手段21aは、上下方向に可変とされた一対の部材であり、各々の先端部を対向させることにより発光部21の高さを所定値に規定するものである。この上下幅調整手段21aの代わりに、着脱可能なスペーサを発光部21に設けて高さ規制を行なうようにしてもよい。また、ノズル部分を取り替えることで、異なるガス供給路構造を実現してもよい。
【0140】
導波管12は、マイクロ波をガス供給路構造11内のレーザガスへ供給するための手段であり、下面部に細長いスロットが複数形成されている。導波管12の上部より数GHz〜数十GHzの周波数のマイクロ波が導入されると、このマイクロ波が導波管12内を伝播しながら、前記スロットから導波管12の外部へ放出される。放出されたマイクロ波は、ガス供給路構造11に設けられた窓部24から当該ガス供給路構造11内へ導入される。そして、導入されたマイクロ波により供給路構造11内のレーザガスが励起され、共振してエキシマレーザ光が発生する。また、後述の低コンダクタンス部27には高周波予備電極30が設けられている。
【0141】
ここで、ガス供給路構造11の具体的な機能について説明する。便宜上、レーザガスを圧縮性気体であり且つ完全気体とし、定常1次元の等エントロピー流れであることを前提として解析する。
【0142】
ガス供給路構造11の構造は、レーザガスの流速を加速するための先細り形状と減速するための先太り形状とを組み合わせたいわゆるラバルノズル型のものである。この構造においては、発光部21におけるガスの流速が音速より大きい速度に達すると、流出口ではほぼ必ず衝撃波が発生する。本実施形態では、発光部21のガス流速が亜音速となるように、ガス供給路構造11におけるガスの流入口と流出口における圧力比を両者の断面積比で与えられる臨界圧力比以下とする。
【0143】
【数1】
Figure 0004295855
【0144】
throut:発光部(スロート)の断面積
out :流出口の断面積
in :流入口の圧力
out :流出口の圧力
【0145】
図5は、(流出口断面積/発光部断面積)と(流出口圧力/流出口圧力)との関係を示す特性図である。ここで、エキシマレーザガスはその成分が殆ど単原子ガスであるため、比熱比γを5/3とする。この図5によれば、例えば流出口における高さ(流出口の上下幅)を発光部21の高さ(最狭となる部位の上下幅)の2倍(即ち、両者の空間断面積比が2)とすると、流出口圧力を流出口圧力の約0.93倍以上とすればガス流速は音速を超えることはなく衝撃波は生じない。ちなみに臨界状態での発光部21のガス流速は音速である。
【0146】
ガスの音速はガス温度の関数であり、KrF* エキシマレーザガスの場合、例えばNe:Kr:F2 =94.9:5:0.1であると仮定すると、平均分子量M(Ne:20.18/Kr:83.8/F2 :38)が23.4の理想気体と見做せば、音速aは、
【0147】
【数2】
Figure 0004295855
【0148】
で表されることから、各温度に対応する音速は、以下の表1のようになる。
【0149】
【表1】
Figure 0004295855
【0150】
ここで、Rは気体定数、Tは絶対温度(K)であり、比熱比γは単分子のものと同じと仮定している。従って、この関係により、より高速のガス置換を行なう場合、流入ガス温度を積極的に下げることは望ましくないことが分かる。逆に言えば、亜音速以下の高速置換のためには、むしろレーザガスを加熱しておいた方が望ましい場合もあり得る。また同様の理由から、レーザガスの冷却を行なうのであれば、ガスの流出口側で行なうべきことが示唆される。
【0151】
ガス供給路構造11の各部位(流入口、発光部、流出口)における速度、マッハ数、ガス圧力、ガス密度、ガス温度、及び音速との各条件の関係を図6に示す。
【0152】
この図6においては、Aブロックが流入口における速度(亜音速又は音速)に対する発光部21の前記各条件の変化を示し、Bブロックが発光部21における速度(亜音速又は音速)に対する流出口の前記各条件の変化を示している。従って、流入口の速度が亜音速ならば、発光部21へ向かうにつれてガス流速が増加して発光部21で最大速度となる。そして、この最大速度が亜音速以下ならば、流出口へ向かうにつれてガス流速が減少することになる。このように、ラバルノズル型のガス供給路構造11をレーザチャンバとして用い、各部位における温度や圧力を調節することにより、衝撃波の発生を抑止しつつ、発光部21の流速を流入口及び流出口でのガス流速に比して大きな亜音速に制御することが可能となる。
【0153】
なお、ガス供給路構造11に形状について、急拡大や急縮小等の変曲点が存在すると、発光部21以外の部位において音速域が形成されるおそれがあるため、急拡大部を避けて比較的緩やかに拡大(又は縮小)する形状とすることが望ましい。
【0154】
以下、発光部21の流速を上記の如き亜音速とするための具体的な条件設定等について説明する。
発光部21におけるガス流量は、以下に示すように、流入口の圧力に依存する。ここで、fは発光部21のガス流量、Pthroutはその圧力である。この場合、(流入口圧力/発光部圧力)と(発光部の流速)との関係は図7に示すようになる。
【0155】
【数3】
Figure 0004295855
【0156】
f :発光部(スロート)のガス流量
throut:発光部(スロート)の圧力
【0157】
図7によれば、流入口圧力を1.67(atm)、発光部圧力を1(atm)に設定することにより、発光部21の流速を300(m/s)とすることができる。また、図5を用いた上記の考察により、流入口と発光部21との空間断面積比を2とすると、流出口圧力は1.56(atm)であればよい。相対的に流出口では圧力は低く温度は高いため、流入口側の圧力調整の変位量より流出口側の変位量の方が大きいことが予想されることから、レーザガスの充填圧を流出口圧力とし、流入口圧力を昇圧、次いで流出口圧力を一定に保持することが好適である。
【0158】
但し、実際の系では臨界条件を用いないため、数1において、Athrout→A* ,Pout →P,Aout →A(A* :仮想臨界点の断面積、P,A:任意位置の圧力及び断面積)と置き換えを行なって算出している。
【0159】
更に、Tinを流入口におけるガス温度、Tを任意部位におけるガス温度、Pを任意部位におけるガス圧力とすると、以下の式が成り立つ。またこの場合、(任意部位圧力/発光部圧力)と(任意部位温度/発光部温度)との関係は図8に示すようになる。
【0160】
【数4】
Figure 0004295855
【0161】
in:流入口のガス温度
T :任意点のガス温度
P :任意点の圧力
【0162】
このとき、例えば流入口のガス温度を25℃とし、断熱状態を仮定すると、発光部温度は−30.3℃、流出口のガス温度は16.9℃となる。
なお、レーザガスの流動により生じる摩擦や、発光部21が加熱されるなどして上記各条件に不測の変動が生じる場合がある。従って、当該摩擦が少なくなる形状、具体的にはガス供給路構造11の表面を例えば平坦性の高い表面としたり、機械研磨や電界複合研磨等により物理的な表面粗さを小さくして当該表面を変曲点のない構造(滑らかな表面構造)とすることが望ましい。このとき、ガス供給路構造11の流路内(主に発光部21)に発生する温度上昇に対応して、臨界圧力比又は前記流入口の圧力を補正するため、例えば発光部21の温度をモニタ(間接的に発光部21におけるガス流速をモニタ)し、流入口圧力や流出口圧力を微調整する補正手段を設けることが好適である。具体的な当該補正手段の機能としては、例えば発光部21におけるガス流速が低い場合には流出口圧力を上昇させる等が考えられる。
【0163】
以上説明したような各条件の関係を図9に総括的に示す。このように、例えば発光部圧力を1(atm)に、発光部ガス流速を300(m/s)に設定したい場合には、流入口圧力を1.67(atm)とすればよく、更に(発光部断面積/流入口断面積)を1/2に設計した場合には、発光部21における前記摩擦を無視できる程度に低減させれば、流出口圧力を1.56(atm)とすればよい。このような具体的条件を採ることにより、衝撃波の発生を抑止しつつ、発光部21の流速を流入口及び流出口のガス流速に比して大きな亜音速、ここでは上記の300(m/s)に制御することができる。
【0164】
各ガス供給手段2は、ガス供給路構造11の流入口及び流出口にそれぞれ接続され、冷却器3と一体となって循環系を形成しており、上述したようにエキシマレーザガスの流速や圧力を流入口や流出口でそれぞれ制御するものであり、ここではマトリクス状に結合した複数のベローズポンプ25で構成されている。
【0165】
各ベローズポンプ25は、図2(a)に示すように、伸縮自在とされた長寿命のベローズ部25aと、このベローズ部25aの伸縮を調節する高速精密動作を行なうサーボモータ25bとを備えて構成されている。ここで、発光部21の断面積を例えば250mm×2mm(=5×10-42 )とすると、必要とされる発光部21のガス流量は0.11m3 /s(=6.61m3 /min)である。ベローズポンプ25の動作時間を0.2s(露光時間を0.1sと仮定)とすると、ベローズポンプ25が一回当たり押し出すガス体積は、流入口、流出口でそれぞれ2.21×10-23 、2.30×10-23 である。内径50mmの長寿命のベローズポンプ25の標準ブロック伸縮体積(最長時体積から最短時体積を除いた体積)は、0.115×10-33 であることから、200ブロック程度のベローズポンプ25が必要となる。ここでは、初期動作や導入路等の体積分も考慮して、片翼210ブロックのベローズポンプ25を用意する。このベローズポンプ25は、垂直方向に5ブロックまでの直列接続が可能なものであるため、図1及び図3に示すように、対称動作する5ブロックのベローズポンプ25のセルが上下に21個マトリクス状に配列され、各ガス供給手段2が構成される。
【0166】
ベローズ部25aは、長さが最短時となる形状に合わせた放熱構造に形成されている。この構造としては、接ガス面積を減らす意味では円柱状とし、ベローズ部25aの外表面には放熱面積を高めるためのフィン構造29を設けることが望ましく、レーザガスの温度上昇が無視できない場合にはベローズ部25aの内表面についてもフィン構造とすることで対応可能である。
【0167】
また、ベローズポンプ25は上記の如き直列配置されるため、座屈を防止することを考慮してベローズポンプ25の外部の大気圧をベローズポンプ25内の圧力より高く設定することが好ましい。
【0168】
ベローズポンプ25の作業効率を向上させるには、当該ベローズポンプ25から発光部21に至る供給系の体積を最小限に抑えることが必要である。そこで、図3に示すように、各ベローズポンプ25と発光部21との間を結合する例えばφ4mm程度の中空流路26を設ける。更に、発光部21の直近に均一なガス流を形成するための低コンダクタンス部及び高周波予備電離部を設ける。これら低コンダクタンス部及び高周波予備電離部は空間的に兼用とすることが可能であり、図示の例では両者を一体として低コンダクタンス部27として示す。ここでは、低コンダクタンス部27を例えば長さ50mm〜100mm、高さ4mmとし、発光部21を長さ4mm程度、高さ2mmとする。
【0169】
冷却器3は、各ガス供給手段2と接続され、レーザガスを冷却する機能を有する。この冷却器3と各ガス供給手段2、ガス供給路構造11とでガス循環系を構成しており、ガス供給手段2のベローズポンプ25の駆動によりレーザガスの流動方向が交互に変化する。ここで、冷却器3によるレーザガスの冷却方法としては、ガス供給路構造11を通過することにより加熱されたレーザガスを冷却するという方式が好ましい。レーザガスをガス供給路構造11へ供給する前に予備的に冷却するとガスの音速が低下して所期の亜音速の上限が低下し、またレーザガスの加速中に冷却するとガス流速が低下するためである。
【0170】
図2(a)において、冷却器3はガス供給路構造11及びガス供給手段2と個別に設置しているが、前述したように、場合によっては図1の送通部28の中空流路26にて冷却を行なうことも可能である。更に、ベローズ部25aの放熱フィン29やベローズ部25a自体が冷却器としての機能を有していることは言うまでもない。
【0171】
逆に、レーザガスの予備的な加熱は音速を上昇させるには有効であるが、特に発光部21の加熱(マイクロ波に起因する加熱も含む)は、ガス流速の高速化には寄与するものの、チョーク現象(加熱による見かけ上の断面積の減少)が発生し、設計したガス流量を満たすことが困難となるため、避けたほうがよい。この加熱に起因する問題が顕著である場合には、実質的な断面積比が変化することから、ベローズポンプ25の動作圧力を変更しなければならない。
【0172】
また、発光部21におけるマイクロ波による入射エネルギーが1kW程度と仮定すると、発光部21におけるガス温度の上昇は10℃程度であると見積もれる。その場合には、マイクロ波励起の発熱よりむしろシール部に使用される誘電体の誘電損による発熱等が問題となる可能性がある。しかしながら、誘電体に入射するマイクロ波のパワーを見積もることは困難であり、現状では正確な解析は不可能である。場合によっては、誘電損の問題より熱伝導性や熱応力耐性等を優先する必要性がある。
【0173】
このように、第1の実施形態のエキシマレーザ発振装置によれば、レーザチャンバ1にラバルノズル型のガス供給路構造11を用い、流出入口におけるガス圧力やガス流速を調節することにより、音速に近づくほどに懸念される衝撃波の発生を抑止しつつ、発光部21におけるエキシマレーザガスの流速を所期の亜音速に制御することが可能となる。従って、枯渇しがちなエキシマレーザガスを衝撃波の発生を懸念することなく迅速に補給することができ、長時間の安定な発光を維持するエキシマレーザ発振装置が実現される。
【0174】
また、このような全体的に簡便な構造により、レーザガスへの不純物となる脱ガスを抑制するための表面処理や、F2 ガスの消費を抑制する完全な抑制下で形成されるフッ素不動態処理を全ての面に施すことが可能であり、レーザガスの長寿命化に対しても極めて有効である。
【0175】
ここで、第1の実施形態によるエキシマレーザ発振装置のいくつかの変形例について説明する。なお、第1の実施形態で説明した各部材等については同符号を記して説明を省略する。
【0176】
−変形例1−
この変形例1のエキシマレーザ発振装置は、第1の実施形態のそれとほぼ同様の構成を有するが、ガス供給路構造に相当する部位の形状が異なる点で相違する。図10は、変形例1のエキシマレーザ発振装置のガス供給路構造のみを示す側断面図である。
【0177】
ガス供給路構造群31は、一対のガス供給路構造11が直列に接続されてなるものであり(個々のガス供給路構造11の大きさは第1の実施形態のガス供給路構造11と異なる場合がある。)、前段のガス供給路構造11が超音速加速部31a、後段のガス供給路構造11が超音速減速部31bとされ、中央部位が発光部32となる。このガス供給路構造群31においては、エキシマレーザガスの流出入口におけるガス流速やガス圧力等を調整、例えば図5のPout を図10(a)のPmid に置き換えて、臨界圧力比以上の圧力差をつけることにより、発光部32でガス流速を超音速に制御することができる。
【0178】
ここで、最狭幅の一対の前記所定部位(断面積がそれぞれAacc 及びAdef )において、始動時には、Aacc <Adef を満たす必要があることから、ガス供給路構造群31のガス流動方向を双方向とする場合には必ずAacc 及びAdef を可変としなければならない。そこで、このガス供給路構造11の一対の所定部位におけるレーザガスの通路の高さ(上下幅)を可変とするため、例えば図10(b)に示すような上下幅調整手段33を当該一対の所定部位にそれぞれ設ける。これら上下幅調整手段33は、例えば断面三角形状の一対の部材からなり、支点Pを軸として回動させることにより上下幅を変更させる。
【0179】
このように、変形例1のエキシマレーザ発振装置によれば、レーザチャンバ1に一対のラバルノズル型のガス供給路構造群31を用い、流出入口におけるガス圧力やガス流速を調節することにより、音速を超えると殆どの条件で発生する衝撃波の発生を抑止しつつ、発光部32におけるエキシマレーザガスの流速を所期の超音速に制御することが可能となる。従って、枯渇しがちなエキシマレーザガスを衝撃波の発生を懸念することなく迅速に補給することができ、長時間の安定な発光を維持するエキシマレーザ発振装置が実現される。
【0180】
−変形例2−
この変形例2のエキシマレーザ発振装置は、第1の実施形態のそれとほぼ同様の構成を有するが、ガス供給路構造に相当する部位の形状が異なる点で相違する。図11は、変形例2のエキシマレーザ発振装置のガス供給路構造のみを示す断面図である。
【0181】
変形例2では、ガス供給路構造として従来用いられている同一高さのガス供給路構造41を用いる。そして、ガス供給路構造41のガスの流入口には加熱・冷却手段42が、流出口には加熱・冷却手段43が設けられている。ガス供給路構造41内のガス流による摩擦の発生を無視すると、ガスの流入口を加熱すると共に流出口を冷却することにより、ガス供給路構造41の各部位(流入口、発光部、流出口)における速度、マッハ数、ガス圧力、ガス密度、ガス温度、及び音速との各条件の関係は図12のようになる。
【0182】
この図12においては、第1の実施形態で説明した図6と同様に、Aブロックが流入口における速度(亜音速又は音速)に対する発光部(ここでは、中央部位近傍に存するものとする。)の前記各条件の変化を示し、Bブロックが発光部における速度(亜音速又は音速)に対する流出口の前記各条件の変化を示している。従って、例えば流入口の速度が亜音速であり、加熱・冷却手段42にて加熱した場合、発光部へ向かうにつれてガス流速が増加して発光部で最大速度となる。そして、この最大速度が亜音速であって冷却した場合、流出口へ向かうにつれてガス流速が減少することになる。このようなガス供給路構造41をレーザチャンバ1に用い、各部位における温度や圧力を調節することにより、衝撃波の発生を抑止しつつ、発光部の流速を流入口及び流出口に比して大きな亜音速に制御することが可能となる。
【0183】
しかしながら、変形例2のエキシマレーザ発振装置では、ガス供給路構造41の制御に大量の熱エネルギーが必要であり、例えば変形例1のガス供給路構造群31と組み合わせて用いる方がより現実的である。
【0184】
このように、変形例2のエキシマレーザ発振装置によれば、レーザチャンバ1に同一高さのガス供給路構造41を用い、流出入口におけるガス圧力やガス流速を調節することにより、音速に近づくほどに懸念される衝撃波の発生を抑止しつつ、発光部におけるエキシマレーザガスの流速を所期の亜音速に制御することが可能となる。従って、枯渇しがちなエキシマレーザガスを衝撃波の発生を懸念することなく迅速に補給することができ、長時間の安定な発光を維持するエキシマレーザ発振装置が実現される。
【0185】
−変形例3−
この変形例3のエキシマレーザ発振装置は、第1の実施形態のそれとほぼ同様の構成を有するが、ガス供給手段2に相当する部位の形状が異なる点で相違する。図13は、変形例3のエキシマレーザ発振装置の概略構成を示す側断面図である。
【0186】
変形例3では、第1の実施形態と同様にレーザチャンバ1にラバルノズル型のガス供給路構造11を有しているが、各ガス供給手段51がシロッコファンから構成されている。従って、エキシマレーザガスの流動方向は一方向に規制されるため、必ずしもガス供給路構造11のような左右対称形状とする必要はなく、流出入口におけるガス流速やガス圧力等の制御を考慮して、例えば図14のように、流入口の加速ノズル形状及び流出口の減速ノズル形状の各々に最適化された形状のガス供給路構造52を用いた方がよい。
【0187】
このように、変形例3のエキシマレーザ発振装置によれば、レーザチャンバ1にラバルノズル型のガス供給路構造11を用い、流出入口におけるガス圧力やガス流速を調節することにより、音速に近づくほどに懸念される衝撃波の発生を抑止しつつ、発光部におけるエキシマレーザガスの流速を所期の亜音速に制御することが可能となる。従って、枯渇しがちなエキシマレーザガスを衝撃波の発生を懸念することなく迅速に補給することができ、長時間の安定な発光を維持するエキシマレーザ発振装置が実現される。
【0188】
しかも、ガス供給路構造を必ずしも左右対称形状とする要請がないため、その形状に対する規制が緩和され、様々な条件に応じた形状のガス供給路構造を用いることができる。
【0189】
なお、本実施形態及びその諸変形例では、ガス供給路構造を所期の条件で用いたエキシマレーザ発振装置について例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。当該ガス供給路構造は衝撃波の発生を懸念することなく音速に近い亜音速のガス流を容易且つ安全に形成できるという顕著な効果を奏し、この効果に対する要請が最も強いものの一つとして本例ではエキシマレーザ発振装置を例示したのであって、他の各種装置やシステムに適用可能であることは言うまでもない。例えば、本実施形態で言及したように、ガス供給路構造11を用いれば、流出入口におけるガス温度を常温程度として所定の圧力等の条件に従えば、発光部では急激に低いガス温度を実現することができることを利用して、各種の冷却装置にも適用可能である。
【0190】
また、衝撃波の発生が抑止されるため、特にクリーンルームなど低振動が要求される施設において用いられるあらゆる高速ガス冷却や置換を行なう機器に適用して好適である。
【0191】
(第1の参考例)
次に、第1の参考例について説明する。本参考例では、いわゆるエキシマレーザ光を発するエキシマレーザ発振装置を例示する。
図15は、本参考例のエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【0192】
このエキシマレーザ発振装置は、図15に示すように、エキシマレーザガスの励起による発光を共振させてレーザ光を発するレーザ管3002と、レーザ管3002内のエキシマレーザガスを励起してプラズマ状態とするための導波管3001と、導波管3001を冷却するために、冷却水導入出口3009を有する冷却容器3007とを備えて構成されている。
【0193】
エキシマレーザ光を発生させる際の原料となるエキシマレーザガスは、Kr,Ar,Neから選ばれた1種以上の不活性ガス、又は前記1種以上の不活性ガスとF2 ガスとの混合気体である。これらのうち、使用したい波長により適宜ガス種を選択し組み合わせればよい。例えば、248nmの波長のレーザ光を発生させたい場合には、Kr/Ne/F2 とし、193nmの波長の場合にはAr/Ne/F2 、157nmの波長の場合にはNe/F2 とすればよい。
【0194】
レーザ管3002は、エキシマレーザガスの管内への導入部となるレーザガス導入出口3008と、各端部にそれぞれ反射構造体3005,3006が設けられ、これら反射構造体3005,3006によりプラズマ放電による光の位相が揃えられてレーザ光が発生する。
【0195】
導波管3001は、マイクロ波をガス供給路構造3011内のレーザガスへ供給するための手段であり、図15中上面部に細長い複数のスロット3010が形成されている。導波管3001の上部より数百MHz〜数十GHzの周波数のマイクロ波が導入されると、このマイクロ波が導波管3001内を伝播しながら、スロット3010から導波管3001の外部へ放出される。放出されたマイクロ波は、レーザ管3002に設けられた窓部3015から当該レーザ管302内へ導入される。そして、導入されたマイクロ波によりレーザ管301内のエキシマレーザガスが励起され、共振してエキシマレーザ光が発生することになる。
【0196】
本参考例では、導波管301に、導波管壁とレーザ管壁との間のスロット3010上の領域を除く部位に両者を所定距離離間させる導電体板、ここでは金属壁3012(図16参照)が設けられている。
【0197】
導波管301の具体的な様子を図16及び図17に示す。ここで、図16(a)は導波管1の模式的な斜視図、図16(b)はその平面図であり、図17(a)は図16(b)中の線分II−II’に沿った断面図、図17(b)は図16(b)中の線分I−I’に沿った断面図である。
【0198】
図16(b)に示すように、各スロット3010はその長手方向が導波管301の長手方向と一致するように一列に配されており、これらスロット3010の周囲を囲むように金属壁3012が設けられている。図17(a),(b)に示すように、この金属壁3012により、スロット3010からレーザ管壁の窓部3015までの間にレーザ管302の長手方向に導波管301の全域にわたる空隙が形成され、この空隙がマイクロ波の通路3011となる。
【0199】
なお、本例ではスロット3010を導波管301のいわゆるE面に形成した場合を例示しており、スロット3010をH面に形成する場合には、スロット3010の形成部位に応じた通路が形成されるように金属壁を設ける必要がある。
【0200】
ここで、スロット3010からレーザ管壁の窓部3015までの離間距離は、導波管1から導入されるマイクロ波の管内における半波長の整数倍、即ちマイクロ波の管内波長をλg 、nを整数として、
d=n×λg /2 ・・・(1)
で表される距離dとする。
これにより、通路3011は共振器として機能し、各スロット3010から放出されたマイクロ波はレーザ管301内からの反射波と干渉し弱め合うことがなくなる。
【0201】
なお、整数nの値は任意であるが、あまり大きい値であると、後述するように通路3011をマイクロ波が伝播する際に、当該マイクロ波の金属壁3012への吸収による損失が大きくなるため好ましくない。従って、後述の如く整数nを3程度に規定することが最も好適である。
【0202】
また、通路3011の幅もまた同様な理由から、導波管301から導入されるマイクロ波の管内における半波長の整数倍、即ち、
w=n×λg /2 ・・・(2)
で表される幅wとする。
【0203】
以下、通路3011を備えた導波管1の機能について説明する。
マイクロ波が導波管301内を伝播することにより、導波管壁には電流が流れる。マイクロ波は、導波管301の長手方向距離で規定された伝播空間内で定在波として存在し、この定在波に起因して導波管壁の前記電流も定在波の形態を採る。但し、マイクロ波の定在波の形態は立体的で複雑であり、一般的な分布定数線路の電流の定在波を指標として考察するのが便宜に利する。
【0204】
前記電流の定在波を指標とした一例を図18に示す。このように本例では、スロット3010はその形成部位が前記電流の定在波(即ち、マイクロ波の定在波に相当する。)の腹部位に相当するように配されている。従って、図19に示すように、マイクロ波の波面はスロット3010から放出された直後では、各スロット3010のアレイ形状に起因して各スロット3010に対応した非連続の曲面形状となる。そして、マイクロ波は各スロット3010から金属壁3012に規制された通路3011を伝播することで徐々に平面波に近づき、通路3011を通過して外部(即ち、レーザ管302内)に放出されるときには、その波面は各スロット3010に沿った全体にわたってほぼ平面様形状となる。
【0205】
従って、レーザ管301内のエキシマレーザガスにはほぼ均一の平面波とされたマイクロ波が到達することになり、レーザ管302の長手方向にわたって均一なプラズマ放電が実現され、レーザ発光の均一化に寄与する。
【0206】
ここで、本参考例の変形例について説明する。なお、参考例に対応する構成部材等については同符号を記して説明を省略する。
【0207】
(変形例1)
この変形例1では、図20(a),(b)(各図とも図17と同様の断面図)に示すように、通路3011の先端部位13のみが幅狭となるように金属壁3012を形成する。この場合、通路3011の先端部位3013は、レーザ管301との接触部位(即ち窓部3015)で当該レーザ管301の長手方向にわたるスリット形状とされている。
【0208】
このような形状に通路3011を形成することにより、マイクロ波のレーザ管1内への放出時に意図しないエネルギーの散逸を更に抑止することができる。
【0209】
(変形例2)
この変形例2では、図17(a)、図20(a)の構造に対して、それぞれ図21、図22に示すように、通路3011内を充填するように誘電体3014を設ける。誘電体3014の材料としては石英、フッ化カルシウム、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニアなどが好適である。
【0210】
通路3011内に誘電体3014を充填することにより、プラズマの通路3011内部での生成を防ぐことができる。なお、この際使用する誘電体3014は、より効率よくマイクロ波を伝播させるために誘電率が高く、誘電損が小さい方が望ましい。
【0211】
ここで、同時にプラズマで発生する大量の熱を高速に外部に放出するため、誘電体3014は熱伝導性が高いことが要求される。更には、エキシマレーザのように反応性の高いF2 等が含まれる雰囲気にさらされることを考慮すると、そのような腐食系のガスに対する十分な耐性を持ち合わせていることも重要である。仮にマイクロ波の放出端、即ちプラズマに接している面は、高い温度100〜1000℃(入射エネルギーに依存)に加えプラスマからの数〜数百eV(プラズマポテンシャルに依存)のイオン照射によるスパッタリングなど極めて厳しい環境にある。したがって、場合によっては熱伝導性が高く、比較的F2 耐性が高いAlNやアルミナを誘電体3014の材料として用い、その表面(プラズマとの界面)に、CaF2 ,LiF2 ,MgF2 のようなフッ化物を数μm〜数百μmコーティングすることで、熱伝導の同題と、腐食ガスへの耐性・スパッタリング耐性などを両立できる。
【0212】
通路11内でのエネルギー損失は大きく2つに分かれる。即ち充填された誘電体での誘電損と、描道管壁での損失である。誘電損による減衰常数αは、
α=ωμσ/2β ・・・(3)
で表される(ω:角周波数/μ:透磁率/σ:電気伝導度/β:位相定数)。
また、管壁における損失においては、TE10モードに着目すると、
【0213】
【数5】
Figure 0004295855
【0214】
で与えられる。(ξ:電波インピーダンス/δ:スキンデプス)この両者の内より支配的な損失が、例えばプラズマに供給されるエネルギより小さければよい。すなわち、プラズマでのマイクロ波の吸収率をrとすると、プラズマがカットオフ状態の場合はr≪1であり、
スロット面とプラズマ界面との間を往復(多重反射)することを考慮すると、
exp(−2α・nλg /2)<r ・・・(4)
を満たすnを用いて、均一化線路の最大長を定義することができる。
【0215】
しかしながら、マイクロ波の効率の点では吸収率rに対してより低い損失に設定することが重要でありrに対し、1/10〜1/100程度少なくなるような設計が好ましい(このような設定をすることで、より損失の少ない系を設計できる。)。
【0216】
ここで、誘電体3014を通路3011に充填した場合の具体的な実験例を以下にしめす。
a=42mm,b=21mm、導波管共振器長(長手方向、即ちレーザ発振方向)220.8mmのE面放出アンテナを用い、スロットの前面に金属壁3012を配した2.45GHzのAl合金筐体のマイクロ波照射アンテナを製作した。導波管共振器、即ち通路3011内には、誘電率9.8のアルミナが充填されている。このとき、導波管共振器内の管内波長は、44.2mmである。したがって、スロットピッチも44.2mmに設定してある。
【0217】
スロットから放出されたマイクロ波は通路3011内に放出される。この通路3011は近似的には平行平板型の導波路であり、この近似のもとでは波長は自由空間での波長と等しく(但し、誘電体内部)39.1mmである。実際は、通路3011のレーザ発振方向の長さ235.3mmをaとする方形導波管であるが、このときの管内波長は39.2mmであり、自由空間の波長に比べ3.5×10-3程度しか変わらないため、本構造では自由空間長の波長近似を用いることも可能である。このときの半波長は19.6mmであり、通路3011のスロット3010面から放出面までの距離は、n:1,2,3…に対して19.6mm,39.2mm,58.8mm…で与えられる。
【0218】
ここで、共振器における損失を考慮する。誘電損によるαは、アルミナの抵抗卓が1011Ω・cmのとき、5.22×10-7dB/mであり、管壁吸収による損失は、アルミナの抵抗率を2.65×10-6Ω・cmとして、0.234dB/mである。この場合、支配的な損失は管壁の吸収であるため、これに着目する。19.6mm進行する度に導波管を伝搬するエネルギーに対して0.0053%の損失が発生する。従って、例えば通路3011を1往復する際の損失を投入エネルギーの0.02%程度に押さえるために、nを4(損失:0.21%)より小さく最も均一化の効果が得られる3に設定した。実際は、多重反射が起こるため、このように低い損失レベルに抑え込む必要がある。
【0219】
(変形例3)
この変形例3では、図23(a),図23(b)(図17(a),図17(b)と同様の断面図)に示すように、通路3011の先端部位3013の近傍のみが幅広、具体的には、その半値幅αが、
α=λg /4
又は、
α=λg /2
となる幅広部3016を通路3011が有するように金属壁3012を形成する。
【0220】
この場合、幅広部3016は通路3011に倣ってレーザ管302の長手方向に導波管301の全域にわたるように形成されており、幅広部3016が上記の如き幅に形成されていることから、この幅広部3016でマイクロ波の共振のエネルギーを効率良く集中させることが可能となる。
【0221】
変形例2に挙げた構造を持つ導波路に対し、本構造を付加した導波路を製作した。このとき、αがλg /4及びλg /2に対しそれぞれ19.6mm及び39mmであり、3016の高さを5mmとして設計した。また、通路3011の厚みは4mmとしている。このとき、16に存在するエネルギーは、通路3011及び3016に存在するエネルギーのそれぞれ31.3%/47.7%であり、このことから窓部3015に近い部位(即ち3016)にエネルギーが集中されていることが分かる。この比較では、αがλg /2である場合の方がよりエネルギーが集中しているように思えるが、3016の中心からλg /4の距離内(即ちスロット3010近傍)に存在するマイクロ波のエネルギーに着目すると、通路3011及び3016に存在するエネルギーのそれぞれ31.3%/23.8%であり、αがλg /4である場合の方がよりスロット3010近傍にエネルギーを集中させる効果が高いと言える。
【0222】
更に、変形例3の他の形態を図24に示す。この場合、幅広部3016の幅が、スロット3010から放出されるマイクロ波の強度分布を反映してレーザ管2の長手方向に沿って異なる値とされている。即ちここでは、金属壁3012を設けて通路3011を形成するに加えて、更なるマイクロ波の波面の均一化を図るため、通路3011のマイクロ波放出部位での均一化をより是正するように当該放出部位での不均一性に合わせて、幅広部3016の幅(又は半値幅α)を変化させた構造とする。
【0223】
これにより、レーザ管302内のエキシマレーザガスには更に均一な平面波とされたマイクロ波が到達することになり、レーザ管302の長手方向にわたって均一なプラズマ放電が実現され、レーザ発光の更なる均一化に寄与する。
【0224】
この効果は、空間的な間隙の形状を変化させることにより、伝播路の特性を変化できるというマイクロ波固有の性質によるものである。長さL特性インピーダンスZ0 である終端短絡導波路のインピーダンスZは、
Z=jZ0 tan((2π/λg )L)
となる。これは即ち如何なる値を持つ誘導性奏子(ディスクリートな素子でいうインダクタンス、コイル)及び容量性素子(ディスクリートな素子でいうキャパシタンス、キャパシタ)をLを変化させるだけで形成することができることを示している。スロットライン方向に半値幅αを変化させるということは、電磁波にとってのスロットのインピーダンスを付随的に変化させることになり(等価回路的にみると、スロットに対して連続的にさまざまな値を持つコイルやキャパシタが並列に接続されている)、結果的にスロットから放出される電磁波の分布を制御することができる。
【0225】
(変形例4)
この変形例4では、図25に示すように、通路3011内の各スロット3010の上部に、当該スロット3010に対して対称形状な曲面を有する誘電体レンズ3017が設けられている。この曲面形状としては、スロット3010の形状・サイズ及び放出するマイクロ波に応じて、球面、非球面(楕円状、双曲線状等)、矩形の組み合わせとすればよく、図示の例では球面の場合を示す。この誘電体レンズ3017として適用可能なものとしては、ゾーンニングレンズをはじめマイクロ波に対するレンズ効果を奏する全ての構造を含む。
【0226】
誘電体レンズ3017は、マイクロ波の波面形状の均一化を行なう際に、スロット3010を通過するマイクロ波の行路差による位相ずれを解消するような誘電率及び前記曲面形状をもつものである。通常マイクロ波は誘電体中を伝搬する際にはその速度が真空(又は空気中)に比して遅くなるため、誘電体レンズ3017を上記の如き構成に設計することで、行路差に比例して波面を調整することができ、均一化が可能となる。
【0227】
この場合、生成されるプラズマにおける反射を考慮し、多重反射を見込んで誘電率及び前記曲面形状の最適化を図ることが好適である。または、反射を最小とするために誘電体レンズ3017のレンズ厚をλg /2の整数倍(レンズ前後の誘電体の誘電率が両者共に高い/低いとき)、あるいはλg /4の奇数倍(その他のとき)とすることが望ましい。
【0228】
更に、変形例4の他の形態を図26(図25と同様の平面図)に示す。これは、誘電体レンズ3018を各スロット3010の直上ではなく、通路3011内で所定距離離間させて配し、その曲面形状を非球面とした一例である。
【0229】
なお、図25及び図26において、通路3011内に誘電体が充填された場合には、誘電体レンズ3017,3018を用いる代わりに、誘電体レンズ3017,3018の形状の空隙を通路3011内に誘電体に形成することで、同様の効果を奏することができることは言うまでもない。
【0230】
(変形例5)
この変形例5では、図27(a),図27(b)(図17(a),図17(b)と同様)に示すように、導波管1内に誘電体3019を充填する。ここで、λc を遮断周波数とすると、放出されるマイクロ波の波長λと管内波長λg との関係は、
【0231】
【数6】
Figure 0004295855
【0232】
で表される。即ち、E面放射では、各スロット3010の間隔がλg 又はλg /2であるため、導波管301に高誘電率の誘電体を充填すると、誘電体3019が強磁性体でなければ、誘電率の平方根に逆比例して波長λが小さくなり、管内波長λg のピッチが狭くなり、より均一なマイクロ波の放出が可能となる。
【0233】
使用可能な誘電体としては、例えば、以下の表2に示すものが考えられる。但し、一般に誘電率が高くなると誘電損が大きくなるため、これを考慮して選択する必要がある。
【0234】
【表2】
Figure 0004295855
【0235】
これらの誘電体を導波管301内に充填することで、導波管1内の管内波長は表2の比で記載された波長比で小さくなり、マイクロ波の波面の十分な均一化を図ることが可能となる。
【0236】
(変形例6)
この変形例6では、より高い周波数、例えば2.45GHzの導波管301でのピッチに対して2倍としたい場合には、4.9GHz程度の周波数のマイクロ波を採用する。これにより、当該周波数に反比例して波長λが変化し、スロット3010のピッチを狭めることが可能となる。
【0237】
(変形例7)
この変形例7では、導波管301のH面幅を可能な限り大きくする。励起周波数帯のマイクロ波が遮断されないような範囲で導波管301の遮断周波数λc を大きくするほど、管内波長λg は波長λに近づき、小さくなる。従って、例えば導波管1内をTE10モードのみ伝搬しているような場合、H面幅を可能な限り大きくすることで、スロット3010のピッチを狭めることが可能となる。TE10モードのみ伝搬する条件は、H面幅をaとすると、
a<λ(<2a)
であることから、H面幅aは、
(λ/2<)a<λ
で与えられる。ここで、( )内はTE10モードを通らない、即ち全てのモードのマイクロ波が伝搬し得ない条件を除くための条件である。従って、H面幅aを波長λ程度に設定することで、TE20モードを励起することなく管内波長λg が最小値2/31/2 λ(≒1.15λ)に設定できる。なお、多モード励起を許容すると、管内波長λg は最小値λに漸近するが、その際にはa→∞となるため現実的でない。
【0238】
以上説明したように、本参考例及びその諸変形例のエキシマレーザ発振装置によれば、スロットアレイ構造を採用するも、レーザ管の長手方向にわたり全体的に均一な電磁波の放射を実現し、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光が可能となる。
【0239】
(第2の参考例)
次に、第2の参考例について説明する。本参考例では、いわゆるエキシマレーザ光を発するエキシマレーザ発振装置を例示する。図28は、本参考例のエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【0240】
このエキシマレーザ発振装置は、図28に示すように、エキシマレーザガスの励起による発光を共振させてレーザ光を発するレーザ管402と、レーザ管402内のエキシマレーザガスを励起してプラズマ状態とするための導波管401と、導波管401を冷却するために、冷却水導入出口409を有する冷却容器407とを備えて構成されている。
【0241】
エキシマレーザ光を発生させる際の原料となるエキシマレーザガスは、Kr,Ar,Neから選ばれた1種以上の不活性ガス、又は前記1種以上の不活性ガスとF2 ガスとの混合気体である。これらのうち、使用したい波長により適宜ガス種を選択し組み合わせればよい。例えば、248nmの波長のレーザ光を発生させたい場合には、Kr/Ne/F2 とし、193nmの波長の場合にはAr/Ne/F2 、157nmの波長の場合にはNe/F2 とすればよい。
【0242】
レーザ管402は、エキシマレーザガスの管内への導入部となるレーザガス導入出口408と、各端部にそれぞれ反射構造体405,406が設けられ、これら反射構造体405,406によりプラズマ放電による光の位相が揃えられてレーザ光が発生する。
【0243】
導波管401は、マイクロ波をガス供給路構造4011内のレーザガスへ供給するための手段であり、図28中上面部に細長い複数のスロット4010が形成されている。導波管401の上部より数百MHz〜数十GHzの周波数のマイクロ波が導入されると、このマイクロ波が導波管1内を伝播しながら、スロット4010からレーザ管2内へ導入される。そして、導入されたマイクロ波によりレーザ管402内のエキシマレーザガスが励起され、共振してエキシマレーザ光が発生することになる。
【0244】
本参考例では、導波管401のE面において、各スロット4010がλg(λg:管内波長)のピッチでその長手方向に一列に形成されており、各スロット4010が、当該スロット4010に依存したマイクロ波の放出特性が導波管401内で伝搬されるマイクロ波の強度分布と相反するような部位に形成されている。
【0245】
各スロット4010の具体的な様子を図29に示す。
図29に示すように、比較例(a)では、スロット4010の中央部位にマイクロ波の強度分布(図示の例では、導波管1の壁面を流れる電流の密度分布をマイクロ波の強度分布の指標として示す。)の最大値が一致するように対応させた位置に各スロット4010が形成されており、この場合には上述したように、スロット4010に依存したマイクロ波の放出特性による強度分布と導波管401内で伝搬されるマイクロ波の強度分布とがほぼ一致するため、マイクロ波の強度分布は図32(a)のようになる。
【0246】
それに対して、図29の参考例(b)では、比較例(a)のスロット4010の中央部位にマイクロ波の強度分布の最大値が一致するように対応させた位置から、各スロット4010を一律にλg/4だけずらした部位に、当該スロット4010を形成する。
【0247】
これにより、導波管401内で伝搬されるマイクロ波の強度分布の最小値が当該スロット4010のほぼ中央部位に位置するように、各スロット4010が存することになり、導波管401内で伝搬されるマイクロ波の強度分布がスロット4010に依存したマイクロ波の放出特性による強度分布の影響を受け、図30に示すように、実際に各スロット4010から放出されるマイクロ波の強度分布の均一性が高まることになる。
【0248】
なお、本例ではスロット4010を導波管401のいわゆるE面に形成した場合を例示しており、スロット4010をH面に形成したいわゆるH面アンテナを用いた場合でも同様の議論が成り立つことは言うまでもない。
【0249】
また、図31に示すように、各スロット4010をλg/2のピッチでその長手方向に一列に形成した場合にも適用可能である。ここでも図29と同様に、比較例(a)に対する参考例(b)を示す。この場合も同様に、図30に示すように、実際に各スロット10から放出されるマイクロ波の強度分布の均一性が高まる。
【0250】
具体的に、a=42mm、b=21mmのサイズで、導波管共振器長220.8mm(レーザ発振方向長)のE面放出アンテナを用い、2.45GHzのアルミニウム合金筐体のマイクロ波照射アンテナを製作した。導波管共振器長は、誘電率9.8のアルミナを充填してある。このとき、導波管共振器内の管内波長は44.2mmである。従って、スロットピッチは、λg ピッチ及びλg /2ピッチの場合、それぞれ44.2mm及び22.1mmに設定してある。
【0251】
電流密度の腹(最も強度が強い部位)に対応させた位置にスロットを形成した場合、図32(a)に示すようなsin状の照射が得られる。
【0252】
これに対して、λg /4シフトさせてスロットを形成した場合、図32(b)に示すような定在波強度分布となる。
【0253】
従って、この励起によりスロットから放出されるマイクロ波の強度分布は、図32(c)に示すようになり、図32(a)の場合に比してより均一性の高い照射が実現することがわかる。
【0254】
なお、この放射特性は、プラズマがない状況でのスロット単独の特性を見たものであり、実際にはプラズマが存在することから、シース部などにおける伝播を考慮すれば、より均一な励起が起こることが期待できる。
【0255】
以上説明したように、本参考例のエキシマレーザ発振装置によれば、スロットアレイ構造を採用するも、個々のスロットの長手方向にわたり全体的に均一なプラズマの励起を実現し、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光が可能となる。
【0256】
(第3の参考例)
次に、第3の参考例について説明する。本参考例では、いわゆるエキシマレーザ光を発するエキシマレーザ発振装置を例示する。
図33は、本参考例のエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【0257】
このエキシマレーザ発振装置は、図33に示すように、エキシマレーザガスの励起による発光を共振させてレーザ光を発するレーザ管402と、レーザ管502を図中上下方向から狭持するように設けられ、レーザ管502内のエキシマレーザガスを励起してプラズマ状態とするための一対の導波管501a,501bと、各導波管501a,501bを冷却するために、冷却水導入出口509を有する冷却容器507とを備えて構成されている。
【0258】
エキシマレーザ光を発生させる際の原料となるエキシマレーザガスは、Kr,Ar,Neから選ばれた1種以上の不活性ガス、又は前記1種以上の不活性ガスとF2 ガスとの混合気体である。これらのうち、使用したい波長により適宜ガス種を選択し組み合わせればよい。例えば、248nmの波長のレーザ光を発生させたい場合には、Kr/Ne/F2 とし、193nmの波長の場合にはAr/Ne/F2 、157nmの波長の場合にはNe/F2 とすればよい。
【0259】
レーザ管502は、エキシマレーザガスの管内への導入部となるレーザガス導入出口508と、各端部にそれぞれ反射構造体505,506が設けられ、これら反射構造体505,506によりプラズマ放電による光の位相が揃えられてレーザ光が発生する。
【0260】
各導波管501a,501bは、マイクロ波をガス供給路構造5011内のレーザガスへ供給するための手段であり、細長い複数の微小間隙(スロット)5010が形成されている。導波管501の上部より数百MHz〜数十GHzの周波数のマイクロ波が導入されると、このマイクロ波が導波管501a,501b内を伝播しながら、スロット5010から導波管501a,501bの外部へ放出される。放出されたマイクロ波は、レーザ管2に設けられた窓部5015から当該レーザ管502内へ導入される。そして、導入されたマイクロ波によりレーザ管2内のエキシマレーザガスが励起され、共振してエキシマレーザ光が発生することになる。
【0261】
本参考例においては、図34に示すように、スロット5010の形成面が各導波管501の短端面、即ちE面であり、各スロット5010が長手方向に等間隔で一列に形成されている場合について例示する。
【0262】
本参考例では、上記の如き一対の導波管501a,501bをレーザ管502を上下方向から狭持するように設け、対向する前記各形成面間で各々対応するスロット5010が相対的に所定距離だけシフト(空間シフト;以下の表中等ではシフト)するように各導波管501a,501bを配する。更には、各導波管501a,501b内に供給されるマイクロ波の位相を両者間で相対的にシフト(位相シフト;以下の表中等ではシフタ)させる位相調節シフタを設ける。
【0263】
図35は、通常の対向配置(空間シフト、位相シフト共になし)の場合、λg /4(λg :管内波長)の距離シフトさせた場合、λg /4の距離シフトさせ且つλg /4の位相シフトさせた場合、λg /2の距離シフトさせた場合、λg /2の距離シフトさせ且つλg /2の位相シフトさせた場合の各々について、各導波管501a,501b内のマイクロ波の定在波を示す特性図である。
【0264】
前記各場合の定在波の位相関係を導出するための計算式を以下の式に示す。
この場合、位相調節シフタを通過してθだけ位相調節された入射波を、
exp(i(ωt−βz+θ−π/2))
と仮定すると、導波管端が距離dだけ移動したことによる行路差2dと導波管端での反射による位相反転を考慮して反射波は、
exp(i(ωt+βz+θ+π/2−2βd))
となる。従って、減衰のない場合を仮定すると、生成される定在波は、
2exp(i(ωt+θ−βd))sin(βz−βd)
となる。但し、ω=2π/T,β=2π/λg である。
【0265】
【数7】
Figure 0004295855
【0266】
これらの関係により、定在波の強度・位相関係を得る。
【0267】
ここで、λg /2ピッチでスロット5010がE面に形成された導波管を用いた場合、隣接するスロットから放出されるマイクロ波は互いに逆位相となり、当該スロット間にマイクロ波が全く振動しない空間ができる。また、λg ピッチでスロット5010がE面に形成された導波管を用いた場合、隣接するスロットから放出されるマイクロ波は同位相であり、互いに打ち消し合うことはないが、スロット間隔がλg /2ピッチの場合に比して2倍となるため、スロット長手方向の均一性に劣る。
【0268】
本参考例では、特にλgピッチの一対の導波管を用いて、所定の空間シフト・位相シフトを行い、上記した各導波管501a,501bのマイクロ波放出の特性を相補うように、レーザ発振装置を構成する。
【0269】
以下、各導波管501a,501bを空間シフト、位相シフトなしで通常の対向配置した場合、各導波管501a,501bを相対的に空間シフトさせた場合、及び空間シフトと共に位相シフトを行なった場合において、各導波管501a,501bのスロット5010のピッチをλg /2,λg とした各々について説明する。
【0270】
先ず、通常の対向配置の例を表3(λg /2ピッチ)及び表4(λg ピッチ)に示す。表3,4において、各時間毎に上下にそれぞれ上部の導波管501a内のマイクロ波のレーザ共振方向の分布と下部の導波管501b内のマイクロ波の分布が示されている。+,−は、マイクロ波の定在波の腹の部分での極性を示している。各表中で斜線が付されている部位は、上下導波管501a,501bに実際に形成されているスロット10を示し、この部位からマイクロ波が導波管外に放出される。なお、後述する表5〜表12についても斜線部分について表3,4と同様である。
【0271】
【表3】
Figure 0004295855
【0272】
【表4】
Figure 0004295855
【0273】
ここで、各導波管501a,501bの各々が上記した性質を有し、しかも上下で同一の定在波となるため、マイクロ波の強度は増加するものの、表3において、z方向ではλg /2毎に極性が反転し、スロット間の中央部で必ず打ち消し合いが起こり、波面全体としての均一性はさほど良いとは言えない。
【0274】
また、表4においては、z方向にも全て同位相となるが、ピッチ間隔がλg /2であるため、打ち消し合いは起こらないものの、均一性に問題がある。
【0275】
次に、空間シフト、位相シフトを行なう場合について説明する。図36は、これらシフトを行なう際の導波管501a,501bの近傍を示す模式図である。
図36において、5012は導波管501a,501bの双方に共通に接続されたマイクロ波源、5013は導波管501a,501bの各々に接続されたチューナである。チューナ5013は、例えば3スタブチューナやE−Hチューナ等のものであり、導波管501a,501bからのマイクロ波源5012に対する反射を極小とする機能をもつ。また、5014は各導波管501a又は501b内に供給されるマイクロ波の位相を両者間で相対的にシフトさせる位相調節シフタであり、導波管501a,501bの一方、ここでは導波管501aに接続されている。
【0276】
λg /2ピッチにおいて、λg /4の空間シフトを行なった場合を表5に、λg /4の空間シフト及びλg /4の位相シフトを行なった場合を表6に、更にこれらの様子を図37(a)(図36における導波管1a,1b部分の拡大図)に示す。また、λg /2の空間シフトを行なった場合を表7に、λg /2の空間シフト及びλg /2の位相シフトを行なった場合を表8にそれぞれ示す。
【0277】
【表5】
Figure 0004295855
【0278】
【表6】
Figure 0004295855
【0279】
【表7】
Figure 0004295855
【0280】
【表8】
Figure 0004295855
【0281】
ここで、λg /4の空間シフトを行なった場合、上下のスリット10の位相関係がπ/2だけシフトするため、発光が2重周期となる。また、λg /2の空間シフトを行なった場合、発光は1周期のみとなり2重周期の問題は回避される。しかしながら、λg /2ピッチの上記した性質、即ち各導波管501a,501bにおける隣接するスロット5010で逆位相となるため、通常十分な強度を得ることは困難である。
【0282】
次に、λg ピッチにおいて、λg /4の空間シフトを行なった場合を表9に、λg /4の空間シフト及びλg /4の位相シフトを行なった場合を表10にそれぞれ示す。また、λg /2の空間シフトを行なった場合を表11に、λg /2の空間シフト及びλg /2の位相シフトを行なった場合を表12に示し、これらの様子を図37(b)(図36における導波管501a,501b部分の拡大図)に示す。
【0283】
【表9】
Figure 0004295855
【0284】
【表10】
Figure 0004295855
【0285】
【表11】
Figure 0004295855
【0286】
【表12】
Figure 0004295855
【0287】
ここで、λg /4の空間シフトを行なった場合、上記のごとく発光が2重周期となるものの、上下の対応するスロット5010の一方が+又は−極性となるとき(発光するとき)には他方の極性が0(発光しない)であり、しかも各導波管501a,501bにおける隣接するスロット5010で同位相となる。従って、各導波管501a,501bの長手方向にわたって発光の均一性に若干問題があることを勘案しても、相応の発光均一性が期待できる。
【0288】
また、λg /4の空間シフト及びλg /4の位相シフトを行なった場合、上記のごとく発光の2重周期の問題は回避され、しかも各導波管501a,501bにおける隣接するスロット5010で同位相となる。従って、各導波管501a,501bの長手方向にわたって発光の均一性に若干問題があることを勘案しても、相応の発光均一性が期待できる。
【0289】
また、λg /2の空間シフトを行なった場合、各導波管501a,501bにおける隣接するスロット5010で同位相となる。しかし、上下のスロット5010が各導波管501a,501bの長手方向にわたって交互の極性を持つため、上下のスロット5010間で打ち消し合いが起こる可能性がある。
【0290】
そして、λg /2の空間シフト及びλg /2の位相シフトを行なった場合、上記のごとく発光の2重周期の問題は回避され、しかも各導波管501a,501bにおける隣接するスロット5010で同位相となるのみならず、上下のスロット5010が各導波管501a,501bの長手方向にわたって同位相になっている。従って、上下のスロット5010から全て同位相で均一にマイクロ波が放射されることになり、レーザ管502の長手方向にわたって均一なプラズマ放電が実現される。
【0291】
このように、λg ピッチでλg /2の空間シフト及びλg /2の位相シフトを行なった場合が最も好適にプラズマ放電の均一化に寄与することがわかる。なお、上述したように、その他の場合でも、例えば導波管の形状やマイクロ波の性質等により、好適にプラズマ放電の均一化を実現することができる。
【0292】
(変形例)
ここで、本参考例の変形例について説明する。なお、参考例に対応する構成部材等については同符号を記して説明を省略する。
【0293】
この変形例では、図38に示すように、スロット5010の形成面が各導波管501a,501bの長端面、即ちH面であり、各スロット5010がH面の長手方向の中心線に沿って所定間隔(ここではλg /2ピッチ)をおいて左右に等間隔dで配置形成されている場合について例示する。
【0294】
本例では、図39に示すように、一対の導波管501a,501bを、対向する前記各形成面間で各々対応するスロット5010が左右に位置するように、レーザ管502を上下方向から狭持するように設ける。この場合、基本的には、上記の参考例のように空間シフトや位相シフトは不要である。
【0295】
なお、図39中の矢印は導波管壁に流れる電流を示す。マイクロ波は、導波管1の長手方向距離で規定された伝播空間内で定在波として存在し、この定在波に起因して導波管壁の前記電流も定在波の形態を採る。但し、マイクロ波の定在波の形態は立体的で複雑であり、過渡的な進行波(若しくは反射波)の電場のみに着目して考察するのが便宜に利する。
【0296】
即ち、上下で対応する各スロット5010に着目すると、図38中矢印で示す導波管を流れる電流の向きは、対応するスロット5010で同一方向(図中、矢印100方向)となる。また、各導波管501a,501bで隣接する上下、左右のスロット5010間で電流方向は同一であり、スロット5010から放出されるマイクロ波の位相が同位相となり、マイクロ波の定在波が打ち消し合うこともない。
【0297】
従って、本例では、上記の参考例に比して簡易な構成で、上下のスロット5010から全て同位相で均一にマイクロ波が放射されることになり、レーザ管502の長手方向にわたって均一なプラズマ放電が実現される。
【0298】
以上説明したように、本参考例及びその変形例のエキシマレーザ発振装置によれば、スロットアレイ構造を採用するも、レーザ管の長手方向にわたり全体的に均一な電磁波の放射を実現し、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光が可能となる。
【0299】
なお、第3の参考例全般に、導波管共振器端からマイクロ波電源までの立体回路がマイクロ波的に対称であることを前提としており、仮に前記立体回路が非対称である場合は、その非対称性を是正するための位相シフト等が更に必要であることは言うまでもない。
【0300】
(第4の参考例)
次に、第4の参考例について説明する。本参考例では、いわゆるエキシマレーザ光を発するエキシマレーザ発振装置を例示する。図40は、本参考例のエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。便宜上、スロット6010は平面上に描かれているが、実際には紙面垂直方向に交互に位置している。
【0301】
このエキシマレーザ発振装置は、図40に示すように、エキシマレーザガスの励起による発光を共振させてレーザ光を発するレーザ管602と、レーザ管602内のエキシマレーザガスを励起してプラズマ状態とするための導波管601と、導波管601を冷却するために、冷却水導入出口609を有する冷却容器607とを備えて構成されている。
【0302】
エキシマレーザ光を発生させる際の原料となるエキシマレーザガスは、Kr,Ar,Neから選ばれた1種以上の不活性ガス、又は前記1種以上の不活性ガスとF2 ガスとの混合気体である。これらのうち、使用したい波長により適宜ガス種を選択し組み合わせればよい。例えば、248nmの波長のレーザ光を発生させたい場合には、Kr/Ne/F2 とし、193nmの波長の場合にはAr/Ne/F2 、157nmの波長の場合にはNe/F2 とすればよい。
【0303】
レーザ管602は、エキシマレーザガスの管内への導入部となるレーザガス導入出口608と、各端部にそれぞれ反射構造体605,606が設けられ、これら反射構造体605,606によりプラズマ放電による光の位相が揃えられてレーザ光が発生する。
【0304】
導波管601は、マイクロ波をガス供給路構造6011内のレーザガスへ供給するための手段であり、細長い複数の微小間隙(スロット)6010が形成されている。導波管601の上部より数百MHz〜数十GHzの周波数のマイクロ波が導入されると、このマイクロ波が導波管601内を伝播しながら、スロット6010から導波管601の外部へ放出される。放出されたマイクロ波は、レーザ管602に設けられた窓部6015から当該レーザ管2内へ導入される。そして、導入されたマイクロ波によりレーザ管602内のエキシマレーザガスが励起され、共振してエキシマレーザ光が発生することになる。
【0305】
本参考例においては、図41(a),(b)に示すように、スロット6010の形成面が各導波管601の長端面、即ちH面であり、各スロット6010がH面の長手方向の中心線mに沿って所定間隔をおいて左右に等間隔(中心線mからの距離)dで配置された場合について例示する。
【0306】
本参考例では、レーザ光の発光間隔を狭めるため、前記所定間隔をλg/2(λg:導波管内におけるマイクロ波の管内波長)とする。このように、前記所定間隔を狭めても、全てのスロット6010から放出される電磁波の位相が揃うことになる。
【0307】
この点、スロット10を導波管601の短端面(E面)に長手方向に一列に形成した場合では、全てのスロット6010から放出される電磁波の位相を揃えるには前記所定間隔をλgとする必要があり、レーザ光の発光間隔を狭めることは困難である。それに対して、本参考例では、マイクロの位相の均一を保ちつつも所定間隔をλg/2に狭めるとすることができる。従って、全てのスロット6010から放出されるマイクロ波の位相を揃えてレーザ管2の長手方向にわたり全体的に均一なマイクロ波の放射を実現し、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光が可能となる。
【0308】
この場合、対応する左右のスロット6010の間隔を比較的小さくとると、放出されるマイクロ波の強度は増加するものの、各スロット6010に着目すればマイクロ波の強度が中央部位に集中するきらいがある。他方、前記スロット間隔を比較的大きくとると、全体として均一なマイクロ波放出が得られる。従って、満足な強度と均一性という2つの要請を考慮して、前記スロット間隔及び形状の最適値を決定すればよい。
【0309】
なお、導波管601内に誘電体6019を充填しても好適である。これにより、管内波長λg のピッチが狭くなり、より均一なマイクロ波の放出が可能となる。
【0310】
使用可能な誘電体としては、例えば、以下の表13に示すものが考えられる。但し、一般に誘電率が高くなると誘電損が大きくなるため、これを考慮して選択する必要がある。
【0311】
【表13】
Figure 0004295855
【0312】
これらの誘電体を導波管601内に充填することで、導波管601内の管内波長は表1の比で記載された波長比で小さくなり、マイクロ波の波面の十分な均一化を図ることが可能となる。
【0313】
具体的に、a(長辺)=42mm、b(短辺)=21mm、共振器長(レーザ発振方向長)220.8mmのサイズに導波管601を製作し、導波管1内に誘電率9.8のアルミナを充填した。このとき、導波管601内のマイクロ波の管内波長は44.2mmであり、従ってスロット6010のピッチ(前記所定距離)を22.1mmに設定した。そして、レーザ発光を試みたところ、十分に均一な発光が得られた。この導波管601は、プリズムを備えた反射系を用いるレーザ発振装置に適用して好適である。
【0314】
以下、本参考例の諸変形例について説明する。なお、参考例に示した構成部材等については同一符号を記して説明を省略する。
【0315】
(変形例1)
変形例1では、導波管601に、導波管壁とレーザ管壁との間のスロット6010上の領域を除く部位に両者を所定距離離間させる導電体板、ここでは金属壁6012が設けられている。
【0316】
導波管601の近傍の具体的な様子を図42に示す。この図42は、スロット10の短手方向に沿った断面を示す。
【0317】
H面において、各スロット6010がH面の長手方向の中心線mに沿ってλg /2ピッチで左右に等間隔dで配置されており、従って中心線mを挟んで各スロット6010がλg ピッチで互いにλg /2だけシフトした2列のスロット群が形成されており、図42に示すように、これらスロット群をスロット6010とほぼ同幅でスリット状に開放する金属壁12が設けられている。従って、この金属壁6012により、スロット6010からレーザ管壁の窓部15までの間にレーザ管2の長手方向に導波管1の全域にわたる2列の空隙が形成され、これら空隙がマイクロ波の通路6011となる。なお、図42では、便宜上左右のスロット6010が同一平面内に描かれている。
【0318】
この場合、通路6011内を充填するように誘電体を設けてもよい。誘電体としては石英、フッ化カルシウム、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニアなどが好適である。
【0319】
通路6011内に誘電体を充填することにより、プラズマの通路6011内部での生成を防ぐことができる。なお、この際使用する誘電体は、より効率よくマイクロ波を伝播させるために誘電率が高く、誘電損が小さい方が望ましい。
【0320】
ここで、スロット6010からレーザ管壁の窓部6015までの離間距離は、導波管601から導入されるマイクロ波の管内における半波長の整数倍、即ちマイクロ波の管内波長をλg 、nを整数として、
D=n×λg /2 ・・・(1)
で表される距離Dとする。
これにより、通路6011は共振器として機能し、各スロット6010から放出されたマイクロ波はレーザ管602内からの反射波と干渉し弱め合うことがなくなる。
【0321】
なお、整数nの値は任意であるが、あまり大きい値であると、後述するように通路6011をマイクロ波が伝播する際に、当該マイクロ波の金属壁6012への吸収による損失が大きくなるため好ましくない。従って、後述の如く整数nを3程度に規定することが最も好適である。
【0322】
また、通路6011の幅はスロット6010の短軸方向幅以上とする。その際の通路6011の幅wは、導波管601から導入されるマイクロ波の管内における半波長の整数倍、即ち、
w=n×λg /2 ・・・(2)
で表される幅wとする。但し、n<0のときは、通路6011の幅をスロット6010の短軸方向の幅と同程度にとる。
【0323】
マイクロ波の波面はスロット6010から放出された直後であっても、2列のスロット群が実質的に緻密なλg /2ピッチに形成されているため、ほぼ満足な均一化が得られる。そして、スロット6010とレーザ管602との間に金属壁6012を備えた通路6011を設けることで、マイクロ波は各スロット6010から金属壁6012に規制された通路6011を伝播するするにつれて更に平面波に近づき、通路6011を通過して外部(即ち、レーザ管602内)に放出されるときには、その波面は各スロット6010に沿った全体にわたってほぼ完全な平面様形状となる。
【0324】
従って、レーザ管2内のエキシマレーザガスには更なる均一の平面波とされたマイクロ波が到達することになり、レーザ管602の長手方向にわたって均一なプラズマ放電が実現され、レーザ発光の均一化に寄与する。
【0325】
具体的に、a(長辺)=42mm、b(短辺)=21mm、共振器長(レーザ発振方向長)220.8mmのサイズに導波管601を製作し、導波管601内に誘電率9.8のアルミナを充填し、通路6011の長手方向(レーザ発振方向)の幅を共振器長と同じ220.8mmとした。このとき、導波管601内のマイクロ波の管内波長は39.2mmであり、通路長(スロット10から発光部までの距離)を1.5管内波長である58.9mmとした。そして、レーザ発光を試みたところ、十分に均一な発光が得られた。
【0326】
(変形例2)
変形例2では、変形例1と同様に導波管601に金属壁6012を設けるが、図43に示すように、通路6011が、相対応する左右のスロット6010を含む幅広に形成されており、その先端部位6011aのみが幅狭でレーザ管602の長手方向にわたる1本のスリット形状とされている。この場合も、通路6011の厚みを管内波長の半波長の整数倍、ここでは先端部位6011aの近傍のエネルギー密度が最も高くなるλg /2とすることが望ましい。
【0327】
この変形例2のレーザ発振装置によれば、レーザ管602内のエキシマレーザガスには更なる均一の平面波とされたマイクロ波が到達することになり、レーザ管602の長手方向にわたって均一なプラズマ放電が実現され、レーザ発光の均一化に寄与する。
【0328】
(変形例3)
変形例3では、変形例2と同様に通路6011が、相対応する左右のスロット6010を含む幅広に形成されているが、図44に示すように、その先端部位6011aのみがスロット6010に対応した幅狭で前記レーザ管602の長手方向にわたる偶数本(ここでは2本)のスリット形状とされている。
【0329】
この場合、プリズム反射系レーザ発振器に適した複スリット状発光が実現できる。この場合、短スリット構造のように厳密に通路6011の放射源(スロット)間隔がλg/2にはならないが、逆サイドのスロット6010からの放射も関与するため(例えば、右側のスリットに着目すると、主な放出源は右側のスロットアレイであるが、左側のスロット6010からの放射も右側スロット6010に到達し、励起に寄与する)、参考例2に比べてより均一な放射が可能となる。左右のスリット群からの放射が均一であるには、スロット6010(但し、H面アンテナの同位相放射を基本的に用いていることから、レーザ発振方向にλg/2ずつずれた位置に配置されている。)及びスリットの位置が、軸対称であることは言うまでもない。
【0330】
なお、左右のスロット群の間隔と左右のスリット間隔は同じである必要は無く、特に左右のスリットの間隔は狭ければ狭いほど放射源ピッチがλg/2に近くなり、均一化の効果が向上する。通路6011の厚み(レーザ発振方向および軸に対して垂直な方向の長さ)は、λg/2の整数倍がよい。スリットから放射されるマイクロ波のエネルギーを向上するためには、通路6011内のエネルギー密度が最も高くなるλg/2が望ましい。比較例2と同様の導波管601及び通路幅・通路長を採用した場合、当該厚みは、19.6mmとなる。
【0331】
この変形例3のレーザ発振装置によれば、レーザ管602内のエキシマレーザガスには更なる均一の平面波とされたマイクロ波が到達することになり、レーザ管602の長手方向にわたって均一なプラズマ放電が実現され、レーザ発光の均一化に寄与する。
【0332】
(変形例4)
変形例4では、図45に示すように、レーザ管602(便宜上、図示を省略する。)を図中上下方向からH面で狭持するように一対の導波管601a,601bが設けられている。各導波管601a,601bは、本参考例の導波管601と同様に構成されている。
【0333】
本例では、一対の導波管601a,601bを、対向する前記各形成面間で各々対応するスロット6010が左右に位置するように、レーザ管602を上下方向から狭持するように設ける。この場合、上記の参考例のように空間シフトや位相シフトは不要である。
【0334】
なお、図45(図41(b)でも同じ。)中の矢印は例えば進行波のみに着目した場合の導波管壁に流れる電流を示す。マイクロ波は、導波管601の長手方向距離で規定された伝播空間内で定在波として存在し、この定在波に起因して導波管壁の前記電流も定在波の形態を採る。但し、マイクロ波の定在波の形態は立体的で複雑であり、一方向に伝搬する際の電流分布を指標として考察するのが便宜に利する。
【0335】
H面アンテナの特徴の1つとして、導波管601a,601bの上面と下面で形成される電流の分布が逆向きであることが挙げられる。H面を対向させて共鳴導波管を構成すると、レーザ光を励起する空間の上面と下面は、それぞれ上部に位置する導波管601aの下面と下部に位置する導波管601bの上面である。従って、上部及び下部の導波管601a,601bにおけるスロット6010の位置を相反して(例えば上部の導波管1aが右側にスロット6010を切るとき、下部の導波管601bは左にスロット6010を切る。)設けることにより、上下導波管601a,601bの位置関係を変更することなく、λg/2ピッチで交互に位置する上下のスロット6010からマイクロ波が同位相で放射される。
【0336】
この技術は、変形例1〜3までの全ての事例で適応でき、それぞれの事例でより均一性の高い励起が実現される。
変形例4を変形例2に応用し、当該変形例2の導波管601をレーザ管602の上下に配した例を図46に、変形例3に応用した例を図47にそれぞれ示す。
【0337】
従って、変形例4によれば、上下のスロット6010から全て同位相で均一にマイクロ波が放射されることになり、レーザ管602の長手方向にわたって均一なプラズマ放電が実現される。この技術に加え、図46,47のように金属壁6012により通路6011を形成すれば、更に均一なプラズマ放電が実現されることになる。
【0338】
(変形例5)
変形例5では、図48に示すように、導波管601の短端面(E面)に、スロット6010のインピーダンスを調整するための微小金属体、ここでは金属ネジ6013が埋め込まれている。
【0339】
この金属ネジ6013を配置することにより、導波管601の壁面を流れる電流(図中、矢印で示す。)の対称性が崩れ、結果的にスロット6010のインピーダンスを微調整することができる。また、複数のスリットの加工の際に生じる機械的な寸法誤差を補償することも可能である。
【0340】
また、金属ネジ6013を配置することにより、当該金属ネジ6013の近傍で電流の集中が生じる。従って、スロット6010の長手方向に複数本の金属ネジ6013を配すれば、結果的にスロット6010の長手方向のインピーダンスを微調整することができる。
【0341】
(変形例6)
変形例6では、図49に示すように、スロット6010内に誘電体6014を充填する。この場合、図49(b)のように、スロット6010の先端面が平坦化されるように誘電体6014を充填するのが最も好適である。
【0342】
具体的に、誘電体6014を突き出るように形成した場合(図49(a))と、引っ込むように形成した場合(図49(c))との比較として、スロット板の鋭角部位の電界強度/中央部位の電界強度の比を求めた例を図50に示す。このように、平坦の場合が鋭角部位の電界強度比が最小となることがわかる。従って、スロット6010の先端面を平坦とすることにより、鋭角部位の電界を最も緩和して効率のよいレーザ発光が実現する。更に、高速ガス循環の際にも平坦の場合が最もデッドスペースが少なく、乱流も起こり難い。これは、先端部位6011a等にも適用可能である。
【0343】
誘電体6014の誘電率εが高いとその中を伝播するマイクロ波の電界EのエネルギーεE2 /2はεに比例して増加する。従って、誘電率εが高いほど、スロット6010を通過するマイクロ波のエネルギーは増加する。
【0344】
以上説明したように、本参考例及びその諸変形例のエキシマレーザ発振装置によれば、スロットアレイ構造を採用するも、レーザ管の長手方向にわたり全体的に均一な電磁波の放射を実現し、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光が可能となる。
【0345】
(第5の参考例)
次に、第5の参考例について説明する。本参考例では、いわゆるエキシマレーザ光を発するエキシマレーザ発振装置を例示する。図51は、本参考例のエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【0346】
このエキシマレーザ発振装置は、図51に示すように、エキシマレーザガスの励起による発光を共振させてレーザ光を発するレーザ管702と、レーザ管2内のエキシマレーザガスを励起してプラズマ状態とするための導波管701と、導波管701を冷却するために、冷却水導入出口709を有する冷却容器707とを備えて構成されている。
【0347】
エキシマレーザ光を発生させる際の原料となるエキシマレーザガスは、Kr,Ar,Neから選ばれた1種以上の不活性ガス、又は前記1種以上の不活性ガスとF2 ガスとの混合気体である。これらのうち、使用したい波長により適宜ガス種を選択し組み合わせればよい。例えば、248nmの波長のレーザ光を発生させたい場合には、Kr/Ne/F2 とし、193nmの波長の場合にはAr/Ne/F2 、157nmの波長の場合にはNe/F2 とすればよい。
【0348】
レーザ管702は、エキシマレーザガスの管内への導入部となるレーザガス導入出口708と、各端部にそれぞれ反射構造体705,706が設けられ、これら反射構造体705,706によりプラズマ放電による光の位相が揃えられてレーザ光が発生する。
【0349】
導波管701は、マイクロ波をガス供給路構造7011内のレーザガスへ供給するための手段であり、図51中上面部に細長い複数のスロット7010が形成されている。導波管701の上部より数百MHz〜数十GHzの周波数のマイクロ波が導入されると、このマイクロ波が導波管1内を伝播しながら、スロット7010から導波管701の外部へ放出される。放出されたマイクロ波は、レーザ管702内へ導入される。そして、導入されたマイクロ波によりレーザ管701内のエキシマレーザガスが励起され、共振してエキシマレーザ光が発生することになる。
【0350】
導波管1の具体的な様子を図52に示す。ここで、図52(a)は導波管701の模式的な斜視図、図52(b)はその平面図である。
【0351】
図52(b)に示すように、各スロット7010はその長手方向が導波管1の長手方向と一致するように一列に配置されている。スロット7010は、導波管7012の長手方向に沿って配置されており、各々が導波管7012の長手方向に延在する形状とされている。
【0352】
図53(a)は、第5の参考例における導波管701のレーザ管702近傍の断面を示している。ここで、図53(a)は、スロット7010の長手方向に対して垂直となる方向に沿った断面を示している。
【0353】
前述したように、スロット7010から放射されるマイクロ波によってレーザ管702内のレーザガスが励起されてプラズマ7011が発光する。
【0354】
そして、第5の参考例においては、スロット7010上の所定領域を囲むようにメッシュシールド7013が設けられている。メッシュシールド7013は、金属製のメッシュから成るシールドであって、スロット7010から放出されたマイクロ波の拡散を抑止する役割を果たす。
【0355】
スロット7010上にはレーザガスの流路とされているが、メッシュから成るシールドを採用することによって、レーザ管702内を流れるレーザガスはメッシュシールド7013を通過してスロット7010上に到達することが可能である。
【0356】
図53(b)は、図53(a)に示すメッシュシールド7013上に、更に金属壁7015を設けた例を示している。スロット7010に対して上方向にはレーザガスが流れないため、金属壁7015を設けることによって、より確実にマイクロ波を閉じ込めることが可能である。
【0357】
マイクロ波はカットオフモードのプラズマ中をスキンデプスδ進行する間にエネルギが1/e2 (≒0.135)倍に減少する。従って、プラズマがマイクロ波を遮断している場合、有効なプラズマの励起を行える領域は、シース領域での伝播を無視できる場合、放出端の3δ程度の空間であり、その他の領域でプラズマが存在している場合、存在するプラズマは拡散によるプラズマである。
【0358】
従って、放出端からδ〜3δの空間でプラズマの閉じ込めを行うことで、全空間でプラズマが励起されている状態が実現できる。図53に示す例では、メッシュシールド7013をスロット7010の放出端からδ〜3δの距離に設定することによって、メッシュシールド7013内の全域でプラズマを励起させることができる。
【0359】
また、マイクロ波がシース領域を拡散してしまう場合もプラズマへのエネルギ供給密度が低下してしまうが、これを防止する対策としても、メッシュシールド7013等によるシールドによるプラズマの閉じ込めが有効である。
【0360】
このとき、シールドの基本構造の持つ遮断波長がλc、シース領域を漏洩してくるマイクロ波の波長をλとすると、シールドへの侵入長δsは、
【0361】
【数8】
Figure 0004295855
【0362】
で与えられる。この時、シールドに入射するマイクロ波のエネルギとシールド外部に漏洩するマイクロ波のエネルギの割合pは、シールドの厚みをdとして、
【0363】
【数9】
Figure 0004295855
【0364】
である。従って、シールドの基本構造λcが決まり、シールドの放射率pを決定すると、それに必要なdの最小値が算出でき、従って必要なシールド厚の下限が算出できる。簡便には、導波管内の波長の1/4程度の径を採ることでシールド効果を得ることができる。
【0365】
例えばシールド厚1mmのメッシュを用いて、外部への電磁波のエネルギの漏洩を1%以下と設定した場合、必要とされるシールドへの最長侵入長は、0.43mmである。メッシュの基本単位が長方形でその周辺の長さをaとすると、λc=2aであり、このとき、aは1.4mm以下でなくてはならない。
【0366】
本参考例における構造は、スロット7010から放出されたマイクロ波により生成したプラズマの、特にシースを伝播するマイクロ波の拡散防止を図ることができる。従って、メッシュシールド7013の内部にプラズマを生成することが可能である。
【0367】
メッシュシールド7013の内部に拡散したプラズマは、同軸導波管の内軸として作用し、結果プラズマが拡散している部分(プラズマの拡散長)が同軸導波管として動作するため、マイクロ波がTEMモードになり容易に伝播してしまう。
【0368】
この際の伝播はやはりシース領域で起こっており、シース厚に対しプラズマへの侵入長が無視できない領域であり、伝播に伴う損失が大きいことからより少ない距離で減衰してしまうが、閉じ込めを行う時には問題となる場合がある。
【0369】
すなわち、マイクロ波はシールドのマイクロ波遮断長δsに加えて、プラズマの拡散長も伝播することになる。これらから、シールド長は、マイクロ波単独の遮断長+プラズマの拡散長以上に設定する必要がある。
【0370】
閉じ込めを行うシールドの表面積をS、開口率をα、動作圧力P、構造因子kとすると、シールドを通過する気体のコンダクタンスC(ガスの流れ易さ)は、粘性流体の場合、
【0371】
【数10】
Figure 0004295855
【0372】
となることから、動作圧、シールド構造が決定すると、シールド厚の上限が算出できる。
【0373】
マイクロ波の遮断に必要なシールド長及びコンダクタンスは、αとdに関して相反する関係にあるため、両者よりそれぞれの最適値が規定できる。
【0374】
シールドの材質は、マイクロ波の損失を少なくするためにより抵抗率の低い材料が望ましい。また、プラズマに接触していることから、高温になるため、熱抵抗が低い材料が望ましい。また、材料表面にフッ素不動態処理を行ったり、材料表面をフッ素化合物で覆ったりしてもよい。
【0375】
以上説明したように、第5の参考例によれば、スロット7010上を覆うようにメッシュシールド7013を設けることによって、プラズマがシースを介してスロット7010上から側方に拡散することを抑止することができる。また、メッシュシールド7013を使用することにより、プラズマ中の電界集中を避けてより均一な放電を実現することができる。
【0376】
(第6の参考例)
次に、第6の参考例を図面を参照しながら説明する。
図54(b)は、第6の参考例における、スロット7010上で励起されるプラズマを所定領域に閉じ込める遮蔽構造を示す斜視図である。なお、第6の参考例におけるエキシマレーザー発振装置の全体構成は、第5の参考例のものと同一であるため説明を省略する。また、第6の参考例を説明する図面において、第5の参考例と実質的に同一の構成要素については同一の符号を記して説明を省略する。
【0377】
図54に示すように、導波管1に形成されたスロット7010上には、レーザ管702内においてノズルシールド7014が構成されている。ここで、図54(a)はスロット7010上からノズルシールド7014を示す平面図、図54(b)は、ノズルシールドを示す斜視図である。
【0378】
図54(a)、図54(b)に示すように、ノズルシールド7014は複数の筒状のノズル7014aから構成されており、それぞれのノズル7014a内はレーザガスの通路とされている。図54(b)に示す矢印Aはレーザガスの流れを示している。レーザガスはスロット7010の長手方向に対して垂直となる方向に各ノズル7014a内を流れ、スロット7010から放射されるマイクロ波によって励起される。
【0379】
ノズルシールド7014は、マイクロ波が所定の大きさ以下の開口を通過できないという性質を利用している。すなわち、放出されるマイクロ波の周波数に対して開口を所定の大きさに設定したノズル7014aを複数配列することによって、金属壁もしくは第5の参考例で説明したメッシュシールドと同様にマイクロ波を空間的に閉じ込めることが可能である。
【0380】
ここで、ノズルシールド7014はレーザガスの流れに沿って配置されているため、レーザガスの流れを妨げることはない。従って、超高速ガス置換を行う際にもレーザガス流に抵抗を生じさせにくく、圧力損失の発生を抑止することができる。
【0381】
第6の参考例によれば、メッシュシールドを用いた場合よりも効果的にプラズマの閉じ込め、マイクロ波の閉じ込めを行うことができる。メッシュシールドを用いた場合、マイクロ波単独の閉じ込めは可能であっても、プラズマが拡散してメッシュ構造内に侵入した場合、閉じ込めの効果に限界が生じる場合があるからである。
【0382】
図55(a)は、図55(a)に示すガス流の方向に沿った断面を示す模式図である。ノズルシールド7014によってスロット7010の側方へのマイクロ波、プラズマの拡散を抑止することができ、スロット7010上の所定範囲に励起されたプラズマを閉じ込めることができる。
【0383】
図55(b)は、スロット7010の上方へのマイクロ波、プラズマの拡散防止を目的として、スロット7010上に金属壁7015を設けた例を示している。金属壁7015によって、スロット7010の側方のみならず上方へのマイクロ波、プラズマの拡散を抑止することができるため、スロット7010の開口端から所定距離内にプラズマを閉じ込めることが可能である。
【0384】
ノズルシールド7014の具体的構成を説明する。例えば長さ20mmのノズルを用いて、外部への電磁波の漏洩を1%以下と設定する。この時必要とされるシールドへの最長侵入長は、8.7mmである。
【0385】
メッシュの基本単位が長方形でその長辺の長さをaとすると、λc=2aである。この時、aは30mm以下でなければならない。従って、各ノズル間の間隔は25mm以下という比較的広いマージンが設定できる。
【0386】
例えば、ノズル壁間隔を20mmに設定すると、仮にプラズマが4.5mm程度拡散してきたとしても、外部への電磁波の漏洩を1%以下に保つことができる。また、本構造においては、コンダクタンスがより大きくとれるという利点があり、高速なガスを流す際により有効である。
【0387】
仮に、1mm角厚さ1mmの基本構造をもつメッシュと、20mm×2mm長さ20mmの基本構造をもつノズルのコンダクタンスを比べると、(メッシュ及びノズル壁の厚みを両者1mmと仮定すると、両者の開口率はそれぞれ25%及び91%)、同じ断面積を持つ場合、ノズルのコンダクタンスは厚み(長さ)場20倍にもかかわらず3.3倍も高い。すなわち、ノズル構造を採用することで、はるかにガスが流れ易い構造とすることができる。これに加えて実際のガス流では乱流が発生する場合も多く、それを避けるためにはなるべく構造体間隔を大きくすることが望ましい。
【0388】
以上説明したように、第6の参考例においては、マイクロ波が通過不能となる開口を有するノズル7014aを複数個配列して、ノズルシールド7014を構成することによって、生成されたプラズマを所定領域に閉じ込めることが可能であり、且つ、各ノズル7014a内にレーザガスを流すことによって、シールド構造を設けたにも関わらずガス流に抵抗を生じさせることがない。これにより、圧損の発生を最小限に抑えることができる。
【0389】
(第7の参考例)
次に、第7の参考例について図面を参照しながら説明する。図56は、第7の参考例に係る磁場シールドの構成を示す模式図であり、図57及び図58は、スロット7010の長手方向に対して垂直となる方向に沿った断面を示す模式図である。なお、第7の参考例におけるエキシマレーザー発振装置の全体構成も、第5の参考例のものと同一であるため説明を省略する。また、第7の参考例を説明する図面において、第5の参考例と実質的に同一の構成要素については同一の符号を記して説明を省略する。
【0390】
第7の参考例においては、スロット7010上に励起されるプラズマを所定範囲に閉じ込めるために磁場を用いている。磁場は、図56(a)に示すようにソレノイドを用いて形成しても良いし、図56(b)に示すように通常の磁石を配置することによって形成しても良い。
【0391】
図56(a)は、磁場の形成にソレノイド7016を用いた例を示している。ソレノイド7016の配置は、図56(a)に示すようにソレノイド7016の延在する方向がレーザ発振方向と同一となるように配置する。すなわち、図52に示す導波管701、スロット7010の長手方向とソレノイド7015の延在する方向は同一方向である。
【0392】
磁場強度は、磁場中の電子のラーマー周期がプラズマ中の電子と原子の衝突周期よりも短くなるように定める(磁場プラズマの条件)。
電子のラーマー角速度は、磁束密度をB、電子の質量をm、素電荷をeとして、
【0393】
【数11】
Figure 0004295855
【0394】
電子と原子の衝突角速度は、原子密度をn、原子半径をr、電子温度をT、ボルツマン係数をkとして、
【0395】
【数12】
Figure 0004295855
【0396】
これらの式から、エキシマレーザの動作圧力等を考慮すると、磁束密度は約1T以上必要である。
【0397】
ソレノイド7016によって強磁場を印加すると、形成された磁束に沿ってプラズマの電子が歳差運動する。レーザの振動方向と同じ向きに磁束が形成されているため、プラズマの電子はレーザ振動方向に対して垂直となる方向には拡散しにくくなり、プラズマの閉じ込めを実現することができる。図56(b)に示す磁石7017を用いて磁場を形成した場合でも同様の効果を得ることができる。
【0398】
図57(a)は、スロット7010の周囲におけるソレノイド7016あるいは磁石7017の配置を示す概略断面図である。スロット7010上にプラズマを閉じ込めるためにはスロット7010上を囲むように、例えば4ケ所の位置に磁石7017を設けることが望ましい。これにより、生成されたプラズマをスロット7010上に閉じ込めることが可能となる。
【0399】
図57(b)は、スロット7010の上方に金属壁7015を設けた例を示している。金属壁7015によってスロット7010の上方へのプラズマの拡散を抑止することができ、また、ソレノイド7016あるいは磁石7017によってスロット7010から横方向へのプラズマの拡散を抑止することができる。
【0400】
図58は、図57(b)に示す構成に対し、更にノズルシールド7014を付加した構成を示している。この構成によれば、ソレノイド7016あるいは磁石7017とノズルシールド7014の相乗効果により、プラズマがスロット7010の横方向へ拡散することを抑止することができる。このように、第7の参考例では、マイクロ波の閉じ込め効果を補填するために、第5の参考例あるいは第6の参考例に係る遮蔽構造を併用することが望ましい。
【0401】
以上説明したように、第7の参考例によれば、レーザの振動方向と同じ向きに磁束を形成することにより、プラズマの電子がレーザ振動方向に対して垂直方向に拡散することを抑止して、スロット7010上におけるプラズマの閉じ込めを実現することができる。
【0402】
(第8の参考例)
次に、第8の参考例について説明する。本参考例では、いわゆるエキシマレーザ光を発するエキシマレーザ発振装置を例示する。図59は、本参考例のエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【0403】
このエキシマレーザ発振装置は、図59に示すように、エキシマレーザガスの励起による発光を共振させてレーザ光を発するレーザ管802と、レーザ管802内のエキシマレーザガスを励起してプラズマ状態とするための導波管801と、導波管801を冷却するために、冷却水導入出口809を有する冷却容器807とを備えて構成されている。
【0404】
エキシマレーザ光を発生させる際の原料となるエキシマレーザガスは、Kr,Ar,Neから選ばれた1種以上の不活性ガス、又は前記1種以上の不活性ガスとF2 ガスとの混合気体である。これらのうち、使用したい波長により適宜ガス種を選択し組み合わせればよい。例えば、248nmの波長のレーザ光を発生させたい場合には、Kr/Ne/F2 とし、193nmの波長の場合にはAr/Ne/F2 、157nmの波長の場合にはNe/F2 とすればよい。
【0405】
レーザ管802は、エキシマレーザガスの管内への導入部となるレーザガス導入出口808と、各端部にそれぞれ反射構造体805,806が設けられ、これら反射構造体805,806によりプラズマ放電による光の位相が揃えられてレーザ光が発生する。
【0406】
導波管1は、マイクロ波をガス供給路構造8011内のレーザガスへ供給するための手段であり、図59中上面部に細長い複数のスロット8010が形成されている。導波管801の上部より数百MHz〜数十GHzの周波数のマイクロ波が導入されると、このマイクロ波が導波管801内を伝播しながら、スロット8010から導波管801の外部へ放出される。放出されたマイクロ波は、レーザ管2内へ導入される。そして、導入されたマイクロ波によりレーザ管801内のエキシマレーザガスが励起され、共振してエキシマレーザ光が発生することになる。
【0407】
導波管801の具体的な様子を図60に示す。ここで、図60(a)は導波管801の模式的な斜視図、図60(b)はその平面図である。
【0408】
図60(b)に示すように、各スロット8010はその長手方向が導波管801の長手方向と一致するように一列に配置されている。スロット8010は、導波管8012の長手方向に沿って配置されており、各々が導波管8012の長手方向に延在する形状とされている。
【0409】
図61は、第8の参考例における導波管801のレーザ管802近傍の断面を示している。ここで、図61は、スロット8010の長手方向に対して垂直となる方向に沿った断面を示している。
【0410】
導波管1に形成されたスロット8010からマイクロ波が放射されてスロット8010上にプラズマが生成される。そして、プラズマとスロット8010の開口端との間には、シースが形成される。本参考例では、マイクロ波の均一な伝搬を考慮して、スロット8010の径(幅)はシースの厚さと同程度以下(10μm〜100μm)としている。従って、スロット8010の側方へのマイクロ波の伝播を抑止して、スロット8010上のみにプラズマを生成することが可能である。ここで、スロット8010上でのプラズマのせり出しの大きさは、例えばレーザビーム径の1/10以下の大きさとしてレーザ発振に影響が少ないことが好ましい。
【0411】
以上説明したように、第8の参考例によれば、スロット8010の幅をマイクロ波の波長よりも小さくすることによって、プラズマがシースを介してスロット8010上から側方に拡散することを抑止することができる。
【0412】
(第9の参考例)
次に、第9の参考例を図面を参照しながら説明する。
第9の参考例は、スロット8010を複数のスリット8011から構成した態様である。なお、第9の参考例におけるエキシマレーザー発振装置の全体構成は、第8の参考例のものと同一であるため説明を省略する。また、第9の参考例を説明する図面において、第8の参考例と実質的に同一の構成要素については同一の符号を記して説明を省略する。
【0413】
第8の参考例で説明したように、スロット8010の幅をマイクロ波の波長以下の極細形状とした場合には、スロット8010の短辺方向の幅が狭いため、開口率が取れず放出効率が落ちる場合が想定される。第9の参考例では、これを防止するためにスロット8010を複数のスリット8011を並列に配置した構成とし、放出効率を高めた点で第8の参考例と相違する。
【0414】
図62は、複数のスリット8011から構成されるスロット8010が形成された導波管801の平面図を示している。また、図63は、スリット8011の長手方向に対して垂直方向の断面を示す模式図である。
【0415】
このように、極細形状のスリット8011を並列に複数個配置することによって、所望の開口率を得ることができ、並列に配置されたスロット8010上に均一にプラズマを生成させることが可能となる。
【0416】
図64は、並列にスリット8011を配置した場合において、端部のスリット8011aの幅を中央部のスリット8011の幅よりも狭くした例を示している。
【0417】
スリット8011の短辺方向に生成されたプラズマが拡散することの防止を目的として、スロット8010(スリット8011)の開口端の短辺方向に金属壁8015等を形成した場合には、金属壁8015に沿った位置でより多くのプラズマの生成が行われるためプラズマの均一性の確保に問題が生じる場合がある。図64に示すように、端部に位置するスリット8011の短辺方向の幅を、中央部に位置するスリット8011の短辺方向の幅よりも狭くすることによって、スリット8011aから放射されるマイクロ波の放射強度を低下させることができるため、スロット8010上に生成されるプラズマを全体として均一化することができる。
【0418】
また、図65に示すように、端部のスリット8011bの長さを短くすることによっても、金属壁8015近傍でのプラズマの生成を抑制して、スロット8010上での均一なプラズマの生成を実現することができる。なお、本効果はマイクロ波にとって金属壁と同等の、すなわちマイクロ波の閉じ込めを可能とする構造であれば同様の結果が得られることは言うまでもない。
【0419】
以上説明したように、第9の参考例によれば、極細スリット8011aを並列に配置することによって、マイクロ波の放出効率を高めることができ、スロット8010上に均一にプラズマを生成すること可能となる。
【0420】
(第10の参考例)
次に、第10の参考例について説明する。本参考例では、いわゆるエキシマレーザ光を発するエキシマレーザ発振装置を例示する。図66は、本参考例のエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【0421】
このエキシマレーザ発振装置は、図66に示すように、エキシマレーザガスの励起による発光を共振させてレーザ光を発するレーザ管902と、レーザ管2内のエキシマレーザガスを励起してプラズマ状態とするための導波管901と、導波管901を冷却するために、冷却水導入出口909を有する冷却容器907とを備えて構成されている。
【0422】
エキシマレーザ光を発生させる際の原料となるエキシマレーザガスは、Kr,Ar,Neから選ばれた1種以上の不活性ガス、又は前記1種以上の不活性ガスとF2 ガスとの混合気体である。これらのうち、使用したい波長により適宜ガス種を選択し組み合わせればよい。例えば、248nmの波長のレーザ光を発生させたい場合には、Kr/Ne/F2 とし、193nmの波長の場合にはAr/Ne/F2 、157nmの波長の場合にはNe/F2 とすればよい。
【0423】
レーザ管902は、エキシマレーザガスの管内への導入部となるレーザガス導入出口908と、各端部にそれぞれ反射構造体905,906が設けられ、これら反射構造体905,906によりプラズマ放電による光の位相が揃えられてレーザ光が発生する。
【0424】
導波管901は、マイクロ波をガス供給路構造9011内のレーザガスへ供給するための手段であり、図66中上面部に細長い複数のスロット9010が形成されている。導波管901の上部より数百MHz〜数十GHzの周波数のマイクロ波が導入されると、このマイクロ波が導波管1内を伝播しながら、スロット9010から導波管901の外部へ放出される。放出されたマイクロ波は、レーザ管902内へ導入される。そして、導入されたマイクロ波によりレーザ管901内のエキシマレーザガスが励起され、共振してエキシマレーザ光が発生することになる。
【0425】
導波管901の具体的な様子を図67に示す。ここで、図67(a)は導波管901の模式的な斜視図、図67(b)はその平面図である。
【0426】
図67(b)に示すように、各スロット9010はその長手方向が導波管901の長手方向と一致するように一列に配されており、これらスロット9010の周囲を囲むように電極9013が設けられている。
【0427】
図68は、任意の1つのスロット9010の周囲に形成された電極9013の配置の例を示した図である。ここで、図68(a)は、図67(b)と同様にスロット9010の周囲の6箇所に電極を配置した例を示している。
【0428】
また、図68(b)は、6箇所の電極13に印加される電流密度を示している。図68(b)に示すように、スロット9010の長手方向の中央近傍に配置された電極9013の電流密度をJc とし、スロットの長手方向の端部に配置された電極13の電流密度をJe とする。そして、Jc <Je となるように電流密度を調整しておく。
【0429】
このように、スロット9010の中央部よりもスロット9010の端部における電流密度を大きくすることによって、予備電離により発生する電子の密度に分布をもたせて、スロット9010の端部においてプラズマが励起し易い状態とすることができる。すなわち、プラズマが励起することによるスロット9010の幅方向における電気的な導通状態の形成を、電極9013により生じる電子密度分布によって補填することが可能となる。図68(b)では、スロット9010端における電子密度をスロット9010の中央部よりも大きくする例を示したが、電子密度分布の形成はこれに限定されるものではない。電極9013を用いて使用状況に応じた適切な電子密度分布を形成することが可能である。
【0430】
前述したように、スロット9010の長手方向の中央近傍においては、元々プラズマが励起し易い状態とされている。従って、スロット9010の端部におけるプラズマの励起を促進することにより、スロット9010上の全領域において均一なプラズマを形成することが可能となる。
【0431】
図70は、電極9013によってプラズマ励起を均一化した様子を模式的に示す特性図である。ここで、図70(a)は電極9013を用いない場合において、スロット9010の長手方向のプラズマ励起の状態を比較のため示している。また、図70(b)は、各電極9013に与えられた電流密度に起因して生じる、スロット9010の長手方向における電子密度の分布(予備電離補償)を模式的に示す特性図である。
【0432】
そして、図70(c)は、図70(b)に示す予備電離補償を電極9013によって与えた場合において、スロット9010から放出されるマイクロ波により励起されたプラズマの強度を示している。このように、図70(b)に示す電界を与えることによって、特にスロット9010の長手方向の端部におけるプラズマの励起を促進することができ、図70(c)に示すようにスロット9010の全領域におけるプラズマ励起の状態を均一化することができる。
【0433】
図68(c)、図69は、電極9013の配置の他の例を示している。図68(c)は、スロット9010の端部におけるプラズマ励起を更に容易に行うために、スロット9010の端部の電極9013の数を増やした例を示している。これにより、スロット9010の端部においてプラズマ励起をより効果的に行うことが可能である。
【0434】
図69(a)は、プラズマが励起し易いスロット9010の中央部には電極9013を配置せずに、スロット9010の端部のみに電極9013を設けた例を示している。このように、プラズマが励起しにくいスロット9010の端部のみに電極9013を設けることで、スロット9010の中央部と同等のプラズマの励起を可能として、スロット9010上の全領域においてプラズマの励起を均一に行うことが可能となる。
【0435】
図69(b)は、スロット9010の長手方向に沿って一体に形成された電極9013を用いた例を示している。ここで、スロット9010の長手方法の中央部における電極9013の面積を小さく形成することにより、スロット9010の端部における電子密度の分布を大きくすることができる。
【0436】
図69(c)は、プラズマの励起しにくいスロット9010端において、電極9013をよりスロット9010に近接させた例を示している。スロット9010の端部における電子密度を大きくすることによって、スロット9010の端部におけるプラズマの励起を促進することができ、スロット9010上におけるプラズマの励起を均一化することができる。
【0437】
図71は、電極9013をスロット9010から離間させて配置する場合の構成を示している。このように、電極9013をスロット9010から離間させる場合、反射鏡9014を用いてスロット9010側の電流密度を高くすることによって、効率の高い予備電離が実現できる。この場合、導波管901の上部にはレーザーガスが流れているため、反射鏡9014はレーザーガスの流路の上部に設置するのが望ましい。
【0438】
以上説明したように、第10の参考例においては、スロット9010の近傍に電極9013を設け、スロット9010の長手方向における端部の電子密度を、スロット9010の長手方向における中央部における電子密度よりも高くすることによって、特にスロット9010の長手方向の端部におけるプラズマの励起を促進することができ、スロット9010の全領域におけるプラズマ励起の状態を均一化することができる。
【0439】
(第11の参考例)
次に、第11の参考例について説明する。図72は、第11の参考例に係るエキシマレーザ発振装置の導波管を示す概略断面図である。なお、第11の参考例におけるエキシマレーザー発振装置の全体構成は、第10の参考例のものと同一であるため説明を省略する。また、第11の参考例を説明する図面において、第10の参考例と実質的に同一の構成要素については同一の符号を記して説明を省略する。
【0440】
第10の参考例においては、電極9013を用いて間接的に紫外線励起を行う方法を示したが、この第11の参考例では紫外線光源を用いてUV光照射補償を行う方法について説明する。
【0441】
図72(a)は、導波管9021の長手方向と垂直な方向に沿った断面を示している。このように、第11の参考例に係るエキシマレーザ発振装置の導波管9021は、略L字状の断面形状とされている。
【0442】
導波管9021の下面には、スロット9010が形成されている。マイクロ波は図72の矢印Aの方向から導波管1内を伝播し、スロット9010からレーザー管2へ放出されてスロット9010上でプラズマが励起される。
【0443】
導波管9021内において、スロット9010と対向する位置にはUV透過窓9021aが設けられている。そして、UV透過窓9021aの外側にはUV光源9022、反射鏡9023が設けられている。
【0444】
本参考例においては、導波管9021を略L字状の断面形状とすることにより、スロット9010と対向した位置から直接的にUV照射を行うことが可能である。また、UV透過窓9021aを所定の大きさで形成しておくことにより、マイクロ波がUV透過窓9021aから漏れだすことを抑止することができる。
【0445】
図72(b)は、ベンド導波管9021’を使用した場合において、ベンド導波管9021’の長手方向と垂直な方向に沿った断面を示している。ベンド導波管9021’を使用した場合には、斜面部9021’bにUV透過窓9021’aを設けることによって、図72(a)に示す導波管9021と同様にスロット9010と対向した位置から直接的にUV照射を行うことが可能である。
【0446】
図73(a)は、導波管9021の長手方向に沿った断面を示している。UV透過窓9021aは、導波管9021の長手方向に沿って形成されており、UV透過窓9021aの位置に対応してUV光源9022、反射鏡9023が設置されている。そして、UV光源9022、反射鏡9023は、スロット9010の長手方向の端部に集中的にUV照射が可能となる位置に配置されている。
【0447】
このように、スロット9010の長手方向の端部に集中的にUV照射を行うことにより、スロット9010の端部におけるプラズマの励起を促進することができ、スロット9010上において均一にプラズマを励起させることが可能となる。
【0448】
反射鏡9023は、球面、あらゆる非球面(楕円、双曲線など)の反射鏡を用いることが可能である。また、プラズマが不均一な場合等においては、スロット長軸方向にも反射鏡の構造を採用することが好ましい。また、単一光源を用いて、反射鏡9023の代わりに複数のレンズを用いてもよい。
【0449】
図73(b)は、マイクロ波のモードとして、E面、H面を使用した場合に好適な、UV透過窓9021aの配置を示している。ここで、E面とは通常のTE10モードのみを伝播する導波管における長端面であり、H面とは導波管での短端面である。図73(b)に示すように、E面の場合にはスロット9010の長手方向に沿ってUV透過窓9021aを形成するのが望ましく、この配置により、スロット9010端に集中的にUV照射を行うことができる。
【0450】
また、H面の場合にはスロット9010の長手方向に沿って、且つ2列のスロット10の間に配置することが望ましい。H面の場合に2列の発光ラインをとる場合には、左右のスロット9010それぞれに対し、E面と同様の透過窓を配置する。
【0451】
図74は、UV照射によってプラズマ励起を均一化した場合の様子を模式的に示す特性図である。ここで、図74(a)はUV照射を行わない場合のプラズマ励起の状態を比較のため示している。また、図74(b)は、スロット9010近傍において、UV光源9022によるUV照射強度を模式的に示した特性図である。
【0452】
そして、図74(c)は、図74(b)に示すUV照射を行った場合に、スロット9010から放射されるマイクロ波により励起されたプラズマの強度を示している。このように、図74(b)に示すUV照射を行うことによって、特にスロット9010の長手方向の端部におけるプラズマの励起を促進することができ、図74(c)に示すように、スロット9010の全領域におけるプラズマ励起の状態を均一化することができる。
【0453】
以上説明したように、第11の参考例においては、スロット9010の長手方向の端部に集中的にUV照射を行うようにUV光源9022を配置し、UV照射によってプラズマが励起しにくいスロット9010端においてプラズマの励起を促進することができる。これにより、スロット9010の長手方向の中央部と、スロット9010の端部におけるプラズマの励起を同等とすることができ、スロット9010上の全範囲において均一にプラズマを励起させることができる。本参考例において、照射する光の代わりにX線若しくはRF(高周波)予備電離を用いても同様の効果を得ることができる。
【0454】
(第12の参考例)
次に、第12の参考例について説明する。本参考例では、いわゆるエキシマレーザ光を発するエキシマレーザ発振装置を例示する。図75は、本参考例のエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【0455】
このエキシマレーザ発振装置は、図75に示すように、エキシマレーザガスの励起による発光を共振させてレーザ光を発するレーザ管1002と、レーザ管2内のエキシマレーザガスを励起してプラズマ状態とするための導波管1001と、導波管1001を冷却するために、冷却水導入出口1009を有する冷却容器1007とを備えて構成されている。
【0456】
エキシマレーザ光を発生させる際の原料となるエキシマレーザガスは、Kr,Ar,Neから選ばれた1種以上の不活性ガス、又は前記1種以上の不活性ガスとF2 ガスとの混合気体である。これらのうち、使用したい波長により適宜ガス種を選択し組み合わせればよい。例えば、248nmの波長のレーザ光を発生させたい場合には、Kr/Ne/F2 とし、193nmの波長の場合にはAr/Ne/F2 、157nmの波長の場合にはNe/F2 とすればよい。
【0457】
レーザ管1002は、エキシマレーザガスの管内への導入部となるレーザガス導入出口1008と、各端部にそれぞれ反射構造体1005,1006が設けられ、これら反射構造体1005,1006によりプラズマ放電による光の位相が揃えられてレーザ光が発生する。
【0458】
導波管1001は、マイクロ波をガス供給路構造10011内のレーザガスへ供給するための手段であり、図75中上面部に細長い複数のスロット10010が形成されている。導波管1の上部より数百MHz〜数十GHzの周波数のマイクロ波が導入されると、このマイクロ波が導波管1001内を伝播しながら、スロット10010から導波管1001の外部へ放出される。放出されたマイクロ波は、レーザ管1002内へ導入される。そして、導入されたマイクロ波によりレーザ管1001内のエキシマレーザガスが励起され、共振してエキシマレーザ光が発生することになる。
【0459】
導波管1001の具体的な様子を図76に示す。ここで、図76(a)は導波管1001の模式的な斜視図、図76(b)はその平面図である。
【0460】
図76(b)に示すように、各スロット10010はその長手方向が導波管1の長手方向と一致するように一列に配置されている。スロット10010は、導波管10012の長手方向に沿って配置されており、各々が導波管10012の長手方向に延在する形状とされている。ここで、第12の参考例においては、導波管1001の長端面であるE面から放出されるマイクロ波を放出するスロット10010に参考例を適用した例を示す。
【0461】
図80(a)は、E面におけるマイクロ波により、導波管1001の壁内表面に生じる電流を示す模式図である。導波管1001の壁内表面においてスロット10010と垂直方向の電流を生じさせる。ここで図80(c)は、導波管1001におけるE面及びH面を示す模式図である。E面とは、導波管1001の短端面をいい、H面とは、導波管1001の長端面をいう。
【0462】
図77(a)は、任意の1つのスロット10010の形状を示す概略平面図である。このように、スロット10010は長手方向の端部に向かうにつれて幅広の形状とされている。
【0463】
そして、図77(c)は、図77(a)に示すスロット10010の長手方向に沿った位置と、スロット10010の開口率の関係を示す模式図である。図77(a)、図77(c)に示すように、開口率はスロット10010の端部に向かうにつれて大きくなる。
【0464】
そして、図77(d)は、図77(a)に示すスロット10010によってマイクロ波を放射した場合の放射エネルギーの強度を示した模式図である。このように、端部において開口率が大きく形成されたスロット10010を用いることによって、特にスロット10010端部における放射エネルギーを大きくすることができる。すなわち、図80(b)に示すようなスロット10010を横切る電流密度に対してスロット10010の幅を変化させることによって、放出されるマイクロ波の放射エネルギをスロット10010の長手方向の各部位において制御することが可能となる。そして、図77(d)に示すように均一化された放射を実現することが可能となる。
【0465】
なお、実際の発光におけるマイクロ波の分布はプラズマとの干渉等があり、測定や解析が極めて困難である。従って、図77(d)においてはプラズマが励起されていない状態でのスリットからの均一性を評価することで、均一性を評価している。
【0466】
このような、中心部に対して対称形状のスロット10010は、電流の密度分布がスロット10010の短軸方向に対称となる、E面に放出されるマイクロ波に用いて好適である。
【0467】
このように、スロット10010の長手方向の各部位における幅を異なるようにし、長手方向の端部における幅を中央部に比して大きくしたことによって、特に、スロット10010の端部においてマイクロ波の放射を強くすることができる。これにより、図77(b)に示すような均一なマイクロ波の放出が可能となる。
【0468】
図78(a)は、スロット10010の形状の他の例を示す概略平面図である。図78(a)に示すスロット10010は、長手方向の端部を局所的に円形に広げたダンベル形状とされている。
【0469】
そして、図78(b)は、図78(a)に示すスロット10010の長手方向に沿った位置と、スロット10010の開口率の関係を示す模式図である。図78(a)、図78(b)に示すように、開口率はスロット10010の端部において大きくなる。
【0470】
そして、図78(c)は、図78(a)に示すスロット10010によってマイクロ波を放射した場合の放射エネルギーの強度を示した模式図である。このように、端部において開口率が大きく形成されたスロット10010を用いることによって、円形部10010aにおいてマイクロ波の放出を高め、特にスロット10010端部における放射エネルギーを大きくすることができる。すなわち、図80(a)に示すようなスロット10010を横切る電流密度に対してスロット10の幅を変化させることによって、放出されるマイクロ波の強度をスロット10010の長手方向の各部位において制御することが可能となり、図77(c)に示すように均一化された放射を実現することが可能となる。
【0471】
また、スロット10010端に半径rの円を付加することにより、半径rを大きくすることによって、スロット10010の長さを等価的に長くすることが可能である。これにより、実質的にλg/4の長さのスロット長としなくてもQをより小さくすることができる。また、スロット10010の端部が円形であることから、スロット10010を形成する際の機械加工を容易且つ精密に行うことが可能である。
【0472】
図79(a)は、図78(a)に示すスロット10010の形状をより滑らかに曲線でつなげた形状のスロット10010を示している。
【0473】
そして、図79(b)は、図79(a)に示すスロット10010の長手方向に沿った位置と、スロット10010の開口率の関係を示す模式図である。図79(a)、図79(b)に示すように、開口率はスロット10010の端部に近接する程増大する。
【0474】
そして、図79(c)は、図79(a)に示すスロット10010によってマイクロ波を放射した場合の放射エネルギーの強度を示した模式図である。このように、端部において開口率が大きく形成されたスロット10010を用いることによって、円形部10010aにおいてマイクロ波の放出を高め、特にスロット10010端部における放射エネルギーを大きくすることができる。すなわち、図80(a)に示すようなスロット10010を横切る電流密度に対してスロット10010の幅を変化させることによって、放出されるマイクロ波の強度をスロット10010の長手方向の各部位において制御することが可能となる。そして、図79(c)に示すように均一化された放射を実現することが可能となる。
【0475】
また、図79(a)に示すスロット10010は、図78(a)に示すスロット10と同様に端部を円弧状としているため、スロット10010の長さを等価的に長くすることが可能であり、また、機械加工を容易且つ精密に行うことが可能である。
【0476】
図77、図78及び図79に示すスロット10010の形状では、放射されるマイクロ波の均一性は、図78に示すスロット10010、図77に示すスロット10010、図79に示すスロット10010の順に良好となる。また、マイクロ波の最大強度も、図78に示すスロット10010、図78に示すスロット10010、図79に示すスロット10010の順に大きくなる。しかし、この傾向は、実際にはスロット10010のサイズと励起源である導波路とのサイズの関係や、曲線形状などにより変化する。なお、上述した開口率分布は、なるべく広い範囲での均一性を重視して設定したが、仮に端部を強励起し中央部の強度を弱めたい場合は、より中央部での開口率を下げることで対応できることは言うまでもない。
【0477】
図84は、スロット10010の長手方向の中央部の幅を端部の幅よりも広くしたスロット10010の例を示す。導波管1001内においては導波管1001の長手方向と垂直となる方向にも均一でない電界が分布しており、この電界を考慮した場合等においては、図84に示す形状のスロット10010によっても、スロット10010から放出されるマイクロ波の強度を均一化することができる。
【0478】
以上説明したように、第12の参考例によれば、スロット10010の長手方向における各部位の幅を異ならせ、スロット10010の端部における開口を大きくすることによって、スロット10010の端部から放射されるマイクロ波の強度を高めることが可能となる。これによって、スロット10010上の全領域において、マイクロ波の均一化な放射を行うことが可能となる。
【0479】
(第13の参考例)
次に、第13の参考例について説明する。第13の参考例においては、導波管1001の短端面からマイクロ波を放出するスロットに参考例を適用した例を示す。なお、第13の参考例におけるエキシマレーザー発振装置の全体構成は、第12の参考例のものと同一であるため説明を省略する。また、第13の参考例を説明する図面において、第12の参考例と実質的に同一の構成要素については同一の符号を記して説明を省略する。
【0480】
図80(b)は、H面におけるマイクロ波により導波管壁に生じる電流の向きを示す模式図である。このように、H面における管壁内表面を流れる電流は導波管1001の長手方向に対して垂直方向の幅の中心に位置する節から、λg/2だけ離れた位置における節に向かって流れる。
【0481】
このため、導波管1001の長手方向と垂直方向の幅の中心線(一点鎖線C)からdだけ離間させた位置にスロット10010をλg/2ピッチで交互に設けることで全てのスロット10010からの放射が同位相となる。
【0482】
図81は、H面に放出されるマイクロ波に用いて好適なスロット10010の形状を示している。図80(b)で説明したように、マイクロ波により生じる電流は節から放射状に放出されるため、電流の向きに対してスロット10010が延在する方向を垂直となるようにする。すなわち、図81(a)に示す形状のスロット10010を、図81(b)に示す位置に配置することによってスロット10010が延在する方向と電流の向きを垂直とすることができ、スロット10010から効率良くマイクロ波を放出することができる。
【0483】
図82は、H面に使用するスロット10010の形状の他の例を示す平面図である。図82(a)に示すスロット10010は、端部における開口幅が広げられているため、図81(b)に示す位置に配置することによって、スロット10010端におけるマイクロ波の放射強度を高めることができ、スロット10010上に放射されるマイクロ波の強度を均一化することができる。
【0484】
また、図82(b)に示すスロット10010は、端部よりも中央部における開口幅を広げた態様を示している。
【0485】
図83に示すスロット10010は、第12の参考例の図78、図79において説明したスロット10010と同様に、スロット10010端に半径rの円を形成した例を示している。この形状により、第12の参考例と同様に、円形部10010aにおいてマイクロ波の放出を高めることができ、スロット10010上に放射されるマイクロ波を均一化することができる。
【0486】
また、スロット10010端に半径rの円を付加することにより、半径rを大きくすることによって、スロット10010の長さを等価的に長くすることが可能である。これにより、実質的にλg/2の長さのスロット長としなくてもQをより小さくすることができる。また、スロット10010の端部を円弧状とすることによって、スロット10010を形成する際の機械加工を容易かつ精密に行うことが可能である。
【0487】
以上説明したように、第13の参考例においては、H面から放出されるマイクロ波に対し、スロット10010を導波管1の中心(図80(b)における中心線C)から所定距離離間させた位置に配置することによって、スロット10010からマイクロ波の放射を行うことが可能となる。
【0488】
また、スロット10010の形状を湾曲させ、マイクロ波により導波管1001の壁面に生じる電流の方向と垂直となる方向へ延在させることによって、より効率良くマイクロ波の放射を行うことが可能となる。
【0489】
更に、スロット10010の端部においてスロット10010の幅を広げることによって、スロット10010の端部におけるマイクロ波の放射を高め、スロット10010上の全領域に放射されるマイクロ波の強度を均一化することができる。
【0490】
(第14の参考例)
次に、第14の参考例について説明する。なお、第14の参考例におけるエキシマレーザー発振装置の全体構成は、第12の参考例のものと同一であるため説明を省略する。また、第14の参考例を説明する図面において、第12の参考例と実質的に同一の構成要素については同一の符号を記して説明を省略する。
【0491】
第14の参考例は、マイクロ波の放射を均一化するために、スロット10010の開口形状は通常の矩形形状として、スロット10010が形成されている導波管1の壁の内部の形状をスロット10010の開口形状と異ならせ、空隙構造10015を設けたことを特徴としている。ここで、空隙構造15は図85(b)において後述するように、スロット10010の形成された導波管1壁に形成された空隙である。
【0492】
図86は、空隙構造10015の例を示している。この例においては空隙構造10015の全範囲をスロット10010からλg/4離間させている。これにより、空隙構造10015内におけるスロット10010と垂直となる方向の空間の長さがλg/2となるため、空隙構造10015内においてマイクロ波を共振させることができ、放射効率を向上させることができる。
【0493】
図87では、空隙構造10015の全範囲をスロット10010からλg/2離間させている。この構成においても、空隙構造10015内におけるスロット10010と垂直となる方向の空間の長さがλgとなるため、空隙構造10015内においてマイクロ波を共振させることができ、放射効率を向上させることができる。
【0494】
図85(a)は、第14の参考例の他の態様のスロット10010、空隙構造10015を示す平面図である。また、図85(b)は、図85(a)に示す一点鎖線I−I’に沿った断面を示す概略断面図である。
【0495】
図85(a)に示すように、第14の参考例に係るスロット10010は、矩形形状に形成され、その長手方向は導波管1の長手方向と同一である。
【0496】
そして、矩形形状のスロット10010を囲むような形状で、インピーダンス変更空隙構造10015が形成されている。図85(b)に示すように、空隙構造10015はスロット10010が形成されている導波管1の内壁に形成されたものであり、図85(a)に示す点線で示す領域まで延在する空隙である。
【0497】
図85(a)に示すように、空隙構造10015の端は、スロット10010の端部から半径がλg/4となる円形形状とされており、スロット10010の長手方向の中央部においては、スロット10010の端部からλg/4以下の距離とされている。
【0498】
図85のように、空隙端とスロット10010の距離をスロット10010長軸方向に変化させることにより、スロット10010の長軸方向のマイクロ波の放出特性を変化させることができる。
【0499】
この効果は、スロット10010の各部位で共振条件がくずれるため、更には、空間的な間隙の形状を変化させることにより、伝播路の特性を変化できるというマイクロ波特有の性質によるものである。長さL、特性インピーダンスZ0 である終端短絡導波路のインピーダンスZは、
Z=jZ0 tan(2π・L/λg)
となる。
【0500】
これは、すなわち、いかなる値を持つ誘電性素子(単体素子でいうコイル)及び容量性素子(単体素子でいうキャパシタ)をLを変化させるだけで形成することができることを示している。スロットライン方向に半値幅αを変化させるということは、電磁波にとってのインピーダンスを付随的に変化させることになり(等価回路的にみると、スロットに対して連続的に様々な値を持つコイルやキャパシタが並列に接続されてみえる)、結果的にスロットから放出される電磁波の分布を制御することができる。
【0501】
そして、この性質を利用することにより、スロット10010の長手方向の中央におけるマイクロ波の放射を抑制することが可能となり、スロット10010上に放射されるマイクロ波の強度を均一化することができる。
【0502】
図88は、やはりマイクロ波の放射効率を向上させるために、スロット10010の長手方向の長さをλg/2とした構成を示している。ここで、図88(a)はH面に適用した例を、図88(b)はE面に適用した例を示している。スロット10010の長さをλg/2とすることによって、マイクロ波をスロット10010の長手方向において共鳴させることができ、マイクロ波の放射効率を向上させることが可能である。
【0503】
図89(a)は、断面形状をテーパー状として、導波管1001の内部に向かって幅広としたスロット10010を示している。スロット10010の下方に向かうにつれて幅広となるテーパー形状を形成することによって、空間のインピーダンスがゆるやかに変化するため反射が起こりにくくなり、より多くのマイクロ波をスロット10010内へ導くことができ、スロット10010からのマイクロ波の放射効率を向上させることができる。
【0504】
図89(b)は、図89(a)に示すスロット10010のテーパー部に誘電体レンズ10016を挿入した例を示している。誘電体レンズ10016によってマイクロ波をスロット10010へ集中させることができ、スロット10010からのマイクロ波の放射効率を向上させることができる。
【0505】
また、図89(c)に示すように、誘電体レンズ10016を通常のスロット10010の直下に配置することによっても、マイクロ波をスロット10010へ集中させることができ、スロット10010からのマイクロ波の放射効率を向上させることができる。
【0506】
以上説明したように、第14の参考例によればスロット10010の開口形状とは異なる形状であって、スロット10010の形成された導波管1001の壁面に空隙構造10015を形成することによって、スロット10010内のインピーダンスを可変することができる。従って、空隙構造10015を形成することによって、スロット10010上への均一なマイクロ波の放出を実現することが可能となる。また、空隙領域10015を所定の大きさに設定することによって、空隙領域10015内でマイクロ波を共振させることができ、マイクロ波の放射特性を向上させることが可能である。
【0507】
また、スロット10010の断面形状をテーパー状として、導波管1の内部に向かって幅広となるように形成することで、より多くのマイクロ波をスロット10010へ導くことができ、放射効率を向上させることができる。更に、スロット10010内あるいはスロット10010の下部に誘電体レンズを設けることによっても、マイクロ波の放射効率を向上させることが可能である。
【0508】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態におけるラバルノズル型のガス供給路構造と、第6の参考例におけるノズルシールドの構造を共に備えたレーザ発振装置である。
【0509】
図90は、本発明の第2の実施形態に係るレーザ発振装置の全体構成を示す模式図である。図90に示すレーザ発振装置の全体構成は、第1の実施形態で説明した構成と同一である。また、図91は、図90に示すレーザ発振装置のレーザチャンバ1の一部を示す斜視図である。なお、レーザ発振装置の全体構成は、第1の実施形態の図13に示すシロッコファンを用いたものでもよい。
【0510】
本実施形態において、レーザチャンバ1の主要構成は第1の実施形態で説明したものと同一である。すなわち、レーザチャンバ1は、ラバルノズル型のガス供給路構造11と、ガス供給路構造11を挟んで対向するように設けられた導波管12とを備えている。なお、図90及び図91において、上述した第1の実施形態、第6の参考例で説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を記す。
【0511】
レーザチャンバ1にラバルノズル型のガス供給路構造11を用い、流出入口におけるガス圧力やガス流速を調節することにより、音速に近づくほどに懸念される衝撃波の発生を抑止しつつ、発光部21におけるエキシマレーザガスの流速を初期の亜音速に制御することが可能となる。従って、枯渇しがちなエキシマレーザガスを衝撃波の発生を懸念することなく迅速に補給することができ、長時間の安定な発光を維持するエキシマレーザ発振装置が実現される。
【0512】
また、ラバルノズル型のガス供給路構造11に、第6の参考例で説明したノズルシールド7014が設けられている。ノズルシールド7014は、マイクロ波が所定の大きさ以下の開口を通過することができないという性質を利用したシールドである。放出されるマイクロ波の周波数に対してノズルシールド7014の開口を設定することでスロット7010から放出されるマイクロ波を空間的に閉じ込めることが可能となる。
【0513】
そして、ノズルシールド7014の延在する方向をガス供給路構造11に流れるレーザガスの方向と同一とすることで、マイクロ波を遮蔽しつつ、ガス供給路構造11からのレーザガスの供給を行うことができる。
【0514】
従って、ノズルシールド7014がレーザガスの流れを妨げることはなく、ラバルノズル型のガス供給路構造11を用いて超高速ガス置換を行った場合にレーザガス流に抵抗を生じさせることはない。従って、圧力損失の発生を抑止することができる。
【0515】
そして、ノズルシールド7014によってスロット7010上に形成されるプラズマ7011の拡散を抑止することができ、生成されたプラズマ7011をスロット7010の両脇のノズルシールド7014間の間隙に確実に閉じ込めることが可能である。
【0516】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明したラバルノズル型のガス供給路構造11と、第6の参考例で説明したノズルシールドの構造を共に備えることにより、レーザガスを高速に循環させてプラズマの励起を促進することができ、且つ、レーザガスの流れを妨げることなくプラズマが発光領域外に拡散することを抑止することができる。
【0517】
なお、本実施形態のレーザ発振装置に対して、先に説明した各参考例の構成を更に付加することにより、各参考例の構成特有の効果を得ることが可能である。
【0518】
(第15の参考例)
次に、第15の参考例について説明する。第15の参考例は、第1の参考例におけるマイクロ波の通路と、第6の参考例におけるノズルシールドの構造を共に備えたレーザ発振装置である。
【0519】
図90は、第15の参考例に係るレーザ発振装置の全体構成を示す模式図である。また、図92は、図90に示すエキシマレーザ発振装置の主要部であるレーザチャンバ1の一部を示す斜視図である。
【0520】
レーザチャンバ1の主要構成は、第1の実施形態で説明したものと同様の構成である。すなわち、レーザチャンバ1は、ラバルノズル型のガス供給路構造11と、ガス供給路構造11を挟んで対向するように設けられた導波管12とを備えている。ただし、本参考例ではガス供給路構造11がラバルノズル型とされていない点で第1の実施形態と相違する。なお、図90及び図92において、上述した第1の参考例、第6の参考例で説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を記す。
【0521】
ガス供給路構造11には、第6の参考例で説明したノズルシールド7014が設けられている。ノズルシールド7014は、マイクロ波が所定の大きさ以下の開口を通過することができないという性質を利用したシールドである。放出されるマイクロ波の周波数に対してノズルシールド7014の開口を設定することでスロット7010から放出されるマイクロ波を空間的に閉じ込めることが可能となる。
【0522】
そして、ノズルシールド7014の延在する方向をガス供給路構造11に流れるレーザガスの方向と同一とすることで、マイクロ波を遮蔽しつつ、ガス供給路構造11からのレーザガスの供給を行うことができる。
【0523】
従って、ノズルシールド7014がレーザガスの流れを妨げることはなく、ラバルノズル型のガス供給路構造11を用いて超高速ガス置換を行った場合にレーザガス流に抵抗を生じさせることはない。従って、圧力損失の発生を抑止することができる。
【0524】
そして、ノズルシールド7014によってスロット7010上に形成されるプラズマ7011の拡散を抑止することができ、生成されたプラズマ7011をスロット7010の両脇のノズルシールド7014間の間隙に確実に閉じ込めることが可能である。
【0525】
導波管12とガス供給路構造11との間の金属壁には、第1の参考例で説明したマイクロ波の通路3011が形成されている。これにより、スロット7010から放出されたマイクロ波は、金属壁に規制された通路3011を伝播することで徐々に平面波に近づき、通路を通過してレーザ管内に放出されるときには、その波面を各スロット7010に沿った全体にわたってほぼ平面様形状とすることができる。
【0526】
従って、レーザ管301内のエキシマレーザガスには、ほぼ均一の平面波とされたマイクロ波が到達することになり、レーザ管302の長手方向にわたって均一なプラズマ放電が実現され、レーザ発光を均一することができる。
【0527】
以上説明したように、第15の参考例によれば、第1の参考例で説明したマイクロ波の通路と、第6の参考例で説明したノズルシールドの構造を共に備えることにより、発光部21においてプラズマの拡散を抑止することができ、且つ、導波管12の長手方向の全域において放射エネルギが均一化されたプラズマを生成することが可能となる。
【0528】
なお、本参考例のレーザ発振装置に対して、先に説明した各参考例の構成を更に付加することにより、各参考例の構成特有の効果を得ることが可能である。
【0529】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態におけるラバルノズル型のガス供給路構造、第1の参考例におけるマイクロ波の通路及び第5の参考例におけるノズルシールドの構造を全て備えたレーザ発振装置である。
【0530】
図90は、本発明の第3の実施形態に係るレーザ発振装置の全体構成を示す模式図である。また、図93は、図90に示すレーザ発振装置のレーザ発振部を拡大して示す斜視図である。
【0531】
図93は、図90に示すエキシマレーザ発振装置の主要部であるレーザチャンバ1の一部を示す斜視図である。レーザチャンバ1は、第1の実施形態で説明したものと同一である。すなわち、レーザチャンバ1は、ラバルノズル型のガス供給路構造11と、ガス供給路構造11を挟んで対向するように設けられた導波管12とを備えている。なお、図90及び図93においては、上述した第1の実施形態、第1の参考例及び第6の参考例で説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を記す。
【0532】
レーザチャンバ1にラバルノズル型のガス供給路構造11を用い、流出入口におけるガス圧力やガス流速を調節することにより、音速に近づくほどに懸念される衝撃波の発生を抑止しつつ、発光部21におけるエキシマレーザガスの流速を初期の亜音速に制御することが可能となる。従って、枯渇しがちなエキシマレーザガスを衝撃波の発生を懸念することなく迅速に補給することができ、長時間の安定な発光を維持するエキシマレーザ発振装置が実現される。
【0533】
ガス供給路構造11には、第6の参考例で説明したノズルシールド7014が設けられている。ノズルシールド7014は、マイクロ波が所定の大きさ以下の開口を通過することができないという性質を利用したシールドである。放出されるマイクロ波の周波数に対してノズルシールド7014の開口を設定することでスロット7010から放出されるマイクロ波を空間的に閉じ込めることが可能となる。
【0534】
そして、ノズルシールド7014の延在する方向をガス供給路構造11に流れるレーザガスの方向と同一とすることで、マイクロ波を遮蔽しつつ、ガス供給路構造11からのレーザガスの供給を行うことができる。
【0535】
従って、ノズルシールド7014がレーザガスの流れを妨げることはなく、ラバルノズル型のガス供給路構造11を用いて超高速ガス置換を行った場合にレーザガス流に抵抗を生じさせることはない。従って、圧力損失の発生を抑止することができる。
【0536】
そして、ノズルシールド7014によってスロット7010上に形成されるプラズマ7011の拡散を抑止することができ、生成されたプラズマ7011をスロット7010の両脇のノズルシールド7014間の間隙に確実に閉じ込めることが可能である。
【0537】
また、ラバルノズル型の導波管12とガス供給路構造11との間の金属壁には、第1の参考例で説明したマイクロ波の通路3011が形成されている。これにより、スロット7010から放出されたマイクロ波は、金属壁に規制された通路3011を伝播することで徐々に平面波に近づき、通路を通過してレーザ管内に放出されるときには、その波面は各スロット7010に沿った全体にわたってほぼ平面様形状とすることができる。
【0538】
従って、レーザ管内のエキシマレーザガスには、ほぼ均一の平面波とされたマイクロ波が到達することになり、レーザ管の長手方向にわたって均一なプラズマ放電が実現され、レーザ発光を均一することができる。
【0539】
更に、本実施形態におけるレーザ発振装置においては、RF(高周波)予備電離を行うための電極7030がガス供給路構造11に近接して設けられている。ここで、電極7030はスロット7010の位置に対応して設けられている。
【0540】
レーザガスは、図93に示す矢印Rの方向に沿って流れるが、電極7030によって予備電離を与えることによって、予めレーザガスの励起を行うことができ、発光部21に到達したレーザガスの励起を容易に行うことが可能となる。
【0541】
従って、マイクロ波と電極7030による予備電離の相乗効果により、発光部21においてより確実且つ均一にプラズマ7011を生成することが可能となる。なお、高周波の代わりにX線を用いることも可能であり、マイクロ波を用いてもよい。また、第10の参考例で説明したようなピン電極を用いて予備電離を行ってもよい。更に、ノズルシールド7014に予備電離のための電極を接続することにより、発光部21の近傍でレーザガスを予め励起状態として発光効率を高めることが可能である。
【0542】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態によれば、第1の実施形態で説明したラバルノズル型のガス供給路構造11、第1の参考例で説明したマイクロ波の通路及び第6の参考例で説明したノズルシールドの構造を全て備えることにより、レーザガスを高速に循環させてプラズマの励起を促進することができ、発光部21においてプラズマの拡散を抑止し、更に、導波管12の長手方向の全域において放射エネルギが均一化されたプラズマを生成することが可能となる。
【0543】
なお、本実施形態のレーザ発振装置に対して、先に説明した各参考例の構成を更に付加することにより、各参考例の構成特有の効果を得ることが可能である。
【0544】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について説明する。この第4の実施形態では、上述した各実施形態(及びその諸変形例)で述べたエキシマレーザ発振装置をレーザ光源として有する露光装置(ステッパー)を例示する。図94は、このステッパーの主要構成を示す模式図である。
【0545】
このステッパーは、所望のパターンが描かれたレチクル101に照明光を照射するための光学系111と、レチクル101を通過した照明光が入射して当該レチクル101のパターンをウェハ102の表面に縮小投影するための投影光学系112と、ウェハ102が載置固定されるウェハチャック113と、ウェハチャック113が固定されるウェハステージ114とを有して構成されている。
【0546】
光学系111は、照明光としての高輝度のエキシマレーザー光を発する光源である上述した各実施形態のエキシマレーザ発振装置121と、光源121からの照明光を所望の光束形状に変換するビーム形状変換手段122と、複数のシリンドリカルレンズや微小レンズを2次元的に配置されてなるオプティカルインテグレータ123と、不図示の切替手段により任意の絞りに切替可能とされ、オプティカルインテグレータ123により形成された2次光源の位置近傍に配置された絞り部材124と、絞り部材124を通過した照明光を集光するコンデンサーレンズ125と、例えば4枚の可変ブレードにより構成され、レチクル101の共役面に配置されてレチクル101の表面での照明範囲を任意に決定するブラインド127と、ブラインド127で所定形状に決定された照明光をレチクル101の表面に投影するための結像レンズ128と、結像レンズ128からの照明光をレチクル101の方向へ反射させる折り曲げミラー129とを有して構成されている。
【0547】
以上のように構成されたステッパーを用い、レチクル101のパターンをウェハ102の表面に縮小投影する動作について説明する。
【0548】
先ず、光源121から発した照明光は、ビーム形状変換手段122で所定形状に変換された後、オプティカルインテグレータ123に指向される。このとき、その射出面近傍に複数の2次光源が形成される。この2次光源からの照明光が、絞り部材124を介してコンデンサーレンズ125で集光され、ブラインド127で所定形状に決定された後に結像レンズ128を介して折り曲げミラー129で反射してレチクル101に入射する。続いて、レチクル101のパターンを通過して投影光学系122に入射する。そして、投影光学系122を通過して前記パターンが所定寸法に縮小されてウェハ102の表面に投影され、露光が施される。
【0549】
本実施形態のステッパーによれば、レーザ光源として上述した各実施形態のエキシマレーザ発振装置を用いるので、高出力のエキシマレーザ光の比較的長時間の発光が可能となり、ウェハ102に対する露光を迅速且つ正確に行なうことができる。
【0550】
次に、図94を用いて説明した投影露光装置を利用した半導体装置(半導体デバイス)の製造方法の一例を説明する。
【0551】
図95は、半導体デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、あるいは液晶パネルやCCD等)の製造工程のフローを示す。先ず、ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行なう。ステップ2(マスク製作)では設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。一方、ステップ3(ウェハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウェハを製造する。ステップ4(ウェハプロセス)は前工程と称され、上記の如く用意したマスクとウェハを用いて、フォトリソグラフィー技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と称され、ステップ4によって作製されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンプリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージンク工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
【0552】
図96は上記ウェハプロセスの詳細なフローを示す。ステップ11(酸化)ではウェハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)ではウェハ表面に気相反応を用いて導電膜や絶縁膜を形成する。ステップ13(PVD)ではウェハ上に導電膜や絶縁膜をスパッタリングや蒸着によって形成する。ステップ14(イオン打込み)ではウェハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウェハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では上記説明した投影露光装置によってマスクの回路パターンをウェハに焼付露光する。ステップ17(現像)では露光したウェハを現像する。ステップ18(エッチング)では現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)ではエッチングが終了して不要となったレジストを除去する。これらのステップを繰り返し行なうことによって、ウェハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0553】
この製造方法を用いれば、従来は製造が難しかった高集積度の半導体デバイスを容易且つ確実に高い歩止まりをもって製造することが可能となる。
【0554】
【発明の効果】
本発明によれば、以下に列挙する諸効果を奏する。
【0555】
(1)簡易な構造で音速に近い程の高速流を形成しつつも、衝撃波の発生を抑止することを可能とするガス供給路構造(及びガス供給方法)を提供することが可能となり、特にこのガス供給路構造をエキシマレーザ発振装置に適用することにより、枯渇しがちなエキシマレーザガスを衝撃波の発生を懸念することなく迅速に補給することができ、長時間の安定な発光を維持することが可能となる。
【0556】
(2)スロットアレイ構造を採用するも、レーザ管の長手方向にわたり全体的に均一な電磁波の放射が実現され、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光が可能となる。
【0557】
(3)スロットアレイ構造を採用するも、個々の微小間隙(スロット)の長手方向にわたり全体的に均一な電磁波の放射が実現され、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光が可能となる。
【0558】
(4)個々のスロット上から所定範囲外へプラズマが拡散することを抑止できる。従って、エネルギー損失を極力抑えた均一なレーザ発光を可能とするレーザ発振装置、このレーザ発振装置を備えた高性能の露光装置、この露光装置を用いた高品質なデバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施形態によるエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図2】 図1を更に模式的に示した模式図である。
【図3】 第1の実施形態によるエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図4】 ガス供給路構造の発光部に設けられる上下幅調整手段を示す模式図である。
【図5】 ガス供給路構造において、(流出口断面積/発光部断面積)と(流出口圧力/流出口圧力)との関係を示す特性図である。
【図6】 ガス供給路構造の各部位(流入口、発光部、流出口)における速度、マッハ数、ガス圧力、ガス密度、ガス温度、及び音速との各条件の関係を示す図である。
【図7】 ガス供給路構造において、(流入口圧力/発光部圧力)と(発光部の流速)との関係を示す特性図である。
【図8】 ガス供給路構造において、(任意部位圧力)/(発光部圧力)と(任意部位温度)/(発光部温度)との関係を示す特性図である。
【図9】 ガス供給路構造の制御において、各条件の関係を総括的に示すブロック図である。
【図10】 第1の実施形態に係る変形例1のエキシマレーザ発振装置のガス供給路構造のみを示す断面図である。
【図11】 第1の実施形態に係る変形例2のエキシマレーザ発振装置のガス供給路構造のみを示す断面図である。
【図12】 ガス供給路構造の各部位(流入口、発光部、流出口)における速度、マッハ数、ガス圧力、ガス密度、ガス温度、及び音速との各条件の関係を示す図である。
【図13】 第1の実施形態に係る変形例3のエキシマレーザ発振装置の概略構成を示す側断面図である。
【図14】 第1の実施形態に係る変形例3におけるガス供給路構造の他の例を示す側断面図である。
【図15】 第1の参考例によるエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図16】 導波管の具体的な様子を示す模式図である。
【図17】 導波管の具体的な様子を示す概略断面図である。
【図18】 導波管のスロット位置とマイクロ波により生じる電流密度との関係を示す模式図である。
【図19】 スロットからマイクロ波が放出される様子を示す概略断面図である。
【図20】 変形例1における導波管の具体的な様子を示す概略断面図である。
【図21】 変形例2における導波管の具体的な様子を示す概略断面図である。
【図22】 変形例2における導波管の具体的な様子を示す概略断面図である。
【図23】 変形例3における導波管の具体的な様子を示す概略断面図である。
【図24】 変形例3における導波管の他の例の具体的な様子を示す概略平面図である。
【図25】 変形例4における導波管の具体的な様子を示す概略断面図である。
【図26】 変形例3における導波管の他の例の具体的な様子を示す概略断面図である。
【図27】 変形例5における導波管の具体的な様子を示す模式図である。
【図28】 第2の参考例によるエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図29】 導波管におけるスロットの形成部位と導波管の壁面を流れる電流の密度との関係を示す模式図である。
【図30】 第2の参考例において、スロットから放出されるマイクロ波の強度分布を示す特性図である。
【図31】 第2の参考例の他の例での導波管におけるスロットの形成部位と導波管の壁面を流れる電流の密度との関係を示す模式図である。
【図32】 第2の参考例による導波管に形成されたスロットについて、スロット位置と放射エネルギー又は定在波強度との関係を示す特性図である。
【図33】 第3の参考例によるエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図34】 導波管において、スロットの形成面(E面)を示す斜視図である。
【図35】 空間シフト、位相シフトがなされた場合の各々についてマイクロ波の定在波の相対関係を示す特性図である。
【図36】 第3の参考例によるエキシマレーザ発振装置において、通常配置の導波管近傍を示す模式図である。
【図37】 第3の参考例によるエキシマレーザ発振装置において、λgピッチでλg/2の空間シフト及びλg/2の位相シフトを行なった場合の導波管近傍を示す模式図である。
【図38】 導波管において、スロットの形成面(H面)を示す斜視図である。
【図39】 第3の参考例によるエキシマレーザ発振装置の変形例において、通常配置の導波管近傍を示す模式図である。
【図40】 第4の参考例によるエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図41】 H面にスロットが形成された導波管を示す模式図である。
【図42】 変形例1における金属壁により通路が形成されてなる導波管近傍を示す概略断面図である。
【図43】 変形例2における金属壁により通路が形成されてなる導波管近傍を示す概略断面図である。
【図44】 変形例3における金属壁により通路が形成されてなる導波管近傍を示す概略断面図である。
【図45】 変形例3における一対の導波管を示す模式図である。
【図46】 変形例4の他の例における金属壁により通路が形成されてなる導波管近傍を示す概略断面図である。
【図47】 変形例4の更に他の例における金属壁により通路が形成されてなる導波管近傍を示す概略断面図である。
【図48】 変形例5において、導波管のE面に金属ネジが配された様子を示す概略断面図である。
【図49】 変形例6において、スロット内に誘電体が充填された様子を示す概略断面図である。
【図50】 変形例6において、スロット板の鋭角部位の電界強度/中央部位の電界強度の比を示す特性図である。
【図51】 第5の参考例に係るエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図52】 第5の参考例に係るエキシマレーザ発振装置の導波管の具体的な様子を示す模式図である。
【図53】 第5の参考例に係るレーザ発振装置における遮蔽構造を示す模式図である。
【図54】 第5の参考例に係るレーザ発振装置における遮蔽構造を示す概略断面図である。
【図55】 第6の参考例に係るレーザ発振装置における遮蔽構造を示す概略断面図である。
【図56】 第7の参考例に係るレーザ発振装置における遮蔽構造を示す模式図である。
【図57】 第7の参考例に係るレーザ発振装置における遮蔽構造を示す概略断面図である。
【図58】 第7の参考例に係るレーザ発振装置における遮蔽構造を示す概略断面図である。
【図59】 第8の参考例に係るエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図60】 第8の参考例に係るエキシマレーザ発振装置の導波管の具体的な様子を示す模式図である。
【図61】 第8の参考例に係るレーザ発振装置におけるスロットを示す概略断面図である。
【図62】 第8の参考例に係るレーザ発振装置におけるスロットを示す概略平面図である。
【図63】 第9の参考例に係るレーザ発振装置におけるスロットを示す概略断面図である。
【図64】 第9の参考例に係るレーザ発振装置におけるスロットを示す模式図である。
【図65】 第9の参考例に係るレーザ発振装置におけるスロットを示す概略平面図である。
【図66】 第10の参考例に係るエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図67】 第10の参考例の実施形態に係るエキシマレーザ発振装置の導波管の具体的な様子を示す模式図である。
【図68】 第10の参考例に係る導波管において、スロット近傍に形成された電極の具体例を示す平面図である。
【図69】 第10の参考例に係る導波管において、スロット近傍に形成された電極の具体例を示す平面図である。
【図70】 第10の参考例において、予備電離補償によりプラズマの励起を均一化する様子を示す模式図である。
【図71】 第10の参考例において、反射鏡を用いて予備電離補償を行う様子を示す模式図である。
【図72】 第11の参考例における紫外線照射機構を示す断面図である。
【図73】 第11の参考例において、紫外線照射を行う位置及び紫外線照射のための透過窓の位置を示す模式図である。
【図74】 第11の参考例において、紫外線照射によりプラズマの励起を均一化する様子を示す模式図である。
【図75】 第12の参考例に係るエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図76】 第12の参考例に係るエキシマレーザ発振装置の導波管の具体的な様子を示す模式図である。
【図77】 第12の参考例に係るスロットと、放射エネルギーを示す模式図である。
【図78】 第12の参考例に係るスロットと、放射エネルギーを示す模式図である。
【図79】 第12の参考例に係るスロットと、放射エネルギーを示す模式図である。
【図80】 第12の参考例において、E面、H面におけるマイクロ波により導波管壁に生じる電流を示す模式図である。
【図81】 第13の参考例に係るスロットと、導波管における配置を示す模式図である。
【図82】 第13の参考例に係るスロットの他の形状を示す模式図である。
【図83】 第13の参考例に係るスロットの他の形状を示す模式図である。
【図84】 第13の参考例に係るスロットの他の形状を示す模式図である。
【図85】 第14の参考例に係る空隙構造を示す模式図である。
【図86】 第14の参考例に係る空隙構造を示す模式図である。
【図87】 第14の参考例に係る空隙構造を示す模式図である。
【図88】 第14の参考例に係る導波管及びスロットを示す斜視図である。
【図89】 第14の参考例に係るスロットの形状を示す概略断面図である。
【図90】 本発明の一実施形態に係るエキシマレーザ発振装置の主要構成を示す模式図である。
【図91】 本発明の第2の実施形態に係るレーザ発振装置を示す斜視図である。
【図92】 第15の参考例に係るレーザ発振装置を示す斜視図である。
【図93】 本発明の第3の実施形態に係るレーザ発振装置を示す斜視図である。
【図94】 第4の実施形態のステッパーを示す模式図である。
【図95】 第4の実施形態のステッパーを用いた半導体デバイスの製造工程のフロー図である。
【図96】 図95におけるウェハプロセスを詳細に示すフロー図である。
【図97】 従来のレーザ発振装置におけるスロット上に形成されるシースを説明するための概略断面図である。
【図98】 従来の導波管の具体的な様子を示す概略断面図である。
【図99】 従来のエキシマレーザ発振装置における、スロット近傍での電界強度分布及びプラズマ強度を示す模式図である。
【符号の説明】
1 レーザチャンバ
2,51 ガス供給手段
3 冷却器
11,41 ガス供給路構造
12 導波管
21,32 発光部
21a,33 上下幅調整手段
22,23 一対の反射構造体
24 窓部
25 ベローズポンプ
25a ベローズ部
25b サーボモータ
26 中空流路
27 低コンダクタンス部
31 ガス供給路構造群
42,43 加熱・冷却手段
101 レチクル
102 ウェハ
111 光学系
112 投影光学系
113 ウェハチャック
114 ウェハステージ
121 エキシマレーザ発振装置
122 ビーム形状変換手段
123 オプティカルインテグレータ
124 絞り部材
125 コンデンサーレンズ
127 ブラインド
128 結像レンズ
129 折り曲げミラー

Claims (4)

  1. 導波管から導波管壁に形成された複数の微小間隙を介してマイクロ波を、レーザガスが流入出する流路を形成するガス供給構造に導入することにより前記流路内でレーザガスを励起させてプラズマを生成し、前記プラズマから発せられる光を共振させてレーザ光を発生させるレーザ発振装置であって、
    前記流路はレーザ光の発光部で最も幅狭となる形状とされており、
    前記レーザガスを前記流路に対して双方向に流入出させるガス供給手段と、
    前記ガス供給手段により供給されるレーザガスを前記流路途中の前記発光部で亜音速に制御するガス供給制御手段を備え、
    前記ガス供給制御手段は、前記発光部の温度に応じて、前記流路の一方の端部であって前記レーザガスが流入する部分である流入口と前記流路の他方の端部であって前記レーザガスが流出する部分である流出口との圧力比を流出口断面積と発光部断面積の断面積比で与えられる臨界圧力比以下とするように前記流入口或いは前記流出口の圧力を調整し、前記流路には、前記レーザガスの流れる方向に向かって形成された開口からなる前記プラズマの遮蔽構造を備えたことを特徴とするレーザ発振装置。
  2. 照明光を発する光源である請求項1に記載のレーザ発振装置と、
    所定パターンの形成されたレチクルに前記レーザ発振装置からの照明光を照射する第1光学系と、
    前記レチクルを介した照明光を被照射面に照射する第2光学系とを備え、
    前記被照射面に前記レチクルの所定パターンを投影し露光を行うことを特徴とする露光装置。
  3. 被照射面に感光材料を塗布する工程と、
    請求項2に記載の露光装置を用いて、前記感光材料が塗布された前記被照射面に所定パターンの露光を行う工程と、
    前記所定パターンの露光が行われた前記感光材料を現像する工程とを備えることを特徴とするデバイスの製造方法。
  4. 前記被照射面をウェハ面とし、当該ウェハ面に半導体素子を形成することを特徴とする請求項3に記載のデバイスの製造方法。
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