JP4294270B2 - フラジェリンタンパク質による病害抵抗性植物を作出する方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、病原体に抵抗性の植物を作出する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
植物は、動物に見られるような免疫機構を保有していないが、植物に特有の機構で自らを病原体から防御している。高等植物の過敏感反応(hypersensitive response,HR)は、感染部位の植物細胞が速やかに自殺し病原体を局所的に封じ込めるという、病原体侵入に対する植物側の動的な抵抗性反応である。この反応は、非親和的な宿主―病原体相互作用、および非宿主―病原体相互作用の結果として生じる事が知られている。またここに見られる細胞の自殺は局所的なプログラム細胞死として捉えることが出来る(Danglら(1996)Plant Cell 8:1793−1807)。HRを引き起こす機構に加え、活性酸素種の生成、細胞壁の強化、ファイトアレキシンの生産、PRタンパク質などの防御関連タンパク質の生合成といった、他の防御反応も誘導される(Hammond−Kosack and Jones(1996)Plant Cell 8:1773−1791)。この様な局所的な防御応答に加えて、多くの場合、植物の非感染部分にもPRタンパク質の蓄積などの防御反応が拡大し、結果として植物全体が抵抗性になる。これは全身獲得抵抗性(systemic acquired resistance,SAR)と呼ばれ、数週間またはそれ以上持続し、植物全体が二次感染に対して抵抗性となる(Sticher ら(1997)Annu Rev Phytopathol 35:235−270)。
【0003】
以上のような高度に組織化された防御反応のスイッチをオンにする植物側の最初の反応は、侵入病原体から直接、あるいは間接的に生成される‘エリシター’と呼ばれる分子の認識である。そしてその後の急激な活性酸素種の生成や、可逆的なタンパク質リン酸化といった複雑なシグナルカスケードが防御応答の初期反応として重要であると考えられている(Yangら(1997)Genes Dev 11:1621−1639)。エリシターの種類は多岐に渡っており、多くの菌類の細胞壁成分であるキチン・キトサンやグルカンの分解産物であるオリゴ糖類、あるいは植物の細胞壁由来のオリゴガラクツロン酸などの、病原体の種類に依存しない、いわゆる非特異的エリシターと、AVR9など病原菌側の非病原性遺伝子産物(Avr遺伝子産物)などのに特異的で、病原体の種類に依存する特異的なエリシター、あるいはエリシチン、ハーピンなどその中間の特異性をもつタイプのエリシターがある(Boller(1995)Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 46:189−214)。
【0004】
フラジェリンは細菌鞭毛フラジェラの構成要素である。Felixら(Plant J 18:265−276,1999)は、トマト培養細胞系を用い、培地のアルカリ化を抵抗性反応の指標として、Pseudomonas syringae pv tobaciから、32kDaのタンパク質を精製した。アミノ酸配列からこのタンパク質はフラジェリンと同定した。さらに彼らは鞭毛細菌のフラジェリンのアミノ酸一次構造中で最も保存されたN末端側の15ないし22残基のペプチドが、トマトをはじめ、タバコ,アラビドプシスなど幾つかの植物種において同様の反応を誘導することを突き止めた。これらのペプチドは、オキシダティブバーストやエチレンの生成も誘導し,タンパク質性のエリシターとしては初めての非特異的エリシターであった。最近Asaiら(Nature 415:977−983,2002)は、上述の22残基のペプチド(flg22)が、フラジェリンレセプターFLS2(Gomezら、Mol Cell 5:1003−1011,2000)依存的に活性化させる、MAPキナーゼカスケードを解明した。さらに、それらMAPキナーゼ、および多くの防御関連遺伝子の転写因子であるWRKY29を、アラビドプシスで一過的に発現させると、細菌と糸状菌に対する抵抗性が増強されることを報告した。
【0005】
Flg22はイネの培養細胞に細胞外のアルカリ化は引き起こさない(Felixら、Plant J 18:265−276,1999)。Cheら(J Biol Chem 275:32347−32356,2000)は、単子葉植物を宿主とする植物病原細菌Acidoborax aveane N1141株(シコクビエの褐条細菌病)から、イネの培養細胞に細胞死を誘導する50kDaのタンパク質を同定した。アミノ酸配列からこのタンパク質はフラジェリンであることを突き止めた。しかしながら、これまでに、フラジェリンそのものを植物に導入、形質転換体を解析した例はない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、病害抵抗性を有する植物を創製することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、イネに過敏感細胞死を誘導するAcidoborax aveane N1141株由来のフラジェリン(N1141フラジェリン)をコードする遺伝子をイネに導入、形質転換体を解析し、フラジェリンの蓄積した系統では、イネの最重要病害であるいもち病菌に対する抵抗性が増強されることを見いだした。本発明は、これを利用した病害抵抗性を有する植物を創製する方法に関する。
【0008】
ここで、「病害抵抗性」とは、ある病気にかかりづらくなることをいう。具体的には病斑数の減少、病斑サイズの減少、あるいは病徴の軽減などを挙げることができる。本発明においてはフラジェリン遺伝子を導入した個体とそうでない個体を比較した場合に、遺伝子を導入した個体の方が、上記に例示される病気にかかりづらくすることをいう。
【0009】
本発明の広範な態様において、本発明は植物に、植物中でエリシター活性を有するフラジェリンまたはその一部を構成するペプチドをコードする遺伝子(以下、フラジェリン遺伝子と総称する)を導入することにより、病害抵抗性を付与し、病害抵抗性植物を作出する方法を提供する。別の広範な態様において、本発明の方法により植物に導入されるフラジェリン遺伝子は植物細胞ではたらくプロモーターと接続されている。
【0010】
本発明の一態様において、植物に導入するフラジェリン遺伝子は、植物病原細菌(Acidoborax aveane N1141株)由来のフラジェリンをコードする遺伝子であり、そのフラジェリンタンパク質は配列番号1のアミノ酸配列を有する。したがって一態様において、植物に導入するフラジェリン遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列をコードする遺伝子である。望ましい態様において、植物に導入する遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする遺伝子である。さらに望ましい態様において、植物に導入する遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列とすくなくとも70%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードする遺伝子である。別の態様において、植物に導入する遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列をコードする遺伝子である。
【0011】
ここで、上記アミノ酸の「一部」とは、A.avenaeのフラジェリンのアミノ酸配列またはその遺伝子のDNA配列と相同性のある分子の一部をいう。FelixらのPseudomonasのフラジェリンの論文では、最小で15残基のペプチドが、外から与えたときにエリシター活性を持つということから、上記アミノ酸配列の15アミノ酸以上をいう。さらに具体的には、配列番号1の第37〜51番目の15アミノ酸を挙げることができる。
【0012】
また、配列番号2のDNA配列は、植物病原細菌(Acidoborax aveane N1141株)由来のフラジェリン(アミノ酸配列は配列番号1に示す)をコードする遺伝子を示す。本発明の方法において、配列番号2のDNA配列を有する遺伝子を植物に導入してもよく、望ましくは、配列番号2のDNA配列と90%以上の相同性、さらに望ましくは70%以上の相同性を有するDNA配列を有する遺伝子を導入してもよい。別の態様において植物に導入する遺伝子は、配列番号2のDNA配列において、1または複数の塩基が置換、欠失、挿入、および/または付加されたDNA配列からなる遺伝子である。
【0013】
ここで、上記DNAの「一部」とは、A.avenaeのフラジェリンのアミノ酸配列またはその遺伝子のDNA配列そのものの一部をいう。FelixらのPseudomonasのフラジェリンの論文では、最小で15残基のペプチドが、外から与えたときにエリシター活性を持つということから、上記DNAの45塩基以上をいう。さらに具体的には、配列番号2では、第109〜153番目の45塩基を挙げることができる。
【0014】
また、「置換、欠失、挿入、付加」において一回の実験でできる数値は10個以下である。これらは、部位特異的突然変異誘発法により、変換できる(例えばNucl.Acids Res.10:6487−6500、1982)。さらに、「欠失」とは、塩基配列の端から塩基を欠失したもの及び塩基配列の途中の塩基が欠失したものも含まれる。
【0015】
また、配列番号2記載のDNAとストリンジェント(High stringency)な条件でハイブリダイズさせるには、5×denhardt solution、5×SSC、0.5%SDS又は0.1%SDSといった一般的なハイブリダイゼーション溶液を用いて32〜68℃で、好ましくは50℃と60℃の2段階、又は50℃、55℃、60℃、65℃の4段階で反応を行えばよい。この条件はホルムアミドが存在する場合は、ホルムアミドが存在しない場合よりも若干温度を下げて行うことができる。また、マイルド(low stringency)な条件でハイブリダイズさせるには、30% deionizedformamide、0.6 M NaCl、0.04 M Sodium phosphate(pH 7.4)、2.5 mM EDTA、1% SDSで反応を行えばよい。さらに、ハイブリダイズしたものを洗浄するときの条件は、0.2又は2×SSC、0.1%SDS、温度20−68℃で行うことができる。ストリンジェント(high stringency)な条件にするかマイルド(low stringency)な条件にするかは、Wash時の塩濃度又は温度で差を設けることができる。塩濃度でハイブリダイズの差を設ける場合には、high stringency wash bufferとして0.2×SSC、0.1%SDS、low stringency wash bufferとして2×SSC、0.1%SDSで行うことができる。また、温度でハイブリダイズの差を設ける場合には、high stringencyの場合は68℃、Moderate stringencyの場合は42℃、low stringencyの場合は室温(20−25℃)でいずれの場合も0.2×SSC、0.1%SDSで行えばよい。
【0016】
フラジェリンは、鞭毛細菌に広く分布するタンパク質であり、先述のAcidoborax aveane N1141株由来のフラジェリン以外にも、たとえば、シュードモナス シリンガエ pv タバチ(Pseudomonas syringae pv tabaci)、シュードモナス アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、ヘリコバクター ムステラエ(Helicobacter mustelae)、カンピロバクター コリ(Campylobacter coli)、ビブリオ パラハエモリト(Vibrio parahaemolyt)、セラチア マルセセンス(Serratia marcescens)、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)、バシルス スブチリス(Bacillus subtilis)由来のフラジェリンタンパク質が存在する。これらのフラジェリンタンパク質をコードする遺伝子の本発明の方法への使用も本発明の範囲内である。
【0017】
本発明において、フラジェリン遺伝子を植物細胞で機能するプロモーターに接続して植物に導入する。本発明では、フラジェリン遺伝子を植物細胞で機能するプロモーターに接続することで、その植物が 病害抵抗性になることを初めて示した。後述の実施例においては、植物細胞で機能するプロモーターとして、構成的発現をするカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターを用いたが、これに限定されない。構成的プロモーター(病害やストレス応答性が低く、組織・時期特異性が高くないプロモーター)とフラジェリンの組み合わせによる病害抵抗性の付与技術が開示されれば、以下に述べる実施例に示したカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター以外の構成的プロモーター、例えば、ユビキチンプロモーター(Cornejo et al.(1993)Plant Mol Biol 23:567−581)、アクチンプロモーター(McElroy et al.(1990)Plant Cell 2:163−171)、アルファチューブリンプロモーター(Carpenter et al.(1993)Plant Mol Biol 21:937−942)、Scプロモーター(Schenk et al.(1999)Plant Mol Biol39:1221−1230)等の構成的プロモーター、あるいは、PPDK(Matsuoka et al.(1993)Proc Natl Acad Sci USA 90:9586−9590)やPEPC(Yanagisawa and Izui(1989)J Biochem 106:982−987,Matsuoka et al.(1994)Plant J 6:311−319)、Rubisco(Matsuoka et al.(1994)Plant J 6:311−319)等の光合成関連遺伝子の緑色器官で高発現するプロモーターとフラジェリン遺伝子との組み合わせにおいても病害抵抗性の付与が期待される。また、病害誘導性プロモーター、例えば、PALプロモーター(Zhu et al.(1995)Plant Mol Biol 29:535−550)、Prp1プロモーター(特表平10−500312)、hsr203Jプロモーター(Pontier et al.(1994)Plant J 5:507−521)、EAS4プロモーター(Yin et al.(1997)Plant Physiol 115:437−451)、 PR1b1プロモーター(Tornero et al.(1997)Mol Plant Microbe Interact 10:624−634)、tap1プロモーター(Mohan et al.(1993)Plant Mol Biol 22:475−490)、AoPR1プロモーター(Warner et al.(1993)Plant J 3:191−201)等のプロモーターと、フラジェリン遺伝子との組み合わせにおいても病害抵抗性の付与が期待される。このような組み合わせを用いた方法も本発明に含まれるものである。
【0018】
本発明の方法は、以下の過程を含む。
(a)フラジェリン遺伝子を、先述のプロモーターの下流、およびターミネーターの上流に接続して、発現カセットを構築し、
(b)上記の発現カセット、および選択マーカー遺伝子を有するプラスミドを構築し、
(c)これを植物ゲノム中に導入して植物の形質転換を行い、
(d)形質転換された植物細胞を選択マーカーによりスクリーニングし、
(e)再生培地で完全な植物体(T0世代)になるまで培養して、病害抵抗性植物を得る、さらには、
(f)上記T0世代より種子(T1世代)を得て、その種子を育成して病害抵抗性植物を得る。
【0019】
ここで、フラジェリン遺伝子を植物ゲノムに導入するにあたっては、当業者に既知の形質転換法、たとえば、アグロバクテリウム法、エレクトロポレーション法、PEG法、マイクロインジェクション法、またはパーティクルガン法などにより形質転換を行ってもよい。望ましくは、アグロバクテリウム法による形質転換法を用いる。
【0020】
また、ここで用いられる選択マーカー遺伝子は当業者に既知の選択マーカー遺伝子、たとえば、ハイグロマイシン耐性遺伝子やカナマイシン耐性遺伝子などを用いてもよい。
【0021】
プロモーター、ターミネーターは植物細胞で機能するものであれば特に限定されないが、構成的発現をするプロモーターとしては、上記ベクターに予め組み込まれている35Sプロモーターの他に、アクチン、ユビキチン遺伝子のプロモーターなどが例示される。しかしながら、より好適には誘導性のプロモーターを組み入れて用いてもよい。これらのプロモーターの下流に開始コドン、終始コドン、ターミネーター及び複製可能単位等を所望により導入することが好ましい。
【0022】
また、形質転換を行うにあたりアグロバクテリウム菌を用いる場合の培地、菌の濃度、感染時間、培養時間等は、WO94/00977、WO95/06722、WO98/17813に記載のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本発明のDNA断片を用いて病害抵抗性植物を作出する目的においては、植物形質転換用ベクターが有用である。植物用ベクターとしては、植物細胞中で当該遺伝子を発現し、当該タンパク質を生産する能力を有するものであれば特に限定されないが、例えば、pBI221、pBI121(以上Clontech社製)、及びこれらから派生したベクターが挙げられる。また、特に単子葉植物の形質転換には、pIG121Hm、pTOK233(以上Hieiら、PlantJ.、6、271−282(1994))、pSB424(Komariら、Plant J.、10、165−174(1996))などが例示される。
【0024】
さらに、本発明の方法により病害抵抗性を付与する植物は、たとえばイネであってもよいが、その他の植物として、コムギ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシ、サトウキビ、ソルガム、ダイズ、アズキ、タマネギ、およびニンニクなどの単子葉植物、ワタ、ヒマワリ、ピーナッツ、トマト、ジャガイモ、サツマイモ、エンドウ、レタス、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、カブ、ダイコン、ホウレンソウ、ニンジン、ナス、カボチャ、キュウリ、リンゴ、ナシ、メロン、イチゴ、ブドウ、タバコ、シロイヌナズナ、ペチュニア、キク、カーネーション、セントポーリア、およびヒャクニチソウなどの双子葉植物が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明において、フラジェリン遺伝子の導入により植物に付与された病害抵抗性は、たとえば、イネいもち病に対しての抵抗性であるが、他の病害として、紋枯れ病(Rhizoctonia solani, AG−1),ばか苗病(Gibberella fujikuroi),ごま葉枯病(Bipolarisleersiae),こうじ病(Claviceps virens)などの菌類病、白葉枯病(Xanthomonas oryzae pv.oryzae)、褐条病(Acidoborax aveane)、もみ枯細菌病(Burkholderia glumae),苗立枯細菌病(Burkholderia plantarii)などの細菌病、縞葉枯病(rice stripe virus)、萎縮病(rice dwarf virus)、黄葉病(rice transitory yellowing virus)などのウイルス病などを含む、種々の病害に抵抗性である。
【0026】
本発明の一態様として植物病原細菌(Acidoborax aveane N1141株)由来のフラジェリンをコードする1141−fla1遺伝子(配列番号2)を、構成的発現をするカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターに接続したコンストラクト35S−1141−fla1を構築し、当業者に既知の遺伝子導入技術であるアグロバクテリウム法でイネ品種コシヒカリに該コンストラクトを導入する。再生個体におけるフラジェリンの発現は抗フラジェリン血清を用いたウエスタン分析によって確認できる。再生個体においては、フラジェリンを総可溶性タンパク質あたり、0.005〜0.15%蓄積する個体が得られる。また、これら再生個体のうち、フラジェリンの発現する個体の種子稔性はほとんどのもので正常であり、それら再生個体から種子を得ることができる。
【0027】
従来は、構成的発現をするプロモーターを用いてタンパク質性エリシターを植物ゲノムへの導入することは、植物の過敏感反応(hypersensitive responce:HR)を常に引き起こすことになり、これはつまり、植物細胞をプログラム細胞死へと導くこととなるため、植物の発育に重大な問題を生じるであろうと考えられていた。そのため、タンパク質性エリシターの植物ゲノムへの導入による抵抗性植物の作出には、誘導発現をするプロモーターを用いなければ困難であろうと考えられていた。しかしながら、本発明においては、フラジェリン遺伝子の導入に当たって構成的発現をするプロモーターを用いて、フラジェリンタンパク質を発現するイネの作出に成功した。このフラジェリン発現個体の葉には発育に伴い白い斑点が現れ、また多くの個体に多少の草丈の低下がみられたが、種子稔性は正常であった。したがって、本発明の方法においては、誘導発現をするプロモーターに限定されることなく、構成的発現をするプロモーターであっても使用できる。すなわち、植物細胞で働く全てのプロモーターが本発明の方法において使用できる。
【0028】
フラジェリンを高いレベルに蓄積した個体では、PAL遺伝子の発現量は、フラジェリンを蓄積していない組み換え体に比べて高くなる。PAL遺伝子は障害や病原菌の細胞壁由来のエリシターなどによって、転写が誘導される(Zhuら、(1995)Plant Mol Biol 29:535−550)、防御関連遺伝子のひとつである。したがって、フラジェリン導入によって形質転換イネには防御機構の少なくとも一部が作動していることが示唆される。
【0029】
T0世代(形質転換当代)で、フラジェリンタンパク質が蓄積したイネ個体を選抜し、その自殖後体(T1)の種子を得てもよい。T1世代の形質転換体について、病害の一態様としてイネいもち病菌(糸状菌)を接種し、抵抗性の検定を行ってもよい。形質転換イネにおいてはフラジェリン1141−fla1が発現した大半の系統において、いもち病接種後のいもち病の病斑数または病斑面積率をフラジェリンが発現していないコシヒカリなどの原型品種と比較して統計的に有意に低減させることができる。一方T0世代でフラジェリンの発現のみられなかった1系統ではこのような低減は認められない。病原接種後の病斑の確認は、接種6日後以内、もしくは、接種16日後以内に行ってもよい。T1世代の個体別にウエスタン分析を行ったところ、フラジェリン発現量と抵抗性には正の相関が見られる。したがって、フラジェリンの発現によってイネの病害抵抗性を増強することができる。
【0030】
【実施例】
実施例1.遺伝子構築と植物の形質転換
翻訳開始コドンの直上流にXhoI部位が、翻訳終止コドンの直下流に制限酵素HindIII部位が付加された、Acidovorax avenae N1141系統のフラジェリン遺伝子(N1141−fla1、1479bp、Gene Bankアクセッション番号:AB040139、配列表の配列番号1)が組み込まれたプラスミドベクター(Cheら、J Biol Chem(2000)275:32347−32356)を、制限酵素XhoI、HindIII(宝酒造社)で二重消化し、およそ1.5kbのN1141−fla1遺伝子を切り出し、Klenow fragment(宝酒造社)により平滑末端化した。一方スーパーバイナリ―ベクターpSB21(35S pro−GUS−NOS ter,Komariら(1996)Plant J. 10:165−174)を制限酵素XbaI、SacIで消化、GUS遺伝子を除去し、T4DNAポリメラーゼ(宝酒造社)で平滑末端化した。CIAP(ベーリンガー社)処理を行い、末端部を脱リン酸化した。ここへ上述のN1141−fla1遺伝子を組み込み、p3511Flaを得た。
【0031】
pSB11(Komariら、上述)を基にハイグロマイシン耐性遺伝子カセットをもつ中間ベクターpKY211を作成した。トウモロコシユビキチンプロモーターとユビキチンイントロン(Ubi pro−Ubi in)に、ノパリン合成酵素のターミネーター(NOS ter)を接続した。このコンストラクト(Ubi pro−Ubi in−NOS ter)のUbi inとNOSterの間にハイグロマイシン耐性遺伝子(hptII)を挿入し、Ubi pro−Ubi in−hptII−NOS terを作成した。さらにこのコンストラクトをpSB11のHindIII、EcoRI部位に挿入することによりpKY205を得た。最後にTransformerTM site−directed mutagenesis kit(Clontech社)を用いてpKY205のEcoRI部位の直上流にHindIII部位を挿入し、pKY211を得た。
【0032】
p3511FlaをHindIII消化、脱リン酸化後、pKY211由来3.3kb HindIII断片(ユビキチンプロモーター−hptII−NOS)をライゲーションし、選択マーカー遺伝子(hptII、ハイグロマイシン耐性遺伝子)を組み込んだ。以上の手順で、コンストラクトp3511FlaHpt(35S pro−1141−fla1−NOSter + Ubi pro−Ubi in−hptII−NOS ter)を構築した。カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターは構成的な高発現プロモーターであり、本コンストラクトで形質転換されたイネは全身にフラジェリンを蓄積することが予想される。本コンストラクトを含む大腸菌LB392株と、アクセプターベクターpSB1(Komari et al.(1996)Plant J.10:165−74.)を含むアグロバクテリウムLBA4404株、さらにヘルパープラスミドpRK2013を含む大腸菌HB101株を混合し、三菌系接合によりフラジェリンを含むコンストラクトをアグロバクテリウムへ導入した。イネの形質転換はHiei et al.(1994)(Plant J. 1994 6:271−282)の方法に従い、アグロバクテリウムを用いて水稲品種コシヒカリの未熟胚由来カルスを形質転換した。
【0033】
実施例2.形質転換体の解析
a)ウェスタン分析によるフラジェリン発現の確認
50個体の再分化植物を得た。形質転換当代(T0)でウェスタン分析を実施した。5−6葉期の形質転換イネの葉(長さ3−4cm)を、0.1M HEPES−KOHpH7.5バッファー中で乳鉢を用いてすり潰した。15000xgで10分間遠心した後の上清をタンパクサンプルとした。タンパク質の定量はBio−Rad Protein Assay kit(BIO−RAD社)により行なった。およそ30(gのタンパク質をLaemmni(1970)Nature 227:680−685の方法に従い、SDS−PAGE法により分画した。ゲルは12.5% PAGEL(ATTO社)を使用した。泳動後、ゲル中のタンパク質をPVDF膜(millipore社)に転写した。PVDF膜は0.5%スキムミルクを含む1xTBSバッファー中で30分間処理した後、1141フラジェリン抗体(Cheら、J Biol Chem(2000)275:32347−32356)を1/1000(v/v)含む同バッファー中で室温で一晩振とうした。二次抗体としては、ヤギ抗ウサギIgGコンジュゲートペルオキシダーゼ標識(MBL社)もしくはヤギ抗ウサギIgGアルカリフォスファターゼコンジュゲート(BIO−RAD社)を1/1000(v/v)の濃度で使用した。発色系は、それぞれHRP Color Development Reagent(BIO−RAD社)、alkaline phosphatase substrate kit II(Vector laboratories社)を用いた。発現タンパク量は、濃度の分かっている大腸菌発現フラジェリンタンパクサンプル(Cheら、J Biol Chem(2000) 275:32347−32356)の発色度合いと、デンシトメーター(モデルGS−670、BIO−RAD社)を用いて比較することにより算出した。T0世代のウェスタン分析結果を表1にまとめ、具体例を図1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
およそ2/3の形質転換体で明らかなフラジェリンタンパク質の蓄積が検出された。これらフラジェリン発現個体の葉には発育に伴い白い斑点が現れた。また多くの個体に多少の草丈の低下が見られたが、種子稔性は正常であったので、フラジェリン発現個体のT1種子を得ることが出来た。一部の個体に関しては1141−fla1遺伝子(XhoI,HindIII 1.5kb断片)をプローブとしたゲノミックサザン分析により、導入したフラジェリン遺伝子のコピー数を推定した。
【0036】
b)ノーザン分析による防御関連遺伝子の発現分析
フラジェリンを発現した形質転換体において、防御関連遺伝子の発現が誘導されているか否かを調べるため、フラジェリンの発現した形質転換体4系統(D/11−20−2、D/11−24−3、D/11−27−1、D/11−27−2)、およびpSB24(35S pro−IGUS−NOS ter、Komari ら(1996)Plant J. 10:165−174)を導入した対照組換え体2系統(Q1、Q2)の葉から、フェノール−SDS法によってRNAを抽出し、PAL遺伝子をプローブとしたノーザン分析を行なった。PAL遺伝子は以下のようにクローニングした。OSPAL(Accession No.X16099)の配列を基にcoding regionの全長を伸ばすプライマーを設計し、Oc cultured cell (Oryza sativa L. C5924(Baba,A.et al.(1986)Plant Cell Physiol.27,463− 472))から、RT−PCRによりPAL遺伝子をクローニングした。塩基配列の解析を行いその遺伝子がPALであることを確認した。PAL遺伝子は傷害や、病原菌の細胞壁由来のエリシターなどによって、転写が誘導されることが報告されている(Zhu etal.1995 Plant Mol Biol 29:535−550)。
【0037】
形質転換体および対照系統から抽出したtotal RNA(15(g)を1x MOPS buffer(20mM MOPS−KOH、pH7.0、5mM sodium acetate,and 1mM EDTA)中で、ホルムアルデヒドを含む1.5%アガロースゲルで電気泳動したのち、ナイロンメンブレンHybond N+(Amersham)に転写した。PAL遺伝子プローブは上述のPCR産物をmicrocon YM−30 (Millipore)で精製した後、[32P]−dCTPでラベルしたものを使用した。
【0038】
その結果、調査した4系統全てにおいて、対照と比較してPAL遺伝子の転写物の蓄積量が多かった(図2)。このことから、フラジェリン導入によって形質転換イネには防御機構の少なくとも一部が作動していることが示唆された。
【0039】
c)T1世代におけるフラジェリン発現イネのいもち病抵抗性試験
1141−fla1遺伝子が導入されたT0世代の形質転換体のうちフラジェリンが蓄積した4系統(D/11−20−1、D/11−20−2、D/11−20−3、D/11−24−3)、およびウェスタン分析ではフラジェリン蓄積が検出限界以下であった1系統(D/11−31−1)を選び、それらのT1世代におけるイネいもち病に対する罹病度を調査した。選抜された5つの高発現個体の種子稔性は正常で、多くの自殖種子を得ることが出来た。なお対照として、いもち病に対する圃場抵抗性が極弱の水稲品種コシヒカリ(形質転換実験の原系統)、いもち病圃場抵抗性が弱〜中の日本晴、いもち病圃場抵抗性が極強の銀河を用いた。培土を入れたシードリングケースに種子を8粒×2列で撒き、温室内で栽培し、4.8〜5.2葉期に病害検定に供試した。イネいもち病菌(Magnaporthe grisea)はレース007を用いた。接種にはいもち菌をオートミール・スクロース寒天培地上で培養(28℃暗条件)し、菌叢成長後、25℃で3日間近紫外光照射して形成させた分生胞子を用いた。いもち菌の接種は、0.02% Tween20で2×105個の分生胞子/mlに調整した懸濁液をシードリングケース3つ当たり30ml噴霧接種することにより行なった。噴霧接種を行なったイネは接種後24時間加湿恒温器(SLPH−550−RDS、日本医化器械製作所製)内で25℃、100%湿度条件下に保持した後、温室内へ移した。温室の設定条件は、明条件25℃−16時間、暗条件22℃−8時間とした。病害抵抗性の評価は、接種6日後における接種時の最上位展開葉(第5葉)の進展性病斑数を目視で数え、病徴指数(図3)により評価した。さらに接種16日後における接種時の最上位展開葉(第5葉)の進展性病斑面積率を、病徴レベル(図5)として評価した。結果についてはコシヒカリとの有意差検定(全群比較、Steel−Dwass検定)を行った。
接種6日後の結果を図4に示した。フラジェリンの発現していない系統D/11−31−1の病徴指数の分布は、原系統であるコシヒカリ(いもち抵抗性弱)と非常によく似ていた。病徴指数の中央値はともに6(一葉当り病斑数は多く、計測不能)であり、レンジはともに4(7−3)であった。いもち抵抗性弱〜中の日本晴においては病徴指数の中央値は5(一葉当り病斑数が25−50個)であり、フラジェリン蓄積系統D/11−20−3、D/11−24−3の中央値も5であったが、日本晴の病徴指数のレンジが3であったのに対し、これらフラジェリン蓄積系統のそれは4であり、病徴程度の低い、抵抗性の増強が示唆される個体の割合が多かった。いもち病圃場抵抗性が強の銀河においては、病徴指数の中央値は4(一葉当り病斑数が10−30個)であり、指数が3(一葉当り病斑数が3−15個)と4のものが多く、今回供試した系統の中では最も強い抵抗性を示した。フラジェリン蓄積系統D/11−20−1、D/11−20−2の病徴指数の中央値も4、3.5であり、病徴程度の低い、抵抗性の増強が示唆される個体の割合が多かった。特にD/11−20−2の分布は銀河のそれと良く似ていた。コシヒカリに対する病徴指数の分布のノンパラメトリックな有意差検定の結果、銀河と、フラジェリンが蓄積した4系統のうち3系統(D/11−20−2、D/11−20−3、D/11−24−3)において、危険率1%で、コシヒカリの病徴指数分布に対する有意差が検出された。
一方接種16日後の結果(図5)では、原系統のコシヒカリでは供試した31個体の全個体が枯死した。日本晴とD/11−31−1、D/11−20−1もコシヒカリと同様な分布を示し、殆どの個体の病徴レベルが9(病斑面積率100%)であった。これに対し、銀河では半数以上の個体が病徴レベル5以下(病斑面積率20%以下)であった。接種6日後でコシヒカリとの有意差が見られた3系統D/11−20−2、D/11−20−3、D/11−24−3においては、病徴レベルの低い個体が見られ、これらの系統の病徴レベルの分布図は、統計的にはコシヒカリのそれと1%の危険率で有意な差異が検出された。以上の結果からフラジェリン導入により、イネの病害抵抗性を増強させることが出来ることが示された。
接種16日後の各個体からタンパク質を抽出、フラジェリンタンパク質の蓄積量をウェスタン分析により解析した。さらにフラジェリン発現量といもち病抵抗性の強さとの関係を調べるため、各個体のフラジェリンの発現量と、その個体の接種6日後のいもち病病徴指数(図3)との関連を図6に示した。ウイルコクソンの順位和検定の結果、フラジェリンを発現する(+)、しない(−)間で、いもち病病徴指数の分布に5%の危険率で有意な差が得られた。この結果は、いもち病抵抗性の増強が、フラジェリンの発現によってもたらされたことを示すものである。
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】
本発明により、フラジェリンをコードする遺伝子を構成的プロモーターに接続して、植物に導入することにより、その植物に病害抵抗性を付与できることが初めて明らかとなった。このフラジェリン導入植物は、タンパク質性エリシターであるフラジェリンの作用機作を解明する上で、また局部、全身獲得抵抗性の機構を解明する上で役立つと考えられる。また、誘導性のプロモーターを用いなければ困難であろうと従来考えられていたタンパク質性エリシター導入による抵抗性植物の作出を、構成的プロモーターを用いても十分適用可能であることを示し、本アプローチの適用範囲の拡大を示すことができた。フラジェリンをコードするDNA配列を、植物細胞の中で機能しうる適当な構成的、器官・時期特異性、あるいはストレスや病害虫、または化学物質で誘導されるプロモーター配列と植物細胞で機能しうるターミネーター配列の発現カセットに組み込み、植物細胞に導入、再生個体を得ることにより、病害抵抗性植物を作出するという方法は、遺伝子工学的に可能かつ有効なアプローチであることを本発明は示した。
【0042】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、T0世代の形質転換イネにおけるウエスタン分析によるフラジェリンタンパク質の蓄積の検出例を示す図である。PCは対照とした大腸菌発現フラジェリン(30ng)を、Tは形質転換体(総可溶性タンパク質30μg)を、Cは原系統のコシヒカリ(総可溶性タンパク質30μg)をそれぞれ示す。発現量の評価は表1に記載の通りである。
【図2】 図2は、T0世代の形質転換イネにおけるノーザンブロットによるPAL遺伝子の発現を示した図である。D/11は形質転換体を示す。対照はGUS遺伝子導入個体を用いた。
【図3】 図3は、接種6〜7日後のいもち病病徴指数の模式図である。
【図4】 図4は、T1世代の形質転換イネにおける接種6日後のいもち病検定結果を示したグラフである。病徴指数の評価は図3に記載の通りである。
【図5】 図5は、T1世代の形質転換イネにおける接種16日後のいもち病検定結果を示したグラフである。各病徴レベルにおける病斑面積率は、レベル0が0%、レベル1が1%、レベル2が2%、レベル3が5%、レベル4が10%、レベル5が20%、レベル6が40%、レベル7が60%、レベル8が80%、レベル9が100%である。
【図6】 図6は、T1世代の形質転換イネにおける接種6日後のいもち病抵抗性の程度とフラジェリン発現レベルの関連を示した図である。病徴指数の評価は図3に、発現量の評価は表1に記載の通りである。
Claims (17)
- 配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、植物中でエリシター活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物で機能する構成的プロモーターに接続して植物ゲノムに導入することにより、該植物に病害抵抗性を付与することからなる病害抵抗性植物の作出方法。
- 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる、植物中でエリシター活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物で機能する構成的プロモーターに接続して植物ゲノムに導入することにより、該植物に病害抵抗性を付与することからなる請求項1に記載の病害抵抗性植物の作出方法。
- 以下のアミノ酸配列を有し、植物中でエリシター活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物で機能する構成的プロモーターに接続して植物ゲノムに導入することにより、該植物に病害抵抗性を付与することからなる病害抵抗性植物の作出方法:
(a)配列番号1のアミノ酸配列、または、
(b)配列番号1のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列。 - 配列番号2のDNA配列と少なくとも90%以上の同一性を有するDNA配列からなる、植物中でエリシター活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を、植物で機能する構成的プロモーターに接続して植物ゲノムに導入することにより、該植物に病害抵抗性を付与することからなる、病害抵抗性植物の作出方法。
- 配列番号2のDNA配列を有する遺伝子を、植物で機能する構成的プロモーターに接続して植物ゲノムに導入することにより、該植物に病害抵抗性を付与することからなる請求項4に記載の病害抵抗性植物の作出方法。
- 以下のDNA配列からなる、植物中でエリシター活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を植物で機能する構成的プロモーターに接続して植物ゲノムに導入することにより、該植物に病害抵抗性を付与することからなる、病害抵抗性植物の作出方法:
(a)配列番号2のDNA配列、または、
(b)配列番号2のDNA配列において、1または複数の塩基が置換、欠失、挿入、および/または付加されたDNA配列。 - 配列番号2のDNA配列を有する核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そして植物中でエリシター活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を、植物で機能する構成的プロモーターに接続して植物ゲノムに導入することにより、該植物に病害抵抗性を付与することからなる、病害抵抗性植物の作出方法。
- 植物中でタンパク質性のエリシター活性を有するフラジェリンタンパク質をコードする遺伝子を植物で機能する構成的プロモーターに接続して植物ゲノムに導入することにより、該植物に病害抵抗性を付与することからなる病害抵抗性植物の作出方法。
- フラジェリンタンパク質がAcidoborax aveane N1141株由来のフラジェリンタンパク質である、請求項8に記載の方法。
- (a)植物で機能する構成的プロモーターおよび、ターミネーターを用意し、
(b)上記プロモーターの下流、および上記ターミネーターの上流の領域に請求項1から9のいずれかに記載の遺伝子を接続した発現カセットを有するプラスミドを調製し、
(c)アグロバクテリウム法、エレクトロポレーション法、PEG法、マイクロインジェクション法、またはパーティクルガン法により、上記発現カセットを植物のゲノムへ導入し、
(d)形質転換された植物細胞を選択マーカーによりスクリーンニングし、
(e)再生培地で完全な植物体(T0世代)になるまで培養して、病害抵抗性植物を得る;さらには、
(f)上記T0世代より種子(T1世代)を得て、その種子を育成して病害抵抗性植物を得る;
ことからなる、病害抵抗性植物の作出方法。 - 植物が単子葉植物である請求項1ないし10のいずれか1項に記載の病害抵抗性植物の作出方法。
- 植物がイネである請求項1ないし11のいずれか1項に記載の病害抵抗性植物の作出方法。
- 植物が双子葉植物である請求項1ないし10のいずれか1項に記載の病害抵抗性植物の作出方法。
- 病害が菌類病である請求項1ないし13のいずれか1項に記載の病害抵抗性植物の作出方法。
- 病害がいもち病である請求項1ないし14のいずれか1項に記載の病害抵抗性植物の作出方法。
- 病害が細菌病である請求項1ないし13のいずれか1項に記載の病害抵抗性植物の作出方法。
- 病害がウィルス病である請求項1ないし13のいずれか1項に記載の病害抵抗性植物の作出方法。
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