JP4288087B2 - 樹脂歯車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用部品等の動力伝達機構や各種産業機器等において使用される樹脂歯車に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多点ピンゲートから樹脂を射出成形してなる樹脂歯車がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
各ゲートから金型内に注入された溶融樹脂は、ゲートを中心にして、金型内のキャビティを放射状に広がり、樹脂歯車が射出成形される。
【0004】
樹脂歯車には、通気や軽量化のための貫通孔が形成されたものがある。例えば、CVT用ボールねじに装着する樹脂歯車には、ベルト/プーリ発熱部の冷却用の貫通孔が形成されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−156892号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の樹脂歯車の場合、貫通孔は周方向等間隔に形成され、各々周方向に隣り合うゲート間の中央に位置している。このため、周方向に隣り合うゲートから注入された溶融樹脂が合流する位置と、貫通孔の形成位置とが一致してしまう。
【0007】
すなわち、隣り合うゲート間の中央において溶融樹脂が合流することに起因するウエルド部と、貫通孔の周囲において溶融樹脂が当該孔を回り込むことに起因するウエルド部とが同じ位置に発生する。
【0008】
このように、2種類のウエルド部が同じ位置に発生することにより、当該ウエルド部の数は減少するが、耐ヒートショック性の低下による樹脂歯車の破損などの強度低下や、歯形精度が低下するおそれがあった。さらに、貫通孔が形成されているため、当該部位における強度低下は、より一層大きなものとなる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、周方向複数のゲート部から樹脂を射出成形してなり、外周面に歯部を有した環状の樹脂歯車であって、前記各ゲート部は歯車における径方向位置が同じ同心円上に配置されるとともに、周方向に隣り合うゲート部間において、当該ゲート部間の中央に位置するウエルド部に対して周方向にずれた位置に貫通孔が形成されており、前記ゲート部および前記ウエルド部を含む周方向複数位置に、それぞれ径方向に延設されて放射状にリブが形成され、前記リブのそれぞれは径方向に沿った形状であるとともに周方向で等間隔に配置され、前記ゲート部のリブと前記ウエルド部のリブが、これらのリブとは周方向で別の位置に配置されている残余のリブより幅広に形成されているものである。
【0010】
本願発明は、好ましくは、前記残余のリブは、周方向における前記貫通孔の位置に少なくとも形成されている。
本願発明は、好ましくは、前記ウエルド部のリブが前記ゲート部のリブより幅広に形成されている。
【0011】
樹脂歯車が適用される部位は特に限定されるものではなく、例えば、CVTの変速用ボールねじ装置のブラケット等に射出成形されて、ブラケット等に一体形成されるものや、ブラケット等に一体形成されず、例えば、中心に回転軸等を取付ける取付孔を有した樹脂歯車が単体にて射出成形されるものであってもよい。
【0012】
ゲートや貫通孔の数は特に限定されるものではなく、例えば、同数であって周方向に交互に形成されていたり、あるいはゲート数に対して貫通孔がその倍数であって、各ゲートの周方向両側にそれぞれ貫通孔が形成されるものであってもよい。すなわち、ゲートと貫通孔の数を同数あるいは倍数とすることで、樹脂歯車を対称形状とすることができ、樹脂成形時の流動バランスを取ることができ、成形性に優れる。
【0013】
貫通孔の大きさについても、通気孔として使用される場合や、軽量化を目的として形成される場合など、その目的に応じて自由に決められるものである。
【0014】
本発明の樹脂歯車によると、周方向に隣り合うゲート間の中央位置に対して周方向にずれた位置に貫通孔が形成されており、周方向に隣り合うゲートから注入された溶融樹脂が合流する位置と、貫通孔の形成位置とが一致しない。
【0015】
よって、隣り合うゲート間の中央において溶融樹脂が合流することに起因するウエルド部と、貫通孔の周囲において溶融樹脂が当該孔を回り込むことに起因するウエルド部とが同じ位置に発生せず、樹脂歯車の強度や歯形精度が低下するのを防止できる。
【0016】
ゲート部のリブとウエルド部のリブが、残余のリブより幅広に形成されており、ゲートから注入された溶融樹脂の流動性が向上する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係る樹脂歯車を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本実施形態における樹脂歯車の正面図、図2は樹脂歯車の断面図である。
【0019】
本実施形態は、環状のブラケット2の外周に、金型に形成された周方向複数のゲート3から樹脂を射出成形して、樹脂歯車1を金属製のブラケット2に一体形成したものである。
【0020】
樹脂歯車1は、ブラケット2の外周と一体に形成された環状のボス部16と、ボス部16から外径方向に延設された薄肉のウエブ部17と、ウエブ部17から外径方向に延設された環状のリム部18と、リム部18の外周に所定のピッチで形成された複数の歯部11とで構成されている。
【0021】
ウエブ部17には、周方向等間隔に径方向に延設されて複数のリブ12,13,14,15が放射状に形成されている。
【0022】
リブ12は、金型の周方向に等間隔に形成されたゲート3に相当する位置に形成されている。
【0023】
リブ13は、隣り合う一対のリブ12の中間に形成されている。各ゲート3から注入された溶融樹脂は、ゲート3を中心にして金型内のキャビティを放射状に流動して広がり、リブ13部分にて溶融樹脂が合流することに起因するウエルド部が形成される。
【0024】
リブ14は、リブ13に対して位相をずらした位置に形成されており、内径側に通気や軽量化のための貫通孔4を有している。
【0025】
リブ15は、上記以外のリブである。
【0026】
ゲート部のリブ12の幅寸法をL1、ウエルド部のリブ13の幅寸法をL2、その他のリブ14,15の幅寸法をL3とすると、
L1,L2>L3 …▲1▼
の関係となる。より好ましくは、L1とL2の関係を、
L2>L1 …▲2▼
とする。
【0027】
各リブ12,13,14,15の周方向の幅寸法の具体的な一例として、下記のように設定する。すなわち、ゲート部のリブ12の幅寸法L1=1.4mm、ウエルド部のリブ13の幅寸法L2=1.6mm、その他のリブ14,15の幅寸法L3=1.2mmとする。
【0028】
樹脂歯車を構成する樹脂材料としては、例えば、オレフィン系樹脂(ポリプロピレンなど)、フッ素樹脂、スチレン系樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂など)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリーレート(ホモポリエステル)、アルキレンアリレート単位を有するコポリエステル、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステルなど)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリアミド系樹脂(6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、46ナイロン、66ナイロン、6Tナイロン、9Tナイロン、610ナイロンなどの脂肪族ナイロン、芳香族ナイロンMXD−6など)、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリスルホンエーテル系樹脂などが例示できる。
【0029】
さらに、上記樹脂材料に補強繊維が含まれていてもよい。補強繊維としては、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維等)や、有機繊維(アラミド繊維等)などが例示できる。
【0030】
樹脂歯車1の製造について説明する。
【0031】
下型にブラケット2ならびにリング歯型を配置した後、下型と上型を合わせ、ブラケット2の外周域に対応するキャビティを形成する。キャビティ内に、上型に周方向所定間隔に配置した複数のゲート3から溶融樹脂を注入する。溶融樹脂は、ゲート3を中心に放射状に広がり、リング歯型に達して歯部を形成する。
【0032】
樹脂歯車1はブラケット2の外周に一体的に形成され、ブラケット2と樹脂歯車1とは、例えば、軸心回りに回転一体に設けられる。
【0033】
このように構成された樹脂歯車1によると、周方向に隣り合うゲート3間の中央位置に対して周方向にずれた位置に貫通孔4が形成されており、周方向に隣り合うゲート3から注入された溶融樹脂が合流する位置と、貫通孔4の形成位置とが一致しない。よって、隣り合うゲート3間の中央において溶融樹脂が合流することに起因するウエルド部5と、貫通孔4の周囲において溶融樹脂が当該孔を回り込むことに起因するウエルド部とが同じ位置に発生せず、樹脂歯車1の強度や歯形精度が低下するのを防止でき、静的破壊強度のばらつきを抑制できる。
【0034】
式▲1▼に示すように、ゲート部のリブ12の幅寸法L1とウエルド部のリブ13の幅寸法L2が、残余のリブ14,15の幅寸法L3より幅広に形成されており、ゲート3から注入された溶融樹脂の流動性が向上する。
【0035】
式▲2▼に示すように、最弱部であるウエルド部のリブ13の幅寸法L2を、ゲート部のリブ12の幅寸法L1より幅広とし、すなわち各リブ12,13,14,15のうちで最も幅広としたので、樹脂歯車1の強度が低下するのをより確実に防止できる。
【0036】
なお、ゲート部のリブ12の幅寸法L1と、ウエルド部のリブ13の幅寸法L2は、その他のリブ14,15の幅寸法L3より大きければよく、L1とL2の大小関係は式▲2▼に示す関係に限定されず、L2≦L1としてもよい。
【0037】
また、前記実施形態に係る樹脂歯車1の構成は一例であって、例えば、ゲート部ならびにウエルド部のリブ以外のリブの形成位置は特に限定されない。
【0038】
【発明の効果】
本発明の樹脂歯車によると、隣り合うゲート間の中央において溶融樹脂が合流することに起因するウエルド部と、貫通孔を回り込むことに起因するウエルド部とが同じ位置に発生せず、樹脂歯車の強度や歯形精度が低下するのを防止でき、かつ、ゲートから注入された溶融樹脂の流動性が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態における樹脂歯車の正面図
【図2】 本発明の実施形態における樹脂歯車の断面図
【符号の説明】
1 樹脂歯車
2 ブラケット
3 ゲート
4 貫通孔
5 ウエルドライン
11 歯部
12,13,14,15 リブ
Claims (3)
- 周方向複数のゲート部から樹脂を射出成形してなり、外周面に歯部を有した環状の樹脂歯車であって、
前記各ゲート部は歯車における径方向位置が同じ同心円上に配置されるとともに、
周方向に隣り合うゲート部間において、当該ゲート部間の中央に位置するウエルド部に対して周方向にずれた位置に貫通孔が形成されており、
前記ゲート部および前記ウエルド部を含む周方向複数位置に、それぞれ径方向に延設されて放射状にリブが形成され、
前記リブのそれぞれは径方向に沿った形状であるとともに周方向で等間隔に配置され、
前記ゲート部のリブと前記ウエルド部のリブが、これらのリブとは周方向で別の位置に配置されている残余のリブより幅広に形成されている、ことを特徴とする樹脂歯車。 - 請求項1記載の樹脂歯車において、
前記残余のリブは、周方向における前記貫通孔の位置に少なくとも形成されている、ことを特徴とする樹脂歯車。 - 請求項1または2記載の樹脂歯車において、
前記ウエルド部のリブが前記ゲート部のリブより幅広に形成されている、ことを特徴とする樹脂歯車。
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