JP4284475B2 - インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法 - Google Patents

インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はノズル開口部からインク滴を吐出して記録用紙に記録を行うインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インク室に連通したノズル開口部からインク滴を吐出して記録用紙に記録を行うインクジェットプリンタが普及している。この種のプリンタにおいては、高解像度化のために安定的にインク滴サイズを小さくする方法や、中間階調の画像表現を行うためにドット間でインク滴サイズを変化させる方法等が検討されている。
【0003】
インク滴サイズを小さくするための方法の一つとして、インク室を膨張させてノズル内のメニスカスと呼ばれるインク先端部の位置をインク室の方向に一旦引き込み、このメニスカスが元の位置に戻る前にインク室を収縮させてノズル開口部よりインク滴を吐出するという方法が提案されている。
【0004】
例えば、特開昭55−17589号公報では、初期状態からインク室の内容積を増加する方向に変位駆動してから初期状態に復元する行程によってインクを噴射する方法が提案されている。そして、この公報には、吸込行程における変位量(インク室の内容積の増加変位量)を変えることで粒径(液滴径)を変えることができる旨が記載されている。
【0005】
また、例えば特開平2−6137号公報では、インク室内の圧力を一度減少させたのち初期状態に復元させる際の印加電圧を変化させてインク滴サイズを制御する方法が提案されている。
【0006】
また、例えば、特開昭59−143652公報では、インク滴の吐出のための主パルスの前に補助パルスを印加してノズル内のメニスカス位置を変化させることによりインク滴サイズを制御する方法が提案されている。
【0007】
また、例えば特開平5−16359号公報では、補助パルスを印加したのち、インク室内の残留圧力波の周期に合わせて主パルスを印加することでインク滴サイズを制御する方法が提案されている。
【0008】
一方、この種のインクジェットプリンタにおいては、記録ヘッドは紙送り方向と直交する方向に移動しながらインク滴を吐出するようになっているので、吐出されたインク滴の飛翔速度がばらつくとインク滴の着弾位置もばらつき、その結果、記録される画像の品質が著しく劣化することとなる。したがって、高品質の記録画像を得るにはインク滴の飛翔速度を一定にすることが重要である。
【0009】
また、記録ヘッドは、通常、ヘッドキャリッジ駆動モータ等を用いて一定速度で往復走行するように制御されるが、機械的要因による速度むらや、記録ヘッドから着弾地点までの距離のずれ等が生ずる場合もある。この場合には、記録ヘッドから吐出されるインク滴の着弾地点に誤差が生じ、高品質の画像表現を妨げる要因となりうる。したがって、これらの誤差要因を補正するためにも、インク滴の飛翔速度を適宜コントロールできれば好都合である。
【0010】
ところで、この種の記録ヘッドでは、上記のように、インク室を一旦膨張させてノズル内のメニスカス位置をインク室の方向に一旦引き込んでからインク室を収縮させてインク滴を吐出するという方法が採られることが多いが、この際、インク室内には、圧電振動板の駆動に伴ってヘルムホルツの固有振動と呼ばれる振動が生じ、一旦インク室の方向に引き込まれたメニスカスの位置もこの固有振動の周波数で振動する。このため、どの時点でインク室を収縮させるかということがインク滴のサイズのみならず飛翔速度にも大きく影響する。そこで、従来より、そのような固有振動の影響を受けにくい記録ヘッドの駆動方法が種々検討されている。
【0011】
例えば、米国特許第4646106号の明細書では、インク先端位置が最も引き込まれた時点でインク室を収縮させてインク滴を吐出するようにした駆動方法が提案されている。
【0012】
また、例えば、特開平8−267739号公報では、メニスカスの固有振動周期の2/3倍以内の時間にインク滴の吐出を行うようにしたインクジェット式記録装置が提案されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した特開昭55−17589号公報には、吸込行程における変位量を変えることで液滴径を変えることができる旨が示唆されているにすぎず、具体的にインク滴サイズを制御する駆動方法は明らかでなく、インク滴サイズの適切な制御は困難であった。
【0014】
また、特開平2−6137号公報に記載の方法は、インク室内の圧力を一度減少させたのち初期状態に復元させる際の印加電圧を変化させることでインク滴サイズを制御するものであり、インクの充填を考慮したインク先端部の引き込み位置の制御については何ら示唆がなく、実際上、正確なインク滴サイズの制御は困難である。
【0015】
特開昭59−143652公報および特開平5−16359号公報に記載の方法は、いずれも補助パルスによってノズル内のインク先端位置を調整した後に主パルスを印加するものであり、補助パルスが必要である。この場合、補助パルスのパルス幅とその波高値、あるいは補助パルスと主パルスとの時間間隔によってメニスカス位置は変化するので、これらの複数のパラメータを調整する必要があった。しかも、前者の公報の記載では、補助パルスとインク滴サイズとの位置との関係が不明確であり、また、後者の公報には、インク位置の変動周期とインク滴サイズとの関係が記述されているものの、ノズル内に引き込まれたインク先端位置とインク滴サイズとの関係については具体的な記述がなく、実際上、これらの方法によって適切にインク滴サイズを制御することは困難であった。
【0016】
このように、従来のインクジェットプリンタでは、インク滴サイズを的確に制御することが困難であり、高解像度化や中間階調の画像表現等の画像品質を向上することは容易でなかった。
【0017】
また、上記した米国特許第4646106号明細書および特開平8−267739号公報に記載の方法は、いずれも、メニスカスの固有振動の存在を考慮してはいるものの、メニスカスの位置変化速度や位相を考慮したものではないので、インク滴の飛翔速度を十分正確に制御して一定値に保つことは困難であった。また、これらの提案は、メニスカスの固有振動における極めて制限された範囲で吐出動作を行うというものであるため、得られる飛翔速度も自ずから制限され、任意に制御することは困難であった。
【0018】
また、上記したような記録ヘッドの走行速度の不安定さ等に起因する着弾位置ずれを補正しつつ画像濃度や階調をコントロールする等、インク滴のサイズと飛翔速度とを同時に制御することは困難であった。
【0019】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、吐出されるインク滴のサイズおよび飛翔速度を適切に制御することができるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インク滴を吐出するためのノズル開口部と、ノズル開口部に連通するインク室と、インク室にインクを供給するインク供給路と、印加電圧に応じてインク室を膨張または収縮させる圧電素子と、圧電素子によってインク室を膨張させることによりノズル開口部を介して外気に接するインク先端部をインク室の方向に引き込む第1行程と、インク供給路からインク室にインクを供給することによりインク先端部をノズル開口部の方向に前進させる第2行程と、圧電素子によってインク室を収縮させることによりノズル開口部からインク滴を吐出させる第3行程とを制御する行程制御手段とを備えたインクジェットプリンタであって、行程制御手段が、第3行程の開始時点におけるインク先端部のメニスカス速度を一定にしつつ、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置を適宜に設定することにより、第3行程において吐出されるインク滴の大きさおよび飛翔速度を制御するように構成したものである。行程制御手段は、さらに、第3行程におけるインク室の収縮量および収縮速度の制御をも行うことにより、インク滴の大きさおよび飛翔速度を制御することが可能である。
【0021】
ここで、行程制御手段は、例えば、第2行程の所要時間を一定にしつつ第1行程におけるインク先端部の引き込み量を変化させること、第1行程におけるインク先端部の引き込み量を一定にしつつ第2行程の所要時間を変化させること、あるいは、第1行程におけるインク先端部の引き込み量および第2行程の所要時間を変化させることのいずれによっても、第3行程の開始時点におけるインク先端部の位置およびメニスカス速度を適宜に設定することができる。また、行程制御手段は、第3行程の開始時点におけるインク先端部の周期的位置変化の位相を適宜に設定することにより、第3行程の開始時点におけるインク先端部のメニスカス速度を設定することが可能であり、特に、第3行程の開始時点におけるインク先端部の周期的位置変化の位相を一定にすることにより、第3行程の開始時点におけるインク先端部のメニスカス速度を一定化することが可能である。
【0022】
本発明に係るインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法は、インク滴を吐出するためのノズル開口部と、ノズル開口部に連通するインク室と、インク室にインクを供給するインク供給路と、印加電圧に応じてインク室を膨張または収縮させる圧電素子とを備えたインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法であって、圧電素子によってインク室を膨張させることによりノズル開口部を介して外気に接するインク先端部をインク室の方向に引き込む第1行程と、インク供給路からインク室にインクを供給することによりインク先端部をノズル開口部の方向に前進させる第2行程と、圧電素子によってインク室を収縮させることによりノズル開口部からインク滴を吐出させる第3行程とを制御する行程とを含み、第3行程の開始時点におけるインク先端部のメニスカス速度を一定にしつつ、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置を適宜に設定することにより、第3行程において吐出されるインク滴の大きさおよび飛翔速度を制御するようにしたものである。
【0023】
本発明に係るインクジェットプリンタまたはインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法では、第3行程の開始時点、すなわち吐出開始時点におけるインク先端部のメニスカス速度を一定にしつつ、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置を適宜に設定することにより、インク滴の大きさおよび飛翔速度が制御される。第3行程の開始時点におけるインク先端部の位置およびメニスカス速度は、例えば、第1行程におけるインク先端部の引き込み量または第2行程の所要時間の少なくとも一方を変化させることにより、任意に設定される。第3行程の開始時点におけるインク先端部のメニスカス速度は、例えば第3行程の開始時点におけるインク先端部の周期的位置変化の位相によって設定される。この位相を一定に設定することにより、第3行程の開始時点におけるインク先端部のメニスカス速度が一定化される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタの要部の概略構成を表すものである。なお、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法は本実施の形態に係るインクジェットプリンタによって具現化されるので、以下併せて説明する。
【0026】
このインクジェットプリンタ1は、記録用紙2に対してインク滴を吐出して記録を行う記録ヘッド11と、この記録ヘッド11にインクを供給するインクカートリッジ12と、記録ヘッド11の位置と記録用紙2の紙送りとを制御するヘッド位置・紙送りコントローラ13と、ヘッド駆動信号により記録ヘッド11のインク滴吐出動作を制御するヘッドコントローラ14と、入力される画像データに所定の画像処理を行って記録データとしてヘッドコントローラ14に供給する画像処理部15と、ヘッド位置・紙送りコントローラ13、ヘッドコントローラ14および画像処理部15を制御するシステムコントローラ16とを備えている。ここで、ヘッドコントローラ14が本発明における「行程制御手段」に対応する。
【0027】
図2は図1における記録ヘッド11の斜視断面構造を表し、図3は図2における記録ヘッド11を矢印Z(図2)の方向から見た断面構造を表す。これらの図に示したように、記録ヘッド11は、順次積層されたノズルプレート111a、流路プレート111bおよび振動プレート111cを備えて構成されている。これらの各プレートは、例えばガラスやステンレス材等で形成され、図示しない接着剤による接着、またはガラスを溶融して圧着する等の方法により、相互に貼り合わされている。なお、これらの各プレートは、一体に形成するようにしてもよい。
【0028】
流路プレート111bの図中上面側には、選択的に凹部が形成されており、この凹部と振動プレート111cとによって、複数のインク室113とこれらのインク室に連通する共通流路117とを構成している。共通流路117と各インク室113との連通部分は挟路となっており、ここから各インク室113の方向に向かうに従って流路幅が拡がるような構造となっている。各インク室113における共通流路117に連通した側と反対側の部分は、流路幅が次第に狭まっていく構造になっており、その終端部の流路プレート111bには、厚み方向に穿たれた流路孔114が設けられている。そして、この流路孔114は、最下層のノズルプレート111aに形成された微小なノズル開口115へと連通しており、このノズル開口115からインク滴が吐出されるようになっている。すなわち、各ノズル開口115ごとに、流路孔14およびインク室113が1組として配設されている。ここで、インク室113が本発明における「インク室」に対応し、ノズル開口115の先端部が本発明における「ノズル開口部」に対応し、共通流路117が本発明におけるインク供給路に対応する。
【0029】
各インク室113が形成された領域の振動プレート111c上には、図3に示したように、下電極121、圧電素子(ピエゾ素子)122および上電極123が順次積層配置されている。下電極121と上電極123との間に、図1のヘッドコントローラ14から入力されたヘッド駆動信号の電圧が印加されると、圧電素子122がたわみ、インク室113の容積が増大(膨張)したり減少(収縮)するようになっている。ここで、圧電素子122が本発明における「圧電素子」に対応する。
【0030】
本実施の形態では、記録ヘッド11には、複数のノズル開口115が千鳥状に(互い違いに)2列に配列形成されている。各列におけるノズル開口115の間隔は等間隔である。一方の列の各ノズル開口115に対応するインク室113と、他方の列の各ノズル開口115に対応するインク室113とは、ノズル開口115の配列に関して互いに反対側に設けられ、千鳥状の配列をなしている。なお、ノズル開口115は、上記のように千鳥状に2列に配列するのではなく、例えば、一直線上にのみ等間隔で配列するようにしてもよく、また、その他の配列としてもよい。
【0031】
共通流路117は、図1に示したインクカートリッジ12に連通している。このインクカートリッジ12は、共通流路117を経て各インク室113にインクを常時一定速度で供給するようになっている。このインクの供給は、例えば毛細管現象を利用して行うことができるが、そのほか、インクカートリッジ12に所定の加圧機構を設けて加圧することで行うようにしてもよい。記録ヘッド11は、図示しないキャリッジ駆動モータおよびこれに付随するキャリッジ機構によって記録用紙2の紙送り方向と直交する方向に往復移動しながらインク滴を吐出することにより、記録用紙2に画像を記録するようになっている。
【0032】
図4は図1におけるヘッドコントローラ14の回路構成を表すものである。この図に示したように、ヘッドコントローラ14は、マイクロプロセッサ等から構成されてヘッドコントローラ14全体を制御する主制御部141と、主制御部141が実行するプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)142と、RAM(Random Access Memory)等からなり、主制御部141による所定の演算や一時的なデータ記憶等に用いられるワークメモリ143と、不揮発性メモリからなる駆動電圧波形記憶部144と、タイマ機能を有するカウンタ145と、駆動電圧波形記憶部144から読み出されたディジタルデータをアナログに変換するためのディジタルアナログ(D/A)コンバータ146と、D/Aコンバータ146の出力を増幅してヘッド駆動信号として出力するアンプ147とを備えている。
【0033】
駆動電圧波形記憶部144は、記録ヘッド11を駆動するヘッド駆動信号の電圧波形を示すデータ(以下、波形データという。)を記憶するためのものである。この波形データは、各画素ドットを形成するためのインク滴のサイズおよび飛翔速度に対応した様々な形の駆動電圧波形を含むものであり、より具体的には、図2における下電極121と上電極123との間に印加されて圧電素子122を駆動する電圧の波形(後述する図5(a)におけるA〜Eの波形)をディジタル化したものである。なお、図4では、ヘッドコントローラ14から出力されるヘッド駆動信号を1つだけ図示しているが、実際には、図2におけるノズル開口115の数(すなわち、圧電素子122の数)に対応した数のヘッド駆動信号が並列に出力されるようになっている。
【0034】
カウンタ145は、本プリンタの動作タイミングの基準クロックとしてシステムコントローラ16から入力される吐出タイミングクロック(図示せず)によってリセットされると共に、このリセット時点からカウントアップを開始して、上記した波形データによって定まる所定の時間の経過後に主制御部141にタイムアップ信号を出力するようになっている。このタイムアップ信号は、後述するように、第1行程の開始トリガとなるものである。
【0035】
次に、以上のような構成のインクジェットプリンタの動作を説明する。
【0036】
まず、図5を参照して、記録ヘッド11の基本的な動作を説明する。ここで、図5(a)は記録ヘッド11の下電極121,上電極123間に印加される駆動電圧波形の一例を表し、図5(b)はこの駆動電圧波形の主な時点A〜Fにおけるインク室113の状態を表し、図5(c)はA〜Fの各時点におけるノズル開口115の状態を表すものである。なお、図5(c)では、説明の便宜上、ノズル開口115を上向きに描いている。
【0037】
ここで、記録ヘッド11の3つの動作行程の定義を行う。図5(a)において、まず、駆動電圧を第1の電圧V1から電圧0に変化させる行程(AからBまで)を第1行程とし、これに要する時間をt1とする。また、電圧0を保持して待つ行程(BからCまで)を第2行程とし、これに要する時間をt2とする。さらに、電圧0から第2の電圧V2に変化させる行程(CからDまで)を第3行程とし、これに要する時間をt3とする。なお、以下の説明では、第1の電圧V1を引き込み電圧といい、第2の電圧V2を吐出電圧という。なお、本実施の形態では、第3行程における所要時間t3および吐出電圧V2を一定にしておくものとする。
【0038】
この記録ヘッド11は、一定の周波数(例えば1〜10kHz程度)で駆動されるようになっており、この駆動周波数に対応してインク滴の吐出タイミング周期T(すなわち、吐出タイミングクロックの周期)が定まる。第3行程の開始時点である時点Cおよび時点G等は、上記した吐出タイミングクロックに同期しており、これらの各吐出タイミングクロックに先立ってそれぞれ第1および第2行程が行われるようになっている。
【0039】
まず時点Aおよびそれ以前においては、図5(b)の状態PA のように、圧電素子122への電圧V1の印加により振動プレート112cは内側にわずかにたわんだ状態で静止し、インク室113は収縮状態となっている。時点Aにおいて、ノズル開口115内におけるメニスカス(インク先端部)の位置は、図5(c)の状態MA に示したように、ノズル開口115の端部(以下、開口端という。)と同位置となっているものとする。
【0040】
次に、時点Aの電圧V1から時点Bの電圧0へと駆動電圧を減少させる第1行程を行うと、圧電素子122への印加電圧が0になるので振動プレート112cのたわみがなくなり、インク室113は膨張する(図5(b)の状態PB )。このため、ノズル開口115内におけるメニスカスはインク室113の方向に引き込まれ、時点Bでは、例えば図5(c)のMB の状態にまで後退する(すなわち、開口端から遠ざかる)。
【0041】
ところが、こうして引き込まれたメニスカスの位置は、その後、例えば後述する図7に示したような波形を描いて振動する。これは、圧電素子122への印加電圧がV1から0に変化したのちにおいても、振動プレート112cのたわみ量が直ちにゼロとなって静止するわけではなく、インク室113内を満たしているインクの性質等によって定まる固有の周波数の微小振動変位が残るからである。
【0042】
上記した図7は、第1行程の引き込み動作後におけるメニスカス位置の変化の様子を表すもので、引き込み電圧V1を20ボルト、引き込み所要時間(すなわち、第1行程の所要時間)t1を7μsecとしたときの実測値である。但し、この実験は、便宜的にインク室113へのインクの供給を停止した状態で行ったものである。ここで、横軸は第1行程開始時点を0としたときの経過時間を表し、単位はμsecである。縦軸はメニスカス位置(開口端からの変位量)を表し、任意の単位としている。この図から、第1行程の終了時点でメニスカスは直ちに静止するのではなく、一定の周期で振動しつつ次第に減衰していくことが判る。この振動周期は、上記した振動プレート112cの振動周期と等しく、インク室113の構造、材質、およびインクの性質等から定まる固有の値であるので、予め実験によって求めて特定することが可能である。
【0043】
次に、時点Bから時点Cまでの時間t2の間、駆動電圧を0に固定してインク室113の容積を一定に保たせる第2行程を行う。ところが、この間もインクカートリッジ12からのインク供給は連続的に行われているので、ノズル開口115内におけるメニスカス位置は開口端に向かって徐々に変位し、時点Cでは、例えば図5(c)のMC の状態にまで前進する。これに加えて、メニスカスは上記の図7に示したような固有振動周期で変位するので、結局、メニスカスの位置は、これらの2種類の変位が重なり合うことにより、例えば図10(a)に示したような軌跡を描くこととなる。なお、この図10(a)で、横軸は時間を表し、縦軸はメニスカスの位置(開口端からの変位量)を表す。この図に示したように、メニスカス位置は、第1行程における引き込み開始時点から急激にインク室113の方向に変位したのち、一定周期で振動しながら徐々に開口端に向かって前進するという挙動を示すのである。
【0044】
次に、時点Cの電圧0から時点Dの吐出電圧V2へと駆動電圧を急激に増大させる第3行程を行う。この時点Cは上記した吐出タイミングパルス(図示せず)と同期している。この場合、時点Dでは圧電素子122に大きな吐出電圧V2が印加されるので、振動プレート112cは図5(b)の状態PD に示したように内側に大きくたわみ、インク室113は急激に収縮する。このため、図5(c)の状態MD に示したように、ノズル開口115内のメニスカスは開口端に向かって一気に押され、ここからインク滴として吐出される。吐出されたインク滴は空気中を飛翔し、記録用紙2(図1,図2)上に着弾する。
【0045】
その後、駆動電圧を再びV1まで減少させて振動プレート112cを僅かに内側にたわませて初期状態にし(図5(b)の状態PE )、この状態を次の吐出サイクルの第1行程開始時点Fまで維持する。駆動電圧を再びV1に減少させた直後の時点Eにおいては、図5(c)の状態ME に示したように、吐出されたインク滴量にほぼ対応する分だけメニスカス位置が後退した状態となるが、その後も行われるインクの充填(リフィル)により、次の吐出サイクルの第1行程開始時点Fのメニスカス位置は、図5(c)の状態MF に示したように、開口端と同じ位置にまで回復する。このときの状態は、時点Aにおける状態MA と同じものである。
【0046】
このようにして1サイクルの吐出動作が終了する。以下、このようなサイクル動作を各ノズル開口115ごとに並行してそれぞれ繰り返し行うことで、記録用紙2(図1,図2)への画像記録が連続的に行われる。
【0047】
次に、いくつかの実験データを基に、メニスカス位置およびメニスカス速度とインク滴のサイズおよび飛翔速度との関係をメニスカスの固有振動に着目して考察する。
【0048】
まず、図6を参照して、第1行程の引き込み電圧V1と引き込み量との関係について説明する。
【0049】
図6はメニスカスの引き込み電圧V1とメニスカスの前進所要時間との関係を調べるための一実験例の結果を表すものである。ここで、メニスカスの前進所要時間とは、引き込み電圧V1によってノズル開口115内でインク室113の方向に引き込まれたメニスカスがインクの供給により再び前進して開口端に達するまでの時間をいう。この図で、横軸は引き込み電圧V1を表し、単位はボルトである。縦軸は前進所要時間を表し、単位はマイクロ秒(μsec)である。なお、この実験結果は、引き込みに要する時間、すなわち図5における第1行程の所要時間t1に対応する時間を14μsecとして行った場合のものである。
【0050】
この図から明らかなように、前進所要時間の増分は引き込み電圧V1にほぼ比例して増加している。インクの供給速度は一定と考えることができるので、図6の結果から、引き込み電圧V1の大きさに応じて引き込み直後のメニスカス位置、すなわち、メニスカスの引き込み量が定まることが判る。このことは、引き込み電圧V1によって吐出時(第3行程開始時点)におけるメニスカス位置を間接的に調整し得ることを意味する。
【0051】
次に、図7〜図9に示した実験結果を参照して、メニスカスの固有振動とインク滴のサイズおよび飛翔速度との間の関係について説明する。
【0052】
図7は、第2行程の所要時間t2(すなわち、第1行程のメニスカスの引き込み時点から第3行程(吐出動作)の開始時点までの時間)を変えながら、引き込み時点以後におけるメニスカス位置の変化の様子と吐出されたインク滴径の変化の様子とを調べた場合の結果を表すものである。この図で、横軸は第1行程開始時点を0としたときの経過時間を表し、縦軸はメニスカス位置のほかにインク滴径(単位はμm)も表している。この図で、黒塗り三角印(▲)はメニスカス位置を表し、ばつ印(×)はインク滴径を表す。
【0053】
図8は、第2行程の所要時間t2を変えながらインク滴の飛翔速度の変化を調べた場合の結果を表す。この図で、横軸は第1行程の開始時点を0としたときの経過時間(単位はμsec)を表し、縦軸は各経過時間において第3行程を開始した場合に得られるインク滴の飛翔速度(単位はm/sec(メートル/秒))を表す。
【0054】
図9は、図7および図8を重ね合わせたもので、横軸は第1行程の開始時点を0としたときの経過時間を表し、縦軸は、各経過時間におけるメニスカス位置と、各経過時間において第3行程を開始した場合に得られるインク滴の径および飛翔速度とを表す。なお、図9において、黒塗り三角印(▲)はメニスカス位置を表し、ばつ印(×)はインク滴径を表し、黒塗り丸印(●)はインク滴の飛翔速度を表す。なお、図7〜図9に示したように、メニスカスの引き込みの終了時点(ここでは7μsec経過時)を起点とした経過時間が第2行程の所要時間t2である。
【0055】
図7から明らかなように、第3行程開始時点におけるメニスカス位置が深いほど、吐出されるインク滴径が小さくなることが判る。例えば、メニスカス位置が(−38)のときはインク滴径が約20μmであり、メニスカス位置が(−32)のときはインク滴径が約40μmとなっている。また、図8から明らかなように、インク滴の飛翔速度はほぼ一定の振動周期で変化している。さらに、図9から明らかなように、インク滴の飛翔速度は、メニスカス位置が引き込み方向に最も速く変位する瞬間(メニスカス位置変位曲線の傾きが負の極大となる時点)に第3行程を開始した場合に極大となり、逆に、メニスカス位置が吐出方向に最も速く変位する瞬間(メニスカス位置変位曲線の傾きが正の極大となる時点)に第3行程を開始した場合に極小となる。すなわち、インク滴の飛翔速度の変動周期は、メニスカスの変位速度の周期と同一であり、かつ、両者の位相は約180°(すなわち1/2周期分)ずれていることが判る。また、図9から、インク滴の飛翔速度がほぼ一定値(7〜8m/s)をとることとなる3つのタイミング(引き込み開始時点から12,24,38μsec後)において、インク滴径はそれぞれ異なる値をとり、経過時間が大きいほどインク滴径が大きくなることが判る。
【0056】
以上の事実を、さらに図10を参照して概念的に説明する。ここで、図10(a)は上記したように、インク供給を伴う場合のメニスカス位置の変化曲線を表すものである。図10(b)は、図10(a)のメニスカス位置変化曲線を一回微分して得られるメニスカス位置変化速度曲線を表すもので、横軸は時間、縦軸はメニスカス位置の変化速度(以下、単にメニスカス速度という。)を表す。ここではインク滴の吐出方向の速度を(+)方向とし、メニスカスの引き込み方向の速度を(−)方向とする。また、図10(c)は、図10(b)に示したメニスカス位置変化速度曲線上の各時点において第3行程を開始した場合に得られるインク滴の飛翔速度の変化を表すもので、横軸は第3行程の開始タイミング、縦軸はインク滴の飛翔速度を表す。また、図10(d)は、図10(b)に示したメニスカス位置変化速度曲線上のいくつかの時点において第3行程を開始した場合に得られるインク滴サイズの変化を表すもので、横軸は第3行程の開始タイミング、縦軸はインク滴径を表す。なお、これらの図では、横軸、縦軸とも任意の単位で表している。
【0057】
図10(b)に示したように、メニスカス速度は固有の振動周期で変化し、その変化振幅は徐々に減衰する。これに対応して、図10(c)に示したように、インク滴の飛翔速度も、メニスカス速度の振動周期と同じ周期で変化し、その変化振幅は徐々に減衰する。ここで、インク滴の飛翔速度の変化の位相は、図9においても説明したように、メニスカス速度の変化の位相に対して約1/2周期分ずれている。このことから、インク滴の飛翔速度は、メニスカス位置が吐出方向に向かって変化するときに吐出を行った場合よりも、メニスカス位置が引き込み方向に向かって変化するときに吐出を行った場合の方が、より大きくなることが判る。しかも、引き込み方向に向かって変化する速度が大きいほどインク滴の飛翔速度は大きくなる。例えば、メニスカス速度が引き込み方向に極大となる時点(例えば、点P1,P2,P3,P4等)で第3行程を開始すると、インク滴の飛翔速度はそれぞれ極大値(例えば、点Q1,Q2,Q3,Q4等)をとり、逆に、メニスカス速度が吐出方向に極大となる時点(例えば、点P5,P6,P7等)で第3行程を開始すると、インク滴の飛翔速度はそれぞれ極小値(例えば、点Q5,Q6,Q7等)をとる。
【0058】
このように、インク滴の飛翔速度は、第3行程開始時点におけるメニスカス速度と直接関係していることが判る。したがって、第3行程開始時点におけるメニスカス速度を適宜に設定(あるいは選択)することにより、インク滴の飛翔速度を正確に制御することができるのである。特に、第3行程の開始時点が、引き込み方向に向かってメニスカス速度が極大値をとるタイミング(図10(b)の点P1または点P2等のいずれか)と一致することとなるように第1行程を開始すれば、インク滴の飛翔速度を高速にし、かつ一定化することが可能である。
【0059】
また、図9においても説明したように、インク滴サイズは第3行程開始時点におけるメニスカス位置に依存し、メニスカス深い位置で吐出が行われるほどインク滴サイズが小さくなる。したがって、例えば、インク滴の飛翔速度がそれぞれ極大となるタイミングQ1,Q2,Q3,Q4等におけるメニスカス位置は、同図(a)に示したように、時間の経過と共に深い位置から順序浅い位置へと変化していることから、これらの各タイミングで吐出されたインク滴のサイズは、吐出タイミングが遅くなるほど大きくなる(図10(d)のS1〜S4等)。また、メニスカス速度が最初に零となるタイミングP8では、インク滴の飛翔速度は中程度であるが(図10(c)のQ8)、この時点でメニスカス位置が最も深くなっているので、インク滴サイズは最小となる。
【0060】
このように、第1行程における引き込み後におけるメニスカス位置は固有の周期で振動して変化すると共に、吐出されるインク滴のサイズは第3行程開始時点におけるメニスカス位置に依存し、インク滴の飛翔速度は第3行程開始時点におけるメニスカス速度に依存する。したがって、メニスカス位置の固有振動を考慮しつつ、第3行程開始時点におけるメニスカス位置および飛翔速度を適切に設定(選択)することにより、インク滴のサイズと飛翔速度とを任意かつ正確に制御することができるのである。
【0061】
ところで、上記したようにインク滴のサイズは第3行程開始時点のメニスカス位置に依存するが、この第3行程開始時点のメニスカス位置は、第1行程の引き込み量に依存する。すなわち、第1行程の引き込み終了時点から第3行程の開始時点までの時間(第2行程の所要時間t2)が同じであっても、第1行程の引き込み量を変えることで、第3行程の開始時点におけるメニスカス位置を適宜選ぶことができる。一方、インク滴の飛翔速度は上記したように第3行程の開始時点のメニスカス速度に応じて変化するが、このメニスカス速度の振幅は、第1行程の引き込み量によって変化する。したがって、第1行程の引き込み終了時点から第3行程の開始時点までの時間が同じであっても、第1行程の引き込み量を変えることで、第3行程の開始時点におけるメニスカス速度を適宜選ぶことができる。したがって、第1行程の引き込み量を変えることで、インク滴のサイズと飛翔速度とを制御できる。このことを、さらに、図11を参照して説明する。
【0062】
図11は第2行程の所要時間t2を一定にしつつ第1行程の引き込み電圧V1を変化させた場合におけるメニスカス位置とメニスカス速度の変化を表すものである。この図の(a)はヘッド駆動信号の電圧波形を表し、横軸は時間、縦軸は電圧を表す。また、(b)はメニスカス位置の変化の様子を表し、横軸は時間、縦軸はメニスカス位置(開口端からメニスカスまでの距離)を表す。(c)は、メニスカス速度の変化の様子を表し、横軸は時間、縦軸はメニスカス速度を表す。
【0063】
ここで、実線で示したメニスカス位置の軌跡31およびメニスカス速度変化曲線35は、引き込み電圧をより小さく(V1=V11)した場合の電圧波形33に対応し、破線で示したメニスカス位置の軌跡32およびメニスカス速度変化曲線36は、引き込み電圧をより大きく(V1=V12)した場合の電圧波形34に対応する。ここで、上記したように、第3行程における所要時間t3および吐出電圧V2は一定とする。また、第1行程の所要時間t1は、本実施の形態では適切な値に固定するものとして説明するが、必要に応じて可変にしてもよい。
【0064】
図11(a),(b)から明らかなように、引き込み電圧が大きいと、メニスカスは深く引き込まれる。一方、インクの供給速度は同じなので、メニスカスの平均の前進速度(図11(b)で、メニスカス位置が開口端に向かって振動しながら前進するときの軌跡31,32の平均の傾きの大きさ)は等しい。このため、図11(b)に示したように、吐出開始時点(第3行程開始時点C)におけるメニスカス位置は、第2行程の所要時間t2が等しくても、異なってくる。ここで図示した例では、引き込み電圧V1が大きい場合はx2と深く、引き込み電圧V1が小さい場合はx1と浅くなる。すなわち、引き込み電圧V1の大きさを変更することによって第3行程開始時点Cにおけるメニスカス位置を変えることができるのである。
【0065】
また、図11(b)に示したように、引き込み電圧V1が大きい場合のメニスカス位置の軌跡32の振幅は、引き込み電圧V1が小さい場合のメニスカス位置の軌跡31の振幅よりも大きく、また、この場合の変動周期は変化しない。したがって、メニスカス位置の軌跡32の最大傾きはメニスカス位置の軌跡31の最大傾きよりも大きくなり、この結果、図11(c)に示したように、メニスカス速度変化曲線36の振幅は、メニスカス速度変化曲線35の振幅よりも大きくなる。このため、第2行程の所要時間t2(すなわち、引き込み終了時点Bから第3行程開始時点Cまでの時間)が等しくても、第3行程開始時点Cにおけるメニスカス速度は異なってくる。ここに図示した例では、引き込み電圧V1が大きい場合は引き込み方向に大きな速度vel2が得られ、引き込み電圧V1が小さい場合は引き込み方向に小さな速度vel1が得られることとなる。すなわち、引き込み電圧V1の大きさを変更することにより第3行程開始時点Cにおけるメニスカス速度を変えることができる。
【0066】
これらのことから、第2行程の所要時間t2を一定にしつつ第1行程の引き込み電圧V1を変化させることにより、インク滴のサイズと飛翔速度とを同時に制御することができるのである。
【0067】
次に、図12を参照して、本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1の全体動作を説明する。ここで、図12はヘッドコントローラ14(図1)における1吐出サイクルの要部の動作を表すものである。なお、ここでは、直前の吐出サイクルにおいてヘッドコントローラ14のカウンタ145(図4)が既にリセットされているものとして説明する。また、図12のステップS106でヘッド駆動信号を出力する以前においては、前回の吐出サイクルの吐出終了時点I(図5)における電圧V1がそのまま保持されているものとする。
【0068】
図1において、図示しないパーソナルコンピュータ等の情報処理装置から印刷データがインクジェットプリンタ1に入力されると、画像処理部15は、この入力データに対して所定の画像処理(例えば圧縮されたデータの伸長等)を行ったのち、これを記録データとしてヘッドコントローラ14に送出する。
【0069】
ヘッドコントローラ14の主制御部141(図4)は、記録データが入力されると(図12ステップS101;Y)、このデータを基に、ここで対象としている1つのドットを形成するためのインク滴のサイズおよび飛翔速度を判定(選択)する(ステップS102)。
【0070】
例えば、高い濃度を表現するにはインク滴サイズを大きくし、低い濃度を表現する場合や高解像度表現を行う場合にはインク滴サイズを小さくするように判定する。また、自然画像や濃度勾配をもった画像等を表現する場合には、必要に応じて、隣接するドット間でインク滴サイズを異ならせるように判定する。
【0071】
また、例えば、記録ヘッドの走行速度が、その走行ストローク上の位置によってわずかに変化するものである場合において、この速度誤差を補正しようとする場合には、ストローク方向における各ドットの座標に応じてインク滴の飛翔速度を決定するようにする。例えば、記録ヘッド11のキャリッジ移動速度がストロークの中央部に比べて両端付近で遅いことが判っている場合には、両端部付近でインク滴の飛翔速度を遅めにすると共に、中央部ではインク滴の飛翔速度を速めにするように判定する。一方、記録ヘッド11の移動速度がストロークの位置に係わらず高精度に一定であることが保証されている場合には、インク滴の飛翔速度を常に一定にするように判定する。これらの場合、インク滴の飛翔速度の絶対値をどの程度に設定するかは、記録ヘッド11と記録用紙との距離やその他の諸条件を勘案して予め定めておく。
【0072】
次に、主制御部141は、判定したインク滴の飛翔速度に応じた駆動電圧波形の波形データを駆動電圧波形記憶部144から読み出す(ステップS103)。この駆動電圧波形記憶部144には、図4で説明したように、インク滴のサイズおよび飛翔速度に応じた様々な形の波形データが記憶されている。本実施の形態では、例えば上記したように記録ヘッド11の走行位置に応じてインク滴のサイズおよび飛翔速度を変える場合には、各ドットについて、判定された飛翔速度に対応する引き込み電圧V1をもった波形データを読み出す。また、インク滴のサイズおよび飛翔速度を一定に制御する場合には、予め決められた1種類の波形データのみをすべてのドットについて繰り返し読み出す。
【0073】
次に、主制御部141は、読み出した波形データを基に、前回のサイクルにおける第3行程の開始時点H(すなわち、カウンタ145がリセットされてカウントアップが開始された時点である吐出時点)から現サイクルにおける引き込み開始時点C(第1行程開始時点)までの時間τを求める(ステップS104)。この時間τは、図5から明らかなように、吐出の間隔(吐出タイミングクロックの周期)Tから第1行程および第2行程の所要時間の合計(t1+t2)を差し引くことで求められる。以上述べたステップS101〜S104の処理は、図5の時点I以降、時点A以前の短時間内に行われる。なお、今回読み出した波形データにおける電圧V1(すなわち、時点Aにおける電圧)が、前回の吐出サイクルにおける時点Iでの電圧と異なるときは、読み出し直後のできるだけ早い時点で、圧電素子122に印加している電圧V1の値を今回読み出した新たな値に変更し、これを保持する。
【0074】
こののち、主制御部141は、ステップS104で求めた時間τの経過を待つ(ステップS105)。そして、時間τが経過し、時点Aにおいてカウンタ145からタイムアップ信号が入力されると(ステップS105;Y)、主制御部141は読み出した波形データの出力を開始する(ステップS106)。この波形データは、D/Aコンバータ146でアナログ信号に変換されたのちアンプ147で増幅されて、例えば図5(a)のA〜Eに示したような波形のヘッド駆動信号として記録ヘッド11に供給される。記録ヘッド11では、このヘッド駆動信号の電圧波形に基づいて、図5で説明したような3つの行程が行われ、これにより、波形データによって指定された通りのサイズおよび飛翔速度をもつインク滴が吐出される。そして、さらに、時点E以後の期間で次の吐出サイクルの準備、すなわち、入力データに基づくインク滴サイズ等の判定や波形データの読み出し等の処理(ステップS101〜S104)を行う。以後、このような吐出動作と吐出準備処理とを繰り返す。
【0075】
さて、ステップS106においてヘッド駆動信号の出力が開始したのちは、第3行程の開始時点Cで吐出タイミングクロックが入力されるので(ステップS107;Y)、ここでカウンタ145はリセットされ、さらに次の吐出サイクルのためのカウントアップを開始する(ステップS108)。そして、図5(a)の時点Dにおいて第3行程が終了し(ステップS109)、さらに時点Eにおいて駆動電圧がV1に戻されたのち、次の吐出サイクルの開始時点Fが到来するまでの間、電圧V1をそのままあるいは上記のように変更して保持する。この間にインク室113にはインクが充填(リフィル)されて、次の吐出の準備が行われる。これで、1吐出サイクルを終了する。
【0076】
このように、本実施の形態では、引き込み電圧V1によってメニスカスを引き込む第1行程と、駆動電圧を0に保持した状態でインクを供給してメニスカス位置を前進させる第2行程と、固有の振動周期で変動するメニスカス速度に合わせて吐出電圧V2を印加してインク滴を吐出する第3行程の3行程によってインク吐出動作を行うに際し、第1行程における引き込み電圧V1を変化させることにより吐出開始時のメニスカス位置およびメニスカス速度を適宜に設定するようにしたので、インク滴のサイズおよび飛翔速度を任意に制御することが可能である。もちろん、引き込み電圧V1を固定することにより、インク滴のサイズおよび飛翔速度を高精度に一定化することも可能である。
【0077】
以上の説明では、第3行程における所要時間t3(すなわち、インク室113の収縮速度)および吐出電圧V2の大きさ(すなわち、インク室113の収縮量)は一定としたが、これらのパラメータをも変化させるようにしてもよい。一般に、インク滴のサイズおよび飛翔速度は、第3行程における吐出電圧V2や所要時間t3によっても変化し、例えば、吐出電圧V2を大きくするほどインク滴のサイズは大きくなり、所要時間t3を小さくするほどインク滴の飛翔速度は大きくなる。したがって、引き込み電圧V1の制御と併せてこれらのパラメータ(V2,t3)の制御をも行うようにすれば、より多様な制御が可能となり、インク滴のサイズおよび飛翔速度の制御範囲を拡大することも可能となる。
【0078】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0079】
本実施の形態は、第1行程の引き込み電圧V1を一定にしつつ第2行程の所要時間t2の長さを変化させることで第3行程開始時のメニスカス位置およびメニスカス速度を適宜に設定するものである。ここで、第3行程開始時点(すなわち、インク滴の吐出開始時点)Cの位置は、上記した吐出タイミングクロックに同期して固定されているので、第2行程の所要時間t2の長さを変化させるためには、第1行程の開始時点Aの位置を変更する必要がある。なお、本実施の形態では、予め図4の駆動電圧波形記憶部144に、各インク滴のサイズおよび飛翔速度に応じてそれぞれ異なる長さの第2行程所要時間t2をもつ複数種類の波形データを格納しておき、これを読み出して利用するようにすればよい。その他の構成は上記第1の実施の形態の場合と同様である。
【0080】
図13は第1行程の引き込み電圧V1を一定にしつつ第2行程の所要時間t2を変化させた場合におけるメニスカス位置とメニスカス速度の変化を表すものである。この図の(a)はヘッド駆動信号の電圧波形を表し、横軸は時間、縦軸は電圧を表す。また、(b)はメニスカス位置の変化の様子を表し、横軸は時間、縦軸はメニスカス位置(開口端からメニスカスまでの距離)を表す。ここで、実線で示したメニスカス位置の軌跡41は、第2行程の所要時間をより長く(t2=t21)した場合の電圧波形43に対応し、破線で示したメニスカス位置の軌跡42は、第2行程の所要時間をより短く(t2=t22)した場合の電圧波形44に対応する。なお、本実施の形態においても、第1行程の所要時間t1、並びに第3行程における所要時間t3および吐出電圧V2の大きさは一定であるとして説明する。
【0081】
これらの図から明らかなように、第1行程の引き込み電圧V1が等しいので、引き込み直後におけるメニスカス位置は等しいが、第2行程の所要時間t2が異なるので、第1行程の終了時点Bから第3行程開始時点Cまでのメニスカスの前進量は異なる。このため、第3行程開始時点Cにおけるメニスカス位置は異なってくる。
【0082】
また、第2行程の所要時間t2が異なっていても、メニスカス位置の軌跡41,42の波形自体は等しいので(図13(b))、メニスカス速度曲線45,46の波形も等しい。ところが、メニスカス位置の軌跡41,42の間には、(t21−t22)に相当する位相差が存在するので、これに対応してメニスカス速度曲線45,46の間にも同じだけの位相差が存在する。このため、同図(c)に示したように、第1行程の引き込み電圧V1(すなわち、メニスカスの引き込み量)が等しくても、第3行程開始時点Cにおけるメニスカス速度は異なってくる。
【0083】
ここに図示した例では、第2行程の所要時間t2が短い場合は、第3行程開始時点Cにおけるメニスカス位置がx2′と深く、かつ、引き込み方向に大きな速度vel2′が得られる。一方、第2行程の所要時間t2が長い場合は、第3行程開始時点Cにおけるメニスカス位置がx1と浅く、かつ、引き込み方向に小さな速度vel1が得られることとなる。したがって、この場合には、前者の組み合わせにおいて、より小さなインク滴サイズと、より大きなインク滴の飛翔速度とが得られることとなる。但し、第2行程の所要時間t2の設定いかんによっては、メニスカス速度変化曲線45,46間の位相差の関係により、第3行程開始時点におけるメニスカス位置およびメニスカス速度のそれぞれの大小関係が逆転し、インク滴サイズおよび飛翔速度の大小がそれぞれ逆になることもある。いずれにしても、第2行程の所要時間t2の長さを変更することで第3行程開始時点Cにおけるメニスカス位置とメニスカス速度とを変えることができ、これにより、インク滴のサイズおよび飛翔速度を制御することができるのである。
【0084】
このように、本実施の形態では、引き込み電圧V1によってメニスカスを引き込む第1行程と、駆動電圧を0に保持した状態でインクを供給してメニスカス位置を前進させる第2行程と、固有の振動周期で変動するメニスカス速度に合わせて吐出電圧V2を印加してインク滴を吐出する第3行程の3行程によってインク吐出動作を行うに際し、第2行程の所要時間t2を変化させることにより吐出開始時におけるメニスカス位置およびメニスカス速度を適宜に設定するようにしたので、インク滴のサイズおよび飛翔速度を任意に制御することが可能である。
【0085】
また、上述したように、インク滴のサイズおよび飛翔速度は、第3行程における所要時間t3(インク室113の収縮速度)や吐出電圧V2の大きさ(インク室113の収縮量)によっても変化するので、第2行程の所要時間t2の制御と併せてこれらのパラメータ(t3,V2)の制御をも行うようにすれば、より多様な制御が可能となり、インク滴のサイズおよび飛翔速度の制御範囲を拡大することも可能となる。
【0086】
[第3の実施の形態]
次に、本発明のさらに他の実施の形態を説明する。
【0087】
本実施の形態は、第1行程のメニスカスの引き込み量および第2行程の所要時間t2の双方を変化させることで第3行程開始時点におけるメニスカス位置およびメニスカス速度を適宜に設定するものである。ここで、第3行程開始時点(インク滴の吐出時点)Cの位置は、上記した吐出タイミングクロックに同期して固定されているので、第2行程の所要時間t2の長さを変化させるためには、第1行程の開始時点Aの位置を変更する必要がある。したがって、本実施の形態では、実際には、第1行程の引き込み電圧V1の大きさと第1行程の開始時点Aの位置とを変化させてメニスカス速度を調整することとなる。なお、本実施の形態では、予め図4の駆動電圧波形記憶部144に、各インク滴のサイズおよび飛翔速度に応じてそれぞれ異なる引き込み電圧V1および第2行程所要時間t2を組み合わせた複数種類の波形データを格納しておき、これを読み出して利用するようにすればよい。その他の構成は上記第1の実施の形態の場合と同様である。
【0088】
図14は第1行程のメニスカス引き込み量および第2行程の所要時間t2を変化させた場合におけるメニスカス位置とメニスカス速度の変化を表すものである。この図の(a)はヘッド駆動信号の電圧波形を表し、横軸は時間、縦軸は電圧を表す。また、(b)はメニスカス位置の変化の様子を表し、横軸は時間、縦軸はメニスカス位置(開口端からメニスカスまでの距離)を表す。ここで、実線で示したメニスカス位置の軌跡51は、第1行程の引き込み電圧をより小さく(V1=V11)すると共に第2行程の所要時間をより長く(t2=t21)した場合の電圧波形53に対応し、破線で示したメニスカス位置の軌跡52は、第1行程の引き込み電圧をより大きく(V1=V12)すると共に第2行程の所要時間をより短く(t2=t22)した場合の電圧波形54に対応する。なお、本実施の形態においても、第1行程の所要時間t1、並びに第3行程における所要時間t3および吐出電圧V2は一定であるとして説明する。
【0089】
これらの図から明らかなように、この例では、第1行程の引き込み電圧V1も第2行程の所要時間t2も共に異なるように設定しているので、図14(b)に示したメニスカス位置の軌跡51,52は、振幅も位相も異なり、この結果、第3行程開始時点Cにおけるメニスカス位置も異なってくる。また、図14(c)に示したメニスカス速度曲線55,56もまた、振幅も位相も異なるため、第3行程開始時点Cにおけるメニスカス速度も異なってくる。
【0090】
ここに図示した例では、第1行程の引き込み電圧V1が大きく、かつ第2行程の所要時間t2が短い場合は、第3行程開始時点Cにおけるメニスカス位置がx2″と深く、かつ、引き込み方向に大きな速度vel2″が得られ、第1行程の引き込み電圧V1が小さく、かつ第2行程の所要時間t2が長い場合は、第3行程開始時点Cにおけるメニスカス位置がx1と浅く、かつ、引き込み方向に小さな速度vel1が得られることとなる。したがって、この場合には、前者の組み合わせにおいて、より小さなインク滴サイズと、より大きなインク滴の飛翔速度とが得られる。但し、第2行程の所要時間t2の設定いかんによっては、メニスカス速度変化曲線55,56間の位相差の関係により、第3行程の開始時点におけるメニスカス速度の大小関係が逆転し得るので、インク滴の飛翔速度の大小が逆になることもある。いずれにしても、第1行程の引き込み電圧V1および第2行程の所要時間t2の双方を変更することによっても、第3行程開始時点Cにおけるメニスカス位置およびメニスカス速度を変えることができ、これにより、インク滴の飛翔速度を制御することができるのである。
【0091】
このように、本実施の形態では、引き込み電圧V1によってメニスカスを引き込む第1行程と、駆動電圧を0に保持した状態でインクを供給してメニスカス位置を前進させる第2行程と、固有の振動周期で変動するメニスカス速度に合わせて吐出電圧V2を印加してインク滴を吐出する第3行程の3行程によってインク吐出動作を行うに際し、第1行程の引き込み電圧V1と第2行程の所要時間t2とを変化させることにより吐出開始時におけるメニスカス位置およびメニスカス速度を適宜に設定するようにしたので、インク滴のサイズおよび飛翔速度を任意に制御することが可能である。
【0092】
なお、第1行程の引き込み電圧V1と第2行程の所要時間t2とを種々に変更して組み合わせることにより、インク滴のサイズおよび飛翔速度を種々に変化させることが可能である。例えば、第1行程の引き込み電圧V1を大きくすると共に第2行程の所要時間t2を長くしたり、あるいは逆に、第1行程の引き込み電圧V1を小さくすると共に第2行程の所要時間t2を短くするような制御も可能である。これにより、多様な制御が可能となる。
【0093】
また、上述したように、インク滴のサイズおよび飛翔速度は、第3行程における吐出電圧V2の大きさ(インク室113の収縮量)や所要時間t3(インク室113の収縮速度)によっても変化するので、第1行程の引き込み電圧V1および第2行程の所要時間t2の制御と併せてこれらのパラメータ(V2,t3)の制御をも行うようにすれば、さらに多様な制御が可能となり、インク滴のサイズおよび飛翔速度の制御範囲を拡大することも可能となる。
【0094】
ところで、図10(b)から明らかなように、第3行程開始時点におけるメニスカス速度は、例えば引き込み終了時点を起算点としたメニスカス速度の位相を選ぶことで設定(あるいは選択)可能である。インク滴の飛翔速度の変動周期はメニスカス速度の変動周期と等しいので、位相が決まればそこでのメニスカス速度も定まり、この結果、インク滴の飛翔速度も定まるからである。但し、実際には、メニスカス速度の変化の振幅は、図10(b)に示したように次第に減衰することから、たとえ相対位相が同じであっても絶対位相が異なると(すなわち、周期の整数倍の差があると)、メニスカス速度は正確に等しくはならない。しかし、減衰量がまだ少ない引き込み直後の早期のタイミング(2,3周期程度以前のタイミング)で吐出動作を行う限りにおいては、相対位相を指定することとメニスカス速度を指定することとは、ほぼ等しいことになる。したがって、このような引き込み直後の2〜3周期程度の範囲内では、メニスカス速度の相対位相が所定値となった時点で第3行程を開始するようにすれば、1周期分の位相(2π)の整数倍に等しい位相だけ吐出タイミングを変えたとしても、インク滴の飛翔速度はほぼ一定となる。
【0095】
例えば、引き込み終了時点を起点とした絶対位相が2nπ(nは整数)となる時点P1〜P4等においてそれぞれ吐出を開始した場合、これらのタイミングでそれぞれ得られるインク滴の飛翔速度(図10(c)の点Q1〜Q4等で与えられる速度)は、ほぼ等しいものとなるのである。特に、この例では、最高速に近い飛翔速度が得られる。しかも、このように相対位相が同じである複数のタイミングにおいては、より早いタイミングで第3行程を開始した場合の方がインク滴サイズが小さくなる(図10(d))。したがって、第3行程を開始するタイミングを適切に選択することにより、インク滴の飛翔速度をほぼ一定にしつつインク滴サイズを変えるという制御が可能となる。
【0096】
これに対して、第3行程の開始時点におけるメニスカス速度の絶対位相を1つ(例えば2π)だけに固定するようにしたときには(図10(c)のP2)、インク滴の飛翔速度を高精度に一定化することが可能である。但し、この場合には、インク滴サイズもまた一定化されることとなる(図10(d)のS1)。
【0097】
なお、一般に、インク滴の飛翔速度はより高速であることが望ましいので、図10では、メニスカス速度が引き込み方向に極大となる位相点P1〜P4等を選んで説明したが、必要に応じて異なる位相を選ぶことも可能である。例えば、メニスカス速度が零となる位相点P8〜P13等を選択することも可能である。この場合には、インク滴の飛翔速度は中程度の値でほぼ一定化することとなるが、その反面、図10(a)に示したように、これらのタイミングに対応するメニスカス位置(メニスカス位置がその固有振動中で極値をとる点R8〜R13等)はすべて異なってくるので、インク滴サイズをきめ細かく変化させる制御が可能となる。もちろん、その他の任意の位相を選択して、インク滴の飛翔速度をほぼ一定に保ちながらインク滴サイズを制御することも可能である。
【0098】
以上、いくつかの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その均等の範囲内で種々変更可能である。例えば、上記の各実施の形態では、第2行程の保持電圧を0Vにすると共に第1行程の引き込み電圧V1および第3行程の吐出電圧V3を同極性の電圧としたが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、引き込み電圧V1を0Vにすると共に第2行程の保持電圧と第3行程の吐出電圧V2とを逆極性の電圧にすることも可能である。
【0099】
また、上記の各実施の形態では、ヘッドコントローラ14の主制御部141が駆動電圧波形記憶部144から波形データを読み出し、これを基に、指定されたインク滴の飛翔速度を得るためのヘッド駆動信号を作成して出力するというソフトウェア的手法によって制御を行うこととしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ロジック回路を用いてヘッド駆動信号を作成するというハードウェア的手法によって制御を行うようにしてもよい。
【0100】
また、上記の各実施の形態では、インク室113へのインク供給を常時一定速度で行うこととしたが、例えば、第2行程の期間、および第3行程終了後のリフィル期間の2つの期間においてのみインク供給を行うようにしてもよい。また、、例えばインクカートリッジ12に加圧機構を設けて圧力制御を行うことにより、第2行程におけるインク供給速度と、第3行程終了後のリフィル期間におけるインク供給速度とを異ならせるようにしてもよい。
【0101】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のインクジェットプリンタまたは請求項8ないし請求項14のいずれかに記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法によれば、第3行程の開始時点(吐出開始時点)におけるインク先端部のメニスカス速度を一定にしつつ、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置を適宜に設定(選択)することによってインク滴の飛翔速度を制御するように構成したので、インク滴の飛翔速度を一定化しつつインク滴のサイズを制御することができる。このため、例えば記録ヘッドが一定速度で走行しながら記録を行う場合のインク滴の着弾位置ずれを低減しつつ均一な濃度表現や中間階調表現を高精度に行うことができる等、記録画像の品質を向上させることができるという効果がある。
【0102】
特に、請求項2記載のインクジェットプリンタまたは請求項記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法によれば、上記制御に加えて第3行程におけるインク室の収縮量および収縮速度の制御をも行うようにしたので、インク滴の大きさおよび飛翔速度のさらに多様な制御が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタの全体構成を表すブロック図である。
【図2】記録ヘッドの一構造例を表す斜視断面図である。
【図3】記録ヘッドの一構造例を表す断面図である。
【図4】ヘッドコントローラの一構成例を表すブロック図である。
【図5】記録ヘッドの動作の一例を表す説明図である。
【図6】第1行程におけるメニスカスの引き込み電圧V1とメニスカスの前進所要時間との関係を調べるための一実験例の結果を表す図である。
【図7】引き込み後におけるメニスカス位置の変化の様子を調べるための一実験例の結果を表す図である。
【図8】引き込み開始時点から第3行程開始時点までの時間を変化させたときのインク滴の飛翔速度の変化の様子を調べるための一実験例の結果を表す図である。
【図9】図7に示した実験結果と図8に示した実験結果とを重ね合わせた図である。
【図10】メニスカス位置とメニスカス速度とインク滴の飛翔速度とインク滴のサイズとの関係を説明するための説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法を説明するためのもので、より具体的には、第1行程の引き込み電圧のみを変化させた場合におけるメニスカス位置およびメニスカス速度の変化を表す図である。
【図12】ヘッドコントローラの主制御部の動作を説明するための流れ図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法を説明するためのもので、より具体的には、第2行程の所要時間のみを変化させた場合におけるメニスカス位置およびメニスカス速度の変化を表す図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係るインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法を説明するためのもので、より具体的には、第1行程のメニスカスの引き込み電圧および第2行程の所要時間の双方を変化させた場合におけるメニスカス位置およびメニスカス速度の変化を表す図である。
【符号の説明】
1…インクジェットプリンタ、2…記録用紙、11…記録ヘッド、12…インクカートリッジ、14…ヘッドコントローラ、111c…振動プレート、113…インク室、115…ノズル開口、117…共通流路、122…圧電素子、141…主制御部、144…駆動電圧波形記憶部、145…カウンタ、V1…引き込み電圧、V2…吐出電圧、t1…第1行程の所要時間、t2…第2行程の所要時間、t3…第3行程の所要時間

Claims (14)

  1. インク滴を吐出するためのノズル開口部と、
    前記ノズル開口部に連通するインク室と、
    前記インク室にインクを供給するインク供給路と、
    印加電圧に応じて前記インク室を膨張または収縮させる圧電素子と、
    前記圧電素子によって前記インク室を膨張させることにより前記ノズル開口部を介して外気に接するインク先端部をインク室の方向に引き込む第1行程と、前記インク供給路から前記インク室にインクを供給することにより前記インク先端部を前記ノズル開口部の方向に前進させる第2行程と、前記圧電素子によって前記インク室を収縮させることにより前記ノズル開口部からインク滴を吐出させる第3行程とを制御する行程制御手段と
    を備えたインクジェットプリンタであって、
    前記行程制御手段は、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部のメニスカス速度を一定にしつつ、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置を適宜に設定することにより、前記第3行程において吐出されるインク滴の大きさおよび飛翔速度を制御する
    ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
  2. 前記行程制御手段は、さらに、前記第3行程における前記インク室の収縮量の制御をも行うことによりインク滴の大きさを制御すると共に、インク室の収縮速度の制御をも行うことによりインク滴の飛翔速度を制御する
    ことを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
  3. 前記行程制御手段は、前記第2行程の所要時間を一定にしつつ前記第1行程におけるインク先端部の引き込み量を変化させることによって、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置およびメニスカス速度を適宜に設定する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のインクジェットプリンタ。
  4. 前記行程制御手段は、前記第1行程におけるインク先端部の引き込み量を一定にしつつ前記第2行程の所要時間を変化させることによって、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置およびメニスカス速度を適宜に設定する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のインクジェットプリンタ。
  5. 前記行程制御手段は、前記第1行程におけるインク先端部の引き込み量および前記第2行程の所要時間を変化させることによって、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置およびメニスカス速度を適宜に設定する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のインクジェットプリンタ。
  6. 前記行程制御手段は、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の周期的位置変化の位相を適宜に設定することにより、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置およびメニスカス速度を設定する
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
  7. 前記行程制御手段は、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の周期的位置変化の位相を一定にすることにより、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部のメニスカス速度を一定化する
    ことを特徴とする請求項6記載のインクジェットプリンタ。
  8. インク滴を吐出するためのノズル開口部と、前記ノズル開口部に連通するインク室と、前記インク室にインクを供給するインク供給路と、印加電圧に応じて前記インク室を膨張または収縮させる圧電素子とを備えたインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法であって、
    前記圧電素子によって前記インク室を膨張させることにより前記ノズル開口部を介して外気に接するインク先端部をインク室の方向に引き込む第1行程と、前記インク供給路から前記インク室にインクを供給することにより前記インク先端部を前記ノズル開口部の方向に前進させる第2行程と、前記圧電素子によって前記インク室を収縮させることにより前記ノズル開口部からインク滴を吐出させる第3行程とを制御する行程とを含み、
    前記第3行程の開始時点における前記インク先端部のメニスカス速度を一定にしつつ、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置を適宜に設定することにより、前記第3行程において吐出されるインク滴の大きさおよび飛翔速度を制御する
    ことを特徴とするインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法。
  9. さらに、前記第3行程における前記インク室の収縮量の制御をも行うことによりインク滴の大きさを制御すると共に、インク室の収縮速度の制御をも行うことによりインク滴の飛翔速度を制御する
    ことを特徴とする請求項8記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法。
  10. 前記第2行程の所要時間を一定にしつつ前記第1行程におけるインク先端部の引き込み量を変化させることによって、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置およびメニスカス速度を適宜に設定する
    ことを特徴とする請求項8または請求項9記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法。
  11. 前記第1行程におけるインク先端部の引き込み量を一定にしつつ前記第2行程の所要時間を変化させることによって、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置およびメニスカス速度を適宜に設定する
    ことを特徴とする請求項8または請求項9記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法。
  12. 前記第1行程におけるインク先端部の引き込み量および前記第2行程の所要時間を変化させることによって、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置およびメニスカス速度を適宜に設定する
    ことを特徴とする請求項8または請求項9記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法。
  13. 前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の周期的位置変化の位相を適宜に設定することにより、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の位置およびメニスカス速度を設定する
    ことを特徴とする請求項8ないし請求項12のいずれかに記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法。
  14. 前記第3行程の開始時点における前記インク先端部の周期的位置変化の位相を一定にすることにより、前記第3行程の開始時点における前記インク先端部のメニスカス速度を一定化する
    ことを特徴とする請求項13記載のインクジェットプリンタ用記録ヘッドの駆動方法。
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