JP4284135B2 - タンパク質分析方法 - Google Patents

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本発明は、タンパク質分析方法に関する。本発明のタンパク質分析方法では、寿命の長い蛍光を有する希土類金属錯体をタンパク質の染色剤として用いる。本明細書における「分析」には、分析対象物質の存在の有無を判定する「検出」と、分析対象物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」とが含まれる。
カラムクロマトグラフィーの分野では、タンパク質の存在を知る方法として、タンパク質自体が紫外部に持つ吸収を測定する方法が広く用いられている。また、更に高感度に検出するために、例えば、ニンヒドリン又はフルオレッサミンなどを反応させて、可視部に吸収又は蛍光などを持たせて検出する方法も広く用いられている。一方、タンパク質定量法の分野では、タンパク質が持つ還元性を利用して、銅キレートなどを発色させる方法が知られている。また、電気泳動法の分野では、タンパク質を可視化して認識するために、クマシーブリリアントブルー(CBB)染色のように、タンパク質に吸着する色素を用いて染色後、未吸着の色素を除いて観察する方法や、やはりタンパク質の還元性を利用して、銀イオンを金属コロイド化して観察する方法が用いられている。他にも、カラムクロマトグラフィー及び電気泳動法の両分野で更なる高感度化のために、フルオレッセイン等の蛍光を発する物質をタンパク質に結合して、蛍光量からタンパク質を検出する方法も試みられている。
一方、高感度な標識物質の一つとして、希土類金属錯体が知られている。これは、例えば、ランタニド(例えば、ユーロピウム、サマリウム、テルビウム、又はジスプロシウム等)、イットリウム、又はスカンジウム等の希土類金属元素と特定の構造を有するリガンドとで錯体を形成させ、励起光を照射することによって、希土類金属元素特有の寿命の長い蛍光を発することを利用する分析方法である。パルス状の励起光を照射し、一定時間経過した後の蛍光を測定すると、環境から発生した蛍光は寿命が短いため消失してしまっているのに対して、希土類金属錯体に起因する蛍光は残っているため、希土類金属錯体特異的な蛍光を測定できるというメリットを持っている。これらの希土類金属錯体、特にユーロピウム錯体をフルオレッセインなどの蛍光物質の代わりにタンパク質の標識物質として用いようとする試みもなされてきた。本発明者及び共同研究者も、既に、電気泳動時の高感度なタンパク質標識剤として、4,4’,−ビス(1”,1”,1”,2”,2”,3”,3”−ヘプタフルオロ−4”,6”−ヘキサンジオン−6”−イル)−クロロスルホ−オルトテルフェニルを報告している(特許文献1)。
特開2001−356128号公報
ユーロピウム錯体は、一般的に知られている蛍光物質より高感度で、環境から生じる蛍光に影響されないというメリットを持つ。しかし、ユーロピウムと配位するリガンドに導入されたタンパク質結合性官能基(例えば、クロロスルホニル基又はイソチオシアネート基など)を介して標識する場合、フルオレッセインイソチオシアネート(FITC)をタンパク質に標識したときと同じ問題がある。すなわち、タンパク質のアミノ基に標識物質を結合する場合、1分子のタンパク質当たりの標識物質結合量は、タンパク質分子表面のアミノ基の数に依存し、その結合数は少ない。また、共有結合による標識方法では、タンパク質が変性状態となり、ネイティブなタンパク質と異なった挙動を示す。そこで、蛍光物質をタンパク質に大量に標識することができ、しかも、タンパク質が沈殿などの変性状態に陥らない高感度分析方法の開発が望まれていた。
従って、本発明の課題は、蛍光物質をタンパク質に大量に標識することができ、しかも、タンパク質が沈殿などの変性状態に陥らない高感度なタンパク質分析方法を提供することにある。
本発明者は、種々のメリットを有するユーロピウム錯体のタンパク質への標識方法を鋭意検討した結果、リガンドの一端に親水性のイオン性解離基(例えば、スルホン酸基など)を持ち、他の部分は疎水的なアルキル基やアリル基を骨格とし、その一部にユーロピウムに配位するジケトン構造を持つリガンドが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)やCBBのような物質と同様、ミセルを形成し、この染色剤がタンパク質と混合ミセルを形成し、吸着後でも強い蛍光を発することを見出した。この使用法では、共有結合による標識化を必要としないため、吸着は可逆的で、タンパク質に対するダメージは小さいにもかかわらず、結合量は多く、しかも、タンパク質に吸着させた後に電気泳動やクロマトグラフィーを行うこともできるし、電気泳動後のゲル内タンパク質を染色することもできる。本発明は、このような知見に基づくものである。
本発明の前記課題は、本発明による、(1)(a)タンパク質を含む試料と、
(b)希土類金属イオンと、
(c)一般式(I):
R−Y−(−X−Phe−COCH2COCn2n+1m (I)
(式中、Rは、−SO3H基、−OSO3基、−NH2基、式:
Figure 0004284135
[式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基である]で表される基、又は式:
Figure 0004284135
[式中、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基である]で表される基であり、Yは、−CH2−基、炭素環式環基、又は複素環式環基であり、Xは、−O−基、−S−基、−NH−基、−CH2−基、−OCH2−基、−CONH−基、又は−NHCO−基であり、Pheはフェニレン基であり、nは1〜5の整数であり、mは1、2又は3であり、但し、mが2又は3の場合には、X及びnは、独立して選択可能であるものとする)
で表される親水性リガンドと
を接触させる工程、及び
(2)続いて、親水性リガンドと希土類金属との錯体である親水性リガンド−希土類金属錯体とタンパク質とを含む複合体と、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体とが分離された状態で、前記複合体中の親水性リガンド−希土類金属錯体に由来する信号を分析する工程
を含むことを特徴とする、タンパク質の分析方法により解決することができる。
本発明の分析方法の好ましい態様によれば、支持体にブロットしたタンパク質を親水性リガンド−希土類金属錯体で染色し、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体を支持体から洗浄除去した後、支持体上に残留する複合体の蛍光を分析する。
本発明の分析方法の別の好ましい態様によれば、ゲル電気泳動で分画したタンパク質を、親水性リガンド−希土類金属錯体で染色し、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体を泳動ゲルから洗浄除去した後、泳動ゲル中に残留する複合体の蛍光を分析する。
本発明の分析方法の更に別の好ましい態様によれば、タンパク質を、親水性リガンド−希土類金属錯体で染色した後に電気泳動を行い、タンパク質を分画する操作と、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体をタンパク質から分離する操作とを同時に行い、複合体の蛍光を分析する。
本発明の分析方法の更に別の好ましい態様によれば、タンパク質を親水性リガンド−希土類金属錯体で染色した後に、カラムクロマトグラフィーによって、タンパク質を分画する操作と、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体をタンパク質から分離する操作とを同時に行い、複合体の蛍光を分析する。
本発明方法で使用する親水性リガンドは、親水性基と疎水性官能基とを有することから、タンパク質の種類を問わず容易に標識することができる。また、β−ジケトン骨格を有する配位子構造を有することから、希土類金属イオンと安定な長寿命の蛍光性錯体を形成することができる。従って、例えば、電気泳動やクロマトグラフィーによって分離されたタンパク質を前記親水性リガンドで標識し、その後に希土類金属イオンで蛍光性錯体を形成させ、得られた蛍光性錯体の蛍光測定(好ましくは時間分解蛍光測定)を行うことにより、タンパク質を高感度に分析することができる。また、支持体に直接固定化されたタンパク質の標識も可能である。更に、分離される前のタンパク質に予め親水性リガンドを標識しておき、その後に分離操作を行って、希土類金属イオンで蛍光性錯体を形成させ、得られた蛍光性錯体の蛍光測定(好ましくは時間分解蛍光測定)を行うことにより、タンパク質を高感度に分析することもできる。本発明方法では、前記のように、親水性リガンドの標識化の後に希土類金属イオンを添加することもできるし、あるいは、予め形成させた親水性リガンド−希土類金属錯体で標識することもできる。
本発明の分析方法によれば、蛍光物質をタンパク質に大量に標識することができ、しかも、タンパク質が沈殿などの変性状態に陥らない状態で分析することが可能である。
本発明の分析方法で用いる親水性リガンド−希土類金属錯体によれば、そのリガンド分子構造の親水性部位(イオン性解離基)と疎水性部位[例えば、フッ素置換アルキル基(−Cn2n+1;nは1以上の整数)]の性質を利用してミセルを形成させ、タンパク質に吸着することを可能とし、親水性リガンド−希土類金属錯体を、例えば、電気泳動によって分離したタンパク質を含むゲルに添加し、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体を洗浄除去後、親水性リガンド−希土類金属錯体の、例えば、時間分解蛍光測定により、低バックグラウンドの充分な検出限界を有する高感度分析を可能とする。電気泳動に用いる支持体として、ゲル(例えば、ポリアクリルアミドゲル又はアガロースゲルなど)に限らず、膜[例えば、ニトロセルロース膜又はポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜など]を用いて分離されたタンパク質への吸着も可能であり、電気泳動を行わず、膜にブロットしたタンパク質にも応用可能である。また、通常の電気泳動やクロマトグラフィーによる吸着されたタンパク質の分離と、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体の分離とを同時に行った後、親水性リガンド−希土類金属錯体の、例えば、時間分解蛍光測定により、低バックグラウンドの充分な検出限界を有する高感度分析を可能とする。測定は、時間分解蛍光測定に限らず、励起光照射下、蛍光測定も行うことができる。
本願発明の分析方法は、一般式(I)で表される化合物(以下、親水性リガンドとも称する)を使用する。より具体的には、本発明の分析方法は、
(1)(a)タンパク質を含む試料と、
(b)希土類金属イオンと、
(c)前記一般式(I)で表される親水性リガンドと
を接触させる工程、及び
(2)続いて、親水性リガンド−希土類金属錯体と分析対象タンパク質とを含む複合体と、分析対象タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体とが分離された状態で、前記複合体中の親水性リガンド−希土類金属錯体に由来する信号を分析する工程
を含む。
前記一般式(I)において、Yで表される炭素環としては、例えば、置換されていてもよい芳香族単環炭化水素環(例えば、ベンゼン環)、置換されていてもよい飽和単環炭化水素からなる3〜8員環(例えば、シクロヘキサン環)、置換されていてもよい不飽和単環炭化水素からなる4〜8員環(例えば、シクロヘキセン環又はシクロペンタジエン環)、置換されていてもよい縮合多環炭化水素環(例えば、ナフタレン環、フェナントレン環、又はフルオレン環)、又は炭化水素環集合(例えば、ビフェニル、テルフェニル、フェナントレン環、又はフルオレン環)が挙げられる。
Yで表される複素環としては、例えば、置換されていてもよい芳香族複素単環(例えば、チオフェン環)、置換されていてもよい3〜8員の飽和複素単環(例えば、テトラヒドロフラン環)、置換されていてもよい不飽和複素単環(例えば、ピロリン環)、又は置換されていてもよい縮合複素環(例えば、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、又はジベンゾフラン環)が挙げられる。
基Yは、希土類金属イオンと安定な錯体を形成し、しかも、その錯体が充分な蛍光強度及び蛍光寿命を有することができる点で、共役二重結合を含むことが好ましい。
Pheで表されるフェニレン基としては、1,4−フェニレンが好ましい。
Rで表される式:
Figure 0004284135
[式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4(好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1〜2)の低級アルキル基である]で表される基、又は式:
Figure 0004284135
[式中、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4(好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1〜2)の低級アルキル基である]で表される基としては、例えば、−N+(CH33、=N+(CH32、又は−N+(CH3225を挙げることができる。
一般式(I)で表される化合物としては、例えば、一般式(1):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(2):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(3):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(4):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(5):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(6):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(7):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(8):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(9):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(10):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(11):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(12):
Figure 0004284135
で表される化合物、一般式(13):
Figure 0004284135
で表される化合物、又は一般式(14):
Figure 0004284135
で表される化合物[各式中、*はCn2n+1(ここで、nは1から5までの整数である)であり、Rは、一般式(I)における定義と同じである]を挙げることができ、一般式(1)で表される化合物が好ましく、一般式(1)においてRがスルホン酸基である化合物がより好ましい。
一般式(I)で表される親水性リガンドは、希土類金属イオンに配位可能なβ−ジケトン構造を有することによって、蛍光を発することのできる親水性リガンド−希土類金属錯体を形成可能である。前記希土類金属としては、ランタニド(例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又はルテチウム)、イットリウム、又はスカンジウム等を挙げることができ、ランタニドが好ましく、ユーロピウム、サマリウム、テルビウム、又はジスプロシウムがより好ましい。
一般式(I)で表される親水性リガンドは、親水性基R及び疎水性基Cn2n+1を有するため、水系溶媒中において、それ自体でミセル形成可能であり、更に、親水性リガンド−希土類金属錯体としてもミセル形成可能である。
一般式(I)で表される親水性リガンドは、従来公知のラベル化剤と異なり、共有結合による標識化を必要としないため、分析対象タンパク質と共有結合を形成可能な反応官能基、例えば、アルデヒド基、クロロスルホニル基、イソチオシアネート基、サクシンイミド基、マレイミド基、又はトシル基などを有さない。
一般式(I)で表される化合物は、例えば、次のようにして製造することができる。
(製造法1)
第1工程
R−Y−(−X−Phe−H)m + CH3COX →
R−Y−(−X−Phe−COCH3m
[式中、Xはハロゲン原子(例えば塩素)であり、R、Y、X及びPheは前記式(I)と同義である]
この反応は、いわゆるフリーデル−クラフツアシル化(Friedel-Crafts acylation)であり、常法により行うことができる。溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム等が用いられ、塩化アルミニウム等のルイス酸の存在下に反応を行う。
第2工程
R−Y−(−X−Phe−COCH3m + Cn2n+1COOR1
R−Y−(−X−Phe−COCH2COCn2n+1m
[式中、R1は低級アルキル基(例えばメチル基又はエチル基)であり、R、Y、X、Phe、n及びmは前記式(I)と同義である]
この反応は、ケトン化合物とエステル化合物との縮合反応であり、常法により行うことができる。溶媒としては、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ジエチルエーテル等が用いられ、水素化ナトリウム、金属アルコキシド等の存在下に反応を行う。
(製造法2)
この製造法は、XがCH2である場合の製造法である。
第1工程
R−Y−(−CH2−Br)m + (HO)2B−Phe−COCH3
R−Y−(−CH2−Phe−COCH3m
[式中、R、Y、Phe及びmは前記式(I)と同義である]
この反応は、テトラヒドロフラン−水混合溶媒等の溶媒中、PdCl2(dppf)・CH2Cl2(dppf=1,1'-Bis(diphenylphosphino)ferrocene)の存在下に反応を行う。
第2工程
R−Y−(−CH2−Phe−COCH3m + Cn2n+1COOR1
R−Y−(−CH2−Phe−COCH2COCn2n+1m
[式中、R1は低級アルキル基(例えばメチル基又はエチル基)であり、R、Y、Phe、n及びmは前記式(I)と同義である]
この反応は、製造法1の第2工程と同様に行うことができる。
(製造法3)
この製造法は、XがOである場合の製造法である。
第1工程
R−Y−(−OH)m + F−Phe−COCH3 (又はBr−Phe−COCH3)→
R−Y−(−O−Phe−COCH3)m
[式中、R、Y、Phe及びmは前記式(I)と同義である]
この反応は、溶媒にK2CO3、NaOH又はNaH等を加え行う。
第2工程
R−Y−(−O−Phe−COCH3m + Cn2n+1COOR1
R−Y−(−O−Phe−COCH2COCn2n+1m
[式中、R1は低級アルキル基(例えばメチル基又はエチル基)であり、R、Y、Phe、n及びmは前記式(I)と同義である]
この反応は、製造法1の第2工程と同様に行うことができる。
一般式(I)で表される化合物の内、Rがスルホン酸基である化合物は、例えば、基Yとして芳香族官能基を用いることで、濃硫酸を反応させるか、あるいは、HSO3Clを反応させた後に加水分解反応させることにより、スルホン酸基を容易に導入することが可能である。
一般式(I)で表される親水性リガンドは、希土類金属イオンと一緒になって、蛍光性錯体(すなわち、親水性リガンド−希土類金属錯体)を形成すると共に、ミセルを形成することができる。この蛍光性錯体は、更に、分析対象であるタンパク質と一緒になって、混合ミセル(すなわち、親水性リガンド−希土類金属錯体と分析対象タンパク質とを含む複合体)を形成することができる。
前記複合体中の親水性リガンド−希土類金属錯体に由来する信号を分析する方法としては、例えば、前記複合体に励起光を照射し、前記複合体中の親水性リガンド−希土類金属錯体に由来する蛍光(好ましくは時間分解蛍光)を分析する方法、あるいは、前記複合体中の親水性リガンド−希土類金属錯体の吸光度を分析する方法などを挙げることができる。
本発明の分析方法では、前記親水性リガンドに加え、希土類金属イオンに対する配位子として、所望により、親水性リガンド以外の配位子も使用することができる。他の配位子としては、例えば、親水性基を持たないβ−ジケトン型リガンド[例えば、前記一般式(I)において親水性基Rを水素原子に置換した化合物]、あるいは、公知の非β−ジケトン型リガンド[例えば、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド、又はフェナントロリン若しくはその誘導体(例えば、バソフェナントロリン又はバソフェナントロリンスルホン酸)]を挙げることができる。また、混合ミセルを形成させる際に、所望により、界面活性剤(例えば、トリトンX−100など)を共存させることもできる。このような界面活性剤及び/又は他の配位子を用いると、蛍光性錯体の蛍光強度を増強させることができる。
図1に、希土類金属(ランタニド)イオン1分子当たり、一般式(I)で表される親水性リガンド[m=1;図1における基Aは、一般式(I)における基Y−X−Pheを意味する]1分子、親水性基を持たない2座のβ−ジケトン型リガンド2分子、及びトリ−n−オクチルホスフィンオキシド2分子が蛍光性錯体を形成すると共に、トリトンX−100の存在下にてミセル形成した時の推定構造を模式的に示す。なお、希土類金属イオンは、通常8〜9配位である。また、トリトンX−100は、蛍光性ミセル錯体の構造を安定化させているものと考えられている。
親水性リガンド−希土類金属錯体ミセルが分析対象タンパク質と混合ミセルを形成するメカニズムについて、本発明者は以下の仮説を考えている。なお、以下の仮説は、現時点の本発明者の推測によるものであり、本発明が以下の仮説に限定されるものではない。
親水性リガンド−希土類金属錯体ミセルは、まず、各ミセルを単位として、それぞれ独立してタンパク質に吸着する。吸着は、ミセルの外側に出ている親水性基Rの電荷によるイオン結合に基づく。
例えば、親水性基Rがスルホン酸基及び硫酸エステルである場合には、pHが1以上の環境で解離(−SO3 -,−OSO3 -)し、負に荷電する。また、大部分のタンパク質は、pHが5以下の環境で正に荷電する。解離したスルホン酸基及び硫酸エステルは、正に荷電したタンパク質にイオン結合によって吸着する。
一方、環境のpHを8.5以上にすると、大部分のタンパク質は負に荷電する。親水性基Rがアミノ基である場合には、pHが9以下(四級アミンの場合には、より塩基性のpHにおいても)で正に荷電するので、このpH環境では、アミノ基又は四級アミンは、負に荷電したタンパク質にイオン結合によって吸着する。
イオン結合によりタンパク質に吸着した親水性リガンド−希土類金属錯体ミセルは、そのミセル構造が緩んで、親水性リガンド−希土類金属錯体の疎水性部分がタンパク質と疎水結合するものと考えている。また、一部のミセルでは、ミセル構造を維持したまま、タンパク質とイオン結合しているものも存在している可能性もある。
本発明の分析方法は、これまで説明した一般式(I)で表される親水性リガンドを用いることを特徴とするものである。分析方法としては、種々のタンパク質分析方法、例えば、電気泳動法又はクロマトグラフィー法に適応可能であり、また、支持体に固定化されたタンパク質の分析にも適応可能である。
本発明の分析方法のより具体的な態様としては、例えば、支持体に固定化されたタンパク質の分析方法、電気泳動により分離されたゲル内のタンパク質の分析方法、タンパク質に親水性リガンド又は親水性リガンド−希土類金属錯体を反応させた後に電気泳動を行い、ゲル内のタンパク質を分析する方法、あるいは、タンパク質に親水性リガンド又は親水性リガンド−希土類金属錯体を反応させた後にクロマトグラフィーを行い、溶離液中のタンパク質を分析する方法などを挙げることができる。以下、各態様について、更に詳細に説明する。
支持体に固定化されたタンパク質の分析方法は、例えば、
(1)タンパク質を支持体に固定化する工程、
(2)タンパク質を固定化した支持体へ親水性リガンドを反応させる工程、
(3)タンパク質に吸着しなかった親水性リガンドを洗浄除去する工程、
(4)希土類金属イオンを(所望により、他の配位子と共に)反応させて親水性リガンド−希土類金属錯体を形成させる工程、及び
(5)前記親水性リガンド−希土類金属錯体の濃度を蛍光検出法(好ましくは時間分解蛍光検出法)により測定して、タンパク質の濃度を分析する工程
を含む。あるいは、前記工程(2)において、親水性リガンドの代わりに、親水性リガンド−希土類金属錯体を反応させ、前記工程(4)を省略することもできる。
電気泳動により分離されたゲル内のタンパク質の分析方法は、例えば、
(1)ゲル電気泳動によりタンパク質を分離する工程、
(2)タンパク質を含む電気泳動ゲルへ親水性リガンドを反応させる工程、
(3)タンパク質に吸着しなかった親水性リガンドを洗浄除去する工程、
(4)希土類金属イオンを(所望により、他の配位子と共に)反応させて親水性リガンド−希土類金属錯体を形成させる工程、及び
(5)前記親水性リガンド−希土類金属錯体の濃度を蛍光検出法(好ましくは時間分解蛍光検出法)により測定して、タンパク質の濃度を分析する工程
を含む。あるいは、前記工程(2)において、親水性リガンドの代わりに、親水性リガンド−希土類金属錯体を反応させ、前記工程(4)を省略することもできる。
タンパク質に親水性リガンド又は親水性リガンド−希土類金属錯体を反応させた後に電気泳動を行い、ゲル内のタンパク質を分析する方法は、例えば、
(1)タンパク質を親水性リガンドと反応させて標識する工程、
(2)標識されたタンパク質を電気泳動により分離する工程、
(3)分離された標識タンパク質に希土類金属イオンを(所望により、他の配位子と共に)反応させて親水性リガンド−希土類金属錯体を形成させる工程、及び
(4)前記親水性リガンド−希土類金属錯体の濃度を蛍光検出法(好ましくは時間分解蛍光検出法)により測定して、タンパク質の濃度を分析する工程
を含む。あるいは、前記工程(1)において、タンパク質に親水性リガンド−希土類金属錯体を反応させ、前記工程(3)を省略することもできる。
タンパク質に親水性リガンド又は親水性リガンド−希土類金属錯体を反応させた後にクロマトグラフィーを行い、溶離液中のタンパク質を分析する方法は、例えば、
(1)タンパク質を親水性リガンドと反応させて標識する工程、
(2)標識されたタンパク質をクロマトグラフィーにより分離する工程、
(3)分離された標識タンパク質に希土類金属イオンを(所望により、他の配位子と共に)反応させて親水性リガンド−希土類金属錯体を形成させる工程、
(4)前記親水性リガンド−希土類金属錯体の濃度を蛍光検出法(好ましくは時間分解蛍光検出法)により測定して、タンパク質の濃度を分析する工程
とを含む。あるいは、前記工程(1)において、タンパク質に親水性リガンド−希土類金属錯体を反応させ、前記工程(3)を省略することもできる。
これらの態様から明らかなように、本発明の分析方法では、(a)タンパク質を含む試料、(b)希土類金属イオン、及び(c)親水性リガンドを接触させる順序は、親水性リガンド−希土類金属錯体とタンパク質とを含む複合体を形成可能である限り、特に限定されるものではなく、例えば、希土類金属イオンと親水性リガンドとを先ず接触させることにより、親水性リガンド−希土類金属錯体を形成させた後、タンパク質と接触させることもできるし、あるいは、タンパク質と親水性リガンドとを接触させた後、希土類金属イオンと接触させることもできるし、更には、タンパク質、希土類金属イオン、及び親水性リガンドを同時に接触させることもできる。
前記各態様において、親水性リガンドに加えて、所望により、その他の配位子、例えば、親水性基を有しないβ−ジケトン型リガンド、及び/又は公知の非βジケトン型リガンドを使用することができる。また、親水性リガンド−希土類金属錯体と分析対象タンパク質との混合ミセル形成を、界面活性剤(例えば、トリトンX−100)の存在下で実施させることもできる。
本発明の分析方法で分析可能なタンパク質としては、特に制限は無い。
また、染色剤との反応は、温和な条件で充分安定な標識が可能である。必要により、適当な時間、例えば、加温及び/又は攪拌することにより、反応を促進完了させることができる。
分離を行う手段についても、特に制限は無いが、例えば、通常公知の電気泳動法又はクロマトグラフ法を用いることができる。
蛍光性錯体、すなわち、親水性リガンド−希土類金属錯体の吸光度測定若しくは蛍光測定(好ましくは時間分解蛍光測定)の方法又はそれに使用する装置については特に制限されず、公知の装置をそのまま、あるいは、必要な改変を行って使用することができる。例えば、励起波長、検出波長、又はゲート時間等の設定については、当業者が容易に最適化することができる。
タンパク質の濃度を測定するためには、濃度既知の標準物を用いて、同様の方法で測定することにより、容易に検量線を作成することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:1次元電気泳動によって分離されたウシ血清アルブミンの時間分解蛍光測定
(1)親水性リガンド水溶液の調製
本実施例及び以下の実施例2〜4では、親水性リガンドとして、一般式(1)においてRがスルホン酸基であり、nが3である化合物を使用した。前記親水性リガンドの0.0005%溶液を、50%メタノール/7.5%酢酸水溶液を用いて調製した。
(2)ウシ血清アルブミンの1次元電気泳動
1次元電気泳動は、市販のポリアクリルアミドゲル[NuPAGE(4−12%ポリアクリルアミドゲル、MOPS/SDS);Novex社製]を用いて、添付の取扱説明書に従って実施した。
また、泳動試料としては、ウシ血清アルブミン(SIGMA社製)を、市販のサンプル調製溶液(Novex社製)で希釈して使用した。レーン当たりの試料添加量は10μLとし、レーン当たり1ng、10ng、100ng、及び1000ngを添加した。
(3)親水性リガンドによる染色
電気泳動終了後、プラスチックコンテナ内で、市販のゲル固定化液(スルホサリチル酸/トリクロロ酢酸溶液;Novex社製)20mLに、室温で30分間ゲルを浸した。コンテナから固定化液を除き、次いで、ゲルを50%メタノール/7.5%酢酸水溶液20mLに室温で10分間浸した。メタノール/酢酸水溶液を除き、実施例1(1)で調製した親水性リガンド溶液20mLに、ゲルを室温で1時間浸した。親水性リガンド溶液を除き、ゲルを10%メタノール/7.5%酢酸水溶液20mLに室温で10分間浸し、この操作を3回繰り返した。メタノール/酢酸水溶液を除き、0.1mol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH9.1)で調製した100μg/mLの塩化ユーロピウム(ナカライテスク社製)溶液20mLに、ゲルを室温で10分間浸した。最後に、ゲルを0.1mol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH9.1)20mLで洗浄した。
(4)時間分解蛍光測定
実施例1(3)で染色処理を施したゲルから、各レーン毎に、ウシ血清アルブミンが含まれる領域(直径約5mmの円形領域)を切り取り、測定用マイクロプレート(フルオロヌンク透明プレート;Nunc社製)へ移した。次いで、ユーロピウム錯体の時間分解蛍光強度を時間分解蛍光検出器(DELFIA Fluorometer;Wallac社製)を用いて測定した。表1に測定条件を示す。
《表1》
項目 条件
フラッシュレート(Flash Rate) 1.00ms
待機時間(Delay Time) 0.20ms
測定時間(Window Time) 0.40ms
間隙時間(Dead Time) 10.0ns
エミッションフィルタ(Emission Filter) 1
エキサイテーションフィルタ(Excitation Filter) 1
ウシ血清アルブミン(BSA)に結合した親水性リガンド−ユーロピウム錯体の時間分解蛍光強度を測定した結果を、図2に示す。
この結果から、本発明で使用する、タンパク質に吸着させることのできる親水性リガンドは、タンパク質を含まないゲルに対する吸着が少なく、しかも、タンパク質に結合することが明らかになった。ユーロピウム錯体の蛍光強度(特には時間分解蛍光強度)は、デンシトメーターなどの装置を用いることで、容易に画像化することが可能であり、ゲル内タンパク質の局在も容易に画像として入手可能である。
実施例2:1次元電気泳動によって分離された各種タンパク質の蛍光画像の取得
(1)親水性リガンド−ユーロピウム錯体溶液の調製
アセトニトリルに、実施例1で使用したのと同じ親水性リガンドを溶解することにより、最終濃度0.02mol/Lの親水性リガンド溶液を調製した。この溶液100μLと塩化ユーロピウム水溶液(0.1mol/L)10μLとを混合した後、7%酢酸水溶液20mLを添加することにより、親水性リガンド−ユーロピウム錯体溶液を調製した。
(2)タンパク質混合溶液の1次元電気泳動
1次元電気泳動は、実施例1(2)と同様に実施した。
泳動試料としては、市販のタンパク質マーカー(Mark12TM;Novex社製)を使用した。前記タンパク質マーカーは、ミオシン(200kDa)、β−ガラクトシダーゼ(116.3kDa)、ホスホリラーゼb(97.4kDa)、ウシ血清アルブミン(66.3kDa)、グルタミンデヒドロゲナーゼ(55.4kDa)、乳酸デヒドロゲナーゼ(36.5kDa)、カルボン酸アンヒドラーゼ(31kDa)、トリプシンインヒビター(21.5kDa)、リゾチーム(14.4kDa)、アプロチニン(6kDa)、インスリンB鎖(3.5kDa)、及びインスリンA鎖(2.5kDa)を含む。タンパク質マーカー溶液5μL中には、前記各タンパク質がそれぞれ0.5μgずつ含まれる。
レーン当たりの試料添加量は5μLとし、レーン当たり5ng(各タンパク質量として。以下、同じ)、10ng、50ng、100ng、500ng、及び1000ngを添加した。
(3)親水性リガンド−ユーロピウム錯体による染色
電気泳動終了後、ゲルを7%酢酸水溶液20mLの入ったプラスチックコンテナへ移し、室温で5分間振とうした。酢酸水溶液を除き、前記酢酸水溶液で同じ操作を2回繰り返した。酢酸水溶液を除去後、実施例2(1)で調製した親水性リガンド−ユーロピウム錯体溶液(染色液)20mLを加え、室温で45分間振とうした。染色液を除去後、0.1%トリトンX−100水溶液30mLで10分間ずつ3回ゲルを洗浄後、更に、蒸留水30mLで10分間ずつ2回ゲルを洗浄した。
(4)紫外線照射による蛍光観察
ゲルの斜め上方から波長365nmの紫外線ランプ[Blak−Ray(商標) Lamp Model UNL−56]を照射し、YA3フィルター(Kenko)をつけたポラロイドカメラ(Polaroid MP4 Instant Camera System)で、絞りf4.5及び露光1秒間の条件で撮影して記録した。この写真をスキャナー(EPSON GT−9000;露出20及びガンマ200設定)で600dpiにて取り込み、デジタル化した。
デジタル化した画像ファイルは、市販の画像処理ソフト(Adobe Photoshop)を用いて位置及び角度を調整した後、二階調化の処理を行い、TIFFファイル形式に変換した。
ゲルに紫外線を照射し、蛍光観察した結果を、図3に示す。図3において、レーン1における各タンパク質量は、それぞれ1000ng/バンドであり、以下、同様に、各レーン2〜6における各タンパク質量は、それぞれ、500ng/バンド、100ng/バンド、50ng/バンド、10ng/バンド、及び5ng/バンドである。図3に示す画像は、白−黒を反転させたときのものである。
この結果から明らかなように、親水性リガンド−ユーロピウム錯体は、何れの分子量のタンパク質に対しても染色可能であった。この画像から、適用なプログラム(例えば、Scion Image)によって容易にエレクトロフェログラムを作成することが可能であり、既知量のタンパク質の分析から得られた検量線を用いることによって、容易に定量分析することが可能である。また、ユーロピウム錯体の蛍光強度(特には時間分解蛍光強度)は、デンシトメーターなどの装置を用いることで、容易に画像化することが可能であり、ゲル内タンパク質の局在も容易に画像として入手可能である。
実施例3:2次元電気泳動によって分離された各種タンパク質の蛍光画像の取得
(1)親水性リガンド−ユーロピウム錯体溶液の調製
アセトニトリルに、前記親水性リガンドを溶解することにより、最終濃度0.02mol/Lの親水性リガンド溶液を調製した。この溶液100μLと塩化ユーロピウム水溶液(0.1mol/L)10μLとを混合した後、30%メタノール水溶液20mLを添加することにより、親水性リガンド−ユーロピウム錯体溶液を調製した。
(2)ヒト血漿の2次元電気泳動
2次元電気泳動は、ミクロ2次元電気泳動システム(富士理研社製)を用いて、添付の取扱説明書に従って実施した。
また、泳動試料としては、ヒト血漿に終濃度40%となるようにショ糖を添加したものを使用した。試料添加量は、5μL(ショ糖添加血漿として)とした。
パワーサプライとして、V−C Stabilizer SJ−1055A(アトー社製)を使用した。
1次元目陽極液として10mmol/Lリン酸水溶液を使用し、1次元目陰極液として40mmol/L水酸化ナトリウム水溶液を使用した。1次元目の電気泳動は、定電流にて初期電圧50Vに出力を調整して25分間通電し、電圧が300Vに達した時点で一旦電源を切り、300Vの定電圧で30分間泳動した。
2次元目泳動液として0.025mol/Lトリス−0.192mol/Lグリシン(pH8.3)を使用した。2次元目の電気泳動は、モールド一枚あたり、10mAの定電流(初期電圧200V)で50分間泳動した。
(3)親水性リガンド−ユーロピウム錯体による染色
電気泳動後のゲルを、20%トリクロロ酢酸水溶液20mLの入ったプラスチックコンテナへ移し、室温で20分間振とうした。前記溶液を除去し、30%メタノール水溶液20mLで10分間ずつ3回ゲルを洗浄した。メタノール水溶液を除去し、実施例3(1)で調製した親水性リガンド−ユーロピウム錯体溶液(染色液)20mLを加え、60分間振とうした後、蒸留水30mLで5分間ずつ3回洗浄を行った。
(4)紫外線照射による蛍光観察
白−黒反転しないこと以外は、実施例2(4)と同じ操作によって、ゲルに分布したタンパク質の蛍光画像を取得した。ゲルに紫外線を照射し、蛍光観察した結果を、図4に示す。
この結果から明らかなように、親水性リガンド−ユーロピウム錯体は、何れの分子量及び等電点のタンパク質に対しても染色可能であった。図4の2次元目の電気泳動は、タンパク質の非変性下電気泳動であるが、本発明の染色法は、変性剤を添加された条件下での電気泳動ゲル内のタンパク質の染色(実施例2)、非変性条件下での電気泳動ゲル内のタンパク質の染色(実施例3)の何れにおいても可能であった。また、ユーロピウム錯体の蛍光強度(特には時間分解蛍光強度)は、デンシトメーターなどの装置を用いることで、容易に画像化することが可能であり、ゲル内タンパク質の局在も容易に画像として入手可能である。
2次元電気泳動によって分離されたタンパク質分子量の同定を正確に行うために、しばしば電気泳動後のタンパク質をCBBなどの染色剤でタンパク質の泳動位置を可視化した後、タンパク質を含むゲルを切り取って、その中に含まれるタンパク質をマススペクトロメトリーによって分析することが行われている。本発明の染色法は、CBBと同様な形でタンパク質へ吸着しているものと推察されることから、マススペクトロメトリーによる分子量同定分析にも応用可能であることが容易に推察される。
実施例4:ニトロセルロース膜に固定化されたタンパク質の蛍光画像の取得
(1)親水性リガンド−ユーロピウム錯体溶液の調製
アセトニトリルに、前記親水性リガンドを溶解することにより、最終濃度0.02mol/Lの親水性リガンド溶液を調製した。この溶液100μLと塩化ユーロピウム水溶液(0.1mol/L)10μLとを混合した後、100mmol/L塩化ナトリウムを含む100mmol/L酢酸緩衝液(pH3.7)20mLを添加することにより、親水性リガンド−ユーロピウム錯体溶液を調製した。
(2)ニトロセルロース膜へのタンパク質の固定化
ニトロセルロース膜(ポアサイズ0.45μm;東洋濾紙社製)を40mm×30mmに裁断し、リゾチーム(SIGMA社製)、ヒトアルブミン(SIGMA社製)、及びヒトγ−グロブリン(SIGMA社製)を各々生理食塩水で20pg/μLから20ng/μLまで4段階のタンパク質濃度の希釈列を作製し、それぞれ5μLずつ膜上に滴下した。次いで、乾熱滅菌器にて110℃で20分間熱処理を行って膜を乾燥させた。各スポットの直径は、約3.6mmの円形であった。
(3)親水性リガンド−ユーロピウム錯体による染色
タンパク質を固定化したニトロセルロース膜を、100mmol/L塩化ナトリウムを含む100mmol/L酢酸緩衝液(pH3.7)20mLの入ったプラスチックコンテナへ移し、室温で5分間振とうした。前記溶液を除去し、100mmol/L塩化ナトリウムを含む100mmol/L酢酸緩衝液(pH3.7)20mLで10分間ずつ2回膜を洗浄した。前記緩衝液を除去し、実施例4(1)で調製した親水性リガンド−ユーロピウム錯体溶液(染色液)20mLを加え、30分間振とうした後、蒸留水30mLで5分間ずつ3回洗浄を行った。
(4)紫外線照射による蛍光観察
白−黒反転しないこと以外は、実施例2(4)と同じ操作によって、ニトロセルロース膜上のタンパク質の蛍光画像を取得した。ゲルに紫外線を照射し、蛍光観察した結果を、図5に示す。
この結果から、ニトロセルロース膜上に固定化されたタンパク質の染色にも、本発明の染色法は応用可能であることが示された。また、ユーロピウム錯体の蛍光強度(特には時間分解蛍光強度)は、デンシトメーターなどの装置を用いることで、容易に画像化することが可能であり、ゲル内タンパク質の局在も容易に画像として入手可能である。
本発明方法は、タンパク質の分析の用途に適用することができる。
親水性リガンド1分子、親水性基を持たないβ−ジケトン型リガンド2分子、及びトリ−n−オクチルホスフィンオキシド2分子と、希土類金属イオン1分子との蛍光性錯体が、トリトンX−100の存在下にてミセル形成した時の推定構造を模式的に示す、説明図である。 1次元電気泳動によって分離されたウシ血清アルブミンに結合した親水性リガンド−ユーロピウム錯体の時間分解蛍光強度を測定した結果を示すグラフである。 1次元電気泳動によって分離された各種タンパク質を親水性リガンド−ユーロピウム錯体で染色した後、ゲルに紫外線を照射し、蛍光観察した電気泳動の結果を示す、図面に代わる写真である。 2次元電気泳動によって分離されたヒト血漿タンパク質を親水性リガンド−ユーロピウム錯体で染色した後、ゲルに紫外線を照射し、蛍光観察した電気泳動の結果を示す、図面に代わる写真である。 ニトロセルロース膜に固定化されたタンパク質を親水性リガンド−ユーロピウム錯体で染色した後、ゲルに紫外線を照射し、蛍光観察した電気泳動の結果を示す、図面に代わる写真である。

Claims (6)

  1. (1)(a)タンパク質を含む試料と、
    (b)希土類金属イオンと、
    (c)一般式(I):
    R−Y−(−X−Phe−COCH2COCn2n+1m (I)
    (式中、Rは、−SO3H基、−OSO3基、−NH2基、式:
    Figure 0004284135
    [式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基である]で表される基、又は式:
    Figure 0004284135
    [式中、R4及びR5は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4の低級アルキル基である]で表される基であり、Yは、−CH2−基、炭素環式環基、又は複素環式環基であり、Xは、−O−基、−S−基、−NH−基、−CH2−基、−OCH2−基、−CONH−基、又は−NHCO−基であり、Pheはフェニレン基であり、nは1〜5の整数であり、mは1、2又は3であり、但し、mが2又は3の場合には、X及びnは、独立して選択可能であるものとする)
    で表される親水性リガンドと
    、共有結合による標識化が起こらない条件下で接触させ、親水性リガンドと希土類金属との錯体である親水性リガンド−希土類金属錯体とタンパク質とを含む複合体を形成させる工程、及び
    (2)続いて、親水性リガンドと希土類金属との錯体である親水性リガンド−希土類金属錯体とタンパク質とを含む前記複合体と、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体とが分離された状態で、前記複合体中の親水性リガンド−希土類金属錯体に由来する信号を分析する工程
    を含むことを特徴とする、タンパク質の分析方法。
  2. Rが、−OSO 3 基、式:
    Figure 0004284135
    で表される基、又は式:
    Figure 0004284135
    で表される基である、請求項1に記載のタンパク質分析方法。
  3. 支持体にブロットしたタンパク質を親水性リガンド−希土類金属錯体で染色し、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体を支持体から洗浄除去した後、支持体上に残留する複合体の蛍光を分析する、請求項1又は2に記載のタンパク質分析方法。
  4. ゲル電気泳動で分画したタンパク質を、親水性リガンド−希土類金属錯体で染色し、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体を泳動ゲルから洗浄除去した後、泳動ゲル中に残留する複合体の蛍光を分析する、請求項1又は2に記載のタンパク質分析方法。
  5. タンパク質を、親水性リガンド−希土類金属錯体で染色した後に電気泳動を行い、タンパク質を分画する操作と、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体をタンパク質から分離する操作とを同時に行い、複合体の蛍光を分析する、請求項1又は2に記載のタンパク質分析方法。
  6. タンパク質を親水性リガンド−希土類金属錯体で染色した後に、カラムクロマトグラフィーによって、タンパク質を分画する操作と、タンパク質に吸着しなかった親水性リガンド−希土類金属錯体をタンパク質から分離する操作とを同時に行い、複合体の蛍光を分析する、請求項1又は2に記載のタンパク質分析方法。
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