JP4282588B2 - プローブ及び走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents
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Description
粘弾性等の各種の物性情報を測定することできるプローブ及び走査型プローブ顕微鏡に関
するものである。特に、液中にある試料を測定する際に適しているものである。
これは、近年、ポストゲノム時代を迎え、分子生物学的アプローチから、DNAをはじめとした生体分子や細胞等の生体試料の形態観察や機能解析への高分解能、多機能観察が求められており、このような解析においては、生体分子や細胞を生きたままの状態で観察する必要があるためである。一般的に、生体試料の活性を保ちながら観察を行うためには、培養液中での観察が不可欠である。そのため、上述したように、走査型プローブ顕微鏡を利用して、液中観察を行う場合ある。
特に、この流体からの抵抗は、プローブ全体でみると、カンチレバーの部分でその殆どを(約9割)受けるものであり、カンチレバーの形状等がダンピング効果に顕著に影響するものである。これに対して、先端に設けられた探針が受ける影響は、プローブ全体の約1割程度とされている。
なお、ダンピング効果は、上述した液中観察において特に顕著なものであるが、液中観察に限られず、通常の大気中観察においても、空気(気体)の影響があるので液中観察と同様に生じるものである。
これら図17に示すプローブ50においては、カンチレバー51が流体から受ける抵抗は若干減少するが、その反面、貫通孔54を流体が通過する際に乱流が生じてしまい、この乱流そのものが見かけ上のバリア層となって抵抗が増加する恐れがあった。
例えば、その1つとして、カンチレバーの形状を、従来の単純ビーム(片持ち梁形状)から変形矩形形状にすることにより、流体からカンチレバーが受ける抵抗を減少させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このカンチレバーは、探針が設けられた自由端側支持部と梁部とが、屈曲部によって屈曲状態で接続されている。これにより、梁部は、試料表面との距離が固定端側支持部に向けて漸次離れるようになっている。従って、カンチレバーと試料表面との間に存在する流体の体積が増加するので、プローブの振動による流体の圧縮率が減少する。その結果、カンチレバーが受ける抵抗が減少するものである。
また、探針の高さや形状等については、流体からの抵抗を軽減するための対策が何らとられておらず、影響が少ないとはいえ、探針部分においても同様にダンピング効果の影響を受けてしまうものであった。
本発明のプローブは、先鋭化された探針を、所定の周波数及び振幅で振動させた状態で試料上を走査されるプローブであって、先端に前記探針が設けられ、基端側から先端側に向けて一方向に延出して形成されたカンチレバーと、該カンチレバーの基端側を、先端側が自由端となるように片持ち状態で固定する本体部とを備え、前記カンチレバーが、試料表面に対向する一方の面と該一方の面の逆側に配された他方の面とに、長手方向に沿って凸状に形成された凸条部を有し、前記本体部、前記カンチレバー及び前記探針が、半導体プロセスによるエッチング加工によりシリコンを含む材料から一体的に形成されていることを特徴とするものである。
特に、カンチレバーは、試料表面に向かい合う(対向する)一方の面と、この逆側の他方の面、即ち、上面と下面とに、凸条部(例えば、断面が三角状)が長手方向に沿って形成されている。よって、カンチレバー及び探針が振動する際に、従来の平板形状とは異なり、液体や空気等の流体が凸条部に沿って円滑に流れ、カンチレバーが受ける抵抗が減少する。
従って、空気抵抗や液抵抗等のダンピング効果の影響を極力低減することができ、プローブの特性が変化してしまうことを防止することができる。特に、ダンピング効果の影響は、カンチレバーで受ける割合が多い(9割程度)ので、プローブの特性変化を効果的に抑えることができる。その結果、試料を高精度に観察することができる。
また、カンチレバーの幅が探針と同じ幅であるので、流体に向かい合うカンチレバーの面積を極力小さくすることができる。よって、カンチレバーが受ける抵抗をさらに低減することができる。
そして、走査手段により、探針と試料とをXY方向に向けて相対移動させて、試料表面の走査を行う。また、この際、Z移動手段は、測定手段による測定結果、即ち、探針の振動状態変化に基づいて、ステージを介して試料をZ方向に移動させる。これにより、探針と試料との距離を一定間隔に保ちながら走査を行うことができる。
この走査により、試料の表面形状、粘弾性、試料の表面電位分布、試料表面の漏れ磁界分布等の各種の物性情報を多角的に観察することができる。この際、空気抵抗や液抵抗等のダンピング効果の影響が極力低減され、特性が変化し難いプローブで観察を行えるので、より高精度な観察、即ち、高分解能で観察を行うことができる。
特に、カンチレバーに、光等を反射する領域を設ける必要がないので、カンチレバーの形状に制限を設ける必要がない。よって、プローブの設計の自由度が向上し、製造し易い。
また、本発明の走査型プローブ顕微鏡によれば、試料の表面形状、粘弾性、試料の表面電位分布、試料表面の漏れ磁界分布等の各種の物性情報を多角的に観察することができる。この際、空気抵抗や液抵抗等のダンピング効果の影響が極力低減され、特性が変化し難いプローブで観察を行えるので、より高精度な観察を行うことができる。
本実施形態の走査型プローブ顕微鏡1は、図1に示すように、プローブ2と、試料Sを培養液(溶液)W内に浸漬した状態で収納する液中セル3と、該液中セル3を載置するステージ4と、上記プローブ2の探針20が所定の振動状態、即ち、所定の周波数及び振幅で振動するようにプローブ2を加振するPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる圧電素子(加振手段)5と、探針20と試料Sとを、試料表面S1に平行なX、Y方向に向けて相対的に移動可能なXYスキャナ(走査手段)6と、探針20の振動状態の変化を測定する測定手段7と、該測定手段7による測定結果に基づいて、探針20を試料表面S1に垂直なZ方向に向けて移動させるZスキャナ(Z移動手段)8とを備えている。
上記真空容器10は、金属材料等により箱状に形成されており、外部からの音を遮断する防音機能を有している。また、真空容器10内の底部には、防振機構を有するベース13が載置されている。また、真空容器10の外側には、該真空容器10に隣接して上記真空ポンプ11が設けられており、真空容器10内の内部圧力を任意の圧力(例えば、真空状態)に調整又は圧力変化できるようになっている。また、真空容器10の上部には、図示しない開口が形成されており、ウインドウ14が該開口を密閉するように取り付けられている。
また、XYスキャナ6上にステージ4を介して上記液中セル3が取り付けられている。この液中セル3は、例えば、上部が開放されたカップ状に形成されて、内部に培養液Wを収容している。また、液中セル3は、底部に載置された試料Sが容易に動かないように保持している。
上記カンチレバー21は、シリコンナイトライド、シリコンや窒化珪素等の材料から形成されており、試料表面S1に対向する一方の面と該一方の面の逆側に配された他方の面とのうち少なくともどちらかの面に、長手方向に沿って凸状に形成された凸条部23を備えている。
本実施形態においては、他方の面、即ち、探針20が形成された反対側の面に、カンチレバー21の長手方向Lに直交する断面が曲線形状となる凸条部23が形成されている場合を例にして説明する。このプローブ2の製造方法については、後に詳細に説明する。
上記測定手段7は、探針20の裏面に形成された図示しない反射面(例えば、金やアルミ等の金属材料をコーティングして形成)にレーザ光Bを照射するレーザ光源26と、反射面で反射したレーザ光B(反射光)を検出するフォトダイオード(光検出部)27とを備えている。これら、レーザ光源26及びフォトダイオード27は、真空容器10の外部であってウインドウ14の上方に配されており、ウインドウ14及びプローブホルダ25を介してレーザ光Bが入射及び出射するようになっている。
なお、本実施形態では、図3に示すように、シリコン(Si)支持基板41と、該Si支持基板41上に形成されたSiO2のBOX層42と、該BOX層42上に形成されたSi薄膜層43とを有するSOI(Silicon On Insulater)基板を半導体基板40として利用して、プローブ2を製造する。
次に、表面のシリコン酸化膜44に、エッチングマスクとなる図示しないフォトレジスト膜を、フォトリソグラフィ技術によって探針20の位置にパターニングする。そして、フォトレジスト膜をマスクとしてエッチングすることで、シリコン酸化膜44が図4に示すように探針20の位置にパターニングされる。
探針20を形成後、図6に示すように、カンチレバー21の形状となるように、Si薄膜層43上にフォトレジスト膜46をパターニングする。
そして、フォトレジスト膜46をマスクとして、マスクされていないSi薄膜層43を反応性イオンエッチングやDRIEにより選択的に除去する。この際、RIEやDRIEは、Si薄膜層43の下のBOX層42でストップするように反応速度等が設定されている。そして、マスクとしていたフォトレジスト膜46を除去することで、図7に示すように、Si薄膜層43がカンチレバー21の形状でパターニングされる。
そして、パターニングしたシリコン酸化膜45をマスクとして、水酸化カリウム(KOH)やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)等のアルカリ性エッチャントによる異方性エッチング、又は、DRIEにより、図8に示すように、Si支持基板41をエッチングにより基端側を残した状態で除去する。その後、保護膜を除去する。
Si薄膜層43の上面及び側面の一部に保護膜47を形成した後、異方性ドライエッチングによる垂直エッチングを行って、図10に示すように、BOX層42側のSi薄膜層43を曲線形状に加工する。即ち、ドライエッチングのマイクロローディング効果を用いたアンダー部エッチングを行う。
次いで、図11に示すように、別のガスによる異方性ドライエッチングを行って、保護膜側47のSi薄膜層43を探針20を挟むように曲線状に抉り出すよう加工する。そして、最後に、保護膜47を除去すると共にBOX層42を基端側に残した状態で除去する。
これにより、図2に示すように、基端側が本体部22によって片持ち状態で固定されると共に先端に探針20を有し、断面が曲線形状に形成された凸条部23を有するカンチレバー21を備えたプローブ2を製造することができる。
なお、本実施形態においては、真空容器10内の環境条件を所定条件、例えば、大気圧、温度を室温と略同じ25℃、湿度を30%に設定した状態で物性情報の検出を行うものとする。
まず、試料Sを低部に保持した液中セル3をステージ4に載置すると共に、プローブ2をプローブホルダ25にセットする。この際、試料Sに応じて、試料表面S1とカンチレバー21とのなす角度が所定角度になるように調整を行う。そして、レーザ光源26及びフォトダイオード27の位置を調整する。即ち、レーザ光源26から照射したレーザ光Bが、探針20裏面の反射面で反射し、フォトダイオード27に確実に入射するよう位置調整を行う。
そして、真空容器10内の圧力を大気圧に設定する。即ち、真空ポンプ11を作動させ、一旦真空容器10内の圧力を負圧した後、真空ポンプ11を停止すると共に図示しないリークバルブ等により負圧になった真空容器10内の圧力を大気圧になるよう調整を行う。なお、真空ポンプ11は、粗動機構15を作動させる前に作動させても構わないし、粗動機構15と共に作動させても構わない。更に、環境設定手段により、真空容器10の環境条件を所定の条件(湿度30%、温度25℃)に設定する。
フォトダイオード27は、この検出結果をDIF信号で出力し、該DIF信号は、プリアンプ28及び交流−直流変換回路29を経た後に、Z電圧フィードバック回路30に入力される。そして、Z電圧フィードバック回路30は、DIF信号が同じなるようにZスキャナ8に電圧を印加して、試料SをZ方向に微小移動させる。これにより、上記走査の際、探針20と試料表面S1と間の距離が常に一定に保たれる。
また、光てこ方式を利用して探針20の振動状態を測定するので、探針20の振動状態が微小であったとしても、正確に振動状態の検出を行え、観察結果の信頼性を向上することができる。
また、真空ポンプ11及び環境調整手段12を備えているので、試料Sの観察を行う際に、試料Sを様々な条件下のもとでの依存性を観察できる。よって、試料Sをより多角的に観察することができる。
また、図13に示すように、カンチレバー21の長手方向Lに直交する方向において、カンチレバー21に接する探針20の基端側の幅がカンチレバー21の幅と同一となるように、探針20の長さ及び先端角を設定しても構わない。この場合には、探針20が試料表面S1に接近する際に、探針20に沿って流れた培養液Wが、探針20の基端側でカンチレバー21に直接当たることはない。よって、探針20で受けるダンピング効果の影響も極力なくすことができ、プローブ2の特性変化をさらに抑えることができる。
また、カンチレバー21の幅が探針20の幅と同じ幅であるので、培養液Wに向かい合うカンチレバー21の面積を極力小さくすることができる。よって、カンチレバー21が受ける抵抗をさらに低減することができる。
こうすることで、カンチレバー21にレーザ光Bを反射する反射面(領域)を設ける必要がないので、カンチレバー21の形状に制限を設ける必要がない。よって、プローブ2の設計の自由度が向上し、製造し易い。
また、液中セル3は、上部が開放されたカップ状として説明したが、これに限られるものではない。例えば、Oリングを挟んで対向配置された上側部材と下側部材とで構成しても構わない。この場合荷は、培養液Wが内部に密閉されるので、外部からの塵埃等の混入もなく、また、液面の揺らぎをなくすことができるので、試料S観察により好適である。
S1 試料表面
W 培養液(溶液)
1 走査型プローブ顕微鏡
2 プローブ
3 液中セル
4 ステージ
5 圧電素子(加振手段)
6 XYスキャナ(走査手段)
7 測定手段
8 Zスキャナ(Z移動手段)
20 探針
21 カンチレバー
22 本体部
23 凸条部
25 プローブホルダ(固定手段)
26 レーザ光源(照射部)
27 フォトダイオード(光検出部)
Claims (9)
- 先鋭化された探針を、所定の周波数及び振幅で振動させた状態で試料上を走査されるプローブであって、
先端に前記探針が設けられ、基端側から先端側に向けて一方向に延出して形成されたカンチレバーと、
該カンチレバーの基端側を、先端側が自由端となるように片持ち状態で固定する本体部とを備え、
前記カンチレバーは、試料表面に対向する一方の面と該一方の面の逆側に配された他方の面とに、長手方向に沿って凸状に形成された凸条部を有し、
前記本体部、前記カンチレバー及び前記探針は、半導体プロセスによるエッチング加工によりシリコンを含む材料から一体的に形成されていることを特徴とするプローブ。 - 請求項1記載のプローブにおいて、
前記凸条部は、前記長手方向に直交する断面が曲線形状になるように形成されていることを特徴とするプローブ。 - 請求項2記載のプローブにおいて、
前記凸条部は、前記長手方向に直交する前記カンチレバーの断面が円形になるように形成されていることを特徴とするプローブ。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載のプローブにおいて、
前記探針は、前記長手方向に直交する方向において、前記カンチレバーに接する基端側の幅がカンチレバーの幅と同一となるように、長さ及び先端角が設定されていることを特徴とするプローブ。 - 請求項4記載のプローブにおいて、
前記探針は、長さが30μm〜200μmの範囲内に設定されていることを特徴とするプローブ。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載のプローブと、
前記試料を載置するステージと、
前記探針が前記振動状態で振動するように前記プローブを加振する加振手段と、
前記探針と前記試料とを、試料表面に平行なX、Y方向に向けて相対的に移動可能な走査手段と、
前記探針の振動状態の変化を測定する測定手段と、
該測定手段による測定結果に基づいて、前記探針を試料表面に垂直なZ方向に向けて移動させるZ移動手段とを備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。 - 請求項6記載の走査型プローブ顕微鏡において、
前記測定手段は、前記カンチレバーの撓みを測定する撓み測定部を備え、該撓み測定部で測定した撓み変化に基づいて前記探針の振動状態を測定することを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。 - 請求項6又は7記載の走査型プローブ顕微鏡において、
前記試料表面と前記カンチレバーとのなす角度を、任意の角度に調整可能に前記プローブを固定する固定手段を備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。 - 請求項6から8のいずれか1項に記載の走査型プローブ顕微鏡において、
前記試料を溶液内に浸漬した状態で前記ステージ上に載置可能な液中セルを備え、
少なくとも前記プローブが、前記溶液内に浸漬されるように配されていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
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