JP4279025B2 - 重合性ゲル化剤とそれを用いて得られるゲル - Google Patents

重合性ゲル化剤とそれを用いて得られるゲル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な重合性ゲル化剤に関し、詳しくは、液状有機物質と混合し、重合させることによって、その液状有機物質を耐熱性にすぐれるオルガノゲルにすることができる重合性ゲル化剤に関する。更に、本発明は、このようにして得られるオルガノゲルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水をゲル化させるゲル化剤としては、例えば、寒天、ゼラチン等、従来より種々のものが知られており、また、種々の用途において実用化されている。しかし、液状有機物質をゲル化させるゲル化剤については、従来、食用油を固化させるための12−ヒドロキシステアリン酸からなるゲル化剤が実用化されている以外は、殆ど知られておらず、しかも、従来、知られているそのようなゲル化剤は、低分子量有機化合物からなり、水素結合やファン・デル・ワールス力のような弱い結合によって形成されるマトリックス中に液状有機物質を保持して、オルガノゲルを形成するものであるので、そのようなゲルは、加熱されたとき、再び、流動化して容易にゲル性を失う(例えば、非特許文献1及び2、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、今後、オルガノゲルは、化学センサにおける機能性物質の支持体や生体触媒固定化ゲル等への応用が期待されており、耐熱性にすぐれたオルガノゲルを形成するゲル化剤の開発が強く要望されている。
【0004】
【非特許文献1】
「高分子論文集」第55巻第10号第585〜594頁(1998年)
【非特許文献2】
「表面」第38巻第12号第569〜579頁(2000年)
【特許文献1】
特開平03−210382号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述したような要望に応えるためになされたものであって、液状有機物質と混合し、重合させることによって、その液状有機物質を耐熱性にすぐれるゲルにすることができる重合性ゲル化剤を提供することを目的とする。更に、本発明は、そのような重合性ゲル化剤を用いて得られるゲルとそのようなゲルの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、一般式(I)
【0007】
【化3】
Figure 0004279025
【0008】
(式中、Rは2価の有機基を示し、R1 は水素原子又はメチル基を示す。)
で表される二官能性(メタ)アクリレートからなる重合性ゲル化剤が提供される。
【0009】
更に、本発明によれば、上記重合性ゲル化剤を重合させてなる架橋ポリマーからなるマトリックス中に液状有機物質が保持されてなるゲルが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記重合性ゲル化剤を液状有機物質と混合し、重合させることを特徴とするゲルの製造方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明による重合性ゲル化剤は、一般式(I)
【0012】
【化4】
Figure 0004279025
【0013】
(式中、Rは2価の有機基を示し、R1 は水素原子又はメチル基を示す。)
で表される(メタ)アクリレートからなる。
【0014】
本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味するものとし、また、(メタ)アクリロイルは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味するものとする。
【0015】
このような重合性ゲル化剤は、一般式(III)
【0016】
【化5】
Figure 0004279025
【0017】
(式中、Rは上記と同じである。)
で表されるジオールを反応溶剤中、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートと反応させることによって得ることができる。従って、本発明による重合性ゲル化剤及び上記ジオールにおいて、2価の有機基Rは、その製造のための原料として用いたジオールの残基(即ち、ジオールから2つの水酸基を除いた基)である。
【0018】
従って、本発明によれば、上記2価の有機基又はジオール残基は、特に限定されるものではないが、好ましい具体例として、例えば、
(a)アルキレン基、
(b)キシリレン基、又は
(c)式(II)
【0019】
【化6】
Figure 0004279025
【0020】
で表される2価基等を挙げることができる。
【0021】
このような有機基のうち、上記アルキレン基(a)は、好ましくは、炭素原子数2〜40の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、2,2−エチルブチルプロピレン基等を挙げることができる。キシリレン基としては、o−、m−又はp−キシリレン基を挙げることができるが、特に、p−キシリレン基が好ましい。
【0022】
本発明によるゲルは、上述したような重合性ゲル化剤を重合させてなるポリマーからなるマトリックス中に液状有機物質が保持されてなり、このようなゲルは、本発明によれば、上述したような重合性ゲル化剤を液状有機物質と混合し、重合性ゲル化剤を重合させることによって得ることができる。
【0023】
上記液状有機物質とは、室温(25℃)で液体である有機物質をいい、例えば、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ピリジン、N−メチル−2−ピロリドン、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、メタノール、エタノール等のような所謂溶媒類、ケロシン、ガソリン、重油等の液体燃料、オリーブ油、コーン油、ヒマシ油等の油類、潤滑油等を挙げることができるが、しかし、これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明による重合性ゲル化剤は、液状有機物質100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは、0.2〜10重量部の範囲で用いられる。重合性ゲル化剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明による重合性ゲル化剤を用いて、液状有機物質をゲル化するには、液状有機物質をゲル化剤と混合し、溶液とし、更に、これにラジカル重合開始剤を加えた後、加熱して、重合性ゲル化剤を重合させて、架橋ポリマーを形成させればよい。このようなゲルの製造において、ゲル化剤は、一部が液状有機物質に溶解せず、懸濁していてもよい。
【0026】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物系開始剤や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤のような従来より知られている開始剤が適宜に用いられる。このような重合開始剤は、重合性ゲル化剤100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜3重量部の範囲で用いられる。
【0027】
しかし、本発明によれば、重合性ゲル化剤を重合させる手段は、特に、限定されるものではなく、液状有機物質とゲル化剤との混合物に、必要に応じて、ベンゾフェノン、エチルアントラキノン等の光重合開始剤(増感剤)を加え、溶液とした後、これに紫外線を照射することによって、ゲルを形成させることができる。また、電子線のような活性放射線を照射することによっても、重合性ゲル化剤を重合させて、ゲルを形成させることができる。更に、必要に応じて、電子線やX線の照射によっても、ゲルを形成させることができる。
【0028】
このようにして得られるゲルは、塊状、板状、多孔質体や不織布等に含浸した状態で、又は必要に応じて、これを破砕して、粉末や粒子とすることもできるので、そのような形状のものとして、種々の用途に供することができる。
【0029】
【実施例】
以下に参考例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0030】
参考例1
1,10−デカンジオール15.7gをトルエン500mLに加え、加熱、溶解させ、共沸させて、水分を除去した。70℃まで冷却した後、これに攪拌下に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート29.1g、ジ−n−ブチルスズジラウレート20mg及びトルエン100mLからなる混合物を10分かけて滴下した。この後、80℃で4時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却して、反応生成物を析出させ、これを濾過し、得られた反応生成物をトルエンから晶析させて、次式(1)で表される二官能性メタクリレートを得た。
質量分析による分子量(ESI法):(M+H)+ =485
プロトンNMRスペクトル(400MHz、溶媒重クロロホルム、δ(ppm)):
【0031】
【化7】
Figure 0004279025
【0032】
【表1】
Figure 0004279025
【0033】
13C−NMRスペクトル(100MHz、溶媒重クロロホルム、δ(ppm)):
【0034】
【化8】
Figure 0004279025
【0035】
【表2】
Figure 0004279025
【0036】
参考例2
p−キシレン−α,α’−ジオール5.2gをトルエン500mLに加え、加熱、溶解させ、共沸させて、水分を除去した。70℃まで冷却した後、これに攪拌下に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート12.1g、ジ−n−ブチルスズジラウレート8mg及びトルエン100mLからなる混合物を10分かけて滴下した。この後、80℃で4時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却して、反応生成物を析出させ、これを濾過し、得られた反応生成物をトルエンから晶析させて、次式(2)で表される二官能性メタクリレートを得た。
質量分析による分子量(ESI法):(M+H)+ =449
プロトンNMRスペクトル(400MHz、溶媒重クロロホルム、δ(ppm)):
【0037】
【化9】
Figure 0004279025
【0038】
【表3】
Figure 0004279025
【0039】
13C−NMRスペクトル(100MHz、溶媒重クロロホルム、δ(ppm)):
【0040】
【化10】
Figure 0004279025
【0041】
【表4】
Figure 0004279025
【0042】
参考例3
スピログリコール29.5gをトルエン500mLに加え、加熱、溶解させ、共沸させて、水分を除去した。70℃まで冷却した後、これに攪拌下に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート31.6g、ジ−n−ブチルスズジラウレート30mg及びトルエン100mLからなる混合物を10分かけて滴下した。この後、80℃で4時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却して、反応生成物を析出させ、これを濾過し、得られた反応生成物をメタノールとトルエンとの混合溶媒から晶析させて、次式(3)で表される二官能性メタクリレートを得た。
質量分析による分子量(ESI法):(M+H)+ =615
プロトンNMRスペクトル(400MHz、溶媒重クロロホルム、δ(ppm)):
【0043】
【化11】
Figure 0004279025
【0044】
【表5】
Figure 0004279025
【0045】
13C−NMRスペクトル(100MHz、溶媒重クロロホルム、δ(ppm)):
【0046】
【化12】
Figure 0004279025
【0047】
【表6】
Figure 0004279025
【0048】
実施例1〜3
参考例1〜3で得られた二官能性メタクリレート5.0gをそれぞれトルエン95.0gに加え、室温で15分間攪拌した後、これに更にアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1gを加え、室温で1時間攪拌した。このようにして得られた溶液又は懸濁液をアルゴンガス雰囲気下に50℃に20時間加熱して、ゲルを得た。このゲルを密閉容器に入れて、125℃で5分間加熱したが、ゲルはそのままであった。
【0049】
比較例1
12−ヒドロキシステアリン酸5.0gをトルエン95.0gに加え、80℃に加熱しながら、15分間攪拌した後、室温に冷却して、透明のゲルを得た。このようにして得られたゲルを密閉容器に入れて、125℃に加熱したところ、5分後に溶液に戻った。

Claims (3)

  1. 一般式(I)
    Figure 0004279025
    (式中、Rは式(II)
    Figure 0004279025
    で表される2価基を示し、R1は水素原子又はメチル基を示す。)
    で表される二官能性(メタ)アクリレートからなる重合性ゲル化剤。
  2. 請求項に記載の重合性ゲル化剤を重合させてなる架橋ポリマーからなるマトリックス中に液状有機物質が保持されてなるゲル。
  3. 請求項に記載の重合性ゲル化剤を液状有機物質と混合し、重合させることを特徴とするゲルの製造方法。
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