JP4278755B2 - 横長窯業系屋根材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅などの建築物に用い、釘等によって屋根面に固定される屋根材であって、千鳥模様など規則性のある意匠を有する屋根面を構成する屋根材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、住宅などの屋根は、隅棟部や谷部などを有する場合が多く、これらの部分では、屋根材を適当な形状、寸法に切断して施工する必要が生じる。切断した屋根材は、釘や接着剤を使用して固定している。
また一般に、屋根材の釘固定は、尻部の重ね合わせ部分で行っている。この部分は上部の屋根材が上に被さるため、釘穴が露出せず、雨仕舞い上、安全な場所である。接着剤による固定では、施工条件の影響を受け易いばかりでなく、特に立体形状の屋根材の場合、屋根材と野地板や、屋根材同士の接触部分が少ないので、接着面積が十分とれないことが多く、また、劣化による固定力低下の可能性もあり、可能であれば釘固定の方がより確実である。
【0003】
しかしながら、尻部を含まない切断材では、やむを得ず接着剤で固定したり、露出する働き面に釘を打った後にシーリング処理したりしている。露出する働き面での釘止めは、シーリング処理を施しているとはいえ、雨仕舞い上好ましくない。屋根材固定の観点では、切断した屋根材を使用した部分は弱点であった。
また、千鳥模様など、規則性を有する屋根面を構成しようとすると、屋根材の固定位置が制約を受けるため、小さな切断材を使用せざるを得なくなる頻度がより高くなる傾向があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、1枚でありながら複数枚の屋根材に見える意匠を有する立体形状の屋根材、および例えば千鳥模様など規則性のある意匠面を有する屋根面を構成する屋根材の施工において、切断した屋根材であっても尻部の固定部が必ず残り、全部の屋根材が非露出面で固定具による固定が可能となる施工方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ウォーターチャンネル部や水返しの設置によって重ね合わせ代を減らした働き効率の高い窯業系屋根材について、流れ方向長さ(タテ)に対して、流れと垂直方向の長さ(働き幅)を長くすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、
(1) 流れ方向にウォーターチャンネル部を有し、尻部に固定部を有する立体形状の窯業系屋根材であって、該屋根材の働き幅が流れ方向長さに対して2n/(n−1)〜5倍であり、且つ該屋根材の露出面に、流れ方向に平行な溝を等間隔にn−1本設けた(ここで、nは3〜10の整数)ことを特徴とする窯業系屋根材。
【0007】
(2) 上記(1)の窯業系屋根材を、該屋根材で構成された意匠が規則性を有するように横列して固定する窯業系屋根材の施工方法において、該野地面の流れ方向に対して角度を有する端部に位置する該屋根材を、尻部の固定部を残して該端部の形状に合わせて切断し、固定具で固定することを特徴とする窯業系屋根材の施工方法、
である。
【0008】
本発明の窯業系屋根材は、屋根材1枚でありながら複数枚の屋根材に見える意匠を有する立体形状の屋根材であること、また、施工時の簡単な調整によって、切断屋根材においても必ず尻部が残り、この部位で固定具による固定が可能となり、屋根面意匠の規則性を保持したまま、雨仕舞い性能を低下させることなく、地震、風等の様々な外力に対して強固な屋根面を構成できるものである。
【0009】
本発明において、窯業系屋根材とは、陶器瓦、粘土瓦、コンクリート瓦、化粧石綿スレート、無石綿化粧スレート、繊維補強セメント板など、従来屋根材として使用されている、いわゆる窯業系素材で構成される屋根材である。固定具としては、通常釘が用いられるが、野地の構成により、ビスなどの他の固定具が用いられる場合もある。
【0010】
一般の化粧スレートのように、平板状で、隣の屋根材同士が重なり合わない(ウォーターチャンネル部がない)屋根材の場合、流れ方向の重ね合わせ代が多く必要であり、また、漏水を防ぐために、隣り合う屋根材同士の隙間が流れ方向に並ばないようにしなければならず、通常は千鳥に施工する。
しかしながら、本発明のウォーターチャンネル部を有する立体形状の窯業系屋根材の場合、隣り合う屋根材同士の隙間から浸入する水はウォーターチャンネル部を通って排出されるため、必ずしも千鳥に施工しなくても、防水性能は発揮される。従って、各段の屋根材は横方向の位置について、防水上の理由からは特に制約を受けない。一列に施工したり、千鳥に施工したりするのは、屋根材形状や、意匠面からの要求である。
【0011】
本発明でいうウォーターチャンネル部を有し、屋根を構成する際の露出面に等間隔に設けられた流れ方向と平行な溝によって、1枚でありながら複数枚の屋根材に見える意匠を有する立体形状の屋根材の典型例を図1、図2に示し、本明細書内で使用する部位の名称を記した。
また、施工時の断面模式図を図3に示した。図に示したように、本発明の屋根材においては、尻部やウォーターチャンネル部に水返しが設けてあるため、重ね合わせ代が少なくて済み、また、固定部には上の屋根材が被さるので、優れた防水性能を発揮できるものである。さらに、固定部には通常、固定用釘穴が設けられており、この部分を釘固定するが、施工時に、必要に応じて新たに固定部に穴を設け、釘固定することも可能である。
【0012】
通常、住宅用の屋根の野地面で生じる屋根材の切断は、屋根材の平面図において、流れ方向に対して平行あるいは45度の角度となる。実際の切断角度は、屋根勾配のためにこれよりもやや小さくなるため、45度の切断においても尻部が残れば、確実に固定部が確保でき、屋根面の非露出面での固定具固定が可能となる。
【0013】
本発明における立体形状の屋根材は、意匠面が均等分割されているため、屋根材自体を千鳥に施工する必要はなく、屋根面意匠の規則性を保持したまま、施工位置を左右に調整することが可能である。施工位置を左右に調整しても雨仕舞い上問題にはならないから、屋根の野地面に屋根材を固定するに際し、各段について屋根材を並べ、千鳥模様など、屋根面意匠の規則性を保持したまま、両端の屋根材について、固定部が残るように左右位置を調整して施工すればよい。しかし、施工位置の調整によって、どのような段幅に対しても固定具固定可能な固定部を確保するためには、1枚でありながらn枚の屋根材に見える意匠を有する窯業系屋根材においては、nが3以上で、該屋根材の働き幅が流れ方向長さに対して2n/(n−1)倍以上あることが必要である。
【0014】
寄せ棟屋根のある一面に屋根材を施工する場合、図4に示すように、両端の屋根材はそれぞれ約45度の角度で切断するので、このような場合を例に、以下に説明する。
千鳥模様等、規則正しい屋根面意匠を付与した場合には、端部の切断辺が屋根面の意匠区分線を横切る部位が発生する。通常の屋根材では、屋根面の意匠区分線は屋根材外周にあたり、端部切断辺が屋根面の意匠区分線を横切る部位では瓦尻部を含まない切断片が発生し、これを何らかの方法で固定する必要が生じる。
【0015】
しかし、流れ方向に平行な溝を露出面に設け、外観上複数枚の屋根材に見えるようにした屋根材においては、端部切断辺が横切る屋根面の意匠区分線が、屋根材の外周でなく、露出面に設けた溝になるように取り付け位置を調整することにより、瓦尻部の固定部を残した切断片を固定具で固定する施工が可能になる。
しかし、溝を1本だけ設け、外観上2枚に見える屋根材では、図5の模式図に示すような場合には上述の調整をすることは不可能であり、溝は2本以上、すなわち外観上3枚以上に見える屋根材であることが必要である。
【0016】
露出面に2本の溝を有し、外観上3枚に見える屋根材であって、働き幅が流れ方向長さに対して3倍である屋根材を、寄せ棟形状の屋根面のある段に施工する場合の模式図を図6に示す。屋根面の意匠区分線の位置を変えずに、端部の切断片に瓦尻部の固定部が残るように固定位置を調整可能である。意匠区分線の位置を変えない固定位置が3カ所あるので、その中から端部の切断片に瓦尻部の固定部が残るような位置を選べばよい。
【0017】
しかし、屋根材の働き幅が流れ方向長さに対して3倍に満たない場合には、図7に示すように、端部の切断片に瓦尻部の固定部が残るように固定位置を調整することが出来ない場合が生じてしまう。
一般に、流れ方向に等間隔に(n−1)本の溝を配した屋根材については、該屋根材で構成される屋根面の意匠区分線の位置を変えない取り付け位置がn箇所存在するので、溝の本数が多くなると、それだけ取り付け位置の選択支が多くなる。従って、端部の切断片をすべて瓦尻部の固定部で固定するために必要な条件も、溝の本数によって変化する。
【0018】
本発明者らは、露出面の流れ方向に等間隔に(n−1)本の溝を有する窯業系屋根材について、端部の切断片をすべて瓦尻部の固定部で固定具固定するためには、nが3以上で、該屋根材の働き幅が流れ方向長さに対して2n/(n−1)倍以上必要であることを見出した。
すなわち、3等分割された意匠面を有する場合には、働き幅が流れ方向長さに対して3倍以上、4等分割の場合には8/3倍以上、5等分割の場合には5/2以上、6等分割の場合には12/5以上、等となる。
【0019】
例えば、5等分割された意匠面を有している場合、働き幅が流れ方向長さに対して5/2=2.5倍の屋根材であれば、図8のように、取り付け位置を調整することにより、端部に配する屋根材の固定具固定が可能になるが、働き幅が流れ方向長さに対して2倍の屋根材では、図9に示すように、取り付け位置を調整しても端部の固定具固定が不可能になることがある。
【0020】
意匠面を均等分割する溝の数が多くなると、溝間隔が狭くなり、屋根面における千鳥模様などの規則的な意匠がはっきりしなくなるので、意匠面は10分割以下、すなわち溝の数は9本以下が好ましい。
上述したように、ウォーターチャンネル部を有した立体形状の屋根材は、働き幅が流れ方向長さに対して一定以上の長さがあれば、施工時の固定位置調整によって、切断した屋根材も全て固定具で固定することが可能になるが、極端に横長にしてしまうと、1枚あたりの重量が重くなり、運搬やハンドリングが困難になり、施工性が低下する。従って、働き幅は流れ方向長さに対して5倍以下であることが好ましい。
【0021】
本発明において、屋根材の流れ方向に設ける溝は、設ける場所の近辺に集中して2〜4本設けてもよいが、その場合には、nは1とみなす。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を以下に記す。
【0023】
【実施例1】
屋根の露出面に流れ方向に3等分する溝を有する、働き幅が流れ方向長さに対して3倍の屋根材で、寄せ棟形状の一面(三角形)への施工を行う場合の瓦割り付け模式図を図10に示す。
千鳥模様の意匠になるように施工していく場合、端部の切断片において、瓦尻部が残らず、非露出面での釘固定が不可能な部分が発生することがあるが、横方向に屋根材をずらして施工することにより、全ての切断瓦で瓦尻部の固定部が残り、従って、非露出面での釘固定が可能になる。
【0024】
【実施例2】
屋根の露出面に流れ方向に5等分する溝を有する、働き幅が流れ方向長さに対して2.5倍の屋根材で、寄せ棟形状の一面(三角形)への施工を行う場合の瓦割付模式図を図11に示す。
実施例1と同様に、瓦尻部が残らない段については、固定位置を横方向に調整することにより、全ての切断瓦について、非露出面での釘固定が可能になる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の屋根材であれば、千鳥模様等、規則性のある意匠を有する屋根の施工において、葺き始めの屋根材の固定具固定だけでなく、葺き終わりの屋根材も必ず尻部の固定部で固定することが可能になり、固定強度に優れた屋根面を構成することが出来る。該固定部は、上段の屋根材が覆うので、雨仕舞い上の問題も生じない。
【0026】
また、隅部や谷部の屋根材についても全て固定具固定できるので、非常に強固な屋根面を構成でき、地震や風等による屋根材の飛散、ズレ防止に大きな効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウォーターチャンネル部を有し、流れ方向に平行な溝が意匠面を均等分割している立体形状の屋根材の典型例を示す平面図である。
【図2】ウォーターチャンネル部を有し、流れ方向に平行な溝が意匠面を均等分割している立体形状の屋根材の説明図である。
【図3】屋根材の施工時の断面模式図である。
【図4】寄せ棟屋根の屋根材割付の例を示す模式図である。
【図5】流れ方向に2等分する溝を有する屋根材において、屋根面意匠を保持したまま全ての瓦の固定具固定が可能になるように位置調整することが出来ない場合が発生する例を示す模式図である。
【図6】流れ方向に3等分する溝を有する、働き幅が流れ方向長さに対して3倍の屋根材を施工する際に、固定具固定できない切断片が発生する場合、屋根面意匠を保持したまま取り付け位置を調整し、全ての屋根材の固定具固定が可能になる例を示す模式図である。
【図7】流れ方向に3等分する溝を有する、働き幅が流れ方向長さに対して2.5倍の屋根材において、屋根面意匠を保持したまま全ての瓦の固定具固定が可能になるように位置調整することが出来ない場合が発生する例を示す模式図である。
【図8】流れ方向に5等分する溝を有する、働き幅が流れ方向長さに対して2.5倍の屋根材を施工する際に、固定具固定できない切断片が発生する場合、屋根面意匠を保持したまま取り付け位置を調整し、全ての屋根材の固定具固定が可能になる例を示す模式図である。
【図9】流れ方向に5等分する溝を有する、働き幅が流れ方向長さに対して2倍の屋根材において、屋根面意匠を保持したまま全ての瓦の固定具固定が可能になるように位置調整することが出来ない場合が発生する例を示す模式図である。
【図10】流れ方向に3等分する溝を有する、働き幅が流れ方向長さに対して3倍の屋根材で寄せ棟形状の1面(三角形)を千鳥模様に施工した場合の割付の模式図であり、千鳥模様の屋根面意匠を保持したまま横方向の位置調整を行うことによって全数の固定具固定が可能になることを示す模式図である。
【図11】流れ方向に5等分する溝を有する、働き幅が流れ方向長さに対して2.5倍の屋根材で寄せ棟形状の1面(三角形)を千鳥模様に施工した場合の割付の模式図であり、千鳥模様の屋根面意匠を保持したまま横方向の位置調整を行うことによって全数の固定具固定が可能になることを示す模式図である。

Claims (2)

  1. 流れ方向にウォーターチャンネル部を有し、尻部に固定部を有する立体形状の窯業系屋根材であって、該屋根材の働き幅が流れ方向長さに対して2n/(n−1)〜5倍であり、且つ該屋根材の露出面に、流れ方向に平行な溝を等間隔にn−1本設けた(ここで、nは3〜10の整数)ことを特徴とする窯業系屋根材。
  2. 請求項1記載の窯業系屋根材を、該屋根材で構成された意匠が規則性を有するように横列して固定する窯業系屋根材の施工方法において、該野地面の流れ方向に対して角度を有する端部に位置する該屋根材を、尻部の固定部を残して該端部の形状に合わせて切断し、固定具で固定することを特徴とする窯業系屋根材の施工方法。
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