以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1〜図3を用いて本実施形態に係る画像処理について説明する。この画像処理は超音波診断装置(システム)において実行されるものであるが、超音波診断装置本体からデータを取得するコンピュータ上において実行されてもよい。
図1には、抽出ラインの設定方法が示されている。2D画像10は、表示器の画面上に表示された画像であり、その2D画像10は、例えば、白黒の2D組織エコー画像(Bモード断層画像)、カラーの2D組織速度画像(TDI法に従った画像)、あるいは、それらを合成した画像である。ちなみに、三次元画像上において抽出ラインの設定を行うことも可能である。図1に示す例において、超音波ビームの電子セクタ走査により、超音波ビームが各ビームアドレスにおいて形成され、これによって扇状のデータ取込領域(走査面)が形成される。その走査面上で得られたデータ群を画像化したものが2D画像10である。図1においてr方向は深さ方向を表しており、φ方向はビームの偏向方向(電子走査方向)を表している。図示されるように、各ビームアドレスごとにビーム偏向角度は異なっている。
2D画像10には、図1に示す例において、心臓(左室)14の断面が現れている。符号14Aは左室の内側エッジ(内膜)を表しており、符号14Bは左室の外側エッジ(外膜)を表している。抽出ラインの設定に際して、2D画像10は動画像であるのが望ましい。ただし、指定された時相(時刻)の静止画像上において抽出ラインの設定を行うこともできる。
抽出ラインLの設定について具体的に説明する。抽出ラインLは2D画像10上において任意の位置で任意の傾きをもって設定することができる。その長さは本実施形態において固定的に設定されているが、もちろん、その長さをユーザー設定させるようにしてもよい。抽出ラインLは、本実施形態においてユーザーにより設定されているが、場合によっては画像解析結果などから自動的に設定することも可能である。抽出ラインLは本実施形態において直線である。
図1に示す例において、左室14の特定部位を横切って1本の抽出ラインLが設定されている。その場合において、その特定部位の収縮及び拡張の運動方向にできる限り合致するように抽出ラインLが設定されるのが望ましい。したがって、2D画像10が動画像として表示されるのが望ましく、そのような構成によれば、特定部位の運動方向に適切に抽出ラインLを合わせることが可能であり、また抽出ラインLの長さ範囲内に特定部位の運動全体がカバーされていることを容易に確認することができる。抽出ラインLの設定に当たっては、トラックボールなどのポインティングデバイスを用いてその位置及び傾き角度を設定するようにしてもよいし、抽出ラインLにおける2つの端点X,Yの座標を指定することにより、その指定を行うようにしてもよい。
後述するMモード表示方式に従った組織速度画像(M−組織速度画像)に加えてトレースライン群を表示する場合には、抽出ラインL上に1又は複数のトラッキング点がユーザーによりあるいは自動的に設定される。この図1に示す例では、内膜14A上にトラッキング点Rが設定されており、外膜14B上にトラッキング点Tが設定されており、それらのトラッキング点R,Tの間の距離を均等に2分割する分割点としてトラッキング点Sが自動設定されている。すなわち図1に示す例では、抽出ラインL上に2つの区間(R−S,S−T)が設定されている。抽出ラインL上に設定する区間の数(分割数)kについてはユーザーによって任意に設定することができる。図1に示す例では、2D画像10上に表示された抽出ラインL上において複数のトラッキング点R,S,Tが設定されていたが、後述するM−組織速度画像上における特定時相の組織速度データ列上においてそれらのトラッキング点の指定を行うことも可能である。トラッキング処理及びトレースライン群の形成については後に図2及び図3を用いて説明する。
本実施形態においては、抽出ラインLの方向が組織の運動方向とみなされ、それに基づいて抽出ライン上において抽出される各時相の組織速度データ列に対して角度補正が実行される。すなわち、抽出ラインL上における各データ点において観測される組織速度データは、実際の組織速度を表すものではなく、実際の組織速度についての超音波ビーム方向に沿った速度成分である。したがって、抽出ラインLと超音波ビームとの交差角度θが既知となれば、各組織速度データについて角度補正を行って、速度成分から実際の組織速度を演算することが可能となる。もちろん、速度ベクトルは三次元ベクトルであるため、実際の速度を厳密に演算することはできないが、少なくとも走査面上において角度補正を行うことにより、より信頼性のある計測を実現することができる。
上述したように、各ビームアドレスごとにビーム偏向角度が異なっているため、抽出ラインL上における各データ点ごとに交差角度は異なる。図1においては、参考までに、全データ点のうちで、端点X,Y及びトラッキング点R,S,Tのそれぞれについて交差角度がθA,θB,θR,θS,θTで表されている。ちなみに、抽出ラインL上において補間処理などを適用してもよい。
本実施形態においては、抽出ラインL上における全データ点について個別的に交差角度が演算されており、これによって抽出ラインL上における全体にわたって適切な角度補正を実現している。ただし、演算簡略化のために、抽出ラインL上における代表的なデータ点についての交差角度を抽出ラインL上における全点についての交差角度とみなすようにしてもよいし、複数の点についての平均交差角度を代表交差角度として角度補正演算で利用するようにしてもよい。また電子リニア走査が適用される場合には、抽出ラインLが直線であれば、いずれかのビームと抽出ラインLとのなす角度を求めるだけでよい。
電子セクタ走査における各ビームアドレスごとのビーム偏向角度は既知であり、また2D画像10上において設定された抽出ラインLの座標情報(位置及び傾き等)も既知であるため、抽出ラインL上における各データ点についての交差角度は計算により容易に求めることができる。そこで、本実施形態においては、2D画像10上において抽出ラインLを移動させながらその位置決めを行う過程においてリアルタイムで抽出ラインL上における複数のデータ点についての複数の交差角度(交差角度セット)が演算されている。そして、後に説明するように、交差角度セットの内で少なくとも1つの交差角度が所定のアラーム条件に該当する場合にはアラーム処理が実行されている。すなわち、抽出ラインLと超音波ビームとが直交する場合、ドプラ情報の観測が困難となるため、交差角度が直交状態あるいはそれに近くなった場合にはその事態をユーザーに報知するものである。
上記のように求められた交差角度セットは、抽出ラインLに対応する各時相の組織速度データ列を抽出した場合に、その角度補正演算で利用されることになる。ユーザーとしては、角度補正について格別意識する必要はなく、単に、抽出ラインLを注目する組織位置においてその運動方向に合わせて設定するだけで正確な速度情報が反映された組織速度画像を得られるという利点がある。よって、ユーザーの操作負担が軽減されており、また複雑な演算を行うことなく簡便に角度補正を行える。
図2には、角度補正及びそれに基づく画像形成の内容が概念図として示されている。ここで、(A)にはフレーム列が示されている。このフレーム列は時系列順で取得された複数の2D組織速度画像16によって構成されるものである。図2においては、それらの2D組織速度画像16に対してフレーム番号としてF1,F2,・・・,Fnのラベルが付されている。各2D組織速度画像16には、抽出ラインL及びトラッキング点R,S,Tが表されている。ちなみに、このフレーム列は、本実施形態において、後述するシネメモリ上に保存されたものであるが、リアルタイムで取得されるものであってもよい。なお、図2においては2D組織エコー画像(Bモード画像)のフレーム列については図示省略されている。
抽出ラインLが設定された後、各2D組織速度画像(フレーム)16から、抽出ラインLに相当する組織速度データ列q1,q2,・・・,qnが抽出される。そして、複数の組織速度データ列q1,q2,・・・,qnに対してそれぞれ角度補正18が実行され、これによって補正後の組織速度データ列Q1,Q2,・・・,Qnが生成される。その角度補正18に当たっては、抽出ラインLについて演算された交差角度セットが用いられる。具体的には、角度補正前の観測組織速度をvとし、実際の組織速度をVとし、交差角度をθとすると、v=Vcosθの関係があるため、V=v/cosθの計算を実行することにより各組織速度データごとに角度補正が行われる。
(B)に示すM−組織速度画像は、各時相すなわち各フレームごとに求められた角度補正後の組織速度データ列Q1,Q2,・・・,Qnを時系列順に並べた画像である。すなわちその縦軸は抽出ラインに相当し、その横軸は時間軸に相当する。各組織速度データ列は、抽出ライン上に並ぶ複数の組織速度データで構成されている。それらの組織速度データのマッピングにあたって、必要に応じて、補間処理あるいは間引き処理が適用される。(B)に示すM−組織速度画像は、その全体にわたって適正な角度補正が行われた後の画像であるため、抽出ライン上における組織速度分布の時間的な変化を正確に観察することが可能である。通常は、M−組織速度画像はカラー画像として表示される。すなわち、組織速度データの正負及び大きさに応じて所定の色相及び輝度が割り当てられる。
本実施形態においては、上述したトラッキング処理を用いてM−組織速度画像20上にトレースライン群28を描画することが可能である。具体的には、特定時相において1又は複数のトラッキング点が指定される。図2に示す例では、最初の時相において3つのトラッキング点R,S,Tが設定されており、ここでトラッキングR,Tはユーザーによって指定された点であり、トラッキング点Sは分割数kに応じて自動的に設定された点である。3つのトラッキング点R,S,Tに関して、最初の時相におけるそれぞれのトラッキング点が有する組織速度はVR1,VS1,VT1である。各時相ごとに、3つのトラッキング点について組織速度の値が読み取られ、次の時相における3つのトラッキング点の座標(抽出ライン方向の位置)が推定され、これが各時相ごとに繰り返され、最終的にトレースライン群28が描かれる。トレースライン群28は3つのトラッキング点R,S,Tに対応する3つのトレースライン22,24,26で構成されている。トラッキング処理については後に図3を用いて詳述する。
以上のように、M−組織速度画像20上にトレースライン群28を描くことにより注目する1又は複数の点の運動軌跡を容易に観察することが可能となる。特に、角度補正された画像を基礎としてトラッキングが行われているため、そのトラッキング精度を高めることができるという利点がある。本実施形態のトラッキング処理によれば、組織速度を用いてトラッキングを実行しているため、組織エコートラッキングが行えないような場合においても、トラッキングを実行できるという利点がある。
本実施形態においては、上記のトラッキング処理及びトレース処理の結果を利用して、(C)で示すようなM−ストレイン画像30が形成される。その具体的な方法について後に図3を用いて説明するが、このM−ストレイン画像30は各時相における各区間ごとに演算されるストレインをカラー表現した画像である。M−ストレイン画像30を形成する場合にはトレースライン22,24,26を表示してもよいし、表示しなくてもよい。いずれにしても、それらのトレースライン22,24,26によって区分される各時相の2つの区間についてストレインが演算され、そのストレインの時間変化がカラーによって表されることになる。例えばある時相について注目した場合、トレースライン22と26との間には一次元の画素値列が存在するが、その内でトレースライン22と24との間に存在する部分画素列28についてはそれに対して定義されるストレインに対応付けられた着色が施され、これはトレースライン24と26とで区分される部分画素列30についても同様である。ストレインは組織の一次元の歪みとして定義され、そのようなストレインを心壁における各深さ区分ごとにあるいは各層ごとに表示することによって、より疾病診断精度を高められるという利点がある。
本実施形態においては、更にM−ストレイン画像30上における所定時相をユーザー指定することにより、すなわち例えばカーソル31を用いて時相指定を行うことにより、当該時相におけるストレイングラフ32を画面上に別途表示させることもできる。これについては後に説明する。
ちなみに、以下に定義されるストレインに代えて、各区間の長さやその変化率を評価値としてカラー表現することも可能である。また各時相における各区間のストレインを数値によってリスト表示することも可能であり、また指定された時相におけるストレインを数値によって表示することも可能である。ちなみに、M−組織速度画像20についてだけ時間軸上において、最初の時相ではなく途中の時相が指定され、当該時相において1又は複数のトラッキング点が設定された場合には、当該時相における時間的に前方向及び後方向の両方向にトラッキング処理が適用されることになる。なお、一般的には、抽出ラインLの設定は心臓の拡張末期のフレームに対して行われるのが望ましく、また、そのような拡張末期において各トラッキング点の指定を行うのが望ましい。
次に、図3を用いてトラッキング処理とストレイン演算について説明する。図3には時間軸t方向に並んだ複数の組織速度データ列Q1,Q2,Q3,・・・,Qnが表されている。それぞれの組織速度データ列は角度補正後のものである。
この例では組織速度データ列Q1上において3つのトラッキング点R,S,Tが初期設定されており、それぞれのトラッキング点R,S,Tが有する組織速度データはVR1,VS1,VT1である。上述したように、両側のトラッキング点R,Tについてはユーザー設定されており、ここでその2つのトラッキング点R,Tの間の距離はlである。分割数kとして2が設定されている場合、その距離lを2分割する分割点としてトラッキング点Sが指定される。したがって、距離lは2つの均等の区間に分割され、それらの長さはそれぞれl0で(=l/2)ある。その長さl0がストレインを演算するための規格化用の情報として利用される。
トラッキング処理は各時相における各トラッキング点ごとに実行される。例えば最初の時相における上段のトラッキング点Rに注目すると、そのトラッキング点Rが有する組織速度の値はVR1であり、それに対してフレーム間の時間間隔Δtを乗算することによりデータ抽出ライン方向における移動量34を求めることができる。つまり次の時相の組織速度データ列Q2上における更新されたトラッキング点の位置を特定することができる。時間軸上2番目のトラッキング点Rは組織速度の値としてVR2,を有しており、それを用いて3番目のトラッキング点Rへの移動距離36を推定することができる。ここで3番目のトラッキング点Rは組織速度の値としてVR2,を有している。そして、以上のようなトラッキング点が有する組織速度の値の参照及びそれに基づく移動量の推定を繰り返すことにより、最終の組織速度データ列Qn上における最終のトラッキング点Rを特定することができ、それらの時間軸上に並ぶ複数のトラッキング点Rを相互に連結することにより1本のトレースラインを描くことが可能となる。そして、この処理を初期設定される複数の点のそれぞれについて適用すれば必要な複数のトレースラインを描くことが可能となる。ちなみに、現在注目している時相において参照された組織速度の値に基づいて次の時相におけるトラッキング点の位置を推定する場合に、その推定された位置を仮の位置として取り扱い、当該仮の位置が有する組織速度の値を併せて考慮し、次の時相におけるより正確なトラッキング点の位置を推定するようにしてもよい。
次に、図3に基づいてストレイン演算について説明する。ストレインε(t)は、一般に、ε(t)=(l(t)−l0)/ l0で定義される。ここでl(t)は現在注目している区間の区間長であり、l0は規格化のための基準区間長である。したがって、図3において、組織速度データ列Q2上において定義される2つの区間lRS2とlST2をそれぞれ上記計算式におけるl(t)に代入すれば、それぞれの区間についてストレインε(t)を求めることができる。これは組織速度データ列Q3における2つの区間長lRS3,lST3についても同様であり、更にそれ以降の各データ列についても同様である。そして、各時相における各区間ごとに演算されたストレインの符号及び大きさを色相などに対応づけて表示すれば、図2(C)に示したようなM−ストレイン画像30を得ることができる。そのM−ストレイン画像30における横軸は上記のM−組織速度画像20と同様に時間軸であり、その縦軸も上記M−組織速度画像20と同様に抽出ラインに相当している。なお、各区間は縦軸方向に並んだ複数の画素によって構成されており、それらの複数の画素に対して同じカラー値が割り当てられることになる。
次に、図4〜図7を用いて本実施形態に係る超音波診断装置の構成及び動作について説明する。図4には超音波診断装置の機能ブロック図が示されており、図5及び図6には超音波診断装置における2つの表示例が示されており、図7には、超音波診断装置の動作例が示されている。
図4において、プローブ40は、超音波を送受波する送受波器である。本実施形態において、プローブ40内には複数の振動素子からなるアレイ振動子が設けられており、そのアレイ振動子によって超音波ビームが形成される。超音波ビームは本実施形態において電子セクタ走査方式によって電子走査され、これによって扇状の走査面が構築されている。ちなみに、いわゆる1つの送信ビーム当たり複数の受信ビームを同時形成する制御を適用することも可能であり、またプローブ40がいわゆる3Dプローブであってもよい。例えば心臓の超音波診断を行う場合には、生体の胸部表面上に当接されるプローブ40の位置及び姿勢が適正に調整される。その場合においては表示器に表示される例えばBモード画像などが観察される。組織ドプライメージング法(TDI法)を実行するために、各ビームアドレスごとに複数回の超音波の送受信が実行される。
送受信部42はデジタルビームフォーマーとして構成されている。すなわち送受信部42は送信ビームフォーマー及び受信ビームフォーマーを有している。送信ビームフォーマーによってアレイ振動子に対して複数の送信信号が供給され、これによって送信ビームが形成される。一方、アレイ振動子から出力される複数の受信信号が受信ビームフォーマーにおいて整相加算処理され、これによって整相加算後の受信信号が得られる。すなわち受信ビームに対応した受信信号が得られることになる。送受信部42から出力される受信信号は図4に示されるように組織エコー処理部46及び組織速度処理部48へ出力される。ちなみに、図示のように、送受信部42の後段にシネメモリ44を設けるようにしてもよい。すなわち座標変換前の受信信号をシネメモリ44に格納しておき、必要に応じて、そのシネメモリ44からデータを読み出して必要な画像を実行するものである。
組織エコー処理部46は、組織エコー画像を形成するための各種の信号処理を実行している。その処理には、例えば対数変換処理などが含まれ、更に座標変換処理、補間処理などが含まれる。組織エコー処理部46はいわゆるDSC(デジタルスキャンコンバータ)を有する。組織エコー処理部46から各フレームのデータが出力される。組織エコー処理部46の後段にはシネメモリ50が設けられている。このシネメモリ50は座標変換後の各フレームのデータを保存するメモリであり、そこには時系列順でフレーム列が格納される。
組織速度処理部48は、ドプラ処理部として機能するものであり、送受信部42から出力される受信信号に対して複素信号変換処理、自己相関演算処理などを実行し、これによって組織の速度情報を演算している。更に、組織速度処理部48は座標変換処理や補間処理なども実行している。組織エコー処理部46と同様に、組織速度処理部48も上記のDSCを有している。組織速度処理部48の後段にはシネメモリ52が設けられる。このシネメモリ52には、組織速度処理部48から出力される各フレームのデータが時系列順で格納される。本実施形態において、シネメモリ50とシネメモリ52は同期して動作している。すなわち、それらのシネメモリ50,52には一定の時間範囲内における時系列順の複数のフレームデータが互いに対応付けられて格納されている。シネメモリ44,50,52はそれぞれリングバッファ構造を有しており、最新のフレームから過去一定時間前のフレームまでの時間範囲内にわたってフレーム列を格納する機能を有する。シネメモリ44においては送受波座標系にしたがった各フレームのデータが格納されており、シネメモリ50,52においては表示座標系にしたがった各フレームのデータが格納されている。シネメモリ44の配置を省略するようにしてもよいし、あるいは、シネメモリ50,52の配置を省略するようにしてもよい。いずれにしても、上記のようなシネメモリを利用することにより、そこに格納されているフレーム列を後に読み出してループ再生させることなどが可能である。本実施形態にはそのようなループ再生にしたがって表示される動画像上において上述した抽出ラインの設定が行われる。
フレームメモリ54上には、2D組織エコー画像すなわちBモード画像が格納される。フレームメモリ56には、本実施形態において、シネメモリ50から読み出された各時相の組織速度データ列が格納される。すなわち、フレームメモリ56上にはM−組織エコー画像が構築される。それらの2D組織エコー画像及びM−組織エコー画像はいずれも白黒画像である。
組織速度処理部48から出力される各フレームのデータはカラー演算器57によってカラー演算処理され、その後にフレームメモリ58に格納される。フレームメモリ58上にはカラーの2D組織速度画像が格納される。カラー演算器57はルックアップテーブル(LUT)として構成されており、入力される組織速度の正負及びその値に応じたRGBの値を出力する。カラー演算器57をフレームメモリ58の後段に設けることもできる。そのような構成において、フレームメモリ58から出力される白黒のデータをカラー演算器57を経ることなく合成処理部76に対してそのまま出力できるように構成してもよい。
シネメモリ52から、抽出ラインに対応付けられた各時相の組織速度データ列が抽出され、それらのデータ列は角度補正部60に入力され、上述した角度補正が実行される。角度補正後の組織速度データ列はカラー演算器61を介してフレームメモリ62に格納される。フレームメモリ62の後段にカラー演算器61を設けることもできる。そのような構成において、フレームメモリ62から出力される白黒のデータをカラー演算器61を経ることなく合成処理部76に対してそのまま出力できるように構成してもよい。また、角度補正後の組織速度データ列はトラッキング部64及び必要に応じて速度プロファイル作成部74に出力される。カラー演算器61は、上記のカラー演算器57と同様に、LUTによって構成されており、本実施形態においてカラー演算器57におけるカラー演算条件とカラー演算器61におけるカラー演算条件は同一である。したがってそれらのLUTを共通利用することも可能である。もちろん2D組織速度画像とM−組織速度画像とで別々のカラー演算条件を適用することもできる。
ちなみに、シネメモリ50及びシネメモリ52から抽出される組織エコーデータ列及び組織速度データ列に対して補間処理や間引き処理を適用するデータ処理器を設けるようにしてもよい。本実施形態において、角度補正部60は、入力される組織速度データ列を構成する各組織速度データに対して、それに対応付けられた交差角度に基づく角度補正演算を適用することにより角度補正結果を得ている。しかし、そのような独立した角度補正部60を設けることなく、カラー演算器61が有するLUTの内容を書き換えることにより、結果として角度補正が行われるようにしてもよい。2D組織速度画像とM−組織速度画像はカラー画像として構成されている。
トラッキング部64は、図3に示したトラッキング原理にしたがって、特定時相において設定された1又は複数のトラッキング点について各時相ごとにトラッキング処理を実行している。そしてそのトラッキング結果はトレースライン形成部66及びストレイン演算部68に渡されており、トレースライン形成部66は各時相において推定されたトラッキング点を互いに時間軸上で連結することによりトレースラインを形成している。トレースラインは上述したようにトラッキング点ごとに形成されており、複数のトラッキング点について複数のトレースラインを形成することもできる。トレースライン形成部66はトラッキング点の相互連結処理の他、スムージング処理などを行うものであってもよい。
トレースライン形成部66によって形成されたトレースライン群のグラフィックイメージはトレースライン形成部66内に設けられたフレームメモリ上に一旦格納され、そこから読み出されて合成処理部74へ出力される。
ストレイン演算部68は、図3に示したストレイン演算の原理にしたがって、各時相における各区間ごとにストレインを演算する。その演算結果に対してはカラー演算器69において着色処理が施され、その着色処理後のM−ストレイン画像がフレームメモリ70上に格納される。カラー演算器69はLUTなどによって構成される。また、所定の時相が指定された場合、ストレイングラフ作成部72は当該時相における各区間のストレインを参照し、これによって後述するストレイングラフを作成する。そのストレイングラフのグラフィックイメージはストレイングラフ作成部72が有する図示されていないフレームメモリ上に格納される。速度プロファイル作成部74は、ユーザーによって指定された時相における速度プロファイル(速度分布)を作成する。その作成された速度プロファイルのグラフィックイメージは速度プロファイル作成部74内に設けられた図示されていないフレームメモリ上に格納される。
合成処理部76は、入力される複数の画像データの中から表示モードに応じて選択された複数の画像データを合成して1つの表示画像を構成するモジュールである。図示されるように、合成処理部76にはフレームメモリ54から出力される2D組織エコー画像のデータ、フレームメモリ56から出力されるM−組織エコー画像のデータ、フレームメモリ58から出力される2D組織速度画像のデータ、フレームメモリ62から出力されるM−組織速度画像のデータ、トレースライン形成部66から出力されるトレースラインのデータ、フレームメモリ70から出力されるM−ストレイン画像のデータ、ストレイングラフ作成部72から出力されるストレイングラフのデータ、速度プロファイル作成部74から出力される速度プロファイルのデータがそれぞれ入力されており、更に後に説明する制御部82からのグラフィックデータも入力されている。
合成処理部76から出力される画像データは表示器80に出力され、表示器80上には後に図5及び図6を用いて示すような画像が表示されることになる。表示器80は例えばCRTによって構成されてもよいし、液晶ディスプレイによって構成されてもよい。あるいは、合成処理部76の後段にCRT及び液晶ディスプレイの2つのディスプレイを接続し、一方をメインディスプレイとし、他方をサブディスプレイとしてもよい。
制御部82は超音波診断装置が有する各構成の動作制御を行っている。この制御部82はCPU及び動作プログラムによって構成されるものである。制御部82もグラフィック処理機能を有しており、例えば抽出ラインのグラフィックについてもそれを表すデータを合成処理部76へ出力している。図4において符号100で示す表示処理部は本実施形態において制御部82とは別のモジュールとして示されているが、表示処理部100がCPU及び処理プログラムによって構成されてもよい。あるいは、表示処理部100が専用のハードウエアによって構成されてもよい。あるいは、表示処理部100が有する機能の内で一部の機能のみがソフトウエア処理によって実現され、残りがハードウエアによって実現されてもよい。
制御部82は、本実施形態においてシネメモリ44,50,52の動作制御を行っている。シネメモリ44,50,52はハードディスク、半導体メモリなどによって構成されており、それらにはフレーム列が格納される。制御部82の制御によってそれらに格納されたフレーム列に対するループ再生などが実行される。例えば、シネメモリ50,52に対してループ再生の指示が出されると、そこに格納された時系列順のフレーム列が順番に呼び出されて表示器80に動画像として表示されることになる。また制御部82は、抽出ラインが設定された場合、例えばシネメモリ50,52から、抽出ラインに対応付けられた各時相のデータ列を抽出する読み出し制御を実行する。シネメモリ50から読み出された各時相の組織エコーデータ列は上述したようにフレームメモリ56に格納され、シネメモリ52から読み出された各時相の組織速度データ列は、角度補正部60,カラー演算器61を介してフレームメモリ62に格納される。
入力部84は操作パネルなどによって構成され、その入力部84を利用して、抽出ラインの設定、トラッキング点の指定、分割数kの指定、時相の指定、表示モードの選択などを行うことができる。心電計86から出力される心電信号は制御部82に出力される他に、合成処理部76に出力されている。心電信号は上述したループ再生における同期信号として用いられ、また表示器80上には心電波形が表示される。
図5には、第1表示モードにおける表示例が示されており、図6には第2表示モードにおける表示例が示されている。図5に示す第1表示モードにおいては、カラー画像としての2D組織速度画像102及び白黒画像としての2D組織エコー画像104が別々に表示されている。もちろん両者を合成した画像を表示するようにしてもよい。いずれかの画像上において1又は複数の抽出ラインLが設定され(その設定内容はもう一方の画像にも反映される)、図5に示す例ではA,B,C,Dで特定される4つの抽出ラインLが設定されている。本実施形態において、複数の抽出ラインを設定する場合、各抽出ラインの長さは固定値であるが、もちろん各抽出ラインごとにその長さを可変設定するようにしてもよい。その場合において、各抽出ラインごとに、表示する画像の縦軸のスケールをそれぞれ一定にしてもよいし、可変してもよい。図5に示す例では、各抽出ラインLごとにその抽出ライン上における内膜点及び外膜点にそれぞれトラッキング点がユーザーにより設定されている。上述したように、各抽出ラインを設定する場合、その抽出ラインを設定しようとする局所部位の運動方向にできる限り合致するようにそれぞれの抽出ラインを設定するのが望ましい。一般に、心臓壁に対して抽出ラインを設定する場合には、その心臓壁を横切る方向すなわち厚さ方向に抽出ラインを設定すれば、同時に運動方向に抽出ラインを設定したことになる。上述したように、2D組織速度画像102及び2D組織エコー画像104はループ再生を用いて動画像として表示されるのが望ましい。
以上のように設定された4つの抽出ラインに対応して、4つ第1複合画像106A,106B,106C,106Dが表示される。それぞれの第1複合画像106A,106B,106C、106Dにはそれに対応づけられた抽出ラインを識別するラベル(A,B,C,D)が付されている。それぞれの第1複合画像106A,106B,106C,106Dは、白黒画像としてのM−組織エコー画像107−1とカラー画像としてのM−組織速度画像107−2とを合成した画像である。この場合において、M−組織速度画像107−2は角度補正後の組織速度データを基礎として構築されているため、より正確な速度情報を表現することができる。なお、背景としての白黒のM−組織エコー画像107−1についてはその表示を省略するようにしてもよい。
図5に示されるように、各第1複合画像106A,106B,106C,106D上にはトレースライン群108,108B,108C,108Dが合成表示されている。そのようなトレースライン群108A,108B,108C,108Dを表示することにより、例えば心臓壁の内側の層と外側の層とについて時間的な動きや厚みの変化を個別的に明瞭に表示することが可能となる。
符号110は心電波形を表している。ちなみに、第1複合画像106A,106B,106C,106D及び心電波形110のそれぞれの時間時間は互いに平行でその両端が一致している。その時間軸上において時相カーソル112を用いてユーザーが所定の時相を指定すると、図5に示されるように、4つの抽出ラインに対応して4つの速度プロファイル114A,114B,114C,114Dが表示される。速度プロファイル114A,114B,114C,114Dにおける横軸116は速度軸であり、正負の速度の大きさを表している。その縦軸118は抽出ライン上の位置を表している。ある時相における各抽出ライン上の速度プロファイルを観察することにより、当該時相において組織運動のより詳細な観察を行えるという利点がある。上記説明では、ユーザーによって時相の指定を行ったが、その指定がなされない場合においては、計測開始時点をデフォルトの時相として指定して各速度プロファイルを表示させることもできる。
図6には、第2表示モードにおける表示例が示されている。この表示例においては、図5に示した表示例と同様に2D組織速度画像102及び2D組織エコー画像104が表示される。また心電波形110も上記同様に表示されている。
この表示例でも、4つの抽出ラインが設定されているが、その4つの抽出ラインに対応して4つの第2複合画像120A,120B,120C,120Dが上下に並んで表示されている。各第2複合画像120A,120B,120C,120Dはそれぞれ白黒画像としてのM−組織エコー画像122−1と、カラー画像としてのM−ストレイン画像120−2とを合成した画像である。図6に示す表示例においては、各第2複合画像120A,120B,120C,120D上にトレースライン群も同時表示されているが、それらのトレースライン群については格別表示しなくてもよい。図示されるように、各第2複合画像120A,120B,120C,120Dにおいては、この例では各抽出ライン上に5つのトラッキング点が指定されたことに対応してそれぞれ4つの帯状領域が形成されており、つまり各時相ごとに4つの区間が存在している。そして各時相における各区間ごとにそこで演算されたストレインに対応付けられた色が表示されることになる。したがってそのような第2複合画像120A,120B,120C,120Dを観察することにより、各抽出ラインが設定された部位における各深さ区分ごとの歪みの時間的な変化を明瞭に観察することが可能となる。
また時相カーソル124を用いて時間軸上における所定の時相をユーザーにより指定すると、その時相における各抽出ラインごとのストレイングラフ126A,126B,126C,126Dが表示される。それらの横軸130はストレインの正負及びその大きさを表しており、その横軸132は抽出ライン上の位置を表しており、具体的には各区間を表している。それぞれの区間ごとに棒グラフとしてのバー128が表示されており、そのバーの向きや大きさを観察することによって、選択した時相でのストレインの分布をより詳細に観察することが可能となる。
次に、図7を用いて図4に示した装置の動作例について説明する。
まずS101では、超音波の送受波が行われ、具体的にはTDIモードにおいて組織速度情報を抽出するための超音波の送受波が実行され、これによって各フレームのデータが取得される。ここで取得されるフレーム列は、2D組織エコーフレーム及び2D組織速度フレームである。それらのフレーム列はそれぞれシネメモリ上に格納される。
S102では、シネメモリ上に格納された2つのフレーム列が同期して読み出され、すなわちループ再生される。これによって、図5及び図6に示したように表示画面上に動画像として2D組織エコー画像及び2D組織速度画像が表示されることになる。ループ再生であるので、例えば2心拍の時間範囲にわたって繰り返し同じ動画像が表示されることになる。ちなみにこのループ再生にあたっては例えば2D組織エコー画像のみのループ再生を行うようにしてもよい。いずれにしても抽出ラインを適正かつ迅速に設定できる画像を表示するのが望ましい。
S103ではユーザーによる抽出ラインの設定が開始される。すなわち画面上に抽出ラインがデフォルト表示され、その抽出ラインをトラックボールなどによって移動させ、またその向きを任意に設定する操作が行われる。この場合においては上記のような動画像上においてその抽出ラインの設定操作を行うのが望ましいが、例えば拡張末期における画像を静止画像として表示し、その画像上において抽出ラインの設定操作を行わせるようにしてもよい。S104では、各時刻における抽出ライン上の各データ点について超音波ビームとの交差角度がリアルタイムに計算される。すなわち交差角度セットが逐次演算されることになる。S105では、交差角度セットがアラーム条件に該当したか否かが判断される。例えば交差角度セットを構成する1つの交差角度が90±α°の範囲内に入る場合にはアラーム条件に該当すると見なされる。ここでαは例えば20である。アラーム条件に該当した場合、S106においてアラーム処理が実行される。このアラーム処理では、画面表示されている抽出ラインの色が可変され、ユーザーに対して計測の信頼性が低下する可能性がある旨が報知される。もちろん抽出ラインの点滅やハイライトなどによってその報知を行うようにしてもよいし、別途メッセージを表示したり、あるいはビープ音などを発生させるようにしてもよい。S107において設定終了と判断されるまで、上記S103からの各工程が繰り返し実行され、最終的に1又は複数の抽出ラインの設定が完了する。
S108では、シネメモリ上に格納されたフレーム列から抽出ラインに対応する組織エコーデータ列及び組織速度データ列が順番に抽出される。そして、S109では、抽出された各組織速度データ列に対して上記の角度補正処理が実行される。すなわち上記のS104で計算された交差角度セットが用いられ、抽出ライン上の各組織速度データごとにその値を適正な値に変更する角度補正が実行される。もちろん、データの直接的な操作によらずにカラー演算テーブルの内容を変更することにより、結果として角度補正が行われるようにしてもよい。
したがって、S110以降の工程においては角度補正後の組織速度データを用いて画像処理あるいは計測処理が行われるため、より適切な画像を形成することができ、あるいは、信頼性ある計測を実現できるという利点がある。S110においては、角度補正後の各時相の組織速度データ列を用いてそれらをカラー演算処理することによりM−組織速度画像が形成される。
一方、トレースライン群を表示させる場合には、S111において抽出ライン上において例えば内膜及び外膜に対してトラッキング点が指定される。もちろん、そのような指定工程はS103における抽出ラインの設定と同時に実行されてもよい。あるいは抽出ライン上でトラッキング点の指定を行うのではなく、M−組織速度画像上における所定の時相の組織速度データ列上においてトラッキング点の指定を行うようにしてもよい。
S112においては分割数kが認識される。そのような分割数kは初期設定されており、あるいは、このS112の工程においてユーザーによって入力される。S113では内膜点及び外膜点の間の距離が分割数に応じて複数に区分され、各区間を区切る点としてトラッキング点が設定される。例えば分割数kとして2が設定されている場合には1つの分割点が設定されることになる。
S114においては、上記のようにユーザー設定及び自動設定されたそれぞれのトラッキング点に対してトラッキング処理が実行される。具体的には各時相の組織速度データ列上においてトラッキング点に対応づけられた組織速度データが参照され、それに基づいて次の時相におけるトラッキング点の位置が推定される。そして、そのような処理が時間軸上に沿って繰り返し行われることにより、最終的に各時相におけるトラッキング点の位置が特定されることになる。そこで、S115においては時間軸上において複数のトラッキング点を相互連結することによりトレースラインが形成される。複数のトラッキング点についてトラッキング処理を行えばS115においてはトレースライン群が表示されることになる。
なお、組織速度データに基づくトラッキングと組織エコーデータに基づくトラッキングとを併用するようにすることも可能である。ただし、輝度画像上において明確な特定ができない点についても、上記の組織速度データに基づくトラッキングによればその点を追従特定することができるという利点がある。
S116においてはユーザーによって時相カーソルによる時相指定が行われたか否かが判断され、そのような指定が行われた場合にはS117において図5に示したような速度プロファイルが表示されることになる。
ここまでが第1表示モードに対応しており、S118以降の各工程が第2表示モードに対応している。S118においてはストレイン表示を行うか否かがユーザーにより選択され、ストレイン表示を行う場合には、S119において上述した原理にしたがって各時相ごとに各区間長が求められ、それらの各区間長からストレインが計算される。そして、S120ではそれぞれ演算されたストレインに対して所定のカラーを当てはめることによりM−ストレイン画像が構築される。そして、それが画像表示される。S122においてはユーザーによって時相指定が行われたか否かが判断され、時相指定を行われた場合にはS121において当該時相におけるストレイングラフが画面上に表示されることになる。
次に、図8を用いて他の動作例について説明する。なお、図8に示す動作例においても、図7に示したS101〜S114と同じ工程が実行されており、それらの工程については図8において図示省略されている。
S114に続くS130では、ストレインを表示するか否かが判断され、換言すれば、第1表示モード又は第2表示モードが選択される。ストレインを表示する場合(つまり第2表示モードの場合)には、S131において、上記の119と同様に、トラッキング結果に基づいて、各時相における各区間長からストレインが演算される。S132においては、上記のS120と同様に、M−組織エコー画像上にカラーのストレイン画像が合成される(図6参照)。そして、S133においては、デフォルトとして指定された初期時相におけるストレイングラフが表示される。グラフを表示させる時相をユーザーにより可変設定させてもよい。
一方、S130において、ストレインを表示しない場合(つまり第1表示モードの場合)には、S135において、上記のS115と同様に、トラッキング結果に基づいて、トレースライン群が第1複合画像(図5参照)上に合成表示される。S136では、デフォルトとして指定された初期時相における所定の数値情報が演算され、それが表示される。その数値情報は、例えば、区間長の変化率である。それに代えて、各区間長や特定区間長(心壁の厚み)などを数値表示するようにしてもよい。S137では、デフォルトとして指定された初期時相における速度プロファイルが表示される。もちろん、速度プロファイルを表示させる時相をユーザーにより可変設定させてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、設定された抽出ラインを組織運動方向とみなして、抽出ラインから抽出された各組織速度データに対して適切な角度補正を行った上で画像処理を行えるという利点がある。したがって、例えば心臓壁における各部位について組織運動を観測する場合においても、演算された複数の組織速度を互いに比較することも可能であり、すなわち定量的な解析を実現できるという利点がある。従来においては、例えば左室内に設定されたある点を基準として心臓壁上の各部位の運動方向が推定されていたが、そのような手法によると正常例においては正しいとしても、疾患例については必ずしも上記の仮定が当てはまらないという問題があるが、本実施形態によれば、実際にユーザーが心臓壁の動きを観測した上で抽出ラインを設定するので、上記従来法で指摘されていたような問題を解消あるいは改善できるという利点がある。
また実施形態によれば、M−ストレイン画像を表示することができるので、例えば心臓壁の各深さ区間ごとに個別的に歪みの時間変化を直感的に認識できるという利点がある。しかもそのストレインの計算にあたって角度補正後の組織速度データが用いられているため正確なストレインを計算できるという利点がある。
10 2D画像、12 ビーム中心軸、14 心臓(左室)、20 M−組織速度画像、28 トレースライン群、30 M−ストレイン画像、102 2D組織速度画像、104 2D組織エコー画像、106A,106B,106C,106D 第1複合画像、114A,114B,114C,114D 速度プロファイル、120A,120B,120C,120D 第2複合画像、126A,126B,126C,126D ストレイングラフ、L 抽出ライン、X,Y 端点、R,S,T トラッキング点。