JP4275015B2 - エラグ酸の検出・定量方法 - Google Patents

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本発明は、溶液中におけるエラグ酸の検出及び定量する方法であって、溶液中のエラグ酸含有量を簡便で且つ高精度に検出・定量する方法に関する。
エラグ酸は、多くの天然植物、具体的には、グァバ葉、ユーカリの葉、タラ、バナバ、マレーフトモモ、クルミ等の中に存在する吸着性が強い天然ポリフェノールの一種である。また、エラグ酸は、数多くの研究により、止血作用、血液凝固作用、制癌作用、血圧降下作用、鎮痛作用、抗変異原性、抗酸化作用等の様々な生理効果を持つことが明らかとされている外、美白作用等も見出されている。
近年、生体内において機能する種々の生理効果を食生活の質的向上により達成するための試みとして機能性食品が数多く開発され、特定保健用食品や保健機能食品等として市販されており、上記エラグ酸も、このような食品類の有効成分(機能性成分)として注目されている。
このように機能性を有する成分を食品、医薬品、化粧品等として上市する際には、エラグ酸を有効成分とする健康食品、医薬品、化粧品等の商品としての開発が行われるが、これらの商品の製造に際しては、製造原料に含まれるエラグ酸の含有量を正確に把握する必要があり、また、該製品中の含有量を保証する必要がある。このため、効果の検証や含有量の調査、あるいは、製品中における含有量の保証(確認)を行うための定量分析方法を確立することが望まれている。
一般に、天然の植物中に含まれるエラグ酸は、遊離の状態で存在しているものの他、多くの場合、エラジタンニンと呼ばれる糖が結合した状態で存在していることが知られている。なかでも、遊離した状態で存在するエラグ酸は、各種溶媒に対する溶解性が極めて低いという性質を有しているため、この性質を利用して、エラグ酸を分離する方法が報告されている。
特開平04−342590号公報 特開昭53−14605号公報
しかしながら、これらの方法は、植物中に含まれるエラグ酸を単離する方法であって、エラグ酸を一旦沈殿させる工程を具備することから、これらのエラグ酸の分離方法を植物中のエラグ酸の測定法を利用するとしても、検出操作が煩雑となる。また、エラグ酸は、高い吸着性を有することから、単離したエラグ酸量を測定しても高精度に定量することは困難である。このようにエラグ酸を検出・定量する方法、特に溶液中に含まれるエラグ酸を簡便に且つ高精度で検出・定量する方法がなく、現在その開発が望まれている。
一般に、植物の抽出液等の溶液中に含まれる化合物を検出・定量方法としては、試料をそのまま或いは各種溶媒で希釈したものを調製し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定する方法が知られている。しかしながら、上述の通り、エラグ酸は、各種溶媒に対する溶解性が極めて低いことから、通常、試料溶液そのまま又はそれを有機溶媒で希釈したものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で検出・定量する場合には、試料溶液に経時的な沈殿を生じてしまうため、溶液中に含まれるエラグ酸を精度よく正確に検出・定量することは困難であった。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、エラグ酸を含有する溶液にジメチルアセトアミドを添加し、得られた溶液が沈殿を生じることなく長期にわたって安定であること、そしてこの溶液を高速液体クロマトグラフィーにより測定することで、簡便且つ高精度にエラグ酸を検出・定量できることを見出した。
また、意外にも、エラグ酸を含有する溶液に対して、ジメチルアセトアミドを2重量%以上添加することにより、溶液中におけるエラグ酸の沈殿防止効果が長期にわたって得られ、測定されるエラグ酸の検出感度が顕著に増加することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、溶液中のエラグ酸を検出・定量する方法であって、エラグ酸を含有する溶液にジメチルアセトアミドを添加し、得られた溶液を高速液体クロマトグラフィーにて分離することを特徴とするエラグ酸の検出・定量方法を提供するものである。
また、本発明は、エラグ酸を含有する溶液に対して、2重量%以上のジメチルアセトアミドを添加することを特徴とする請求項1記載のエラグ酸の検出・定量方法を提供するものである。
さらに、本発明は、エラグ酸を含有する溶液がフトモモ科に含まれるグァバ、フトモモ、チョウジ、レンブ、ユーカリ等の植物や、タラ、バナバ、マレーフトモモ、ヌルデ、ヒシ、ゲンノショウコ、ウワウルシ、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリー等の果実部、種子部、葉部、根部又は茎部から選ばれる1種又は2種以上の植物から抽出したものを含む請求項1及び請求項2記載のエラグ酸の検出・定量方法を提供するものである。
以上のごとく本発明によれば、煩雑な操作や特殊な装置等を使用せずに溶液中のエラグ酸類を簡便な操作で迅速に精度良く、検出・定量分析することができる。
本発明において、検出・定量の対象となるエラグ酸を含有する溶液とは、エラグ酸を含有する液体状のものであれば特に限定されるものではないが、具体的なものとしては、エラグ酸又はエラグ酸を含む植物の抽出液を配合した液体状の飲食品、医薬品及び化粧料などを挙げることができる。また、固形状の組成物中にエラグ酸を含有するものである場合には、水等の溶媒に溶解(分散)させることにより、好適に使用することができる。
本発明においては、前記したエラグ酸を含有する溶液に、ジメチルアセトアミドを加え、攪拌、振とう等により混合したものを試料調製液として使用する。ここで用いるジメチルアセトアミドとしては、通常市販されているであればいずれを用いてもよい。
また、この時、エラグ酸を含有する溶液に対して、ジメチルアセトアミドを2重量%以上程度添加すれば、試料調製液における優れたエラグ酸の沈殿防止効果が得られるため好ましい。逆に、ジメチルアセトアミドの添加量が2重量%よりも少ないと、液体中にエラグ酸が沈殿してしまうため、好ましくない。
本発明においては、前記して得られた試料調製液から、溶液中に存在するエラグ酸を高速液体クロマトグラフ装置で分析し、標準品の検量線からこれを定量する。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の条件は特に制限されず通常用いられているものを使用できる。
また、移動相としては、10%トリフルオロ酢酸(TFA)を含むアセトニトリルと10%TFAを含む超純水を使用すると、最も良好な分離を示すため望ましい。その他移動相としてはアセトニトリルの代わりとしてメタノールが、緩衝液としてはギ酸、酢酸等が使用できる。
また、検出方法は紫外吸光光度計により検出が可能であるが、得られた紫外誘導体化物は254nm付近に極大吸収を持つことから、これらの波長を用いて検出するのが好ましい。これらの条件、方法を用いることにより、精度の高い分析が可能となる。
以下、より具体的な例として、エラグ酸を含有する溶液中のエラグ酸の検出、定量について好ましい例を示す。
試験溶液:エラグ酸類を含有する溶液に、ジメチルアセトアミドを50重量%添加し、10分間超音波処理をして試料調製液とする。
HPLC分析条件:
使用カラム:Inertsi1ODS−2(ジーエルサイエンス(株) 内径4.6mm,長さ250mm)
検出器:紫外吸光光度計測定波長=254nm
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/min
注入量:20μL/min
移動相:(a)アセトニトリル:0.1%TFA=90:10
(b) 水:0.1%TFA=90:10
上記(a)(b)液を用い、表1に記したグラジェントによる測定を行い得られたクロマトグラムを図1に示した。
Figure 0004275015
(図1)
Figure 0004275015
検量線作成:
エラグ酸試薬20mgを精密に量り、DMAを用い正確に1mg/mLとし10分間超音波処理を行った。さらにDMAを用いて40、25、12.5、6.25、3.125μg/mLに希釈し標準溶液とした。別に、クマル酸20mgを精密に量り、DMAを用い正確に1mg/mLとし10分間超音波処理を行い内部標準液とした。
各標準溶液を950μLとり、内部標準液を各々50μL添加しvo1texをかけ混和し、上記の測定条件によりHPLCにて3回繰り返し測定し、図2に示す検量線を作成した。
(図2)
Figure 0004275015
定性の原理:
測定サンプルにDMAを添加し超音波処理をしたものを、上記で示した高速液体クロマトグラフィーで同一条件により分析する。標準品との保持時間(リテンションタイム)の比較によりエラグ酸を同定する。
定量の原理:
測定サンプルにDMAを添加し超音波処理をしたものを定性試験と同一の分析条件により分析する。標準試料のピーク面積値又はピーク高さから算出した内標比を縦軸に、標準試料濃度を横軸に検量線を作成し、試料調製液中のエラグ酸量を定量する。
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
(試験例1)各種有機溶媒に対する溶解性
先ず、エラグ酸の各種有機溶媒に対する溶解性について試験を行った。試験は、エラグ酸(東京化成工業(株))を2mg秤量し、これを表2記載の有機溶媒1mLに溶解し、その溶解性を評価した。
Figure 0004275015
上記表2に示す通り、エラグ酸は、N,N−ジメチルアセトアミドに対してのみ高い溶解性を示すことが認められた。なお、メタノールにも溶解性を示すが、時間がたつにつれて沈殿が生じた。
(DMA添加によるエラグ酸の安定化)
グァバ葉抽出液に50%DMAを添加し超音波処理をしたサンプルと無添加サンプル中のエラグ酸ピーク面積を、経時的に0、6、12、18、24、48、72時間に上記HPLC測定方法を用いて測定したところ、下記の図3の通り、50%DMA添加による溶液中のエラグ酸安定化効果が認められた。
(図3)
Figure 0004275015
(DMAを用いたエラグ酸含量の検出・定量結果)
バナバ、マレーフトモモ、モモタマナ抽出液の各々に50%DMAを添加し10分間超音波処理をし、サンプル溶液とした。クマル酸20mgを精密に量り、DMAを用い正確に1mg/mLとし、10分間超音波処理を行い調製した内部標準液50μLにサンプル溶液950μL加え、vo1texをかけ混和し、上記HPLC測定方法を用いてエラグ酸量の測定を行なった。
測定結果を表3に示す。
Figure 0004275015
(実験例)DMAの使用量に関する実験
次に、上記実施例において、エラグ酸を含有する溶液に対して、ジメチルアセトアミドの好ましい添加割合に関して、下記の実験例を行った。
グァバ葉抽出液にDMAを50,25,5,3,2,1重量%を添加し、超音波処理をしたサンプル中のエラグ酸ピーク面積を0,6,12,18,24,48,72時間後の上記HPLC測定方法を用いて測定した。測定結果を図4に示す。
(図4)
Figure 0004275015
(評価)
その結果、DMA1%添加サンプル中のエラグ酸ピーク面積は24時間以降減少し、安定してエラグ酸を測定するためには、2重量%以上添加することが好ましいがわかった。

Claims (2)

  1. 溶液中のエラグ酸を検出・定量する方法であって、
    エラグ酸を含有する溶液に対して、2重量%以上50重量%以下のジメチルアセトアミドを添加し、得られた溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離することを特徴とするエラグ酸の検出・定量方法。
  2. エラグ酸を含有する溶液がフトモモ科に含まれるグァバ、フトモモ、チョウジ、レンブ、ユーカリ等の植物や、タラ、バナバ、モモタマナ、ヌルデ、ヒシ、ゲンノショウコ、ウワウルシ、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリー等の果実部、種子部、葉部、根部又は茎部から選ばれる1種又は2種以上の植物から抽出したものを含むことを特徴とする請求項記載のエラグ酸の検出・定量方法。
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