JP4274611B2 - 乗員への加害性低減を目的としたエアバッグ用ガス発生剤組成物及び成型体 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグシステムを膨張させるために燃焼してガス成分を供給するガス発生剤組成物成型体及びその成型体を用いたエアバッグ用ガス発生器システムに関する。更に詳しくは、本発明は、自動車、航空機等に搭載される人体保護のために供せられるエアバッグシステムにおいて作動ガスとなるガス発生剤組成物の新規な成型体及びその成型体を用いたエアバッグ用ガス発生器システムに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
自動車等の車両が高速で衝突した際に、慣性により搭乗者がハンドルや前面ガラス等の車両内部の硬い部分に激突して負傷又は死亡することを防ぐために、ガスによりバッグを急速に膨張させ、搭乗者の危険な箇所への衝突を防ぐエアバッグシステムが開発されている。このエアバッグシステムに用いるガス発生剤に対する要求は、バッグ膨張時間が非常に短時間、通常40〜50ミリ秒以内であること、さらに燃焼後ガスが人体に対して無害であることなど非常に厳しい。
【0003】
現在、エアバッグシステムに一般的に用いられているガス発生基剤としては、無機アジド系化合物、特にアジ化ナトリウムが挙げられる。アジ化ナトリウムは燃焼性という点では優れているが、ガス発生時に副生するアルカリ成分は毒性を示し、搭乗者に対する安全性という点で、上記の要求を満たしていない。また、それ自体も毒性を示すことから、廃棄した場合の環境に与える影響も懸念される。
【0004】
これらの欠点を補うため、アジ化ナトリウム系に替わるいわゆる非アジド系ガス発生剤も幾つか開発されてきている。例えば、特開平3−208878号公報にはテトラゾール、トリアゾール又はこれらの金属塩と、アルカリ金属硝酸塩等の酸素含有酸化剤とを主成分とした組成物が開示されている。また、特公昭64−6156号公報、特公昭64−6157号公報においては、水素を含まないビテトラゾール化合物の金属塩を主成分とするガス発生剤が開示されている。
【0005】
更に特公昭6−57629号公報にはテトラゾール、トリアゾールの遷移金属錯体を含むガス発生剤が示されている。また、特開平5−254977号公報にはトリアミノグアニジン硝酸塩を含むガス発生剤が、特開平6−239683号公報にはカルボヒドラジドを含むガス発生剤が、特開平7−61885号公報には酢酸セルロースとニトログアニジン等の窒素含有非金属化合物を含むガス発生剤が開示されている。更に、米国特許第5,125,684号明細書には15〜30%のセルロース系バインダーと共存するエネルギー物質としてニ トログアニジンの使用が開示されている。また、特開平4−265292号公報にはテトラゾール及びトリアゾール誘導体と酸化剤及びスラグ形成剤とを組み合わせたガス発生剤組成物が開示されている。
【0006】
これらの従来技術によるガス発生挙動及びバッグ膨脹挙動について、特に運転席(以下D席と略記する)側では乗員の着座位置が比較的固定化されるため従来の膨脹挙動性能で十分安全であると信じられてきた。しかし、エアバッグシステムが広く利用され標準装備に近付くにつれD席側といえども座高の高い人又は低い人、ハンドルにしがみついた形で運転する人等百人百様であり、また助手席等の乗客席(以下P席と略記する)側についても子供等を乗車させる場合等、種々の形態があるのでより安全なエアバッグシステムの技術開発が望まれるようになってきた。
【0007】
すなわち、従来の膨脹挙動性能でも使用可能であるが、より安全なエアバッグシステムとするために初期の膨脹速度、例えばD席側ではガス発生開始から10ミリ秒の間の膨脹速度を従来よりもより緩やかにし、初期のバッグ膨脹の勢いによる加害性をなくすと共に30〜70ミリ秒後においては十分な乗員拘束能を保持するような技術が望まれるようになってきており、またP席側においても同様にガス発生挙動を制御する技術が望まれている。
【0008】
このような技術として、特開平8−207696号公報においては二段階でガスを発生させ作動当初の段階で比較的ゆっくりバッグを膨脹させ、二段目で迅速なガス発生を行う技術を開示している。一般にこのようなシステムはデュアルアウトプットシステムまたはスマートエアバッグシステム等と呼ばれ、乗員への加害性を低減するシステムとして注目をされており、また現在、開発されつつある。しかし、この種の技術では二つの着火機構が必要となるために、高価な電気雷管等が二つ必要となりコスト高の要因となるし、さらにガス発生器内の構造が複雑となり容器の大きさが大きくなるという欠点がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、シートを複数枚端部で貼り合わせた構造のガス発生剤組成物成型体を使用することにより上記課題が解決できることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、シートを複数枚端部で貼り合わせた構造のガス発生剤組成物成型体であって、初め穏やかに燃焼が開始され、後に激しく燃焼することを特徴とするエアバッグガス発生剤組成物及びその成型体を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、かかる成型体を用いたエアバッグ用ガス発生器システムであって、ガス発生器によるタンク燃焼試験において所望のタンク最大圧をP(KPa)、タンク圧の立ち上 がり開始からタンク最大圧P(KPa)到達までの時間をTミリ秒とした時、0.25×Tミリ秒 後のタンク圧力が 0.20×P(KPa)以下であり、0.80×Tミリ秒後のタンク圧力が0.70×P(KPa)以上であることを特徴とするエアバッグ用ガス発生器システムを提供するものであ る。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明のエアバッグ用ガス発生剤組成物成型体は、該成型体を用いたガス発生器によるタンク燃焼試験において所望のタンク最大圧をP(KPa)、タンク圧の立ち上がり開始からタ ンク最大圧P(KPa)到達までの時間をTミリ秒とした時、0.25×Tミリ秒後のタンク圧力 が 0.20×P(KPa)以下であり、0.80×Tミリ秒後のタンク圧力が 0.70×P(KPa)以上であるように調整されていることを特徴とする。
【0014】
0.25×Tミリ秒後のタンク圧が 0.20×P(KPa)を超えると、初期のバッグ膨張の勢いが大きすぎて、乗員に危害が加わるおそれがあり、また0.80×Tミリ秒後のタンク圧が 0.70 ×P(KPa)未満であると、自動車等の衝突時の乗員の安全性を確保することができない。
【0015】
本発明の成型体は上記のような特徴を有するが、これはシートを複数枚端部で貼り合わせた構造のガス発生剤組成物成型体を使用することにより実現できる。
【0016】
これまでエアバッグ用ガス発生剤成型体には、ペレットを使用するのが一般的であった。ペレットが燃焼する時、燃焼初期の表面積が一番大きく、燃焼が進行するに従って表面積が減少し、最後に燃え尽きてしまうという特性がある。よって、ペレットが着火すると相対的に多量のガスが発生し、燃焼が終了に近づくにつれてガス量が減少するという燃焼特性を持っている。これはつまりエアバッグの膨張初期に激しくエアバッグが飛び出してくることを意味し、適切な着座位置に座っている乗員にとっては特に問題が無いが、不適切な着座位置に座っている乗員や体の小さな乗員にとっては何らかの害を受ける可能性がある。
【0017】
このような加害性を低減するためにはガス発生剤組成物成型体の燃焼表面積が燃焼が進行するに従って増加するようにコントロールすればよいと言える。つまり、これは燃焼が進行するに従って発生するガス量が相対的に増加することを意味する。
【0018】
実際には、シートを複数枚端部で貼り合わせた構造のガス発生剤組成物成型体を使用することにより実現できる。このような成型体は外表面から燃焼が始まり、しばらく後に内部表面に燃焼が到達すると一気に燃焼表面積が増加するという傾向を示す。
【0019】
このため最大圧到達までの時間遅れがなく初期着火段階のみを制御することができる。本発明の技術は、この点でガス発生出力全体を若干低下させ初期段階を制御するいわゆるデパワ−技術と根本的に異なると認識すべきものである。
【0020】
本発明のガス発生剤組成物成型体の製造方法を示す。
【0021】
本発明のガス発生剤組成物は、燃料、酸化剤、バインダー等を水や有機溶剤等の存在下で混合する湿式法により製造することができる。
【0022】
本発明のガス発生剤組成物成型体は、組成物をまずシート状に成型することから始まる。捏和機等で充分混合した組成物を例えばローラー等を備えたシート成型機に通して薄いシート状にする。シートの厚みは0.5mm〜5mmであることが好ましく、0.8mm〜3mmであることが特に好ましい。
【0023】
次に、このシート状物を複数枚重ね合わせ、適当な形の金型で打ち抜くことで端部が接着されているがそれ以外の部分は接着されておらず、内部表面を持った成型物を作ることができる。
【0024】
この時、シート状物を何枚重ね合わせてもよいが、2枚であることが品質を安定させることから好ましい。
【0025】
また、本発明のガス発生剤組成物は、所望の形状に成型することもできる。例えば、外径が5〜30mm程度のペレット状にしたり、30〜70mm程度のディスク状にすることができる。ディスク状の場合はガス発生器の構造に適するように中央に穴を開けた形状にすることもできる。
【0026】
ペレット状成型物は図1のような形状をしている。図2にはその断面図を示した。内部に接着されていない内部表面が存在することが特徴である。
【0027】
本発明に係わるガス発生剤組成物成型体の外表面積をS0、内部表面積をSとする時、ガス発生剤組成物成型体のS/S0は0.20〜1.50の範囲が好ましく、0.25〜1.20の範囲が特に好ましい。
【0028】
次に、本発明で使用される非アジド系ガス発生剤組成物について説明する。
【0029】
本発明で使用される非アジド系ガス発生剤組成物は、含窒素化合物、酸化剤、バインダーから成るものが好ましい。さらに、スラグ形成剤を含有することもできる。
【0030】
本発明で用いられる含窒素化合物としては、グアニジン誘導体、テトラゾール誘導体、ビテトラゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ヒドラジン誘導体、トリアジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ジシアナミド誘導体から成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられる。これらの具体例としては、ニトログアニジン、硝酸グアニジン、5−アミノテトラゾール、ビテトラゾールジアンモニウム塩、5−オキソ−1,2,4−トリアゾール、シアノグアニジン、トリアミノグアニジン硝酸塩、トリヒドラジノトリアジン、ビウレット、アゾジカルボンアミド、ビウレア、カルボヒドラジド、カルボヒドラジド硝酸塩錯体、蓚酸ジヒドラジド、ヒドラジン硝酸塩錯体、ナトリウムジシアナミド等を挙げることができる。
【0031】
これらの含窒素化合物の中ではテトラゾール誘導体及びグアニジン誘導体から成る群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、特にニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾールが好ましい。
【0032】
本発明に係わるガス発生剤組成物中の含窒素化合物の配合割合は、分子式中の炭素元素、水素元素及びその他の酸化される元素の数によって異なるが、通常10〜60重量%の範囲が好ましく、12〜50重量%の範囲が特に好ましい。
【0033】
本発明に係わるガス発生剤組成物に用いられる酸化剤としては種々のものが使用できる。
【0034】
酸化剤としては、酸素酸塩、金属酸化物及び金属複酸化物から選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0035】
酸素酸塩としては、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属錯体、遷移金属及び遷移金属錯体の硝酸塩、亜硝酸塩、塩素酸塩又は過塩素酸塩を挙げることができる。
【0036】
このような酸素酸塩としては、例えば、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウム等の硝酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;亜硝酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸ストロンチウム等の亜硝酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸マグネシウム、塩素酸バリウム等の塩素酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸バリウム等の過塩素酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;Mg(N2H4)2(NO3)2、Mg(N2H4)2(ClO4)2等のアルカリ土類金属錯 体の硝酸塩、過塩素酸塩;Cu(NO3)2・3Cu(OH)2、Cu2(OH)3(NO3)、Co2(OH)3(NO3)、Mn(OH)2(NO3)等の遷移金属の硝酸塩;Co(NH3)3(NO3)3、Co(NH3)6(NO3)3、Cu(NH3)2(NO3)2、Co(NH3)3(NO2)3、Co(NH3)6(ClO4)3等の遷移金属錯体の硝酸塩、亜硝酸塩、過塩素酸塩を挙げることができる。
【0037】
金属酸化物及び金属複酸化物としては、銅、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル、亜鉛、モリブデン及びビスマスの酸化物又は複酸化物を挙げることができる。
【0038】
このような金属酸化物及び金属複酸化物としては、例えば、CuO、Cu2O、Co2O3、CoO、Co3O4、Fe2O3、FeO、Fe3O4、MnO2、Mn2O3、Mn3O4、NiO、ZnO、MoO3、CoMoO4、Bi2MoO6又はBi2O3を挙げることができる。
【0039】
本発明に係わるガス発生剤組成物中の酸化剤の配合割合は用いられるガス発生化合物の種類と量により絶対数値は異なるが40〜90重量%の範囲が好ましく、50〜88重量%の範囲が特に好ましい。
【0040】
本発明に係わるガス発生剤組成物中のバインダーは、組成物の燃焼挙動に大幅な悪影響を与えないものであれば何れでも使用可能である。本発明に用いられるバインダーの具体例としては、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、微結晶性セルロース、グアガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、澱粉等の多糖誘導体、ステアリン酸カルシウム等の有機バインダーまたはケイ酸ナトリウム等の無機バインダーが挙げられる。
【0041】
本発明においてバインダーをガス発生剤組成物中に適量加えることは非常に効果がある。バインダーを加える場合の配合割合は3〜15重量%の範囲が好ましい。量的には多い側でより成型体の破壊強度が強くなるが、量が多いほど組成物中の炭素元素及び水素元素の数が増大し、炭素元素の不完全燃焼生成物である微量COガスの濃度が増大し、発生ガスの品質を低下させるため好ましくない。特に15重量%を超える量では酸化剤の相対的存在割合の増大を必要とし、ガス発生化合物の相対的割合が低下し、実用できるガス発生器システムの成立が困難となる。
【0042】
本発明に係わるガス発生剤組成物中のスラグ形成剤の機能は、ガス発生剤組成物中の特に酸化剤成分の分解によって生成するアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物をミストとしてインフレータ外へ放出することを避けるため液状から固体状に変えて燃焼室内に止める機能であり、金属成分の違いによって最適化されたスラグ形成剤を選ぶことができ る。
【0043】
スラグ形成剤の具体例としては、酸性白土、シリカ、ベントナイト系、カオリン系等のアルミノケイ酸塩を主成分とする天然に産する粘土;合成マイカ、合成カオリナイト、合成スメクタイト等の人工的粘土;含水マグネシウムケイ酸塩鉱物の1種であるタルク等;アルミナ、水酸化アルミニウム等;アルミナファイバー、セラミックファイバー、ガラスファイバー等の少なくとも1種から選ばれたスラグ形成剤が挙げられ、これらの中では酸性白土、アルミナ又はシリカが好ましい。
【0044】
本発明においてスラグ形成剤は必須ではないがガス発生剤組成物中に適量加えることは非常に効果がある。スラグ形成剤を加える場合の配合割合は1〜20重量%の範囲で変えることができるが、好ましくは3〜15重量%の範囲である。多すぎると線燃焼速度の低下及びガス発生効率の低下をもたらし、少なすぎるとスラグ形成能を十分発揮することができない。
【0045】
次に、本発明のエアバッグ用ガス発生器システムについて説明する。
【0046】
本発明のガス発生器システムは、上記のようにして得られる成型体を用い、ガス発生器によるタンク燃焼試験において所望のタンク最大圧をP(KPa)、タンク圧の立ち上がり開始 からタンク最大圧P(KPa)到達までの時間をTミリ秒とした時、0.25×Tミリ秒後のタン ク圧力が 0.20×P(KPa)以下であり、0.80×Tミリ秒後のタンク圧力が 0.70×P(KPa)以上であることを特徴とする。
【0047】
本発明に係わるガス発生器システムの構造としては特に限定されないが、複数個のガス排出口を有するハウジングと、前記ハウジング内に配設される点火手段と、前記点火手段により点火されて燃焼ガスを発生するガス発生手段と、前記ガス発生手段を収容する燃焼室と、前記燃焼ガスの冷却及び燃焼残渣の捕集を果たすフィルタ手段とを有し、前記フィルタ手段の外周が前記ハウジングの外周壁内面と対向し、且つ両者の間に間隙を形成するように設置されているものが好ましい。
【0048】
本発明に係わるガス発生器システムにおいて、タンク最大圧P(KPa)と、タンク圧の立ち 上がり開始からタンク最大圧P(KPa)到着までの時間Tミリ秒とは、タンク最大圧P(KPa)が110〜220(KPa)で、タンク圧の立ち上がり開始からタンク最大圧P(KPa)到着までの時間Tが30〜50ミリ秒であるD(ドライバー)席用ガス発生器システムに重点をおいて説明したが、本技術はD席用システムに限定されるものではなく、例えば、最大圧P(KPa)が350〜500(KPa)で、タンク圧の立ち上がり開始からタンク最大圧P(KPa)到着までの時間Tが50〜70ミリ秒であるP(パッセンジャー)席用ガス発生器システムにも適用できるもので ある。
【0049】
【実施例】
以下実施例及び比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
【比較例1】
ニトログアニジン55.1部(以下、部は重量部を示す)、硝酸ストロンチウム44.9部を目開き300μmのふるいを使用して混合した。この混合粉をハンドプレスを使用して圧力100kg/cm2の加圧条件下で外径9.6mm、長さ3.6mmのペレットを作成した。
【0051】
得られたガス発生剤成型体を、容量1.04リットルの小型タンクに取り付け、室温下、圧力100kg/cm2、窒素雰囲気下で燃焼させた。試験で得られた圧力〜時間曲線を図1に示し た。
【0052】
ここでは、燃焼曲線の特徴が見やすいようにタンク最大圧を100%、タンク圧の立ち上が り開始からタンク最大圧到着までの時間を100%とした。
【0053】
図1から明らかなように、この試験では、初期の圧力上昇速度が速く、加害性の高い燃焼曲線となっていることが分かる。
【0054】
【実施例1】
ニトログアニジン31部、硝酸ストロンチウム54部、酸性白土5部及びカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩10部に組成物全体の量に対して18部に相当する水を添加し混合捏和した。ついで捏和混合物を圧延機(井上製作所(株)製ミキシングロール 型式;RM X−6E)を使用して厚さ1mmのシート状に成型した。このシート状物を2枚重ね合わせ、内径18mmの円筒形の金型で上から打ち抜いた。これをシリカゲル入りデシケータ中で1日予乾燥した。さらに、80℃の乾燥機に入れ十分に乾燥した。
【0055】
得られたガス発生剤成型体は外径18mm、厚さ2mm、重量1.0gであった。
【0056】
得られたガス発生剤成型体を、比較例1と同様な条件下で燃焼させた。試験で得られた圧力〜時間曲線を図1に示した。
【0057】
図1から明らかなように、初期のタンク圧力上昇速度が比較例1より穏やかになってお り、加害性の低い燃焼曲線となっていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ペレット状成型物の形状を示したものである。
【図2】 ペレット状成型物の断面図を示したものである。
【図3】 比較例1及び実施例1の試験で得られた圧力〜時間曲線である。
【符号の説明】
1 内部表面
Claims (10)
- シートを複数枚端部で貼り合わせた構造を有し、且つ、該端部により囲まれた内部表面を有するガス発生剤組成物成型体であって、初め穏やかに燃焼が開始され、後に激しく燃焼することを特徴とするエアバッグガス発生剤組成物及びその成型体。
- ガス発生剤組成物成型体の外表面積をS0、内部表面積をSとする時、ガス発生剤組成物成型体のS/S0が0.20〜1.50である請求項1記載のガス発生剤組成物成型体。
- エアバッグ用ガス発生剤組成物成型体であって、該成型体を用いたガス発生器によるタンク燃焼試験において所望のタンク最大圧をP(KPa)、タンク圧の立ち上がり開始からタン ク最大圧P(KPa)到達までの時間をTミリ秒とした時、0.25×Tミリ秒後のタンク圧力が 0.20×P(KPa)以下であり、0.80×Tミリ秒後のタンク圧力が0.70×P(KPa)以上であるように調整されていることを特徴とする請求項1〜2記載のエアバッグ用ガス発生剤組成物成型体。
- ガス発生剤組成物が含窒素化合物、酸化剤、バインダーから成る請求項1〜3記載の成型体。
- さらに、スラグ形成剤を含有することを特徴とする請求項4記載の成型体。
- 含窒素化合物がグアニジン誘導体、テトラゾ−ル誘導体、ビテトラゾ−ル誘導体、トリアゾール誘導体、ヒドラジン誘導体、トリアジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体及びジシアナミド誘導体から成る群から選ばれる1種又は2種以上である請求項4〜5記載の成型体。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の成型体を用いたエアバッグ用ガス発生器システムであって、ガス発生器によるタンク燃焼試験において所望のタンク最大圧をP(KPa)、タン ク圧の立ち上がり開始からタンク最大圧P(KPa)到達までの時間をTミリ秒とした時、0.25×Tミリ秒後のタンク圧力が0.20×P(KPa)以下であり、0.80×Tミリ秒後のタンク圧力が0.70×P(KPa)以上であることを特徴とするエアバッグ用ガス発生器システム。
- ガス発生器が、複数個のガス排出口を有するハウジングと、前記ハウジング内に配設される点火手段と、前記点火手段により点火されて燃焼ガスを発生するガス発生手段と、前記ガス発生手段を収容する燃焼室と、前記燃焼ガスの冷却及び燃焼殘渣の捕集を果たすフィルタ手段とを有し、前記フィルタ手段の外周が前記ハウジングの外周壁内面と対向し、且つ両者の間に間隙を形成するように設置されていることを特徴とする請求項7記載のエアバッグ用ガス発生器システム。
- タンク最大圧P(KPa)が 110〜220(KPa)で、タンク圧の立ち上がり開始からタンク最大圧 P(KPa)到着までの時間Tが30〜70ミリ秒である請求項7又は8記載のエアバッグ用ガス 発生器システム。
- タンク最大圧P(KPa)が 350〜500(KPa)で、タンク圧の立ち上がり開始からタンク最大圧 P(KPa)到着までの時間Tが50〜90ミリ秒である請求項7又は8記載のエアバッグ用ガス 発生器システム。
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