JP4272257B2 - 細胞付着を促進するための新規なポリペプチド - Google Patents
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Description
本発明は、基質への細胞付着を促進するための方法及び組成物に関する。特に、本発明は細胞のインテグリンレセプターへの結合のためのフィブロネクチンの新たに同定された結合部位の使用に関する。
背景
細胞付着の調節は、広い生物医学上の意味を有する。例えば、細胞付着の抑制は、血小板凝集の抑制による血栓性疾患の治療、白血球の付着及び遊出の抑制による炎症性疾患の治療、並びに腫瘍細胞の付着及び転移の抑制による悪性疾患の治療に有益であり得る。逆に、細胞付着の促進は、或る場合、例えば、血管移植片への内皮細胞の接種、医療人工器具の安定性、及び創傷治癒の促進に望ましい。付着イベントは、細胞外レセプター、例えば、インテグリンレセプターと細胞の周囲の物質、例えば、フィブロネクチンの相互作用を伴うことが広く認められている。インテグリンは、細胞外マトリックス糖タンパク質、補体及びその他の細胞を含む多種のリガンドと相互作用するレセプターの機能上及び構造上関連する基である。インテグリンは、胎生学的発育、止血、血栓症、創傷治癒、免疫防御機構及び非免疫防御機構並びに腫瘍の悪性転換を含む多くの生理学上重要なプロセスにおける細胞−マトリックス付着及び細胞−細胞付着に関与する。ハイネス(Hynes)著,Cell,48:549-554(1987)を参照のこと。動的細胞付着に関与する幾つかのインテグリンは、それらのリガンド中に存在するトリペプチドであるアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)を結合する。ルオスラチ(Ruoslahti)ら著,Science,238:491-497(1987)を参照のこと。
フィブロネクチンは、血漿中、並びに細胞表面及び細胞外マトリックスに見られる付着糖タンパク質である。その他の巨大分子だけでなく細胞を結合することにより、フィブロネクチンは基質への細胞の固定を促進する。ハイネス著,Cell Biology of the Extracellular Matrix,ハイ(Hay)編集,プレナム・プレス(Plenum Press)、295-334(1982);ハイネスら著,J.Cell Biol.,95:369-77(1982)。また、フィブロネクチンは生体内の外傷及び炎症の部位で蓄積することが知られており[ペターソン(Petterson)ら著,Clin.Immunol.Immunopath,11:425-436(1978);グリンネル(Grinnel)ら著,J.Invest.Derm.,76:181-189(1981);レペッシュ(Repesh)ら著,J.Histochem.Cytochem.,30(4):399-408(1985);カーソンズ(Carsons)ら著,Arth.Rheum,24(10):1261-67(1981)]、これらの部位で血管壁中で細胞により産生される。クラーク(Clark)ら著,J.Exp.Med.,156:646-51(1982);クラークら著,J.Immunol.,126(2):787-93(1981);クラークら著,J.Invest.Derm.,79:269-76(1982);クラークら著,J.Clin Invest.,74:1011-16(1984)。
フィブロネクチンは可変一次構造のサブユニットを含む[250キロダルトン(kDa)の平均相対分子質量]。サブユニットはジスルフィド結合されて、同様であるが同一ではないポリペプチドのプールに由来する二量体または多量体を生成する。ハイネス著,Cell Biology of the Extracellular Matrix,ハイ編集,プレナム・プレス、295-334(1982);ハイネスら著,Cell Biol.,95:369-77(1982);シュワルツバウエル(Schwarzbauer)ら著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:1424-28;コーンブリット(Kornblihtt)ら著,EMBO J.,4(7):1755-59(1985)。こうして、“フィブロネクチン”という用語は、糖タンパク質の幾つかの種を表し、これらの幾つかがその他のものよりも更に充分に特性決定されている。
二つの主要なフィブロネクチン(Fn)クラスは血漿フィブロネクチン及び細胞フィブロネクチンである。血漿フィブロネクチン(pFn)は肝細胞により分泌され、一方、細胞フィブロネクチン(cFn)は内皮細胞及び繊維芽細胞を含む種々の培養細胞により分泌される。ジャッフェ(Jaffe)ら著,J.Exp Med.,147:1779-91(1978);バードウェル(Birdwell)ら著,Biochem.Biophys.Res.Commun.,97(2):574-8(1980)。広範な物理学的類似性及び免疫学的類似性にもかかわらず、フィブロネクチンの二つのクラスは、電気泳動挙動、溶解性、及び生物活性を異にする。タムクン(Tamkun)ら著,J.Biol.Chem.,258(7):4641-47(1983);ヤマダら著,J.Cell Biol.,80:492-98(1979);ヤマダら著,Biochemistry,16(25):2552-59,(1977)。
血漿フィブロネクチンと細胞フィブロネクチンの一次構造上の相違が、ペプチドマッピング[ハヤシら著,J.Biol.Chem.,256(21):11,292-11,300(1981)]、cDNAクローニング[コーンブリットら著,EMBO J.,4:1755-59(1985)]、及び免疫技術[アサートン(Atherton)ら著,Cell,25:133-41(1981)]により見られた。これらのデータから、フィブロネクチン単量体の一次構造が、夫々、約40、60及び90のアミノ酸残基の長さを有する相同型I、II及びIIIとして知られている内部リピートの三つの異なる型を含むことが決定された[コーンブリットら著,EMBO J.,4:1755-1759(1985)]。種々の異なるFn部分の全てが単一遺伝子により産生され、一次構造の相違が少なくとも三つの領域中の一次mRNA転写産物のオルタナティブスプライシングにより生じる。コーンブリットら著,EMBO J.,4(7):1755-59(1985);シュワルツバウエルら著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:1424-28(1985);グートマン(Gutman)ら著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7179-82(1987);シュワルツバウエルら著,EMBO J.,6(9):2573-80(1987)。
Fnの10番目の型IIIリピート中のArg-Gly-Asp(RGD)配列を含む部位は細胞付着イベントに関与することが知られている。この配列を含むペプチドは或る種の細胞付着イベントを抑制し、または細胞付着を促進するのに使用し得る。例えば、米国特許第4,589,881号、同第4,661,111号、同第4,517,686号、同第4,683,291号、同第4,578,079号、同第4,614,517号、及び同第4,792,525号を参照のこと。
最近、フィブロネクチンの部位特異的突然変異誘発の研究は、非RGD配列が細胞付着現象に関与するものと暗示していた[オバラ,M.ら著,Cell,53:649-57(1988)]。提案された第二の結合部位は、この研究により特定されなかったが、活性低下のデータは、第二部位がおそらくRGD配列との相乗的な様式で付着に関与することを示した。この結果は、その他のRGDを含むタンパク質がインテグリンだけでなく、フィブロネクチンを結合しないことの理由を説明することを助ける。
細胞付着を促進することの重要性に鑑みて、または逆に、付着を抑制するために、これらの目的に適した非RGDを含むポリペプチドが所望される。その付着において、このようなポリペプチドは細胞結合プロセスでRGDアミノ酸残基配列を補足することが見出され、またRGD配列と付着性非RGD化合物の両方を含む組成物が所望される。
発明の簡単な要約
本発明は、インテグリンレセプター、特に、GPIIb-IIIaに結合するポリペプチドに関するものであり、そのポリペプチドはフィブロネクチン(Fn)の公知のRGD配列とは独立であるインテグリンの結合領域(部位)を形成する。その新しい結合部位はヒトFnのRGD配列の上流(N末端に向いて)の少なくとも50のアミノ酸残基に配置される。ヒトFnのアミノ酸残基配列がコーンブリットら著,EMBO J.,4:1755(1985)に記載されており、この記載が参考として本明細書に含まれる。ヒトFnの選択領域が配列番号:1及び:2に示され、これらはコーンブリットらにより記載されたフィブロネクチンの配列を含む。
一実施態様において、本発明は、約200以下のアミノ酸残基の長さを有するポリペプチドを意図している。そのペプチドはGPIIb-IIIaを結合し、Fn残基1410-1436に相当する配列番号(2:248-274)に示された式により表されるアミノ酸残基配列を含み、Fn配列RGDを含まない。
ポリペプチドは、Fn残基1359-1436に相当する配列番号(2:197-274)に示された式により表されるアミノ酸残基配列を含むことが好ましい。配列番号及び相当する残基部分が(2:248-274)、(2:197-274)、(2:217-274)及び(2:73-274)からなる群から選ばれた、括弧中に示されるアミノ酸残基配列を有するポリペプチドが特に好ましい。
本発明の好ましい実施態様において、本発明のポリペプチドは式B−X−Zにより表されるアミノ酸残基配列を有する。式中、XはヒトFnの残基1410-1436のアミノ酸残基配列(配列番号:2:248-274)であり、Bは長さが150以下の残基のアミノ酸のNH2基末端またはN末端配列であり、かつZは長さが150以下の残基のアミノ酸のCOOH基末端またはC末端配列であり、但し、X−ZはRGDを含むヒトフィブロネクチンの領域に相当しないことを条件とする。
本発明のポリペプチドは、独立に、またはRGDを含むペプチドと協力してGPIIb-IIIaに結合し得る。結合がRGD配列と相補性である場合、そのRGD配列は本発明のポリペプチドと同じタンパク質中に組み込まれてもよく、またはそれは異なるペプチド中に与えられてもよい。
また、細胞、例えば、内皮細胞を基質に付着する方法が本発明内に意図されており、その方法は、GPIIb-IIIaを発現する細胞を、固体マトリックスに固定された本発明のポリペプチドを含む基質と接触させ、そしてGPIIb-IIIaがポリペプチドを結合するのに充分な所定の時間にわたってその接触を保つことを特徴とする。皮膚移植及び人工器具におけるポリペプチド−基質の使用が意図されている。
また、本発明のポリペプチドを発現するためのベクター及び一種以上のポリペプチドを含む融合タンパク質が意図されている。本発明の一実施態様は、ポリペプチドのマルトース結合タンパク質(MBP)融合産生物を産生することによりポリペプチドの容易な精製を可能にする。
更に別の実施態様は、GPIIb-IIIaへのFnまたはフィブリノーゲン(Fg)結合を競合的に抑制し得る本発明のポリペプチドと免疫反応する抗体組成物を意図している。また、本発明のポリペプチドはGPIIb-IIIaへのFnまたはFg結合を抑制するのに使用し得る。
こうして、本発明は、新規なポリペプチド及び関連組成物並びに細胞付着を促進し、かつ/または細胞付着を抑制する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
この開示の一部を形成する図面において、
図1Aは、本発明の原理によりFnに対し生じるモノクローナル抗体(MAb)の濃度(μg/ml)を高めることによる固定化GPIIb-IIIaへのFnの結合に対する効果を示すグラフである。そのデータは、実施例に記載されるように結合の%として表される。
図1B-1Dは、標識されていないMAbの存在下のFnの部位に関する標識MAbの交差競合研究を示すグラフである。競合は、示されたMAb:Mab 8(8)、Mab 16(16)、Mab 11.10(11)、Mab 15(15)、または無MAb(No)の存在下で固定化FnへのMAb結合の量(cpm x 103)として測定される。
図2は、GPIIIa-MBP融合タンパク質を合成するためのMBPベクターpIH821及びpPR734、並びに適当なクローニング部位を示す。
図3は、実施例に記載された付加された抑制性融合タンパク質の存在下の固定化GPIIb-IIIaへのFnの結合の効果を示す。フィブロネクチン(△)、ペプシンフラグメント(▲)、マルトース結合タンパク質(MBP;●)単独、Fn(1235-1436)-MBP融合タンパク質(□)、Fn(1359-1436)-MBP融合タンパク質(■)、及び対照のBSA単独(○)。
図4は、静止血小板(白いバー)、5単位/mlのトロンビンで刺激された血小板(黒いバー)、5ミリモルのEDTAの存在下でトロンビンで刺激された血小板(灰色のバー)、または100μg/mlのMAb 2G12の存在下でトロンビンで刺激された血小板(斜線付きのバー)への125I標識Fn(1359-1436)-MBP(600μg/ml)、フィブロネクチン(Fn:100nM)、及びMBP(600μg/ml)の直接結合を示す。そのデータが三重の測定の平均(+/-或る標準偏差)として示される。
発明の詳細な説明
A.定義
アミノ酸残基:ペプチド結合でポリペプチドの化学消化(加水分解)後に生成されたアミノ酸。本明細書に記載されたアミノ酸残基は“L”異性体であることが好ましい。しかしながら、“D”異性体の残基は、所望の機能的性質がポリペプチドにより保持される限り、L−アミノ酸残基に代えて使用し得る。NH2はポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を表す。COOHはポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基を表す。標準のポリペプチド命名法(J.Biol.Chem.,243:3552-59(1969)に記載され、37 C.F.R.ξ1.822(b)(2))で採用されている)に従って、アミノ酸残基の略号が下記の対応表に示される。
式により本明細書に表された全てのアミノ酸残基配列は、アミノ末端からカルボキシ末端への通常の方向の左から右の配向を有することが注目されるべきである。加えて、“アミノ酸残基”という用語は、対応表に列記されたアミノ酸並びに修飾アミノ酸及び格別のアミノ酸、例えば、37 C.F.R.ξ1.822(b)(4)に列記され、参考として本明細書に含まれるアミノ酸を含むものと広く定義される。更に、アミノ酸残基配列の最初または最後のダッシュは、一種以上のアミノ酸残基の更に別の配列またはNH2の如きアミノ末端基もしくはCOOHの如きカルボキシ末端基へのペプチド結合を示すことが注目されるべきである。
抗体:ハプテン基、例えば、リガンドに化学的に結合するポリペプチド。本明細書に使用される抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性フラグメントである。Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvの如き当業界で知られている部分が含まれる。典型的には、抗体は、約104〜約1010M-1の範囲、また1012M-1程度に高い会合定数で約6〜約34Åのサイズ範囲のリガンドを結合する。抗体はポリクローナルまたはモノクローナル(MAb)であってもよい。抗体は、小分子、例えば、ステロイド及びプロスタグランジン;生物ポリマー、例えば、核酸、タンパク質及び多糖;並びに合成ポリマー、例えば、ポリプロピレンを含む広範囲のリガンドを結合し得る。“抗体結合部位”は、抗原を特異的結合する(抗原と免疫反応する)H鎖及びL鎖の可変領域及び超可変領域を含む抗体分子の構造部分である。種々の形態の“免疫反応する”という用語は、抗原決定基を含む分子と、抗体結合部位、例えば、全抗体分子またはその部分を含む分子との結合を表すために本明細書で使用される。“抗原決定基”は、抗体結合部位により免疫結合される抗原の実際の構造部分である。また、その用語は“エピトープ”と互換可能に使用される。
リガンド:特別なレセプター分子との特異的相互作用により結合される構造部分を含む分子。
オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド:一本鎖ヌクレオチドまたは二本鎖ヌクレオチドのポリマー。本明細書で使用される“オリゴヌクレオチド”及びその文法的均等物は核酸の全範囲を含む。オリゴヌクレオチドは、典型的には、2種以上のデオキシリボヌクレオチド及び/またはリボヌクレオチドの直線状の鎖を含む核酸分子を表す。正確なサイズは多くの因子に依存し、これは、順に、当業界で公知であるように使用の最終条件に依存する。
ポリペプチドまたはペプチド:隣接残基が或る残基のα−アミノ酸基と隣接残基のα−カルボキシ基の間のペプチド結合により連結されている少なくとも二つのアミノ酸残基の直線状の配列。
タンパク質は、隣接残基がペプチド結合により連結されている50以上のアミノ酸残基の直線状の配列を表す。
レセプター:その他の分子(リガンド)に特異的に結合する生理活性タンパク質分子。レセプターはグリコシル化し得る。
ベクター:細胞中で自律的に複製できるDNA分子であって、これには、付着セグメントの複製をもたらすように、DNAセグメント、例えば、遺伝子またはポリヌクレオチドが操作により結合し得るDNA分子。一種以上のタンパク質をコードするDNAセグメント(遺伝子)の発現を誘導できるベクターは、本明細書中、“発現ベクター”と称される。また、ベクターは、逆転写酵素を使用して産生されたmRNAからcDNA(相補DNA)のクローニングを可能にする。
B.ポリペプチド
本発明のポリペプチドは、フィブロネクチン(Fn)の領域に相当するアミノ酸残基配列を含み、フィブロネクチン由来ポリペプチドまたはFnポリペプチドと称される。
本発明に使用されるFnは、プロウら著,J.Biol.Chem.,256:9477-9482(1981)及び米国特許第4,589,981号明細書に記載された方法によりゼラチン−セファロースによるアフィニティークロマトグラフィーにより新しいヒトのクエン酸処理血漿から単離された。単離されたFnは非還元条件下でSDS-PAGEで単一バンドを生じ、また還元条件下で215,000〜230,000分子量の近くに隔置されたダブレットを生じた。以下、Fnは、先に記載され、また実施例9b(1)に記載された無傷の単離されたFnを表す。
典型的には、Fnの領域に相当する主題ポリペプチドはRGD配列を含まず、それにより、FnのRGD配列とは異なる三次元構造を有するリガンドに対する潜在的な結合部位を与える。ポリペプチドの全配列はFnの一部に相当することが好ましい。
一実施態様において、本発明のポリペプチドは、約200以下のアミノ酸残基の長さを有し、Fn残基1410-1436に相当する配列番号(2:248-274)に示される式により表されるアミノ酸残基配列を含む。ポリペプチドはGPIIb-IIIaへのフィブロネクチン結合を抑制し、しかもその配列はFn配列RGDを含まない。ポリペプチドはFn残基1359-1436に相当する配列番号(2:197-274)に示される式により表されるアミノ酸残基を含むことが好ましい。
一実施態様において、ポリペプチドは、配列番号2に示されるフィブロネクチンの配列に相当するアミノ酸残基配列を有する。
好ましいポリペプチドは、配列番号及び相当する残基部分が(2:248-274)、(2:197-274)、(2:217-274)及び(2:73-274)からなる群から選ばれた配列番号中の式により表される括弧中に示されるアミノ酸残基配列を有する。
式のアミノ末端及びカルボキシ末端は、夫々、アミノ末端基及びカルボキシ末端基であることが好ましく、好ましいアミノ末端基はNH2であり、また好ましいカルボキシ末端基はCOOHである。
また、これらの末端は、融合タンパク質の場合のように、付加的なアミノ酸残基配列を有することができる。融合タンパク質は、本明細書中、単一ポリペプチドに操作により結合された少なくとも二つの異なるアミノ酸残基配列[この場合、二つの異なる配列は別々の天然タンパク質に由来しており、または同一の天然タンパク質の二つのドメイン(これらのドメインは実際に配列を形成するようには操作により結合されないことが知られている)に由来している]を含むポリペプチドと定義される。
本発明のこの実施態様において、本発明のポリペプチドは、式B−X−Zにより表されるアミノ酸残基配列を有する。式中、XはヒトFnの残基1410-1436のアミノ酸残基配列(配列番号:2:248-274)であり、Bは長さが典型的には約150以下の残基のアミノ酸のNH2基末端またはN末端配列であり、かつZは長さが典型的には約150以下の残基のアミノ酸のCOOH基末端またはC末端配列であり、但し、X−ZはRGDを含むヒトフィブロネクチンの領域に相当しないことを条件とする。
本発明の一実施態様において、ポリペプチドは、選択されたFn配列のN末端に共有結合されたマルトース結合タンパク質(MBP)を有することができる。融合タンパク質のMBP領域は、非MBPを含むタンパク質の如き夾雑物からの所望のタンパク質の精製を容易にする固定化アミロース(澱粉)に強く結合する。MBPフラグメントは選択されたFnフラグメントに直接結合されてもよく、または介在アミノ酸残基がMBP領域とポリペプチド領域の間に与えられてもよい。例示の融合タンパク質が本明細書に記載されている。
一実施態様において、本発明のポリペプチドはグリコシル化されておらず、即ち、それらはペプチド合成技術により直接生産され、または本発明の組換えDNAで形質転換された原核細胞中で産生される。真核生物により産生されたペプチド分子は典型的にはグリコシル化される。
主題ポリペプチドはGPIIb-IIIaの結合部位に対し競合できる限り、主題ポリペプチドはFnのアミノ酸残基配列と同一である必要はないことが理解されるべきである。
主題ポリペプチドは、そのポリペプチドがGPIIb-IIIaの結合部位に対し競合できる限り、アミノ酸残基配列が本明細書に示されているポリペプチドのあらゆる類縁体、フラグメントまたは化学誘導体を含む。それ故、本発明のポリペプチドは、保存的または非保存的の、種々の変化、挿入、欠失及び置換を受け得る(このような変化がその使用の際に或る種の利点を与える場合)。
これに関して、本発明のポリペプチドは、一つ以上の変化がなされる場合にFnの配列と同一であるよりもむしろその配列に相当し、それは本明細書に特定されるような一つ以上のアッセイにおいて結合部位に対し競合する能力を保持する。
“類縁体”という用語は、一つ以上の残基が機能上同様の残基で保存的に置換されており、かつ本明細書に記載された結合を抑制する能力を示す、本明細書に詳しく示された配列と実質的に同一のアミノ酸残基配列を有するあらゆるポリペプチドを含む。保存的置換の例として、他の残基に代えて一種の非極性(疎水性)残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンの置換、他の残基に代えて一種の極性(親水性)残基の置換、例えば、アルギニンとリシンの間の置換、グルタミンとアスパラギンの間の置換、グリシンとセリンの間の置換、他の残基に代えて一種の塩基性残基、例えば、リシン、アルギニンまたはヒスチジンの置換、または他の残基に代えて一種の酸性残基、例えば、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸の置換が挙げられる。
また、“保存的置換”という用語は、誘導体化されていない残基に代えて化学的に誘導体化された残基の使用を含み、但し、このようなポリペプチドが必要な活性を示すことを条件とする。
“化学誘導体”は、機能性側鎖基の反応により化学的に誘導体化された一つ以上の残基を有する主題ポリペプチドを表す。このような誘導体化された分子として、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されてアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成している分子が挙げられる。遊離カルボキシル基は誘導体化されて塩、メチルエステル及びエチルエステルまたはその他の型のエステルもしくはヒドラジドを形成し得る。遊離ヒドロキシル基は誘導体化されてO−アシル誘導体またはO−アルキル誘導体を形成し得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は誘導体化されてN−im−ベンジルヒスチジンを形成し得る。また、化学誘導体として、20の通常のアミノ酸の一種以上の天然産アミノ酸誘導体を含むペプチドが挙げられる。例えば、4−ヒドロキシプロリンがプロリンに代えて置換されてもよく、5−ヒドロキシリシンがリシンに代えて置換されてもよく、3−メチルヒスチジンがヒスチジンに代えて置換されてもよく、ホモセリンがセリンに代えて置換されてもよく、またオルニチンがリシンに代えて置換されてもよい。
特に好ましい修飾は、溶液中のポリペプチドの安定性を増大し、それ故、溶液、特に、体液、例えば、血液、血漿または血清中のポリペプチドの半減期を延長するのに利用できるように設計された修飾である。修飾の例は、血液中のタンパク質分解活性に対する感受性をブロックする修飾である。こうして、ポリペプチドは一端または両端に安定化基を有することができる。典型的な安定化基として、アミド、アセチル、ベンジル、フェニル、トシル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等の末端基修飾が挙げられる。付加的な修飾は、末端で“D”アミノ酸に代えて“L”アミノ酸を使用すること、ポリペプチドの環化、及びエキソペプシダーゼ活性を抑制するための、アミノ末端またはカルボキシ末端ではなくアミドを含む。
また、本発明のポリペプチドは、必要な活性が保持される限り、配列が本明細書に示されるポリペプチドの配列に対して一つ以上の付加及び/または欠失もしくは残基を有するあらゆるポリペプチドを含む。
“フラグメント”という用語は、アミノ酸残基配列が本明細書に示されるポリペプチドのアミノ酸残基配列よりも短いアミノ酸残基配列を有するあらゆる主題ポリペプチドを表す。
本発明のポリペプチドがFnの配列とは同一ではない配列を有する場合、それは典型的である。何となれば、一つ以上の保存的置換または非保存的置換がなされており、アミノ酸残基の数の通常約30%以下、好ましくはアミノ酸残基の数の10%以下が置換されているからである。
“実質的に相同”は、特別な主題配列または分子、例えば、変異体配列が一つ以上の置換、欠失、または付加により基準配列から変化することを意味し、その正味の効果は基準配列と主題配列の間の不利な機能上の相違点を生じない。本発明の目的のために、90%より大きい類似性、均等の生物活性、及び均等の発現特性を有するアミノ酸配列が実質的に相同と考えられ、本発明のポリペプチドの範囲内に含まれる。
40%より大きい類似性を有するアミノ酸配列が実質的に同様と考えられる。相同性または類似性を決める目的で、基準配列のトランケーション欠失または内部欠失が無視されるべきであり、同様に、その分子のその後の修飾、例えば、グリコシル化が無視されるべきである。それより小さい程度の相同性及び匹敵する生物活性を有する配列が均等物と考えられる。
また、付加的な残基が“リンカー”を与える目的で本発明のポリペプチドのいずれかの末端で付加されてもよく、それにより、本発明のポリペプチドは標識もしくは固体マトリックス、またはキャリヤーに都合よく固定し得る。リンカー残基は、Fnと交差反応性であり、即ち、交差反応性抗体を産生するようにFnポリペプチドに構造上充分に似ていないエピトープを形成しない。
本発明のポリペプチドと共に使用し得る標識、固体マトリックス及びキャリヤーが、以下に記載される。
アミノ酸残基リンカーは通常少なくとも一つの残基であり、40以上の残基であってもよく、しばしば1〜10の残基であるが、本発明のFnポリペプチドと交差反応性のエピトープを形成しない。結合に使用される典型的なアミノ酸残基はチロシン、システイン、リシン、グルタミン酸及びアスパラギン酸、等である。加えて、主題ポリペプチドは、特にことわらない限り、末端NH2アシル化、例えば、アセチル化、もしくはチオグリコール酸アミド化;例えば、アンモニア、メチルアミンによる末端カルボキシルアミド化、等の末端修飾により修飾されている配列により相当するプロテアーゼの天然配列とは異なり得る。
当業界でキャリヤー−ハプテン接合体として知られているものを生成するためにキャリヤーにカップリングされる場合、本発明のポリペプチドはFnと免疫反応する抗体を誘発できる。それ故、免疫交差反応性の良く確立された原理に鑑みて、本発明は本発明のポリペプチドの抗原関連変異体を意図している。“抗原関連変異体”は、本発明のポリペプチドと免疫反応し、Fnと免疫反応する抗体分子を誘発できる主題ポリペプチドである。
本発明のあらゆるペプチドが、医薬上許される塩の形態で使用し得る。本発明のペプチドと塩を生成できる好適な酸として、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、ケイ皮酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸等が挙げられる。
本発明のペプチドと塩を生成できる好適な塩基として、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等;及び有機塩基、例えば、モノ−、ジ−及びトリ−アルキル及びアリールアミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン等)及び必要により置換されていてもよいエタノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン等)が挙げられる。
また、本明細書中で主題ポリペプチドと称される本発明のポリペプチドは、組換えDNA技術を含む、ポリペプチド技術の当業者に知られている技術のいずれかにより合成し得る。合成化学技術、例えば、固相メリフィールド型合成が、純度、抗原特異性、望ましくない副生物を含まないこと、生産の容易なこと等の理由から好ましい。利用可能な多くの技術の優れた要約が、固相ペプチド合成に関してスチュワード(J.M.Steward)及びヤング(J.D.Young)著,“Solid Phase Peptide Synthesis”,W,H.フリーマン社,サンフランシスコ,1969;ボダンスキイ(M.Bodanszky)ら著,“Peptide Synthesis”,ジョン・ウィリィ・アンド・サンズ,第2編,1976及びマインホファー(J.Meinhofer)著,“Hormonal Proteins and Peptides”,2巻46頁,アカデミック・プレス(ニューヨーク),1983、また古典的溶液合成に関してシュロダー(E.Schroder)及びクブケ(K.Kubke)著,“The Peptides”,1巻,アカデミック・プレス(ニューヨーク),1965に見られ、これらの夫々が本明細書中に参考として含まれる。このような合成に使用できる適当な保護基が上記の文献及びマックオミイ(J.F.W.McOmie)著,“Protective Groups in Organic Chemistry”,プレナム・プレス,ニューヨーク,1973に記載されており、これが本明細書中に参考として含まれる。
一般に、意図される固相合成方法は、成長しているペプチド鎖への一つ以上のアミノ酸残基または適当に保護されたアミノ酸残基の逐次付加を含む。通常、最初のアミノ酸残基のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかが適当な選択的に除去可能な保護基により保護される。異なる選択的に除去可能な保護基がリシンの如き反応性側鎖基を含むアミノ酸に使用される。
例として固相合成を使用して、保護または誘導体化されたアミノ酸が、その保護されていないカルボキシル基またはアミノ基により不活性な固体担体に結合される。アミノ基またはカルボキシル基の保護基は、その後、選択的に除去され、適当に保護された相補性の(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列中の次のアミノ酸が添加され、固体担体に既に結合された残基とアミド結合を形成するのに適した条件下で反応させられる。アミノ基またはカルボキシル基の保護基は、その後、この新たに付加されたアミノ酸残基から除去され、次のアミノ酸(適当に保護されている)が、その後、添加される、等々。所望のアミノ酸が全て適当な配列で結合された後、残存の末端基及び側鎖基の保護基(及び固体担体)が逐次または同時に除去されて最終ポリペプチドを与える。
また、本発明のポリペプチドは組換えDNA技術により合成し得る。幾つかの異なるヌクレオチド配列が、遺伝暗号の重剰性のために特別なアミノ酸残基配列をコードし得る。このようなヌクレオチド配列は機能上均等と考えられる。何となれば、それらは全ての生物中の同じアミノ酸残基配列の産生をもたらし得るからである。時折、プリンまたはピリミジンのメチル化変異体が所定のヌクレオチド配列にとり込まれることがある。しかしながら、このようなメチル化はコード関係に何ら影響しない。
C.DNAセグメント
本ポリペプチド又は本キメラポリペプチドをコードする、即ち発現することができる遺伝子を定義するデオキシリボ核酸(DNA)分子は、本発明の範囲内で企図される。本ポリペプチドをコードするDNA分子は、化学的手法、例えば、Matteucciら,J.Am.Chem.Soc.,103:3185(1981)のホスホトリエステル法により容易に合成することができる。コーディング配列を化学的に合成することによって、未変性アミノ酸残基配列をコードしているものを適切な塩基に単に置き換えることにより所望の修飾をすることができることは当然のことである。
本ポリペプチドをコードするDNA配列を含むDNA分子は、上記寄託プラスミドの各々の適切な制限フラグメントを周知の方法を用いて操作的に連鎖(連結)することにより調製することができる。この方法で作製した本発明のDNA分子は、典型的には、二本鎖分子部分より伸長している付着末端、即ち“突出”一本鎖部分を有する。本発明のDNA分子に付着末端が存在することは好ましいことである。
また、上記DNA分子のリボ核酸(RNA)等価物も本発明によって企図される。
好ましいDNAセグメントは、配列番号2の残基位置248−274に示されているFn残基1410−1436のFn配列に相当するアミノ酸残基配列を含むポリペプチドをコードするものである。別のDNAセグメントは、本発明の他のポリペプチドや融合タンパク質をコードするものである。
D.ベクター
本発明は、更に、複製及び/又は発現するために、本DNAセグメント、即ち本ペプチドあるいは本融合タンパク質をコードする遺伝子を定義するDNA分子に操作的に連鎖したベクターを含む組換えDNA分子を企図する。
本発明のDNAセグメントを操作的に連鎖するベクターの選択は、当該技術において周知のように、所望される機能性、例えばタンパク質発現及び形質転換されるべき宿主細胞に直接左右され、これらは組換えDNA分子を構築する当該技術において実質的に限定される。しかしながら、本発明によって企図されたベクターは、操作的に連鎖されるDNAセグメントに包含された本キメラポリペプチド遺伝子を少なくとも複製、好ましくは発現することもできるものである。
好ましい実施態様においては、本発明によって企図されたベクターは、原核レプリコン、即ち形質転換された原核宿主細胞、例えば細菌宿主細胞内の染色体外で組換えDNA分子を自律複製及び維持する能力を有するDNA配列である。このようなレプリコンは、当該技術において周知である。更に、原核レプリコンを包含する実施態様には、発現により形質転換された細菌宿主に薬剤耐性が付与される遺伝子も含んでいる。典型的な細菌薬剤耐性遺伝子は、アンピシリン又はテトラサイクリンに対する耐性を付与するものである。
原核レプリコンを包含するベクターには、形質転換された細菌宿主細胞、例えば大腸菌内で本キメラポリペプチド遺伝子を発現(転写及び翻訳)することができる原核プロモーターも含むことができる。プロモーターは、RNAポリメラーゼを結合しかつ転写を開始することができるDNA配列によって形成された発現調節部位である。細菌宿主と適合するプロモーター配列、例えばtacプロモーターは、典型的には、本発明のDNAセグメント挿入の場合に便利な制限部位を有するプラスミドベクター内に設けられる。このようなベクタープラスミドの代表例は、Biorad Laboratories(Richmond,CA)製のpUC8、pUC9、pBR322及びpBR329並びにPharmacia(Piscataway,NJ)製のpPL及びpKK223である。
真核細胞と適合する発現ベクター、好ましくは脊椎動物細胞と適合するものも本発明の組換えDNA分子を形成するために用いることができる。真核細胞発現ベクターは当該技術において周知であり、数社で市販されている。典型的には、このベクターには所望のDNAセグメントを挿入するのに便利な制限部位が含まれている。このベクターの代表例は、pSVL及びpKSV−10(Pharmacia)、pBPV−1pML2d(International Biotechnologies,Inc.)並びにpTDT1(ATCC,#31255)である。
好ましい実施態様においては、本発明の組換えDNA分子を構築するために用いられる真核細胞発現ベクターは、真核細胞に効果的な選択マーカー、好ましくは薬剤耐性選択マーカーを含んでいる。好ましい薬剤耐性マーカーは、発現によりネオマイシン耐性となる遺伝子、即ちネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(ネオ)ジーンである。Southernら,J.Mol.Appl.Genet.,1:327-341(1982)。
本発明のrDNAを形成するためにレトロウイルス発現ベクターを使用することも企図される。本明細書で用いられる“レトロウイルス発現ベクター”とは、レトロウイルスゲノムの長い末端反復(LTR)領域由来のプロモーター配列を含むDNA分子を意味する。
好ましい実施態様においては、発現ベクターは典型的にはレトロウイルス発現ベクターであり、真核細胞において複製応答能のないことが好ましい。レトロウイルスベクターの構築及び使用は、Sorgeら,Mol.Cell.Biol.,4:1730-37(1984)に記載されている。
相補的付着末端を介してDNAをベクターに操作的に連鎖するために、種々の方法が開発されている。例えば、相補的ホモポリマー区域を挿入されるべきDNAセグメントとベクターDNAに付加することができる。次いで、ベクターとDNAセグメントが相補的ホモポリマー尾部間の水素結合により連結されて組換えDNA分子を形成する。
1個以上の制限部位を含む合成リンカーにより、DNAセグメントをベクターに連結する別法が提供される。前記のようにエンドヌクレアーゼ制限消化によって作成したDNAセグメントを、3′−5′エキソヌクレアーゼ分解活性で突出している3′一本鎖末端を除去しかつポリマー形成活性で3′陥凹末端を塞ぐ酵素、大腸菌DNAポリメラーゼIのバクテリオファージT4DNAポリメラーゼで処理する。従って、これらの活性の組合わせにより平滑末端DNAセグメントが作成される。次いで、この平滑末端セグメントを、バクテリオファージT4DNAリガーゼのような平滑末端DNA分子の連結反応を触媒することができる酵素の存在下にモル過剰量のリンカー分子とインキュベートする。即ち、この反応産物は末端にポリマーリンカー配列を有するDNAセグメントである。次いで、これらのDNAセグメントを適切な制限酵素で切断し、DNAセグメントと適合する末端を生じる酵素で切断されている発現ベクターに連結される。
種々の制限エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーは、International Biotechnologies,Inc.(New Haven,CT)のような多くの社で市販されている。
上記所望の組換えDNA分子のRNA等価物も本発明によって企図される。
好ましいベクターは、本発明のポリペプチドをコードするDNAセグメントを包含するものである。具体的なベクターとしては、本発明の原理に従ってMBP融合タンパク質を調製するためのpIH821及びpPR734(図2)が挙げられる。
E.宿主の形質転換
本発明は、また、本発明の組換えDNA(rDNA)分子、好ましくは本キメラポリペプチドを発現することができるrDNAで形質転換された宿主細胞に関する。宿主細胞は、原核細胞あるいは真核細胞とすることができる。細菌細胞は好ましい原核宿主細胞であり、典型的には、大腸菌株、例えばBethesda Laboratories,Inc.,Bethesda,MD製の大腸菌DH5株である。好ましい真核宿主細胞としては、酵母及び哺乳動物細胞、好ましくはマウス、ラット、サル又はヒト線維芽細胞セルラインのような脊椎動物細胞が挙げられる。好ましい真核宿主細胞としては、ATCCからCCL61として入手できるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びATCCからCRL1658として入手できるNIHスイス系マウス胎仔細胞NIH/3T3が挙げられる。本発明の組換えDNA分子による適切な細胞宿主の形質転換は周知の方法で達成され、典型的には、使用されるベクターの種類に左右される。原核宿主細胞の形質転換については、例えば、Cohenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69:2110(1972);及びManiatisら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1982)を参照されたい。rDNAを含むレトロウイルスベクターによる脊椎動物細胞の形質転換については、例えば、Sorgeら,Mol.Cell.Biol.,4:1730-37(1984);Grahamら,Virol.,52:456(1973);及びWiglerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:1373(1979)を参照されたい。
巧く形質転換された細胞、即ち本発明の組換えDNA分子を含有する細胞は、周知の手法によって確認することができる。例えば、本発明のrDNAの導入により得られた細胞をクローン化するとモノクローナルコロニーを生じる。そのコロニーの細胞を収集し、溶解し、そのDNA含量を、Southern,J.Mol.Biol.,98-503(1975)又はBerentら,Biotech.,3:208(1985)に記載されているような方法を用いてrDNAの存在として調べることができる。
rDNAの存在を直接アッセイする他に、rDNAが本キメラポリペプチドを発現することができる場合に周知の免疫学的方法によって満足な形質転換を確認することができる。形質転換されていると思われる細胞の試料を収集し、抗Fn抗体を用いてポリペプチド抗原性の存在としてアッセイする。
形質転換宿主細胞自体の他に、本発明は、栄養培地におけるその細胞の培養物、好ましくはモノクローナル(クローン的に均一)培養物又はモノクローナル培養物由来の培養物を企図するものである。
F.発現及び精製
形質転換宿主細胞を培養するのに有効な栄養培地は当該技術において周知であり、数社から入手することができる。宿主細胞が哺乳動物である実施態様においては、“無血清”培地を用いることが好ましい。
発現タンパク質を培養液から回収する方法は当該技術において周知であり、周知の生化学的手法を用いて培養液のタンパク質含有部分を分画することができる。例えば、培養液中に見られる発現タンパク質を単離するために、ゲルろ過、ゲルクロマトグラフィー、限外ろ過、電気泳動、イオン交換、アフィニティークロマトグラフィー等を用いることができる。更に、イムノアフィニティー、免疫吸着等の免疫化学的方法を周知の方法を用いて行うこともできる。好ましい精製法は、Fnに対する固定化Mabsを使用する。
G.治療方法及び組成物
本ポリペプチドは、細胞の基質への付着(接着)を促進するための組成物において用いられる。細胞上のインテグリンと本ポリペプチドの結合能に基づき、本ポリペプチドはレセプターに結合する手段を提供するものであり、従ってポリペプチドを基質に固定化する際に細胞付着活性を促進するために用いられる。本ポリペプチドを含有する組成物は、基質を治療しかつそのことにより組成物中に含有されたポリペプチドを基質に固定化するために用いられる。
基質は細胞接着促進活性が所望される表面を有する固体マトリックスとすることができ、細胞培養の容器、医療用具、人工用具、合成樹脂繊維、血管又は血管移植片、経皮用具、人工臓器等が挙げられる。その表面は更にガラス、合成樹脂、ニトロセルロース、ポリエステル、アガロース、コラーゲン又は長鎖多糖類から構成される。
ポリペプチドの基質上への固定化は種々の手段により達成され、特に所望される固定化の基質及び機序に左右される。ポリペプチドの基質への固定化又はカップリング方法は当該技術において周知であり、典型的にはポリペプチドのチオール又はアミノ基と基質上に存在する反応基との間の共有結合を含んでいる。ポリペプチド固定化法の例としては、Aurameasら,Scand J.Immunol.,Vol.8 Suppl.7:7-23(1978);米国特許第4,493,795号,同第4,578,079号及び同第4,671,950号;Klipsteinら,J.Infect.Des.,147:318-326(1983)及びLiuら,Biochem.,80:690(1979)を参照されたい。細胞接着促進ポリペプチドの使用の例としては、米国特許第4,578,079号を参照されたい。
細胞を表面に生体内で付着させるか又は移植に先立って特定の表面の細胞増殖を促進させる基質を利用する人工及び医療用具も企図される。例えば、ポリエステル繊維で組まれた又は接合されたもののような人工血管又は血管移植片上で、内皮細胞増殖が誘導される。かかる用具は事故又は手術後の傷縫合及び癒合に有効である。このような場合には、ポリペプチドをコラーゲン、グリコサミノグリカン等の他の生体分子に結合することが有効である。カップリングは化学架橋、例えばジスルフィド橋によって促進される。人工用具の表面も、特に体内に一時的に使用するもの、例えば血管や腹腔に挿入するものである場合、本ポリペプチドで被覆される。
本ポリペプチドは、種々の組成物中に供給される。即ち、本ポリペプチド組成物は、1種以上のポリペプチド及び適切な塗布媒体、例えば、ゲル、軟膏、ローション、コロイド又は粉末を含むことができる。本組成物は常法を用いて基質に塗布され、当業者に周知の手法を用いて付着されるべき所望の細胞が塗布される。
本発明のポリペプチド又は融合タンパク質の阻害能による1実施態様においては、フィブロネクチン又はフィブリノーゲンの血小板糖タンパク質GPIIb−IIIaに対する結合を阻害する方法であって、GPIIb−IIIaの水溶液と本発明によるポリペプチド又は融合タンパク質との結合を阻害するのに十分な量で接触させることを含む方法が企図される。阻害するのに十分な量は本明細書で教示により示され、マイクロモルからミリモルの範囲にある。
関連の実施態様は、ポリペプチドによって認識されたインテグリンレセプターを示す細胞の生体内接着を調節すること、特にGPIIb−IIIaを有する細胞のフィブロネクチンに対する結合相互作用を調節するために企図される。例えば、本ポリペプチドは、ヒト患者に有効な量で投与される場合、フィブロネクチン又はフィブリノーゲンのGPIIb−IIIaに対する結合を競合的に阻害するか又は血小板の凝集を阻止することができる薬学的に許容しうる組成物中で用いられる。その阻害により、血栓形成の速度が低下すると思われる。即ち、本ポリペプチドが生体内に投与されると、凝固のようなGPIIb−IIIaに対するフィブロネクチン又はフィブリノーゲン結合によって開始される生理的応答やある炎症応答を調節するために用いられる。
本明細書で定義されるFnポリペプチドを含有する融合タンパク質もGPIIb−IIIaに対するフィブロネクチン又はフィブリノーゲン結合を阻害しかつ直接GPIIb−IIIaを結合することを示すことが本発明により証明される限りにおいては、本発明の融合タンパク質をFnポリペプチドと同様の方法で用いることができる。
もう1つの実施態様においては、本発明のポリペプチド又は融合タンパク質と免疫反応する本発明のポリクローナル又はモノクローナル抗体を含む薬学的に許容しうる組成物の有効量を静脈内投与することにより、その表面にインテグリンを有する細胞の正常な細胞接着機能を阻害又は調節することができる。
ポリクローナル又はモノクローナル抗体が細胞接着仲介を調節するために治療上用いられる限りにおいては、本発明は治療上投与された抗体の調節作用を中和するために、例えば抗ポリペプチド抗体の解毒剤として本ポリペプチド又は融合タンパク質を使用することも企図する。解毒剤として投与されるべきポリペプチドの選択は中和されるべき抗体に左右され、投与されたポリペプチドは投与された抗体と免疫反応する能力を持たねばならない。
投与されるポリペプチド又は抗体分子含有組成物は液剤又は懸濁液剤として用いられるが、ポリペプチドは錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤又は散剤としも用いられる。
治療用組成物は、典型的には、全治療用組成物の重量に対して少なくとも0.1重量%の有効成分、即ち本発明のポリペプチド又は抗体の量を含んでいる。重量%は、全組成物に対する有効成分の重量比である。即ち、0.1重量%の場合、全組成物100g当たりポリペプチド0.1gである。
別の方法で述べると、治療用組成物は、典型的には、有効成分としてポリペプチド約0.1マイクロモル(μM)〜約1.0モル(M)、好ましくは約1.0〜約100ミリモル(mM)を含むが、抗体分子含有組成物は、典型的には、治療用組成物1ミリリットル当たり有効成分として抗体約0.1〜約20ミリグラム、好ましくは約1〜約10mg/mlを含む。
本発明のポリペプチド又は融合タンパク質の治療上有効な量は、典型的には、生理的に許容しうる組成物中で投与されるか又は標的GPIIb−IIIaと接触させる場合、約0.1マイクロモル(μM)〜約1000μM、好ましくは約0.5〜約100μMの濃度を得るのに十分であるような量である。
本発明の抗体の治療上有効な量は、典型的には、生理的に許容しうる組成物中で投与されるか又は標的GPIIb−IIIaと接触させる場合、約0.1マイクログラム(μg)/ミリリットル(ml)〜約100μg/ml、好ましくは約1〜約5μg/ml、通常約5μg/mlの濃度を得るのに十分であるような抗体量である。
有効成分としてポリペプチド又は抗体分子を含む治療用組成物の調製は、当該技術において十分に理解される。典型的には、この組成物は注射用剤として溶液あるいは懸濁液として調製されるが、注射前の溶液あるいは懸濁液に適切な固体剤形を調製することもできる。製剤は乳化することもできる。治療用有効成分は周知の薬学的に許容し有効成分と適合する賦形剤としばしば混合される。適切な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等及びその組合わせである。更に、場合によっては、本組成物は有効成分の有効性を高める少量の補助物質、例えば湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤を含有することもできる。
ポリペプチド又は抗体は中和された薬学的に許容しうる塩として治療用組成物に処方される。薬学的に許容しうる塩としては酸付加塩(ポリペプチド又は抗体分子の遊離アミノ基と形成される)があり、塩酸又はリン酸等の無機酸又は酢酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩もナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は第2鉄水酸化物のような無機塩基及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基から誘導される。
ポリペプチド又は抗体含有治療用組成物は、例えば単位用量の注射によって慣用的に静脈内投与される。本発明の治療用組成物について用いられる場合、“単位用量”とは、ヒトに対する単位投薬として適切な物理的に分離している単位を意味し、各々単位は要求される希釈剤、即ち担体又は賦形剤と共に所望の治療効果を生じるように算出された活性物質の所定量を含有する。
本組成物は、投薬処方と適合する方法及び治療上有効な量で投与される。投与されるべき量は、治療されるべき患者、有効成分を使用する患者の能力及び所望されるレセプター−リガンド結合の阻害度に左右される。投与されなければならない有効成分の正確な量は実施者の判断にかかっており、各個体に特有のものである。しかしながら、適切な投薬範囲は1日1人当たり1〜数ミリグラムの程度であり、投与経路による。開始投与及び追加投与の適切な用法も変化しうるが、典型的には、投与開始後、引き続き注射又は他の投与により1時間以上の間隔で繰り返し投与される。また、血中の治療上有効な濃度を維持するのに十分な連続静脈注入も企図される。本ポリペプチドの場合、治療上有効な血液濃度は約1.0〜約10mM、好ましくは約50〜約1.0mMの範囲である。本ポリペプチドが細胞付着を促進するために、例えば内皮細胞を結合するために用いられる場合には、この組成物は典型的には内部のものよりも高い濃度を有する。
本発明のポリペプチドの治療上有効な量は、典型的には、生理的に許容しうる組成物中で投与される場合、約1マイクロモル(μM)〜約100ミリモル(mM)、好ましくは約10〜約100μMの血漿濃度を得るのに十分であるようなポリペプチド量である。
本発明の抗体の治療上有効な量は、典型的には、生理的に許容しうる組成物中で投与される場合、約0.1マイクログラム(μg)/ミリリットル(ml)〜約100ミリモルμg/ml、好ましくは約1〜約5μg/mlの血漿濃度を得るのに十分であるような抗体量である。
H.抗体及びモノクローナル抗体
本発明の試薬は、本発明のポリペプチド又は融合タンパク質によって定義されたフィブロネクチン(Fn)のエピトープと特異的に結合する分子である。本明細書で用いられる文法上種々の形の用語“特異結合”は、レセプターとリガンド分子との間のランダムでない結合反応を意味する。本明細書で企図される具体的な特異的結合レセプター−リガンド複合体は、血小板表面における血小板レセプターGPIIb−IIIaとリガンドFnとの間のものである。Fnと特異的に結合するために知られる他の試薬としては、Fn及びその抗原断片に対して生じたポリクローナル及びモノクローナル抗体がある。即ち、本発明の抗体を産生するために適切な抗体としては、Fnの未変性抗体及び本発明のポリペプチドによって定義されるようなFnの抗原決定基に対して生じた抗体が挙げられる。
フィブロネクチンの種々の機能領域はフィブロネクチン分子に対する抗体の使用によって効果的にプローブされる。即ち、フィブロネクチンに対して生じた抗体は、フィブロネクチンの種々のポリペプチド断片に結合(免疫反応)する能力についてスクリーンされる。実験した抗体組成物がある断片と結合すると、その断片は抗体に対するエピトープを表しているとして確認される。このように、ある抗体分子によって認識されるタンパク質分子の種々の領域が確認される。
本Fnポリペプチドは、更にそのレセプターと優先的に結合する。本明細書で用いられる本発明の試薬分子は、試薬がアッセイにおいて存在する他の分子より標的分子に強く会合する場合に、アッセイにおいて標的分子と“優先的に結合する”として見なされる。即ち、試薬分子と標的との反応は、試薬とアッセイにおいて存在する他の分子との反応より会合定数が通常大きい。典型的には、本明細書における試薬は、標的に対する試薬の結合親和性がもう1つの分子に対する試薬の対応する親和性より2−3倍大きい、好ましくは少なくとも10倍大きい場合に、その標的分子と“優先的に”結合する。即ち、Fnと免疫反応する抗体分子は、Fnに対する親和性が対照ペプチドに対するより10倍大きいことが好ましい。逆に言えば、Fnは対照抗体分子より本発明の抗体分子と10倍以上結合することが好ましい。
即ち、本発明の抗体組成物は、(1)GPIIb−IIIaに対するフィブロネクチン結合を阻害する及び(2)フィブロネクチン及び本発明のポリペプチド又は融合タンパク質と免疫反応する抗体分子を含むものである。
本発明の抗体分子は、配列番号:2残基1−217に示されるアミノ酸残基配列を有するポリペプチドと免疫反応せず、実質的に配列番号:2残基1−217に示される配列からなるフィブロネクチン配列を有する融合タンパク質と免疫反応しない。
列挙した配列から“実質的に構成される”フィブロネクチン配列を有する融合タンパク質は、融合タンパク質の基本的な免疫反応性プロファイルを変化させるような融合タンパク質のフィブロネクチン部分に対する付加又は欠失が実質的に企図されないことを意味する。この要求は、配列番号:2残基248−354に示される配列を有する融合タンパク質のFnI−8及びFnI−11の反応性の差によって特に明らかに示され、即ちFnI−8はFn(1410−1516)−MBP又はフィブロネクチンの11.5kDaペプシンフラグメントと免疫反応するが、FnI−11は免疫反応しない。
従って、1実施態様においては、本発明は、抗体分子がFn1410−1436に相当する配列番号:2残基248−274に示される配列を実質的に構成するフィブロネクチンアミノ酸残基配列を有する融合タンパク質と免疫反応し、好ましくはFn残基1410−1516に相当する配列番号:2残基248−354に示される配列を有するFn11.5kDaペプシンフラグメントと免疫反応する抗体組成物を企図する。具体例はモノクローナル抗体FnI−8である。
もう1つの実施態様においては、本発明は、Fn残基1359−1436に相当する配列番号:2残基197−274に示される配列を実質的に構成するフィブロネクチンアミノ酸残基配列を有する融合タンパク質と免疫反応し、好ましくは融合タンパク質Fn(1235−1436)−MBPと免疫反応するが、Fn残基1410−1516を有するFn11.5kDaペプシンフラグメントと免疫反応しない抗体組成物を企図する。具体例はモノクローナル抗体FnI−11及びFnI−16である。
本明細書で企図される好ましい抗体は、典型的には、前選択された宿主動物からのFnを含有する接種材料又はそのポリペプチド断片で哺乳動物を免疫し、そのことにより哺乳動物において標的抗原に適切な免疫特異性を有する抗体分子を誘発することにより産生される。次いで、抗体分子を哺乳動物から集め、例えば固定化Fnに対する免疫親和性による周知の手法によって所望される程度までスクリーンされる。更に、本発明の抗体は、実施例で記載されるような標準競合阻害アッセイを用いてFnリガンドのGPIIb−IIIaレセプターに対する結合を阻害する能力についてスクリーンされる。このように生産された抗体組成物は、特に本発明の診断法及び系に用いられて体液試料中の抗原を検出ことができる。
従って、本発明の抗体は、本明細書で定義されたFnのGPIIb−IIIa結合部位と免疫反応しかつそのことによりその未変性レセプターGPIIb−IIIaに対する結合を阻害し、GPIIb−IIIaに対するFn結合を阻害する試薬としてその効用がある。
即ち、好ましいポリクローナル抗体は、Fnサブユニットと免疫反応しかつそのことによりFnがそのレセプター、好ましくはFnレセプターGPIIb−IIIaに特異的に結合する能力を阻害する能力を有するとして確認される。即ち、本ポリクローナル抗体は、Fnに結合するインテグリンレセプターを含有する細胞の接着を生体内あるいは生体外で阻害しかつそのことにより調節するのに有効である。
本発明のポリクローナル抗体は、典型的には、本発明の接種材料、好ましくはRGDの上流の少なくとも50個のアミノ酸に位置したアミノ酸残基配列を組込んでいるペプチドを含有する接種材料で哺乳動物を免疫することにより産生される。次いで、抗体分子を哺乳動物から集め、例えば、固相において免疫化ポリペプチドを用いたイムノアフィニティークロマトグラフィーによる周知の手法によって所望される程度まで単離される。このように生産されたポリクローナル抗体は、特に本発明の診断法及び系に用いられてFnと他のタンパク質又は抗体のエピトープを含有するFnフラグメントと他のフラグメント等との間を区別することができる。本抗体は血小板接着を阻止するような細胞接着を調節するための治療方法でも用いられる。
Fnに対するモノクローナル抗体(Mab)も本発明によって企図される。文法上種々の形の用語“モノクローナル抗体組成物”は、特定の抗原と免疫反応することができる1種類の抗体血小板部位だけを含有する抗体分子の集合を意味する。即ち、本Mab組成物は、典型的には、免疫反応する任意の抗原に対して単一の結合親和性を示す。従って、モノクローナル抗体組成物は、各々が別の抗原に免疫特異的な複数の抗体結合部位を有する抗体分子、例えば、二特異的モノクローナル抗体を含んでもよい。
本発明のMabは、典型的には、1種類だけの抗体分子を分泌(産生)するハイブリドーマと呼ばれる単一細胞のクローンによって産生される抗体を含んでいる。ハイブリドーマ細胞は、抗体産生細胞と骨髄腫又は他の自己永続化セルラインを融合することにより形成される。このような抗体は、Kohler,Milstein,Nature,256:495-497(1975)に初めて記載され、この文献を参考として引用する。
モノクローナル抗体は、キメラ抗体を産生する当業者に周知の方法で産生することもできる。その方法としては、免疫グロブリン軽鎖の可変部を含む可変部及び免疫グロブリン重鎖の可変部を含む可変部の両方を含む免疫グロブリン可変部の全部又は一部をコードする核酸を単離、操作及び発現することを包含する。原核及び真核宿主において可変部をコードする核酸を単離、操作及び発現する方法は、Robinsonら,国際出願第89/0099号;Winterら,欧州特許第0239400号;Reading,米国特許第4,714,681号;Cabillyら,欧州特許第0125023号;Sorgeら,Mol.Cell Biol.,4:1730-1737(1984);Beherら,Science,240:1041-1043(1988);Skerraら,Science,240:1030-1041(1988);及びOrlandiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:3833-3837(1989)に開示されている。典型的には、核酸は、前選択された抗原(リガンド)を結合する免疫グロブリン可変部の全部又は一部をコードする。このような核酸の原料は当業者に周知であり、例えば、前選択された抗原を結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから得られ、あるいは前選択された抗原を用いて複数の免疫グロブリン可変部をコードする発現ライブラリーをスクリーンすることができ、これにより核酸が単離される。
好ましいモノクローナル抗体は、本明細書で定義された免疫特異性を有する遊離Fn又はそのポリペプチド断片と免疫反応する。本抗体は、基質に固定化されあるいはGPIIb−IIIaのようなリガンドに結合されたFnフラグメントともMabエピトープが閉鎖されない限り免疫反応することができる。
本発明は、また、本明細書で定義されたFn領域と免疫反応しかつGPIIb−IIIaに対するフィブロネクチン結合を阻害することができるモノクローナル抗体分子を形成する方法を企図するものである。本方法は、下記段階を含んでいる:
(a)免疫原としてFn又は本発明のFnポリペプチドもしくはFn融合タンパク質で動物を免疫する。免疫原がポリペプチドである場合、本明細書に記載されるポリペプチドの相同試料であることが好ましい。しかしながら、特に抗原が小さい場合には、キーホールリンペットヘモシアニンのようなキャリヤタンパク質に連鎖される。免疫化は、典型的には、試料を免疫学的に応答能のある哺乳動物に免疫学的に有効な量、即ち免疫応答を十分生じる量で投与することにより行われる。哺乳動物はウサギ、ラット又はマウスのような齧歯類であることが好ましい。次いで、哺乳動物は、レセプターと免疫反応する抗体分子を分泌する細胞を産生するのに十分な時間維持される。
(b)次いで、免疫した哺乳動物から取り出した抗体産生細胞の懸濁液を調製する。これは、典型的には、哺乳動物の脾臓を取り出し、当該技術において周知の方法を用いて生理学的に許容しうる培地に個々の脾臓細胞を機械的に分けることにより行われる。
(c)懸濁した抗体産生細胞を形質転換された(“不死性を獲得された”)セルラインを産生することができる形質転換物質で処理する。形質転換物質及び不死性を獲得したセルラインを産生するその使用は当該技術において周知であり、エプスタインバールウイルス(EBV)、シミアンウイルス40(SV40)、ポリオーマウイルス等のDNAウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo−MuLV)、ラウス肉腫ウイルス等のRNAウイルス、P3X63−Ag8.653、SP2/O−Ag14等の骨髄腫細胞が挙げられる。
好ましい実施態様においては、形質転換物質で処理すると、懸濁脾臓細胞を適切なセルラインのマウス骨髄腫細胞、例えばSP−2と適切な融合プロモーターを用いて融合することによりハイブリドーマの産生が生じる。好ましい比率は、約108脾細胞を含む懸濁液中1骨髄腫細胞に対して約5脾臓細胞である。好ましい融合プロモーターは、平均分子量約1000〜約4000を有するポリエチレングリコール(PEG1000として市販されている)であるが、当該技術において既知の他の融合プロモーターも用いられる。
用いられるセルラインは、非融合骨髄腫細胞が選択培地中で生存しないが、ハイブリッドは生存するので、いわゆる“薬剤耐性”型であることが好ましい。最も一般的な種類は、8−アザグアニン耐性セルラインであり、これは酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼが欠損しているので、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン)培地で支持されない。また、用いられる骨髄腫セルラインはそれ自体抗体を産生しないいわゆる“非分泌”型であることが通常好ましい。しかしながら、ある場合には、分泌骨髄腫系も好ましい。
(d)次いで、形質転換細胞を、好ましくはモノクローン性にクローン化する。クローン化は、非形質転換細胞を維持(支持)しない組織培養基中で行われることが好ましい。形質転換細胞がハイブリドーマである場合、これは、典型的には、別の容器中で非融合骨髄腫細胞を維持しない選択培地中の非融合脾細胞、非融合骨髄腫細胞及び融合細胞(ハイブリドーマ)の混合液を希釈培養することにより行われる。細胞は、非融合細胞を十分死滅することができる時間(約1週間)この培地中で培養される。希釈は限界希釈とし、各々別の容器(例えば、マイクロリットルプレートの各ウェル)中で特定の細胞数(例えば1−4)を単離するように、希釈容量が統計的に算出される。培地は、薬剤耐性(例えば、8−アザグアニン耐性)非融合骨髄腫セルラインを維持しないもの(例えば、HAT培地)である。
(e)クローン化形質転換細胞の組織培養基をFn及び本発明のFnポリペプチド又は融合タンパク質と優先的に反応する抗体分子の存在を検出するために分析する(免疫学的にアッセイする)。これは、周知の免疫学的手法を用いて行われる。その後、抗体を本明細書に記載されるようにGPIIb−IIIaに対するフィブロネクチン結合を阻害する能力についてスクリーンしてGPIIb−IIIaに対するフィブロネクチン結合を阻害する抗体分子、即ち阻害性抗体分子を産生する形質転換細胞を検出する。
(f)次いで、所望の形質転換細胞を選び、適切な時間適切な組織培養基中で増殖した後、所望の抗体を周知の手法によって培養上清から回収(収集)する。適切な培地も適切な培養時間の長さも周知であり、容易に決定される。
極めて高い濃度のほとんど純粋なモノクローナル抗体を生産するために、所望のハイブリドーマをマウス、好ましくは同系又は半同系マウスに注入することにより移植することができる。適切なインキュベーション時間の後、ハイブリドーマは抗体産生腫瘍を形成し、宿主マウスの血流及び腹腔浸出液(腹水)に高濃度の所望の抗体(約5−20mg/ml)が生じる。
これらの組成物の調製に有効な培地及び動物は、共に当該技術において周知で市販されており、合成培養基、近交系マウス等が挙げられる。合成培地の例は、4.5gm/lグルコース、20mMグルタミン及び20%ウシ胎児血清で補足されたダルベッコの最小必須培地[DMEM;Dulbeccoら、Virol.8:396(1959)]である。近交系マウス株の例は、Balb/cである。
上記の方法で産生されたモノクローナル抗体は、例えば、Fn含有免疫反応産物の形成が所望される診断及び治療法で用いることができる。所望の免疫特異性、即ち、特定のタンパク質、特定のタンパク質の確認できるエピトープ及び/又はポリペプチドと免疫反応するが、Eighth Type III反復のような第2ポリペプチドと免疫反応しない能力を有する抗体分子を生成(分泌)するハイブリドーマを産生する方法は、当該技術において周知であり、本明細書で更に記載される。Nimanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:4949-4953(1983)及びGalfreら,Meth.Enzymol.,73:3-46(1981)に記載されているハイブリドーマ技術が特に利用でき、これらの文献を参考として本明細書に引用する。
更に、本抗体組成物を形成する好ましい方法は、Huseら,Science,246:1275(1989)の方法を用いてFab分子のライブラリーを作成することを含んでいる。本方法においては、重鎖及び軽鎖抗体のmRNA分子が免疫化動物から単離される。mRNAはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて増幅される。次いで、核酸をλファージにランダムにクローン化して組換えファージ粒子のライブラリーを作成する。次いで、このファージを用いて大腸菌のような発現宿主に感染させる。次いで、大腸菌コロニー及び対応するファージ組換え体を所望のFabフラグメントを作製するものについてスクリーンすることができる。
本発明で用いられる抗体分子含有組成物は、溶液又は懸濁液として使用することができる。有効成分として抗体分子を含有する組成物の調製は当該技術において十分に理解される。典型的には、このような組成物は溶液又は懸濁液として調製されるが、溶液又は懸濁液に適した固体剤形を調製することもできる。製剤は乳化することもできる。治療用有効成分は、アッセイを妨害せずかつ有効成分と適合する賦形剤としばしば混合される。適切な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等及びその組合わせである。更に、場合によっては、本組成物は有効成分の効率を高める少量の補助物質、例えば湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤等を含有することもできる。
抗体分子組成物を中和された許容しうる塩に処方することができる。許容しうる塩としては酸付加塩があり、塩酸又はリン酸等の無機酸又は酢酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩もナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は第2鉄水酸化物のような無機塩基及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基から誘導される。
実施例
下記実施例は、本発明を具体的に説明するためのものであって限定するものではない。
1.GPIIb−IIIaの単離
下記の手順により、溶解した血小板から血小板膜GPIIb−IIIaタンパク質を大量に調製することができ、実質的にCharoら,J.Biol.Chem.,266:1415-1421(1991)に記載されている。
試薬:
修飾タイロードバッファー:
最終濃度
H2Oで500mlにし、HClでpH6.5に調整する。
10Xタイロードバッファー:
2リットルの2回蒸留したH2Oに溶解する。
溶解バッファー:
H2Oで300ml容量にする。pH7.4に調整する。
血液銀行からの血小板パックを使い捨ての50mlの三角管(Falcon)に移し、平衡し、Sorvall RT-6000において800rpm(xg),22℃で10分間回転してRBCを沈降する。上清を清浄な50mlの三角管に移し、2300rpm,22℃で20分間回転する。上清を使い捨て用のオートクレーブにかけられるビンに移す。25mlのプラスチックピペットと修飾タイロードバッファーを用いて、血小板沈降物を最初の容量の1/2に再懸濁し、2300rpm,22℃で20分間再び回転する。沈降物を前のように修飾タイロードバッファーに再懸濁し、2300rpm,22℃で20分間再び回転する。沈降物を溶解バッファー(2ml/血小板パック)に再懸濁し、超遠心機(SW 41遠心回転子)において20.000rpm,4℃で20分間回転し、上清を集め、凍結保存する。注意:血小板はガラスと接触させてはならず、凝集を避けるために常に室温で保持しなければならない。
血小板溶解液からのGPIIb−IIIaを下記手順によって精製する:
試薬
RGD−アフィニティークロマトグラフィーカラムバッファー:
H2Oで300ml足らずの容量にし、pH7.4にした後、300ml容量に調整する。
さもなければHEPES/NaCl前調製液を用いる。
F7F−セファロースカラム:
F7F−セファロース:KYGRGDS−セファロース(配列番号3)、10mgKYGRGDS/ml CNBr活性セファロース。1カラムにつきlmlのF7F−セファロースをEvergreen Scientific製の7mlの使い捨てカラムに充填する。
下記クロマトグラフィー手順を用いた:8.1mlのF7F−セファロースカラムを1カラムにつき10mlの溶解バッファーで平衡化した。F7F−セファロースの表面が曝されるまでカラムを流出させてから、1mlの血小板溶解液(1mlの血小板溶解液−1血小板パック)を加えた。
血小板溶解液の黄色がカラムの底に達するまでカラムを流出させ、カラムの両端に蓋をし、4℃で一晩逆にし、流動液を集めた。カラムを10mlの各カラムバッファーで洗浄し、洗液を集めた。カラムバッファー中1カラムにつき2mlの1mg/mlのGRGDSP(2:330−335)、次いで2mlのカラムバッファーでカラムを溶離した。1ml画分を集め、プールして精製GPIIb−IIIaを形成した。集めた精製GPIIb−IIIaの濃度を280nmの吸光度によって求めた。
2.モノクローナル抗体組成物の調製
フィブロネクチンのレセプター結合部位と免疫反応するモノクローナル抗体を特に言及した他は標準ハイブリドーマ技術を用いて生産した。簡単に言えば、2匹のBalb/cマウスを各々実施例1で調製した親和性単離GPIIb−IIIa(1.25mg/ml)とフィブロネクチン3mg/mlを含む混合液からなる免疫原の増加量(各々1mg、10mg、25mg、50mg及び100mg)で1週おきに4回腹腔内に免疫した。免疫原は、初回免疫の場合完全フロイントアジュバントで、2回及び3回目の免疫の場合不完全フロイントアジュバントで、4回目の場合生理食塩水で1:1に希釈した。4回目の免疫の3日後に、両マウスの脾臓から約1×108リンパ系細胞を単離し、懸濁液に混合し、細胞融合プロモーターとして50%PEG1500を用いて5×107P3X63AG8.053マウス骨髄腫細胞と融合した。得られた形質転換(融合)抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をまず1ウェルにつき約1×106細胞密度で96ウェルマイクロタイタープレートに移し、HAT選択培地で培養した。
フィブロネクチン(Fn)は、Plowら,J.Biol.Chem.,256:9477-9482(1981)及び米国特許第4,589,981号に記載されているように精製した。簡単に言えば、Engvallら,Int.J.Cancer,20:1-5(1977)に記載されているようにゼラチン−セファロースによるアフィニティークロマトグラフィーで新鮮なヒトクエン酸化血漿からFnを単離した。結合FnをpH5.3の1Mホウ酸ナトリウムで溶離し、溶離タンパク質の主なピークを0.15M NaCl、pH7.0の0.01Mリン酸ナトリウムで透析した。単離Fnから非還元条件下SDS−PAGEにより単一バンド及び還元条件下分子量215,000〜230,000の狭い間隔の二重線が得られた。
培養8日後に生存可能なHAT耐性ハイブリドーマ細胞を含むと思われる約2000ウェルの組織培養上清をフィブロネクチンと免疫反応する抗体分子の存在についてELISAアッセイにおいてスクリーンした。次いで、単離したハイブリドーマを限界希釈液で2回サブクローン化して1ウェルにつき約1細胞を得、得られた24ハイブリドーマ培養液が2つの基準に基づいてモノクローナル起原であることを示した:(1)各上清が単一細胞フォーカス由来であり、ELISAスクリーンにおいてフィブロネクチンと免疫反応した、(2)製造業者、Boehringer-Mannheim Biochemicals,Indianapolis,Indianaによって備えられた説明書に従いマウスIgスクリーニング及びイソタイピングキットを用いて分析した場合、各上清が免疫グロブリンの単一イソタイプを含有した。
フィブロネクチンと免疫反応する陽性上清を、実施例4に記載されるようにGPIIb−IIIa被覆マイクロタイター細胞に対する125I−フィブロネクチンの結合阻害能についてスクリーンした。このようにしてハイブリドーマの各サブクローン化の陽性上清をスクリーンした。プロテインA−セファロースを用いて典型的にはPharmacia Inc.(Piscataway)から入手し製造業者の説明書に従ってマウスの腹水から抗体分子を単離することにより、モノクローナル抗体分子を調製した。バイオラドプロテインアッセイキット(Bio-Rad,Richmond,CA)を用いて製造業者の説明書に従い、必要とされる単離抗体分子組成物のタンパク質濃度を求めた。
125I−標識抗体分子を含有するモノクローナル抗体組成物を調製するために、1ミリグラム/ミリリットル(mg/ml)の上記単離抗体分子を含有する350マイクロリットル(μl)のPBS(0.15M NaCl,0.01Mリン酸ナトリウム,pH7.09)を40マイクログラム(μg)のクロラミンT及び1ミリキュリー(mCi)の無キャリヤNa125I(Amersham,Arlington Heights,IL)と混合した。得られた混合液を約20℃で5分間維持し、次いで、20μlの2mg/ml異性重亜硫酸ナトリウム溶液(2mg/ml)及び20μlのヨウ化カリウム溶液と混合した。その後、1%BSAを含有する800μlのPBSを混合し、更に最終濃度10mMまでジイソプロピルフルオロホスフェートを混合した。得られた混合液を22℃で60分間維持し、次いで、PBSで透析した。得られた125I−標識抗体分子の比活性は約4.5マイクロキュリー(μCi)/μgであった。
Mageら,Methods in Enzymology,70:142-150(1980)の方法に従って、上記単離抗体分子をパパイン(Igのパパインに対する重量200:1)で37℃において6時間消化することにより、Fabフラグメントを含む組成物を調製した。消化されないIgとFcフラグメントをプロテインA−セファロースによるクロマトグラフィーで除去した。次いで、得られたFabフラグメント含有組成物を使用のために備えておくか又は上記モノクローナル抗体組成物と同様の手順を用いて要求されるように125I−標識した。
3.ELISAアッセイ
a.モノクローナル抗体をスクリーニングするためのELISA
ハイブリドーマ培養上澄中に含まれる抗体分子を、フィブロネクチンと免疫反応するその能力について調べた。10mg/mlの実施例2と同様にして調製した単離フィブロネクチンを含有する、塗布溶液(0.1M NaHCO3,pH8.0,0.1% NaN3)50μlを平底の96-ウエルをもつマイクロタイタープレート(イムロン(Immulon)2;VA州、シャンティリーのダイナテックラボラトリーズ(Dynatech Laboratories)社製)のウエル中で混合した。次いで、このプレートを37℃にて60分間維持して、該フィブロネクチンを該ウエルの壁に吸着させた。該塗布溶液を振盪して除去し、該ウエルを洗浄用バッファー(10mMトリス(Tris)-HCl,pH7.4,0.05%(v/v)ツイーン(Tween)-20,0.15M NaClおよび200mg/mlメルチオレート(merthiolate)含有)で2度洗浄し、また200μlの遮断溶液(塗布溶液中に5%のウシ血清アルブミン(BSA;w/v)を含む)を各ウエル(固体担体)中で混合して、過剰のタンパクサイトを遮断した。
これらのウエルを約37℃にて60分間維持し、次いで該遮断溶液を除去した。洗浄バッファー中に0.1%(w/v)のBSAを含有する希釈バッファーで1:1の比率で希釈したハイブリドーマ培養上澄約50μlを各ウエルに添加して、免疫反応混合物を形成した。得られた固/液相免疫反応混合物を室温にて60分間維持して、第一の固相−結合フィブロネクチン−リガンド錯体および混合された抗体類を形成せしめた。次いで、該固相および液相を分離し、該ウエルを洗浄バッファーで2回洗浄し、過剰の液を振盪により除去した。
ホースラディッシュパーオキシダーゼにより標識した山羊杭-マウスIgG(CA州、バーリンガムのタゴ社(Tago Inc.)製)を含み、希釈バッファーで1:1000の比率で希釈した溶液50μlを各ウエル中で混合して、第二の固−液相免疫反応混合物(標識免疫反応混合物)を形成した。これらのウエルを室温にて60分間維持して、該標識抗体と該第一の免疫反応生成物の任意の固相−結合抗体との間の第二の免疫反応生成物を形成し、次いで洗浄バッファーで2回洗浄して、該固相−結合標識−含有免疫反応生成物を単離した。次に、過剰の液体を該ウェルから除去した。
次いで、CPバッファー(H2O 1l当たり243μlの0.1mクエン酸および250μlの0.2M二塩基性燐酸ナトリウムを含み、pHは5.0)中に4.0mg/mlのo-フェニレンジアミンと0.012%(v/v)の過酸化水素を含む新たに調製した色素原基質50μlを各ウエル中で混合して、発色反応混合物を形成した。この発色混合物を約20℃にて10分間維持した後、2N H2SO450μlを各ウエルに混合して、該発色反応を停止させ、かつ生成した溶液を、モデル(Model)310 ELISAブレートリーダ(VT州、ウイノースキーのバイオ−テックインスツルメンツ(Bio-Tek Instruments)社)を使用して、波長490nmにおける吸収につきアッセイした。
490nm(A490)における測定吸光度がバックグラウンドの少なくとも6倍、即ちA490で測定した場合に約0.3光学密度単位である場合には、抗体分子組成物が抗−フィブロネクチン免疫反応抗体を含んでいると考えた。フィブロネクチンと免疫反応性のモノクローナル抗体(MAbs)のパネルは、以下で更に説明されるようにMAbs FnI-8、Fn-IIおよびFnI-16を含有するものと同定された。
4.Fn-GPIIb-IIIa相互作用のMabによる阻害のスクリーニング
125I-標識フィブロネクチンのGPIIb-IIIaへの結合に関する以下のマイクロタイターウエルアッセイを利用した。
取り外し可能なマイクロタイターウエルを、4℃にて一夜、RGDS-アフィニティー精製したGPIIb-IIIa(実施例1で精製したもので、>10mg/mlでウエル当たり50μl使用)で被覆した。該GPIIb-IIIaを不活化し、かつ該ウエルを150μlの5%BSA中で室温にて1〜2時間インキュベートすることにより、これらウエルを遮断した。2Xモディファイドタイローズ(Modified Tyrodes)中の25nM125I−標識フィブロネクチン25μl(ウエル中の最終濃度12.5nM)を、10mMトリス-HCl(pH8)により1:1の比率で希釈したハイブリドーマ培養上澄25μlと共に、別のマイクロタイターウエルトレー中で、37℃にて30分間予備−インキュベートした。実施例2と同様にして調製したフィブロネクチンを、プロー(Plow)等,J.Biol.Chem.,1981,256,pp.9477-9482に記載されたクロラミン(Chlramine)T法を利用して、125Iにより沃素化した。該GPIIb-IIIaで被覆し、かつ遮断したマイクロタイターウエルをモディファイドタイローズバッファーで4回洗浄した。該125I−フィブロネクチン上澄溶液を該GPIIb-IIIa被覆ウエルに移し、室温にて4時間インキュベートした。該ウエルを200μlのモディファイドタイローズで4回洗浄した。空のウエルをガンマカウンターで計数し、その量をcpm/ウエル単位で測定した。
結果は3回の測定の平均(+/- 1標準偏差)として示し、また添加抗体の存在しない場合のフィブロネクチン(Fn)結合量に対するFn結合の%として表した。2000Fn−免疫反応性MAbsのパネルの内の3種のMAbsが、このアッセイによるFnのGPIIb-IIIaへの結合を阻害するすることを確認し、かつこれらをそれぞれFnI-8、FnI-11およびFnI-16と命名した。マウスIgスクリーニング&イソタイプングキット(Mouse Ig Screening and Isotyping Kit)(IN州、インジアナポリスのベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim)社)を使用して、これら3種のMabsがIgG1イソタイプであることを確認した。
上記と同様な阻害アッセイは、該3種のMabsが50nMのFnのGPIIb-IIIaへの結合を阻害し、そのIC50が100〜175nMであることを示した。
これらの阻害性MAbs、即ちFnI-8、FnI-11およびFnI-16はフィブロネクチンに対する結合に関する交叉−競合ELISAアッセイでスクリーニングして、これらがフィブロネクチン上の異なるエピトープと免疫反応性であるか否かを決定した。このアッセイにおいては、マイクロタイタープレートのウエルに、GPIIb-IIIaではなくむしろフィブロネクチンを10μg/mlで被覆した。遮断後、1μg/mlの126I標識したMAbを、50μg/mlの未標識競合MAbの存在下で、室温にて2時間インキュベートした。洗浄後、結合した放射能量を測定した。3回の測定の平均(+/- I標準偏差)で表した結果を第1A図に示す。MAbs、即ちFnI-11およびFnI-16はFnへの結合に関して相互に競合した。これとは対照的に、FnI-8とFnI-11との間には何等競合が見られず、FnI-8とFnI-16との間には僅かに最少限度の交叉-阻害が見られたに過ぎない。かくして、FnI-8およびFnI-11に対するエピトープは異なっており、またFnI-8およびFnI-16とに対するエピトープは関連性をもつ。
上記のELISAアッセイと同様な競合ELISAアッセイを、これら3種の阻害性MAbsについて実施して、種々のヒト以外の種由来の血漿Fnの存在下での、抗-Fn MAbsのヒトFnと免疫反応する能力を測定した。このアッセイにおいて、上記の如くFnで被覆したマイクロタイターウエル中で、MAbを含有する免疫反応混合物に、血漿を添加した。Fnと免疫反応したMAbの存在は、上記の色素原基質o-フェニレンジアミンの存在下で、第二パーオキシダーゼ-標識杭-マウス抗体により検出した。ヒトFnに対するFnI-8の結合はヒト、ウシおよびモルモットの血漿により阻害され、一方でFnI-11およびFnI-16はヒト血漿によってのみ阻害された。かくして、FnI-8によって確認された該エピトープは、多数の種のFn上に存在するという意味で特に有用である。
5.Fnフラグメント-MBP融合タンパクの調製並びに単離
2種のMBPをコードするプラスミド、即ちpPR734およびpIH821を、本発明のGPIIIa-MBP融合タンパクをE.コリ中で発現するためのベクターとして使用した。該融合タンパクの該MBP領域は、該融合タンパクを他の細胞性タンパクから容易に精製することを可能とする。これらのベクターは、周知の技術(サムブロック(Sambrook)等、モレキュラークローニング;アラボラキリ−マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),NY州、コールドスプリングハーバーのコールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press))にしたがって、以下に記載する手順で構築した。
A.MBPベクターの構築
フィブロネクチン(Fn)の完全な配列を含むcDNAクロロンはオバラ(Obara)等、Cell,1988,53,pp.649-657に記載されており、またこの文献の著者であるDr.ヤマダ(Yamada)から提供された。この提供されたcDNAクローンを、PvuIIによる制限エンドヌクレアーゼ消化にかけ、生成する消化フラグメントをEooRIリンカーによるプラントエンド結合して、該消化したフラグメントをEooRI末端を含むように適合させた。次いで、この適合フラグメントをPstIで消化して、Pstlに対して感受性のこれらフラグメントを開裂した(これによって、該PstI-開裂フラグメントをEcoRIサイドへの連結に関して不活性化する)。マルトースと結合している融合タンパクベクターplH821(MA州、ビバリーのニューイングランドバイオラブズ社(New England Biolabs.Inc.))および該適合化したフラグメント両者をEcoRIで消化した、EcoRI付着性末端を形成し、かつ該FnフラグメントをDNA T4リガーゼを使用して該ベクターに連結して、Fn-MBP融合タンパクを発現し得るMBPをコードする遺伝子フラグメントに機能可能に連結された該クローン化Fn-コード遺伝子フラグメントをもつ融合構築体を形成した。該PvuIIフラグメントは、残基1235-1436に対応するFnの領域を含む。このプラスミド構築物はpIHPBamと命名され、かつMBP/8-9またはMBP-Fn(1235-1436)と命名されたMBP融合タンパクを発現する。
ベクターpIH821およびpPR734は第5図に記載されており、またニューイングランドバイオラブズ社(MA州、ビバリー)から入手した。これらベクターの各々はポリリンカーを介してlac Z遺伝子に連結されたmalEを有する。plH821は、これが周縁細胞質への融合タンパクの輸送を容易にする該malEシグナル配列2〜26の欠失をもつことを除き、pPR734と同等である。これらベクターの各々は該malE遺伝子の上流にtacプロモータ(Ptac)をもつ。該tacプロモータの直上流にあるAlac I5サプレッサー遺伝子は、IPTG(イソプロピルβ-D-チオガラクトシド)が発現を誘発すべく利用されるまで、その発現活性が抑制される。残りのベクターバックボーンはpKK233-2(NJ州、ピスカタウェイのファルマーシア社(Pharmacia)のAval(完全)からEco R1(完全)までである。
マルトース-結合タンパク融合発現系(MBP発現系)は以前アマン(Amann)等、Gene,1983,25,pp.167-178により記載されたプロモータ(PtacII)、ガン(Guan)等,Gene,1987,67,pp.23-30により以前記載された該マルトース-結合タンパク-lacZαおよび融合遺伝子(malE-LacZα)、以前ブロシウス(Brosius)等.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1984,81,pp.6929-6933により記載されたrrnBリボソーム転写ターミネータおよびpIH821およびpPR734(MA州、ビバリーのニューイングランドハイオラブズ社)並びにpKK223-2およびpKK233-2(NJ州、ピスカタウエイのファルマーシア社)として市場から入手できるものである。このMBP発現系は、場合によりファラボー(Farabaugh),Nature,1978,274,pp,765-769に以前記載されたlacリプレッサー遺伝子(lac I)をコードする遺伝子を含有する。このlac I遺伝子が該発現ベクター上に存在しない場合には、ストラタジーヌ(Stratagene(ca州、ラホーヤ))から市販品として入手できる、ヤニッシュ−ペロン(Yanish-Perron)等、Gene,1985,33,p.103に記載されたラムダリプレッサーを発現する菌株、例えばJM101、JM105、JM107、JM109(ATCC #33323)およびJM110(ATCC #47013)を使用することにより、transで与えることができる。
この発現系の成分を含有する個々の核酸セグメントは、標準的な分子生物学的技術、例えばサムブロック(Sambrook)等のモレキュラークローニング:アラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),1989,第二版,NY州、コールドスプリングハーバーのコールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されている技術を利用して、機能可能に一緒に結合(連結)される。必要ならば、該種々の成分の読み取り枠を、合意リンカー、種々のフィル−イン(Fill-in)反応または種々のエキソヌクレオース(exonucleoss)を使用して調節する。更に、該読み取り枠における種々の欠失および調節は、ループ−アウト(loop-out)突然変異誘発および市販品として入手可能な突然変異誘発キット、例えばバイオラドラボラトリーズ(Bio Rad Laboratories)(CA州、リッチモンド)から入手できる突然変異誘発キットを使用して容易に実施される。
該発現系に必要とされる成分の各々を以下に詳細に説明する。以前にアマン(Amann)等、Gene,1983,25,pp.167-178により記載さたプロモータ:PtacIIは多数の入手可能なベクター、例えばアマン(Amann)等、Gene,1983,25,pp.167-178に記載されているPKK 223-3(ファルマーシア社(Pharmacia))、pIH821およびpPR734(MA州、ビバリーのニューイングランドバイオラブズ社(New England Biolabs,Inc.))、PtacII(ATCC #37245)およびPtac 12(ATCC #37138)から単離できる。例えば、該PtacIIプロモータは制限エンドヌクレアーゼ、Eco RIとHind IIIまたはClaIとHind IIIを使用して、PtacIIから単離できる。
ガン(Guan)等、Gene,1987,67,pp.21-30により以前記載された該マルトース−結合タンパク-IacZαおよび融合遺伝子(malE-LacZα)は、E.コリの染色体から単離したHinf I制限エンドヌクレアーゼフラグメント、例えばHB101(ATCC #33694)または野性型E.コリK12上に該malE遺伝子を含む。このmaIE遺伝子はデュプレイ(Duplay)等、J.Biol.Chem,.1984,259,pp.10606-10613により配列決定されており、従ってこのmalE遺伝子に特異的なプローブは、標準的なクローニングプロトコールを使用して、E.コリからの該malE遺伝子の単離を可能とするように容易に合成できる。また、このmalE遺伝子は化学的にセグメントとして合成でき、このセグメントをT4 DNAリガーゼの使用により接合して、該malE遺伝子を生成し得る。該成熟マルトース結合タンパク(該malE遺伝子生成物)は、デュプレイ(Duplay)等,J.Eiol.Chem.,1984,259,pp.10606-10613にによって記載されているように、該malE遺伝子配列のコドン28-324によりコードされる。この発現ベクターは27アミノ酸をもつマルトース結合タンパクリーダー配列をコードする完全な該malE遺伝子および該成熟マルトース結合タンパクをコードするコドン28-392を含むか、あるいは該成熟マルトース結合タンパクをコードする該malE遺伝子のみを含むことができる。
該マルトース結合タンパク−lacZα融合遺伝子の残部は、lac遺伝子(長さ約107アミノ酸)の短いαペプチドをコードするlacZ遺伝子の部分を含む。このlacZ遺伝子はヤニッシュ−ペロン(Yanisch-Perron),Gene,1985,33,pp.103-119に記載されたpUC 19から単離でき、また市販品として入手できる。このlacZ遺伝子および該malE遺伝子は、場合により内部に種々の有用な制限エンドヌクレアーゼ認識配列をもつことのできるリンカーを使用して一緒に結合できる。
上記rrn Bリボソーム転写ターミネータは、以前にブロシウス(Brosius)等,Proc Natl.Acad.Sci.USA,1984,81,p,6929およびブロシウス(Brosius)等,plasmid,1981,6,pp.112-113に記載された。このrrn Bリボソーム転写ターミネータは、入手可能なベクター、例えばPEA300(ATCC #37181)、PKK223-3およびPKK233-2(ファルマーシア社(Pharmacia))並びにPH1821およびPPR734(ニューイングランドバイオラブズ(New England Biolabs))から容易に単離できる。例えば、該rrn Bリボソーム転写ターミネータはHind IIIおよびPvu I制限エンドヌクレアーゼを使用してpKK223-3から単離できる。
ラムダリプレッサータンパクをコードするlacI遺伝子はファラボー(Farabaugh),Nature,1978,274,p.765により配列決定されている。更に、lacI遺伝子は幾つかの入手可能なベクター、例えばpBluescript II KSおよびpBluescript SK(ストラタジーヌ(Stratagene))pUC 18およびpUC 19(ファルマーシア社(Pharmacia))中に存在する。このlacI遺伝子は制限エンドヌクレアーゼおよび標準的な分子生物学的技術を使用してこれらのベクターから単離できる。該lacI遺伝子は該発現ベクター中に存在するか、あるいは該発現ベクターが成長するバクテリア中に存在する。
該発現ベクター中の該malE遺伝子と該lacI遺伝子との間に存在する多重クローニングサイトを以下の第1表に示し、かつ以下の配列表に配列番号:4として掲載する。
この多重クローニングサイト(ポリリンカー)は、該malE遺伝子と該lacI遺伝子との間に位置するファクターXa開裂サイトをコードする核酸セグメントを含有する。このベクターにより生成される任意のマルトース結合タンパク融合タンパクはこのファクターXa開裂サイトで開裂して、所定のタンパクの精製を容易にする。
外来遺伝子を、Sac I、Kpn I、Eag IまたはBam HI制限エンドヌクレアーゼサイトにおいて該多重クローニング配列内に挿入(機能可能に結合)できる。
MBP融合タンパク中のFnの1235-1436(2:73-274)領域を発現する、Fn(1235-1436)-MBP融合タンパクをコードするプラスミドを上記の如く調製した。
該1235-1436フラグメントを含有する上記のEcoRIフラグメントを、プラスミドのEcoRIサイトに挿入して、phfnPを形成した。次に、プラスミドphfnPをBamHIで消化し、その末端を完全にし、Xbalポリリンカーを該完全な(ブラント)エンドに連結し、該連結プラスミドをSaIIで消化して、Fn領域(1359-1436(2:217-274)を含有するXbaI-Sallフラグメントを生成し、かつ該FnフラグメントをpIH821に挿入して、Fn(1359-1436)-MBP融合タンパクを発現するプラスミドpPlHBamを形成した。
ラムダgtllのlacZ遺伝子をもつ枠中でクローン化されたFncDNAフラグメントは、以前にオバラ(Obara)等,Cell,1988,53,pp.649-657に記載されている。これらのクローンはFn-lacZ融合タンパクを発現し、Fn残基934-1653、1317-1653(2:155-491)および1359-1653(2:197-491)に及ぶ該Fnフラグメントを含む。
603塩基対(bp)をもつPvuIIフラグメントはオバラ等により提供され、かつオバラ等の上記文献に記載されているラムダgtllクローンFn′から単離され、該フラグメントはその内部EcoRI開裂サイトが除去されており、また該フラグメントを標準的な技術を利用し、EcoRIポリリンカーを使用してラムダgtllの該EcoRIサイト内に挿入した。この構築物は、β−ガラクトシダーゼと融合され、Fn(1235-1436)と命名されるFn残基1235-1436(2:73-274)を発現した。
上記のオバラ等のラムダgtll D(934-1163)fnのEcoRI消化由来の651 bpフラグメントを、ラムダgtll内に挿入して、Fn残基1163-1379(2:1-217)を発現し、Fn(1163-1379)-Bgalと命名される構築物を形成した。該lacZ遺伝子生成物を有するフレーム内でFn残基1330-1653(2:218-491)を発現するクローンは、ラムダgtll D(934-1163)fn由来の757 bpをもつEcoRIフラグメントをラムダZAP IIベクター(CA州、ラジョラのストラタジーヌ(Stratagene))のEcoRIサイトに挿入することにより構築され、その発現生成物はFn(1380-1653)-Bgalと命名された。
B.MBP-融合タンパクの発現
少量での実験を、特定のMBP融合タンパクの挙動を決定するために記載する。このプロトコールは3種の粗製抽出画分、即ち全細胞粗製抽出物、該粗製抽出物由来の不溶性物質の懸濁液、および低温浸透圧ショック法(cold osmotic shock procedure)により調製された周縁細胞質画分を生成する。80mlのリッチブロス(rich broth)+グルコース&amp(1l当たり、10gのトリプトン(Tryptone)、5gの酵母抽出物、5gのNaCl、1gのグルコースを含み、オートクレーブ処理し、かつ100μg/lまでアンピシリンを添加)に、上で調製し、MBP/8-9と命名された融合プラスミドを含有する細胞を接種する。十分に通気して、2×103細胞/mlとなるまで37℃にて成長させる。試料1mlを採取し、小型遠心機内で2分間遠心処理する(未誘発細胞)。上澄を捨て、かつ該細胞を100μlのSDS-PAGE試料バッファー中に再懸濁する。攪拌し、かつ氷上に置く。
残りの培養物にIPTG(イソプロピルチオガラクトシド)を添加して、最終濃度0.3mMとする。例えば、H2O中の0.1Mストック溶液0.24mlを添加する。インキュベーションを37℃にて2時間続ける。試料1mlを採取し、小型遠心機内で2分間遠心処理する(誘発細胞)。上澄を捨て、かつ該細胞を150μlのSDS-PAGE試料バッファー中に再懸濁する。攪拌して該細胞を再懸濁し、かつ氷上に置く。(大規模調製に関する該細胞の収穫時点を決定するための試みにおいては、更に1および3時間の付随的な時点でこれを実施することが有用であり得る)。
該培養物を2つのアリコートに分割し、4000×gにて10分間遠心処理することにより該細胞を収穫する。得られた上澄を捨て、一方のペレット(試料A)を10mMの燐酸ナトリウム、30mMのNaCl、0.25%のツイーン(Tween)20、10mMのEDTA、10mMのEGTA(シグマ社(Sigma)のE4378)を含み、pH7.0の溶液5ml中に再懸濁する。他方のペレット(処理B)を30mMのトリス(Tris)-HCl、20%のスクロースを含み、pH8.0の溶液(0.1gの各湿潤細胞重量につき9ml)10ml中に再懸濁する。(これらの指定されたバッファーは燐酸ナトリウムを含み、pHは7.0である。該MBPアフィニティー精製で使用する元のバッファーとしてはpH7.2のトリス(Tris)-HClを使用した。しかしながら、トリスはpH7.0において極めて貧弱なバッファーであり、濃厚なストック溶液の希釈による予想可能な緩衝性を達成することを困難にする。両バッファー共に、良好な結果を与え、かつ他の中性バッファーも恐らく良好に機能するであろう)。
次いで、ドライアイス−エタノール浴中で凍結した試料A(または20℃にて一夜放置した試料)を冷水中で解凍する。該試料を超音波処理し、ブラッドフォード(Bradford)アッセイまたはA280を使用して、タンパクの遊離を、これが最大となるまで測定することにより細胞破壊を監視する。9,000×Gにて20分間遠心処理する。上澄(粗製抽出液1)をデカンテーションし、氷上で保存する。このベレットを、10mMの燐酸ナトリウム、0.25%のツイーン(Tween)20、30mMのNaCl、10mMのEDTA、10mMのEGTAを含み、pH7.0の溶液5ml中に再懸濁する。これは不溶性物質の懸濁液(粗製抽出物2)である。このパイロット実験における3種の異なる抽出物を調製する理由は、融合物が1)不溶性封入体を形成するか、あるいは2)該細胞周辺腔に輸送されることを理解するためである。不溶物質中に該融合タンパクが存在する場合、このプロトコールは可溶性タンパクを生成するように改善されなければならない(以下を参照のこと)。この融合物が効率良く輸送された場合には、細胞周辺画分の調製が粗製細胞抽出物の調製に代わるものと考えるべきである。細胞周辺画分の調製はそれ自体の実質的な精製をもたらす。
1mMの試料BにEDTAを添加し、振盪し、かつ攪拌しつつ室温にて5-10分間インキュベートする。4℃にて遠心処理し、全ての上澄を除去し、得られたペレットを氷冷した5mM MgSO4溶液10ml中に再懸濁する。氷浴中で10分間振盪または攪拌する。該上澄が低温浸透圧ショック流体である。
5μlの2×SDS-PAGE試料バッファーを5μlの粗製抽出物1および2に添加し、10μlの2×SDS-PAGE試料バッファーを10μlの該低温浸透圧ショック流体に添加する。これらの試料を未誘発および誘発された細胞試料と共に5分間沸騰させる。小型遠心機内で2分間遠心処理する。20μlの該未誘発および誘発された細胞試料および該抽出試料の全てを10% SDS-PAGEゲル上に載せる。場合によっては、上記試料の1:5希釈物を使用した同様なSDS-PAGEゲルによる操作を実施して、ウエスタンブロットを調製し、抗-MBP血清および入手可能であれば、該融合タンパクのクローン化部分に対して免疫特異的な血清と共に展開する。該融合タンパクの輸送を最適化するために、即ち温度(23、30または37℃)およびIPTG濃度、並びに細胞を収穫するための最良の時間を見出すためのもう一つのパイロット実験を実施することが望ましい。この融合タンパクが不溶性物質内にある場合には、該細胞が完全に破壊されたことを明らかにする。該融合タンパクが依然として不溶性である場合には、0.2%のトライトン(Triton)X-100、1mMのEDTAで数回抽出することを試みるべきであり、しばしば該タンパクは実際に不溶性ではなく、該細胞ペレット中の膜フラグメントと会合しているに過ぎない場合がある。このような場合、幾つかの融合体については、トライトンがカラムへの結合を妨害していることに気づくべきである。該タンパクが真に不溶性である場合には、該細胞成長の条件を、可溶性融合タンパクを生成するように変更する。前の場合に助けとなった3つの変化はi)異なる菌株に関するバックグラウンドへの変更、ii)細胞を23または30℃で育成すること、およびiii)0.01mMのIPTGにより誘発して、低い発現レベルとすることである(タカギ(Takagi)等,Biotechnology,1938,6,p.948)。
C.MBP-融合タンパクの精製
(1)交叉-結合アミロース樹脂の調製
300mlの樹脂について、10gのアミロース(シグマ社(Sigma),カタログNo.A-7043)、40mlのH2Oおよび攪拌棒を1000mlのビーカーに入れ、攪拌しつつ50℃に加温する。ヒュームフード(fume hood)中で、60mlの5N NaOHを、次いで30mlのエピクロルヒドリン(シグマ社(Sigma),カタログNo.E-4255)を、迅速に攪拌しつつ添加する。この懸濁液をゲル化した場合には加熱する。この攪拌を、該懸濁液が固体ゲルを形成するまで約10分間続ける(該懸濁液は僅かに黄色となるはずである)。室温まで冷却(約45分〜1時間)し、次いで該ゲルを細片に切断し、3回1000mlのH2Oで洗浄する。該ゲルをワーリング(Waring)ブレンダーに移し、約3〜5秒間該ゲルを破砕する。1000mlの50mM-HCl、0.5MのNaClを含みpH2.0の溶液で2回洗浄し、該洗浄操作間に微細物質を排出する。
水で3回洗浄(微細物質の排出を続ける)し、次いでpH7.0の10mM燐酸ナトリウムで3回洗浄する。該ゲルを、pH7.0の10mM燐酸ナトリウム、0.02%アジ化ナトリウムに懸濁し、4℃にて保存する。該樹脂上の非一特異的サイトを、1000ml3%の脂肪を含まない乾燥ミルクで一夜洗浄することにより遮断する。
(2)アフィニティークロマトグラフィー
以下に、MBP-融合タンパクの大規模精製のためのプロトコールを記載する。
グルコースおよびアンピシリンを含む1lのリッチブロス(1l当たり、10gのトリプトン、5gの酵母抽出物、5gのNaClおよび1gのグルコースを含み、オートクレープ処理し、100μg/mlまでアンピシリンを添加したもの)に、MBP融合タンパクを発現するプラスミドを含有する細胞を接触する。2×108細胞/ml(A600=4)まで育成する。最終濃度が0.3mMとなるように、例えばH2O中、0.1Mのストック溶液85mgまたは3mlなる量のIPTGを添加する。該細胞を37℃にて1〜3時間インキュベートする。(発現を可能とする時間は、使用した宿主およびMBP-融合タンパクが不安定か否かに依存し、かつ経験的に決定される)。該細胞を4000×gにて遠心処理し、10mMの燐酸ナトリウム、30mMのNaCl、0.2%のツイーン20、10mMのβ−メルカプトエタノール、10mMのEDTA、10mMのEDTA、10mMのEGTA(シグマ社(Sigma),カタログNo.E 4378)を含み、pH7.0の溶液50ml中に再懸濁する。該再懸濁試料をドライアイス−エタノール浴中で凍結(または20℃にて−夜放置)し、冷水中で解凍する。該試料を超音波処理し、ブラッドフォード(Bradford)アッセイまたはA280を使用して、タンパクの遊離を、これが最大となるまで測定することにより細胞破壊を監視する。9,000×Gにて30分間遠心処理する。(多くの不安定なタンパクについて、殆どの分解は収穫および細胞破壊の際に起こる。従って、これら操作を迅速に実施しかつ細胞を低温に維持して実施することが最も好ましい。溶解バッファー50mlなる値は、約5g細胞/lなる予想に基くものである。即ち、細胞1g(湿潤重量)当たり10mlである。)
EGTAの使用はCa++補助因子を有するプロテアーゼ阻害を補助するためである。PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオライド)および他のプロテアーゼ阻害剤の添加は場合に応じて実施することができる。β−メルカプトエタノールは溶解の際の鎖間ジスルフィド結合の形成を防止するために添加される(ジスルフィド結合は、通常E.コリでは細胞間には形成されない)。該タンパクがEGTA、0.5MNaClまたはメルカプトエタノールに対して感受性である場合には、該バッファーを調整する。
三角フラスコに該交叉−結合アミロース樹脂を流し込み、これを静置する。該樹脂を、少なくとも等体積のカラムバッファー+0.25%ツイーン-20で数回洗浄する。ここで、該カラムバッファーはpH7.0で、10mMの燐酸ナリトウム、0.5MのNaCl(場合によっては、10mMのβ−メルカプトエタノールおよび1mMのEGTA)を含有する。培養物1l当たり約40-200mlの樹脂をカラムに注ぎ、該カラムをカラム体積の3倍の上記と同一のバッファーで洗浄する。(該樹脂の量は使用する樹脂および生成するハイブリッドタンパクの量を依存する。「自家製」の樹脂は約0.5〜1mg/mlの床体積において、80mlのカラムを必要とする場合には、40mg/lの収率を与えるように結合する。自家製の樹脂の流動特性は貧弱であるので、短くて太いカラムが最後に機能する。カラムの形状はこの樹脂にとってそれ程重要ではない。というのは、これがビーズ形状にあるからであり、良好に機能するカラムの高さ対径の比は4である)。
該粗製抽出物をカラムバッファー+0.25%ツイーン-20で1:5に希釈する。該希釈した粗製抽出物を流量[10x(cm2で表したカラムの径)]ml/時にてカラムに流し込む。これは2.5cmのカラムについて約1ml/分である。この粗製抽出物の希釈は、タンパク濃度を約2.5mg/mlまで減ずることを目的とする。極大雑把にいえば、1gの湿潤細胞重量が約120mgのタンパクを与える。
全ての該MBP-融合タンパクが該カラムに結合するように、この粗製抽出物を該カラムに2度通すことができるが、多くの場合において、結合に対して競合する該全てのMBP-融合タンパクは第一のカラム通過で結合する。融合タンパクは、また粗製抽出物と樹脂とを4℃にて2〜76時間、穏やかに攪拌しつつ、バッチ式で該樹脂上に載せることも可能である。カラム体積の3倍量のカラムバッファー+0.25%ツイーン-20で洗浄し、次いでカラム体積の5倍量の、ツイーン-20を含まないカラムバッファーで洗浄する。該ハイブリッドタンパクを10mMの燐酸ナトリウム、0.5MのNaCl、10mMのマルトースを含有(場合により、10mMのβ−メルカプトエタノールおよび1mMのEGTAを含んでもよい)し、pH7.0の溶液を使用して溶出する。各々カラム体積の1/5〜1/10の10〜20個の画分を集め、該画分をタンパクについて、例えば上記のブラッドフォードアッセイまたはA280を使用したアッセイにより検定する。該MBP-融合タンパクを含有する画分は容易に検出し得るタンパクを含むはずである。このハイブリッドタンパクは、該カラムの空隙部の体積の溶出後に直接溶出する。タンパク−含有画分をプールする。(場合によって、4×100体積の10mMトリス-Cl、100mM NaCl(場合により、1mMのEGTAをも含む)を含み、pH8.0の溶液に対して透析して、マルトースを除去する。アミコンセントリコン(Amicon Centricon)またはセントリプレプ(Centriprep)濃縮機、アミコン細胞攪拌(Amicon stirred-cell)濃縮機、もくしは同等な機器内で濃縮する。
該MBPドメインがFXaによる開裂およびアミロースアフィニティークロマトグラフィーにより該標的ペプチドから分離される場合、該ハイブリッドタンパク中のマルトースを透析により除去する。このような状況の下で、リガンドを透析により除去される速度は結合タンパクの濃度に反比例する(シルハビー(Silhavy)等,1975)。従って、融合タンパク濃度200μg/ml以下で透析し、次いでその後に該融合体を濃縮することが最良の方法である。
D.Fnフラグメント1410-1516の調製
Fnの11.5キロダルトン(kDa)ペプシンである、Fn残基1410-1516に対応するフィブロネクチンフラグメントは、該ペプシン消化由来の生成物がセファデックス(Sephadex)G-75-120(MO州、セントルイスのシグマ社)を使用したゲル濾過クロマトグラフィーにより分離されたことを除き、ピエールシュバッハー(Pierschbacher)等,Cell,1981,26,pp.259-267に記載されたようにして単離した。
ヒトフィブロネクチンは本明細書に前記した方法でヒト血漿から精製した。
6.融合タンパクによるFn/Fg:GPIIb-IIIa相互作用の阻害
本発明の融合タンパクまたはポリペプチドの、GPIIb-IIIaとフィブロネクチンまたはフィブリノーゲンとの間の結合相互作用を阻害する能力は固定化したGPIIb-IIIaに対する競合結合により測定した。
96−ウェルをもつイムロン(Immulon)-2マイクロタイタープレート(ダイナテック−イムロン(Dynatech-Immulon))を、実施例1で調製し、10mMのヘペス(Hepes)、0.15MのNaCl、1mMのCaCl2、1mMのMgCl2を含む溶液中に10μg/mlまで希釈した、RGD-アフィニティー精製したGPIIb-IIIaの溶液50μlで被覆した。
該プレート中のGPIIb-IIIaを4℃にて16時間インキュベートし、次いで未結合物質を該ウエルから除去し、該ウエルを次に同一のバッファー中に溶解した5%BSAを含む150μlで、室温にて1時間透析した。該ウエルを、5mMのヘペス、1mMのMgCl2 1mg/mlのデキストロース、1mg/mlのBSAを含むタイローズ(Tyrode’s)バッファー150μlで3回洗浄する。種々の濃度(4x10-7〜1x10-10M)の50μlの125IFn(125mg/ml)を、競合剤例えば本発明のFnフラグメントの存在下または不在下で添加する。室温にて4時間〜一夜インキュベートする(鉛のシールドで覆った)。
放射性試料を注意して取り出し、5mMのヘペス、1mMのMgCl2、1mg/mlのデキストロース、1mg/mlのBSAを含むタイロード(Tyrode’s)バッファー150μlで3回洗浄する。カンマカウンターで計数し、SDS-PAGE充填バッファー内で沸騰させることにより溶出する。
もう一つの態様においては、非−放射性Fnを放射能の代わりに使用でき、また適当な抗−Fn抗体およびHRP-接合第二抗体と反応させることにより検出できる。この変法を使用した場合、各抗体は洗浄されたプレートで1時間インキュベートされる。該抗−Fn抗体は力価測定されるが、多くの製造業者からのHRP-接合抗体の1:1000希釈物が良好に機能する。放射性Fnを使用する利点は、結合したFn分子の数を特異的活性を基いて測定できることにある。該プスラチックに付着したGPIIb-IIIaの量も定量化され、次いで該結合の化学両論量も決定できる。
関連するアッセイにおいて、GPIIb-IIIaに結合したフィブリノーゲン(Fg)およびその阻害剤はFnの代わりに標識されたFgを使用することを除き、上記と同様にして測定される。
ヒトFgは、カザール(Kazal)等,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.,1963,113,pp.989-994により記載されたグリシン沈殿法によって、新鮮な凍結血漿(これは解凍後即座に10単位/mlのヘバリンで処理された)から精製した。最終的なグリシン沈殿に引き続き、Fgを50mMのトリス-HCl、100mMのNaCl、0.02%のNaN3を含み、pH7.4の溶液に対して透析し、次いで使用するまで-80℃にて保存した。
7.融合タンパクからのFnポリペプチドの再生
融合物のファクターXaによる開裂を、w/wの比で1または2%なる融合タンパク量にて実施する。特定の融合タンパクに依存して、0.1%〜5%なる比の利用も良好である。この反応混合物を室温または4℃にて3時間〜1日インキュベートし得る。同様に特定の融合物に依存して、該融合物を変性して、ファクターXaサイトを開裂可能とすることが必要となる可能性がある。これは6Mのグアニジン塩酸塩溶液中で透析(または6Mまで該塩酸塩を添加)し、次いでファクターXa開裂バッファーに対して透析することにより達成し得る。
必要ならば、該融合タンパクを20mMのトリス-HCl、100mMのNaClを含み、pH8.0の溶液(即ち、ファクターXa開裂バッファー)に対して透析し、かつパイロット実験を少量の該タンパクを使用して実施する。例えば、1mg/mlの融合タンパク20μlを200μg/mlのファクターXa1μlと混合する。
別のチューブ内に、ファクターXaを含まない融合タンパク5μlを入れる。該チューブを室温にてインキュベートする。2、4、8および16時間後に、該ファクターXa反応物5μlを採取し、5μlの2×SDS-PAGE試料バッファーを添加し、氷上で保存する。5μl融合タンパク−5μl2×試料バッファーの試料を調製する。この試料を5分間沸騰させ、SDS-PAGEゲル上で泳動させる。
該パイロット実験は開裂すべき該融合タンパクの部分に対して正確にスケールアップし得る。少量の純粋な融合物の試料を標準として残し、SDS-PAGEによる競合開裂を検討する。
該融合タンパクを変性するために、該融合物を20mMのトリス-HCl、6Mのグアニジン塩酸塩を含み、pH8.0の溶液に対して透析する。更に、20mMのトリス-HCl、100mMのNaClを含み、pH8.0の溶液に対して透析する。徐々に減少する量のグアニジン塩酸塩を含むこのバッファーに対する段階的な透析は該融合タンパクの沈殿の防止を可能とする。各段階において、該グアニジンの濃度を半分にすることが有利である。0.1M幅を必要とする場合が報告されている。
8.実施例1〜7の考察
血小板インテグリン(integrin)、つまりGPIIb−IIIaとの相互作用に関与するフィブロネクチンの部位を確認するために、モノクローナル抗フィブロネクチン抗体を生成させ、高度に精製したGPIIb−IIIaへのフィブロネクチン結合を阻害するそれらの能力について、実施例6に記載した分析法を用いてスクリーニングした。かかる相互作用を阻害できる3種の抗体をコントロールモノクローナル(Mab15)と共に図1Aに示した。この図において、添加した抗体の量を横軸に取り、精製GPIIb−IIIaへのフィブロネクチンの結合率(%)(50nMで存在するフィブロネクチン)を縦軸に取った。
図1B〜1Dは、実施例4に記載した交差競合実験を示すものであって、放射標識抗体が上方の棒グラフに示されており“コールド”競合抗体が下方の棒グラフに示されている。その結果は、MAb FnI−8が該他の抗体とは異なるエピトープを認識すること、及びFnI−11及び16が互いに交差競合すること、従って同じエピトープを認識することを示している。
ここに記載した種々のFn断片中に存在するFnの領域に結合するMAbの能力を測定することによって、MAb FnI−8、FnI−11及びFnI−16のエピトープを更に特徴付けた。その分析法では、発現された融合タンパク質、ペプシン断片、又は融合タンパク質を直接発現する培養プラスミド含有コロニーをニトロセルロースの上に載せ、不動化Fn断片を形成することによって直接結合性を測定した。その後、該ニトロセルロースをELISA分析法のためにここに記載したMabと接触させて、該Mabを該不動化Fn断片に結合させる。先に記載したパーオキシダーゼ標識第2抗マウス抗体を用いて結合したMabを検出する。その結果を表2に示す。
上記の原核性発現ベクターλgt11を用いて、細菌内でフィブロネクチンの種々の断片をβ−ガラクトシダーゼ(βgal)又はマルトース結合タンパク質(MBP)融合タンパク質のいずれかの形で発現させることによって、抗Fnモノクローナル抗体FnI−8、FnI−11及びFnI−16のエピトープをマッピングした。断片Fn(1410〜1516)の場合、該断片はFnのペプシン消化体であって融合タンパク質ではない。表2は、実施例5に記載したようにして調製した種々のFn断片に関するMab免疫反応パターンを示すものである。全てのモノクローナルは、10番目のIII型繰り返し体内のRGD配列(配列番号2の残基331〜334)を欠いた全cDNA発現タンパク質と反応した(示していない)。それらは、RGDを含有しない残基1235〜1436を含有する断片とも反応した。全ての阻害性抗体は、Fn残基1351〜1436、1317〜1653及び1359〜1653を有するFn断片を含有する融合タンパク質とも反応した。これらデータは、GPIIb−IIIaへのフィブロネクチンの結合を阻害するフィブロネクチンに対する一定のモノクローナル抗体が、カルボキシ末端がRGD配列の少なくとも50アミノ酸上流で始まる断片と反応することを示すものである。
加えて、MAb FnI−11でもFnI−16でもなくFnI−8が、Fn残基1380〜1653又は1410〜1516を含有するFn断片と免疫反応した。この後者の結果は、1410〜1516及び1235〜1436両方とのFnI−8の免疫反応性を考慮するとき、FnI−8が他の2種のMAbとは異なる最低でもFn残基1410〜1436を含むエピトープを有することを示すものである。
MAb FnI−11及びFnI−16それぞれは、少なくとも1359〜1653及び1235〜1436両方とのそれぞれのMAbの免疫反応性を考慮することによって決定される、それらの免疫反応性を規定するFn残基1359〜1436を含む最小のエピトープを有する。
ここで規定する阻害性MAbのどれも、Fn残基1163〜1379を有するFn断片とは免疫反応しない。
GPIIb−IIIaと相互作用しかつフィブロネクチン結合を阻害するフィブロネクチンの領域を更に特徴付けるために、Fn残基1235〜1436をコードする塩基を含有する構築体を、マルトース結合タンパク質との融合タンパク質として、上記のプラスミドベクター内で発現させた。この融合タンパク質は、架橋アミロースカラムで容易に精製され、精製GPIIb−IIIaへのフィブロネクチン結合を阻害するこの融合タンパク質の能力を実施例6に記載したようにして評価した。
図3に示した結果において、未標識フィブロネクチン(中抜き三角)、ペプシン断片、即ち1410〜1516(塗り潰した三角)、フィブロネクチン残基1235〜1436を含有する融合タンパク質、即ちFn(1235〜1436)−MBP(中抜き四角)、及びFn(1359〜1436)(塗り潰した四角)が種々の濃度で精製GPIIb−IIIaへのフィブロネクチン結合を阻害した。これに対して、コントロールのウシ血清アルブミン(BSA;中抜き丸)もMBP(塗り潰した丸)もGPIIb−IIIaへのFn結合を有意に阻害しなかった。重量基準で、Fn(1235〜1436)−MBP物質は、無傷フィブロネクチンの約4分の1の強さであったが、それは挿入体コードポリペプチドに加えて多数の不純物を有している。比較的、BSAもマルトース結合タンパク質も単独では阻害活性を欠いた。
阻害性物質の性質を更に評価するために、融合タンパク質とマルトース結合タンパク質崩壊産物との混合物をモノクローナルFnI−16イムノアフィニティカラムに通して低pH+6M尿素で溶出した。GPIIb−IIIaへのフィブロネクチン結合を阻害する能力について、開始画分、通過画分、及び結合画分と溶出画分を分析し、SDS−PAGEクマシーブルー染色により分析し、モノクローナル抗体FnI−16でウェスタンブロットを行った。融合タンパク質混合物の抗フィブロネクチンモノクローナル抗体カラム通過により、阻害活性の定量的除去がもたらされた。この阻害活性は低pH+尿素溶出液中に一部回収することができた。これに対して、無関係のモノクローナル抗体を通過してもそのような作用を有さなかった。染色したゲルの検査により、抗フィブロネクチンアフィニティカラムに通したことにより2本の高分子量バンドが出発物質から除去されたことが示され、これはそのバンドが該モノクローナル抗体に反応性であることを示すものである。
フィブロネクチン残基1235〜1436を含有する挿入体コードポリペプチドがGPIIb−IIIaに結合するかどうかを確認するために、精製GPIIb−IIIaでコーティングしたマイクロタイターウェルの放射標識融合タンパク質試料に結合する能力を確認した(表3)。加えて、該不溶化GPIIb−IIIaに結合した放射標識物質を回収し、SDS−PAGE、続いてオートラジオグラフィーより分析した。放射標識Fn融合タンパク質は不溶化GPIIb−IIIaに結合した。そして、その結合性は特異的であり、モノクローナル抗体FnI−16及びEDTAにより阻害された。これに対して、放射標識マルトース結合タンパク質を単独で用いたときはそのような結合性はなかった。モノクローナル抗体(Mab16.12)及びEDTAにより阻害性であるフィブロネクチンの特異的結合性も認められた(表3)。該単離タンパク質産物は、融合タンパク質を含有する挿入体コードポリペプチドとマルトース結合タンパク質崩壊産物との混合物であった。挿入体コードポリペプチドを含有するバンドだけが、不溶化GPIIb−IIIaに結合し、その結合性はEDTA及びモノクローナル抗体FnI−16のいずれによっても阻害性であった。加えて、BSA被覆ウェルへの結合は認められなかった。これに対して、マルトース結合タンパク質単独では、GPIIb−IIIa被覆ウェルに特異的に結合できなかった。
GPIIb−IIIaへのフィブリノーゲン結合を阻害する該融合タンパク質の能力も評価した。該融合タンパク質は、GPIIb−IIIaへのフィブリノーゲン結合の有効な阻害物質であることが認められたのに反して、マルトース結合タンパク質は有効な阻害物質とは認められなかった。該融合タンパク質は、GPIIb−IIIaへのフィブリノーゲン(Fg)結合を阻害することも認められた。
融合ポリペプチドの形態にある本発明のFn誘導ポリペプチドの直接結合性を、プロー(Plow)ら,J.Biol.Chem.,256:9477-9482(1981)に記載された血小板結合測定法を用いる血小板での直接結合分析法において、Fn(1359〜1436)−MBPを用いて評価した。トロンビンで、及び血小板刺激を阻害するEDTA又はMAbの存在下でトロンビンで刺激された休止状態の血小板を、125Iで標識したリガンド、つまり上の融合タンパク質、フィブロネクチン又はコントロールMBPのいずれかと混合した。その結果を図4に示す。該結果は、該融合タンパク質が刺激された血小板にだけ結合することを証明している。
要するに、これらデータは、該挿入体コードポリペプチドが、GPIIb−IIIaに特異的に結合する能力、つまりフィブリノーゲン及びフィブロネクチンの結合を阻害する能力を有することを直接に示しており、かくして血小板凝集の如き細胞接着現象の阻害物質であることを予示している。この仮説を試験するために、細胞とフィブロネクチンとの相互作用をここに記載した融合タンパク質の存在下で試験した。
かくして、挿入体コードポリペプチドがGPIIb−IIIaに直接結合するという事実は、創傷治癒、人工器官移植、又は内皮移植片の接種の如き臨床的状況において、細胞付着を促進するためにそれを単独で又はRGD配列と連携して用いることができることを示している。
9.インテグリンレセプターGPIIb−IIIaへのフィブロネクチン及びフィブリノーゲン結合の新規なペプチド阻害物質の特徴付け
実施例8に示したように、残基1235〜1436にわたるフィブロネクチン(Fn)中のFn断片は、インテグリンレセプターGPIIb−IIIa結合部位を含有した。該断片は、実施例8に示したように、該レセプターへのフィブロネクチンとフィブリノーゲン両方の結合を阻害した。該Fn断片内の最小レセプター結合領域を確定するために、合成ポリペプチドを作って、該レセプターに結合して該レセプターへの標識リガンドの結合を競合的に阻害するそれらの能力について評価する。該最小レセプター結合部位の特徴付けのためのアプローチを以下に記載する。
A.合成ポリペプチドの調製
残基1235〜1436でヒトFnの領域にまたがる種々の長さの合成ポリペプチドを、モデル430自動ペプチド合成装置(アプライド・バイオシステムズ,フォスターシティ,CA)で用いれるように適応させたメリフィールド(Merrifield),Adv.Enzymol.,32:221-296(1969)により記載された典型的な固相法を用いて、スクリップス・クリニック・アンド・リサーチ・ファンデーション・ペプチド・シンセシス・コア・ファシリティ(ラジョラ,CA)で調製する。調製したポリペプチド樹脂をフッ化水素で切離し、抽出し、そしてマサチューセッツ州ミルフォードのウォーターズ社により製造された逆相C1Bカラムを用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により純度を分析する。
B.GPIIb−IIIa特異性レセプター結合ポリペプチドの特徴付け
(1)Fn誘導ポリペプチドによる精製GPIIb−IIIaへのFn結合の阻害
実施例9aで合成したポリペプチドを、精製GPIIb−IIIaインテグリンレセプターへのFnの結合を競合的に阻害するそれらの能力について評価する。この競合分析法は、カロー(Charo)ら,J.Biol.Chem.,266:1415-1421(1991)に記載されているようにして行う。この競合分析法は、まず、96ウェルマイクロタイタープレート(イムンロン,ダイナテック)の個々のウェルの中に、10mM HEPES、150mM NaCl、1mM CaCl2及び1mM MgCl2からなるHEPES−食塩水緩衝液(pH7.4)で希釈した、実施例1で調製した10μg/mlの精製GPIIb−IIIaを混合することにより行う。このプレートを16時間4℃に維持して、該精製レセプターをウェルの壁に吸着させる。次いで、実施例1に記載したようにして調製した修正タイロード緩衝液で該レセプター被覆ウェルを2回洗浄して該レセプター被覆ウェルからあらゆる非結合レセプターを除去する。修正タイロード緩衝液中に溶解した5%BSAを各ウェルの中に混合して該プレートを2時間室温に維持することによって、該マイクロタイターウェル上のレセプターに占められていない部位を遮蔽する。
遮蔽用溶液を除去して該遮蔽ウェルを上記のように洗浄した後、0.1〜200μMの濃度の実施例9aで調製したポリペプチドの存在下で、修正タイロード緩衝液中のビオチニル化Fnの10nM溶液50μlを各ウェルに混合して、固−液相レセプタータンパク質混合物を形成する。ポリペプチド不存在下で混合したFnをこの競合分析法の正のコントロールに供した。精製Fnを実施例2に記載したように調製する。
次いで、生成した精製Fnをデイル(Dale)ら,Blood,77:1096-1099(1991)に記載されたようにしてビオチニル化する。簡単に説明すると、ビオチニル化のために、まず、0.1M NaClを含有する0.1M NaHCO3中にpH8.0でFnを透析し、100,000×gで4℃で30分間遠心分離してあらゆる沈澱物を除去する。タンパク質濃度をpH8.5の50mMホウ酸ナトリウム中0.5mg/mlに調節する。N−ヒドロキシコハク酸イミドビオチン(NHS−ビオチン;0.5mg/mgタンパク質)(ピアス・バイオケミカルズ,ロックフォード,IL)を混合することによりビオチニル化反応を開始し、該混合物を2時間室温に維持してビオチニル化Fnを形成する。次いで、生成したビオチニル化Fnをトリス−HCl−食塩水に対して透析して残留塩を除去する。
該Fnペプチド混合物をGPIIb−IIIa被覆ウェル内に室温で2時間維持してビオチニル化Fnを該レセプターに結合させる。この維持時間が経過した後、反応したウェルを上記のように洗浄して、ビオチニル化ホースラディッシュパーオキシダーゼH(Hrp)(シグマ,セントルイス,MO)に結合した0.1mlアビジンを1:2000の希釈度で混合してアビジン−ビオチニル化Fn混合物を形成することによって、GPIIb−IIIaに結合したビオチニル化Fnの量を測定する。該混合物を室温で6時間維持してアビジンHrp−ビオチニル化Fn複合体を形成させる。過剰のアビジンHrpを上記のように洗浄することによって除去し、実施例3aに記載した、CP緩衝液中に4.0mg/mlo−フェニレンジアミン及び0.012%(v/v)過酸化水素を含有する新たに調製した50μlの色素性基質溶液を混合することによって、精製GPIIb−IIIaに結合したビオチニル化Fnの存在を検出する。該発色反応混合物を20℃で10分間維持した後、該反応を2N H2SO4を混合して停止させ、該停止した反応液について実施例3aに記載したようにして吸光度を測定する。
競合相手のポリペプチドの不存在下で精製GPIIb−IIIaに結合したビオチニル化Fnの490nmの吸光度で測定した量は、2.70の吸光度をもたらす。残基1410〜1436におけるFnアミノ酸残基配列に対応する、配列番号(2:248〜274)に示したアミノ酸残基配列を有するポリペプチドは、精製GPIIb−IIIaへのFnの結合を競合的に阻害する。約200μMポリペプチド濃度で最大の阻害が得られる。
配列番号(2:197〜274)、(2:73〜274)及び(2:217〜274)の式に従うポリペプチドも実施例9aにおけるように調製し、200μMポリペプチドで試験すると、GPIIb−IIIaへのFn結合を阻害する。このように、配列番号(2:248〜274)及び(2:197〜274)により規定されるポリペプチドは、GPIIb−IIIaへのFn又はFg結合を阻害する本発明のFn上で2つの非RGD部位を規定する。
説明のために本発明をかなり詳細に記載し、また明瞭さと理解のために実施例を記載してきたが、添付の請求項の範囲内で一定の変更を行えることは明らかである。
配列表
(1)一般的情報:
(i)出願人:ジンスベルグ,マーク H
プロー,エドワード F
ボウディッチ,ロナルド
(ii)発明の名称:細胞付着を促進するための新規なポリペプチド
(iii)配列の数:4
(iv)通信連絡先:
(A)受信人:オフィス・オブ・パテント・カウンセル,ザ・スクリプス・リサーチ・インスティチュート
(B)通り:10666ノーストレイ・パインズロード,TPC8
(C)市:ラジョラ
(D)州:CA
(E)国:合衆国
(F)ZIP:92037
(v)コンピューター読み取り可能型:
(A)媒体タイプ:フロッピィディスク
(B)コンピューター:IBM PC適合種
(C)作動システム:PC−DOS/MS−DOS
(D)ソフトウェア:パテントイン リリース#1.0,
バージョン#1.25
(vi)現出願データ
(A)出願番号:PCT/US92
(B)出願日:1992年12月4日
(C)分類:
(vii)先行出願データ
(A)出願番号:US 07/620,668
(B)出願日:1990年12月3日
(vii)先行出願データ
(A)出願番号:US 07/725,600
(B)出願日:1991年7月3日
(vii)先行出願データ
(A)出願番号:US 07/803,623
(B)出願日:1991年11月27日
(vii)先行出願データ
(A)出願番号:US 07/804,224
(B)出願日:1991年12月5日
(viii)弁理士/代理人情報:
(A)氏名:フィッティング,トーマス
(B)登録番号:34,163
(C)整理/ドケット番号:SCR1242P
(ix)電気通信情報
(A)電話:619−554−2937
(B)テレファックス:619−554−6312
(2)配列番号:1の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:606塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:No
(iv)アンチセンス:No
(ix)配列の特徴:
(A)名称/キー:CDS
(B)存在位置:1...606
(xi)配列;配列番号:1:
(2)配列番号:2の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:491アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(iii)ハイポセティカル:No
(iv)アンチセンス:No
(v)フラグメント型:internal
(ix)配列の特徴:
(A)名称/キー:Region
(B)存在位置:1...491
(D)他の情報:/注意−“配列表記載の残基の位置1〜491は位置1163〜1653からの天然FNに対応する”
(xi)配列;配列番号:2:
(2)配列番号:3の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:7アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(iii)ハイポセティカル:No
(iv)アンチセンス:No
(v)フラグメント型:internal
(xi)配列;配列番号:3:
(2)配列番号:4の情報:
(i)配列の特性:
(A)長さ:96塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:環状
(ii)配列の種類:DNA(genomic)
(iii)ハイポセティカル:No
(iv)アンチセンス:No
(xi)配列;配列番号:4:
Claims (12)
- GPIIb−IIIaへのフィブロネクチン結合を阻害し、かつ配列番号:2の残基217〜274で示される式により表されるアミノ酸残基配列を含むが、アミノ酸残基配列RGDを含まない、200アミノ酸残基以下の長さを有するポリペプチド。
- 前記ポリペプチドが、配列番号:2の残基197〜274で示される式により表されるアミノ酸残基配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
- GPIIb−IIIaへのフィブロネクチン結合を阻害し、かつ、配列番号:2の残基73〜274で示される式により表されるアミノ酸残基配列を含む、ポリペプチド。
- GPIIb−IIIaへのフィブロネクチン結合を阻害し、式:B−X−Zにより表されるアミノ酸残基配列からなるポリペプチドであって、
XがヒトFnの残基1379〜1436におけるアミノ酸残基配列(配列番号:2:217〜274)であり、
Bが長さ150残基以下のアミノ酸のNH2末端基又はアミノ末端配列であり、
Zが長さ150残基以下のアミノ酸のCOOH基又はC末端配列であり、
X−Zが、RGDを含むヒトフィブロネクチンの領域と一致しない、
ポリペプチド。 - 前記ポリペプチドが、配列番号:1で示される配列を含むアミノ酸残基配列を含む、請求項4記載のポリペプチド。
- GPIIb−IIIaへのフィブロネクチン結合を阻害し、かつ、配列番号:2の残基217〜274で示される配列を含むが、アミノ酸配列RGDを含まない、アミノ酸残基配列を含む融合タンパク質。
- 前記タンパク質が、配列番号及び対応する残基位置をカッコ内に示した(2:197〜274)及び(2:73〜274)からなる群から選ばれる式により表されるアミノ酸残基配列を含む、請求項6記載の融合タンパク質。
- 請求項1又は4記載のポリペプチドをコードする核酸を含むベクター。
- 支持体に細胞を付着させる方法であって、
(a)GPIIb−IIIaをその表面上で発現する細胞を、固体マトリックスに貼り付けた請求項1又は4記載のポリペプチド又は請求項6記載の融合タンパク質を含む支持体に接触させ:そして
(b)前記GPIIb−IIIaが前記支持体に結合するのに充分な予め決めた時間、
前記接触を維持し、それによって前記細胞を前記支持体に付着させる方法。 - (1)GPIIb−IIIaへのフィブロネクチンの結合を阻害し、かつ
(2)下記(i)及び(ii)とは免疫反応するが、下記(iii)とは免疫反応しない
抗体分子を含む抗体組成物。
(i)フィブロネクチン
(ii)配列番号:2の残基73〜274で示される配列からなるペプチド
(iii)配列番号:2の残基1〜217で示される配列からなるペプチド - 前記抗体分子がモノクローナル抗体分子である、請求項10記載の抗体組成物。
- 請求項1又は4記載のポリペプチドをコードする核酸。
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