JP4270370B2 - グルコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子およびその利用 - Google Patents

グルコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子およびその利用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グルコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子およびその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
花の色や果実の色などに見られるように、自然界には多くの植物性色素が存在するが、これらは化学構造によってカロチノイド、ベタシアニン及びフラボノイドに分類できる。その中でも多種多様な花の色のうち、赤色、赤紫色、紫色、青色のほとんどはフラボノイドの一種であるアントシアニンにより発色していることが古くより知られている。アントシアニンは花や紅葉に存在する赤色色素で植物界に最も広く分布し、現在では食品添加物としても広く用いられており、最近、抗酸化効果等の生理的機能を有することも報告されている(非特許文献1および2)。
【0003】
アントシアニンの生合成は、主にペチュニアやキンギョソウ等を用いて研究されてきた(非特許文献3〜5)。アントシアニンは一次代謝系におけるフェニルアラニンをその原料とし、フェニルプロパノイド合成系とそれに続くフラボノイド(アントシアニン)合成系を通じて生成される。このアントシアニン生合成経路の解明により、従来の交配育種の手法や新規遺伝子導入などの分子生物学的な手法を用いて、新しい花色を有する新規花品種の育成がなされている(非特許文献6)。
【0004】
黄色や橙色の花色を呈する色素は、カロチノイド、ベタキサンチン、そしてカルコン類やオーロン類を中心とする黄色フラボノイド色素、の三つのグループに分類される。しかし黄色フラボノイド色素を除き、その生合成経路には未だ不明な点が多く、遺伝学的知見はもちろん、化学合成的知見も未だ得られていない。一方、黄色フラボノイド色素は、アントシアニンの生合成経路における中間代謝産物として知られ、特にカルコン類については強い黄色を呈すこと及びアントシアニンと共存することで橙色を示すことから(非特許文献7)、新規な黄色または橙色花品種の育成への利用が有望視されている(非特許文献8)。またペチュニアにおいては、カルコン還元酵素を用いてカルコンから6’-デゾキシカルコンへのフラボノイド生合成を変化させることで黄色の花が作出されている(非特許文献9)。しかし、これまでカルコン類を利用した分子生物学的手法による黄色品種または橙色品種の作出に成功した例は知られていない。
【0005】
カーネーション(Dianthus caryophyllus)は植物学的分類上、中心子目ナデシコ科ナデシコ属に属する。カーネーションにおいては黄色の花を持つ品種は限られているが、黄色の花を持つカーネーションの花弁細胞の液胞には、主要黄色フラボノイド色素としてカルコノナリンゲニン2'-O-グルコシド(Chalconnaringenin 2'-O-glucoside;以下Ch 2'Gと称する)が含まれている(非特許文献10)。アントシアニン生合成経路の中間産物であるp-クマロイル-CoAと、マロニル-CoAを基質としてCHS(chalcon syntase)によりカルコン(4,2',4',6'-tetrahydroxychalcon;以下カルコンと称する)が合成され、その後、配糖体化酵素(glucosyltransferase;以下GTと称する)であるカルコン2'-O-グルコシルトランスフェラーゼ(Chalcon 2'-O-glucosyltransferase)(以下、Ch 2'GTと称する)によってカルコンの2’位が配糖化されてCh 2'Gとなり、液胞に運搬され蓄積されると考えられている(非特許文献11および12)。しかし、Ch 2'GTの存在は未だ確認されていない。
【0006】
黄色カーネーションの種類が少ないのは、カーネーションではそのアントシアニン生合成経路において、カルコンがCHI (chalcone isomerase)遺伝子やDFR (dihydroflavonol 4-reductase)遺伝子の作用を受け、最終的にアントシアニンが生成される経路が主経路であるためと考えられる。従ってカーネーションの花が黄色を呈するためには、CHI遺伝子並びにDFR遺伝子にトランスポゾン (dTdic1) が挿入されるといった理由により遺伝子破壊が生じなければならず、さらにこれによって過剰に余った中間産物であるカルコンがCh 2'GTによって配糖体化されることが必要だと想定される(非特許文献8)。配糖体化が必要である理由のひとつとして"解毒"ということがあげられる。カルコンは元々油溶性物質であり、さらにこれが配糖体化されないままでは植物の生育、花の形成にとっては有害であるためである。つまり、このカルコンに配糖体化する酵素が存在しない花においては、黄色を呈しない、もしくは花が形成されないと考えられている。このことからCh 2'GTを利用することができれば、黄色花を持つ新品種の作出に有効であると考えられているがこれまでのところ実現には至っていない。
【0007】
一般に、GTはフラボノイド生合成経路において大きな役割を果たす。GTは基質分子の水酸基がUDP-グルコース(uridine-5'-diphosphoglucose)へと転移する反応を触媒する働きを持つ。3-デオキシ型を除くすべてのアントシアニジンは、3-水酸基の位置で配糖体化され、さらに多くの場合5-水酸基の位置で配糖体化された後、アントシアニンとなる。アントシアニジンを配糖体化するアントシアニングルコシルトランスフェラーゼ(anthocyanin glucosyltransferase)は、多くの植物種に存在することがわかっている(例えば、非特許文献13〜15)。
【0008】
GTをコードする遺伝子に関しては、3-水酸基を配糖体化する酵素、3GTをコードする3GT遺伝子が、Acと呼ばれるトランスポゾンタギングによってトウモロコシ(Zea mays)から初めて単離され(非特許文献16)、続いてその他の植物種からも単離が行なわれている(例えば、非特許文献17および18)。一方、アントシアニン5GT遺伝子がディファレンシャルスクリーニング法によって、シソ(Perilla frutescens)から最初に単離された(非特許文献19)。またフラボノイド生合成経路の中間産物であるケンフェロール、クェルセチンに配糖化するフラボノイドグルコシルトランスフェラーゼ(flavonoid glucosyltransferase)遺伝子も単離されている(非特許文献20)。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のゲノム内には、約110の個別のGT配列を含むことが示されており、機能的に特徴付けされたのはごくわずかである(非特許文献21および22)ことからも配糖化酵素の機能が多岐にわたっていることが示唆される。そしてこれまでに、アントシアニン生合成経路の中間産物であるカルコンの2’位を配糖体化するCh 2'GTをコードする遺伝子は単離されていない。
【0009】
尚、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
【非特許文献1】
Igarashiら、Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi, 36(10):852, 1989
【非特許文献2】
Tamuraら、J. Agric. Food Chem., 42:1612, 1994
【非特許文献3】
Martinら、Plant J, 1:37-49, 1991
【非特許文献4】
van der Krolら、Plant Cell, 2:291-299, 1990
【非特許文献5】
Holtonら、Plant J, 4:1003-1010, 1993
【非特許文献6】
Forkmann and Martens、Curr Opin Biotechnol, 12(2):155-60, 2001
【非特許文献7】
北川ら、園学雑,70 別2:205,2001
【非特許文献8】
Itohら、Plant Cell Physiol, 43:578-585, 2002
【非特許文献9】
Davisら、Plant Journal 13(2):259-266 Jan., 1998
【非特許文献10】
Forkmann and Dangelmayr、Biochem Genet, 18(5-6):519-27, 1980
【非特許文献11】
Gong Zら、Plant Mol Biol, 35(6):915-27, 1997
【非特許文献12】
Nakayama Mら、Phytochemistry, 55(8):937-9, 2000
【非特許文献13】
Doら、Plant Science, 112:43-51, 1995
【非特許文献14】
Ogataら、J. Plant Res, 111:213-216, 1998
【非特許文献15】
Ogataら、J. Plant Physiol, 158:709-714, 2001
【非特許文献16】
Fedoroffら、Cold Spring Harb Symp Quant Biol, 49:339-45, 1984
【非特許文献17】
Tanakaら、Plant Cell Physiol, 37:711-716, 1996
【非特許文献18】
Fordら、J Biol Chem, 273:9224-9233, 1998
【非特許文献19】
Yamazakiら、J Biol. Chem, 274:7405-7411, 1999
【非特許文献20】
Matoら、Plant Cell Physiol, 39(11):1145-55, 1998
【非特許文献21】
Jacksonら、J Biol Chem, 276:4350-4356, 2001
【非特許文献22】
Limら、J Biol Chem, 276:4344-4349, 2001
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、Ch 2'GTをコードする遺伝子とその利用方法、特に植物の花色を改変する方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、黄花をつけるカーネーション「A66」および橙色花をつけるカーネーション「8358-01」の花蕾中の花弁より全RNAを抽出した後、mRNAを調製し、cDNAを合成した。Ch 2'GT遺伝子の候補となるcDNAは、縮重プライマーによる PCRスクリーニングによって単離した。得られたPCR産物をベクターに導入した後、シークエンス解析を行なった。その結果、遺伝子の相同性からGTをコードすると思われるcDNAを26種類単離した。次いで、この全長を5'および3'RACEによって単離した。これらをベクターにクローニングした後、大腸菌に導入し、培養した後、ホモジナイザーで破砕した。これを遠心し、上澄み液を酵素液として活性の測定に用いた。その際反応基質としてはアントシアニンの生合成経路の中間代謝産物などを用いた。この酵素液について、TLC分析、HPLCおよび14CUDP-グルコースを用いた液体シンチレーターによる分析を行った。その結果、カルコノナリンゲニンを基質とし、Ch 2'Gを生成するCh 2'GT は二種類存在することがわかった。よって、これらのCh 2'GTをコードするDNAを利用することで、植物の花を改変できる。
【0012】
即ち、本発明は、以下の〔1〕〜〔21〕を提供するものである。
〔1〕 以下の(a)〜(d)のいずれかに記載のグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNA。
(a)配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1または3に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA。
(d)配列番号:1または3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
〔2〕 グルコシルトランスフェラーゼが、カルコン 2'-O-グルコシルトランスフェラーゼである、〔1〕に記載のDNA。
〔3〕 カーネーション由来である、〔1〕または〔2〕に記載のDNA。
〔4〕 植物においてカルコン2'-O-グルコシドを生産させるために用いる、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNA。
〔5〕 植物の花色を改変するために用いる、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNA。
〔6〕 植物の花色を黄色〜橙色に改変するために用いる、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNA。
〔7〕 〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAからコードされるタンパク質。
〔8〕 〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
〔9〕 〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNA、または〔8〕に記載のベクターを保持する形質転換植物細胞。
〔10〕 〔9〕に記載の形質転換植物細胞を含む形質転換植物体。
〔11〕 花色が改変した、〔10〕に記載の形質転換植物体。
〔12〕 花色が黄色〜橙色に改変した、〔10〕に記載の形質転換植物体。
〔13〕 〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
〔14〕 〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の形質転換植物体の繁殖材料。
〔15〕 〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の形質転換植物体の切り花。
〔16〕 〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載の形質転換植物体の製造方法であって、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAまたは〔8〕に記載のベクターを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む方法。
〔17〕 形質転換植物体が、花色が改変した形質転換植物体である、〔16〕に記載の方法。
〔18〕 形質転換植物体が、花色が黄色〜橙色に改変した形質転換植物体である、〔16〕に記載の方法。
〔19〕 〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させることを特徴とする、植物の花色を改変する方法。
〔20〕 〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させることを特徴とする、植物の花色を黄色〜橙色に改変する方法。
〔21〕 植物がカーネーションである、〔16〕〜〔20〕のいずれかに記載の方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、新規な2つのグルコシルトランスフェラーゼ(DcGT2(D)およびDcGT3(H)と命名)を単離した。本発明で単離されたDcGT2(D)およびDcGT3(H)のcDNA配列をそれぞれ配列番号:1および3に、これらのDNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号:2および4に示す。
【0014】
本発明者らが単離したDcGT2(D)およびDcGT3(H)は、カルコンからCh 2'Gへの変換反応を触媒する(図1)。さらに、DcGT2(D)は、シアニジンからシアニジン3-O-グルコシドへの変換反応およびシアニジン5-O-グルコシドへの変換反応、シアニジン3-O-グルコシドからシアニジン3,5-O-グルコシドへの変換反応を触媒する。
【0015】
すなわち、本発明者らが単離したDcGT2(D)およびDcGT3(H)は、Ch 2'GTとしての活性を有し、DcGT2(D)は、シアニジン3-O-グルコシルトランスフェラーゼおよびシアニジン5-O-グルコシルトランスフェラーゼとしての活性も有する。
【0016】
本発明は、以上の知見に基づき、これら2つのグルコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子およびその利用法を提供するものである。
【0017】
本発明において、グルコシルトランスフェラーゼとは、カルコン、アントシアニジン骨格あるいはアントシアニン骨格を持つ化合物を配糖体化する酵素を意味する。
【0018】
本発明のグルコシルトランスフェラーゼを利用することで、Ch 2'G、またはアントシアニジン骨格を有する化合物の、3-O-グルコシド化合物および5-O-グルコシド化合物が合成できる。本発明のグルコシルトランスフェラーゼを利用して合成された化合物は、着色剤として利用できる。
【0019】
また、本発明のグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNAを使用することによって、植物においてCh 2'Gを生産できる。Ch 2'Gは、植物の花色を黄色に発色させる色素であるから、本発明のグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNAを使用することで、植物の花色を黄色に改変できる。またCh 2'Gは、その他の色素の共存下において、植物の花色を様々な色に発色させる。例えばCh 2'Gは、アントシアニンの共存下において、植物の花色を橙色に発色させる。よって、本発明のグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNAを利用することで、植物の花色を改変することができる。改変後の色の色相としては、好ましくは黄色〜橙色の範囲の色相、より好ましくは黄色または橙色が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、改変後の色の明度および彩度は特に制限されるものではない。
【0020】
本発明におけるグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNAとしては、例えば配列番号:1または3に記載の塩基配列のコード領域を含むDNAや配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
【0021】
また、本発明は、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを包含する。このようなDNAの配列は、配列番号:1または3に記載の塩基配列と、配列全体で少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を示す。また、このようなDNAからコードされるタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列と、配列全体で少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を示す。
【0022】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAが由来する生物種としては、特に制限はないが、好ましくは植物である。該植物としては、例えばカーネーション、ボタン、ダリア、アスター、アサガオ、ムギワラギク、シクラメンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と構造的に類似したタンパク質(被検タンパク質)が、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質であるか否かは、例えば、被検タンパク質がカルコンからCh 2'Gへの変換反応を触媒するか否か、または、被検タンパク質をコードするDNAが導入された植物の花色が改変する(好ましくは黄色〜橙色、より好ましくは黄色または橙色に改変する)か否か、を検討することで確認できる。また、被検タンパク質が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質であるか否かは、例えば、被検タンパク質がアントシアニジンからアントシアニン3-O-グルコシドおよびアントシアニン5-O-グルコシドへの変換反応を触媒するか否かを検討することで確認できる。
【0024】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAには、例えば、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする変異体、誘導体、アリル、バリアントおよびホモログが含まれる。このようなアミノ酸の変異は自然界においても生じうる。変異するアミノ酸数は、アミノ酸が付加、欠失もしくは置換されるアミノ酸残基の部位などによって異なるが、好ましくは120個以内、より好ましくは3〜50個、さらに好ましくは3〜30個程度である。
【0025】
また、変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。
【0026】
あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸の置換により修飾されたアミノ酸配列を有するタンパク質がその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433、Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413、Bowie et al., Science (1990) 247, 1306-1310)。
【0027】
また、あるタンパク質と機能的に同等なタンパク質を調製するための、当業者によく知られた方法としては、タンパク質に変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488-492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763-2766)などを使用できる。
【0028】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列に複数個のアミノ酸残基が付加されたタンパク質には、これらタンパク質を含む融合タンパク質が含まれる。融合タンパク質は、これらタンパク質と他のタンパク質とが融合したものであり、本発明に含まれる。融合タンパク質を作製するには、例えば、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAと他のタンパク質をコードするDNAをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよい。
【0029】
本発明のタンパク質との融合に付される他のタンパク質としては、特に制限はない。また、本発明のタンパク質との融合に付される他のペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210)、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-mycの断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag、E-tag、SV40T 抗原の断片、lck tag、α-tubulinの断片、B-tag、Protein Cの断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明のタンパク質との融合に付される他のタンパク質としては、例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。市販されているこれらタンパク質をコードするDNAを本発明のタンパク質をコードするDNAと融合させ、これにより調製された融合DNAを発現させることにより、融合タンパク質を調製することができる。
【0030】
配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを調製するために、当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Southern EM: J. Mol. Biol. 98: 503, 1975)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki RK, et al: Science 230: 1350, 1985、Saiki RK, et al: Science 239: 487, 1988)を利用する方法が挙げられる。すなわち、本発明のグルコシルトランスフェラーゼのcDNAの塩基配列(配列番号:1または3)、または、その一部をプローブとして、また、配列番号:1または3に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、カーネーションや他の植物からグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNAと高い相同性を有するDNAを単離することは、当業者にとって通常行い得ることである。このように、ハイブリダイゼーション技術やPCR技術によって単離し得るグルコシルトランスフェラーゼと同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAもまた、本発明のグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNAに含まれる。
【0031】
このようなDNAを単離するためには、好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行う。本発明のハイブリダイゼーション反応においては、さまざまな程度のストリンジェントな条件を用いることができる。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。好ましくは、標準的方法(Sambrookら、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第三版、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(2001))において説明されているような当技術分野において周知の技術によって、ストリンジェントな条件の下でハイブリダイゼーションを行う。
【0032】
本発明の目的に適した「低ストリンジェントな条件」は、例えば5x SSC、1% SDS、42℃でのハイブリダイゼーション、それに続く1x SSC、1% SDS、42℃での洗浄である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば2x SSC、0.5% SDS、55℃でのハイブリダイゼーション、それに続く1x SSC、0.1% SDS、55℃での洗浄である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば1x SSC、0.1% SDS、65℃でのハイブリダイゼーション、それに続く0.1x SSC、0.1% SDS、65℃での洗浄である。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAが効率的に得られると期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。ここで、「高い相同性」とは、DNA配列全体で少なくとも50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上、最も好ましくは98%以上の配列の同一性を指す。
【0033】
また、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAは、本発明のDNAを有する植物や植物細胞に変異処理を行い、該植物や細胞から、例えば配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAを選択することによっても得ることができる。
【0034】
また、たとえ塩基配列が変異していても、その変異がタンパク質中のアミノ酸の変異を伴わないこと(縮重変異)があるが、このような縮重変異DNAも本発明のグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNAに含まれる。
【0035】
アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol. Biol. 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。
【0036】
本発明のDNAには、ゲノムDNA、cDNAおよび化学合成DNAが含まれる。ゲノムDNAおよびcDNAの調製は、当業者にとって常套手段により行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、カーネーションからゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作製し、これを展開して、本発明のグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNA(例えば、配列番号:1または3)を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことで調製できる。また、本発明のグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNA(例えば、配列番号:1または3)に特異的なプライマーを作製し、これを利用したPCRを行って調製することも可能である。cDNAは、例えば、カーネーションから抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAPなどのベクターに挿入してcDNAライブラリーを作製し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことで、またPCRを行うことにより調製できる。
【0037】
本発明のグルコシルトランスフェラーゼをコードするDNAを使用することによって、植物の花色を改変する(好ましくは黄色〜橙色、より好ましくは黄色または橙色に改変する)ことが可能である。例えば、該DNAを発現または発現誘導可能なベクターに連結して、後述する方法で、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させることによって、植物の花色を改変できる。
【0038】
本発明のDNAを導入することにより、花色を改変することが可能な植物としては、特に制限はなく、例えばカーネーション、ペチュニア、バラ、アサガオなどアントシアニン色素を発色する花を持つ植物全てが挙げられる。
【0039】
本発明は、本発明のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む形質転換植物体の製造方法を提供する。
【0040】
本発明において、植物細胞の形質転換に用いられるベクターは、該細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はないが、挿入遺伝子を過剰発現させることが可能なベクターであることが好ましい。例えば、植物細胞内で恒常的に遺伝子を発現させるためのプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター)を有するベクターや、外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることもできる。例えば、バイナリーベクターpBI 101(Jeffersonら1987)などこれらの改変ベクターを使用することができる。
【0041】
また、上記「植物細胞」には、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。
【0042】
植物細胞へのベクターの導入には、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法など、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。
【0043】
形質転換植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。例えば、高等植物において形質転換植物体を作出する手法については、組織からプロトプラストを単離し、最適培養密度に調整した後に、植物ホルモンを添加したMS培地でカルスを誘導し、これを脱分化させることによって植物体を再生させる方法など、いくつかの技術が既に確立し、本願発明の技術分野において広く用いられている。本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。
【0044】
ゲノム内に本発明のDNAが導入された形質転換植物体がいったん得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることができる。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなど)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。
【0045】
また、本発明の形質転換植物体やその子孫あるいはクローンから切り花を生産することも可能である。本発明は、このような切り花もまた提供するものである。切り花とは、一般的には枝や茎のついたまま切りとった花を指すが、本発明における切り花には、枝や茎のついていない花も含む。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔1〕植物材料
カーネーションのうち、濃桃色花をつける「シンフォニーローズ(Symphony Rose)」、色素分析によりCh 2'Gを含有していることが確認された、黄色花をつける「A66」並びに橙色花をつける「8358-01」を、長野県の農場で栽培し、4つの発育段階で葉、茎、根および花弁に分離した。組織を秤量し、液体窒素中で凍結して、使用するまで-80℃で保存した。
【0047】
〔2〕GTのクローニング
全RNAは、改良グアニジニウムチオシアネート-CsCl超遠心法を用いて、上記品種の第二段階の閉じた蕾の赤色花弁(Yoshimotoらの図5A、Plant Biotech, 17:325-329, 2000)より調製した(Chirgwinら、1979)。ポリ(A)+RNAは、oligotex-dT30<Super>(TaKaRa Biochemicals、日本)を用いて、供給者によるマニュアルに記載されているように全RNAから調製した。第一鎖cDNAは、First strand cDNA Synthesis Kit(Takara)を用いて、上記品種の花弁から調製したポリ(A)+RNAにより合成し、PCRのテンプレートとして使用した。全長cDNAは、GeneRacerTM Kit(Invitrogen、オランダ)を用いて調製した。カーネーションcDNAをテンプレートとして用いたPCR増幅には、以前に報告された種々のGTによる保存アミノ酸配列に基づいて設計した縮重プライマーを使用した。その配列は以下に示す。リバースプライマー、5'‐GTBRTWNTSAAYWSYTTYKAKGARYTKGA‐3'(配列番号:5)および5'‐AARSMMRRWTCMGTKGTKTAYVTNWGTTTYGGMA‐3'(配列番号:6)、フォワードプライマー、5'‐TNGARTTCCANCCRCARTGHGTNACRAA‐3'(配列番号:7)および5'‐RTGMKCMARRATYWSHANYTGGGGWGCCCA‐3'(配列番号:8)。
【0048】
cDNA混合物1μlとプライマー4pmolを含むLA-PCR混合物(10μl)を、供給者の推奨に従って調製した。混合物は92℃にて1分間インキュベートし、その後0.5unitのTaKaRa LA-Taq DNA polymeraseを加えた。PCRは40回の増幅サイクルを実施した(92℃にて30秒;55℃にて45秒;72℃にて1分)。増幅した断片をpBluscript SK中にクローニングして、Aloka DNA Sequencer model 4000LとともにThermo Sequenase Cycle Sequencing Kit(usb)を使用して配列決定を行った。配列データに基づいて、特異性GTフォワードおよびリバースプライマーを作成した。GT5'上流および3'下流領域は、カーネーションcDNAをPCRのテンプレートとして、GeneRacer5'プライマーおよび特異性GTリバースプライマー、並びにGeneRacer3'プライマーおよび特異性GTリバースプライマーを用いて単離した。DcGT2(D)に関し5'上流および3'下流領域はプライマー、5'‐ATCCTTGAGGCAACAGTTCTTCACCGT‐3'(配列番号:9)およびプライマー、5'‐TCGGAAGTACAGCACACTATGCACCCGCT‐3'(配列番号:10)、DcGT3(H)に関し5'上流および3'下流領域はプライマー、5'‐ATTAGCCAGTCCCCAGGCAATCTCGACA‐3'(配列番号:11)およびプライマー、5'‐AGCACTCGGCATCCTCAACCACAAGCATA‐3'(配列番号:12)をそれぞれ用いた。増幅された断片を、上述と同様の方法でクローニングした。全長カーネーションGT cDNAは、配列データを基に構築したプライマーを使用し、カーネーションcDNAをテンプレートとしてPCRを行い、増幅された断片を上述と同様の方法でクローニングした。
【0049】
〔3〕ノーザンブロット解析
第1、2、3および4段階の花弁、根、茎、葉からの全RNA(10μg)は、Nytran supercharge filters(Schleicher & Schuell)上にブロットし、α32P dCTP-ラベルGT断片を用いて探索した。ブロットは、ストリンジェントな条件下で洗浄し、-80℃でX線フィルム(Kodak)を使用して感光させた。
【0050】
〔4〕rGTの発現および酵素アッセイ
pBluscript SKベクターを使用して、大腸菌(E.Coli)DH5α内でGT全長cDNAを発現させた。cDNAインサートは、プラスミド内の誘導性T7プロモーターのもとで調節される。rGTタンパク質を発現する形質転換体を、2YT+Amp 5mlの培地中で培養した。収集した細胞を50mM K-Pi緩衝液(pH7.0)で洗浄し、遠心分離(10,000xg、30秒)にかけた。ペレットに50mM K-Pi緩衝液(pH7.0)および14mM 2-MEを加えて、超音波処理した(TOMY ULTRASONIC DISRUPTOR UD-201)。遠心分離(12,000xg、20分、4℃)の後、粗酵素抽出物が得られた。タンパク質濃度は、Bradford(1976)の方法により、ウシ血清アルブミンを基準タンパク質として用いて決定した。形質転換されたインサートなしのpBruscript SKを対照酵素として使用した。
【0051】
〔5〕フラボノイドGT活性の決定
rGTのアッセイ用の標準反応混合物(総体積50μl)は、酵素溶液20μl、pH7.5の50mM K-pi中のフラボノイドまたはベタニジン25nmolおよび25nmol UDP-グルコース(UDP-glucose)(925Bq UDP-D-[U-14C]glucose)より構成された。混合物を30℃にて15分間インキュベートした。CH3Cl/CH3OH、2:1(V/V;プラス5% HCOOH)からなる停止溶液50μlを加えて、反応を終了させ、次に混合物を3,000xgにて3分間遠心分離にかけた。上清20μlを薄層クロマトグラフィープレートに付し、次いで同じ場所に標品のアントシアニンを加えて、AAH-II(HOAc:HCl:H2O、15:3:82)中で展開した。クロマトグラムの放射能は、バイオイメージアナライザー(bioimage analyzer(BAS 1500、Fuji Photofilm))によって走査した。基質としてのアントシアニンとベタレインを除くフラボノイド化合物の反応混合物は、10%HCOOH 20μlを加えて停止させ、反応生成物は酢酸エチル200μlで抽出した。有機相のアリコート100μlをシンチレーションバイアルに移し、トルエンベースのシンチレーション液中で放射能を測定した。カルコンは、Moustafa and Wong(1967)の方法に従って、ナリンゲニン(Naringenin)より合成した(Moustafa and Wong、phytochem, 6:625-632, 1967)。
【0052】
〔6〕カーネーションrGTの反応生成物の同定
停止溶液によって終了させた反応混合物の上清中の反応生成物は、AAH-IIおよびn-BuOH-HOAc-H2O(4:1:2、v/v)の溶媒系を用いて、薄層クロマトグラフィー(TLC)(Avicel SF. Funakoshi、日本)中の標品のフラボノイドのRf値との比較によって同定した。さらに、逆相カラム(内径4.6mm×250mm、Wakosil-II、5C18 AR)を備えたHPLC(Beckman System Gold)によって、標品のフラボノイドの保持時間と比較して同定した。[分析条件 移動相A液:1.5% H3PO4,移動相B液 :80% MeOH、移動流量(1ml/min)20分間 のB液20→80のグラジエント溶出、検出波長 :520、360または280nm ]。
【0053】
[実施例1]
本発明者らは、数種の全長カーネーションGT cDNAをクローニングした(表1)。
【0054】
【表1】
Figure 0004270370
【0055】
これらのカーネーションGTを大腸菌(E.Coli)中で発現させ生成した組換えタンパク質に対し、その酵素活性および基質特異性を決定するため、種々のフラボノイドを使用し、TLC分析、HPLCおよび14CUDP-グルコースを用いた液体シンチレーターによる分析を行った。
【0056】
図2および図3に示すように、生成した組換えタンパク質であるDcGT3(H)及びDcGT2(D)について、TLC分析を行なった。その結果、DcGT3(H)では14Cでラベルされたカルコンおよびナリンゲニンが検出された(図2A)。一方DcGT2(D)では14Cでラベルされたカルコン配糖体が検出された(図2B)。またDcGT2(D)では、クェルセチンを基質としたとき、いくつかのスポットが確認され、そのうち一つはクェルセチン3-O-グルコシドであることが判明した。またナリンゲニンを基質としたとき、DcGT3(H)と同様に配糖化していることがわかった。
【0057】
また、カルコンを基質としてDcGT3(H)、DcGT2(D)と反応させ、HPLCにて分析を行なった。その結果、DcGT2(D)により生成された生成物については、いくつかのスペクトルが確認され、これらの吸収波長がカルコンと同一もしくは類似していることから、カルコン配糖体であることがわかった。またこのカルコン配糖体とCh 2'Gの標準色素のリテンションタイムが完全一致した。このことから、このカルコン配糖体は2'の位置に配糖体化されていることが明らかになった。一方 DcGT3(H)においても同様なスペクトルが見られ、標準色素と同じリテンションタイムに微量ではあるがCh 2'Gのスペクトルが見られた。
【0058】
これらの結果から、DcGT2(D)とDcGT3(H)は、カルコノナリンゲニンを基質とし、Ch 2'Gを生成する酵素Ch 2'GTであることが判明した。これよりCh 2'GTをコードするcDNAは二種類存在することがわかった。DcGT2(D)のアミノ酸配列は、ドロテアンサス属のベタニジン5GTに対して60%の同一性を示した(Vogtら、Plant J, 19:509-519, 1999)。
【0059】
アントシアニン配糖化酵素は一般的にその基質特異性が広いと言われているが、DcGT2(D)に対してシアニジンを基質として反応させたときにはシアニジン 3-O-グルコシドとシアニジン5-O-グルコシドの両方が生成した。これに対し、DcGT3(H)はシアニジンを配糖化しなかった。この結果、DcGT2(D)はシアニジン、シアニジン 3-O-グルコシド、クェルセチンなどのフラボノールなど様々なアントシアニンの生合成経路の中間代謝産物を配糖体化するのに対し、DcGT3(H)はカルコンナリンゲニンを特異的に配糖体化することが判明した。またこれら二種類のcDNAの間には顕著な相同性はみられず、また酵素の至適pHや至適温度も異なることが判明した(データは示さず)。
【0060】
DcGT2(D)およびDcGT3(H)のcDNAが単離できたことから、植物においてこれらが発現していることは明らかであるが、ノーザンレベルでは確認できなかった。このことは、これらの酵素活性が非常に高いこと、また、ごく微量の発現で植物の花色を改変できることを示唆する。
【0061】
以上の結果は、遺伝子技術によりDcGT2(D)またはDcGT3(H)の遺伝子を導入することにより、花色が、例えば黄色〜橙色に改変された花を作成することが可能であることを示している。
【0062】
【発明の効果】
本発明によって、Ch 2'G、アントシアニジン3-O-グルコシド、およびアントシアニジン5-O-グルコシド等が製造できるようになった。また、本発明のDNAを利用することで、植物の花色を改変できる。花に対する消費者ニーズが年々拡大、多様化しており、最近のガーデニングブームなどの影響もあって、家庭用の手軽で安価な切り花に人気が移りつつある。本発明のDNAを利用して新規な花色を有する植物体を作出することで、このニーズに応えることができる。
【0063】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】 カーネーションによるナデシコ属Ch 2'GTによって触媒されたグルコシル転移を示す図である。
【図2】 反応混合物中のナデシコ属Ch 2'GTによる反応生成物としてのカルコングルコシド、ナリンゲニングルコシドのTLC上での放射能の走査パターンを示す写真である。
【図3】 反応混合物中のナデシコ属Ch 2'GTによる反応生成物としてのCh 2'GのTLC上での放射能の走査パターンを示す写真である。

Claims (19)

  1. 以下の(a)又は(b)に記載のカルコン 2'−O−グルコシルトランスフェラーゼをコードする、DNA。
    (a)配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
    (b)配列番号:1または3に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
  2. 植物においてカルコン2'−O−グルコシドを生産させるために用いる、請求項1に記載のDNA。
  3. 植物の花色を改変するために用いる、請求項1に記載のDNA。
  4. 植物の花色を黄色から橙色の範囲の色相に改変するために用いる、請求項1に記載のDNA。
  5. 請求項1に記載のDNAからコードされるタンパク質。
  6. 請求項1に記載のDNAを含むベクター。
  7. 請求項1に記載のDNA、または請求項6に記載のベクターが導入された形質転換植物細胞。
  8. 請求項7に記載の形質転換植物細胞を含む形質転換植物体。
  9. 花色が改変した、請求項8に記載の形質転換植物体。
  10. 花色が黄色から橙色の範囲の色相に改変した、請求項8に記載の形質転換植物体。
  11. 請求項8〜10のいずれかに記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
  12. 請求項8〜11のいずれかに記載の形質転換植物体の繁殖材料。
  13. 請求項8〜11のいずれかに記載の形質転換植物体の切り花。
  14. 請求項8〜10のいずれかに記載の形質転換植物体の製造方法であって、請求項1に記載のDNAまたは請求項6に記載のベクターを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む方法。
  15. 形質転換植物体が、花色が改変した形質転換植物体である、請求項14に記載の方法。
  16. 形質転換植物体が、花色が黄色から橙色の範囲の色相に改変した形質転換植物体である、請求項14に記載の方法。
  17. 外来から導入した請求項1に記載のDNAを形質転換植物体の細胞内で発現させることを特徴とする、植物の花色を改変する方法。
  18. 外来から導入した請求項1に記載のDNAを形質転換植物体の細胞内で発現させることを特徴とする、植物の花色を黄色から橙色の範囲の色相に改変する方法。
  19. 植物がカーネーションである、請求項14〜18のいずれかに記載の方法。
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