JP4266574B2 - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は核磁気共鳴現象を利用して被検体の任意の断層像を得るための磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に関し、特に造影剤を用いて血管系を描出することが可能なMRI装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
MRI装置を用いた血管描出法は、MRアンジオグラフィ(MRA)と呼ばれ、造影剤を用いる方法と造影剤を用いない方法がある。造影剤を用いるMRAでは、Gd-DTPAなどのT1短縮型の造影剤を用いるとともにグラディエントエコー系のTRが短いシーケンスによる撮像を行う。同一の領域に対して、高周波磁場による励起を短時間で連続的に行うことにより、その領域の組織に含まれるスピンは飽和状態となり、得られるエコー信号は低いものとなるが、T1短縮型の造影剤を含む血流スピンは、同じTRで励起されても飽和が起こりにくく、他の組織よりも相対的に高い信号を発する。これを利用し、撮像目的である血管内に造影剤が留まっている間に、当該血管を含むボリュームデータの計測を行い、投影処理、差分処理等の必要な画像処理を行うことにより2次元投影像として血管を描出することができる。
【0003】
各種造影MRAの詳細については、例えば「3D Contrast MR Angiography 2nd edition. Prince MR, Grist TM and Debatin JF, Springer, pp3-39, 1988」に記述されている。
上述のように血管造影においては、目的血管内に造影剤が留まっている間に撮像を行うことが必要であり、造影剤の移動との関係で撮像タイミングをどのように決定するかが画質を決定する重要な要因となる。
【0004】
目的血管内の造影剤濃度が増加し始めたときに撮像を開始するために、信号値の変化を追跡する方法として、目的領域にROI(関心領域)を設定し、このROIの信号強度を解析する方法がある。この方法では、例えば造影剤の注入と同時に連続撮像(ダイナミック計測)を開始し、時系列的に得られる連続画像から所望の血管にROIを設定し、このROIの信号値から信号値変化を解析する。しかし、この方法では、設定したROIが体動等により撮像断面から外れた場合、正確な造影剤濃度変化を捉えられない場合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、造影剤を用いたMRAにおいて、リアルタイムで信号値の変化を把握することができ、その結果を撮像のタイミング決定に利用することができ、良好な血管像を得ることができるMRI装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のMRI装置は、時系列的に計測される生データから信号値を抽出し、その変化をTICとして時系列画像と共に表示する機能を有する。即ち、本発明のMRI装置は、静磁場内に置かれた被検体に、所定のパルスシーケンスに則り高周波磁場及び傾斜磁場を印加するとともに、前記被検体から発生する磁気共鳴信号を計測する撮像手段と、前記磁気共鳴信号を処理し、前記被検体の所望の組織を画像化し表示する信号処理手段と、前記撮像手段及び信号処理手段を制御する制御手段とを備え、前記撮像手段は、複数の時系列画像を取得するダイナミック計測のためのパルスシーケンスを備え、前記信号処理手段は、前記ダイナミック計測の実行によって前記撮像手段が取得した複数の時系列画像用のデータを用いて、時系列画像を連続表示するとともに、前記時系列画像用のデータから所定の信号値を抽出し、抽出信号値の時間的変化を表示することを特徴とする。
【0007】
このMRI装置によれば、信号値の時間的変化が連続画像と共に表示されるので、その変化を見ながらリアルタイムでダイナミック計測の条件を変更したり、計測の終了を決めることができる。
【0008】
信号処理系が抽出する信号値として、具体的には、k空間の原点の信号値またはk空間の原点の信号値を読み出し方向に積算した値を用いることができる。k空間の原点の信号値は、k空間を構成するデータによって形成される画像のコントラストの決定に最も大きく影響する値であり、画像の信号値を示す指標となる。但し、本発明において抽出値はこれに限定されず、その近傍の値或いは近傍の値との積算値を用いることも可能である。
【0009】
本発明のMRI装置は、さらに、制御手段の機能として、抽出信号値が閾値に達したときに、時系列画像の空間分解能を上げるようにパルスシーケンスの傾斜磁場印加条件を変更する機能を備える。
【0010】
リアルタイムで表示された信号値の変化によって、例えば目的とする領域において造影剤濃度が増加した場合、時系列画像の空間分解能を上げることにより、それ以前は粗い空間分解能で計測し、時間分解能を高い画像を得、それ以降は空間分解能を上げて、目的とする領域の良好な画像を得ることができる。
本発明のMRI装置は、一般的なダイナミック計測にも適用することができるが、特に、造影剤を用いて血流の動態変化を観察する血流撮像のダイナミック撮像に好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図5は、本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、主たる構成として、被検体1が置かれる空間に均一な静磁場を発生させる静磁場発生磁石2と、静磁場に磁場勾配を与える傾斜磁場発生系3と、被検体1の組織を構成する原子の原子核(通常、プロトン)に核磁気共鳴を起こさせる高周波磁場を発生する送信系4と、核磁気共鳴によって被検体1から発生するエコー信号を受信する受信系6と、受信系6が受信したエコー信号を処理し、前述した原子核の空間密度やスペクトルを表す画像を作成する信号処理系7と、信号処理系7における各種演算や装置全体の制御を行なうための中央処理装置(CPU)8とを備えている。
【0013】
静磁場発生磁石2は、永久磁石、常電導方式又は超電導方式の磁石からなり、被検体1の周りにその体軸方向または体軸と直交する方向に均一な静磁場を発生させる。傾斜磁場発生系3は、x、y、zの三軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とからなり、後述のシーケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、x、y、zの三軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを被検体1に印加する。この傾斜磁場の加え方により、被検体1の撮像対象領域(スライス、スラブ)を設定することができるとともに、エコー信号に、位相エンコード、周波数エンコードなどの位置情報を付与することができる。
【0014】
送信系5は、シーケンサ4から送り出される高周波パルスにより被検体1の生体組織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴を起こさせるために高周波磁場を照射するもので、高周波発振器11と、変調器12と、高周波増幅器13と、送信側の高周波コイル14aとからなる。送信系5では、高周波発振器11から出力された高周波パルスを変調器12で振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、高周波磁場(電磁波)を被検体1に照射する。
【0015】
受信系5は、被検体1から核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル14bと、増幅器15と、直交位相検波器16と、A/D変換器17とからなる。受信系6では、高周波コイル14bで検出したエコー信号を増幅器15及び直交位相検波器16を介してA/D変換器17に入力してディジタル信号に変換し、二系列の収集データとして信号処理系7に送る。
【0016】
信号処理系7は、CPU8と、磁気ディスク18、磁気テープ19等の記録装置と、CRT等のディスプレイ20とからなり、CPU8でフーリエ変換、補正係数計算、画像再構成等の処理を行い、得られた画像をディスプレイ20に表示する。さらに本発明のMRI装置では、計測したエコー信号について時間的強度変化(TIC)を計算し、これをグラフとしてディスプレイ20に表示する。
【0017】
CPU8は、上記演算のほかに、被検体1の断層像のデータ収集に必要な種々の命令を、シーケンサ4介して、傾斜磁場発生系3、送信系5および受信系6に送る。シーケンサ4は、撮像法によって決まる所定の制御のタイムチャートであるパルスシーケンスに則って、傾斜磁場発生系3、送信系5および受信系6を制御し、画像再構成に必要なデータを収集するようにする。
【0018】
本発明のMRI装置では、パルスシーケンスとして、血流撮像のためのパルスシーケンス、具体的には繰り返し時間TRが短いグラディエントエコー系のパルスシーケンスが含まれている。これらパルスシーケンスは、プログラムとしてCPU8内に組み込まれている。
【0019】
次にこのような構成のMRI装置を用いた血管撮像法を3次元計測の場合について説明する。図1はダイナミック計測の一実施形態を示す図、図2は、その手順を示すフロー図、図3は3次元計測に採用される一般的なグラディエントエコー系のパルスシーケンスを示す図である。
【0020】
まず造影剤を用いることなく3次元計測を行い、造影剤注入前の3次元データ及びそれを用いた2次元投影画像データを得る(ステップ201〜203)。次に、造影剤を被検体の所定の血管、例えば肘静脈から注入し(ステップ204)、ダイナミック計測を開始する(ステップ205)。
【0021】
造影前及び造影剤注入後に行う撮像は、図3に示すような公知のグラディエントエコー系のパルスシーケンスである。簡単に説明すると、まずRFパルス301を照射すると同時に領域を選択する傾斜磁場302を印加して目的血管を含む領域を励起する。次に、スライス方向及び位相エンコード方向の傾斜磁場303、304を印加し、さらに読み出し傾斜磁場305を印加して、エコー信号306を一定のサンプリング時間計測する。RFパルス照射301から次のRFパルス照射までの過程を短TR、例えば数ms〜数10msの繰り返し時間で繰り返し、位相エンコードの異なるエコー信号を計測する。
【0022】
例えば、スライス方向のエンコード数をNs、位相エンコード方向のエンコード数をNpとすると、Ns×Npの繰り返しで目的血管を含む領域についての3次元データが得られる。ダイナミック計測では、このような3次元データを得る計測を繰り返し、図1(a)に示すような時系列データを得る(ステップ206)。スライスエンコード数Ns及び位相エンコード数Npがそれぞれ多いほど、得られる画像の空間分解能は良好となるが、計測時間は長くなる。本実施形態では、撮像開始直後は、これらエンコード数Ns、Npを少なく(例えば、通常の血流描画に求められるエンコード数の半分程度)設定し、空間分解能の低い画像を得る。
【0023】
3次元データのセットが得られるごとに、フーリエ変換により3次元画像データを得、さらに投影処理を行うことにより図1(b)に示すような2次元の血管投影像を得る(ステップ207)。投影処理は、例えば、光軸上にある信号値の最大のものを血管とみなすMIP処理等の公知の投影法を採用して行う。この2次元血管投影像と、ステップ203で得た造影前の2次元血管投影像との差分を取り(ステップ208)、これによって形成される血管像をディスプレイに表示する(ステップ209)。
【0024】
一方、このような画像形成とは別に、連続して計測される時系列の3次元データについて信号値を抽出する処理を行う(ステップ210)。具体的には、スライスエンコードをkz、位相エンコードをkyとしてエコー信号を配置したk空間データの原点(kz=0,ky=0,kx=0)の信号値を抽出信号値とする。或いはkz=0,ky=0のデータを読み出し方向に積算した値を抽出信号値とする。即ち、図3のパルスシーケンスでスライス傾斜磁場303及び位相エンコード傾斜磁場304がゼロのときに計測したエコー信号の信号値か、これを読み出し方向にフーリエ変換した後の信号値(積算値)を抽出信号値とする。k空間の原点のデータは、3次元データから得られる画像のコントラスト情報を最も多く有するデータであり、このデータの信号強度の変化は、造影剤によって強められる信号強度の変化を示す指標と成る。
【0025】
抽出信号値は、ダイナミック計測において、原点のエコー信号が計測される毎に求められ、その時間的変化を図1(c)に示すようなグラフとしてディスプレイに表示する。
【0026】
こうして求められる信号強度変化(TIC)は、生データの信号値またはそれを読み出し方向にフーリエ変換したものを時間軸に対しプロットしたものであるので、撮像後時間遅れなく表示することができる。これによって操作者はリアルタイムで信号強度変化が確認でき、例えば、図4に示すように、信号値が所定の閾値α1に達したときには(ステップ402)、撮像領域に造影剤が到達したものとみなし、高空間分解能の3次元計測を行う(ステップ403)。具体的には、スライスエンコード数Ns及び位相エンコード数Npの一方または両方を多く設定して撮像する。これにより造影剤が達した後の領域を高空間分解能で描出することができる。
【0027】
また目的領域から造影剤が流出し、TICが下がり、所定の閾値α2に達した場合には(ステップ404)、これを指標として撮像を終了することも可能である(ステップ405)。
【0028】
このように本実施形態によれば、ダイナミック計測による連続撮像と平行して信号値を求め表示することができるので、造影剤が目的血管に達するまでは、空間分解能の粗い撮像を行い、造影剤が目的血管に達した後は血管描出能の優れた高空間分解能の撮像を行うことができる。
【0029】
尚、上記実施形態では、TICを目視で確認して、撮像条件を変更する場合を説明したが、予め信号値についての閾値α1、α2及び低空間分解能及び高空間分解能における撮像条件を設定しておくことにより、上記変更を自動的に行うことも可能である。
また上記実施形態では、3次元計測の場合を説明したが、2次元計測にも同様に適用することが可能である。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、ダイナミック計測によって計測される時系列データから順次信号値を抽出し、その時間変化を時系列画像とともに表示することにより、造影剤を用いたMRAにおいて、目的領域への造影剤の到達や流出をリアルタイムで把握することができ、それに基き撮像シーケンスの制御等を行うことができる。これにより目的領域内に造影剤が止まっている間に、適切な条件でその領域の撮像を行うことができ、良好な血管像を得ることができる。また造影剤が領域に達する前の撮像やそれに伴う画像作成のための演算量を軽減し、時間分解能の高い連続画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のMRI装置を用いたダイナミック計測の一例を示す図
【図2】本発明のダイナミック計測の手順の一実施形態を示すフロー図
【図3】本発明のダイナミック計測で用いる一般的なパルスシーケンスの一例を示す図
【図4】本発明のダイナミック計測の手順の他の実施形態を示すフロー図
【図5】本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示すブロック図
【符号の説明】
1・・・被検体
2・・・静磁場発生磁気回路
4・・・シーケンサ
3・・・傾斜磁場発生系
5・・・送信系
6・・・受信系
7・・・信号処理系
8・・・CPU(中央処理装置)

Claims (4)

  1. 静磁場内に置かれた被検体に、所定のパルスシーケンスに則り高周波磁場及び傾斜磁場を印加するとともに、前記被検体から発生する磁気共鳴信号を計測する撮像手段と、前記磁気共鳴信号を処理し、前記被検体の所望の組織を画像化し表示する信号処理手段と、前記撮像手段及び信号処理手段を制御する制御手段とを備えた磁気共鳴イメージング装置において、
    前記撮像手段は、複数の時系列画像を取得するダイナミック計測のためのパルスシーケンスを備え、
    前記信号処理手段は、前記ダイナミック計測の実行によって前記撮像手段が取得した複数の時系列画像用のデータを用いて、時系列画像を連続表示するとともに、比較的低い空間分解能のダイナミック計測の実行によって取得した時系列画像用のデータからk空間の原点の信号値またはk空間の原点の信号値を読み出し方向に積算した値を抽出して、抽出信号値の時間的変化を表示し、
    前記制御手段は、前記抽出信号値が第1の閾値に達するまでは比較的低い空間分解能のダイナミック計測を行い、前記抽出信号値が第1の閾値に達したときに、前記時系列画像の空間分解能を上げるように前記パルスシーケンスの傾斜磁場印加条件を変更し、前記パルスシーケンスの傾斜磁場印加条件の変更後に前記抽出信号値が第2の閾値に達したときに前記ダイナミック計測を終了することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記制御手段は、前記抽出信号値が閾値に達したときに、前記パルスシーケンスのスライスエンコード数及び位相エンコード数の少なくとも一方を増加することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  3. 請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記撮像手段が実行するダイナミック計測は、造影剤を用いて血流の動態変化を観察する血流撮像である磁気共鳴イメージング装置。
  4. 請求項1ないし3いずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、前記信号処理手段は、前記抽出信号値の時間的変化を、連続表示される時系列画像と時間的に対応させて表示することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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