JP4264786B2 - 水中航走体防御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、水中航走体防御装置に関し、模擬反射音と模擬航走雑音の合成された模擬音響によって自船の遠方に水中航走体を誘導したり、自船の発する音より大きい防害雑音によって自船の位置を欺瞞するように切り替えて自船を防御できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水中航走体防御装置としては大別して2種類のものが用いられており、その一つが模擬音響を発信する装置であり、もう一つが防害雑音を発信する装置である。
【0003】
模擬音響を発信する装置は水中航走体が発信する探知音に対して自船を模擬する模擬音響を合成して発信することで欺瞞し、自船の遠方に水中航走体を誘導するものであり、防害雑音を発信する装置は自船の航走音より大きな防害雑音を発信することで自船の位置を欺瞞し、水中航走体の追尾を回避するものである。
【0004】
このため、水中航走体が発射された状況に応じて模擬音響を発信する装置と防害雑音を発信する装置を使い分けて自船を防御するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来は、このように模擬音響を発信する装置と防害雑音を発信する装置とを状況に応じて使い分ける必要から、それぞれを自船に搭載しておかなければならず、管理や整備などが繁雑になるという問題がある。
【0006】
また、従来の2種類の水中航走体防御装置は、いずれも水中航走体の存在を探知して自船後方に曳航する曳航式か自船から海中に投棄する静止式であり、自船の運動などを模擬できる範囲が限られ模擬性能の一層の向上が望まれている。
【0007】
この発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたもので、1つの防御装置を切り替えることで2種類の防御装置として機能させることができる水中航走体防御装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の水中航走体防御装置は、水中航走体から自船を防御する水中航走体防御装置であって、水中航走体が発する探知音を受信する受波器を航走体部に曳航ケーブルで曳航される曳航体部に搭載し、前記航走体部に、前記受波器で受信された信号に基づき模擬反射音を生成する模擬反射音生成部と、模擬航走雑音あるいは防害雑音を生成する模擬雑音生成部と、これら模擬反射音と模擬航走雑音を合成して模擬音響を合成する音響合成部と、この音響合成部で合成された模擬音響あるいは前記模擬雑音生成部で生成された防害雑音を出力する送波器を搭載すると共に、この送波器から出力される音響を前記模擬音響あるいは前記防害雑音に切り替える切替手段を備える一方、前記曳航体部を、前記送波器と前記受波器を同時に作動させても音響干渉が生じない前記曳航ケーブルの長さとして曳航し、複数の前記水中航走体に対してもおびき寄せて自船を防御可能に構成したことを特徴とするものである。
【0009】
この水中航走体防御装置によれば、水中航走体が発する探知音を受信する受波器を航走体部に曳航ケーブルで曳航される曳航体部に搭載し、前記航走体部に、前記受波器で受信された信号に基づき模擬反射音を生成する模擬反射音生成部と、模擬航走雑音あるいは防害雑音を生成する模擬雑音生成部と、これら模擬反射音と模擬航走雑音を合成して模擬音響を合成する音響合成部と、この音響合成部で合成された模擬音響あるいは前記模擬雑音生成部で生成された防害雑音を出力する送波器を搭載すると共に、この送波器から出力される音響を前記模擬音響あるいは前記防害雑音に切り替える切替手段を備える一方、前記曳航体部を、前記送波器と前記受波器を同時に作動させても音響干渉が生じない前記曳航ケーブルの長さとして曳航し、複数の前記水中航走体に対してもおびき寄せて自船を防御可能に構成するようにしており、切替手段で送波器から出力される音響を、合成された模擬音響、あるいは防害雑音のいずれかに切り替えることで2種類の防御装置として機能させることができるようになる。
また、防御装置を水中を航走可能な航走体部に搭載するようにしており、静止式の場合に比べ、自船の状態を高精度に模擬できるようにしている。
さらに、水中航走体防御装置の受波器を航走体部に曳航される曳航体部に搭載するようにしており、自走式とすることで自船から遠方に水中航走体を誘導するとともに、自船の動きを模擬できるようにし、さらに、送波器と受波器とを分離することで複数の水中航走体に対しても模擬をできるようになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0015】
図1および図2はこの発明の水中航走体防御装置の一実施の形態にかかる概略構成図および信号処理部の概略構成図である。
【0016】
この水中航走体防御装置10は、水中を航走する自走式の航走体部11と、この航走体部11に曳航ケーブル12で曳航される曳航体部13とを備えている。この航走体部11の後部には、動力装置14が搭載され、例えば電動モータで構成されて航走体部11の後端外部の推進器15を回転駆動する一方、動力装置14には、航走体部11内に搭載された搭載機器の動力源16、例えば電池から電力が供給されるようになっており、さらに、推進器15の前方に舵17が設けられ、動力源16からの動力の供給で動作する操舵装置18によって駆動され、航走体部11の姿勢、航走方位、深度を変えることができるようになっている。そして、航走体部11内に搭載された航走制御装置19によって航走状態の管制制御が行われ、航走体部11を制御して水中で任意に自走させることができ、曳航体部13も曳航ケーブル12によって航走体部11で曳航することができるようになる。
【0017】
このような水中航走体防御装置10の曳航体部13には、水中航走体から発せられる探知音を受信する受波器20が搭載され、受信信号が曳航ケーブル12を介して航走体部11に送られるようになっている。
【0018】
また、航走体部11内には、受波器20からの受信信号が入力されるとともに、入力信号から模擬音響などを加工合成する信号処理部21が搭載されるとともに、先端部に合成された模擬音響などを出力する送波器22が搭載されており、管制装置23によって受波器20、信号処理部21、送波器22および航走体部11が統合管制されるようになっている。
【0019】
この信号処理部21は、図2に示すように、入力信号に基づいて波形分析を行う波形分析部21aを備え、分析された波形が波形記録部21bに送られて記録される一方、波形分析部21aで分析された波形に基づいて加工処理部21cで加工処理が行われ、探知音の位相、周波数などに対応して自船から反射される反射音に相当する位相や周波数などが求められ、波形記録部21bで波形記録された波形とともに、波形合成部21dに送られて合成され、これを模擬反射音生成部21eに送って模擬反射音が生成される。
【0020】
また、信号処理部21では、模擬反射音の生成と並行して、自船の航行によって発生する航行雑音に相当する模擬航走雑音が模擬雑音生成部21fで生成される。
【0021】
こうして模擬反射音生成部21eで生成された模擬反射音と模擬雑音生成部21fで生成された模擬航走雑音とが波形合成部21gで合成されて2つの出力信号のうちの一つとなる模擬音響が作られる。
【0022】
もう一つの出力信号としては、模擬雑音生成部21fで生成された防害雑音が合成処理などされずにそのまま用いられて出力される。
【0023】
そして、送波器22から発信される出力信号を切り替えるため、切替手段24が設けられ、切替信号を出力していずれの音響を出力するかを設定できるようになっている。
【0024】
このように構成した水中航走体防御装置10では、自船で水中航走体の存在が分かると、その時の運航状態などの状況に基づき、水中航走体防御装置10による防御方法が選択され、合成された模擬音響を発信する装置とするか、自船の被探知を防害する防害雑音を発信する装置とするかが切替手段24での切替設定信号で設定されたのち、航走体部11および曳航ケーブル12で曳航される曳航体部13が水中に投棄される。また、この切替設定は、管制装置23でも管制制御され、水中に投棄された後でも設定を変更することができる。
【0025】
そして、水中航走体防御装置10を模擬音響を発信する装置として機能させる場合には、信号処理部21全体が動作するように切替設定信号が出力され、自船から離れた位置に自走するよう管制制御されると同時に、図2に示すように、曳航体部13に搭載された受波器20で水中航走体からの探知音を受信し、この受信音に基づいて信号処理部21で信号処理が行われて模擬反射音が生成されるとともに、模擬航走雑音が生成され、これが合成されて模擬音響が作られる。
【0026】
こうして作られた模擬音響が送波器22から水中航走体の探知音に対応して出力される。
【0027】
これにより、水中航走体は、探知音に対する反射音を水中航走体防御装置10から出力された模擬音響と認識して水中航走体防御装置10におびき寄せられ、自船を安全に防御することができる。
【0028】
一方、水中航走体防御装置10を防害雑音を発信する装置として機能させる場合には、信号処理部21のうち模擬雑音生成部21fおよび波形合成部21gのみが動作するように切替設定信号が出力され、自船から離れた位置に自走後停止状態となるよう管制制御されると同時に、図2に示すように、防害雑音のみが生成され、これが送波器22から出力される。
【0029】
これにより、水中航走体は、水中航走体防御装置10から出力された防害雑音により目標の探知を妨害されることになり、水中航走体防御装置10を防御壁として自船を安全なところに移動するなどで防御することができる。
【0030】
さらに、この水中航走体防御装置10は、航走体部11に搭載されて自走式であることから、従来の水中に投棄して浮遊させる静止式の場合に比べ、自船から遠方に自走させて水中航走体をおびき寄せることができるとともに、自船の運動を高精度に模擬することができ、一層確実に水中航走体を自船から遠方におびき寄せることができ、安全に防御することができる。
【0031】
また、航走体部11に送波器22を搭載し、曳航ケーブル12で曳航される曳航体部13に受波器20を搭載して送受波器を分離してあるので、曳航ケーブル12の長さを送受波器22,20で同時に作動させても音響干渉が生じないようにすることができ、こうすることによって常時受波器20で水中航走体からの探知音を受信することができ、水中航走体が1つの場合に限らず、複数の場合にもそれぞれに対応する模擬音響を信号処理部21で合成して送波器22から出力することができ、複数の水中航走体を水中航走体防御装置10におびき寄せて自船を防御することができる。
【0032】
なお、上記実施の形態では、水中航走体防御装置を自走式の航走体部に搭載するようにしたが、従来の浮遊静止式であっても良い。
【0033】
また、受波器を航走体部に曳航される曳航体部に搭載するようにしたが、これに限らず自走式の航走体部に搭載して一体としたり、従来の浮遊静止式としても良い。
【0034】
【発明の効果】
以上、一実施の形態とともに具体的に説明したようにこの発明の請求項1記載の水中航走体防御装置によれば、水中航走体が発する探知音を受信する受波器を航走体部に曳航ケーブルで曳航される曳航体部に搭載し、前記航走体部に、前記受波器で受信された信号に基づき模擬反射音を生成する模擬反射音生成部と、模擬航走雑音あるいは防害雑音を生成する模擬雑音生成部と、これら模擬反射音と模擬航走雑音を合成して模擬音響を合成する音響合成部と、この音響合成部で合成された模擬音響あるいは前記模擬雑音生成部で生成された防害雑音を出力する送波器を搭載すると共に、この送波器から出力される音響を前記模擬音響あるいは前記防害雑音に切り替える切替手段を備える一方、前記曳航体部を、前記送波器と前記受波器を同時に作動させても音響干渉が生じない前記曳航ケーブルの長さとして曳航し、複数の前記水中航走体に対してもおびき寄せて自船を防御可能に構成するようにしたので、切替手段で送波器から出力される音響を、合成された模擬音響、あるいは防害雑音のいずれかに切り替えることで2種類の防御装置として機能させることができる。
【0035】
これにより、1種類の水中航走体防御装置だけを搭載しておけばたり、管理や保守を容易にすることができる。
【0036】
また、この水中航走体防御装置によれば、防御装置を水中を航走可能な航走体部に搭載するようにしたので、静止式の場合に比べ、自船の状態を高精度に模擬することができる。
【0037】
さらに、この水中航走体防御装置によれば、水中航走体防御装置の受波器を航走体部に曳航される曳航体部に搭載するようにしたので、自走式とすることで自船から遠方に水中航走体を誘導するとともに、自船の動きを高精度に模擬でき、さらに、送波器と受波器とを分離することで複数の水中航走体に対しても模擬音響を出力しておびき寄せることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の水中航走体防御装置の一実施の形態にかかる概略構成図である。
【図2】この発明の水中航走体防御装置の一実施の形態にかかる信号処理部の概略構成図である。
【符号の説明】
10 水中航走体防御装置
11 航走体部
12 曳航ケーブル
13 曳航体部
14 動力装置
15 推進器
16 動力源
17 舵
18 操舵装置
19 航走制御装置
20 受波器
21 信号処理部
21a 波形分析部
21b 波形記録部
21c 加工処理部
21d 波形合成部
21e 模擬反射音生成部
21f 模擬雑音生成部
21g 波形合成部(音響合成部)
22 送波器
23 管制装置
24 切替手段
Claims (1)
- 水中航走体から自船を防御する水中航走体防御装置であって、
水中航走体が発する探知音を受信する受波器を航走体部に曳航ケーブルで曳航される曳航体部に搭載し、
前記航走体部に、前記受波器で受信された信号に基づき模擬反射音を生成する模擬反射音生成部と、模擬航走雑音あるいは防害雑音を生成する模擬雑音生成部と、これら模擬反射音と模擬航走雑音を合成して模擬音響を合成する音響合成部と、この音響合成部で合成された模擬音響あるいは前記模擬雑音生成部で生成された防害雑音を出力する送波器を搭載すると共に、この送波器から出力される音響を前記模擬音響あるいは前記防害雑音に切り替える切替手段を備える一方、
前記曳航体部を、前記送波器と前記受波器を同時に作動させても音響干渉が生じない前記曳航ケーブルの長さとして曳航し、複数の前記水中航走体に対してもおびき寄せて自船を防御可能に構成したことを特徴とする水中航走体防御装置。
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