以下、本発明にかかる電池容量検出装置10につき、満充電時におけるOCVが約4.2Vで、劣化のない状態における満充電容量が約1600mAhのリチウムイオン電池の素電池およびその素電池を複数組み合わせた組電池としての電池パックを例にとって更に詳細に説明するが、他の種類の二次電池にあっても略同様に実施できることは勿論である。
本発明にあっては、電池容量の検出をすべき二次電池12について、図2(a)に例示するOCV特性を予め測定しておく。そして、このOCV特性が二次電池12の劣化や使用温度などに拘らず略一定に維持されることを利用し、図2(b)の如く、二次電池12の開放回路電圧VaあるいはVbを必要に応じて測定することにより、その測定時点における充電率aあるいはbを推測することを基本の構成とする。
なお、OCVの温度特性に関しては、温度特性の変化自体が小さいこと、また、二次電池の劣化によっても温度特性が略一定であるとの知見を種々劣化状態の電池における特性測定から得た。そのため、温度変化があっても、温度特性を加味したOCV特性から、充電率を推定できる。
更に、例えば充電開始直前の充電率がa[%]で、充電終了直後の充電率がb[%]の場合、充電の終了直後の充電率bから充電開始直前aの充電率を減算した「差充電率」は、充電中に二次電池に供給された充電電流を積分することにより得られる「充電量」だけ充電されたことにより生じるものである。
そのため、この充電量を差充電率で除算し更に100倍することにより、満充電時における総容量(以下、「満充電容量」という。)が、充電を満充電状態まで継続することなく算出される。
したがって、従来行われていた、放電末期から満充電終了までの充電量、或いは満充電状態から放電末期までの放電量を計測することによる充電容量の測定の様な、いわゆる満充電学習を行う必要が無くなる。なお、満充電容量は放電中の積算容量と放電前後の充電率の変化でも算出できるが、一過による電流積算が行えるので、充電において満充電容量を推測する方が好ましい。
また満充電容量が得られれば、その満充電容量に測定時点の充電率を乗算することにより、「残容量」すなわち二次電池12にどれくらいの容量が残っているかが、二次電池12の劣化状態を考慮することなく算出される。
そこでまず、上記した充電率、満充電容量および残容量の検出動作に先立ち、上記したOCV特性を求めるため、容量検出をすべき二次電池12について図3に例示する以下の方法で充放電を行わせる。
すなわち、電池の端子電圧が設定値以下に低下したことを確認することにより、電池の残容量がゼロないしはそれに近い状態になったと思われる時刻t1から、周囲温度が常温(25℃)の定常状態において、充電電流量を微小時間毎に連続的に積算することにより、充電量および電池電圧の変化を継続的に確認しながら充電を行う。
ここで充電開始直後においては、例えば1600mAの定電流源により定電流充電を行い、電池電圧が設定値に達した時刻t2で4.2Vの定電圧充電に切り換えるという条件で充電を例えば3時間継続するものであって、充電開始から終了までの間に二次電池12に供給された総充電量を、満充電容量の初期値として保存する。
OCV特性については、例えば10%の充電または放電が進む毎に充放電を停止し、その時点におけるOCVを測定していくとともに、各測定点における充電率とOCVとを一対として順次に保存することにより、図2(a)の様なグラフが求まる。
ところで、この種の二次電池12の端子間に実際に現れる電圧は、充電時にあっては上記したOCVよりも高く、放電時にあってはOCVよりも低くなることが知られる。更にその電圧の値は時間的に一定ではなく、所定の時定数をもって減少又は増加する。
かかる現象は、図4に例示される二次電池12についての等価回路により説明されるのが一般的である。すなわち等価回路を構成する各素子のうち、直列に介装される溶液抵抗Rはミリ秒のオーダーの早い応答特性を、電気2重層容量Cと並列に接続される電荷移動抵抗rは秒のオーダーの応答特性を有するため、高々10秒程度の時間を待てば収束する。
それに対し、分極電圧Epについては、時間オーダーの応答特性を有し、その値が安定するまでに数時間から数日間を要するので、正確なOCVを測定するためには少なくとも数時間、できれば8時間程度の休止期間が必要である。
しかしながら二次電池の実際の使用状況にあっては、充電終了直後に比較的長時間の休止期間が設けられることが多いのを除いて、それ以外の特に放電時には通電と休止とが頻繁に繰り返されることが一般的であり、8時間はおろか、数時間の休止期間を設けてOCVを測定することさえも難しい。
ところで、図5に示すごとく、二次電池12に対する通電を停止してからの時間tの逆数または時間tの平方根の逆数を横軸にとった場合、各測定時におけるOCVを縦軸にプロットすると、その軌跡は略直線または直線に近似可能な曲線となる。そこで本実施例にあっては、所定の時間間隔で2点のOCVを測定し、その2点間を図5で例示する如く直線で結んで延長することにより、収束時におけるOCVを推測する様に構成している。
上記した二次電池に対する通電を終了してからの時間は、常温にあっては比較的安定した特性を示すため、30分後および2時間後の2点を測定時点とすることが可能である。
しかしながら、より長時間経過する方が推定精度の向上が図れるため、充放電の終了後、例えば30分と2時間の2点における電圧測定により第1回目の推定をし、更に4時間、8時間の様に休止状態が継続する場合は、その時点における測定電圧を利用して第2回目あるいは第3回目の推定を行い、推定値を更新させる様に構成している。
ところで、常温よりも高温の使用条件下でしかもその時点における充電率が高い場合、自己放電による電圧降下が他の条件下よりも大きいため、休止時間が長時間に亘ると、むしろ推定精度は低下する。そこでその場合にあっては、2時間の経過時点でOCVの収束値の推定を終了し、その値を容量判定に使用することが好ましい。
逆に低温の使用条件下にあっては、休止期間中における自己放電量が少ない反面、電圧軌跡の変曲が常温時よりも増大し、OCVが安定するまでに長時間を要するため、2時間および8時間の2点で収束値の推定を行うことが好ましい。
なお、上記したOCVの測定および収束値の推定のための時間間隔および測定回数は一例であって、適宜変更して実施できることは勿論である。例えば、休止期間が24時間を超えて長期間連続する場合には、OCVは既に収束していると推測されるので、上記した推測処理をすることなしに測定した電圧値から直ちに充電率を求める一方、放置期間中における満充電容量の減少をデータベースを利用して補正することも可能である。その詳細については後記する。
一方、充放電の継続中は勿論、充放電が停止されてからOCVの推定が可能な上記した最小の休止期間である2時間が経過する前に充電または放電が再開された場合にあっては、上記した方法によって推定ができないか、推定できたとしても得られたOCVに含まれる誤差は大きい。
そこで本実施例にあっては、充放電中に二次電池12に流れる電流値を積算することにより充電量を継続的に測定して行き、充放電開始前の充電率に、測定した充電量から換算される充電率の変化分を積算することにより、演算によって現在時点における充電率および残容量を算出できる様にしている。
以上の様にしてOCV特性を利用することにより、二次電池12の劣化や使用状態の如何に拘らず、測定または推定時点における充電率と残容量とを比較的正確に検出できるが、この方法で検出した残容量は、二次電池12に対して入力されたクーロン量が全て消費できると仮定した場合のものである。
すなわち、微小電流の場合の残容量等に相当し、負荷が接続された場合には、この方法で検出した残容量を全て放電できないので、負荷が接続された場合の残容量としては別途算出する必要がある。
しかし、理想的な条件での無負荷の満充電容量としては検出できたこととなり、この容量を電池の満充電容量の一つとして評価することが可能となる。本出願では、この観点を踏まえつつ、無負荷の場合の満充電容量と、負荷のある場合の残容量の区別を明確にして取り扱っている。
これは、以上のようにして検出された無負荷の場合の満充電容量を単に電池の満充電容量として取り扱い、この満充電容量をもとにした充電率で統一的に残量推定のデータベースを構築し、このデータベースを元に負荷がある場合の放電特性を算出し、この放電特性から残容量を推定することにより、正確な残容量の推定が可能な残量検出方法の構築が可能となっている。
そこで以下、放電特性がどの様に決まるか等の説明から始めて残量推定方法を説明する。
先ず現実の使用状況にあっては、図4に示す等価回路および図6に示す特性から判る通り、OCV特性に従って電圧値が変化する理想電池Eから、放電時にあっては、二次電池12の内部抵抗(抵抗成分)である溶液抵抗Rおよび電荷移動抵抗rに負荷電流Iを乗算して得られた電圧値および分極電圧Epが減算されて端子間に出力される。
更に、二次電池12の溶液抵抗R、電荷移動抵抗rおよび分極電圧Epの素子値は、充放電を繰り返すなどして劣化が進むほど大きくなる結果、二次電池12から取り出される電池電圧の値も低下する傾向にある。
一方、二次電池12の放電特性は図6(a)に例示する如く、充電率の高い期間にあっては略直線を示しながら低下するが、ある電圧値Vsを下回ると急激に電圧降下が激しくなる傾向を一般にもつ。
しかしながら、かかる電池電圧の変動領域内で電気機器18を使用することは不適当であるし、それ以上放電が進むと過放電状態となって電池の劣化が急激に進む可能性も高い。
そこで通常は、その変動領域の中間に終止電圧Vtを設定するとともに、その終止電圧Vtで放電を強制的に停止する制御が行われることが多い。したがって、放電が開始されてから電池電圧が終止電圧Vtに達するまでの、二次電池12を負荷に接続した場合に実際に使用できる残り時間(以下、「残時間」という。)を正確に知ることが、二次電池12を電気機器で使用する上で重要であり、更にその残時間は、電気機器の電源オン直後を始めとする任意の時期に的確に把握できることが好ましい。
ところでこの残時間は、負荷電流や周囲温度等の使用条件が一定の場合、予めその条件における放電特性を測定しておき、残時間の検出時における電池電圧を検出することによって判定することができる。
しかしながら、実際の放電時における電池電圧は、特に上記した分極電圧Epの存在に起因して、図6(b)に例示する如く、時刻t11に通電を開始するとOCVの値から徐々に低下し、時刻t12に理論上の放電特性と一致するものであり、単に二次電池12の端子電圧を検出するだけでは残時間を求めることが難しい。
更に、二次電池12の放電特性は、図7(a)の様に負荷電流を変化させた場合は勿論、図7(b)の様に二次電池12が劣化した場合や、図7(c)の様に二次電池12の周囲温度が増減しても大きく変化するため、全ての使用条件について放電特性を用意することは不可能に近い。
そこで本発明にあっては、二次電池12の等価回路で示される各素子の素子値を以下に示す方法を利用して図9の様に個別に測定し、その値をデータベース化して記憶しておき、次回の放電時にその記憶値を利用して演算により放電特性を導出することによって、上記した残時間を推測できる様にしている。
ここで本実施例にあっては、図4に示す溶液抵抗Rと電荷移動抵抗rとが、比較的過渡応答が速いが両者の応答速度に違いを有することを利用し、図8に示す過渡応答方式を使用して測定している。
すなわち、図8(a)に示す測定制御手段からの信号出力により、二次電池12に図8(b)の様なステップ形状の定電流からなる単位電流を負荷に加えると、図8(c)の様に、応答速度の速い溶液抵抗Rによる電圧降下VRが電流の立ち上がり時点で先ず検出される。
そのあと、所定の時定数τ(≒C・r)で電荷移動抵抗rによる電圧降下分Vrが発生し、例えば通電開始から10秒程度の時間経過するとそれ以後の電圧値は略直線状となる。そこでその直線を充電開始時期にまで延長することにより、溶液抵抗Rによる電圧降下分VRと電荷移動抵抗rによる電圧降下分Vrとが分離して検出される。
かかる二次電池12の内部抵抗である溶液抵抗Rおよび電荷移動抵抗rの測定は、上記したOCV特性の測定時と同時に行うと共に、例えば10%毎の充電率と一対にしデータベース化して記憶することにより図9(a)および(b)の様なグラフが得られるので、それを初期値として設定する。更に放電時の休止時期等の適宜時期にも測定し、その値を常温時に換算するなど正規化し、測定時点における充電率とともに記憶する。
一方、分極電圧Epについては、その値を直接的に求めることが難しい。しかしながら図6(a)に示すごとく、例えば放電時にあっては、OCVから電池電圧を減算した電圧値が、二次電池12の内部抵抗と分極電圧Epによる電圧分に一致するが、内部抵抗による電圧降下分については上記した方法により直接的に検出できるからその値を減算することにより、各充電率における分極電圧Epの関係を示す図9(c)の様なグラフが演算により算出できる。
ただ分極電圧Epは、分極の時定数が極めて長いために、電流条件の安定している図3に示す充電開始後であって、特に分極特性が落ち着く程度の時間、例えば3〜5分程度経過してからの電池電圧の変化により求めることが好ましい。
また、分極電圧Epは拡散によるイオンの移動状態に依存するので、時間の経過で評価するタイミングを決める方法以外にも、例えば、3%程度の充電率の変化が生じた場合に評価する方法もある。
しかし、電池の拡散速度等に依存するので、より正確には、劣化具合、電流、温度、充電率変化或いは時間変化量等で測定タイミングを変更するのが望ましい。その場合のタイミングを求める方法としては、放電電流等の種々の条件での放電開始後の電圧変化の挙動から分極がほぼ一定となる時間、及び充電率変化を検出することにより、放電条件対測定タイミングのデータを採取しておき、このデータベースから測定するタイミングを求めることにより、より正確に、かつ、短時間に分極電圧Epを評価することができる。
あるいはまた、電流によらず、一定の充電率変化により略相似な分極電圧Epの変化特性を示す部分があるので、一定の充電率変化が生じた場合の電圧の変化により求めることも可能である。
ここで充電中におけるOCVは、充電前の最後の放電終了時に測定した値に、電流値を積分して求められる充電量から換算される充電率に対応するOCVの推定値を加算することにより算出できる。
また溶液抵抗Rと電荷移動抵抗rの値は、基本的には上記した方法により行う。しかし、前記したOCVの算出時にタイミングをあわせて充電をオフして充電電流をゼロにした条件下で直流抵抗分を測定するか、あるいは充電中における定抵抗負荷の切り換えによる過渡応答を利用して測定することができる。
なお、充電開始時における充電率が小さい場合には、充電が進行して充電率が増加するのに伴ってOCVも急速に変化して誤差も大きい。そこで、所定の充電率を超えるまでは、通常より小さい電流によって一定時間充電し、その間の電池電圧の変化を利用することによって、充電開始付近の分極電圧Epをより詳細に推定することができる。
ここで、図3の時刻t2において充電を定電流充電から定電圧充電に充電方法を切り換えて充電を行う場合、定電流充電の期間内においては電池電圧の変化を直接的に測定して分極電圧Epの推定に利用する。しかし定電圧充電の領域に入ると、充電電流の変化を測定し、その電流変化を電圧変化に換算して評価することにより、分極電圧Epの推定に利用する。
以上の様にして、二次電池12の等価回路を構成する溶液抵抗R、電荷移動抵抗rおよび分極電圧Epの値が、図9の様に、充電率の変化に対応させて求めることができるので、これらの値を二次電池12の特性を示す素子値の初期値とし、データベース化して記憶しておく。
以上、簡便に、電池単独で或いは充放電を利用して測定する方法を述べたが、この他にも連続的に特性取得方法があることは言うまでもない。その一例としては、負荷電流を連続的にパルス状に変化させてその応答から求めることも可能である。
この場合、負荷を断続的に例えば10秒間隔で切り替え、一定の放電用負荷電流に20秒周期の矩形波パルスの負荷電流が重畳した測定用負荷電流を流せば、図8(c)のような矩形波の応答波形が連続して得られることになる。この波形の上下の最外部を通る2本の包絡線の差が溶液抵抗Rと電荷移動抵抗rの電圧降下の和になるので、別途溶液抵抗Rを求めれば、10秒ごとに連続的に電荷移動抵抗rの大きさが求まる。
溶液抵抗Rは充電率依存性がほとんど無いため、別途測定した値を使用してもよいし、負荷電流にマイクロ秒オーダーの短い矩形波パルス電流を流し、その応答から求めてもよい。もちろん、10秒間隔の矩形波パルスが変化する瞬間の電圧、電流変化から求めてもよいことは言うまでもないが、ここでは、専用の測定パルスで測定するとして例を挙げている。
また、この2つの包絡線の差が矩形波パルス電流に対する電荷移動抵抗rと溶液抵抗Rとによる電圧降下分であるので、測定中の平均負荷電流だけ矩形波パルス電流が増加したとして包絡線の差を増加させれば、それが平均電流による電荷移動抵抗rと溶液抵抗Rの電圧降下分に相当する。従って、OCV特性からこの判明した電圧降下分を差し引いた特性曲線と、放電特性曲線との間の部分が分極による電圧降下分として評価できるので、簡便にデータベースを生成できる。
一方、二次電池12における各素子値の温度依存性については、図10の様に、横軸を絶対温度の逆数に、縦軸を抵抗値の対数で目盛ると、例えば略直線などの所定の形状に近似できる。そこで、上記した各素子値についての温度特性を予め測定し、保存をしておく。
そして二次電池12の実際の使用時にあっては、放電の開始時点における二次電池12の周囲温度から素子値の温度補正を、負荷電流の値から素子値に起因する降下電圧値に対する電流補正をすることにより、二次電池12の使用条件下における放電特性が算出される。
一方、充電率は常時に積算されて把握されているので、その時点における充電率と算出された放電特性とから、放電開始直後の放電電流、或いは後ほど詳細に説明する放電電力が変化せずに持続するという条件で、残時間が推測されるのである。
更に、放電特性において、現在の充電率からの終止の充電率までの間で区切られる、放電特性の曲線と出力電圧ゼロとの間の面積、すなわち、放電特性曲線の下部の面積(図6(b)における斜線部分)は、電池から出力される電力に相当している。したがって、この特性から電池の残電力の推定が可能となる。
そのためには、先ず、この下部の面積を放電特性下面積として求める。次に、現在から終止までの放電電荷量を、現在の充電率と終止の充電率との差を満充電容量に乗算することにより求める。その後、これらの放電特性下面積と放電電荷量とを乗算することにより、残電力を推定する。この様にして求められた残電力は、放電特性を忠実に再現しており、精度の高い残電力推定方法となる。
また、温度特性により放電特性を修正する必要があるが、実際には、放電中の電池の内部抵抗損により温度が上昇する。これは、電池パック、周囲条件によりほぼ決まるので、一定電流で放電させた場合の温度特性変化を充電率と共にデータベースに記憶しておき、あるいは、温度抵抗、熱容量から推定し充電率と共に算出しておき、各充電率における放電特性の温度依存性の推定を更に向上させることによって、精度の高い残時間推定や残電力推定が可能となる。
次に以下においては、上記した分極による電圧降下分である分極電圧Epの評価方法として、電圧での評価の代わりに抵抗値として評価することにより、温度依存性要素も、データベースに全面的に依存せず、演算によって算出可能とする例を示す。分極電圧Epは拡散により生じるので、その電圧には電流依存性がある。従って、電流依存性を分極による電圧降下を生じさせる抵抗分として拡散抵抗Zwを想定し、これを用いて残量推定を行うのである。
ここでは、電池の内部等価回路のワーブルグインピーダンスZwに電流が流れる場合にも抵抗成分として作用するとして、拡散抵抗Zwを定義して使用する。この抵抗値は、溶液抵抗R、電荷移動抵抗r以外の電圧降下を引き起こす成分をまとめて示すものとする。
なお、拡散による電圧降下は電流依存性があるので、拡散抵抗Zwは一定の抵抗成分として表わせないことが多い。そのような場合には、電流依存性を配慮した拡散抵抗Zwのデータベースを予め測定により構築し、その後、適時、前述のように分極電圧Epを測定できるので、同時に測定した電流と共に拡散抵抗Zwを算出して修正することにより、電流依存性を付加した拡散抵抗Zwとして残量推定に使用する。その他、拡散抵抗Zwを使用せず、分極電圧Epのままデータベース化し、その値を演算時に使用できることは勿論である。
次に図11に、上記した拡散抵抗Zwを使用し、温度依存性を考慮した放電特性を求めるための等価回路モデルおよびその周辺を含めた容量推定回路の回路構成の一例を示す。以下、このモデル例に従って、一定電力で放電させた場合の放電特性の推定方法、及び、それから求まる残電力量推定値を求める方法を示し、このモデルを残量推定に使用した場合の容量計としての残量推定処理の一例を説明する。
この例にあっても、電池の等価回路は図4に示したものと同様であるが、温度依存性を示すために、亀山他が2001年電池討論会において提案した「小型リチウムイオン二次電池の発熱解析」におけるエントロピーを配慮した熱収支式から、マイコンの放電特性シミュレーションに適した熱変化算出式を求め、温度推定に使用している。
ここで前記したエントロピーを配慮(考慮)した電池発熱モデルは、過電圧による発熱をQp、エントロピー変化による発熱をQs、電池周囲への発熱をQb、OCVの温度変化をdVo/dT、電池温度をTc、周囲温度をTr、電池の熱容量をCc、放電電流をI、定電流放電のV−I特性からの過電圧抵抗をRη、ファラデー定数をF、電池表面面積をA、熱伝達係数をhとした場合、Qp=I
2
・Rη、Qs=−Tc・ΔS・(I/F)=−Tc(dVo/dT)・I、Qb=−A・h・(Tc−Tr)であり、熱収支式は、Cc・(dTc/dt)=Qp+Qs+Qbになると指摘されている。
かかる熱収支式から、微小時間Δtにおいて電池温度がΔTcだけ上昇したとすると、Cc・ΔTc/Δt=Qp+Qs+Qbと表わすことができ、これより、ΔTc=Δt・(Qp+Qs+Qb)/Cが求まる。
したがって、各項目のTc、I、dVo/dT、RηからQp、Qs、Qbを求めることにより、ΔTcが求まり、更に推定温度は、Σ(ΔTc)+開始温度となるので、ΔTcの積算値で温度変化値を求め、開始温度との積算で温度が推定される。
更に温度等により電池の素子値が変化し、更に素子値の変化により温度等が変化するが、その場合の電流値は次の条件により求まる。この条件を満足する放電特性が、求める放電特性である。
先ず電池の素子値である溶液抵抗Rおよび電荷移動抵抗rと拡散抵抗Zwの値は、温度T・充電率Qおよび電流Iをパラメータとして測定されて予めデータベース化されているので、ある時点における温度Tと充電率Qおよび電流Iが判れば導出できる。
また負荷の使用電力Wが一定であれば、W=I×(開放回路電圧−(R+r+Zw)×I)の関係が成立するので、放電開始時におけるOCV、素子値および使用電力Wが判ると、電流値Iは演算により算出される。
更に、充電率Qが微小量ΔQだけ変化するのに要する変化時間Δtは、「ΔQ×満充電量/平均電流」で求められる。
ところで、上記した関係式を連立して解くことにより、放電特性を直接的に演算によって算出することも不可能ではない。例えば、1次の連立多項式に展開して解く方法等が考えられる。
しかし、通常、残量推定等を行う容量計は低コスト化を狙うため、演算パワーの小さいワンチップマイコン等を使用して容量推定するのが主流である。従って、一度の計算量が多くない、メモリの消費が少ない等の条件が必要と考えられる。
そのため、本実施例にあっては、算出の開始ポイントと次ポイントの値の差が少ないものとして次ポイントの値を算出し、更にその算出結果を使用して次ポイントを再算出することにより精度向上を図りながら、データベースの利用を最小限に抑制して、放電特性を示す曲線を推定可能とする算出方法の一例を使用する。
すなわち、開始ポイントである第1のポイントとそのポイントから少し充電率が変化した場合の第2のポイントを上記した関係式を用いて求めることを繰り返すことにより、放電特性と温度特性とを求めるのである。ここでの算出のポイントは、先ず、取りあえずは決まる値を元に他の部分を修正して放電特性をシミュレートすることにある。
更に、上記した素電池についてのデータベースと、熱抵抗に類するケースや電池構成の様な電池パックとしてのデータベースを個別に備えることにより、劣化、温度等に配慮した放電特性推定による残量推定が、更に小さなデータベースを利用して可能となる。
すなわち、データベースにより種々の電池パックに対応した容量計を構成する場合、目的の電池パックに対応した、素電池のデータベースと電池パックに関するデータベースを組み込むことにより対応する。
ここで、データベースの大きさを比較すると、素電池に関するデータベースは、通常、電流依存性等の詳細を必要とするので、データベースの大きさは増大する。それに対し、電池パックに関するデータベースは、通常は、電池パックの素電池の接続構成、例えば「2S3P」(3つの素電池の並列接続を2つ直列に接続した構成であり、Sはシリーズ、Pはパラレルの意で使用)の種別や、電池パックのケース等で決まる熱抵抗や熱容量、他程度の値しか含まないので、データベースは増大しない。
そのため、電池パックに関するデータベースをマイコンのデータ読み取り元であるEEPROM等のメモリに入れ、電池パックの構成を変更する毎にその電池パックに関するデータのみを更新可能とすることにより、マイコン自体の変更をすることなく、種々の電池パックに対応した容量計を構成することができるのである。
もちろん前述したように、素電池のデータベースを修正する値をEEPROM等に入れておき、素電池の変更にも対応することにより、更に種々の電池パックに対応した容量形を構成できるのである。
なお、上記した実施例にあっては、電池温度はエントロピーを配慮して求めるとしているが、放電率対温度特性をもとに、温度上昇特性を放電特性算出に取り込んでもよいことは言うまでもない。
更に、放電電力をパラメータとし、充電率を横軸に放電終止の最高温度を正規化すると、温度特性は略一定のパターンとなる。従って、データベースの大きさをそれほど増大することなく、放電特性が推定可能である。
また、一定電力で電池パックを使用した場合を想定して放電特性を推定するものとしたが、元となる使用電力値は、元々は、電池パックを装着している親機である電気機器18から通知され、それに基づいて電池のデータベースから容量計が算出するものであるが、実際の使用電力と異なる場合がある。そのため、実使用電力と通知電力が一定以上乖離した場合、実使用電力により残電力を推定することが望ましい。その場合、親機の方にその旨を通知することもまた望ましい。
以上、算出条件や算出方法、および、低コスト化等の方法例を示したが、図12に、放電特性、及び、温度特性のカーブ例と、その特性が決定される条件を模式的に示し、以下に説明する放電特性算出処理方法の算出のポイントを更に具体的に示す。
算出のポイントとして、前述したように第1のポイントを求めてから、条件が大きく変動しないとの条件で、充電率が変化した第2のポイントを求める。
今、第1のポイントが放電開始のポイントとすれば、温度としてはほぼ周囲温度Trが測定され、この場合の温度を電池温度Tcとして以下使用する。
また、第1のポイントの出力電圧は、電池パックの内部抵抗と電流とによる電圧降下分V1と、親機として備えた電気機器18の負荷による電圧降下分V2との和がOCVとなる。
次に、ある充電率ΔQだけ変化した場合の第2のポイントでは、第1のポイントの電流が流れたとすると第2のポイントまでの時間Δtが判明するため、温度上昇分ΔTcが算出されて第2のポイントの電池温度Tcが算出される。また、電池温度Tcと電流Iが分かるので内部抵抗等が求まり、第2のポイントの電圧電流が求まる。
しかしこのままでは、第2のポイントの計算結果が第2のポイントに反映されないので、さらに第2のポイントの計算結果を入れ、再度第2のポイントの放電特性および温度特性の値を算出する。このようにすることによりシミュレートの精度を向上させている。
次に、以上のように第2ポイントが求まったら、これを新たな第1のポイントとし、前述の第1ポイントから第2ポイントを求めたのと同様に、新たな第2ポイントの状態を算出する。これを続行することにより、放電特性と温度特性のカーブを求めることが出来る。最終的には、放電電圧が予め決めた放電終止電圧Vt以下になるまで続行することにより、全体の放電特性が求められる。
なお、内部抵抗として電池内部の電荷移動抵抗r等を元に説明していたが、電池パックとしては、内部配線抵抗等があるのでそれを含めて抵抗分の電圧降下とする必要がある。さらには、電池パック構成のデータベースを元に抵抗分を求める必要がある。
例えば、2S1Pの場合、電池内部抵抗は素電池一本分の2倍の抵抗となり、また、OCV特性としては2倍の値となるので、電池パック構成により適時変更して算出する必要があることは言うまでも無い。さらには、2S3Pの場合は、抵抗分としては素電池2×1/3=2/3本分となり、OCV特性としては素電池2本分となる。
従って、電池パックのデータベースとして、回路抵抗rcを測定しておき、それと素電池の接続構成から求まる電池内部抵抗分とを加算したものを抵抗分とし、OCV特性としては直列接続の電池分とすればよい。そして、この変換式自体は素電池の組み合わせデータを元に簡単に処理できるので、予めマイコンのソフト内に組み入れておけばどのような電池パックにも対応できる。
このような場合の構成方法の例を図1に示しておく。同図では、素電池のデータベース6と電池パックのデータベース4を有し、電池パックのデータベース等をEEPROMの様な書き換え可能なメモリに収納することにより電池パックの仕様変更に柔軟に対応できる。
次に、図13〜図15に放電特性を求める処理方法を表す流れ図を示し、図12を用いて更に具体的に以下説明する。図13は放電中における全体の流れを示す流れ図、図14は図13中における第1のステップAを求める流れ図、図15は図13中における第2のステップBを求める流れ図である。
図13で放電を開始すると、先ず、放電開始時点における充電率Q1と、電気機器18から通知される使用電力Wが検出され、更に充電率Q1の値とデータベース中のデータからその充電率Q1に対応するOVCが導出されたあと、第1ポイントにおける電流値の算出工程に入る。
図14で示す第1ポイントの演算工程は、放電開始でどのような素子値や電流値になるか不明の場合の算出方法を示しており、先ずは、充電率からOCVを求め、それが直接電流を決めるとして、以下の条件設定を行う。
すなわち、放電を開始すると、使用電力WおよびOCVの値のみから決まる暫定的な第1の電流が、「W/OCV」により算出される。また、放電開始時における電池温度Tcは周囲温度Trに略等しいと仮定し、第1の電流とQ1の値から、推定用のデータベースを利用して第1の素子値を導出する。
ここで、電流Iが決まるとデータベースから素子値が導出され、素子値が決まると、W=I×(OCV−I×素子値)の関係から電流が算出される関係があるので、素子値の導出と、導出された素子値を用いた電流の算出とを複数回(本実施例では2回)繰り返し行って電流の補正を行うことにより、第1ポイントにおける電流I1が推定される。
上記の様にして、放電開始時点である第1のポイントにおける電流値(第1の電流)I1が推定されると、図15に入り、一定充電率ΔQだけ充電率が減少した第2ポイントにおける電流値(第2の電流)I2の推定工程が実行される。
ここで、第2ポイントではまだ電流等が不明であるため、先ずは第1ポイントの電流I1が継続(持続)すると仮定して、到達時間及び温度を求める。なお、充電率Qが微小量ΔQだけ変化するのに要する到達時間Δtは「ΔQ×満充電量/I1」であるから、ΔQの充電率変化で上昇する温度変化量ΔTcはΔt・(Qp+Qs+Qb)/Cとなり、これによって第2ポイントでの電池温度Tcが求まる。
更に、電池温度Tcが判明するとデータベースから素子値が導出され、その導出された素子値を利用して電流を再計算することにより、より正確な第2ポイントの電流I2’が算出される。
第1ポイントの電流I1と第2ポイントの電流I2’が求まると、第2ポイントまではその平均の電流「(I1+I2’)/2」が流れると仮定して、その平均電流から第2ポイントの到達時間と到達温度を再計算する。
更に、この再計算から算出された温度を使用して第2ポイントの電流I2を求めることにより、第2ポイントの状態を算出したとして第2ポイントの演算を終了する。すなわち、1回目の計算では、第1ポイントの電流が第2ポイントまで持続するものと仮定して第2ポイントの電流を算出し、2回目の計算では第1ポイントと算出された第2ポイントの平均電流が持続するものと仮定して第2ポイントにおける電流値の補正を行っている。
以下、この第2ポイントの電流I2を第1ポイントの電流I1に置き換えてさらに次のポイントの電流を算出していく。これを、出力電圧が終止電圧Vt以下になるまで続行し、全体の放電特性を求めるのである。
ここで、上記した説明において電流のみをあげてきたが、電流が求まると電圧が直ちに求まるため、その説明を省略している。
以上、算出方法の一例を示したが、第2ステップで最終的に求まった電流を再度平均電流に戻して演算をすることにより精度を向上させる等も可能であることは言うまでも無い。
また、電池パックに関するデータベース等によりOCVや抵抗を電池接続状態により変更することや、回路の配線抵抗等を含めて抵抗を求めることは勿論であるが、さらにAV機器等の負荷となる親機の挙動を含めて算出し、放電特性精度を向上させることもできる。
それは、残量推定精度向上のためには、親機として備えた電気機器18の電源の効率も重要な要素となってくることである。例えば、親機の電源の構成がDDコンバータの場合、入力電圧によりDDコンバータの変換効率が異なってくるので、残電力算出の場合にDDコンバータの変換効率を加味して残電力算出を行えばさらに残時間推定精度が向上する。すなわち、放電特性算出の場合の使用電力として変換効率を含めた使用電力を求めて、これを放電特性算出に使用する。
通常、DDコンバータの入力電圧に依存するので、電圧対変換効率のデータベースを設けて、残電力推定の際に、目標使用電力に変換効率を加味し、目標使用電力の大きさを変更して放電特性曲線を推定する。
この場合、電源の変換効率は、親機から容量推定処理にデータベースとして渡すのが望ましく、データベース自体としては、電圧とその場合の変換効率とのペアのデータを、使用電圧範囲内で数ポイント分備えることが望ましい。データベースとしては、例えば、電池パックと親機の場合では、バッテリの使用開始前に通信で渡してもよい。このような場合は、通信の仕様を決めておけば容易に実現出来ることは言うまでも無いが、残量推定の前までにこれらの変換効率のデータを用意しておく必要があることは言うまでも無い。従って、電池パックとペアで使用する場合、予め、電池パック内の容量計のEEPROM等に書き込んでおいてもよい。または、電池パックのEEPROMに親機が自らデータベースを書き込んでも良い。
なお、さらに演算を繰り返すことによりシミュレーションの精度を向上させることが可能かと思われるが、演算量、演算時間、演算パワーと算出結果の精度から決める必要がある。実際の電池データからの演算結果は図14および図15に示す本方法でも十分な精度を有することを確認している。
また、電池パックのデータベース4として電池構成や内部抵抗等を含める必要があるが、さらに、素電池自体の変更に対する対応も可能なように構成できる。それは、素電池の放電特性曲線自体、電極材料にほぼ依存するので、電池の大きさを変更しても、OCV等はほぼ同じであり、電極面積等が変化することによる電荷移動抵抗r等の値の変化が生じる程度であり、挙動は類似している。その為、素電池のデータベース6において、各素子値を修正するデータをEEPROM等に記録させ、素電池の変化に対しても対応するように構成できる。
従って、このようなデータベースを有することにより、電池パックの構成や素電池それ自体の変更に対しても柔軟に対応可能な残量推定方法や装置が構築できる。このデータを図1に示す構成の例えばEEPROM等で構成される電池パックのデータベース4に含めておけばよいことは言うまでも無い。
なお、放電特性推定においては、周囲温度Trからの上昇により電池温度Tcを推定し放電特性推定の精度を向上させるが、この場合、周囲温度Trとしては、放電が停止されて長時間経過したあとの温度であると推定される放電開始前の電池温度Tcを周囲温度Trとして求めておき、その後の温度上昇を推定する。
しかしながら、周囲温度Trは一定の条件で使用されることは稀であり、その周囲温度Trが変化した場合には、上記の方法を利用して推定した電池温度と実測した電池温度との間に誤差が発生する。そこで現在の電池温度Tcの実測値と推定値の差から、逆に周囲温度Trの変化を推定することができる。そして、周囲温度Trの変化が推定されると、その変化した周囲温度を利用して放電特性の推定に利用することにより、周囲温度変化に対応した残量推定が可能となる。
具体的には、推定開始条件下で放電特性算出を開始し、開始時点と現在との2点における電池温度Tcと充電率を測定する一方、放電の開始時点において推定した現在の充電率での電池温度Tcを演算により推定する。そして、測定した電池温度と推定した電池温度との差が設定値を超えて大なら、周囲温度Trが変化したものと推定し、周囲温度Trを以下の推定値に修正するのである。
ここで、周囲温度の推定値を算出する式の例を示す。これは、放電開始から求めた現在の推定の電池温度(修正前の現在の電池温度推定値)と、現在の実測の電池温度(現在の電池温度)の差(修正前の電池温度誤差)が、元々測定して退避しておいた修正前の周囲温度(修正前の周囲温度)と、現在の実際の周囲温度(周囲温度推定値)との差に対応しているとして、修正前の周囲温度に修正前の電温度誤差を加算して、先ずは修正したと想定した周囲温度(修正後の周囲温度)を求めおく。次に、この修正後の周囲温度を元に再度現在の電池温度を推定(修正後の現在の電池温度推定値)を求め、これらの値から最終的な周囲温度を算出する。最終的な周囲温度は、(修正後の周囲温度−修正前の周囲温度)・(現在の電池温度−修正前の現在の電池温度推定値)/(修正後の現在の電池温度推定値−修正前の現在の電池温度推定値)+修正前の周囲温度から求めることができる。
なお、データベース構築にあたり、図8に示すようなステップ応答や、図19に示すような周波数応答で、電池内部の抵抗成分の値を測定することを説明したが、これに限るものではないことは言うまでも無い。
例えば、A/D変換機の電圧検出精度が低い場合、A/D変換値を多数回測定し、その平均値を取ることにより高精度の電圧測定を行い素子値の検出精度を向上させることが可能である。
この場合、電荷移動抵抗rの応答が速いので、図8のステップ応答を行う回路において、短いパルス、たとえば、μ秒オーダーの矩形波を出力させ、この応答波形のオン状態とオフ状態の電圧を多数回サンプリングして測定の分解能を向上させて素子値の検出精度を向上させても良い。
さらに、電荷移動抵抗rでは電圧変化が緩慢なため、通電前の電圧測定と通電中の電圧測定回数を増加させ測定の分解能を向上させることもできる。この方法は、A/D変換精度の低いマイコン等において有効であることは言うまでも無い。
さらには、実際のAV機器の使用に際しては、ステップ応答的な変化をすることがあり、この場合の応答から素子値を求めることも可能である。また、このように電流が変化する場合に、電流と電圧変化とその場合の時間経過から内部抵抗を求めることも可能である。
この場合、一定時間、例えば10秒間の前後の電圧電流変化から、10秒の応答に対する抵抗成分を求めこれを電荷移動抵抗rとして求めるものであり、さらに、多数の時間応答に対する抵抗成分を求めることにより、応答時間が短い場合の抵抗成分は溶液抵抗Rとして評価するものである。これは、抵抗成分の周波数分析に対応しており、演算パワー等に余裕がある場合には有効な手段となることはいうまでもない。
以上、電池残量の推定方法について記載したが、その残量推定における推定値全体の修正も可能であるので、以下、その詳細な説明をする。
二次電池12の放電が経過するにつれて、推定の残電力量と実測の電力量(電力積算値)が変化していくが、放電中の2つのポイントに着目し、2つのポイントでの推定の残電力量の変化分と、実測の残電力量との変化分とを求める。この場合、双方の変化分が等しければ、放電途中がどうあれ、推定していた値の変化と、その間の実測値変化とがよく一致していることとなり、推定値と実測値がよく一致していた一つの証明と考えられる。
この2つが異なっていた場合、推定値と実測値が異なることとなり、推定値の この2つが異なっていた場合、推定値と実測値が異なることとなり、推定値の精度が低いこととなる。そこで、係数Kとして、前回の実測値の差分=K×前回の推定値の差分、となる関係式を定義すると、推定値が正しい場合には、K=1となる。ただし、実際にはK=前回の実測値の差分/前回の推定値の差分≒1である。
従って、残量推定アルゴリズムの変更がなく、同様に推定を繰り返すとすると、「今回の実測値の差分=K×今回の推定値の差分」となることが予想される。すなわち、今回の放電で得られるであろう、今回の実測値の差分と今回の推定値の差分は一致しないと予想される。
そこで、「今回の実測値の差分=修正した今回の推定値の差分=K×今回の推定値の差分=(前回の実測値の差分/前回の推定値の差分)×今回の推定値の差分」として、推定値の差分を修正することが可能である。
従って、今、差分として、満充電から放電終止までとすると、「修正した今回の推定値=(前回の実測値の差分/前回の推定値の差分)×今回の推定値」が、期待でき、推定精度が向上することとなる。
実際には、第1ポイントを放電開始のポイントとし、その場合の推定値及び電力積算値を記録し、第2ポイントを放電終了のポイントとし、その場合の推定値及び電力積算値を記録し、このように得られた4つのデータから、係数Kを算出し、次回の残量推定値を修正することによって、より正しい残量推定値が学習効果として得られる。
なお、これは、放電条件が同一とした場合によい結果を期待できる。そのため、放電条件が前回と異なっている場合、係数を1に近づける等の対策を施すことにより、さまざまな場合で残量推定精度が高い残量検出方法が得られることとなることは言うまでもない。
以下、図16に示す例に基づき、上記した電池容量検出方法を利用して回路構成した電池容量検出装置10と、二次電池12と、電池保護部14とをケース内に一体に収納した電池パック16の構成を説明する。なお、二次電池12の特性および電池容量検出装置10における検出方法は上記したものと略同一なので、以下においてはその詳細な説明を省略する。
また電池パック16は、AV機器やパソコン装置あるいは携帯電話などの各種電気機器18に装着され、双方向通信が可能な電気機器18側の通信回路20に向けて電池パック16から検出データを送ることにより、電気機器18内のディスプレイを利用して電池容量の表示動作を行わせるものを示すが、電池パック16のケース上に表示手段を一体に備え、電池パック16が単独で電池容量の検出動作に加えて表示動作をするものも可能である。逆に、電池容量検出装置10で行っている制御動作の一部を、電気機器18側で行わせることもできる。
電池パック16内に収納される二次電池12は、複数個の素電池を直列あるいは並列に接続することにより、電池パックとして要求される容量および出力電圧が達成される様に構成している。
更に、素電池における素子値やOCV特性等のデータベース6に加えて、素電池の構成あるいは温度パラメータ等のパック状態の違いが判別できる電池パックデータベース4を個別に備えている。
ここで電池保護部14は、2つのFET22・22からなるスイッチング部24と、保護回路26とから構成され、スイッチング部24を二次電池12から電気機器18に向かう通電回路中に直列に介装して使用する、従来と略同様な構成のものである。
すなわち、保護回路26は例えばオペアンプ或いはコンパレータからなる比較器と基準電圧とを備え、コンピュータソフトウェアを使用することなくハードウェアだけで動作可能とすることにより、誤動作の発生をできるだけ抑制して安全性を高めている。
そして、二次電池12の電池電圧とスイッチング部24に流れる負荷電流の大きさを常時にチェックしておき、負荷電流の大きさが設定値を超えて上昇したことや電池電圧が設定値を超えて下降したことが検出されると、スイッチング部24に信号を送って負荷に対する通電を強制的に停止して二次電池12が破損するのを未然に防止することを基本構成とするが、本実施例にあっては更に、電池容量検出装置10に向けて制御状態に対応した信号を送り、異常状態になったことを知らせることを可能としている。
電池容量検出装置10は、主としてアナログ値の信号処理を行う外部回路群28と、1チップマイコンがその制御の中心として使用されてデジタル値の信号処理を行う制御部30とから構成される。そして、外部回路群28から出力される各種の測定値が制御部30に送られ、その制御部30に備えたROMに内蔵されたプログラムによりデータベース2を参照しながら、測定値が演算されるなどして全体の動作がソフトウェア的に制御されるものである。
ここで外部回路群28は、二次電池12の電池温度Tcに対応した信号を出力する温度検出回路32と、二次電池12の端子電圧に対応した信号を出力する電圧検出回路34と、二次電池12に流れる電流に対応した信号を出力する電流検出回路36と、二次電池12の回路定数を検出するための負荷電流を二次電池12に流す負荷回路38とから構成される。
温度検出回路32は、サーミスタの様な温度検知手段40を二次電池12に接近して備え、温度検知手段40から出力される温度変化に対応したアナログ値をデジタル値に変換して制御部30に送る。
電圧検出回路34は、二次電池12の両端に接続されて端子間に出力される電圧を取り出したあとデジタル値に変更して制御部30に送るものであって、電池電圧とOCVの測定に使用される。
電流検出回路36は、二次電池12と直列に接続された抵抗44の両端に発生する電圧値をデジタル値に変換して制御部30に送るものであって、二次電池12に流れる電流値を測定するために使用される。
負荷回路38は、図8に示す過渡応答方式によって溶液抵抗Rと電荷移動抵抗rとを分離して測定するためのものであって、二次電池12から電気機器18に対する通電が停止されている休止期間中に、制御部30から送られる信号によってスイッチングトランジスタ42をオンさせ、そのトランジスタ42と直列に接続された抵抗46・44に通電させる。この通電に伴う図8(b)または(c)に例示する二次電池12の過渡応答状態を、電圧検出回路34と電流検出回路36で同時に測定することにより、二次電池12の内部抵抗を測定可能とする。
以下において、図17および図18に示す流れ図にしたがって、電池パック16の動作手順を更に詳細に説明する。
先ずEEPROMの様な所定の記憶手段上には、素電池データベース6として、図2に例示する素電池のOCV特性に加えて、標準状態における二次電池の図6に例示する放電特性および図9に例示する各素子値が予め測定され、通常の制御時における初期値としてデータベース化されて記憶されている。
ここで本実施例にあっては、データベースとして記憶するOCV特性データとして、充電率の算出用と残量算出用とに少なくとも2種類備えている。すなわち、素電池について実際に測定したOCV特性は図2の様な滑らかな曲線ではなく、図21(a)において破線で示す様なショルダー(変曲点)を有することが一般的である。そこで、OCV特性をそのまま利用する充電率の推定時には、測定値をそのままデータベース化した第1のOCV特性を忠実に再現したデータベースを用意することにより、充電率を推定する際の誤差を最少限に抑制する。
一方、放電特性の推定時には、図21(a)に示す実際の測定値におけるショルダー部分などの凹凸を滑らかにして図21(b)の実線で示す様な曲線とし、その曲線をデータベース化した第2のOCV特性を用意する。そして、この第2のOCV特性に基づき、R・r・Zw等の各素子値がデータベース化される結果、素子値の変化具合が抑制され、データベース化した際のデータ量を減少させることを可能としている。
また、電池パックデータベース4としては、素電池の直列あるいは並列状態の構成あるいは温度パラメータ等のパック状態の違いが判別できるデータが記憶されている。そして、素電池および電池パックのデータベースを含む推定用データベース2から、組電池としての各種データが導出あるいは算出される様にしている。
そこで図17のステップST1において、前記した初期値に基づく所定の初期設定を行ったのち、ステップST2からの電池容量検出工程に入る。
図17のステップST2において、二次電池12が休止中か否かを判定し、休止中でない場合は更に、ステップST6で放置中か否かが、ステップST3で放電中か否かが、ステップST4で充電中か否かが、更にステップST5において電池保護部14が作動しているか否かが判定され、各判定結果に基づいて図18に示す各処理動作が行われる。
ここでステップST2の判定が休止中であれば、ステップST21に移って、休止状態の開始から継続して30分、2時間、4時間あるいは8時間の設定時間が経過したかが判定される毎に図18(a)に示すOCVの検出工程に入る。しかし、図17のステップST6で24時間以上経過したことが判定されると放置中と判断して、例えばステップ61で24時間の経過が判定される毎に、ステップ62に移って放置中における残量補正工程が行われる。
図18(a)に示すOCVの検出工程は、ステップST22において二次電池12の端子電圧が測定される。更にステップST23において、測定された端子電圧が2点目以降であるか否かが判定され、2点目以降であればステップST24に移って図5に示すOCVの推定動作が行われるが、そうでない場合は、測定された端子電圧を保存して戻る。
図17のステップST62で行われる放置中における残量補正工程は、例えば24時間等の所定の長時間が経過する毎に実施されるものであって、かかる段階にあってはOCVの値も安定しているので、前記した様な推測によるのではなくOCVを実測し、その実測値と第1のOCV特性に基づいて現在の充電率を決定するとともに、検出されたOCVの変化に応じて満充電容量を補正する。
ここで長時間の放置中にあっては、図22(a)に例示するごとく、例えば充電率が50%かそれ以下であれば電池温度Tcの大小に拘らず満充電容量の減少は殆ど認められないが、電池温度Tcが30℃を超えると、図22(b)あるいは(c)のごとく、放置中の充電率が大きくなるほど満充電容量の減少が大きくなる傾向にある。
そこで、図22に示す関係により、例えば10%毎の各充電率について温度と時間経過に伴う充電率変化に対する満充電容量の変化を示す補正量の補正データベースを予め作成し、記憶させておく。そして、上記の様にしてOCVを測定し充電率を求めると同時に平均放置温度を検出し、前記補正データベースを利用して満充電容量の減少量を推定し、必要な補正を行うのである。
更に、充電率の測定と同時に溶液抵抗Rと電荷移動抵抗rの値も測定することによって、より正確に満充電容量を補正可能となるが、充電率の変化が一定値を超えた場合にのみ測定を行わせることにより、電池の消費電力を抑制することとなって好ましい。
次に、図17のステップST3において放電中であることが判定されると、図18(b)の放電処理工程に移る。かかる放電処理工程にあっては、ステップST31において放電電流値が、ステップST32で二次電池12の周囲温度が測定されたあと、その測定された値を用いて図9に示す素子値を補正することにより、ステップST33において図7に例示する放電特性を算出し、この算出された放電特性を用いてステップST34において残時間を推定する。
また前回に算出した充電率に対し、測定した放電電流から換算した充電率をステップST35で積算処理することにより、現在の充電率を算出したあと、次のステップST36に移る。
ステップST36では、電池電圧が予め設定した最低電圧を下回ったか否かを判定し、下回ったことが判定されると、ステップST37において電池保護部14に信号を送ることによってスイッチング部24を強制的にオフし、放電を終了する処理を行う。
なお、上記した残容量の推測は、一定電力で放電する場合を想定したものである。しかしながら、サージ電流が流れる機会が多い機器に適用する場合にあっては、サージ電流が流れても機器がシャットダウンを起こさせない仕組みが必要である。
そこで、サージ電流が検出された場合あるいはサージ電流が予め予想される場合にあっては、図23において太線で示す様な内部抵抗や分極のみを考慮した一定電力での放電特性に対し、図23において一点鎖線で示すごとく、電池の内部抵抗や回路抵抗にサージ電流を掛けて算出した電圧降下を見込んだ放電特性を算出し、そのサージによる放電特性がシャットダウン電圧Vtを超えて低下する時点までの残時間を推定することにより、余裕を持たせた残量推定が行われる。サージによる影響は電池が劣化した場合により大きく、有効な手段となる。
なお、サージ電流の様に実際に電圧が大きく低下する場合に限らず、特に動作中に電池残量の不足状態が発生することを極力避ける必要がある機器にあっては、動作状態を想定して残量の一部を予め保険として確保しておき、その残りの残量を上記した残量推定で通知することもできる。
更に、上記した実施例にあっては、終止電圧Vtを設定し、その電圧Vtを下回るまでの時間を残時間として通知する様に構成したがそれに限らず、上記した放電時における電流や電池温度の推定機能を利用し、電池に流す最大電流や最大上昇可能温度を予め設定し、演算により推定された電流や電池温度がその設定値を超える時点を機器の終止条件とすることも可能である。
更に、図18(b)におけるステップST38においては放電が終了したか否かを判定し、放電終了の場合は、図8に示す方法および負荷回路38を用いて、二次電池12の素子値中における溶液抵抗Rおよび電荷移動抵抗rをステップ39で個別に測定してその値を保存するとともに、ステップ40において学習処理動作を行う。
学習処理動作は、上記の様にして測定あるいは算出した溶液抵抗R、電荷移動抵抗rおよび拡散抵抗Zwを充電率とともに記憶する一方、電流依存性の修正、温度係数の修正および充電率の修正を行い、過去に記憶した同様な数値と比較処理を行うものである。
ここで比較した数値が一定の範囲内であれば、その新しい数値が過去の数値に代えて使用可能とする処理を行うが、範囲外であれば、その値を使用することなく保存のみにとどめる。
そして、次の回に測定された値が前回から一定範囲内の値であることが判定されると、前回と今回の値を平均するなどして使用するとともに、前々回以降のデータを保存する。
逆に、次に測定された値も範囲外になった場合、高温状態で劣化が急激に進むなどしたものと判断し、その値を使用に供すると共に,前々回以前のデータは破棄する。
なお、携帯電話機の様に、待機中も微小であるが間欠的に動作してパルス状に駆動電流が流れる場合にあっては、放電電流値を正確に測定することもOCVを測定することも何れも難しい。この場合にあっては、電流がオフ時における電圧を断続的に検出し、図24において破線で示す包絡線を求め、その包絡線が低下しつつOCVに漸近することを利用して、電流がオフと仮定した場合の最終到達電圧を推測することにより、結果的にOCVを推測可能とするのである。
次に、図17のステップST4で充電中であることが判定されると、図18(c)に示す充電処理工程に入る。かかる工程にあっては、ステップST41において充電電流を測定するとともに、ステップST42に移って充電率の算出が行われる。
ステップST42では、前回に算出した充電率に対し、今回測定した充電電流から換算した充電率を積算処理することにより現在の充電率を算出するものであって、更に次のステップST43に移って拡散抵抗Zwの測定が行われたあと、測定された値はそのときの充電率とともに保存される。
なお充電がパルス電源によって行われ、上記した電圧と電流の測定が所定周期によるサンプリングによって行われる場合には、充電時におけるパルスの隙間を連続的にサンプリングしてしまい、測定ができなくなる可能性がある。そこで、その様な条件が判定された場合にあっては、電圧電流測定時の位相を、例えば1秒毎に所定量づつずらせて平均値をとることにより、測定の欠落を減少させることができる。
更に図17のステップST5において電池保護部14の作動が検出されると、その検出内容に対応した値に対応させて、上記のようにして算出あるいは測定した充電率は修正が加えられる。
なお図19(a)は、上記した電荷移動抵抗rを周波数応答方法で測定する場合の回路構成であって、測定制御手段48からオペアンプ50を介してトランジスタスイッチ52に交流信号を送ることにより、負荷54に対して電流変調をかけることを可能とする。そして、変調周波数を変化させながら、図8(a)で示す電圧検出手段および電流検出手段で電流と電圧を測定するとともに、両者の変調振幅と位相の関係を図19(b)の様に複素インピーダンスのプロットをすることにより、実数部との交点の値から、溶液抵抗Rと電荷移動抵抗rの値を個別に測定できる。
また、二次電池12の劣化がすすむと、その等価回路は図4(a)から図20(a)に変化する可能性がある。この様な場合にあっては、前記した図19の方法を用いて素子値を測定すると、その複素インピーダンスのプロット結果は図20(b)の様になって、劣化によって増加したr2の成分も分離して検出できる結果、劣化の程度がより具体的に判定できる。
二次電池12の内部抵抗の測定方法については、更に、電池保護部14に備えたスイッチング部24を利用し、放電中などの適宜時期に電気機器18に対する通電を停止することにより測定できる。すなわち、通電の停止直後における電圧応答曲線は図8(c)と類似の形状となり、その過渡応答特性により溶液抵抗Rと電荷移動抵抗rとが分離して検出できるのである。
以上、如何にして内部抵抗を分離して検出するかについて述べてきたが、前述したように、内部抵抗を必ずしも分離して検出する必要が無いことは言うまでもない。内部抵抗を直流抵抗分として一括して評価することは、放電特性がOCV特性から内部抵抗による電圧降下分と分極による電圧降下を減じたものであると定義し直すことである。従って、今まで記載してきた構成がそのまま適用できることは明らかであるので、詳細な説明は省略する。
また、内部抵抗を測定する際に、説明を簡単にするため、定電流負荷としてその応答を観測することによりそれぞれの抵抗分を推定するとしたが、勿論、定抵抗負荷でもよいことは言うまでもない。
本発明では、電池パラメータを測定し、それを次回の容量推定に使用することが本質であり、また、負荷変動により変化する電圧、電流の変化から抵抗成分を分離測定することは当業者にとって容易であるので、詳細な説明は省略する。
更に、負荷変動が定電流負荷や抵抗負荷に限らず、接続した機器の負荷変動によっても観測でき、その結果で電池パラメータを観測することも可能である。これは、溶液抵抗Rを測定する時間差をτRとして、時間差τRをもつ2点の間の電圧と電流のそれぞれの差分、ΔVR,ΔIRを検出して、R=ΔVR/ΔIRとして求めるもので有る。この場合、τRが短すぎる場合、幾つかのτRを定義しておき、夫々の場合のRと時間τRとのプロットにおける収束値(例えば元々の時間差τRとして推定される値)を検出することにより溶液抵抗Rを求めることが出来る。同様に、電荷移動抵抗rを測定する時間差をτrとして、その間の電圧、電流変動から求める。更には、急峻な電流変化が期待できない場合は、溶液抵抗R、電荷移動抵抗rをまとめて直流抵抗分として測定し、放電特性を推定しても良いことはいうまでもない。
また、満充電容量として、充電中に二次電池に供給された充電電流を積分することにより得られる充電量と、充電前後の充電率の差で除して求めることで説明してきたが、前述したように、放電中の放電電流を積分することにより得られる放電量を、放電前後の充電率の差で除して求めることもできる。
この場合、放電により検出した満充電容量と、充電により検出した満充電容量とは、通常はほぼ一致するが、高温放置劣化等を経験した場合は異なってくる。従って、放置中にマイコン内部の時計回路等で一定期間毎に周囲環境条件を測定して高温放置等を検出できるが、さらに、放電で検出した満充電容量と、充電で検出した満充電容量の差が大であることを検出した場合には、高温放置等で劣化が一挙に進んだことが裏付けられるので、接続機器等への通知や、表示を確実に行うことができる。
また、放電開始時に放電特性を推定して残時間を推定し、その後、電流積算により充電率の変化を検出しながら残時間を変更して行くが、放電終止電圧近くになり、実際の放電電圧変化と推定していた放電電圧の変化とが異なってくる場合がある。
このような場合、実際の放電電圧の変化による残時間推定値に、積算により推定した残時間推定値をあわせることが好ましい。そのため、電池電圧の変化を監視しておき、推測した放電特性と異なる場合には、推測した放電特性の示す値が、実測した値に近づくように、残時間を推定するために使用している充電率を変更することによって推定値と実測値を合わせ、残時間推定値の精度を向上させても良いことは言うまでも無い。
また更に、測定していた電池電圧が急速に終止電圧に近づくような変化が生じた場合には終止電圧間近であるので、残量が無いものとして接続機器に終了を促すような緊急通信を送付してもよいことは言うまでもない。
なお、実測により温度推移のデータベースを作成し、それを用いて温度依存性を考慮してもよいことを先に述べたが、図11の等価回路を用いて演算により温度依存性を計算することにより、データベースの大きさを小さくすることを可能とする。演算方法は、上記した通りである。
また、先に電池の残量推定方法について述べたが、この推定手段が電池パック側にある必要が無いことは言うまでも無い。その場合、例えば残量推定処理を電池パックが装着される機器側の制御手段に組み入れる等により、推定処理自体を電池パック側から取り除くことが可能である。その場合、コスト削減や、推定処理の速度向上等のため、推定処理に必要な大部分のデータベースは推定処理手段と共に機器側に置くことが望ましい。
具体的には、電池パックを構成する素電池のデータベース6を電気機器18側に置き、データベースの量自体が大きくない電池パックのデータベース4や素電池のデータベースを修正するデータベースを電池パック16側に置き、電池パック16とそれを使用する電気機器18とを接続した場合、電池パック16と電気機器18間の通信手段により電気機器18側に必要なデータベースを取り込むことにより、推定に必要なデータベース2を機器側に備えることが可能である。このような構成によれば、素電池自体の変更や電池パックの構成の変更に対しても対応可能となることは言うまでも無い。
さらに、素電池の内部抵抗等を測定し、データベースを修正することを述べたが、この測定手段を含め、電池の電圧、電流等の検出手段は電池パック側に残し、電流積算値や内部抵抗測定値等を電池パック内で測定し、機器側に送信することにより、先に述べてきた残量推定方法をそのまま実現できることも言うまでも無い。
また上記実施例では、電池容量検出装置10の一部または全部を電池パック16内に一体に収納した場合にあっても、電池パック16内の二次電池12から駆動電力を供給する例を示した。しかしながら、図25に例示する如く、小型二次電池あるいはキャパシタからなる電子回路の駆動専用電源60を電池パック16内に同時に備え、その専用電源60で電池容量検出装置10の回路駆動させることにより、残量を検出すべき二次電池に対する電流消費の影響が防止され、OCVおよび電池残量を正確に測定できる。
なお、専用電源60の電圧値が電圧監視手段61により常時に検出され、その値が設定値を下回ったことが電圧判定手段62において判定されると、スイッチ制御手段63によりスイッチ64を切り換えて二次電池12から専用電源60に充電を行う。そして、充電が完了するとその間の充電量を充電量検出手段65で検出し、二次電池12における現在の残量から検出された充電量を電池残量算出手段9で差し引くことにより、残量の補正が行われる。この場合、専用電源60に対する充電量が一定であれば、この一定量を予め記憶させておき、専用電源60を満充電にさせるたびに充電量を検出すること無しに一定量を減算させることも可能である。
更にまた、電池パック16内に備えたA/D変換器におけるキャリブレーションを、その電池パック16を装着する電気機器18側からの命令で行える様にすることもできる。これは、電池パック16内に備える電池容量検出装置10のソフトウェア中にキャリブレーション用のサブルーチンを予め組み込んでおき、電気機器18側からの命令でそのサブルーチンが実行されるものである。
具体的な処理手順としては、電気機器18側から電池パック16側にA/D変換を行う命令を送出し、電気機器18はその変換されたA/D変換値を読み込み、その値が最適か否かを判定する。そして、最適な値でないなら、キャリブレーション値を電池パック16側に送出し、再度A/D変換値を読み込んで最適な値と判定されるまで繰り返す。
上記したキャリブレーション動作を初期組み立て時において自動化することにより、コストの低減が図れる。また、このキャリブレーションされた最適な値は、電気的消去可能な不揮発性メモリに書き込むことにより、組み立て後の経時変化に対応できるとともに、システムリセットによるリセットスタート時に対応できて好ましい。