JP4258788B2 - 光学活性ボロン化合物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は新規な光学活性ボロン化合物に関するものである。更に詳細には、この発明は、新規な光学活性ボロン化合物、その製造方法およびその光学分割法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまでに光学活性な試薬を用いてカルボニル化合物を不斉還元、不斉アルキル(アリール)化し光学活性アルコール化合物を製造する方法は数多く知られている。例えば、Corey や樫原らによる光学活性なボラン錯体を用いる方法(E.J.Corey and A.V.Gavai, TetrahedronLett., 29,3201(1988)., 樫原宏,鈴木幹夫,小原義夫,特開平6-329679) ,Meerwein-Ponndolf-Verley(MPV) 型不斉還元法(M.M. Midland, D.C.McDowell, and Gabriel, J.Org.Chem., 54,159(1989).) ,酵素や微生物を用いる方法(G.Frater, Helv.Chim.Acta, 62,2815, 2829(1979).),野依やSeebach らのBINAP錯体(R. Noyori, I.Tomino, Y.Taminoto, J.Am.Chem.Soc., 101,3129(1979). A.G.Olivero, B.Weidmann, D.Seebach, Helv. Chim. Acta, 64, 24858(1981).) など多数の方法がある。しかし、学術的に優れた方法であっても不斉還元や不斉アルキル化の技術の工業化では、(1)コスト面から光学活性試薬の量が基質のカルボニル化合物に対して1000〜10000分の1モル程度の触媒量で済むこと、(2)得られたアルコール体の光学純度および化学収率が高いこと、(3)操作が簡単であること、などが要求されるため実用化されることが極めて少ないのが現状である。−方、不斉シアノ化に関しては、Lukevicsらによる方法(I, Iovel, Y. Popelis, M. Fleisher, E. Lukevics: Tetrahedron; Asymmetry, 8, 1279 (1997))がある程度でまだまだ未開発であり、優れた報告はほとんど知られていない。
また、これまでのラセミ化合物のジアステレオマー法(化学総No.4、「不斉反応の化学」、日本化学会編、学会出版センター(1974))による光学分割法には、多数の優れた分割剤が開発され、種々のラセミ化合物の光学分割に利用されている。例えば、シンコニンなどの光学活性な塩基を用いてラセミ体のカルボン酸を光学分割する方法、酒石酸などの光学活性なカルボン酸を用いてラセミ体のアミン塩基を光学分割する方法があり、特に、塩基性の弱いラセミ体のアミン塩基に対しては、光学活性なカンファースルホン酸、ブロモカンファースルホン酸、ビナフチルリン酸が用いられている。光学活性なマンデル酸を用いたdl−アミノ酸の光学分割法(田代泰久、特公昭60−156654)も知られている。ジアステレオマー法は、優先晶出法に比べ応用範囲が広く、より効率的な方法であり、現在最も利用されている光学分割法である。しかしながら、今後益々優れた光学分割剤の創出が渇望されている。その理由としては、実際の光学分割において、1つの光学分割剤につき、極めて効率よく光学分割ができるラセミ体は、かなリ化学構造が限定されるからである。また、光学分割剤の回収率が高くなけれぱ、コスト面において工業的な利用は困難である。不斉識別能や結晶性の向上も今後の課題である。さらに、光学分割剤は、不斉触媒などに比べ多量を用いるため、その製造は、簡便な操作で大量に、しかも安価にできることが重要である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、カルボニル化合物の不斉還元、不斉アルキル化もしくはアリ−ル化、不斉シアノ化反応において、(1)光学活性試薬の量が基質のカルボニル化合物に対して1000〜10000分の1モル程度の触媒量で済むこと、(2)得られたアルコール体の光学純度および化学収率が高いこと、(3)操作が簡単であること、などの条件を満足できる不斉触媒を見出すべく鋭意研究した。その結果、光学活性ボロン化合物およびその光学活性ボロン化合物の錯体を用いると、簡便な操作で、100%eeという最高の不斉収率および高い化学収率で種々の光学活性アルコール化合物を得ることを見出し、かつ、不斉触媒の量を、基質のカルボニル化合物に対して1000〜10000分の1モル程度に下げても同様な好結果が得られることを見出した。
更に、本発明者は、光学活性ボロン化合物を利用することによって、様々な条件を満足する光学分割剤を開発し、種々の酸性官能基を持つラセミ化合物を光学分割することで光学活性体を効率よく安価に製造することができることを見出した。
したがって、かかる知見に基づいてこの発明を完成するに至った。
【0004】
したがって、この発明の目的は、工業化に耐え得る不斉触媒として使用することができる光学活性ボロン化合物およびその光学活性ボロン化合物の錯体を提供することである。
また、この発明の別の目的は、かかる光学活性ボロン化合物およびその光学活性ボロン化合物の錯体の製造方法を提供することである。
その上、この発明の更に別の目的は、かかる不斉触媒を使用して、カルボニル化合物を不斉還元、不斉アルキル化もしくはアリ−ル化、不斉シアノ化し、種々の光学活性アルコール化合物を効率良く製造することができる光学活性アルコール化合物の製造方法を提供することである。
更にまた、この発明は、この発明に係るある種の光学活性ボロン化合物によりラセミ化合物をジアステレオマー法により光学分割することができる光学分割方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、この発明は、下記一般式[I]、[II]、[III]、[IV]、[V]、[VI]、[VII]、または[VIII]で表される光学活性ボロン化合物または下記一般式[IX]で表される光学活性ボロン化合物の錯体を提供することによって、簡便な操作で、100%eeという最高の不斉収率および高い化学収率で種々の光学活性アルコール化合物を得ることができるとともに、不斉触媒の量を、基質のカルボニル化合物に対して1000〜10000分の1モル程度に下げても同様な好結果が得ることができるという大きな利点がある。
【0006】
また、この発明は、上記目的を達成するために、下記一般式[X]で表されるジアルコール誘導体を、下記−般[XI]で表されるアミノボラン誘導体に反応させて、下記一般式[I]で表される光学活性ボロン化合物を得ることからなる光学活性ボロン化合物の製造方法を提供することによって、光学活性ボロン化合物[I]を簡単に、効率的に、大量に、かつ、安価に製造することができるという利点がある。
更に、この発明に係る製造方法において、光学活性ボロン化合物[I]を更に下記一般式[XII]で表される金属化合物と反応させて、下記一般式[II]で表される光学活性ボロン化合物の錯体を得ることによって、光学活性ボロン化合物[II]の錯体を簡単に、効率的に、大量に、かつ、安価に製造することができるという利点がある。
更にまた、この発明は、下記一般式[XII]で表されるカルボニル化合物を、光学活性ボロン化合物[I]もしくは光学活性ボロン化合物の錯体[II]を使用して、下記一般式[XIII で表されるアルコール化合物を得ることによって光学活性アルコール化合物を簡単に、効率的に、大量に、かつ、安価に製造することができるという利点もある。
その上、この発明は、光学活性ボロン化合物[IV]または[VIII]によりラセミ化合物をジアステレオマー法により光学分割することからなる光学分割方法を提供することによって、高度な不斉識別能と高い結晶性により酸性官能基を持つラセミ体を極めて効率よく光学分割できること、多種類の酸性官能基を持つラセミ化合物を光学分割できること、光学分割剤の回収率が高いこと、光学分割剤が簡便な操作で大量に、しかも安価に製造できることなどの条件を満足させる光学分割剤を開発し、種々の酸性官能基を持つラセミ化合物を光学分割することで光学活性体を効率良く安価に製造することに利用することができるという大きな利点もある。
【0007】
【発明の実施の態様】
この発明に係る光学活性ボロン化合物は、一般式[I]:
【0008】
【化14】
(式中、Z1 およびZ2 は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ炭素原子または炭素原子数が6ないし10のアリール基を意味し、
R1aおよびR1bは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
n1 およびn2 はそれぞれ1ないし5の整数であって、n1 +n2 はZ1 の置換位置の数を超えないものとし、
R2aおよびR2bは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
n3 およびn4 はそれぞれ1ないし5の整数であって、n3 +n4 はZ2 の置換位置の数を超えないものとし、
R3 およびR4 は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
R3 およびR4 とは互いに結合した場合には、炭素原子数が2ないし7のアルキレン基を意味し、
mは0または1ないし3の整数を意味する。);
または一般式[II]:
【0009】
【化15】
[式中、Mは、一般式[IIIa]:
M1 Ap
(式中、M1 は、半金属原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアルミニウム族金属原子を意味し、
Aは、水素原子、シアン基、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
pは1ないし4の整数を意味する。)
で表される金属化合物または一般式[IIIb]:
R5 M2 X
(式中、R5 は、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
M2 はマグネシウム原子もしくは亜鉛原子を意味し、
Xはハロゲン原子を意味する。)
で表される金属ハライド化合物を意味し、
Z1 、Z2 、R1a、R1b、R2a、R2b、n1 、n2 、n3 、n4 、R3 、R4 およびmは前記と同じ意味を有する。
で表される。
【0010】
上記一般式において、アルキル基とは1価の、直鎖状もしくは分岐状の、飽和脂肪族炭化水素基を意味し、その具体的な例としては、その炭素原子数によって、メチル,エチル,n-プロピル,i-プロピル,n-ブチル,i-ブチル,sec-ブチル,tert- ブチル,n-ペンチル,n-ヘキシル,n-ヘプチル,n-オクチル基などが挙げられる。
シクロアルキル基とは1価の飽和脂肪族環状炭化水素基を意味し、その具体的な例としては、その炭素原子数によって、シクロプロピル,シクロブチル,シクロペンチル,シクロヘキシル,シクロヘプチル基などが挙げられる。
アリール基とは1価の、非置換もしくは置換芳香族環状炭化水素基を意味し、置換基としては、例えば、炭素原子数が1ないし6のアルキル基などを単数個もしくは複数個有していても良い。かかるアリール基の具体的な例としては、フェニル,α−ナフチル,β−ナフチル、o-トリル,m-トリル,p-トリル,2,3-ジメチルフェニル,2,4-ジメチルフェニル,2,5-ジメチルフェニル,2,6-ジメチルフェニル,3,4-ジメチルフェニル,3,5-ジメチルフェニル,2,3,4-トリメチルフェニル,2,3,5-トリメチルフェニル,2,3,6-トリメチルフェニル,3,4,5-トリメチルフェニル,3,4,6-トリメチルフェニル,2,4,6-トリメチルフェニルなどが挙げられる。
アラルキル基とは、上記アリール基に上記アルキル基が結合した基であって、該アリール基には、例えば、炭素原子数が1ないし4のアルキル基などの置換基が単数個もしくは複数個置換されていてもよい。かかるアラルキル基としては、例えば、ベンジル,o-メチルベンジル,m-メチルベンジル,p-メチルベンジル,フェネチル,o-メチルフェネチル,m-メチルフェネチル,p-メチルフェネチル,フェニルプロピル,o-メチルフェニルプロピル,m-メチルフェニルプロピル,p-メチルフェニルプロピル,フェニルブチル,α−ナフチルメチル,β−ナフチルメチル基などが挙げられる。
また、R3 とR4 が−体となった場合のアルキレン基とは、2価の飽和脂肪族炭化水素基を意味し、かかるアルキレン基としては、例えば、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子,塩素原子,臭素原子ならびにヨウ素原子が挙げられる。
【0011】
上記一般式M1 Apで表される金属化合物は、M1 が半金属原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアルミニウム族金属原子を意味し、Aが水素原子、シアノ基、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、pが1ないし4の整数を意味する。かかる金属化合物において、M1 で表される半金属原子としては、例えば、ホウ素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子などが挙げられ、アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子などが挙げられ、アルカリ土類金属原子としては、例えば、マグネシウム原子、カルシウム原子などが挙げられ、アルミニウム族金属原子としては、例えば、アルミニウム原子などが挙げられる。かかる金属化合物としては、例えば、ボラン、水素化ケイ素、水素化ゲルマニウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムなどの金属水素化物、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化ジメチルアルミニウム、シアン化トリメチルシランなどのシアン化金属、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、シクロプロピルリチウム、シクロヘキシルリチウムなどのシクロアルキルリチウム、フェニルリチウム、1−ナフチルメチルリチウム、2−ナフチルメチルリチウム、1−ナフチルリチウム、2−ナフチルリチウムなどのアリールリチウム、ベンジルリチウムなどのアラルキルリチウムなどが挙げられる。
また、上記一般式R5 M2 Xで表される金属ハライド化合物において、R5 は、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、M2 はマグネシウム原子もしくは亜鉛原子を意味し、Xはハロゲン原子を意味する。かかる金属ハライド化合物としては、グリニャール試薬に代表されるものであって、例えば、アルキルマグネシウムブロミド、シクロアルキルマグネシウムブロミド、アリールマグネシウムブロミド、アラルキルマグネシウムブロミド、アルキル亜鉛ブロミドなどが挙げられる。
【0012】
なお、本明細書中において、nはノルマル、iまたはiso はイソ、sec は第2級、t又はtertは第3級、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、Buはブチル基、Phはフェニル基、THFはテトラヒドロフランをそれぞれ意味する。
【0013】
上記光学活性ボロン化合物[I]とその錯体[II]のより好ましい態様としては、上記一般式において、Z1 およびZ2 がそれぞれ炭素原子であるところの、上記一般式[IV]:
【0014】
【化16】
(式中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3 、R4 、m、n1 、n2 、n3 およびn4は前記と同じ意味を有する。)
で表される光学活性ボロン化合物ならびに上記一般式[V]:
【0015】
【化17】
(式中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3 、R4 、m、n1 、n2 、n3 、n4 およびMは前記と同じ意味を有する。)
で表される光学活性ボロン化合物の錯体が挙げられる。
【0016】
また、上記光学活性ボロン化合物[I]とその錯体[II]のより好ましい別の態様としては、上記一般式において、Z1 およびZ2 がそれぞれフェニル基であるところの、上記一般式[VI]:
【0017】
【化18】
(式中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3 、R4 、n1 、n2 、n3 および n4 は前記と同じ意味を有する。)
で表される光学活性ボロン化合物ならびに上記一般式[VII]:
【0018】
【化19】
(式中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3 、R4 、n1 、n2 、n3 、n4 およびMは前記と同じ意味を有する。)
で表される光学活性ボロン化合物の錯体が挙げられる。
【0019】
また、上記光学活性ボロン化合物[I]とその錯体[II]のより好ましい更に別の態様としては、上記一般式において、Z1 およびZ2 がそれぞれナフチル基であるところの、上記一般式[VIII]:
【0020】
【化20】
(式中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3 、R4 、n1 、n2 、n3 およびn4は前記と同じ意味を有する。)
で表される光学活性ボロン化合物ならびに上記一般式[IX]:
【0021】
【化21】
(式中、R1a、R1b、R2a、R2b、R3 、R4 、n1 、n2 、n3 、n4 およびMは前記と同じ意味を有する。)
で表される光学活性ボロン化合物の錯体が挙げられる。
【0022】
また、本明細書において、この態様において、R1a、R1b、R2aおよびR2bは環上の特定の位置に存在するのではなくいずれの環上の位置に存在してもよい。つまり、例えば、R1aは5−、6−、7−ならびに・もしくは8−位ばかりではなく、3−位置ならびに・もしくは4−位にあってもよい。同様に、R2aは5’−、6’−、7’−ならびに・もしくは8’−位ばかりではなく、3’−位置ならびに・もしくは4’−位にあってもよい。R1bおよびR2bについても同様である。
【0023】
この発明に係る光学活性ボロン化合物は、次のようにして製造することができる。なお、以下に示す製造方法は、この発明を限定する目的で−切記載するものではなく、単に例示的に記載するものであって、いかなる変法や改良法もこの発明の精神を逸脱しない限りこの発明の範囲に含まれるものと理解すべきである。
この発明において、一般式[I]:
【0024】
【化22】
(式中、Z1 、Z2 、R1a、R1b、R2a、R2b、n1 、n2 、n3 、n4 、R3 、R4 およびmは前記と同じ意味を有する。)
で表される光学活性ボロン化合物は、一般式[X]:
【0025】
【化23】
(式中、Z1 およびZ2 は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ炭素原子または炭素原子数が6ないし10のアリール基を意味し、
R1aおよびR1bは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
n1 およびn2 はそれぞれ1ないし5の整数であって、n1 +n2 はZ1 の置換位置の数を超えないものとし、
R2aおよびR2bは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
n3 およびn4 はそれぞれ1ないし5の整数であって、n3 +n4 はZ2 の置換位置の数を超えないものとし、
mは0または1ないし3の整数を意味する。)
で表されるジアルコール誘導体を、一般式[XI]:
【0026】
【化24】
(式中、R3 およびR4 は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
R3 およびR4 とは互いに結合した場合には、炭素原子数が2ないし7のアルキレン基を意味する。)
で表されるアミノボラン誘導体に反応させることによって得ることができる。
【0027】
また、この発明において、光学活性ボロン化合物の錯体[II]は、光学活性ボロン化合物[I]を更に、一般式[XII]: M
[式中、Mは、一般式[IIIa]:
M1 Ap
(式中、M1 は、半金属原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアルミニウム族金属原子を意味し、
Aは、水素原子、シアン基、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
pは1ないし4の整数を意味する。)
で表される金属化合物または一般式[IIIb]:
R5 M2 X
(式中、R5 は、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
M2 はマグネシウム原子もしくは亜鉛原子を意味し、
Xはハロゲン原子を意味する。)
で表される金属ハライド化合物を意味する。]
で表される金属化合物と反応させて得ることができる。
【0028】
更に、この発明は、一般式[XII]:
【0029】
【化25】
(式中、R6 およびR7 はそれぞれ、水素原子、炭素原子数が1ないし10のアルキル基、炭素原子数が3ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数が2ないし10のアルケニル基、炭素原子数が3ないし10のシクロアルケニル基、炭素原子数が2ないし10のアルキニル基、炭素原子数が6ないし14のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、R6 とR7 とは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
で表されるケトン誘導体を、前記光学活性ボロン化合物[I]もしくは前記光学活性ボロン化合物の錯体[II]を使用して、一般式[XIII}:
【0030】
【化26】
(式中、R8 は水素原子、シアン基、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、
*は光学活性中心を意味し、
R6 およびR7 は前記と同じ意味を有する。)
で表されるアルコール化合物を得ることによって、光学活性アルコール化合物を製造することができる。
【0031】
次に、この発明に係る光学活性ボロン化合物とその錯体の製造方法について更に詳細に説明する。
この発明に係る光学活性ボロン化合物[I]ならびにその錯体[II]は、例えば、公知の方法[伊津野らの方法(S.Itsuno,K.Ito,T.Maruyama,A.Hirao,and S.Nakahama, Bull.Chem.Soc. Jpn., 59, 3329 (1986)),Coreyらの方法(E.J.Corey and A.V.Gavai, Tetrahedron Lett., 29,3201(1988)),樫原らの方法(樫原宏,鈴木幹夫,小原義夫,特開平6-329679)]に準じて、ボランを原料に用いて2〜3工程で容易に高収率で製造することができる。
【0032】
つまり、この発明に係る光学活性ボロン化合物[I]は、例えば、式[XIV]:
BH3
で表されるボラン剤に、一般式[XV]:
【0033】
【化27】
(式中、R3.およびR4 は前記と同じ意味を有する。)
で表される二級アミンを反応させて上記一般式[XI]:
【0034】
【化28】
(式中、R3 およびR4 は前記と同じ意味を有する。)
で表されるアミノボラン誘導体を得、この得られたアミノボラン誘導体[XI]を上記一般式[X]:
【0035】
【化29】
(式中、Z1 、Z2 、R1a、R1b、R2a、R2b、n1 、n2 、n3 、n4 およびmは前記と同じ意味を有する。)
で表されるジアルコール誘導体と反応させて得ることができる。
【0036】
上記方法において、二級アミン[XV]との反応に使用することができるボラン剤としては、例えば、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジエチルエーテル錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、ボラン・ピリジン錯体、ボラン・N,N-ジエチルアニリン錯体、ボラン・トリフェニルホスフィン錯体等を挙げることができ、好ましいボラン剤としては、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジエチルエーテル錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体などが挙げられ、より好ましくは、ボラン・テトラヒドロフラン錯体およびボラン・ジエチルエーテル錯体が使用される。
−方、ボラン剤[XIV]との反応に使用することができる二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジi−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジi−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、ジtert−ブチルアミンなどのジアルキルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどのジシクロアルキルアミン、ジフェニルアミン、ジ1−ナフチルアミン、ジ2−ナフチルアミンなどのジアリールアミン、ジベンジルアミン、ジ1−ナフチルメチルアミン、ジ2−ナフチルメチルアミンなどのジアラルキルアミン、ピロリジン、ピペリジンなどの飽和脂肪族炭化水素環状アミン等を用いることができる。好ましい二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミンなどが挙げられ、また、より好ましい二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。
この反応は通常反応溶媒中で行われ、使用される反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n- プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3-又は1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒を用いることができ、好ましい反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどを用いるのがよい。また、この反応の反応温度は、−78℃〜50℃までの範囲で行うことができ、好ましくは、−10℃〜20℃の範囲で行うのがよい。
【0037】
また、上記方法において、上記の反応によって得られたアミノボラン体[XI]は更に光学活性化合物と反応させることによって光学活性なボラン化合物[I]が得られる。この反応に使用することができる光学活性化合物としては、例えば、光学活性ジオール化合物、光学活性ビフェノール化合物、光学活性ビナフトール化合物などが挙げられる。この反応は通常反応溶媒中において低温から加温までの幅広い温度範囲で行うことができる。
【0038】
この反応に使用することができる光学活性ジオール化合物としては、例えば、(R,R)又は(S,S)−2,3−ブタンジオール、(R,R)又は(S,S)−2,4−ペンタンジオール、(R,R)又は(S,S)−3,4−ヘキサンジオールなどのアルカンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,2−ジ1−ナフチル−1,2−エタンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,2−ジ2−ナフチル−1,2−エタンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,3−ジ1−ナフチル−1,3−プロパンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,3−ジ2−ナフチル−1,3−プロパンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,4−ジフェニル−2,3−ブタンジオールなどのジアリール−アルカンジオールなどが用いられる。好ましい光学活性ジオール化合物としては、例えば、(R,R)又は(S,S)−3,4−ヘキサンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,2−ジ1−ナフチル−1,2−エタンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,2−ジ2−ナフチル−1,2−エタンジオールなどを用いるのがよく、より好ましい光学活性ジオール化合物としては、例えば、(R,R)又は(S,S)−1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオール、(R,R)又は(S,S)−1,2−ジ1−ナフチル−1,2−エタンジオールなどを用いるのがよい。
【0039】
この反応に使用することができる光学活性ビフェノール化合物としては、例えば、(R)又は(S)−6,6’−ジクロロ−1,1’−ビ−2−フェノール、
(R)又は(S)−6,6’−ジブロモ−1,1’−ビ−2−フェノール、
(R)又は(S)−6,6’−ジヨード−1,1’−ビ−2−フェノールなどの6、6’−ジハロビフェノール、(R)又は(S)−6,6’−ジエチル−1,1’−ビ−2−フェノールなどの6、6’−ジアルキルビフェノール、(R)又は(S)−6,6’−ジシクロプロピル−1,1’−ビ−2−フェノール、
(R)又は(S)−6,6’−ジシクロペンチル−1,1’−ビ−2−フェノール、(R)又は(S)−6,6’−ジシクロヘキシル−1,1’−ビ−2−フェノールなどの6、6’−ジシクロアルキルビフェノール、(R)又は(S)−6,6’−ジフェニル−1,1’−ビ−2−フェノールなどの6、6’−ジアリールビフェノール、(R)又は(S)−6,6’−ジベンジル−1,1’−ビ−2−フェノールなどの6、6’−ジアルキルビフェノールなどを用いることができる。このうち、好ましい光学活性ビフェノール化合物としては、例えば、(R)又は(S)−6,6’−ジブロモ−1,1’−ビ−2−フェノール、(R)又は(S)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビ−2−フェノール、(R)又は
(S)−6,6’−ジフェニル−1,1’−ビ−2−フェノール、(R)又は
(S)−6,6’−ジシクロヘキシル−1,1’−ビ−2−フェノール、(R)又は(S)−6,6’−ジベンジル−1,1’−ビ−2−フェノールなどが挙げられ、より好ましい光学活性ビナフトール化合物としては、例えば、(R)又は(S)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビ−2−フェノール、(R)又は
(S)−6,6’−ジフェニル−1,1’−ビ−2−フェノールなどが挙げられる。
【0040】
この反応に使用することができる光学活性ビナフトール化合物としては、例えば、(R)又は(S)−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−3,3’−ジブロモ−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−6,6’−ジブロモ−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−7,7’−ジブロモ−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−3,3’−ジクロロ−1,1’−ビ−2−ビナフトール、(R)又は(S)−3,3’−ジヨード−1,1’−ビ−2−ナフトールなどのジハロビナフトール、(R)又は
(S)−3,3’−ジメチル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は
(S)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は
(S)−7,7’−ジメチル−1,1’−ビ−2−ナフトールなどのジアルキルビナフトール、(R)又は(S)−3,3’−ジシクロヘキシル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−6,6’−ジシクロヘキシル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−7,7’−ジシクロヘキシル−1,1’−ビ−2−ナフトールなどのジシクロアルキルビナフトール、(R)又は
(S)−3,3’−ジフェニル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は
(S)−6,6’−ジフェニル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は
(S)−7,7’−ジフェニル−1,1’−ビ−2−ナフトールなどのジアリールビナフトール、(R)又は(S)−3,3’−ジベンジル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−6,6’−ジベンジル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−7,7’−ジベンジル−1,1’−ビ−2−ナフトールなどのジアラルキルビナフトールなどを用いることができる。このうち、好ましい光学活性ビナフトール化合物としては、例えば、(R)又は(S)−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−3,3’−ジブロモ−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−3,3’−ジメチル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−3,3’−ジフェニル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−3,3’−ジシクロヘキシル−1,1’−ビ−2−ナフトール、(R)又は(S)−3,3’−ジベンジル−1,1’−ビ−2−ナフトールなどが挙げられ、より好ましい光学活性ビナフトール化合物としては、例えば、(R)又は(S)−1,1’−ビ−2−ナフトール、
(R)又は(S)−3,3’−ジメチル−1,1’−ビ−2−ナフトール、
(R)又は(S)−3,3’−ジフェニル−1,1’−ビ−2−ナフトールなどが挙げられる。
この反応は通常反応溶媒中で行われ、使用される反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n- プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3-又は1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒などを挙げることができ、好ましい反応溶媒としては、ジエチルエーテル又はテトラヒドロフランなどを用いるのがよい。反応温度は、−78℃〜50℃までの範囲で行うことができ、好ましくは、−10℃〜20℃の範囲で行うのがよい。
【0041】
また、この発明に係る光学活性ボロン化合物の錯体[II]は、例えば、上記の方法で得られた光学活性ボロン化合物[I]に上記一般式[XII]: M
(式中、Mは前記と同じ意味を有する。)
で表される金属化合物を反応させて得ることができる。
この反応工程は、上記反応工程で得られた光学活性ボロン化合物[I]を、還元剤、アルキル化剤、アリール化剤などもしくはシアノ化剤と反応させて光学活性ボロン化合物の錯体[II]を合成するものである。
この反応に使用される還元剤としては、例えば、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジエチルエーテル錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、ボラン・ピリジン錯体、ボラン・N,N-ジエチルアニリン錯体、ボラン・トリフェニルホスフィン錯体、水素化ケイ素、水素化ゲルマニウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化アルミニウムなどを用いることができ、好ましい還元剤としては、例えば、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジエチルエーテル錯体、水素化ケイ素、水素化アルミニウムなどが挙げられ、またより好ましい還元剤としては、例えば、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジエチルエーテル錯体などが挙げられる。 使用されるアルキル化剤およびアリール化剤などとしては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、シクロプロピルリチウム、シクロヘキシルリチウムなどのシクロアルキルリチウム、ベンジルリチウム、1−ナフチルメチルリチウム、2−ナフチルメチルリチウムなどのアラルキルリチウム、フェニルリチウム、1−ナフチルリチウム、2−ナフチルリチウムなどのアリールリチウムなどのリチウム化合物、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミドなどのアルキルマグネシウムブロミド、シクロヘキシルマグネシウムブロミドなどのシクロアルキルシクロヘキシルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミドなどのアリールマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、などのアラルキルシクロヘキシルマグネシウムブロミドなどのマグネシウムハライド化合物、メチル亜鉛ブロミドなどの亜鉛ハライド化合物などを用いることができ、好ましくは、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミドを用いるのがよく、より好ましくは、例えば、メチルリチウム、フェニルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミドなどを用いるのがよい。
また、使用されるシアノ化剤としては、例えば、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムなどのシアン化アルカリ金属、シアン化第−銅などのシアン化金属またはジメチルアルミニウムシアニド、ジエチルアルミニウムシアニドなどのジアルキルアルミニウムシアニド、シアン化トリメチルシラン、シアン化トリエチルシランなどのシアン化トリアルキルシランなどを用いることができる。
【0042】
上記の反応によって得られた光学活性なボラン化合物[I]もしくは前記光学活性ボロン化合物の錯体[II]を用いて、一般式[XII]で表されるカルボニル化合物を立体選択的に還元、アルキル化、アリール化もしくはシアノ化して、それぞれ対応する光学活性アルコール化合物[XIII]を得ることができる。
つまり、一般式[XII]:
【0043】
【化30】
(式中、R6 およびR7 は前記と同じ意味を有する。)
で表されるカルボニル化合物を、前記光学活性ボロン化合物[I]もしくは前記光学活性ボロン化合物の錯体[II]を使用して、一般式[XIII}:
【0044】
【化31】
(式中、R6 、R7 およびR8 は前記と同じ意味を有し、*は光学活性中心を意味する。)
で表されるアルコール化合物を得ることができる。
【0045】
上記一般式において、R6 およびR7 は互いに異なり、それぞれ水素原子、 炭素原子数が1ないし10のアルキル基、炭素原子数が3ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数が2ないし10のアルケニル基、炭素原子数が3ないし10のシクロアルケニル基、炭素原子数が2ないし10のアルキニル基、炭素原子数が6ないし14のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、R6 とR7 とは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
炭素原子数が1ないし10のアルキル基は、前記と同様、炭素原子数が1ないし10の、1価の、直鎖状もしくは分岐状の、飽和脂肪族炭化水素基を意味し、その具体的な例としては、例えば、メチル,エチル,n-プロピル,i-プロピル,n-ブチル,i-ブチル,sec-ブチル,tert- ブチル,n-ペンチル,n-ヘキシル,n-ヘプチル,n-オクチル,n-ノニル,n-デカニル基などが挙げられる。
炭素原子数が3ないし10のシクロアルキル基は、前記と同様、炭素原子数が1ないし10の、1価の、飽和脂肪族環状炭化水素基を意味し、その具体的な例としては、例えば、シクロプロピル,シクロブチル,シクロペンチル,シクロヘキシル,シクロヘプチル,シクロオクチル,シクロノニル,シクロデカニル基などが挙げられる。
炭素原子数が2ないし10のアルケニル基は、炭素原子数が2ないし10の、1価の、直鎖状もしくは分岐状の、飽和脂肪族炭化水素基であって、その中に2重結合を有する置換基を意味し、その具体的な例としては、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、1−デセニル基等が挙げられる。
炭素原子数が2ないし10のアルキニル基は、炭素原子数が2ないし10の、1価の、直鎖状もしくは分岐状の、飽和脂肪族炭化水素基であって、その中に3重結合を有する置換基を意味し、その具体的な例としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、1−ペンチニル、1−ヘキシニル、1−ヘプチニル、1−オクチニル、1−ノニニル、1−デシニル基等が挙げられる。
炭素原子数が3ないし10のシクロアルケニル基は、炭素原子数が3ないし10の、1価の飽和脂肪族環状炭化水素基であって、その中に2重結合を有する置換基を意味し、その具体的な例としては、例えば、2−シクロプロペニル、1−シクロブテニル、3−シクロペンテニル、1−シクロヘキセニル、2−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
炭素原子数が6ないし14のアリール基は、前記同様、1価の、単環もしくは多環の、芳香族炭化水素基であって、その環には、例えば、炭素原子数が1ないし6のアルキル基などの置換基が単数個もしくは複数個存在していてもよい。かかるアリール基の具体的な例としては、例えば、フェニル、o-トリル,m-トリル,p-トリル,2,3-ジメチルフェニル,2,4-ジメチルフェニル,2,5-ジメチルフェニル,2,6-ジメチルフェニル,3,4-ジメチルフェニル,3,5-ジメチルフェニル,2,3,4-トリメチルフェニル,2,3,5-トリメチルフェニル,2,3,6-トリメチルフェニル,3,4,5-トリメチルフェニル,3,4,6-トリメチルフェニル,2,4,6-トリメチルフェニル,α−ナフチル,β−ナフチル,1−アンスリル,2−アンスリル,9−アンスリル,1−フェナンスリル,2−フェナンスリル,3−フェナンスリル,4−フェナンスリル,9−フェナンスリル基などが挙げられる。
炭素原子数が7ないし11のアラルキル基は、前記同様、前記アリール基と前記アルキル基とが結合したであって、その環には、例えば、炭素原子数が1ないし6のアルキル基などの置換基が単数個もしくは複数個存在していてもよい。かかるアラルキル基の具体的な例としては、例えば、ベンジル,o-メチルベンジル,m-メチルベンジル,p-メチルベンジル,フェネチル,o-メチルフェネチル,m-メチルフェネチル,p-メチルフェネチル,フェニルプロピル,o-メチルフェニルプロピル,m-メチルフェニルプロピル,p-メチルフェニルプロピル,フェニルブチル,α−ナフチルメチル,β−ナフチルメチル基などが挙げられる。
また、R6 とR7 とは、前記同様、互いに−体となって環状構造を形成することができ、かかる環状構造としては、例えば、2,2−ジメチルシクロブタノン,2,2−ジメチルシクロペンタノン,2,2−ジメチルシクロヘキサノン,2,2−ジエチルシクロブタノン,2,2−ジエチルシクロペンタノン,2,2−ジエチルシクロヘキサノン,1−インダノン,2−インダノン,1−テトラロン,2−テトラロン,シクロブテノン,2−シクロペンテノン,2−シクロヘキセノン等が挙げられる。
【0046】
R8 は、R6 とR7 とは互いに異なり、水素原子、炭素原子数が1ないし10のアルキル基、炭素原子数が3ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数が2ないし10のアルケニル基、炭素原子数が2ないし10のアルキニル基、炭素原子数が3ないし10のシクロアルケニル基、炭素原子数が6ないし14のアリール基、炭素原子数が7ないし11のアラルキル基およびシアノ基を示す。前記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、アラルキル基ならびにアリール基は、R6 とR7 と同じ意味を有する。但し、R8 は、R6 とR7 とは互いに異なり、同−の置換基ではない。
【0047】
この反応の反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒などを用いることができ、好ましい反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−又は1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒およびペンタン、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒などを用いるのがよい。また、より好ましい反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼンなどを用いるのがよい。
この反応は、−100℃〜80℃までの範囲の反応温度で行うことができ、好ましくは、−78℃〜40℃の範囲の反応温度、より好ましくは、−10℃〜30℃の範囲の反応温度で行うのがよい。
【0048】
また、この反応を化学量論的に行う場合は、この発明に係る光学活性ボロン化合物の錯体[II]を前記カルボニル化合物[XII]に対して等モルを用いるのがよい。−方、この反応を触媒的に行う場合は、光学活性ボラン化合物[I]をカルボニル化合物[XII]に対して1/10〜1/10000倍モルの割合で用いることができる。なお、この場合の還元剤、アルキル化剤、アリール化剤もしくはシアノ化剤の量は、カルボニル化合物[XII]に対して1〜2倍モルの割合で用いることができる。
【0049】
上記したように、この発明に係る光学活性ボロン化合物[I]ならびに光学活性ボロン化合物の錯体[II]は、簡単な反応工程で容易にかつ高収率で製造することができ、工業的に極めて有用である。
また、この発明に係る光学活性ボロン化合物[I]ならびに光学活性ボロン化合物の錯体[II]を用いると、カルボニル化合物[XII]を簡便な操作で還元、アルキル化、アリール化もしくはシアノ化することにより、高不斉収率及び高化学収率で、目的とする光学活性アルコール化合物[XIII]を合成することができる。
その上、この発明に係る光学活性ボロン化合物[I]ならびに光学活性ボロン化合物の錯体[II]は、医薬品、農薬、香料、化粧品などが有する光学活性アルコール部分構造についても、高不斉収率及び高化学収率で合成することが可能であり、工業的に極めて有用である。
【0050】
次ぎに、この発明に係る光学活性ボラン化合物[IV]および[VIII]を用いたラセミ化合物の光学分割について説明する。
この発明に係る光学分割に使用できる溶媒としては,例えば,エタノール、1−ブロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒,ジエチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1、3−又は1、4−ジオキサン等のエ−テル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒などを用いることができる。好ましい溶媒としては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−ブロパノール等のアルコール系落媒、テトラヒドロフラン、1,3−叉は1,4−ジオキサン等の工−テル系溶媒、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒を用いるのがよい。
また、光学分割を行う温度は、−50℃〜50℃までの範囲で行うことができ、好ましくは、−20℃〜40℃の範囲で行うのがよく、より好ましくは、0℃〜20℃の範囲で行うのがよい。
【0051】
この発明に係る光学分割法は、ラセミ化合物であればいずれのラセミ化合物にも適用することができる。かかるラセミ化合物としては、例えば、カルボン酸、フェノ−ル誘導体、スルホン酸などが挙げられる。更に具体的には、カルボン酸としては、例えば、dl−乳酸、dl−リンゴ酸、dl−酒石酸、d1−2−ヒドロキシ酪酸、d1−3−ヒドロキシ酪酸、d1−2−ヒドロキシ吉草酸、d1−3−ヒドロキシ吉草酸、dl−4−ヒドロキシ吉草酸、dl−2−クロロプロピオン酸、dl−2−クロロ酪酸、dl−クロロ吉草酸、dl−2−クロロヘキサン酸、dl−2−クロロ−3−メチル酪酸、d1−2−クロロ−3−メチル吉草酸、dl−2−クロロ−4−メチル吉草酸、dl−メントキシ酢酸、dl−グルタミン酸、dl−アスパラギン酸、dl−1−カンファン酸、dl−ショウノウ酸などの脂肪族カルボン酸、dl−マンデル酸、dl−2−クロロ−3−フェニルプロピオン酸、dl−ベンゾイル乳酸、dl−ベンゾイルリンゴ酸、dl−ジベンゾイル酒石酸、d1−α−メトキシ−α−トリフルオロメチルフェニル酢酸、dl−2−オキソ−4−チアゾリジンカルボン酸、d1−2−フェニルプロピオン酸、dl−2−フェニル酪酸、dl−3−フェニル酪酸などの芳香族カルボン酸などが挙げられる。また、フェノ−ル誘導体としては、たとえば、dl−1,1’−ビ−2−ナフト−ル、dl−6,6’−ジブロモ−1,1’−ビ−2−ナフト−ル、dl−6,6’−ジクロロ−1,1’−ビ−2−ナフト−ル、dl−6,6’−ジヨ−ド−1,1’−ビ−2−ナフト−ル、dl−6,6’−ジフルオロ−1,1’−ビ−2−ナフト−ル、dl−チロシン、dl−ドパ、dl−6,6’−ジニトロ−1,1’−ビ−2−フェノ−ル、dl−ジンジャロ−ル、dl−1−(o−ヒドロキシ)フェニル−1−エタノール、dl−1−(m−ヒドロキシ)フェニル−1−エタノ−ル、dl−1−(p−ヒドロキシ)フェニル−1−エタノ−ルなどが挙げられる。更に、スルホン酸としては、例えば、dl−10−カンファスルホン酸、dl−2−(2−フェニルプロピオニル)オキシ−ベンゼンスルホン酸、dl−3−(2−フェニルプロピオニル)オキシ−ベンゼンスルホン酸、d1−4−(2−フェニルプロピオニル)オキシ−ベンゼンスルホン酸、dl−2−(1−ヒドロキシ)エチル−ベンゼンスルホン酸、dl−3−(1−ヒドロキシ)エチル−ベンゼンスルホン酸、dl−4−(1−ヒドロキシ)エチル−ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
【0052】
【実施例】
この発明を、実施例により更に詳細に説明する。
実施例1
(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[VIIIa]の合成
【0053】
【化32】
【0054】
(A工程)
ジフェニルアミン XIIIa 169mg(1m mol)を乾燥THF2mlに溶解し、氷冷後、撹拌しながら水素ガスの発生に注意して、1Mボラン・THF錯体THF溶液[XIV ]1mlを注射器でゆっくりと加え、室温に戻し30分間撹拌すると、ジフェニルアミノボラン XIa が得られた。
(B工程)
上記A工程で得られたジフェニルアミノボラン XIa を氷冷し、(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトール Xa 286mg(1m mol)を、水素ガスの発生に注意しながら徐々に加えて反応させた。この混合液を室温に戻して、2時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン20mlで抽出した後、精製水(1ml×2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで30分乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ去した後、溶媒を減圧留去すると、残査が得られた。この残査をエタノールから再結晶することにより(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[ VIIIa](442mg)を定量的に得た。
【0055】
実施例2
(C1工程)
(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン−ボラン錯体[IXa]の合成
【0056】
【化33】
【0057】
上記B工程で得られた(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[VIIIa ]463mg(1m mol)を乾燥THF2mlに溶解し、氷冷後、撹拌しながら1Mボラン・THF錯体[XIIa]のTHF溶液1mlを注射器でゆっくりと加えた。室温に戻し30分間撹拌した後、溶媒を減圧留去すると、(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン−ボラン錯体[IXa ](472mg)が定量的に得られた。
【0058】
実施例3
(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン−メチルリチウム錯体[IXb の合成
【0059】
(C2工程)
上記B工程で得られた(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[VIIIa ]463mg(1m mol)を乾燥THF2mlに溶解し、氷冷後、撹拌しながら1Mメチルリチウム XIIb のTHF溶液1mlを注射器でゆっくりと加えた。30分間撹拌した後、溶媒を減圧留去すると、(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン−メチルリチウム錯体[IXb ](481mg)が定量的に得られた。
【0060】
実施例4
(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン−フェニルマグネシウムブロミド錯体[IXc ]の合成
【0061】
【化34】
【0062】
(C3工程)
上記B工程で得られた(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン VIIIa]463mg(1m mol)を乾燥THF2mlに溶解し、氷冷後、撹拌しながら1Mフェニルマグネシウムブロミド XIIc のTHF溶液1mlを注射器でゆっくりと加えた。室温に戻し30分間撹拌した後、溶媒を減圧留去すると、(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン−フェニルマグネシウムブロミド錯体[IXc ](612mg)が定量的に得られた。
【0063】
実施例5
(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン−シアン化ジエチルアルミニウム錯体[IXd ]の合成(C4工程)
上記B工程で得られた(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[VIIIa ]463mg(1m mol)を乾燥THF2mlに溶解し、氷冷後、撹拌しながらシアン化ジエチルアルミニウム XIId 111 mg(1m mol)を加えた。室温に戻し30分間撹拌した後、溶媒を減圧留去すると、(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン−シアン化ジエチルアルミニウム錯体[IXd ](565 mg)が定量的に得られた。
【0064】
実施例6
下記一般式[VIII]:
【0065】
【化35】
で表される(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン化合物を、実施例1のA工程ならびにB工程に従って製造した。それらのボロン化合物を表1、2および3に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
実施例7
下記一般式[IX]:
【0070】
【化36】
で表される(R)又は(S)1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン化合物の錯体を、実施例2ないし5のC1工程ないしC4工程のいずれかに従って製造した。それらの錯体化合物を表4、5および6に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
実施例8
(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ]の合成
【0075】
【化37】
【0076】
(A工程)
ジフェニルアミン XIIIa 169mg(1m mol)を乾燥THF2mlに溶解し、氷冷後、撹拌しながら1Mボラン・THF錯体 XIV のTHF溶液1mlを注射器で、水素ガスの発生に注意しながらゆっくりと加えた。室温に戻し30分間撹拌すると、ジフェニルアミノボロン[XIa ]が得られた。
(B工程)
このジフェニルアミノボロン[XIa ]を氷冷後、(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオール Xb 214mg(1m mol)を、水素ガスの発生に注意しながら徐々に加えた。次いで、室温に戻し、2時間撹拌した後、溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン20mlで抽出した後、精製水(1ml×2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで30分乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ去した後、溶媒を減圧留去し残査を得た。これをエタノールから再結晶することにより(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ](375mg)を定量的に得た。
【0077】
実施例9
下記一般式[IV]:
【0078】
【化38】
で表される(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロンを、実施例8のA工程ならびにB工程に従って製造した。それらのボロン化合物を表7、8および9に示す。
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
実施例10
(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン−ボラン錯体[Va]
【0083】
【化39】
【0084】
(C1工程)
上記B工程で得られた(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ]391mg(1m mol)を乾燥THF2mlに溶解し、氷冷後、撹拌しながら1Mボラン・THF錯体のTHF溶液1mlを注射器でゆっくりと加えた。室温に戻し30分間撹拌した後、溶媒を減圧留去すると、(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン−ボラン錯体[Va](381mg)が定量的に得られた。
【0085】
実施例11
(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン−メチルリチウム錯体[Vb]の合成
(C2工程)
上記B工程で得られた(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ]391mg(1m mol)を乾燥THF2mlに溶解し、氷冷後、撹拌しながら1Mメチルリチウム XIIb のTHF溶液1mlを注射器でゆっくりと加えた。30分間撹拌した後、溶媒を減圧留去し、(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン−メチルリチウム錯体[Vb](401mg)を定量的に得た。
【0086】
実施例12
(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン−フェニルマグネシウムブロミド錯体[Vc]の合成
(C3工程)
上記B工程で得られた(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ]391mg(1m mol)を乾燥THF2mlに溶解し、氷冷後、撹拌しながら1Mフェニルマグネシウムブロミド XIIc のTHF溶液1mlを注射器でゆっくりと加えた。室温に戻し30分間撹拌した後、溶媒を減圧留去し、(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン−フェニルマグネシウムブロミド錯体[Vc](542mg)を定量的に得た。
【0087】
実施例13
(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン−シアン化ジエチルアルミニウム錯体[Vd]の合成(C4工程)
上記B工程で得られた(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ]391mg(1m mol)を乾燥THF2mlに溶解し、氷冷後、撹拌しながらシアン化ジエチルアルミニウム XIId 111mg(1m mol)を加えた。室温に戻し30分間撹拌した後、溶媒を減圧留去し、(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン−シアン化ジエチルアルミニウム錯体[Vd](495mg)を定量的に得た。
【0088】
実施例14
下記一般式[V]:
【0089】
【化40】
で表される(R,R)又は(S,S)1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロンの錯体を、実施例2ないし5のC1工程ないしC4工程のいずれかに従って製造した。それらの錯体化合物を表10、11および12に示す。
【0090】
【表10】
【0091】
【表11】
【0092】
【表12】
【0093】
実施例15
(R)または(S)6、6’−ジメチル−1,1’−ビ−2−フェノキシ−ジフェニルアミノボロン[VIa ]およびその錯体 VIIa の合成
【0094】
【化41】
【0095】
(R)または(S)6、6’−ジメチル−1,1’−ビ−2−フェノキシ−ジフェニルアミノボロン[VIa ]は、上記方法におけるA工程とB工程に従って、実施例1と実質的に同様にして得ることができた。
また、得られたボロン化合物[VIIIa ]は続いて対応する金属化合物と、C1工程、C2工程、C3工程ならびにC4工程に従って、実施例1、2、3ならびに4と実質的に同様にそれぞれ反応させることによって対応する(R)または(S)6、6’−ジメチル−1,1’−ビ−2−フェノキシ−ジフェニルアミノボロンの錯体[VIIa]が得られた。
【0096】
実施例16
下記表13に示す(R)または(S)6、6’−ジ置換−1,1’−ビ−2−フェノキシ−ジフェニルアミノボロンを、上記実施例15に従って製造した。
【0097】
【表13】
【0098】
実施例17
下記表14に示す(R)または(S)6、6’−ジ置換−1,1’−ビ−2−フェノキシ−ジフェニルアミノボロンの錯体を、上記実施例15に従って製造した。
【0099】
【表14】
【0100】
実施例18
(R)または(S)1、1’−ビ−2−ナフトキシ−ジシクロヘキシルアミノボロンの合成
【0101】
【化42】
【0102】
ジシクロヘキシルアミン XIIIe 181 mg (1m mol) を乾燥THF 2 ml に溶解し、氷冷後、水素ガスの発生に注意しながら、撹拌しながら 1M ボラン・THF錯体 XIV のTHF溶液 1 ml を注射器でゆっくりと注入し、ジシクロヘキシルアミノボラン XIe を得た。この混合液を室温に戻して30分間撹拌した後、氷冷し、(R)または(S)1、1’−ビ−2−ナフトール Xa 286 ml (1m mol) を、水素ガスの発生に注意しながら徐々に添加した。この反応液を10分間撹拌すると白色結晶が析出した。この反応液を室温に戻して更に2時間撹拌して、析出した結晶をろ取し、この結晶をエタノールから再結晶すると、(R)または(S)1、1’−ビ−2−ナフトキシ−ジシクロヘキシルアミノボロン VIIIe が収量457 mg で定量的に得られた。
【0103】
実施例19
(R)または(S)1、1’−ビ−2−ナフトキシ−ピペリジノボロンの合成
【0104】
【化43】
【0105】
ピペリジン XIIIf 85 mg (1m mol) を乾燥THF 2 ml に溶解し、氷冷後、水素ガスの発生に注意しながら、撹拌しながら 1M ボラン・THF錯体のTHF溶液 1 ml を注射器でゆっくりと注入してピペリジノボラン XIf を得た。この混合液を室温に戻して30分間撹拌した後、氷冷し、(R)または(S)1、1’−ビ−2−ナフトール Xa 286 ml (1m mol) を、水素ガスの発生に注意しながら徐々に添加した。この反応液を20分間撹拌すると白色結晶が析出した。この反応液を室温に戻して更に2時間撹拌して、析出した結晶をろ取し、この結晶をエタノールから再結晶すると、(R)または(S)1、1’−ビ−2−ナフトキシ−ピペリジノボロン VIIIf が収量349 mg で定量的に得られた。
【0106】
実施例20
光学活性1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[VIIIa]によるカルボニル化合物の触媒的不斉還元
カルボニル化合物(100m mol)をTHF500mlに溶解し、光学活性1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[VIIIa]4.6mg(0.01m mol)を加えて室温で10分間撹拌した後、1Mボラン・THF錯体THF溶液100mlを注射器を用いてゆっくりと滴下した。2時間撹拌した後、氷冷し、1M塩酸100mlを加え10分間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。得られた残査を酢酸エチル300mlで抽出し、飽和食塩水(10ml×2)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的とする光学活性アルコールを定量的に得た。
この光学活性1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[VIIIa]を用いた種々のカルボニル化合物の不斉還元の結果を表15に示す。なお、得られたアルコール体の不斉収率および絶対配置については、光学活性標品化合物と比較して、ダイセル化学工業(CHIRALCEL ODカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー分析、旋光度の測定、あるいは、ジアステレオマーに誘導した後、高速液体クロマトグラフィー分析を行い決定した。
【0107】
【表15】
【0108】
実施例21
実施例20と同様に、光学活性1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン−ボラン錯体[IXa ]当モルを用いた場合も、実施例20と同様の結果が得られた。
【0109】
実施例22
光学活性1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ]によるカルボニル化合物の触媒的不斉還元 カルボニル化合物(100m mol)をTHF500mlに溶解し、光学活性1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ]3.9mg(0.01m mol))を加えて室温で10分間撹拌した後、1Mボラン・THF錯体THF溶液100mlを注射器を用いてゆっくりと滴下した。2時間撹拌した後、氷冷し、1M塩酸100mlを加え10分間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。得られた残査を酢酸エチル300mlで抽出し、飽和食塩水(10ml×2)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的とする光学活性アルコールを定量的に得た。
この光学活性1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ]を用いた種々のカルボニル化合物の不斉還元の結果を表16に示す。なお、得られたアルコール体の不斉収率および絶対配置は実施例21と同様にして高速液体クロマトグラフィー分析を行い決定した。
【0110】
【表16】
【0111】
実施例23
実施例22と同様に、光学活性1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン−ボラン錯体[Va ]を用いた場合も、実施例22と同様の結果が得られた。
【0112】
この発明に係る光学活性ボロン化合物[I]及びその錯体[II]を用いた種々のカルボニル化合物の不斉還元では、触媒量で高い不斉収率が得られた。なお、2−ヘキサノンなどのジアルキルケトンを基質とした従来技術による不斉還元では、化学量論量の触媒を用いても、たかだか20〜50%程度の不斉収率しか得られないのに比べて、この発明に係る光学活性ボロン化合物は非常に優位にあることが示された。
【0113】
実施例24
光学活性1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[VIIIa]及び光学活性1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa]によるカルボニル化合物の触媒的不斉アルキル化,不斉アリール化及び不斉シアノ化
カルボニル化合物(100m mol)をTHF500mlに溶解し、光学活性1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[VIIIa ]4.6mg(0.01m mol)又は光学活性1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ]3.9mg(0.01m mol)を各々の反応温度条件下で加え、10分間撹拌した後、1MメチルリチウムTHF溶液100ml(又は1MフェニルマグネシウムプロミドTHF溶液100ml又はシアン化ジエチルアルミニウム11.112g(100m mol))をゆっくりと加えた。2時間撹拌した後、氷冷し、精製水100mlを加え10分間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。得られた残査を酢酸エチル300mlで抽出し、飽和食塩水(10ml×2)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的とする光学活性アルコールを定量的に得た。
第17表に光学活性1,1’−ビ−2−ナフトキシ−ジフェニルアミノボロン[VIIIa ]及び光学活性1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオキシ−ジフェニルアミノボロン[IVa ]を用いた種々のカルボニル化合物の不斉アルキル化、不斉アリール化及び不斉シアン化の結果を示した。
得られたアルコール体の不斉収率および絶対配置については、光学活性標品化合物と比較して、ダイセル化学工業(CHIRALCEL ODカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー分析、旋光度の測定、あるいは、ジアステレオマーに誘導した後、高速液体クロマトグラフィー分析を行い決定した。
【0114】
【表17】
【0115】
実施例25
光学活性(R)または(S)1、1’−ビ−2−ナフトキシ−ジシクロヘキシルアミノボロン[VIIIe ]によるカルボニル化合物の触媒的不斉還元
実施例20と同様に、光学活性(R)または(S)1、1’−ビ−2−ナフトキシ−ジシクロヘキシルアミノボロン[VIIIe ]を用いたカルボニル化合物の触媒的不斉還元の結果を下記表18に示す。
【0116】
【表18】
【0117】
実施例26
光学活性(R)または(S)1、1’−ビ−2−ナフトキシ−ピペリジノボロン[VIIIf ]によるカルボニル化合物の触媒的不斉還元
実施例20と同様に、光学活性(R)または(S)1、1’−ビ−2−ナフトキシ−ピペリジノボロン[VIIIf ]を用いたカルボニル化合物の触媒的不斉還元の結果を下記表19に示す。
【0118】
【表19】
【0119】
実施例27
下表20に示す光学活性ボロン化合物[IV]および[VIII]について、ラセミ化合物の光学分割を次のようにして行った。
その結果を、下表21に示す。下表21の結果から、いずれの場合においても、高いエナンチオマー過剰率(%ee)が得られることが判明した。すなわち、酸性官能基を有する多種類のラセミ化合物に対して高い光学分解能を持つことが確認された。
【0120】
【表20】
【0121】
【表21】
なお、光学分割された化合物の絶対配置およびエナンチオマー過剰率(%ee)については、光学活性標品化合物と比較して、CHIRALCEL ODカラム(ダイセル化学工業製)を用いた高速液体クロマトグラフィー分析、旋光度の測定、あるいは、ジアステレオマーに誘導した後、高速液体クロマトグラフィー分析を行って決定した。
【0122】
【発明の効果】
この発明に係る新規な光学活性ボロン化合物[I]及びその錯体[II]は、触媒量で高い不斉収率で、種々のカルボニル化合物の不斉アルキル化、不斉アリール化及び不斉シアノ化を行うことができる。
また、この発明に係る新規な光学活性ボロン化合物[I]及びその錯体[II]のいずれの好ましい態様においては、光学活性ボロン化合物[I]及びその錯体[II]で達成される発明の効果がより顕著に発現される。
更に、この発明に係る光学活性ボロン化合物[I]及びその錯体[II]の製造方法は、2ないし3工程という短くかつ簡単な方法で、種々の光学活性アルコール化合物の製造に有用な新規な光学活性ボロン化合物[I]及びその錯体[II]を製造することができ、工業上極めて有用である。
その上、この発明に係る新規な光学活性ボロン化合物[I]及びその錯体[II]を用いた種々のカルボニル化合物の不斉アルキル化、不斉アリール化及び不斉シアノ化においても、触媒量で高い不斉収率で、光学活性アルコール化合物を製造することができ、工業上極めて有用である。
従来技術によるカルボニル化合物の不斉アルキル化及び不斉アリール化では、触媒の量を下げることが困難で実用化には無理があり、又、不斉シアノ化の例はほとんど知られていない。これに対して、この発明に係る新規な光学活性ボロン化合物[I]及びその錯体[II]の場合には極めて微量でも触媒効果が発揮できるため、実用化の面でこれまでの技術に比べ極めて優位であることが判明した。
【0123】
また、この発明に係る光学活性ボロン化合物[IV]および[VIII]をラセミ化合物の光学分に利用することにより、高いエナンチオマー過剰率(%ee)の光学活性体を製造することができる。
更に、この発明に係る光学活性ボロン化合物のうち、特に光学活性ボロン化合物[IV]および[VIII]は、高度な不斉識別能と高い結晶性を有していて、多種類の酸性官能基を持つラセミ化合物に対応するために、塩基性を持つアミノ基に加えて、電気陰性度の大きな原子と配位結合するホウ素原子(アルコキシボランとして)を持つとともに、光学分割終了後、塩を中和すれば、水溶液中に結晶として析出するか、または、簡単に有機溶媒に抽出されるため、光学分割剤の回収率は高くなり、その上、簡単な操作でかつ1〜2工程という短い工程で製造することでき、精製をほとんど必要としない程の高純度、高収率で合成できるので、安価に大量に製造することが可能である。その上、特に光学活性ボロン化合物[IV]および[VIII]を、上記したようなラセミ化合物の光学分割に利用したところ、90〜100%eeの光学活性化合物を高収率で得ることができた。加えて、これらの光学分割剤は、効率よくかつ高い回収率で回収することができるという効果が発揮される。
【化11】
Claims (11)
- 一般式[I]:
- 請求項1に記載の光学活性ボロン化合物において、前記光学活性ボロン化合物が一般式[IV]:
- 請求項1に記載の光学活性ボロン化合物において、前記光学活性ボロン化合物が一般式[V]:
- 請求項1に記載の光学活性ボロン化合物において、前記光学活性ボロン化合物が一般式[VI]:
- 請求項1に記載の光学活性ボロン化合物において、前記光学活性ボロン化合物が一般式[VII]:
- 請求項1に記載の光学活性ボロン化合物において、前記光学活性ボロン化合物が一般式[VIII]:
- 請求項1に記載の光学活性ボロン化合物において、前記光学活性ボロン化合物が一般式[IX]:
- 一般式[X]:
- 請求項8に記載の光学活性ボロン化合物の製造方法において、前記光学活性ボロン化合物[I]を更に一般式[XII]: M[式中、Mは、一般式[IIIa]:M1Ap(式中、M1 は、半金属原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子またはアルミニウム族金属原子を意味し、Aは、水素原子、シアン基、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、pは1ないし4の整数を意味する。)で表される金属化合物または一般式[IIIb]:R5M2 X(式中、R5 は、炭素原子数が1ないし8のアルキル基、炭素原子数が3ないし7のシクロアルキル基、炭素原子数が6ないし10のアリール基または炭素原子数が7ないし11のアラルキル基を意味し、M2はマグネシウム原子もしくは亜鉛原子を意味し、Xはハロゲン原子を意味する。)で表される金属ハライド化合物を意味する。]で表される金属化合物と反応させて前記一般式[II]で表される光学活性ボロン化合物の錯体を得ることを特徴とする光学活性ボロン化合物の錯体の製造方法。
- 一般式[XII]:
- 請求項2に記載の一般式[IV]または請求項6に記載の一般式[VIII]で表される光学活性ボロン化合物によりラセミ化合物をジアステレオマー法により光学分割することを特鐵とする光学分割方法。
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