JP4257678B2 - 水添脱硫分解プロセス残渣油を高温下で長距離移送する際のセジメント抑制方法 - Google Patents

水添脱硫分解プロセス残渣油を高温下で長距離移送する際のセジメント抑制方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水添脱硫分解プロセス残渣油の移送方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、粘性が高くアスファルテンを多量含有する水添脱硫分解プロセス残渣油のパイプラインによる長距離移送方法に関するものであり、特に、水添脱硫分解プロセス残渣油のセジメント抑制条件下における長距離移送方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
水添脱硫分解プロセスは、重質炭化水素油を原料油として、高温高圧水素条件下において、二元機能触媒と接触させることにより、主として水素化分解反応と脱硫反応を行なわせ、硫黄、窒素、金属等の不純物を除去すると共に、重質分子の軽質分子への転化により所望の鎖長を有する望ましい化学構造の軽質炭化水素油を製造することを目的として開発された主要な石油精製装置である。そして当該装置は、近年、過剰となりつつある重質油をより需要の多い軽質油に転化するための重要な技術手段として位置づけられている。
【0003】
しかしながら、水添脱硫分解プロセスにおいては、高温高圧の条件で行なわれる炭化水素油の分解反応に伴ない副反応として縮合反応が起こり、残渣油中にアスファルテンおよびコークが生成し、これらによる装置内のファウリングの問題が提起されている。
【0004】
アスファルテンは、パラフィン系炭化水素のノルマルヘプタンに不溶で、芳香族炭化水素のトルエンに可溶な重質炭化水素に相当するものと定義されるものであり、縮合環を有する多環芳香族炭化水素に属するものである。アスファルテンの分子量は、極めて大きく、例えば約5,000〜約40,000に達し、そのC/H比も約10以上のものである。
【0005】
かかるアスファルテンは、温度低下により、また、飽和脂肪族炭化水素等のアスファルテン溶解力の低い(相溶性または混合安定性の低い)油と混合したときにセジメントとして析出する性質を有している。また、アスファルテンは、長時間高温で保持した場合にも凝集が促進され、さらに高分子量化したセジメントが発生することも知られている。
【0006】
すなわち、アスファルテンは、アスファルテン溶解力の高いレジンおよび芳香族炭化水素に囲まれて安定化するとセジメントを発生しないが、かかる安定化状態を破壊する条件が生ずるとセジメントの発生による装置内、移送配管内の閉塞の問題が生ずる。
【0007】
特に、水添脱硫分解プロセスは、重質油を原料としている関係上、前記水添脱硫分解反応により、残渣油には縮合または濃縮されたアスファルテンが増加し、同時にレジンおよび芳香族炭化水素等が転化することにより生成した脂肪族炭化水素が増加しているためセジメントが析出されやすい状態にある。
【0008】
従って、かかるアスファルテンを含有する水添脱硫分解プロセス残渣油を、例えばコーカー等の熱分解装置にパイプラインで長距離移送する場合に、移送管内の条件変動、例えば、温度低下によりセジメントが発生し、一方、約350℃以上の高温移送ではコーキングを起こし、配管内のコークによる閉塞により、装置運転に甚大な支障をきたすという問題点が包蔵されている。
【0009】
かかる状況下において、従来、アスファルテンを含有する炭化水素油に対しては、各種炭化水素その他相溶性の良好な炭化水素を添加してセジメントの発生を防止するなどの提案がされている。また、特許文献1(特開平8−134471号公報)には常圧蒸留残油または減圧蒸留残油等の重質油の水素化処理に際し、前処理触媒を用い、かつ生成油中のアスファルテン重量分のレジン重量分に対する割合を1以下に保つことによりドライスラッジを抑制する方法が開示されている。
【0010】
さらに、特許文献2(米国特許第4853337号明細書)には芳香族/アスファルテン比の大きい原油と小さい原油を混合してアスファルテン量のレベルを制御してファウリングを防止する方法が記載されている。
【0011】
しかしながら、水添脱硫分解プロセス残渣油の如きセジメントの生成容易な重質油の長距離移送における移送条件および移送条件下におけるセジメントの抑制方法等については、前記の如き先行技術にはいずれも何らの開示も示唆もされていない。また、重質残渣油の長距離移送については具体的に開示されているその他の先行技術文献は見あたらない。かかる状況下において、コーカー原料油等の用途に供される重質原料油として有用な水添脱硫分解プロセス残渣油の安定的な移送方法の開発が切望されてきた。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−134471号公報
【特許文献2】
米国特許第4853337号明細書
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、粘性が高く、アスファルテンを多く含有する水添脱硫分解プロセス残渣油をパイプラインで長距離移送するにあたり、流動性の確保と共に、セジメント抑制効果の高い移送方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために、高粘性の水添脱硫分解プロセス残渣油の移送において、流動性の確保とセジメント抑制の観点から移送条件を設定する必要があることに着目し、水添脱硫分解プロセス残渣油を試料とし、温度に対する粘度の関係、高温下でのセジメントの溶解・析出、セジメント溶解フラックス油の適用・最適化について鋭意検討を重ねた結果、次の(a)〜(g);
【0015】
すなわち、
(a)流動性確保の観点から移送温度を高くする必要があるが、その一方で極度の高温条件ではコーキングが発生し移送設備内で閉塞が生じる。
(b)一方、100℃以上の温度領域ではセジメントの発生量は温度に大きく依存するものであり、温度上昇によりアスファルテンが溶解し、セジメントが減少することが確認された。
(c)原油減圧蒸留装置残渣油および流動接触分解装置残渣油が、水添脱硫分解プロセス残渣油と相溶性がよいことを見い出し、これらの残渣油をフラックス油として使用すれば、顕著なセジメント抑制効果を奏することが判明した。
(d)前記セジメント抑制効果は、高温領域で顕著となるという特異な現象を把握した。
(e)そのため、原油減圧蒸留装置残渣油および流動接触分解装置残渣油の必要混合率は、低温領域ほど高くなることにも着目した。
(f)究極的には前記流動性の確保とコーキングおよびセジメント抑制効果を充足するには安定移送領域が存在することが見い出された。
(g)水添脱硫分解プロセス残渣油を250℃で192時間もの長時間保持しても潜在セジメントは発生せず、これにより長距離移送の実現が可能であることが確認された。
に掲げる知見を得た。
【0016】
本発明者らは、かかる知見に基づいて、本発明の完成に到達した。
かくして、本発明によれば、
アスファルテンを1〜15重量%含有する水添脱硫分解プロセス残渣油をフラックス油と混合して移送する方法であって、
(1)前記水添脱硫分解プロセス残渣油の流動性を保持し;
(2)前記フラックス油として、流動接触分解装置残渣油を、前記水添脱硫分解プロセス残渣油に対し、セジメント量が250℃において0.1重量%以下に制御されるように、前記水添脱硫分解プロセス残渣油と該流動接触分解装置残渣油との混合後の混合物の全量を基準として、5〜15容量%混合し;
(3)前記水添脱硫分解プロセス残渣油と前記流動接触分解装置残渣油との混合物を前記流動性の保持条件として250〜300℃の温度において移送する;
ことを特徴とする水添脱硫分解プロセス残渣油の移送方法
が提供される。
【0017】
また、前記水添脱硫分解プロセス残渣油に対し、流動接触分解装置残渣油を、前記水添脱硫分解プロセス残渣油と該流動接触分解装置残渣油との混合後の混合物の全量を基準として、5〜15容量%混合することにより前記セジメント量を前記範囲内に制御できる方法が提供される。
【0018】
本発明は、前記の如く、粘性が高く、アスファルテンを含有する水添脱硫分解プロセス残渣油に対し、フラックス油として、流動接触分解装置残渣油を、セジメント量が250℃において0.1重量%以下に制御されるように混合することによりセジメント抑制条件下での水添脱硫分解プロセス残渣油のパイプライン移送方法に関するものであるが、さらに、好ましい実施の態様として次の1)〜3)に掲げるものを包含する。
【0019】
1)前記水添脱硫分解プロセス残渣油の流動性が保持される温度が、200℃以上の移送温度である前記水添脱硫分解プロセス残渣油の前記パイプライン移送方法。
2)前記水添脱硫分解プロセス残渣油の移送温度が、250℃〜300℃である前記水添脱硫分解プロセス残渣油の前記パイプライン移送方法。
3)前記水添脱硫分解プロセス残渣油の安定移送領域が、図1に表わされる移送温度250℃〜300℃とセジメント量0.1重量%以下とで囲まれる領域である前記水添脱硫分解プロセス残渣油の前記パイプライン移送方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明に係る移送方法の対象とされる水添脱硫分解プロセス残渣油は、重質油、例えば、原油常圧蒸留装置残渣油および原油減圧蒸留装置残渣油を水素存在下の高温高圧の反応条件下における水添脱硫分解反応に供することにより得られる水添分解生成物から軽質留分および中質留分を留去して得られる残留成分である。
【0021】
従って、水添脱硫分解プロセス残渣油は、アスファルテン含有率が高く、また縮合度の高いアスファルテンを含有し、さらに、苛酷な分解反応を経由しているので、芳香族炭化水素が分解され、飽和脂肪族炭化水素に転化されている割合が多く、前記の如くセジメントが発生しやすい組成のものである。本発明者らによるSARA分析(実施例参照。)によれば、飽和分、芳香族、レジンおよびアスファルテンをそれぞれ含有し、水添脱硫分解プロセス原料油に比較して、飽和分およびアスファルテン分の割合が増加し、他方、芳香族分およびレジン分の割合が減少していることが確認されている。
【0022】
本発明の移送方法に適用可能な水添脱硫分解プロセス残渣油に含有されるアスファルテン量は1重量%以上であり、具体的には15重量%程度に達するものでもセジメントの生成がなく十分に円滑な移送に供することができる。
【0023】
また、水添脱硫分解プロセス残渣油は高粘度のものであるから、パイプライン移送においては、移送温度を上昇させ、温度低下を防止するための保温手段により流動性を確保することが要求される。
【0024】
なお、本発明の水添脱硫分解プロセス残渣油の移送方法は、主としてパイプラインによるものであるが、前記安定移送領域に係る前記移送条件を利用できる形態、例えば特定の保温構造を有する車輌等による移送方法を排除するものではない。
【0025】
また、本発明の移送方法に適用可能な水添脱硫分解プロセス残渣油は、原油種としてパラフィン系原油、ナフテン系原油、混合系原油のいずれかのものでもよく、具体的には中東原油が用いられる。製造プロセスとして主として、重質油を原料とする固定床式プロセス、沸騰床式プロセス、スラリー相プロセス等の各種水添脱硫分解プロセスのいずれの装置から得られるものでよい。残渣油の組成成分等について特に限定されるものではないが、熱分解プロセス用原料、例えば、コーカー用原料としての重質成分を含有し、かつ流動性を有する残渣油が好適である。
【0026】
本発明によれば、粘性が高く、アスファルテンを多く含有する水添脱硫分解プロセス残渣油をパイプラインで長距離移送する場合、その流動性の確保とセジメント抑制とを満たす移送条件を設定することが重要であり、これらについては以下に具体的に説明する。
なお、本発明の明細書において「長距離移送」とは、移送温度200℃以上において水添脱硫分解プロセス残渣油を長時間、例えば200時間滞油保持しても潜在セジメントが発生しない状態をも包含したものである。
【0027】
(1)流動性の確保
本発明において、第1の移送条件として水添脱硫分解プロセス残渣油の流動性の確保には動粘度を約10cSt以下に設定することが好ましく、かかる観点から、200℃以上、好ましくは250℃以上の移送温度が採用される。しかし、極度の高温化、例えば、350℃以上の温度においては、水添脱硫分解プロセス残渣油の熱分解・重縮合反応を促進させ、コーク生成による配管閉塞を起こすおそれが生ずる。重質油の配管でのコーキングは、一般的に300℃程度から起こり、約350℃で顕著になる。従って、流動性確保と配管内コーキング防止の観点から移送温度は250℃〜300℃の範囲に設定することが好適である。
【0028】
(2)セジメント抑制
本発明において第2の移送条件としては、配管および装置内のファウリングの発生を防止するためのセジメントの生成を250℃において0.1重量%以下に抑制することが好ましい。かかるセジメントレベルを充足するように調整された水添脱硫分解プロセス残渣油は、移送条件に若干の変動が生じたとしてもファリングの生成を抑制することができ、装置運転上支障が生じることがない。
【0029】
前記セジメントレベルは、水添脱硫分解プロセス残渣油にフラックス油を混合することにより効果的に、しかも混合油の性状に著しい影響を与えることなく達成することができる。かかるフラックス油としては、原油減圧蒸留装置残渣油および流動接触分解装置残渣油を挙げることができる。
【0030】
原油減圧蒸留装置残渣油は、原油常圧蒸留装置残渣油の減圧蒸留により減圧軽油等の約540℃以下の留出油を留去して得られた残留成分である。フラックス油として使用するには、当該残渣油の種類については特に限定されるものではないが、SARA分析の結果によれば、飽和分、芳香族分、アスファルテン、レジン等が存在し、水添脱硫分解プロセス残渣油に対比して、飽和分およびアスファルテン分が少なく芳香族分、レジン分が多く含まれるものを用いることが好ましい。原油種としては限定されるものではなく、前記水添脱硫分解プロセス残渣油と同様のものでよく、具体的には、中東原油から通常の条件の減圧蒸留により蒸留残渣として得られる前記沸点を有する残渣油を用いることができる。
【0031】
また、流動接触分解装置残渣油は、減圧軽油留分から常圧残渣油までの広範囲な石油留分を原料とし、これをゼオライトタイプ触媒等の固体酸触媒と接触させて得られる接触分解生成物からガソリン成分をはじめとする分解留分を留去し、得られた約350℃以上の残留成分である。SARA分析によれば、該残渣油は飽和分も含有するが、水添脱硫分解プロセス残渣油に比して特に高い芳香族分を有することが示されている。
【0032】
流動接触分解装置残渣油は、前記水添脱硫分解プロセス残渣油および原油減圧蒸留装置残渣油と同様に原油種を選ぶものではなく、パラフィン系、ナフテン系または混合系原油のいずれのものでよい。また、各種流動接触分解装置のいずれのタイプの装置からの残渣油でもよく、特に限定されるものではないが、芳香族成分を多割合で含有するものを用いることが好ましい。具体的には、中東系原料油を用いて得られた残渣油が好適である。
【0033】
前記水添脱硫分解プロセス残渣油に対し、前記フラックス油の混合必要量は、移送温度が低温であれば多くなるが、移送温度250℃におけるセジメント量を0.1重量%以下に低下させるには、原油減圧蒸留装置残渣油では少なくとも15容量%であり、流動接触分解装置残渣油では少なくとも5容量%である。
特に好ましいフラックス油としては、後記の実施例でも示すように特に流動接触分解装置残渣油を挙げることができる。なお、フラックス油としては製油所、石油化学工場等で得られる他の残渣油成分も前記セジメント量の抑制に効果を奏するものであれば流動接触分解装置残渣油等と同等のものとして用いることができる。
【0034】
図1は水添脱硫分解プロセス残渣油の生成セジメント温度依存性と安定移送領域を示したものであるが、同図によれば、セジメントの発生が約200℃近傍および200℃以上で急激に減少していることが示されている。セジメント量の急激な減少の理由は、他の炭化水素成分に対するアスファルテンの溶解度が高温状態で大きく改善するためである。
【0035】
また、図1に示すように、水添脱硫分解プロセス残渣油単体についても200℃以上の高温条件下において、セジメント量は低下するが、図中、Bで示すように安定移送領域に到達できず、装置内でファウリングが生ずるのに対し、フラックス油として流動接触分解装置残渣油を混合することにより曲線▲2▼および▲4▼で示すようにセジメント量を著しく低減させることができ、安定移送領域に到達させることができる。
さらに、かかるフラックス油の使用条件下において水添脱硫分解プロセス残渣油を250℃で192時間保持しても配管内で潜在セジメントの発生を抑制することができることから長距離移送を実現することができた。
【0036】
図1に、本発明に係る水添脱硫分解プロセス残渣油およびフラックス油を混合した残渣油の生成セジメント温度依存性と安定移送領域を示した。
いずれの残渣油も約200℃を超えるとセジメント量が急激に低下しているが、図中、曲線▲1▼で示す水添脱硫分解プロセス残渣油のBで示す領域は、流動性確保とコーキング防止上好ましい移送温度領域Xと一致するが、セジメント量が0.1重量%以下に低減せず、安定移送領域に達しないために装置内のファウリングが発生することが実証されている。
また、曲線▲4▼で示す水添脱硫分解プロセス残渣油85LV%+流動接触分解装置残渣油15LV%の混合残渣油は領域Aでは、セジメント量が0.1重量%以下であり、装置内にもファウリングが発生しないことが確認された。
【0037】
図1において、安定移送領域で示す移送温度250℃〜300℃とセジメント量0.1重量%以下とで囲まれる領域での水添脱硫分解プロセス残渣油の移送においてはセジメントが抑制され、ファウリングのおそれがない。従って、配管内の閉塞の問題がなく、安定した装置の運転が可能である。
【0038】
以上説明したように、本発明に係る水添脱硫分解プロセス残渣油の移送は長距離にわたり高温で行なわれるため、熱ロスを防止した保温構造を備えたパイプラインが利用される。
【0039】
【実施例】
以下、本発明について実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は、実施例等により何ら限定されるものではない。
なお、実施例等で用いた水添脱硫分解プロセス残渣油、原油減圧蒸留装置残渣油および流動接触分解装置残渣油の性状を表1に示す。また、アスファルテン含有量、セジメント量その他の性状については下記の試験方法を採用して測定した。
【0040】
【表1】
【0041】
アスファルテン測定方法(SARA含有率の測定方法)
アスファルテン分は、JPI(石油学会)で規定する「アスファルトのカラムクロマトグラフィーによる組成分析法(JPI−55−22−83)」に基づいてSARA含有率を測定する。アルミナを充填材として使用し試料油から飽和分、芳香族分、レジン分と共にアスファルテン分を分離定量する。
【0042】
セジメント測定方法
セジメント量の測定は、IP(The Institute of Petroleum)で定められた実在セジメントIP−375測定方法(ISO 10307−1)に準じて行なう。
IP−375法は、あらかじめ乾燥重量を測定しておいたグラスファイバー製フィルター(1.6μm)を吸引圧力約40KPaAの濾過器にセットし、試料約10gを200℃の温度条件で濾過させる。濾過前後のフィルターの重量からセジメント(重量%)を測定する。
【0043】
実施例1
水添脱硫分解プロセス残渣油に流動接触分解残渣油を混合油全量を基準として5容量%混合し、移送温度低下時のセジメント発生リスクを確認するためセジメント濾過温度120℃、150℃、180℃、200℃および250℃の各温度でそれぞれセジメント量を測定し、表2に示す結果を得た。表2から明らかなように流動接触分解装置残渣油を5容量%混合した場合、セジメントの生成は、200℃で急激に減少し、250℃でさらに減少し、0.1重量%となった。
図1の曲線▲2▼は、本実施例に係るセジメント発生依存性と安定移送領域を表わしたものであり、200℃でセジメント量は急激に減少し、250℃〜300℃で安定移送領域に到達し、流動性とコーキング防止性能を有し、かつ、セジメント量が0.1重量%以下となったことが示されている。別に実施した試験によって配管内にはファウリングが生成していないことを確認した。
【0044】
【表2】
【0045】
比較例1
流動接触分解装置残渣油および原油減圧蒸留装置残渣油のいずれも混合せずに水添脱硫分解プロセス残渣油のみについて実施例1と同様に各温度において、それぞれセジメント量を測定したところ表3に示す結果を得た。表3によれば、250℃において、セジメント量が0.28重量%であった。図1の曲線▲1▼が本比較例を表わしたものであり、安定移送温度領域の250〜300℃の範囲であっても0.1重量%以下に達しないことが示されている。
【0046】
【表3】
【0047】
実施例1と比較例1との比較では、実施例1において250℃でのセジメント量が0.1重量%に達したのに対し、比較例1では0.28重量%であり、相当の差違の存在することが明らかである。
以下、フラックス油の混合量を増加し、また、フラックス油の種類を原油減圧蒸留残渣油に変更した結果は、実施例2以下に示す通りである。
【0048】
実施例2
水添脱硫分解プロセス残渣油に流動接触分解装置残渣油を表4に示すように混合油全量を基準として15容量%混合し、実施例1と同様に各温度でそれぞれセジメント量を測定し表4に示す結果を得た。表4より流動接触分解残渣油を増量した場合、200℃でセジメント量が0.1重量%以下に達したことが示されている。図1によれば、本実施例は曲線▲4▼で表わされたものであり、セジメント抑制効果が著しく顕著であることがわかる。
【0049】
【表4】
【0050】
参考例1
水添脱硫分解プロセス残渣油に原油減圧蒸留装置残渣油を表5に示すように混合油全量を基準として15容量%混合し、実施例1と同様に各温度で、それぞれセジメント量を測定し、表5に示す結果を得た。表5によれば、250℃でセジメント量0.1重量%に達している。図1には、曲線(3)として表わされ、200℃以上において、実施例1の流動接触分解残渣油5容量%混合のケースと同一の軌跡をとることが示されている。
【0051】
【表5】
【0052】
参考例2
水添脱硫分解プロセス残渣油に原油減圧蒸留装置残渣油を表6に示すように混合油全量を基準として30容量%混合し、実施例1と同様に各温度で、それぞれセジメント量を測定し、表6に示す結果を得た。表6から明らかなように、200℃でセジメント量がすでに0.1重量%に達したことが示されている。
【0053】
【表6】
【0054】
以上の実施例および比較例におけるセジメント濾過温度およびセジメント量の測定データに基づいて図1に示す残渣油の生成セジメント温度依存性と安定移送領域を確定した。
【0055】
【発明の効果】
本発明の前記構成により水添脱硫分解プロセス残渣油のパイプラインによる長距離移送において、セジメントの生成を抑制することができ、その結果、配管内でのファウリング発生による閉塞を防止することができる。
また、配管内での圧力損失上昇も減少するため残渣油を安定的かつ大量に移送することができ、増産に伴なう産業上の発展に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明および比較発明に係る残渣油の生成セジメント温度依存性と安定移送領域を示すグラフである。
【符号の説明】
(1)水添脱硫分解プロセス残渣油の生成セジメント温度依存曲線。
(2)水添脱硫分解プロセス残渣油95%+流動接触分解装置残渣油5%の混合残渣油の生成セジメント温度依存曲線。
(3)水添脱硫分解プロセス残渣油85%+原油減圧蒸留装置残渣油15%の混合残渣油の生成セジメント温度依存曲線。
(4)水添脱硫分解プロセス残渣油85%+流動接触分解装置残渣油15%の混合残渣油の生成セジメント温度依存曲線。
X 流動性確保とコーキング防止上好ましい移送温度領域。
A 装置内でセジメントによるファウリング等の問題が起きていない運転領域。
B 装置内でセジメントによるファウリング等の問題が起きている運転領域。

Claims (1)

  1. アスファルテンを1〜15重量%含有する水添脱硫分解プロセス残渣油をフラックス油と混合して移送する方法であって、
    (1)前記水添脱硫分解プロセス残渣油の流動性を保持し;
    (2)前記フラックス油として、流動接触分解装置残渣油を、前記水添脱硫分解プロセス残渣油に対し、セジメント量が250℃において0.1重量%以下に制御されるように、前記水添脱硫分解プロセス残渣油と該流動接触分解装置残渣油との混合後の混合物の全量を基準として、5〜15容量%の範囲で混合し;
    (3)前記水添脱硫分解プロセス残渣油と前記流動接触分解装置残渣油との混合物を、前記流動性の保持条件として250〜300℃の温度において移送する;
    ことを特徴とする水添脱硫分解プロセス残渣油の移送方法。
JP2002326184A 2002-11-08 2002-11-08 水添脱硫分解プロセス残渣油を高温下で長距離移送する際のセジメント抑制方法 Expired - Lifetime JP4257678B2 (ja)

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