本発明の一実施形態について説明する。
図2は、本実施形態にかかる画像形成装置100の概略構成を示す断面図である。なお、画像形成装置100は、外部から伝達された画像データに応じて、記録用紙(シート)に対して多色または単色の画像を形成するカラータンデム方式の画像形成装置である。
この図に示すように、画像形成装置100は、露光ユニット1、現像器2a〜2d、感光体ドラム3a〜3d、帯電器5a〜5d、クリーナユニット4a〜4d、中間転写ベルト7、中間転写ベルトユニット8、定着ユニット12、用紙搬送路S、給紙トレイ10、排紙トレイ15などによって構成されている。なお、画像形成装置100に備えられるこれらの各部材の動作は、図示しないCPU(制御部)によって制御されている。
画像形成装置100において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、図2に示すように、現像器2a,2b,2c,2d、感光体ドラム3a,3b,3c,3d、帯電器5a,5b,5c,5d、クリーナユニット4a,4b,4c,4dは、それぞれ各色(K,C,M,Y)に応じた4種類の潜像を形成するように設けられている。そして、これらの部材により、各色(K,C,M,Y)に対応する4つの画像ステーションSa,Sb,Sc,Sdが構成される。なお、各符号の「a」がブラック、「b」がシアン、「c」がマゼンタ、「d」がイエローにそれぞれ対応している。また、各画像ステーションSa〜Sdは、実質的に同一の構成を有している。
感光体ドラム3a〜3dは、画像形成装置100の上部に配置されている。そして、感光体ドラム3a〜3dの周囲には、帯電器5a〜5d,現像器2a〜2d,クリーナユニット4a〜4dが、感光体ドラム3a〜3dの回転方向(図中に示した矢印方向)に沿って配置されている。なお、感光体ドラム3a〜3dの回転制御方法については後述する。
帯電器5a〜5dは、感光体ドラム3a〜3dの表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段である。帯電器5a〜5dの構成は特に限定されるものではなく、例えば、コロナ放電方式などの非接触型の帯電器、ローラ帯電またはブラシ帯電などの接触型の帯電器を用いることができる。
露光ユニット1は、帯電器5a〜5dによって帯電された感光体ドラム3a〜3dを、入力される画像データに応じて露光することにより、各感光体ドラム3a〜3dの表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する機能を有する。露光ユニット1には、レーザ照射部1aおよび反射ミラー1bなどを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)が用いられている。なお、露光ユニット1としては、発光素子をアレイ状に並べた、例えばELやLED書込みヘッドなどを用いてもよい。
現像器2a〜2dは、それぞれの感光体ドラム3a〜3d上に形成された静電潜像を、各色(K,C,M,Y)のトナーにより顕像化する現像処理を行うものである。
本実施形態では、この現像処理に用いるトナーとして円柱状トナー(柱状トナー、非球形トナー)を用いている。なお、本明細書において、柱状トナーとは、一方向に延伸した形状のトナーを意味する。また、円柱状トナーとは、柱状トナーのうち、上記一方向に延伸する軸(長軸)を中心として側面が略軸対称である形状を意味する。ただし、必ずしも厳密に軸対称でなくてもよく、軸に垂直な断面の形状が実質的に円形とみなせる形状であればよい。円形または楕円であればよい。また、上記一方向の両側に位置する両底面は必ずしも軸に対して垂直でなくてもよい。また、上記両底面は必ずしも平面でなくてもよい(例えば凹凸を有していてもよい)。
また、本実施形態では、上記円柱状トナーとして、長軸方向の長さLと長軸に垂直な断面がなす円の直径Dとの比L/Dが1以上3以下である円柱状トナーを用いている。すなわち、長軸方向の長さLと、球換算した場合の半径(円柱状トナーの体積と同体積の球の半径)Rとの比L/Rが1.75以上3.63以下の円柱状トナーを用いている。
クリーナユニット4a〜4dは、クリーナーブレード4Ba〜4Bdを備えており、このクリーナーブレード4Ba〜4Bdを感光体ドラム3a〜3dに当接させることで、現像・画像転写後における感光体ドラム3a〜3d上の表面に残留したトナーを除去・回収するものである。
中間転写ベルトユニット8は、感光体ドラム3a〜3dに形成された各色のトナー像を中間転写ベルト7上に順次重ねて転写されることによって、この中間転写ベルト7上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成される。そして、中間転写ベルト7上に形成されたトナー像を中間転写ベルト7の回転によって記録用紙と中間転写ベルト7との接触位置に搬送し、この接触位置に配置される転写ローラ11によって記録用紙上に転写するものである。
中間転写ベルトユニット8は、図2に示すように、中間転写ローラ(転写部材)6a〜6d、中間転写ベルト7、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73、および中間転写ベルトクリーニングユニット9を備えている。これら中間転写ローラ6a〜6d、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73等は、中間転写ベルト7を張架し、中間転写ベルト7を矢印B方向に回転駆動させるものである。なお、中間転写ベルト7の回転制御方法については後述する。
中間転写ベルト7は、各感光体ドラム3a〜3dに形成された各色のトナー像を順次重ねて転写されることによって、この中間転写ベルト7上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成される。中間転写ベルト7は、厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
また、中間転写ベルト7は、感光体ドラム3b〜3dと離接することもできるようになっている。つまり、中間転写ベルトユニット8では、中間転写ローラ6b〜6d、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73等の相対位置を図示しない駆動手段によって移動させることにより、中間転写ベルト7を感光体ドラム3b〜3dから離接させることができるようになっている。これにより、モノクロ印刷の際には、ブラック(K)の感光体ドラム3aのみが中間転写ベルト7に接触するようになっている。
感光体ドラム3a〜3dから中間転写ベルト7へのトナー像の転写は、中間転写ベルト7の裏側に接触している中間転写ローラ6a〜6dによって行われる。中間転写ローラ6a〜6dは、中間転写ベルトテンション機構73の中間転写ローラ取付部(図示せず)に回転可能に支持されており、感光体ドラム3a〜3d上のトナー像を、中間転写ベルト7上に転写するための高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)を与えるものである。なお、中間転写ローラ6a〜6dは、中間転写ベルト7の移動方向に平行な感光体ドラムの接線と感光体ドラムとの接点よりも中間転写ベルト7の移動方向下流側に、中間転写ベルト7を介して感光体ドラム3a〜3dに当接するように配置されている。
中間転写ローラ6a〜6dは、直径8mm〜10mmの金属製(例えばステンレス製)の軸をベースとし、その表面が導電性の弾性材(例えば、EPDM、発泡ウレタン等)にて覆われている。この導電性の弾性材により、中間転写ベルト7に対して均一に高電圧を印加することができる。なお、この例では、転写電極として中間転写ローラ6a〜6dを使用しているが、それ以外にブラシなどを用いてもよい。
このように、各感光体ドラム3a〜3d上で各色相に応じて顕像化された静電像(トナー像)は中間転写ベルト7で転写(積層)され、装置に入力された画像情報に応じた画像となる。このようにして転写(積層)された画像は中間転写ベルト7の回転によって、記録用紙と中間転写ベルト7との接触位置に搬送され、この接触位置に配置される転写ローラ11によって記録用紙上に転写される。
この際、中間転写ベルト7と転写ローラ11とは所定ニップ(所定の圧接力および所定のニップ幅)で圧接されるとともに、転写ローラ11にはトナーを記録用紙に転写させるための電圧が印加される(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)。なお、転写ローラ11が上記ニップを定常的に得るために、転写ローラ11もしくは中間転写ベルト駆動ローラ71の何れか一方を硬質材料(金属等)で形成し、他方を弾性ローラ等の軟質材料(例えば弾性ゴムローラまたは発泡性樹脂ローラ等)で形成することが好ましい。
また、上記のように、感光体ドラム3a〜3dとの接触により中間転写ベルト7に付着したトナー、もしくは、転写ローラ11によって記録用紙上に転写が行われず中間転写ベルト7上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるので、中間転写ベルトクリーニングユニット9によって除去・回収されるように構成されている。
中間転写ベルトクリーニングユニット9は、中間転写ベルト7に接触する部材(クリーニング部材)として、例えばクリーニングブレードを備えている。なお、この場合、中間転写ベルト7は、クリーニングブレードと接触する位置において、裏側から中間転写ベルト従動ローラ72によって支持されている。
給紙トレイ10は、画像形成に使用する記録用紙(記録シート)を蓄積しておくためのトレイであり、画像形成装置100の露光ユニット1の下側に設けられている。また、画像形成装置100の上部に設けられている排紙トレイ15は、印刷済みの記録用紙をフェイスダウンで載置するためのトレイである。さらに、画像形成装置100の側壁に折り畳み自在に設けられた手差し給紙トレイ20は、手差しによる記録用紙の給紙を画像形成装置100の側方で行うためのトレイである。
また、画像形成装置100には、給紙トレイ10の記録用紙を転写ローラ(転写部)11や定着ユニット12を経由させて排紙トレイ15に送るための、略垂直形状の用紙搬送路Sが設けられている。さらに、給紙トレイ10および手差し給紙トレイ20から排紙トレイ15までの用紙搬送路Sの近傍には、ピックアップローラ16,17、レジストローラ14、転写ローラ11、定着ユニット12、記録用紙を搬送する搬送ローラ21〜28等が配置されている。
搬送ローラ21〜26は、記録用紙の搬送を促進および補助するために使用される小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数設けられている。搬送ローラ27,28は、両面複写を行うときに、片面に画像が転写された記録用紙の記録面を反転させるために、記録用紙を定着ユニット12の側方に設けられた用紙搬送路Sの反転排紙経路からレジストローラ14に搬送するためのローラである。
ピックアップローラ16は給紙トレイ10の用紙取り出し側端部に設けられ、ピックアップローラ17は手差し給紙トレイ20の用紙取り出し側端部に設けられている。ピックアップローラ16は、給紙トレイ10から、記録用紙を1枚毎に用紙搬送路Sに供給する呼び込みローラである。アップローラ17は、手差し給紙トレイ20から、記録用紙を1枚毎に用紙搬送路Sに供給する呼び込みローラである。
レジストローラ14は、用紙搬送路Sを搬送されている記録用紙を一旦保持するローラである。このレジストローラ14は、中間転写ベルト7上のトナー像の先端と記録用紙の先端とを合わせるタイミングで記録用紙を転写ローラ11に搬送する。
定着ユニット12は、ヒートローラ12a、加圧ローラ12bなどを備えている。それらヒートローラ12a及び加圧ローラ12bは、記録用紙を挟んで回転するようになっている。
また、ヒートローラ12aは、図示しない温度検出器からの信号に基づく制御によって所定の定着温度となるように設定されており、加圧ローラ12bと共に記録用紙を熱圧着することにより、記録用紙に転写されたトナー像(多色トナー像または単色トナー像)を溶融、混合および圧接し、記録用紙に対して熱定着させる。
次に、感光体駆動モータ31a〜31dおよび中間転写ベルト駆動モータ32の駆動制御方法について説明する。図1は、感光体ドラム3a〜3d、および中間転写ベルト駆動ローラ71の回転制御機構を説明するための説明図である。この図に示すように、感光体ドラム3a〜3d、中間転写ベルト駆動ローラ71は、それぞれ個別の駆動モータ(感光体駆動モータ31a〜31d、中間転写ベルト駆動モータ32)に接続されており、CPU(制御部)に備えられる回転制御部33がこれら駆動モータに制御信号を供給することによって互いに独立して回転駆動されるようになっている。
これら駆動モータの構成は回転速度を設定できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば図3に示すようなステッピングモータ40を用いることができる。この図に示すステッピングモータ40は、固定されたステータ(電磁石)41と、回転軸(シャフト)42と、回転軸42に取り付けられたロータ(磁石)43とを備えている。これにより、回転制御部33からステッピングモータ40に入力されるパルス周波数信号(制御信号)に応じた電流をステータ41に巻き付けられたコイルに流すことで磁力を発生させ、この磁力によってロータ43を引き付けて回転させる。したがって、ステッピングモータ40の回転速度は、各ステータの励磁を切り替える間隔を短くすることによって高速化し、各ステータの励磁を切り替える間隔を長くすることによって低速化できる。すなわち、上記パルス周波数信号の周波数、あるいはデューティ比を調節することによってモータの回転速度を制御できる。
回転制御部33は、感光体駆動モータ31a〜31d、および中間転写ベルト駆動モータ32の回転速度を制御するための制御信号を送る。本実施形態では、回転制御部33が、画像形成時に、中間転写ベルト7の転写ニップ部(感光体ドラム3a〜3dとの当接部)での移動速度をV1、感光体ドラム3a〜3dの転写ニップ部での移動速度をV2としたときに、0.99≦V2/V1<1となるように各駆動モータの回転速度を制御する。より具体的には、本実施形態では、中間転写ベルト7の周速(上記V1)が134mm/sec、感光体ドラム3a〜3dの周速(上記V2)が132.66mm/sec以上134mm/sec未満になるように各駆動モータの回転速度を設定する。
図4は、本実施形態のように0.99≦V2/V1<1となるように各駆動モータの回転速度を制御した場合であって、黒単色の画像を形成する場合(この場合、感光体ドラム3b〜3dが中間転写ベルト7から離間し、感光体ドラム3aが中間転写ベルト7に当接する)に、感光体ドラム3aから中間転写ベルト7にトナー像が転写される様子を模式的に示した説明図である。
感光体ドラム3aの周速と中間転写ベルト7の周速との間に速度差を設けることにより、転写ニップ部における感光体ドラム3aと中間転写ベルト7との間に発生する摺擦力によって生じる機械的エネルギーの作用によって、図4に示すように、トナー飛散・ドット乱れ・リトランスファーの増加などの画像欠損を生じることなく、円柱状トナーの長軸方向が感光体ドラム3aの幅方向(主走査方向)を向いて揃う。
これにより、トナー同士の接触面積を広くできるので、トナーの飛散を防止あるいは低減できる。また、画像形成に寄与するトナー間の隙間を無くすこと(あるいは小さくすること)ができること、および上記したトナーの飛散防止効果により、定着後の画像に濃度ムラが生じることを防止できる。
図5は、本実施形態のように0.99≦V2/V1<1となるように各駆動モータの回転速度を制御した場合であって、多色画像を形成する場合(この場合、感光体ドラム3a〜3dが中間転写ベルト7に当接する)に、感光体ドラム3a〜3c(2色目以降の感光体ドラム)から中間転写ベルト7にトナー像が転写される様子を模式的に示した説明図である。
この図に示すように、トナー像を中間転写ベルト7上で重ね合わせる場合、トナー同士の接触面積を広くしてトナーの凝集力を高めることができるので、上記のトナー飛散防止効果および濃度ムラ低減効果に加えて、2色目以降の重ね併せ時にリトランスファ(被転写体側のトナーが感光体側に移動する現象)が生じることを防止できる。これにより、多色トナー像の重ね合わせを良好に行える。
以上のように、本実施形態にかかる画像形成装置は、円柱状トナーを用いて感光体ドラム上の可視像を現像し、現像したトナー像を感光体ドラムから中間転写ベルトに転写する構成であって、感光体ドラムと中間転写ベルトとの接触部(転写ニップ部)における感光体ドラムの移動速度と中間転写ベルトの移動速度との間に速度差を設けている。これにより、感光体ドラムと中間転写ベルトとの間に生じる摺擦力によって円柱状トナーの長軸方向を主走査方向に揃えることができる。したがって、トナー同士の接触面積を広くしてトナーの飛散を防止あるいは低減できる。また、定着後の画像に濃度ムラが生じることを防止あるいは低減できる。
なお、本実施形態では、被転写体としての中間転写ベルト7上にトナー像を一旦転写した後、このトナー像を記録用紙への転写位置に搬送して記録用紙に転写する構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、感光体ドラム3a〜3d上のトナー像を、被転写体としての記録用紙に直接転写する構成としてもよい。
図6は、感光体ドラムから記録用紙Pにトナー像を直接転写する画像形成装置100bの構成を示す説明図である。なお、説明の便宜上、画像形成装置100と同様の機能を有する部材については同じ符号を用いるとともにその説明を省略する。
この図に示す画像形成装置100bは、画像形成装置100における中間転写ローラ6a〜6d、中間転写ベルト7、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73に代えて、転写ローラ56a〜56d、用紙搬送ベルト57、用紙搬送ベルト駆動ローラ51、用紙搬送ベルト従動ローラ52、用紙搬送ベルトテンション機構53を備えている。これら転写ローラ56a〜56d、用紙搬送ベルト駆動ローラ51、用紙搬送ベルト従動ローラ52、用紙搬送ベルトテンション機構53等は、用紙搬送ベルト57を張架し、用紙搬送ベルト57を矢印B方向に回転駆動させるものである。なお、転写ローラ56a〜56d、用紙搬送ベルト57、用紙搬送ベルト駆動ローラ51、用紙搬送ベルト従動ローラ52、用紙搬送ベルトテンション機構53としては、中間転写ローラ6a〜6d、中間転写ベルト7、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73と同様のものを用いることができる。
用紙搬送ベルト57は、記録用紙Pを静電吸着して搬送し、記録用紙P上に各感光体ドラム3a〜3dに形成された各色のトナー像を順次重ねて転写させる。また、用紙搬送ベルト57は、感光体ドラム3b〜3dと離接することもできるようになっている。つまり、転写ローラ56b〜56d、用紙搬送ベルト駆動ローラ51、用紙搬送ベルト従動ローラ52、用紙搬送ベルトテンション機構53等の相対位置を図示しない駆動手段によって移動させることにより、用紙搬送ベルト57を感光体ドラム3b〜3dから離接させることができるようになっている。これにより、モノクロ印刷の際には、ブラック(K)の感光体ドラム3aのみが用紙搬送ベルト57(あるいは記録用紙P)に接触するようになっている。
感光体ドラム3a〜3dから記録用紙Pへのトナー像の転写は、用紙搬送ベルト57の裏側に接触している転写ローラ56a〜56dによって行われる。転写ローラ56a〜56dは、用紙搬送ベルトテンション機構53の転写ローラ取付部(図示せず)に回転可能に支持されており、感光体ドラム3a〜3d上のトナー像を、記録用紙P上に転写するための高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)を与える。なお、転写ローラ56a〜56dは、転写ニップ部における用紙搬送ベルト57の移動方向(記録用紙Pの移動方向)に平行な感光体ドラムの接線と感光体ドラムとの接点よりも用紙搬送ベルト57の移動方向下流側において、用紙搬送ベルト57を介して感光体ドラム3a〜3dに当接するように配置されている。
このように、感光体ドラム3a〜3d上のトナー像を記録用紙Pに直接転写する構成においても、感光体ドラム3a〜3dの周速と被転写体(記録用紙P)の移動速度との間に速度差を設けることにより、中間転写ベルト7を備えた構成において感光体ドラム3a〜3dの周速と被転写体(中間転写ベルト7)の周速との間に速度差を設けた場合と略同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、被転写体(中間転写ベルト7または用紙搬送ベルト7b)の周速を感光体ドラム3a〜3dの周速よりも速く設定しているが、これに限らず、感光体ドラム3a〜3dの周速を被転写体の周速よりも速く設定してもよい。この場合にも、被転写体に転写される柱状トナーの長軸方向を揃えることができ、濃度ムラの低減効果およびドットの飛び散り防止効果を得ることができる。ただし、感光体ドラム3a〜3dの周速を被転写体の周速よりも速く設定した場合には、感光体ドラム3a〜3dの表面によって被転写体の表面に転写されたトナーが拭き取られる拭取り現象が生じて転写不良を生じる場合があるので、被転写体の周速を感光体ドラム3a〜3dの周速よりも速く設定することがより好ましい。なお、拭取り現象による転写不良が生じると、細線や文字部などの一部が欠ける中抜け現象が生じやすくなるが、被転写体の周速を感光体ドラム3a〜3dの周速よりも速く設定することで、このような中抜け現象等の転写不良を防止できる。
また、本実施形態では、中間転写ローラ6a〜6dは、転写ニップ部における中間転写ベルト7の移動方向に平行な感光体ドラムの接線と感光体ドラムとの接点よりも中間転写ベルト7の移動方向下流側において、中間転写ベルト7を介して感光体ドラム3a〜3dに当接するように配置されている。あるいは、転写ローラ56a〜56dは、用紙搬送ベルト57の移動方向に平行な感光体ドラムの接線と感光体ドラムとの接点よりも用紙搬送ベルト57の移動方向下流側において、用紙搬送ベルト57を介して感光体ドラム3a〜3dに当接するように配置されている。
これにより、転写ニップ(被転写体(中間転写ベルト7あるいは記録用紙P)と感光体ドラム3a〜3dとの当接幅)を十分に確保することができるので、転写効率を向上させることができる。また、転写ニップに突入する前のトナー像が飛び散る現象を抑制できる。
また、本実施形態では、長軸方向の長さLと球換算した場合の半径Rとの比L/Rが1.75以上3.63以下の円柱状トナーを用いている。上記の条件を満たす円柱状トナーを用いるとともに、感光体ドラム3a〜3dの周速(転写ニップ部における移動速度)と被転写体(中間転写ベルト7あるいは記録用紙P)の周速(転写ニップ部における移動速度)とに速度差を持たせることにより、円柱状トナーの長軸方向を主走査方向に精度よく揃えることができるので、トナーの飛散防止効果および濃度ムラの低減効果をより好適に得ることができる。なお、円柱状トナーの長軸方向を主走査方向にさらに精度よく揃えるために、2.19<L/R≦3.63以下の円柱状トナー、すなわち1.4<L/D≦3の円柱状トナーを用いることがより好ましい。なお、軸に垂直な断面形状が真円でない柱状トナーを場合であっても、L/Rが1.75以上3.63以下の柱状トナーを用いることで、トナー飛散および濃度ムラの発生を適切に防止できる。また、L/Rが2.19<L/R≦3.63以下の柱状トナーを用いることで、トナー飛散および濃度ムラの発生をより適切に防止できる。ただし、転写されるトナーの長軸方向をより確実に揃えるためには、軸に垂直な断面が円あるいは円に近いことが好ましい。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については実施形態1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
図8は、本実施形態にかかる画像形成装置100cの構成を示す説明図である。この図に示すように、画像形成装置100cは、実施形態1における画像形成装置100(図2参照)に加えて、転写制御部61、転写電圧生成部62a〜62d、直流電源63、交流電源64を備えている。
直流電源63は転写電圧生成部62a〜62bに直流電位を供給し、交流電源64は転写電圧生成部62a〜62bに交流電位を供給する。
転写電圧生成部62a〜62dは、それぞれ、中間転写ローラ(転写部材)6a〜6dと感光体ドラム3a〜3dとの間に印加する転写電圧(転写バイアス電圧)を生成する。
転写制御部61は、転写電圧生成部62a〜62bの動作を制御することにより、中間転写ローラ(転写部材)6a〜6dと感光体ドラム3a〜3dとの間に印加する転写電圧をそれぞれ所望の電圧に制御する。
具体的には、転写電圧生成部62a〜62dは、転写制御部61からの制御信号に応じて、直流電源63から供給される直流電位および交流電源64から供給される交流電位を適宜増幅させて重畳させることで所望の大きさの転写電位を生成し、生成した転写電位を中間転写ローラ6a〜6dに供給する。これにより、中間転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム3a〜3dとの間に直流電圧(直流バイアス電圧)と交流電圧(交流バイアス電圧)とが重畳された所望の大きさの転写電圧が印加される。
なお、本実施形態では、中間転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム3a〜3dとの間に印加する転写電圧の大きさを2000V以上3300V以下としている。また、転写電位を生成するために重畳される交流電位のピークtoピーク電圧(最大電位と最小電位との差)を500V以上1200Vとし、この交流電位の周波数を1000Hz以上2500Hz以下としている。
次に、転写電位の大きさ、交流電位のピークtoピーク電圧、交流電位の周波数、および直流電圧の大きさを上記のように設定した理由について説明する。
表1は、中間転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム3a〜3dとの間に直流バイアス電圧(直流電圧)のみを印加した場合の、柱状トナーの転写効率の測定結果である。なお、表1は、プロセススピード(転写ニップ(中間転写ベルト7と感光体ドラム3a〜3dとの接触領域)における感光体ドラム3a〜3dの周速度)が134mm/sec、感光体ドラム3a〜3dへのトナー付着量が0.45mg/cm2の場合の結果を示している。また、転写効率は、ベタ画像形成時における転写工程前の感光体ドラム3a〜3dへのトナー付着量と、転写工程を終えた直後における転写ベルト7へのトナー付着量とをそれぞれ測定し、中間転写ベルト7へのトナー付着量を感光体ドラム3a〜3dへのトナー付着量で除した値である。
転写効率は、実用上問題ない程度の画質を得るためには、80%以上であることが好ましい。したがって、表1に示した実験結果から、中間転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム3a〜3dとの間に印加する転写電圧の大きさは、2000V以上3300V以下にすることが好ましい。
なお、表1に示したように、転写電圧を3300Vよりも大きく(3500V以上)にすると、転写効率が著しく低下した。これは、転写電圧を大きくしすぎると、中間転写ベルト7と感光体ドラム3a〜3d上のトナー像との間で放電現象が発生し、転写に寄与する実効的な電界が損なわれるためであると考えられる。また、転写電圧が2000V未満の場合に転写効率が低下しているのは、中間転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム3a〜3dとの間の転写ニップにおける電界強度が不十分なためであると考えられる。
次に、中間転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム3a〜3dとの間に印加する転写電圧が2000V以上3300V以下という条件下で、交流電位のバイアスピーク間出力(ピークtoピーク電圧)Vp−pおよび周波数を変化させた場合の、記録用紙上に最終的に形成された画像の画像品質について調べた。表2は、直流バイアスを2500V、プロセススピードを173mm/sec、転写ニップ幅を5.0mmとした場合のバイアスピーク間出力(ピークtoピーク電圧)および交流バイアス周波数と画像品質との関係を示している。表中に示した数値1〜5は記録用紙上に形成された画像の画像品質(ライン画像の再現性、ドットの再現性等)を以下のようにランク付けした結果を示している。
5:画像乱れなし。
4:肉眼では確認できない程度の画像乱れが僅かにある(実使用上問題なし)。
3:肉眼では確認できない程度の画像乱れが多数ある(実使用上問題なし)。
2:肉眼ではっきり確認できる画像乱れが僅かにある。
1:肉眼ではっきり確認できる画像乱れが多数ある。
表2に示したように、転写交流バイアス周波数が800Hz以上になると画像品質の向上効果が現れ始める。なお、周波数800Hzを転写ニップ内でのトナーへの振動回数に換算すると23.12回となる。したがって、転写ニップ内での振動回数が23回を超えると画像品質の改善効果が現れ始めると考えられる。なお、転写ニップ内でのトナーの振動回数は、ニップ幅(mm)/プロセススピード(mm/sec)/転写交流バイアス周波数(Hz)を演算することによって求められる。
また、表2に示したように、バイアスピーク間出力が500V以上1200V以下の場合、転写交流バイアス周波数が1000Hz以上2500Hz以下の範囲内のとき、すなわち転写ニップ内におけるトナーの振動回数が28.9回以上72.25回以下のときに、実用上問題ない程度の画像品質が得られた。
また、表2に示したように、バイアスピーク間出力が700V以上1200V以下の場合、転写交流バイアス周波数が1500Hz以上2200Hz以下の範囲内のとき、すなわち転写ニップ内におけるトナーの振動回数が43.35回以上63.58回以下のときに、特に良好な画像品質が得られた。
これらの結果から、バイアスピーク間出力を500V以上1200V以下とし、転写交流バイアス周波数を1000Hz以上2500Hz以下の範囲内に設定すること、すなわち転写ニップ内におけるトナーの振動回数を28.9回以上72.25回以下に設定することが好ましい。また、バイアスピーク間出力を700V以上1200V以下とし、転写交流バイアス周波数を1500Hz以上2200Hz以下の範囲内に設定すること、すなわち転写ニップ内におけるトナーの振動回数を43.35回以上63.58回以下に設定することがより好ましい。
なお、プロセススピードが異なると摺擦力が変化するため、必ずしも最適な転写交流バイアス周波数は同じではないが、プロセススピードが異なる場合であっても、バイアスピーク間出力が500V以上1200V以下、転写交流バイアス周波数が1000Hz以上2500Hz以下の範囲内であれば転写ニップ内におけるトナーの振動数を好ましい範囲にすることができ、画像品質を向上させることができる。また、バイアスピーク間出力が700V以上1200V以下、転写交流バイアス周波数が1500Hz以上2200Hz以下の範囲内であれば画像品質をより向上させることができる。
また、プロセススピードが異なる場合であっても、バイアスピーク間出力を500V以上1200V以下とし、転写ニップ内におけるトナーの振動回数が28.9回以上72.25回以下になるように転写交流バイアス周波数を設定することにより、画像品質を実用上問題ない程度に向上させることができる。また、バイアスピーク間出力を700V以上1200V以下とし、転写ニップ内におけるトナーの振動回数が43.35回以上63.58回以下になるように転写交流バイアス周波数を設定することにより、画像品質をより向上させることができる。
これらの実験結果から、転写電圧の大きさを2000V以上3300V以下にすることが好ましいことがわかった。つまり、転写電圧が2000V未満であると、転写ニップにおける電界強度が不十分になって転写効率が低下する。また転写電圧が3300Vを超えると、転写ニップ内で放電が発生し、空隙の実効的な電界が低下するため転写効率が下がる。これに対して、転写電圧が2000V以上3300V以下の範囲内であれば、転写効率の低下およびトナー飛散などによるドット画像の乱れを発生することなく、柱状トナーを転写することができる。
また、転写電圧を生成するために直流電圧に重畳させる交流電位については、ピークtoピーク電圧を500V以上1200V以下、かつ周波数を1000Hz以上2500Hz以下にすることが好ましいことがわかった。交流電位を上記の範囲内にすることにより、記録用紙上に実使用上問題のない画像を形成できる。
なお、転写電圧を生成するために交流電位に重畳させる直流電圧の大きさは、ピークtoピーク電圧が500V以上1200V以下の交流電位を重畳させたときに転写電圧が2000V以上3300V以下となる大きさであればよい。ただし、直流電圧の大きさが2000V以上3000V以下の範囲内であることがより好ましい。直流電圧が上記の範囲内であれば、転写効率の低下およびトナー飛散などによるドット画像の乱れを発生することなく、柱状トナーを転写することができる。直流電圧が2000V未満であると、転写ニップにおける空隙電界が不十分なため、転写効率が低下する場合がある。また、直流電圧が3000Vを超えると、転写ニップ内で放電が発生し、空隙の実効的な電界が低下するため転写効率が下がる場合がある。
以上のように、本実施形態にかかる画像形成装置は、感光体ドラムと中間転写ベルトとの接触部(転写ニップ部)における感光体ドラムの移動速度と中間転写ベルトの移動速度との間に速度差を設け、かつ感光体ドラムと中間転写ベルトとの間に直流電圧に交流電圧を重畳させた転写電圧を印加する。
これにより、感光体ドラムと中間転写ベルトとの間に摺擦力を生じさせるとともに、転写電圧によって生じる電界の力によって転写ニップ内におけるトナー凝集を適度に低減することができる。このため、個々のトナー粒子に摺擦力を与えやすくするので、トナーの向きがより揃いやすくなる。その結果、トナー飛散、ドット乱れ、リトランスファーの増加などによる画像欠損を生じることなく、円柱状トナーの長軸方向を主走査方向により確実に揃えることができる。したがって、トナー同士の接触面積を広くしてトナーの飛散をより確実に防止あるいは低減できる。また、画像形成に寄与するトナー間の隙間を無くす(あるいは小さくする)ことができること、および上記したトナーの飛散防止効果により、定着後の画像に濃度ムラが生じることを確実に防止あるいは低減できる。
特に、プロセススピードの速いマシンの場合、実施形態1にかかる画像形成装置の構成だけでは柱状トナーの長軸方向(延伸方向)を主走査方向(回転方向に直交する方向)に精度よく揃えることが難しい場合があった。これは、プロセススピードの高速化により転写ニップ通過時間が短くなるため、柱状トナーに摺擦力が作用する時間が減少するためであると考えられる。
これに対して、本実施形態にかかる画像形成装置では、トナー像を感光体ドラム3a〜3dから中間転写ベルト7に転写させる工程で、感光体ドラム3a〜3dと中間転写ベルト7との間に直流電圧に交流電圧を重畳させた転写電圧を印加し、転写ニップ内におけるトナー凝集を緩和する。これにより、トナーに摺擦力が作用する時間が減少するような場合であっても、個々のトナー粒子に摺擦力を与えやすして柱状トナーの長軸方向(延伸方向)を主走査方向(回転方向に直交する方向)に揃えることができる。
ただし、トナーの凝集を低減しすぎると、トナー飛散・ドット乱れ・リトランスファーの増加などの画像欠損が生じる。このため、柱状トナーの凝集を適度にほぐすために、交流電圧のピークtoピークを500V以上1200V以下、周波数を1000Hz以上2500Hz(感光体ドラム3a〜3dと中間転写ベルト7との接触部(転写ニップ部)におけるトナーの振動回数が28.9回以上72.25回以下になる周波数)とすることが好ましい。これにより、マシンのプロセススピードに関係なく、トナー飛散・ドット乱れ・リトランスファーの増加などの画像欠損を生じさせずに柱状トナーの長軸方向(延伸方向)を主走査方向(回転方向に直交する方向)に揃えることができる。
また、転写電圧を2000V以上3300V以下とすることが好ましい。転写電圧が2000V未満であると、転写ニップにおける電界強度が不十分なため転写効率が低下する。また、転写電圧が3300Vを超えると、転写ニップ内で放電が発生し、空隙の実効的な電界が低下するため、転写効率が下がる。これに対して、転写電圧を2000V以上3300V以下にすることにより、転写効率の低下を抑制(転写効率80%以上を維持する)するとともに、トナー飛散などによるドット画像の乱れを発生することなく柱状トナーを転写することができる。
なお、図6に示した画像形成装置100bのように、感光体ドラム3a〜3d上のトナー像を記録用紙Pに直接転写する構成において、感光体ドラム3a〜3dの周速と被転写体(記録用紙P)の移動速度との間に速度差を設け、かつ直流バイアスに交流バイアスを重畳した転写バイアスを与える構成としてもよい。
これにより、中間転写ベルト7を備えた構成において感光体ドラム3a〜3dの周速と被転写体(中間転写ベルト7)の周速との間に速度差を設け、かつ直流バイアスに交流バイアスを重畳した転写バイアスを印加した場合と略同様の効果を得ることができる。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。