JP4257062B2 - 滑り軸受け装置及び滑り軸受け装置を用いた小型機器 - Google Patents

滑り軸受け装置及び滑り軸受け装置を用いた小型機器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸とこの軸を支持する軸受け部からなる滑り軸受け装置及びこの軸受け装置を使用した小型機器に関する。
【0002】
【背景技術】
従来から、軸と軸受け部との摩擦を減らすために様々な工夫がされている。
例えば、特開2001−165167号公報に記載されるような、ライニング材の表面に円周方向に沿った複数の溝を形成し、隣り合う溝の間に環状突起を形成した滑り軸受けがある(従来例1)。この軸受けのライニング材の表面には硬質皮膜が形成されている。
【0003】
さらに、特開2001−124081号公報や特開2001−124083号公報に記載されるような滑り面(軸受け面)にフッ素樹脂を用いた共析メッキを施し、その後、フッ素樹脂の融点以上の加熱焼成するもの(従来例2)、メッキ金属の表面に極圧剤を作用させたもの(従来例3)がある。
また、特開2001−281358号公報に記載されているように、滑り面に固体潤滑性粒子とバインダーからなり、鉛筆硬度がFから5Hである塗膜を設ける軸受け(従来例4)がある。
さらに、特開平5−296248号公報に記載されているように、ステータとロータからなる複合軸受け体のステータのセラミック基材上に非晶質炭素膜を形成するものがある(従来例5)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような軸受けでは、以下のような問題がある。
ライニング材の表面に円周方向に沿った複数の溝を形成する軸受け(従来例1)では、溝を形成しなければならないため、小型化が困難であり、小型機器(精密機器)に使用することができない。
【0005】
フッ素樹脂を用いた共析メッキを施すもの(従来例2、3)では、フッ素樹脂は高負荷での摺動という条件下においても耐えうるほどの耐摩耗性を有していないため、この条件下で使用した場合にはフッ素樹脂が摩耗し、脱落してしまうという問題がある。
また、共析メッキのフッ素樹脂は金属マトリックス中に取り込まれた状態となるが、膜厚を薄くした場合には、フッ素樹脂を金属マトリックス中に取り込むことが困難となるため、所定以上の膜厚、例えば10μmから20μm程度が必要となる。精密機器の軸受け面にメッキを行う場合、その膜厚は2μmから5μm程度が限界であるため、共析メッキを精密機器に適用することは困難である。さらに、加熱焼成を行う場合には、共析メッキ層はフッ素樹脂の溶解により、表面がポーラス状となり、メッキの剥離や摩耗を促進してしまうという問題もある。
【0006】
鉛筆硬度がFから5Hである塗膜を設ける軸受け(従来例4)では、塗膜の鉛筆硬度がFから5Hと、比較的柔らかく、高負荷がかかった場合、塗膜が変形し、母材同士の接触が起こるため、母材が摩耗してしまうという問題がある。
また、ステータのセラミック基材上に非晶質炭素膜を形成する複合軸受け体(従来例5)は、20000rpm程度の高速摺動で使用されることを想定したものであり、低速摺動での使用は想定されていない。従って、このような複合軸受け体を低速摺動で使用した場合には、ステータまたはロータに高い負荷がかかり、摩耗してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、小型化を図ることができ、低速、高負荷の条件、すなわち、境界潤滑状態で使用しても、優れた耐久性を有する滑り軸受け装置及びこの滑り軸受け装置を使用した小型機器を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
具体的には、本発明の滑り軸受け装置は、軸とこの軸を支持する軸受け部とを有し、これらが相対的に摺動する時計用の滑り軸受け装置であって、前記軸および軸受け部間には潤滑油が注入されており、前記軸受け部の軸受け特性を示すゾンマーフェルト値Sが2.02×10 −8 以下であり、前記軸受け部の軸受け面または前記軸の表面の一方に非晶質炭素膜が形成されており、この非晶質炭素膜上または、非晶質炭素膜が形成されていない他方の少なくとも何れか一方に固体潤滑被膜が形成されることを特徴とする。
【0009】
一般に、軸受け部の軸受け特性を示すゾンマーフェルト値Sは、潤滑油の粘性係数をμ、軸の回転数をN、軸径をD、軸受け幅をL、軸受け部に作用する荷重をW、軸受け隙間と軸径Dとの比をΨとすると、次の式で表される。
【0010】
【数1】
S=μ・N・D・L/(W・Ψ2
【0011】
この構成の本発明では、軸の表面または軸受け部の軸受け面の何れか一方に非晶質炭素膜(以下DLC膜とする)を形成しており、このDLC膜は高い耐摩耗性を有するので、DLC膜が形成された軸受け部の軸受け面や軸の表面が保護され、摩擦により傷ついてしまうことがない。さらにDLC膜は耐凝着性も優れているため、軸受け部または軸の一方のみにDLC膜を形成しても、DLC膜が設けられていない他方が摩耗してしまうことを防止することができる。また、DLC膜の摩擦係数は乾燥摩擦状態であっても0.1程度と低いために、摩擦損失を低減することができる。さらに、ゾンマーフェルト値Sが2.02×10 −8 以下すなわち、境界潤滑状態であるため、軸と軸受け部との間で局部的に固体接触が生じているが、軸と軸受け部との間に潤滑油が注入されていない場合に比べ、潤滑油の油圧により、接触による応力を緩和でき、摩擦の発生を低減することができる。このように、低速、高負荷の条件においても摩擦の発生を低減することができるので、耐久性の高い滑り軸受け装置を提供することができる。また、この滑り軸受け装置は、従来のように、ライニング材の表面に円周方向に沿った複数の溝を形成する必要がないため、小型化が容易であり、小型機器に使用することができる。
ここで、固体潤滑被膜としては、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)や二硫化モリブデン等があげられる。固体潤滑被膜を形成することで、滑りが良好となり、軸受け面または前記軸の表面の一方に形成されたDLC膜または他方の摩擦損失を低減することができる。
また、DLC膜の上に固体潤滑被膜を形成すれば、例え、摩擦により、固体潤滑被膜がはがれても、軸受け部や軸の母材ではなくDLC膜が露出することとなるので軸受け面または軸の摩擦損失を防ぐことができ、耐久性をより高くすることができる。
【0012】
この際、前記軸受け部または前記軸のうち前記非晶質炭素膜が形成された母材のビッカース硬さは前記非晶質炭素膜のビッカース硬さよりも低いことが好ましい。
軸受け部または軸の母材の硬度がDLC膜の硬度よりも低ければ、軸受け部や軸に高負荷がかかった場合に、DLC膜が形成された軸受け部や軸が弾性変形するため、応力を緩和することができる。
【0013】
また、前記軸受け部の軸受け面の凹凸の最大高低差Rmaxが0.1μm以下であることが好ましい。
軸受け面の凹凸の最大高低差Rmax(表面粗さ)が、0.1μmよりも大きいと、表面の凹凸により油膜がせん断されやすくなり、凸部を油膜で覆うことが困難となる。さらに、凸部では応力が集中するため、軸受け面にDLC膜が形成されていない場合、油膜で覆われていない凸部は、軸受け装置の長期間の使用に伴って摩擦により徐々に摩耗してしまう。また、軸受け面にDLC膜を形成する場合には、凸部のDLC膜がはがれやすくなってしまう。
これに対し、軸受け面の凹凸の最大高低差Rmaxを0.1μm以下とし、平滑化を図ることで、油膜の切れやDLC膜の剥離が防止され、滑り軸受け装置を耐久性の高いものとすることができる。
【0014】
さらに、前記非晶質炭素膜の厚さが0.5μm以上、2μm以下であることが好ましい。
DLC膜の厚さを2μmよりも大きいものとすると、DLC膜の硬度が、DLC膜が形成されている軸や軸受け部の硬度よりも非常に高いため、この軸や軸受け部に高い負荷がかかった場合、軸や軸受け部の変形を妨げることとなり、DLC膜に亀裂が生じたり、DLC膜が剥離したりしてしまう。一方、DLC膜を0.5μmよりも薄いものとすると、軸や軸受け部の表面粗さをカバーできなくなってしまう。
これに対し、本願発明では、DLC膜の厚さを0.5μm以上、2μm以下としたため、上述した問題が発生することが無く、滑り軸受け装置の耐久性を向上させることができる。具体的には、DLC膜の膜厚は、DLC膜を形成する表面の表面粗さとの関係により決めればよい。
【0015】
前記軸受け部の軸受け面の断面形状は前記軸側に突出した円弧形状であることが好ましい。
軸受け面の形状を断面円弧形状とすることで、製造誤差等により、軸に傾きが生じた場合でも、軸受け部の角で接触することが無く、接触面積が確保され、軸にかかる力が分散されるので、軸が傷つくことがない。
また、一般にDLC膜はイオン化蒸着法により形成されることが多いが、軸受け面の形状が軸側に突出した形状となっているので、軸受け面にDLC膜を形成しやすくなる。
【0017】
本発明の機器は、以上のような滑り軸受け装置を用いたことを特徴とするものである。
滑り軸受け装置は耐摩耗性に優れているため、機器の耐久性も向上させることができ、長期間メンテナンスフリーとすることができる。
【0018】
この際、機器は、機械的エネルギ源と、この機械的エネルギ源に連結された輪列により駆動されるとともに誘起電力を発生して電気的エネルギを出力する発電機と、前記輪列に結合された指針と、発電機から出力された電気的エネルギにより駆動されて前記発電機の回転周期を制御する回転制御装置とを備える電子制御式機械時計であり、前記輪列の歯車は前記滑り軸受け装置により支持されているものが好ましい。時計の輪列のなかには、その回転数が低いため、境界潤滑状態となるものがあり、このようなものに、上述した滑り軸受け装置を採用することで、時計の耐久性を向上させることができる。また、上述した滑り軸受け装置はDLC膜により低摩擦係数であるため、機械的エネルギ源から伝達されるエネルギのロスを削減でき、電子時計の持続時間の低下を防止することもできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る滑り軸受け装置10を適用した電子制御式機械時計の要部を示す平面図であり、図2及び図3はその断面図である。
【0020】
電子制御式機械時計は、ゼンマイ1a、香箱歯車1b、香箱真1c及び香箱蓋1dからなる香箱車1を備えている。ゼンマイ1aは、外端が香箱歯車1b、内端が香箱真1cに固定されている。香箱真1cは、地板2と輪列受3に支持され、角穴車4と一体で回転するように角穴ネジ5により固定されている。
角穴車4は、時計方向には回転するが反時計方向には回転しないように、こはぜ6と噛み合っている。なお、角穴車4を時計方向に回転しゼンマイを巻く方法は、機械時計の自動巻または手巻機構と同様であるため、説明を省略する。
【0021】
香箱歯車1bの回転は、二番車107、三番車108、四番車109、五番車110および六番車111からなる増速輪列117を介して増速されて調速機120に伝達される。なお、香箱歯車1bの回転は7倍に増速され二番車107に伝達され、二番車107から三番車108へは8.0倍増速され、三番車108から四番車109へは7.5倍増速され、四番車109から五番車110へは6倍増速され、五番車110から六番車111へは10倍増速され、六番車111からロータ112へは8倍増速されている。
【0022】
増速輪列117の二番車107には筒かなが、筒かなには分針8が、四番車109には秒針9がそれぞれ固定されている。つまり、分針8、秒針9等の指針は、増速輪列117に結合されて輪列117の回転に伴い駆動される。
【0023】
電子制御式機械時計の調速機120は、磁石およびコイルからなる電磁ブレーキ式の調速機であり、具体的にはロータ112、ステータ115、コイルブロック116を備えて構成されている。
【0024】
ロータ112は、ロータ磁石112a、ロータかな112b、ロータ慣性円板112cから構成される。ロータ慣性円板112cは、香箱車1からの駆動トルク変動に対しロータ112の回転速度変動を少なくするためのものである。
【0025】
コイルブロック116は、ステータの一部116cが一体とされた磁心116aにコイル116bを巻線したものである。ステータ115は、ステータ体115aにステータコイル115bを巻線したものであり、磁心116aの一部で構成されるステータ116cにロータ112を挟んで対向する側に配置され、ネジ121でコイルブロック116の他端および地板に固定されている。ここで、ステータ115と磁心116a、磁心116aに一体のステータ116cはPCパーマロイ等で構成されている。また、コイル116bは、出力電圧の変動を検出することでロータ112の回転を検出するように構成されている。
【0026】
図4には、本実施形態の電子制御式機械時計の構成を示すブロック図が示されている。
電子制御式機械時計は、機械的エネルギ源としてのゼンマイ1aと、ゼンマイ1aのトルクを発電機120に伝達する増速輪列117と、増速輪列117に連結されて時刻表示を行う時刻表示装置である指針118とを備えている。
【0027】
発電機120は、増速輪列117を介してゼンマイ1aによって駆動され、誘起電力を発生して電気的エネルギを供給する。この発電機120からの交流出力は、整流回路125を通して昇圧、整流され、コンデンサ(蓄電装置)126に充電供給される。
【0028】
このコンデンサ126から供給される電力によってワンチップICで構成された回転制御装置150が駆動される。この回転制御装置150は、図4に示すように、発振回路151、ロータの回転検出回路152およびブレーキの制御回路153を備えて構成されている。
【0029】
発振回路151は、時間標準源である水晶振動子151Aを用いて発振信号(32768Hz)を出力し、この発振信号を所定の分周回路で分周し、基準信号fsとして制御回路153に出力している。
【0030】
回転検出回路152は、発電機120から出力される発電波形からロータの回転速度を検出し、その回転検出信号FG1を制御回路153へ出力する。
制御回路153は、基準信号fsに対する回転検出信号FG1の位相差等に基づいて発電機(調速機)120にブレーキ信号を入力し、調速している。
【0031】
本実施形態では、このような電子制御式機械時計において、各番車107から111及びロータ112に本発明に係る滑り軸受け装置10を適用している。地板2、輪列受3および二番受7には、軸受け部11が圧入されており、この軸受け部11は各番車107から111及びロータ112の軸12(回転軸)を支持している(図3参照)。すなわち、各番車107から111及びロータ112の歯車(かな)は軸12と軸受け部11とから構成される滑り軸受け装置10により支持されていることとなる。
なお、五番車110、六番車111、ロータ112の滑り軸受け装置10には耐震構造が適用されているが、その構成は、三番車108、四番車109に使用されている滑り軸受け装置10と略同様であるので、二番車107、三番車108、四番車109に使用されている滑り軸受け装置10を例に挙げて、その構成について説明する。
【0032】
図5に滑り軸受け装置10の要部の拡大図を示す。この滑り軸受け装置10の軸12は、例えば、高炭素鋼(SK4の焼き入れ品等)の母材を加工したものであり、ビッカース硬度がHv700程度となっている。
軸受け部11は、黄銅、青銅、ステンレス鋼、炭素鋼等の母材を加工したものであり、Hv100から500程度となっている。この軸受け部11は最大高低差Rmaxが0.1μm以下であり、軸受け部11の軸受け面13の断面形状は軸12側に突出した円弧形状である。軸受け部11の表面を最大高低差Rmax0.1μmとする方法としては、テーパワイヤと研磨材(ダイアモンドスラリー)を用いて研磨する方法(実開平6−61441号公報参照)があり、この際、軸受け部11を角度を付けて研磨することで軸受け面13の断面形状を円弧形状とすることができる。また、この方法に限らず、特開平2−311255号公報に記載されているような小径管の内面研磨装置と研磨治具を用いて研磨してもよく、電解研磨法や化学研磨法を用いて研磨してもよい。
【0033】
軸受け部11の表面には非晶質炭素膜(DLC膜14)が形成され、さらに、このDLC膜14上には固体潤滑皮膜15が形成されている。
DLC膜14の膜厚は、0.5μm以上、2μm以下が好ましく、より好ましくは1μm程度である。DLC膜14は、例えば、メタンを原料としたプラズマCVD法、ベンゼンを原料としたイオン化蒸着法、グラファイトを原料としたアークプラズマ法等により形成されるが、形成されたDLC膜の表面の平滑性を考慮するとプラズマCVD法またはイオン化蒸着法により形成することが好ましい。このような方法で形成されたDLC膜の硬度はHv1000から5000程度となる。
【0034】
固体潤滑皮膜15としては、例えば、PTFE、二硫化モリブデン等を使用することが考えられるがPTFEを使用する場合には、浸積処理により形成する方法が最も簡便で適している。この際、PTFEはデュポン社製の商品名バイダックスAR、バイダックス1000、ダイキン工業社製の商品名ルブロンLD−1、三井フロロケミカル社製の商品名MP1200、MP1300等を使用することができる。また、PTFEを分散させる有機溶媒としてはトルエン、ベンゼン、パーフロロカーボン、HFE等を使用することができる。この浸積処理により、PTFEの固体潤滑皮膜を形成した後、400℃程度の加熱焼成を行うと、PTFEの脱落を確実に防止することができるようになるうえ、軸受け部11の母材として炭素含有量が1%程度の炭素鋼を使用した場合には、焼き戻され、その硬度がHv500程度となる。
【0035】
このような滑り軸受け装置10の軸12と軸受け部11との間には、潤滑油が注入されおり(図示略)、潤滑油としては、例えば、MOEBIUS社製の商品名SYNT−A−LUBE油、SYNTA−VISCO−LUBE油、SYNTA−FRIGO−LUBE油等を使用することができる。これらは軸受け部11の側圧や、各潤滑油の粘度等を考慮して適宜使い分ければよい。
【0036】
従って、本実施の形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
軸受け部11の表面にDLC膜14が形成されており、このDLC膜14は高い耐摩耗性を有するため、軸受け部11の表面、特に、軸12と接触しやすい軸受け面13が摩擦等により傷ついてしまうことがない。
また、DLC膜14の摩擦係数は低いので、DLC膜14が設けられていない軸12の表面がDLC膜14との摩擦により摩耗してしまうことを防止することができる。
【0037】
さらに、軸12と軸受け部11との間には潤滑油が注入されており、潤滑油が注入されていない場合に比べ、接触による応力を緩和でき、摩擦の発生を低減することができる。
このように、摩擦の発生を防止することができるので、耐久性の高い滑り軸受け装置10とすることができる。
また、滑り軸受け装置10は、従来のように、ライニング材の表面に円周方向に沿った複数の溝を形成する必要がないため、容易に小型化を図ることができる。
【0038】
軸受け部11の硬度はDLC膜14の硬度よりも低く、軸受け部11に高負荷がかかった場合に、軸受け部11が弾性変形するため、応力を緩和することができる。
さらに、軸受け面13の凹凸の最大高低差Rmaxが、0.1μmよりも大きい場合には、表面の凹凸により油膜がせん断されやすくなり、凸部を油膜で覆うことが困難となる。また、軸受け面13の凸部のDLC膜がはがれやすくなってしまうという問題がある。
これに対し、本実施形態では、軸受け面13の凹凸の最大高低差Rmaxを0.1μm以下とし、平滑化を図ることで、油膜の切れやDLC膜14の剥離が防止され、滑り軸受け装置10の耐久性をより向上させることができる。
【0039】
また、DLC膜14の厚さを2μm以下としたため、軸受け部11に高い負荷がかかっても、軸受け部11の変形を妨げることが無く、DLC膜14に亀裂が生じたり、DLC膜14が剥離したりしてしまうことがない。また、DLC膜は0.5μmよりも厚いものであるため、軸受け部11の軸受け面13の表面粗さをカバーできなくなってしまうことがない。
【0040】
軸受け面13の形状を断面円弧形状としたため、製造誤差等により、軸12に傾きが生じた場合でも、軸12が軸受け部13の角で接触することが無く、接触面積が確保され、軸12にかかる力が分散されるので、軸12が傷つくことがない。
また、軸受け面13の形状が軸12側に突出した形状となっているので、軸受け面13にDLC膜14を形成しやすくなる。
【0041】
DLC膜14上に固体潤滑被膜15を形成したため、滑りがより良好となり、軸受け11と軸12との間の摩擦の発生を防止することができ、軸12の摩擦損失を低減することができる。
また、DLC膜14の上に固体潤滑被膜15を形成したため、例え、摩擦により、固体潤滑被膜15がはがれても、軸受け部11の母材ではなくDLC膜14が露出することとなるので軸受け部11の母材の摩擦損失を防ぐことができ、耐久性をより高くすることができる。
【0042】
電子時計の番車107から111及びロータ112の軸受け部111は、その回転数や荷重等との関係から、境界潤滑状態となる。具体的にゾンマーフェルト値Sを計算すると、二番車107のゾンマーフェルト値Sは2.02×10-8(D=2.4×10-3[m]、W=0.98[N](0.1[kgf])、N=2.8×10-4[1/sec])、三番車108は4.8×10-9(D=1.6×10-4[m]、W=3.8×10-1[N](3.9×10-2[kgf])、N=2.1×10-3[1/sec])、六番車111は3.6×10-4(D=1.0×10-4[m]、W=2.5×10-4[N](2.5×10-5[kgf])、N=1[1/sec])、ロータ112の上側の軸受け部11は1.6×10-2(D=1.0×10-4[m]、W=4.8×10-5[N](4.9×10-6[kgf])、N=8[1/sec])、下側の軸受け部11は0.12(D=1.0×10-4[m]、W=6.8×10-6[N](6.9×10-7[kgf])、N=8[1/sec])となる。
【0043】
電子時計の輪列117は増速輪列であるため、二番車107からロータ112に向かって順にゾンマーフェルト値Sの値が大きくなる傾向にある。
そして、電子時計では、少なくとも二番車107、三番車108の軸受け部11はゾンマーフェルト値Sが2.02×10 −8 以下、すなわち境界潤滑状態となっているため、摩耗の発生を低減することが可能な滑り軸受け装置10を採用することにより、耐久性を向上させ、メンテナンスフリーとすることができる。
また、滑り軸受け装置10は低摩擦係数であるため、摩擦で消費されるエネルギを低減することが可能となり、長時間作動可能な電子時計とすることができる。
【0044】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、軸受け部11に形成されたDLC膜14上のみに固体潤滑皮膜15を形成していたが、軸12の表面上のみに形成してもよく、双方に形成してもよい。軸12の表面上のみに形成した場合には、軸受け部11と軸12との間で生じる摩擦により、軸受け部11に形成されたDLC膜14が摩耗してしまうことを防止することができる。また、双方に形成すれば、摩擦の発生をより低減することができる。
【0045】
さらに、前記実施形態ではDLC膜14を軸受け部11の表面全体に形成したが、DLC膜は少なくとも軸受け部11の軸受け面13に形成されていればよい。軸受け面13は、軸12が接触する部分であり、この部分にDLC膜を形成しておけば、摩擦による損傷を防止することができるからである。
DLC膜は軸受け部11に限らず、軸12の表面のみに形成してもよく、また、双方に形成してもよい。軸12の表面のみに形成した場合にも、摩擦の発生を防止することが可能であり、双方に形成すればより確実に摩擦の発生を防止することができるようになる。ただし、軸12には歯車等が取り付けられているため、軸12にDLC膜を形成する場合に比べ、軸受け部11にDLC膜を形成する方が容易である。
【0046】
軸受け部11の軸受け面13の断面形状を円弧形状としたが、特別な加工を施さず、平面形状としてもよい。このようにすれば、軸受け部11の形成に手間を要しない。
さらに、DLC膜の厚さを0.5μm以上、2μm以下としたが、DLC膜の膜厚はこの範囲に限られない。例えば、DLC膜を形成する表面が平滑である場合には、0.5μmよりも小さくてもよく、DLC膜を形成する表面の表面粗さとの関係により適当な膜厚を選択すればよい。また、DLC膜を形成する部分に高い負荷がかからないようであれば、DLC膜を2μm以上としてもよい。
また、軸受け部11の軸受け面13の凹凸の最大高低差Rmaxは0.1μm以下としたが、これ以上であってもよく、この表面に形成されるDLC膜の膜厚との関係により適宜選択すればよい。
【0047】
【発明の効果】
このような本発明によれば、小型化を図ることができ、低速、高負荷の条件、すなわち、境界潤滑状態で使用しても、優れた耐摩耗性を有する滑り軸受け装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る歯車装置を適用した電子制御式機械時計の要部を示す平面図である。
【図2】 前記実施形態の電子制御式機械時計の要部を示す断面図である。
【図3】 前記実施形態の電子制御式機械時計の要部を示す断面図である。
【図4】 前記実施形態の電子制御式機械時計の構成を示すブロック図である。
【図5】 前記実施形態の滑り軸受け装置の要部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1a・・・ゼンマイ、 8・・・分針、 9・・・秒針、 10・・・滑り軸受け装置、 11・・・軸受け部、 12・・・軸、 13・・・軸受け面、 14・・・非晶質炭素膜、 15・・・固体潤滑皮膜、 117・・・輪列、 120・・・発電機、 150・・・回転制御装置

Claims (7)

  1. 軸とこの軸を支持する軸受け部とを有し、これらが相対的にすべり運動をする時計用の滑り軸受け装置であって、
    前記軸および軸受け部間には潤滑油が注入されており、
    前記軸受け部の軸受け特性を示すゾンマーフェルト値Sが2.02×10 −8 以下であり、
    前記軸受け部の軸受け面または前記軸の表面の一方に非晶質炭素膜が形成されており、
    この非晶質炭素膜上または、非晶質炭素膜が形成されていない他方の少なくとも何れか一方に固体潤滑被膜が形成されることを特徴とする滑り軸受け装置。
  2. 請求項1に記載の滑り軸受け装置において、
    前記軸受け部または前記軸のうち前記非晶質炭素膜が形成された母材のビッカース硬さは前記非晶質炭素膜のビッカース硬さよりも低いことを特徴とする滑り軸受け装置。
  3. 請求項1または2に記載の滑り軸受け装置において、
    前記軸受け部の軸受け面の凹凸の最大高低差Rmaxが0.1μm以下であることを特徴とする滑り軸受け装置。
  4. 請求項1から3の何れかに記載の滑り軸受け装置において、
    前記非晶質炭素膜の厚さが0.5μm以上、2μm以下であることを特徴とする滑り軸受け装置。
  5. 請求項1から4の何れかに記載の滑り軸受け装置において、
    前記軸受け部の軸受け面の断面形状は前記軸側に突出した円弧形状であることを特徴とする滑り軸受け装置。
  6. 請求項1から5の何れかに記載の滑り軸受け装置を用いたことを特徴とする機器。
  7. 請求項6に記載の機器は、機械的エネルギ源と、この機械的エネルギ源に連結された輪列により駆動されるとともに誘起電力を発生して電気的エネルギを出力する発電機と、前記輪列に結合された指針と、発電機から出力された電気的エネルギにより駆動されて前記発電機の回転周期を制御する回転制御装置とを備える電子制御式機械時計であり、前記輪列の歯車は前記滑り軸受け装置により支持されていることを特徴とする機器。
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