JP4253888B2 - 原子炉圧力容器の搬出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は原子炉圧力容器(RPV)を取り替えるときに原子炉格納容器(PCV)内から搬出するための方法と装置に関するもので、詳しくは、原子炉圧力容器を上蓋や原子炉遮蔽壁とともに搬出させるようにする装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
原子炉圧力容器の取替工事を行うに際して、原子炉圧力容器を原子炉格納容器内から搬出する場合、従来では、原子炉圧力容器とその上端部にある上蓋とを別々に搬出するようにしていた。
【0003】
すなわち、原子炉圧力容器1は、図4及び図5に概略を示す如く、シュラウド2、ジェットポンプ3の如き内部付帯機器や、制御棒駆動機構ハウジング(CRDハウジング)4の如き外部付帯機器を有していると共に、上端部には上蓋5が被着させてあり、重量が950トン位であって、原子炉格納容器6に設置されている原子炉遮蔽壁7の内側に据え付けられるようにしてある。8a,8b,8cは原子炉遮蔽壁7の所要高さ位置に設けてある孔であり、8dは原子炉遮蔽壁7の頂部に設けてある切欠部、9は上部格子板、10は炉心支持板、11は再循環入口ノズル、12は再循環出口ノズル、13は給水ノズル、14は炉心スプレイノズル、15は蒸気出口ノズル、16は上蓋5の吊りピース、17は上部遮蔽体、18は炉心遮蔽体、19は下部遮蔽体であり、原子炉圧力容器1が原子炉遮蔽壁7の内側に据え付けられているとき、上記各ノズルが各々対応する孔8a,8b,8cや切欠部8dに位置させられる。
【0004】
従来、上記原子炉圧力容器1の取替工事において原子炉圧力容器1を原子炉格納容器6内から搬出させる場合は、上蓋5を原子炉圧力容器1より取り外して、該上蓋5と原子炉圧力容器1とを別々に吊り上げて搬出するようにしている。この場合、上蓋5は、吊りピース17に吊り治具を連結させてクレーン等で吊り上げて単独に搬出させた後、各ノズル11、12、13、14、15等に接続されている配管を撤去した状態にしてから、図5に示す如く、原子炉圧力容器1の上部と炉心部と下部を、上部遮蔽体17、炉心遮蔽体18、下部遮蔽体19で遮蔽した状態にし、次いで、吊り治具20を原子炉圧力容器1及び上部遮蔽体17の上端に連結し、原子炉遮蔽壁7は残したまま、クレーン等で吊り治具20を介して原子炉圧力容器1のみを遮蔽体17,18,19で遮蔽したまま吊り上げて搬出させるようにし、一方、新たな原子炉圧力容器を搬入するときは、上記の逆の手順によりクレーン等で吊り下ろし原子炉遮蔽壁7の内側に据え付けるようにする方法がある(特開平9−145882号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の方法では、上蓋5と原子炉圧力容器1とをばらばらにして別々に吊り上げて搬出させるようにするものであるため、吊り治具としては、上蓋5や原子炉圧力容器1を単体で吊り上げるだけの強度を有していればよく、又、吊り治具自体の重量は、原子炉圧力容器1単体の重量から見て或る程度の重量物であっても総重量が大きくならないので、重い構造のものが使用でき、一方、上蓋5や原子炉圧力容器1に取り付けられる吊りピースも、上蓋5や原子炉圧力容器1の重量に耐え得る程度のものでよい反面、上記のように上蓋5と原子炉圧力容器1を別々に吊り上げて搬出するものであって、これらを一緒に吊り上げて搬出するものではなく、しかも、原子炉遮蔽壁7は取り外しせずに残したまま原子炉圧力容器1を搬出することから、原子炉圧力容器の取替工事に多くの時間を要し、更に、被曝低減を図るため、上部遮蔽体17、炉心遮蔽体18、下部遮蔽体19を別途用意して取り付けているため、原子炉圧力容器取替工事により多くの時間と労力を要していた。
【0006】
そこで、本発明者等は、原子炉圧力容器取替工事の工期短縮と大幅な被爆低減が図れるようにするために、原子炉圧力容器取替えの際の搬出時に、上蓋5を原子炉圧力容器1と一緒に吊り上げ、原子炉遮蔽壁7ともども搬出することについて工夫、研究を重ねた結果、従来の方法で採用されている吊り治具、吊りピースでは、上蓋5、原子炉圧力容器1、原子炉遮蔽壁7を一体で吊り上げることができないことが判明し、特殊な吊り治具、吊り耳金物とすることにより原子炉圧力容器と原子炉遮蔽壁を一体として吊り上げることが可能であることを見い出し本発明をなした。
【0007】
したがって、本発明の目的とするところは、原子炉圧力容器の取替工事の大幅な工期短縮と被曝低減を図ることができる原子炉圧力容器の搬出装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、原子炉圧力容器の上端部の少なくとも2個所に複数本のスタッドボルトを直立させて固定し、該スタッドボルトに通して原子炉圧力容器に被着させるようにした上蓋の上側に、上記スタッドボルトを上下方向に挿通させるための孔をスタッドボルトの本数に合わせて有する支持板と、上端側にピン挿入用の孔を有して下端面を上記支持板の上面に固定した2枚の耳板とからなる吊り耳金物を、該吊り耳金物の上記支持板の孔に上記スタッドボルトを通して該スタッドボルトの上端部にナットを螺合させることにより取り付け、且つ該吊り耳金物に連結して原子炉圧力容器を吊り上げるようにする吊り治具を、強度を有する金属製板で軽重量に作り、該吊り治具を上記吊り耳金物に連結して原子炉圧力容器を上蓋と一緒に吊り上げて原子炉遮蔽壁と一体に搬出させるようにしたことを特徴とする原子炉圧力容器の搬出装置とする。又、吊り治具を、前後方向に重なるように配置した2枚の金属製板を一体化させて上部中央部にクレーンのフックを掛けるフック掛止部を固定して吊り天秤を形成し、該吊り天秤の両端部に、下端部を吊り耳金物に連結する吊りアームの上端部を、ピンにて回動自在に取り付けてなる構成とするようにする。
【0009】
原子炉圧力容器を上蓋と一緒に吊り上げて原子炉遮蔽壁と一体に搬出させるようにするので、原子炉圧力容器取替工事の工期を大幅に短縮できると共に原子炉遮蔽壁により被爆低減を図ることができる。
【0010】
吊り治具は、2枚の金属製板を組み合わせて軽重量となるように作られているので、原子炉圧力容器と原子炉遮蔽壁を一体で吊るときの重量に加算する吊り治具の重量が軽くて総重量の増大を抑えることができ、これにより原子炉圧力容器と原子炉遮蔽壁を一体的に吊って搬出することが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1(イ)(ロ)(ハ)(ニ)、図2(イ)(ロ)及び図3は本発明の実施の一形態を示すもので、原子炉圧力容器1の取替工事に際して該原子炉圧力容器1を搬出する場合に、原子炉圧力容器1を、上蓋5を取り外すことなく且つ原子炉遮蔽壁7と一体に吊り上げて搬出させ、工期の短縮と被爆低減を図ることができるようにする。
【0013】
詳述すると、図4に示してある原子炉圧力容器1と同様に、シュラウド2、ジェットポンプ3等の如き内部付帯機器、制御棒駆動機構ハウジング5の如き外部付帯機器を有している原子炉圧力容器1を、上蓋5と一緒に且つ原子炉遮蔽壁7ともども吊り上げることができるようにするため、該原子炉圧力容器1の上端面の相対する2個所(左右両側部位置)に、複数本(図面では1個所4本)のスタッドボルト21を直立状態に並べて立てて固定し、該片側4本のスタッドボルト21の上端部を利用して原子炉圧力容器1と原子炉遮蔽壁7の重量(1200トン強)に耐え得られる強度を有するように吊り耳金物22を取り付けるようにし、更に、強度を有し且つ軽量化された吊り治具27を形成して総重量の増加を抑え原子炉圧力容器1と原子炉遮蔽壁7の一体搬出ができるようにする。
【0014】
上記吊り耳金物22は、上記スタッドボルト21を上下方向に挿通させるための孔をスタッドボルト21の数に合わせて有する所要の長さ及び幅を有する支持板23の上面に、上端側にピン挿入用の孔25を有する2枚の耳板24を所要間隔で配置して、該各耳板24の下端面を支持板23上面に溶接により固定してなる構成とし、支持板23の各孔に各スタッドボルト21を通して該スタッドボルト21の上端部にナット26を螺合させることにより、スタッドボルト21から外れないように取り付けられるようにする。
【0015】
又、上記吊り耳金物22に連結して原子炉圧力容器1を原子炉遮蔽壁7と一体に吊って搬出させる吊り治具27は、上記原子炉圧力容器1と原子炉遮蔽壁7の重量に耐え得る強度を有し且つ軽量とした構成とする。すなわち、原子炉圧力容器1上端の左右の複数個のスタッドボルト21の対峙間隔よりもやや長くし且つ中央部分がやや高くなるような形状として所要間隔を隔てて前後方向に重なるように配置した2枚の金属製板28間に、補強材30を介在させて一体化させると共に、周辺部に両端部下面の一部を除いて金属製塞ぎ板29を溶接して補強させ、更にリブ31で補強した枠体を作り、該枠体の上部中央部に、2本のピン32を平行に取り付けてクレーンのフック33を該ピン32に掛けることができるようにしてあるフック掛止部34を固定して、強度のある吊り天秤35を形成し、該吊り天秤35の両端部下面の開放部分を通して下方より挿入した吊りアーム36の上端部を、各々吊り天秤35にピン37にて回動自在に取り付け、且つ該各吊りアーム36の下端部を前記吊り耳金物22に連結するようにした構成とする。
【0016】
更に、上記原子炉遮蔽壁7は、図3に展開して示すように、下方位置には、再循環入口ノズル11と対応する複数の孔8aと再循環出口ノズル12に対応する複数の孔8bが周方向にほぼ同じレベルに設けてあると共に、上方位置には、炉心スプレイノズル14に対応する複数の孔8cや給水ノズル13に対応する切欠部8dが周方向にほぼ同じレベルに設けてあり、原子炉圧力容器1と一体として搬出させることができるように、上記多数の孔8aと8bがあるレベル位置を切断位置CLとして、該切断位置CLを周方向に切断して原子炉遮蔽壁7を上下に切り離し搬出できるようにする。
【0017】
なお、上蓋5には、周辺部にスタッドボルト21を貫通させるための孔が穿設してあり、スタッドボルト21に通して原子炉圧力容器1に被着させるようにしてある。
【0018】
38は吊り治具27の吊りアーム36と吊り耳金物22とを連結するピン、39は原子炉圧力容器1の上端部から原子炉遮蔽壁7、制御棒駆動機構ハウジング5の外側に配して全体を包むようにしたシート、40は原子炉圧力容器1と原子炉遮蔽壁7との連結部材である。
【0019】
今、原子炉圧力容器1の取替工事に際して該原子炉圧力容器1を吊り上げて搬出させる場合は、上蓋5は取り外すことなく原子炉圧力容器1に取り付けたままとし、且つ、原子炉遮蔽壁7を図3に示す切断位置CLで切断して上下に分離させ、原子炉格納容器より取り外す。次に、吊り治具27のフック掛止部34にクレーンのフック33を掛けて、吊り治具27を原子炉格納容器内へ搬入し、該吊り治具27を構成する吊り天秤35両端部の吊りアーム36の下端を、原子炉圧力容器1上端の吊り耳金物22にピン38にて連結させる。しかる後、吊り治具27を介してクレーンにて原子炉圧力容器1を、上蓋5、原子炉遮蔽壁7と一緒に吊り上げるようにする。この際、吊り耳金物22は、原子炉圧力容器1と原子炉遮蔽壁7を一体で吊るときの大重量(1200トン強)に耐えられるよう原子炉圧力容器1に植立された片側で4本、合計8本のスタッドボルト21に取り付けてあり、しかも、吊り治具22は、充分な強度を有するように作られた吊り天秤35が2枚の金属製板28、金属製塞ぎ板29、補強材30等から構成されていて出来るだけ軽量となるようにしてあるため、吊り治具27の重量は従来の吊り治具20に比して軽くなっており、総重量の低下を図ることができる。
【0020】
上蓋5と原子炉圧力容器1を一緒に吊り上げ且つ原子炉遮蔽壁7も一体として吊り上げると、原子炉圧力容器1の周りは原子炉遮蔽壁7で遮蔽された状態になっているので、被曝低減が図れ、そのまま原子炉格納容器外へ搬出させるようにすることにより、上蓋5と原子炉圧力容器1が同時に搬出されて原子炉圧力容器取替工事の工期を大幅に短縮させることができることになる。
【0021】
なお、吊り治具27は、強度を有し軽量化されたものであれば図示以外の構成のものでもよく、又、吊り耳金物22を2個所に設けて2点吊り構造の場合を示したが、吊り耳金物22を等間隔で3個所に設けて吊り治具27を三角形状として3点吊り構造としてもよく、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0022】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明の原子炉圧力容器の搬出装置によれば、原子炉圧力容器の上端部の少なくとも2個所に複数本のスタッドボルトを直立させて固定し、該スタッドボルトに通して原子炉圧力容器に被着させるようにした上蓋の上側に、上記スタッドボルトを上下方向に挿通させるための孔をスタッドボルトの本数に合わせて有する支持板と、上端側にピン挿入用の孔を有して下端面を上記支持板の上面に固定した2枚の耳板とからなる吊り耳金物を、該吊り耳金物の上記支持板の孔に上記スタッドボルトを通して該スタッドボルトの上端部にナットを螺合させることにより取り付け、且つ該吊り耳金物に連結して原子炉圧力容器を吊り上げるようにする吊り治具を、強度を有する金属製板で軽重量に作り、該吊り治具を上記吊り耳金物に連結して原子炉圧力容器を上蓋と一緒に吊り上げて原子炉遮蔽壁と一体に搬出させるようにした構成としてあるので、原子炉圧力容器と上蓋を別々にして搬出する場合に比して搬出のための作業時間を短縮することができると共に、原子炉遮蔽壁を取り外して原子炉圧力容器と一体として搬出することから、被爆低減のために別途遮蔽壁を原子炉圧力容器の外周に取り付けてから搬出する必要性をなくすことができて、工期の短縮化を図ることができ、又、原子炉遮蔽壁を取り外して一緒に搬出させることから、被爆低減を図ることができ、この際、吊り耳金物が、原子炉圧力容器に植立された複数本のスタッドボルトに取り付けてあることから、原子炉圧力容器と原子炉遮蔽壁を一体で吊るときの大重量(1200トン強)に耐えられるという優れた効果を有する。更に、吊り治具は前後方向に重なるように配置した2枚の金属製板を一体化させて上部中央部にクレーンのフックを掛けるフック掛止部を固定して吊り天秤を形成し、該吊り天秤の両端部に、下端部を吊り耳金物に連結する吊りアームの上端部を、ピンにて回動自在に取り付けてなる構成としてあるため、原子炉圧力容器と原子炉遮蔽壁を一体として吊るときの重量に上乗せされる吊り治具の軽量化により総重量の低下を図ることができる、という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原子炉圧力容器の搬出装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は原子炉圧力容器の吊り上げ前の状態を示す部分切断側面図、(ロ)は吊り上げた状態を示す概略図、(ハ)は(ロ)のA矢視図、(ニ)は(ロ)のB矢視図である。
【図2】 原子炉圧力容器の上端面に取り付けた吊り耳金物を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は側面図である。
【図3】 原子炉遮蔽壁を展開して示す図である。
【図4】 原子炉圧力容器の概略を示す切断側面図である。
【図5】 従来の原子炉圧力容器の搬出要領を示す図である。
【符号の説明】
1 原子炉圧力容器
5 上蓋
7 原子炉遮蔽壁
21 スタッドボルト
22 吊り耳金物
23 支持板
24 耳板
25 ピン挿入用の孔
26 ナット
27 吊り治具
28 金属製板
35 吊り天秤
36 吊りアーム
Claims (2)
- 原子炉圧力容器の上端部の少なくとも2個所に複数本のスタッドボルトを直立させて固定し、該スタッドボルトに通して原子炉圧力容器に被着させるようにした上蓋の上側に、上記スタッドボルトを上下方向に挿通させるための孔をスタッドボルトの本数に合わせて有する支持板と、上端側にピン挿入用の孔を有して下端面を上記支持板の上面に固定した2枚の耳板とからなる吊り耳金物を、該吊り耳金物の上記支持板の孔に上記スタッドボルトを通して該スタッドボルトの上端部にナットを螺合させることにより取り付け、且つ該吊り耳金物に連結して原子炉圧力容器を吊り上げるようにする吊り治具を、強度を有する金属製板で軽重量に作り、該吊り治具を上記吊り耳金物に連結して原子炉圧力容器を上蓋と一緒に吊り上げて原子炉遮蔽壁と一体に搬出させるようにしたことを特徴とする原子炉圧力容器の搬出装置。
- 吊り治具を、前後方向に重なるように配置した2枚の金属製板を一体化させて上部中央部にクレーンのフックを掛けるフック掛止部を固定して吊り天秤を形成し、該吊り天秤の両端部に、下端部を吊り耳金物に連結する吊りアームの上端部を、ピンにて回動自在に取り付けてなる構成とした請求項1記載の原子炉圧力容器の搬出装置。
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