JP4253165B2 - 回転体の変位測定方法および装置 - Google Patents

回転体の変位測定方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転体の変位測定方法および装置に係り、とくに水、油またはその他の液体や溶融金属の液体を汲み上げるためのポンプ等の、回転体の軸変位を測定する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、回転体の変位、たとえば振動を計測する手段として、レーザドップラ式振動計や渦電流式振動計、加速度式変位計がある。レーザドップラ式振動計や渦電流式振動計、加速度式変位計では、各センサを測定対象物に直接接触させることなくその振動を測定することができるから、回転体の変位を測定するには好都合である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら振動計はそれぞれ問題点を有する。まずレーザドップラ式振動計では、計測対象とするターゲット表面での油、水等が流れているような状態での測定はできない。また渦電流式振動計では、測定対象物の回転体に対し、振動計に用いたセンサの径の半分(たとえばセンサ径が5mmの場合は2.5mm)以下の距離までセンサを接近させなければ計測することができない。このため、構造物に穴明け等の加工をしてセンサ自体を回転軸(または計測対象物)に近付けなければならない欠点があった。また、加速度式変位計ではポンプのモータ部構成材にセンサを設置してポンプの回転軸の振動を計測しているが、精度が悪く軸部分の微小な摩耗量の経時変化が計測できないという欠点がある。
【0004】
本発明は、上述の点を考慮してなされたもので、回転体の表面状態による制約を受けず、しかも回転体からある程度の距離離れた位置で測定できる、回転体の変位測定方法および装置、ならびに回転体の変位測定のための超音波センサの設置方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、本発明では、
請求項1記載の、
液体が満たされた円筒状容器の中心に位置する回転体に超音波を作用させて前記回転体の変位を測定する方法において、
前記容器の外壁の周方向の接線上に超音波センサを設置し、
前記容器および前記液体を介して前記回転体に対し超音波を発信し、
前記回転体から反射される超音波を受信し、
前記超音波センサを、前記容器の外壁の周方向の接線方向に沿って移動させて前記回転体および前記容器から反射される超音波エコー波形が最大となる位置を求め、
この超音波エコー波形が最大となる位置に前記超音波センサを前記回転体および前記容器に対して相対的に移動させ、
受信した超音波につき、測定対象物から得られるエコー最大値、反射波形重心または波形間の時間的相関値である超音波反射波形代表点を求め、
この超音波反射波形代表点により算出された時刻に基き、前記回転体の変位を測定することを特徴とする回転体の変位測定方法、
および請求項3記載の、
回転体に超音波を作用させて前記回転体の変位を測定する装置において、
前記回転体の周囲に液体を満たした円筒状容器と、
前記容器の外壁の周方向の接線上で、かつ、前記回転体から反射される超音波エコー波形が最大となる位置に設置され、前記容器の壁から前記回転体に対し超音波を発信し、前記回転体から反射される超音波を受信する超音波センサと、
前記超音波センサを前記容器の外周接線方向に移動させ、かつ任意位置に固定するように支持する治具と、
前記超音波センサが受信した超音波につき、測定対象物から得られるエコー最大値、反射波形重心または波形間の時間的相関値である超音波反射波形代表点を測定する演算装置とをそなえ、
前記超音波反射波形代表点により算出された時刻に基き前記回転体の変位を測定することを特徴とする回転体の変位測定装置、
を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例の全体構成について図1ないし図4に基づいて説明する。
【0007】
図1は、本発明の実施例である、電動ポンプの超音波式軸振動計測装置の構成を示している。電動ポンプ1は、貯水槽2内に設置されている。貯水槽2には、注水管3から流れ出る水4が貯められている。そして、水4が貯水槽2内に一定の量まで貯まると、電動ポンプ1が起動して自動的に貯水槽2から揚水管5、排水管6を通って排出が行われるようになっている。
【0008】
超音波センサ7は、揚水管5の外壁8に取付けてある。また、超音波センサ7は、信号ケーブルによって超音波送受信機、さらに軸振動幅を演算する計算機(パソコン)に接続されている。
【0009】
図2は、図1に示した超音波センサ7付近の状態を拡大断面図として示すものであり、揚水管5の縦断面右側部分を示している。揚水管5の外壁8には超音波センサ7が設置されており、揚水管材14および水4を介して回転軸9に向けて超音波を発信し、反射してきた超音波を受信する。
【0010】
回転軸9は、図2に示すようにその径方向に振動し、振動前後で図示位置C1,C2を取る。この結果、超音波センサ7からの距離が変化して超音波センサ7の発信波を反射する様子が振動に応じて変化する。
【0011】
貯水槽2内に溜まった水4を汲み出すポンプ1の回転軸9は、揚水管5内の水中に浸漬されている。そして、揚水管5の外壁8に超音波センサ7を設置すると、超音波は鋳鋼製の揚水管材14(厚さ20mm)を通って、水4が満たされた揚水管5中を通り、回転し振動している回転軸9で反射する。
【0012】
伝播過程と同様に、反射波は、水4→揚水管材14→超音波センサ7に戻り受信され、パソコンにて演算処理されてディスプレイ(図示せず)に回転軸のエコー波形や振動波形および周波数スペクトル分析値として表示される。
【0013】
図3(a),(b)は、超音波センサの発信波および受信波を示したものである。そして、図3(a)において、Aは超音波の発信波波形、Bは揚水管材14を透過した超音波の波形であり、またCは、回転軸9からの反射波波形である。図3(b)は、図3(a)で示す軸振動部の振動波形を拡大図示したものであり、超音波により振動している軸がその振動幅に対応した時間差Wで観測される。
【0014】
図4は、揚水管5内の水に浸漬された回転軸9の演算処理された軸振動振幅を示す。測定1回当り5データを取得し、それを5セット行って得られた合計25データは、何れも振動振幅40μm強で、標準偏差は各回とも0.5μmであり、再現性のある結果が得られた。
【0015】
以上のように、測定対象物である回転体の変位を、容器(揚水管)に入った液体を介して計測できることが分る。ここで、液体は、水、油に限らず、溶融している金属も利用できる。
【0016】
次に、本発明における超音波センサの設置の仕方について、図5ないし図9に基づいて説明する。この実施例における超音波センサ7は、図1を用いて前述したように、揚水管5の外壁8に取付けられているが、移動可能となっている。
【0017】
まず図5は、揚水管5の超音波センサ7の設置位置付近を示す側面図であり、図6は図1のA−A線に沿う横断面である。すなわち、図5および図6に示すように、超音波センサ7自体は、揚水管5における外壁8の周方向接線に沿って移動可能な移動ガイド治具13に取付けられている。そして、図5、図6に示すように、超音波センサ7を揚水管5の外壁8における3箇所P1,P2,P3を含む幾つかの位置に移動できる。
【0018】
揚水管5内において、排水管3から供給されて貯水槽2内に貯まった水を吸い上げるポンプ1の回転軸9(破線図示)は、水4に浸漬されている。そして、揚水管5の外壁8において、超音波センサ7は、揚水管5の外壁8の接線に沿って設置された直線移動ガイド治具13上に設置されている。
【0019】
いま超音波センサ7から発信された超音波(周波数2MHz)は、揚水管材14および揚水管5内の水中を通り、振動している回転軸9で反射する。反射波は、発信過程と同様に、水4→揚水管材14なる経路を経て超音波センサ7に戻り受信され、パソコンにて演算処理されてディスプレイ(図示せず)に回転軸の振動波形として表示される。
【0020】
たとえば超音波センサ7のセンサ径が10mmであり、外径300mmの揚水管5の外壁8に取付けられるとする。この場合、超音波センサ7はセンサ面全体が外壁8に密着せず、センサ7の両端に隙間が生じたり、片側に偏ったりする。この結果、超音波波形に多重エコーが生じたりして位置決めが困難である。また揚水管5の径が500mmと大きいと、センサ7自体がその外壁8に安定に密着できるが、密着したとしても果たしてその超音波が回転軸中心に向かって発信されているかどうかがはっきりしない。
【0021】
そこで、超音波センサ7を正しく設置するために、本発明では移動ガイド治具13を用いる。このセンサ移動治具13は、揚水管5の外壁8接線上に設けられ、それに沿って超音波センサ7を移動させることができる。このとき、移動させながら最大の波高値を示す波形の得られた点を、正確なセンサ7の設置すべき位置として確定することが重要である。
【0022】
回転軸9の中心を探す場合、超音波センサ7を移動する距離は、回転軸9の直径以内である方が能率的である。ここで注意すべきは、超音波センサ7の取付け位置が回転軸中心からずれることにより、エコー波形および振動波形が変化するから取得できるデータも誤差が大きく、ノイズも混じり易くなり、サンプリングデータに信頼性がなくなることである。
【0023】
超音波センサ7を、揚水管5の外壁8接線上に設置した移動ガイド治具13によって移動させ、波形形状から超音波が軸中心に向かっているかどうかを判別する方法を示す。
【0024】
揚水管5における外壁8の接線方向に設置した移動ガイド治具13には、超音波センサ7を取付け、回転軸9の直径に相当する距離を移動していき、最大の波高値を示すエコー波形を見出す。
【0025】
図7は、超音波センサ7の位置を揚水管5における外周上の位置P1,P2,P3と移動していったときのエコー波形を示したものである。つまり、センサ位置P1での波形は図7におけるP1のようになり、波形の数が多くかつ右上がりの波形になっていく形状のものが多い。また、図7のP3は、P1と同様に超音波が振動している軸の中心に当たっていない時の波形を示す。これらP1,P3の波形となる原因は、超音波が回転軸の側部に当り易いため、より多くの散乱、回折が起きる結果である。このようなセンサ位置では、振動している回転軸からの超音波エコー(反射波)が、極端に少なくなっているためである。
【0026】
これに対し波形P2は、最大の波高値を示す波形であり、超音波が外壁8の外周接線と回転軸9の直径延長線との交点で送受信している時の波形形状を示している。ポンプの回転軸9は通常円柱であるため、僅かなずれでも超音波は回折、散乱を起こすが、P2の位置に設置したときに示す波形(図7のP2)は、円柱形状を平板に置き換えて超音波をその平板に垂直に当てるようにしても、同様な線対称の波形が得られる。したがって、波形P2の得られる点が超音波が軸中心に当たっている証拠であり、回転軸9の変位測定に最適となる。
【0027】
回転軸9の中心からずれた位置P1,P3にあるセンサで得られる波形は、波形の数が多く不規則である。これに対して、軸中心に向かう位置P2に設置されたセンサで得られる波形は、最大の波高値を示す波形に規則性が見られしかも線対称のきれいな波形が得られている。このため、測定対象が円柱形状でも、線対称の波形を見出せる設置位置を決定することが振動している回転軸9からの反射波を計測できる唯一の方法と言える。
【0028】
図8(a),(b)は、超音波センサの位置が、P2またはP1,P3のときに計測した各軸振動波形を示している。そして、位置P2で得られた図8(a)の波形では、振動の波高値に大差はみられず、ほとんどH1=H2である。この場合、最大の波高値を示す波形に規則性が見られ線対称のきれいな波形での振動波形を示す。この波形は、軸が振動した幅Wを正確に計測しており振動状態を示す波高値(H1=H2)にほとんど差は見られない。
【0029】
また、図8(b)の波形が得られる位置P1,P3では、超音波センサ7が軸中心からずれた位置にあったため、振動波形では波高値にH1>H2で示すような高低差が見られる。この場合、振動している回転軸9の中心からずれた位置(図7のP1,P3)に設置したときの軸振動を計測している状態での波形を示す。設置位置が回転軸9の中心からずれていると、波形の数が多くしかも波形が線対称にならず、波高値に高低差(H1>H2)が見られる。
【0030】
図9は、超音波センサ7を図5、図6における位置P1,P2,P3に置いたときの振動振幅演算の結果を示したものである。位置P1,P3では、振動幅が20μm前後から35μm前後までばらつくのに対して、位置P2では45μm前後に固まった測定値が得られる。
【0031】
この図9において、最大の波高値を示す波形で得られた振動幅の値から周波数スペクトル分析によって得られた振動値は、渦電流式変位計で計測した振動値と一致しており、本発明の有効性が確認できた。本発明では、この超音波が表す軸振動波形の形状に着目した。超音波センサを揚水管5の外壁8に設置し、超音波センサ7を移動させながら波形を観察することにより、超音波が回転軸9の軸中心位置に当たっているか、また幾何学的に位置付けされているかが判別できる。
【0032】
続いて、図10および図11を参照して本発明における波形演算につき説明する。この波形演算は、超音波反射波形代表点、つまりエコー最大値、反射波重心、波形間の相関値を求めるものである。
【0033】
図10は、コンピュータで収録した、測定物である回転体からの超音波反射エコー波形を示している。超音波パルス発信繰り返し回数r、A/D(アナログデジタル)変換器によるサンプリング時刻tを用いて、回転体からの超音波の反射エコー波形の波高は、x(t,r)と表せる。
【0034】
回転体が振動している場合、この反射エコー波形x(t,r)が時間軸上で振動する。通常、エコー波形x(t,r)は、図10に示したようなパルス状をしている。
【0035】
そこで、たとえば、その最大値を取る時間Tmax(r)を算出し、これを超音波がセンサと回転体との往復に要した時間とすれば、下式を用いて変位y(r)は、
y(r)=Tmax(r)c/2
ここで、cは音速
として求めることができる。
【0036】
この算出方法は極めて簡便ではあるが、サンプル周期δtがTmax(r)の分解能となってしまい、変位としてもδt・c/2の分解能でしか測定できなくなる。
【0037】
そこで、図11に示す変位を、下記の手順により算出する。
【0038】
ステップ1
エコー波形x(t,r)の最大値を取る点xmax(Tmax,r)を求める。
【0039】
ステップ2
図11におけるエコー波形x(t,r)の平均値xaveより上方で、最大点xmaxを含むピークについて、下式により重心の時刻Tc、
ここで、加算範囲は、最大ピーク前後のx(t,r)>xaveの領域
を求める。
【0040】
ステップ3
そして、次式によって距離y(r)を、
y(r)=T(r)c/2
求める。
【0041】
この演算を行うプログラムをコンピュータにインストールしておくことにより、図1の構成における超音波センサ7が検出し超音波送受信機を介してコンピュータに与えられた波形データに基き、コンピュータが回転軸9の振動幅を算出することができる。
【0042】
このように、エコー波形の重心位置をエコー戻り時間として用いることにより、サンプリング分解能からくる制約を受けることなく、測定対象物の振動を測定できる。
【0043】
【発明の効果】
本発明は上述のように、超音波センサと測定対象とする回転体間に液体を存在させることにより回転体の変位を検知することができ、これを用いて測定対象の存否および振動を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるポンプの軸振動を計測するシステムの構成を示す図。
【図2】図1に示す超音波による軸振動部を、水を介して計測する部分の拡大図。
【図3】図3(a),(b)は回転軸に向かって超音波を発信したときに表れる発信および受信両波形を示す図。
【図4】ポンプ軸の振動幅測定値を示す図。
【図5】揚水管の接線方向に設置した移動ガイド治具にセンサを取付け、位置を移動していく状態を示す図。
【図6】図1のA−A線に沿って切断した横断面図。
【図7】図7(a),(b),(c)は、図5および図6に示した超音波センサの設置個所P1,P2,P3における振動波形の違いを示す波形図。
【図8】図8(a)は図5,図6における設置個所P2での測定波形を、また図8(b)は設置個所P1,P3での測定波形を示す波形図。
【図9】図5,図6における設置個所P1,P2,P3における振動振幅値を示す図。
【図10】本発明における、エコー波形の最大値の時間をエコーの戻り時間として変位を算出する方法を説明するための図。
【図11】本発明における、エコー波形の重心の時間をエコーの戻り時間として変位を算出する方法を説明するための図。
【符号の説明】
1 電動ポンプ
2 容器
3 注水管
4 水
5 揚水管
6 排水管
7 超音波センサ
8 揚水管外壁
9 回転軸
10 回転翼
11 モータ
12 水
13 接線移動ガイド治具
14 揚水管材

Claims (4)

  1. 液体が満たされた円筒状容器の中心に位置する回転体に超音波を作用させて前記回転体の変位を測定する方法において、
    前記容器の外壁の周方向の接線上に超音波センサを設置し、
    前記容器および前記液体を介して前記回転体に対し超音波を発信し、
    前記回転体から反射される超音波を受信し、
    前記超音波センサを、前記容器の外壁の周方向の接線方向に沿って移動させて前記回転体および前記容器から反射される超音波エコー波形が最大となる位置を求め、
    この超音波エコー波形が最大となる位置に前記超音波センサを前記回転体および前記容器に対して相対的に移動させ、
    受信した超音波につき、測定対象物から得られるエコー最大値、反射波形重心または波形間の時間的相関値である超音波反射波形代表点を求め、
    この超音波反射波形代表点により算出された時刻に基き、前記回転体の変位を測定することを特徴とする回転体の変位測定方法。
  2. 請求項1記載の回転体の変位測定方法において、
    前記液体は、海水を含む水、油またはその他の液体や溶融金属である回転体の変位測定方法。
  3. 回転体に超音波を作用させて前記回転体の変位を測定する装置において、
    前記回転体の周囲に液体を満たした円筒状容器と、
    前記容器の外壁の周方向の接線上で、かつ、前記回転体から反射される超音波エコー波形が最大となる位置に設置され、前記容器の壁から前記回転体に対し超音波を発信し、前記回転体から反射される超音波を受信する超音波センサと、
    前記超音波センサを前記容器の外周接線方向に移動させ、かつ任意位置に固定するように支持する治具と、
    前記超音波センサが受信した超音波につき、測定対象物から得られるエコー最大値、反射波形重心または波形間の時間的相関値である超音波反射波形代表点を測定する演算装置とをそなえ、
    前記超音波反射波形代表点により算出された時刻に基き前記回転体の変位を測定することを特徴とする回転体の変位測定装置。
  4. 請求項3記載の回転体の変位測定装置において、
    前記超音波センサの検出波形を表示する手段と、
    をそなえた回転体の変位測定装置。
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