JP4251375B1 - 遺伝子操作手法により作出される優性の雄性不稔性を用いる自殖性植物におけるゲノムシャッフリング法および同方法に基づく循環選抜育種システム。 - Google Patents

遺伝子操作手法により作出される優性の雄性不稔性を用いる自殖性植物におけるゲノムシャッフリング法および同方法に基づく循環選抜育種システム。 Download PDF

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Abstract

【課題】 自殖性の植物育種においては、ヘテロ接合体の相同染色体間の他殖による遺伝的組換えが起こりうるのは交雑から数代だけであり、これが自殖性植物育種の一つの限界になっていると考えられる。
【解決手段】 イネ、コムギ等の自殖性植物の集団において、トランスジェニックやジーンターゲティング等の遺伝子操作手法を用いて作出される1)優性の雄性不稔性、2)薬剤耐性、3)誘導性プロモーターを活性化させることにより枯死する性質、以上3つの性質を相引強連鎖の関係で持つ個体を作出し、その後代を上記2)の性質を用いて雄性不稔個体、上記3)の性質を用いて雄性不稔でない個体を効率的に選抜、両者を開花期に適切に配置し雄性不稔個体から採種することで、除雄等の煩雑な作業なしに効率的に他殖を繰り返させ、結果として効率的なゲノムシャッフリング法および当方法に基づく循環選抜育種システム。
【選択図】なし

Description

本発明は、トランスジェニックやジーンターゲティング等の遺伝子操作手法で得られる優性の雄性不稔性を用いて、イネ、コムギ等の通常自殖を常とする植物(いわゆる自殖性植物)において、除雄や雄性不稔個体の判別等の煩雑な操作なく、効率的に他殖を繰り返させることにより、これら自殖性植物のゲノムシャッフリングを実現する技術および同技術を基礎とする効率的循環選抜育種システムに関する。
トウモロコシ等の他殖性作物は、その育種の過程において循環選抜が取入れられ、ヘテロ接合体の相同染色体間の頻繁な遺伝的組換えに伴うゲノムシャッフリングが、変異の幅を大きくし、育種の効果を高めていると考えられる。
一方、イネやコムギ等の自殖性植物の品種育成過程では通常、選抜の初期段階から自殖を繰返し、固定度の高い系統が選抜されることから、高頻度に遺伝的組換えが起こりうるのは交雑から数代に限られ、これが自殖性植物育種の一つの限界になっていると考えられている。
育種の効果は、第一義的には「多数の対立遺伝子間の遺伝的組換えによる変異の拡大」と「適切で持続的な淘汰圧が集団にかけられること」に依存するところが大きい。従って、効果的なゲノムシャッフリングと同時に大集団に対して強い淘汰圧をかけることができる循環選抜育種システムは、理想的な育種システムであると言える。
自殖性植物を効率的に他殖させ、ゲノムシャッフリングによる循環選抜を実現するには核雄性不稔性を用いることが効果的であり、この目的を達成する方法としてMSFRS(Male Sterile Facilitated Recurrent Selection)法が考案されている(非特許文献1および2参照)。MSFRS法は、1)雄性不稔が分離する集団から不稔と可稔の個体を選抜して相互交配させFを養成、2)F世代で次の選抜サイクルを行うための集団を作成、3)新たな遺伝資源は各サイクルで雄性不稔個体に交配することにより集団に導入、4)選抜サイクルを繰り返すことにより、効率的なゲノムシャッフリングを基礎とする循環選抜を実現し、高い育種の効果を得ることを目指した方法である。
しかし、MSFRS法においては開花期に雄性不稔個体と雄性不稔でない個体を選別する必要があり、大集団で効率的に循環選抜を実施することが難しい。この点を改善するために、雄性不稔に連鎖する種子形質などを形質マーカーとして利用する方法が考案されているが、雄性不稔遺伝子とマーカー遺伝子とが密接に連鎖している必要があり、普遍的な方法にはなり得ないことに加え、両者の間に遺伝的組換えが生じて連鎖関係が崩壊してしまう問題点があった。
一方、トランスジェニック手法において、葯やその内部特異的プロモーターとRNA分解酵素等の自己攻撃遺伝子を用いることで、優性の雄性不稔個体を得る方法がある(例えば、特許文献1、非特許文献3および4参照)。また、同時に除草剤等の薬剤耐性マーカー遺伝子を同一コンストラクトにて導入することにより、優性の雄性不稔個体を芽生え段階で選抜することができる。`得られる形質転換体の優性の雄性不稔と除草剤耐性は相引で極めて強い連鎖関係になる。この方法は、北米のセイヨウナタネのF採種において、使用されている。
米国特許第6,509,516号明細書 Ramage,R.T.(1975)Techniques for producing hybrid barley.Barley News1.18:62−65. Eslick,R.F.(1977)Male sterile facilitated recurrent selection−advantages and disadvantages.Proc.4th Regional Winter Cereals Workshop(Barley).Vol.II.84−91. Mariani,C.,M.De Beuckeleer,J.Truettver,J.Leemans,and R.B.Goldberg(1990)Induction of male sterility in plants by a chimaeic endonuclease gene.Nature.347:737−741. Mariani,C.,V.Gossele,M.De Beuckeleer,M.De Block,R.B.Goldberg,W.De Greef,and J.Leemans.1992.A chimaeric ribonuclease−inhibitor gene restores fertility to male sterile plants.Nature(London).357:384−387
本発明は、通常効率的に他殖させることが難しいイネやコムギ等の自殖性植物において、MSFRS法で必要な開花期の雄性不稔個体と雄性不稔でない個体を選別なしに、その大規模な集団を効率的に他殖させることにより、ゲノムシャッフリングを実現し、効率的な循環選抜育種システムを実現する方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためにトランスジェニックやジーンターゲティング等の遺伝子操作手法で得られる優性の雄性不稔性を用いることを、特徴の一つとする。1)葯特的プロモーターでRNA分解酵素等の自己攻撃遺伝子をドライブする雄性不稔化遺伝子カセット、2)茎葉で遺伝子を発現させるプロモーターで薬剤耐性遺伝子をドライブする薬剤耐性遺伝子カセット、3)誘導性プロモーターでRNA分解酵素等の自己攻撃遺伝子をドライブする枯死誘導遺伝子カセット、以上3つの遺伝子カセットを同一コンストラクト内に有するベクターをトランスジェニックやジーンターゲティング等の遺伝子操作手法を用いて形質転換し、1)優性の雄性不稔性、2)薬剤耐性、3)誘導性プロモーターを活性化させることにより枯死する性質、の3つの性質を相引強連鎖(ほぼ同一遺伝子座)の関係で持つ個体を作出する。これらの形質は遺伝学的には優性遺伝する。
遺伝子操作手法により得られた形質転換体は、通常行われるように、目的とする全ての形質が安定して発現しているとともに、サザンハイブリダイゼーション等の手法で、導入遺伝子が宿主のゲノムの一ヶ所に挿入されている個体を選抜することが望ましい。導入遺伝子が宿主のゲノムの一ヶ所に挿入されているということは、目的とする3つの形質が実用上、1遺伝子座支配で遺伝することを意味する。
優性の雄性不稔個体は当然のことながら花粉を作ることができないので、これを維持するには、雄性不稔でない個体の花粉が不可欠である。遺伝子操作手法で育成され、利用される優性の雄性不稔性は、1遺伝子座支配、雄性不稔の遺伝子記号をMs(劣勢はms)とすると、優性の雄性不稔個体の遺伝子型は常にMsmsとなる。雄性不稔でない個体の遺伝子型はmsmsとなる。遺伝子型Msms雄性不稔個体に雄性不稔でない個体を交雑すると、Msmsの雄性不稔個体とmsmsの雄性不稔でない個体が、理論上、1:1の割合で分離する。導入された配列が2遺伝子座以上であれば、2遺伝子座の場合は3:1等、雄性不稔個体の比率が上昇し、雄性不稔でない個体の割合が減少する。
北米のセイヨウナタネのF採種のために開発された優性の雄性不稔では、葯特的プロモーターで自己攻撃遺伝子(RNA分解酵素)をドライブする雄性不稔化遺伝子カセットに加えて、茎葉で遺伝子を発現させるプロモーターで薬剤耐性遺伝子をドライブする薬剤耐性遺伝子カセットを同一コンストラクトで植物体に導入することにより、両者が強連鎖する組換え体を得て、これらに除草剤等の薬剤を処理すれば、雄性不稔個体(遺伝子型:Msms)と雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)が分離する個体群から効率的に遺伝子型が雄性不稔個体(遺伝子型:Msms)を選抜することができるシステムを実現している。
上記に加え、誘導性プロモーターでRNA分解酵素等の自己攻撃遺伝子をドライブする枯死誘導遺伝子カセットも同時に同一コンストラクトで植物体に導入することにより、一定の処理で導入したプロモーターを活性化させる処理を行えば、雄性不稔個体(遺伝子型:Msms)と雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)が分離する個体群から効率的に雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)を選抜することができる。
優性の雄性不稔個体と雄性不稔でない個体の開花時期をあわせ、近傍に配置して交雑させ、雄性不稔個体から採種することで、除雄等の煩雑な操作なく両者の交雑種子を効率的に得ることができる。
1)雄性不稔個体からの採種、2)種子を2グループに分けて播種、3)芽生えの段階で一方のグループでは雄性不稔個体(遺伝子型:Msms)を選抜、もう一方のグループでは雄性不稔でない個体個体(遺伝子型:msms)を選抜し、4)両者を適切に配置して交雑、5)前者の雄性不稔個体から採種、以上、2)〜5)の工程を繰返すことにより、自殖性植物の集団においても他殖世代を繰返し、自殖性植物であっても、そのゲノムを効率的にシャッフリングできる。
新たな育種素材を、新たに雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)として利用することにより、ゲノムシャッフリング集団の遺伝的組成に加えることができる。
雄性不稔個体からの採種後、種子を2グループに分けて播種し芽生えの段階で、雄性不稔個体または雄性不稔でない個体の選抜と前後して、耐病性検定などの初期選抜を実施することで、集団の特性を一定の方向へ誘導することができる。
初期選抜が難しい栽培形質などについては、ゲノムシャッフリングのための栽培期間、また収穫後であっても次の世代を展開する個体を選抜することにより、集団の特性を一定の方向へ誘導することができる。
ゲノムシャッフリニング集団から優れた形質の雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)を選抜し、自殖による遺伝的固定を進めながら選抜することにより、固定品種の育成が可能である。上記のプロセスにより、自殖性植物においても、ゲノムシャッフリング過程において淘汰圧を加えることによって、効率的な循環選抜育種システムを実現することが可能となる。
なお、遺伝子操作手法で導入された配列を持つ個体は遺伝子組換え体として、野外での栽培は遺伝子組換え体としての法的適用を受ける。ただし、作出されたトランスジェニック植物のゲノム中に余分な配列が導入されていない雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)は導入遺伝子を含まないので、組換え体ではない。
本発明によれば、自殖性の植物であっても除雄等の煩雑な操作なしに、大きな個体群を他殖させ続けることが可能になる。適切な素材を選択、任意交雑させることにより、それらのゲノムシャッフリングを実現することができる。
ゲノムシャッフリングの過程で適切な淘汰圧を加えることにより、またそこに新たな育種素材を追加することにより、効率的な循環選抜育種システムを構築することが可能になり、多くの育種素材に由来する品種を、効率よくかつ持続的に育成することが可能になる。
「図1」に示すように、1)葯特的プロモーターでRNA分解酵素等の自己攻撃遺伝子をドライブする雄性不稔化遺伝子カセット、2)茎葉で遺伝子を発現させるプロモーターで薬剤耐性遺伝子をドライブする薬剤耐性遺伝子カセット、3)誘導性プロモーターでRNA分解酵素等の自己攻撃遺伝子をドライブする枯死誘導遺伝子カセットを同一コンストラクト内に有するベクターを構築する。アグロバクテリウム法を用いる場合はTiプラスミド由来のベクター上に構築する必要がある。
葯特的プロモーターでドライブされる優性の雄性不稔を起こさせる遺伝子としては、微生物のRNA分解酵素であるBarnaseが強い活性を有し、その遺伝子により100%の雄性不稔を実現した実績があるが、他にタンパク質分解酵素遺伝子なども100%の雄性不稔の実績があり、利用可能である。
茎葉で遺伝子を発現させるプロモーターでドライブされる薬剤耐性遺伝子としては、除草剤耐性を示す遺伝子が利用可能である。なお、遺伝子操作手法においては一般的に、効率的な形質転換体の選抜のためのマーカー遺伝子が必要である。ハイグロマイシン耐性遺伝子カセットなどを上記遺伝子カセットと同一コンストラクト内に入れておくことが一般的だが、除草剤耐性遺伝子として変異型アセト乳酸合成酵素遺伝子(mALS)を用いることにより、マーカー遺伝子としても機能させることができ、効率的である。
誘導性プロモーターでドライブされる自己攻撃遺伝子は、雄性不稔を起こさせる遺伝子と同一でも問題はない。
マーカー遺伝子を形質転換体に残したくない場合には、MATベクターを用いる方法、Creイベントを用いた除去方法などが利用可能である。ただし、そのためのベクターを使用する必要があるので注意する必要がある。
段落「0024」から段落「0027」記述のベクターにより、遺伝子操作手法を用いて植物体へ必要な遺伝子を導入する。遺伝子導入の方法としてはアグロバクテリウム法により植物体に遺伝子を導入することが一般的であるが、他の方法、例えばパーティクルガン法、ウィスカ法を用いる場合はTiプラスミド由来のベクターに限定されない。イネでは、プロトプラストを対象にアグロバクテリウム法を用いる方法が利用可能である。
得られる植物体には以下の特性が期待される。1)優性の雄性不稔性を持つ、2)除草剤等の薬剤を用いて芽生え段階で雄性不稔個体のみを簡易に選抜することができる、3)誘導性プロモーターを活性化させることにより、雄性不稔でない個体のみを簡易に選抜することができる。
段落「0030」に示す3つの形質は同一のコンストラクトで導入されるので、1遺伝子座で導入された物を選抜することにより、極めて強い相引連鎖の関係で遺伝することになる。このため、極めて多くの世代を繰り返さない限り、連鎖の崩壊を気にする必要はなく、実用上の問題はない。
トランスジェニック植物作出の際には、通常、数多くのトランスジェニック植物が作出されるが、意図した遺伝子が正常に発現していることに加えて、サザンブロッティング法等により、上記3つの遺伝子カセットがゲノム上の一ヶ所に強連鎖の関係で導入され、他には導入遺伝子の断片が挿入されていないトランスジェニック植物を選抜する。これにより、その後代集団の遺伝的分離と選抜結果の明確化を担保する。1遺伝子座、雄性不稔の遺伝子記号をMs(劣勢はms)とすると、事実上同一遺伝子座で、除草剤耐性と誘導性プロモーターを活性化させることにより枯死する性質を持つと見なすことができる。
ここで得られたトランスジェニック植物は周囲の植物との交雑が心配されることがあるが、上記のトランスジェニック植物の特性の一つである雄性不稔性が、花粉を生産できないことを意味し、花粉飛散による周囲への意図しない遺伝子拡散が起こりえないことも同時に意味する。ただし、種子による拡散には注意する必要がある。
「図2」上部に示すように、上記トランスジェニック植物の近傍にゲノムシャッフリングを行いたい品種や系統を、開花期を同調させた上で開花期に配置し、雄性不稔個体から採種することにより、効率的に他殖種子を得ることができる。得られた種子はトランスジェニック植物×ゲノムシャッフリングを行いたい品種や系統のF種子になる。
ここで得られる種子の遺伝子型は、Msms(雄性不稔個体)とmsms(雄性不稔でない個体)とが理論上の分離比1:1で分離する。得られた種子を二つに分割し、一方に薬剤耐性を対象とした選抜を実施すれば、雄性不稔個体(遺伝子型:Msms)を芽生えの段階で効率的に選抜できる。また、誘導性プロモーターを働かせれば、雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)を芽生えの段階で効率的に選抜できる。
雄性不稔個体(遺伝子型:Msms)と雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)とを交互に列植えする等、適切な配置で植栽し、雄性不稔個体から採種することにより、次の世代の種子を得ることができる。この種子を播種すると理論上の分離比1:1で分離する。
「図2」下部に示すように、1)雄性不稔個体からの採種、2)種子を2グループに分けて播種、3)芽生えの段階で一方のグループでは雄性不稔個体(遺伝子型:Msms)を選抜、もう一方のグループでは雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)を選抜し、4)両者を適切に配置して交雑、以上、1)から4)を繰返すことにより、継続的かつ効果的に自殖性植物の集団を他殖させることができる。ゲノムは世代を繰返すとともに断片化し、結果として効率的なゲノムシャッフリングが実現できる。
ゲノムシャッフリング過程では、当初、雄性不稔個体の原品種となった品種のゲノム割合が理論上50%になる。新たな育種素材を雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)として追加的に利用することにより、ゲノムシャッフリング集団の遺伝的組成に加えることができるとともに、上記原品種のゲノム割合を低下させることができる。
「図3」に示すように、効率的なゲノムシャッフリングにより、新たな遺伝子の組合せが生じることによる変異の拡大がとともに、適切な淘汰圧が加えられることにより、効果的な循環選抜育種システムが実現できる。特定の耐病性検定手法などのように、芽生えなどのごく初期に選抜可能な形質については、雄性不稔個体からの採種後、種子を2グループに分けて播種し芽生えの段階で、選抜することができる。雄性不稔個体または雄性不稔でない個体の選抜と同時期に選抜を実施することも可能である。耐病性検定などの初期選抜を実施することで、特定の形質についてゲノムシャッフリング集団の特性を一定の方向へ誘導することができる。
多くの栽培特性、収量や品質などの育種上重要な形質については、必ずしも初期選抜が実施できる訳ではない。初期選抜が難しい栽培形質などについては、ゲノムシャッフリングのための栽培期間または収穫後の調査によらねばならない。生育期間中の選抜は、生育期間中に雄性不稔(遺伝子型:Msms)個体および雄性不稔でない(遺伝子型:msms)個体から特性の劣る個体を淘汰することで対応可能である。
雄性不稔個体(遺伝子型:Msms)についての収穫後の形質調査による選抜する場合は、優れた形質の個体から得られた種子を系統管理しながら後代集団を展開して継続してゲノムシャッフリングすることで、選抜の効果を確認しながら継続してゲノムシャッフリングが可能である。
雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)についての収穫後の形質調査によって選抜する場合は、自殖種子の割合が高いことが想定されるが、その次代を系統として管理した上で、花粉親として利用することで対応可能である。
このように、ゲノムシャッフリングの過程で適切な淘汰圧を加えることにより、集団の特性を一定の方向へ誘導することができる。
数世代のゲノムシャッフリングを経た後、雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)の中から形質の優れた数個体を選抜し、その後代を自殖による遺伝的固定を進めながら選抜することにより、固定品種を育成することができる。育成される固定品種は雄性不稔でない個体(遺伝子型:msms)になる。
なお、雄性不稔でない個体(msms)個体は、導入遺伝子の断片を含まない限り、遺伝子組換え体ではないので、遺伝子組換え体を対象とする法的規制を受けない。
このように、ゲノムシャッフリング法や、それに基づく効率的循環選抜育種システムは、通常、自殖を常とする植物のゲノム上に眠る育種の可能性を引き出すことに大きく寄与するための、新たな育種法を提供する。
本発明によれば、トランスジェニック手法等で得られる優性の雄性不稔性を用いて、イネ、コムギ等の自殖性植物の集団において、除雄等の煩雑な作業なしに他殖を繰り返させ、結果として効率的なゲノムシャッフリングを実現することができる。効率的なゲノムシャッフリングの過程で適切な淘汰圧を加えることにより、効率的な自殖性植物の循環選抜育種システムが実現でき、自殖性植物の育種において作物としての収量や品質の改善に寄与することができる。
1)雄性不稔化遺伝子カセット、2)薬剤耐性遺伝子カセット、3)枯死誘導遺伝子カセットを同一コンストラクト内に含むベクター例の模式図である。 効率的なゲノムシャッフリングシステムの概略を示す模式図である。 ゲノムシャッフリングを基本とする循環選抜育種システムの概略を示す模式図である。

Claims (2)

  1. トランスジェニックやジーンターゲティング等の遺伝子操作手法を用いて、1)優性の雄性不稔性、2)薬剤耐性、3)誘導性プロモーターを活性化させることにより枯死する性質、以上3つの性質を相引強連鎖の関係で持つ個体を作出し、その後代を上記2)の性質を用いて雄性不稔個体、上記3)の性質を用いて雄性不稔でない個体を選抜、両者を開花期に近傍に配置して交雑、雄性不稔個体から採種し、他殖による世代を繰返すことで実現される自殖性植物におけるゲノムシャッフリング法。
  2. 請求項1によるゲノムシャッフリング法における世代を繰返す過程において、淘汰圧を加えることによって実現される循環選抜育種
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