JP4248368B2 - 異形畳の製造方法及びその方法によって製造された異形畳 - Google Patents
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Description
なお、畳表は藺草を編んで形成されたものであることから、周知のようにその表面には藺草の「藺筋」とこれに直交する「目通り」とが存在し、藺筋の端位置では、各藺草の端末が目通りに沿って並んだ状態で現れている。そのため、上記した円形畳の製作中において、畳床の全周に沿わせるように畳表の外周部を折り込んでだぶつき(波打ち)が生じたとき、藺草筋の端位置に相当する部分では、藺草間の隙間がバラケ、折れたり千切れたり絡んだりするといったことが起こってしまう。
また、折角、このように手間暇をかけて製作した円形畳も、本来の畳(床材)として使用すると上記した返し縫いの部分で藺草のホツレ(藺草間の隙間が裂けるようになってできる口開き現象)が発生して、比較的早期のうちに畳表に局部的な浮き上がりが生じ、波打ち状になってしまう欠点があった。要するに、この種の円形畳は、飾り物の台座や額縁などとしての使用に供される程度のものであった。
なお、この公知の円形畳はもとより、従来一般の畳(長方形を呈したもの)でも、縁無しにした場合には、畳作業(室内の床で畳を上げたり敷いたりする作業)を何度か繰り返すと、強い擦れを原因として、殊に藺草筋の端位置に相当する部分では各藺草の端末がバラけるという欠点があった。
また本発明は、外周部にその長手方向に沿う凹カーブや凸カーブを含むことによって平面形状が角形以外(一般の畳のような長方形や正方形等を呈したもの以外)の異形の畳を、簡単且つ高能率で製作できるようにした異形畳の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明に係る異形畳の製造方法は、第1に、凹カーブ又は凸カーブを含むことによって平面形状が角形以外の異形を呈した外周部を有する畳床3の外周側面3a及び前記畳床3上に載せた畳表4の外周縁の乱れを防止する端部処理部10、11が外周全体に設けられた外周部4aの返し縫い20を施す縫い針作動部32と、前記畳床3及び前記畳表4を載せて前記縫い針作動部32に対して平面移動する作業台31と、前記作業台31に設けられた前記畳床3及び前記畳表4を固定保持可能にするクランプ手段33とを備えた畳縫着機30を用いて、1組の前記畳床3及び前記畳表4に対して前記返し縫い20を施す間に、前記作業台31を、運針方向へ進行させながら同時に前記縫い針作動部32に対して近接離反させることを特徴とする。
第3に、前記畳床3における凸カーブに形成された前記外周側面3aに対応する前記畳表4の前記外周部4aに生じただぶつきを抑える非伸縮性のテープ生地12を、前記畳表4の前記外周部4aの先端に前記先端の表裏両側を包み込む状態で縫着させて端部処理部10を形成することを特徴とする。
前記畳表4は藺草より形成され、該畳表4の外周部4aのうち少なくとも藺筋の端位置であって各藺草の端末が並んでいる部分には、この部分が対応している畳床3の外周側面3aとしての長手方向に沿って予め前記端部処理部10、11が設けられている。
このような構成であると、たとえ藺草筋の端位置に相当する部分であろうと、この部分が補強され、各藺草の端末がバラけるといったことがない。そのため、畳床3において、畳表4の端部処理部10,11が対応させられる外周側面3aをその長手方向で凸カーブ又は凹カーブに形成することができる。
端部処理部の一つ(後述する「第一の端部処理部10」)としては、畳表4における外周部4aの先端を表裏両側から包み込む状態でテープ生地12を縫着することにより、形成することができる。
これとは反対に、畳床3において畳表4の端部処理部10が対応させられる外周側面3aが凸カーブに形成されているときであれば、端部処理部10に用いるテープ生地12は非伸縮性の生地によって形成する。これは、畳床3の外周側面3aが凸カーブである場合、畳表4の外周部4aを折り込んだときに、この外周部4aが長手方向に圧縮力を受けることによってだぶつき(波打ち)を生じ皺に繋がる挙動を起こすので、これを阻止して挙動を抑えるという作用が必用なことに由来する。
勿論、この留め縫い15による端部処理部11と、上記したテープ生地12による端部処理部10とを併用すれば、一層効果の高いものを得ることができる。
一方、本発明に係る異形畳の製造方法は、外周部にその長手方向に沿う凹カーブや凸カーブを含むことによって平面形状が角形以外の異形を呈した畳床3を形成する。また、藺草より形成された畳表4を上記した畳床3より一回り大きな相似形に切り出す。そして、この畳表4の外周部4aのうち、少なくとも藺筋の端位置であって各藺草の端末が並んでいる部分に、端部処理部10,11を設ける。ここで言う端部処理部10,11は、上記したようなテープ生地12や留め縫い15によるものである。
なお、畳表4の外周部4aと畳床3の外周側面3aとを返し縫い20するときには、畳縫着機30を用いることも可能である。この場合には、畳縫着機30の縫い針作動部32を平面移動させないままにし、この縫い針作動部32に対して畳床3及び畳表4を平面移動させながら返し縫い20を進行させるようにすればよい。このような構成を具備した畳縫着機30用の畳床保持装置を製作しておけばよい。
また本発明に係る異形畳の製造方法では、この他、外周部にその長手方向に沿う凹カーブや凸カーブを含むことによって平面形状が角形以外(一般の畳のような長方形や正方形等を呈したもの以外)の異形の畳を、簡単且つ高能率で製作できるようになる。
図1及び図2は、本発明に係る畳1の第1実施形態を示している。この第1実施形態の畳1は、正方形の中の一つの隅角部を1/4円形(扇形)に切り欠いてできる平面形状を呈したもので、1/4円形の切欠に沿った凹カーブ2を有している。この畳1は、例えば図4や図5に示すような円形畳Sや1/4円形の異形畳Rを含んだ畳敷きを得る際に、円形畳Sや1/4円形の異形畳Rなどのまわりへ配置する枠囲い用の異形畳Eとして使用する。
畳表4では、藺草の「藺筋(図1中のX方向)」とこれに直交する「目通り(図1中のY方向)」とが存在し、藺筋の端位置では、各藺草の端末が目通りに沿って並んだ状態で現れている。このような藺草端末が並んだ状態は、平面形状が正方形や長方形等の一般的な四角形状の畳であれば一組の対向二辺に現れることになるが、本第1実施形態の畳1では上記したように凹カーブ2を有した平面形状であるために、この凹カーブ2の内面でも藺草端末が並んだ状態が現れている。
第一の端部処理部10は、畳表4における外周部4aの先端に対して設けられたものであって、テープ生地12を素材として形成されている。このテープ生地12は長手方向に伸縮性を有する生地(例えばバイアス生地や、ゴム編み又はゴム製のテープなど)とされている。このテープ生地12は、テープ幅を二つ折り又は四つ折りにし、その中心部で畳表4の外周部4aを挟んで表裏両側を包み込むようにし、そのうえで外周部4aの表裏(畳表4)を貫通させるかたちで縫い糸13によって縫着させてある。
テープ生地12が長手方向に伸縮性を必用とするのは、畳床3の外周側面3aが凹カーブであるのに伴い、畳表4の外周部4aを折り込んだときに、この外周部4aが長手方向に引張力を受けることによってバラケて拡散する挙動を起こすので、これに順応して挙動を抑えるという作用が必用なことに由来する。
この留め縫い15に用いる縫い糸に伸縮性を有したものを採用したり、縫い方として伸縮性を許容させるものを採用したりしてもよい。
畳表4において、これら第一、第二の端部処理部10,11は、藺草端末が並んだ外周部4aとは別の外周部4a(目通りに平行な辺部)にも、同様に設けておいてもよい。このようにすると、畳表4の全ての外周部4a(全周)が同じ外観を呈することになる。言うまでもなく、この外周部4aは畳1を敷き詰めた状態では見えなくなる部分ではあるが、畳1を単体として見るときには最も目立つ箇所とも言える。そのため、このように畳表4の全周に第一、第二の端部処理部10,11を設けることで畳1の外観(輪郭)を引き締め、見栄えのよいものとすることになる。なお、このような外観性を少しでも良好にさせるうえで、第一の端部処理部10に用いるテープ生地12として意匠性(色彩や模様等)に優れたものを選択するようにしてもよい。
図例において返し縫い20は、第二の端部処理部11における3条の留め縫い15のうち、畳表4の上面に最も近い留め縫い15を押さえ込むようにはなっていないが、このような実施も可能であり、また有用である。これ以外の2条の留め縫い15は返し縫い20によって押さえ込まれた状態にある。留め縫い15を返し縫い20が押さえ込んだ状態にあると、この返し縫い20自体が畳表4の藺筋に沿うようにして畳1の裏側へ向けて位置ズレしてしまうのを防止できる効果もある。この点を、比較例(悪い例)の畳100を示した図7に基づいて説明する。
そのため返し縫い102の緩みや切れに繋がるのは必至であり、これに伴って畳表101が局部的に浮き上がるような欠陥にも繋がるおそれがある。また、凹カーブ103の内面や図面手前側の外周部101aでは、藺草端末のバラけや拡散、甚だしい場合には藺草を編んでいる縦糸の切断にも至るおそれがある。
このようにして製作された畳1は、少なくとも凹カーブ2において、畳表4に設けられた第一の端部処理部10、及び第二の端部処理部11が対応しており、これらが畳表4の外周部4aで藺草端末のバラケや拡散を防止しているものである。のみならず、畳表4の上を人が歩いても、また畳作業(室内の床で畳を上げたり敷いたりする作業)を繰り返したとしても、第一、第二の端部処理部10,11によって藺草端末のバラケ防止効果や拡散防止効果が維持されることになる。
そして、この畳表4を畳床3上へ載せて畳表4の外周部4aを畳床3の外周側面3aに沿って折り曲げてゆく。そのうえで、畳表4の外周部4aと畳床3の外周側面3aとが位置ズレしないようにステープル等によって仮止めし、これらを図6に示すように畳縫着機30にセットする。この畳縫着機30は、畳床3を載せる作業台31が縫い針作動部32に対して近接離反を繰り返しながら運針方向へも進行するといった平面移動が可能になったものである。縫い針作動部32は平面移動はさせないので、移動機構はなくてもよい。
このような畳縫着機30を用いて畳表4の外周部4aと畳床3の外周側面3aとの間で返し縫い20を施してゆく。
なお、平面形状が正方形や長方形等の一般的な四角形状の畳で縁なしとする場合であれば、先に框側(畳の短辺側)で框縫いを施し、畳の四隅において隅止めを行った後、次に上前及び下前側(即ち、畳の長辺側)で返し縫いを施す手順となるが、本発明では、製作する畳が異形畳であることに伴い、これら框縫い及び返し縫いを呼び方として区別せず、これらを総じて「返し縫い20」とするものである。
このような第2実施形態の畳1が上記した第1実施形態の畳1と異なるところは、その平面形状の違い(凹カーブ2と凸カーブ25との違い)から、畳表4の外周部に設けられる第一の端部処理部10が、非伸縮性のテープ生地12によって形成されている点にある。
ところで、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、第一の端部処理部10は、シリコン系やゴム系などの接着剤、或いはゴム糊(タイヤチューブのパンク修理等で使用するもの)等の塗布によって形成したり、これらでテープ生地12を接着するものとしたりすることも可能である。
第1実施形態(図1参照)において、第一の端部処理部10に用いたテープ生地12は非伸縮性の生地とし、そのうえで長手方向の数カ所を分断させるようにしてもよい。
2 凹カーブ
3 畳床
3a 畳床の外周側面
4 畳表
4a 畳表の外周部
10 端部処理部(第一の端部処理部)
11 端部処理部(第二の端部処理部)
12 テープ生地
15 留め縫い
20 返し縫い
25 凸カーブ
30 畳縫着機
32 縫い針作動部
Claims (4)
- 凹カーブ又は凸カーブを含むことによって平面形状が角形以外の異形を呈した外周部を有する畳床(3)の外周側面(3a)及び前記畳床(3)上に載せた畳表(4)の外周縁の乱れを防止する端部処理部(10)(11)が外周全体に設けられた外周部(4a)の返し縫い(20)を施す縫い針作動部(32)と、前記畳床(3)及び前記畳表(4)を載せて前記縫い針作動部(32)に対して平面移動する作業台(31)と、前記作業台(31)に設けられた前記畳床(3)及び前記畳表(4)を固定保持可能にするクランプ手段(33)とを備えた畳縫着機(30)を用いて、
1組の前記畳床(3)及び前記畳表(4)に対して前記返し縫い(20)を施す間に、前記作業台(31)を、運針方向へ進行させながら同時に前記縫い針作動部(32)に対して近接離反させることを特徴とする異形畳の製造方法。 - 前記畳床(3)及び前記畳表(4)に前記返し縫い(20)を施すときに、前記畳縫着機(30)の前記縫い針作動部(32)を平面移動させないままこの縫い針作動部(32)に対して前記作業台(31)を移動させて返し縫い(20)を施していくことを特徴とする請求項1に記載の異形畳の製造方法。
- 前記畳床(3)における凸カーブに形成された前記外周側面(3a)に対応する前記畳表(4)の前記外周部(4a)に生じただぶつきを抑える非伸縮性のテープ生地(12)を、前記畳表(4)の前記外周部(4a)の先端に前記先端の表裏両側を包み込む状態で縫着させて端部処理部(10)を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の異形畳の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載された方法によって製造された異形畳。
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