JP4245769B2 - 光ファイバセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、とう道などの構造物の変形を検出する光ファイバセンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンクリート等からなるとう道や、建築物、擁壁、堤体などの構造物の変形を検査するには、伸縮計、傾斜計などの電気式のセンサが用いられている。
この種のセンサは、通常、検査対象物である構造物において変形が起こりやすいと思われる箇所のみに設置され、この設置箇所における構造物の傾斜角の変化や伸縮を検知することで構造物の変形を検出することができるようにされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記センサでは、特定箇所のみにおける構造物の変形を検出するように構成されているため、構造物全体にわたる変形を検知することが難しい場合があった。すなわち、微小な変形が構造物全体にわたって生じている場合には、全体として大きな変形が生じている場合でも、局所的な変形が僅かであるため、この変形を上記センサによって検出することが難しかった。
また上記センサは、電気式センサであるため電力を消費することから、保守管理に多大な手間およびコストを要する不都合があった。
また上記センサは、電気式センサであることから誘導電流などの電磁ノイズの影響を受けやすく、検出精度の点で不利であった。
また上記センサからの信号を回収するために通信線が必要となることから、センサ設置に要する手間およびコストの面で不満があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、構造物の変形を検出する精度に優れ、しかも設置および保守管理を容易かつ低コストで行うことが可能であるセンサを提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、構造物の変形を検出する光ファイバセンサであって、構造物の複数箇所に設置された光ファイバ固定部と、これら光ファイバ固定部に固定されることで該固定部間に張設されて前記構造物に沿って布設された光ファイバとを備え、前記構造物の変形に伴って相隣接する光ファイバ固定部が互いに接近または離間することによって、これら光ファイバ固定部間に張設された光ファイバの伸び歪が変化するようになっており、光ファイバ固定部は、構造物に取り付けられる連結具と、光ファイバを把持する把持部と、連結具に対する把持部の位置を調整することにより相隣接する光ファイバ固定部の把持部間に張設される光ファイバの伸び歪を調整する歪み調整手段とを備え、前記把持部には、前記光ファイバを収納する光ファイバ収納溝が形成され、この光ファイバ収納溝は、その内面と前記光ファイバとの間の摩擦力によって、前記光ファイバを、引き抜き方向への引張力に抗して前記光ファイバ収納溝内に固定できる光ファイバセンサである。
一般に、歪みが与えられた光ファイバに試験光を入射した時に生じる後方散乱光の一つであるブリュアン散乱光の波長は、光ファイバに入射した試験光の波長に対しずれることが知られており、この周波数シフト量から、光ファイバの歪み量を把握することができる。上記光ファイバセンサでは、構造物が変形すると、光ファイバ固定部に固定された光ファイバが構造物と一体的に変形する。このため、光ファイバに光を入射し、その戻り光を観測し、光ファイバの損失増大や、ブリュアン散乱光を検出することで、光ファイバの変形の原因となった構造物の変形を検出することができる。また、試験光の入射後、ブリュアン散乱光が受光、観測されるまでの時間(戻り時間)により、光ファイバの歪み発生位置の概略を把握することができる。具体的には、例えば構造物に一体化させた光ファイバに、ブリュアン散乱光の観測用の光パルス試験器(いわゆるBOTDR)を接続し、この光パルス試験器を用いて光ファイバに光試験(試験光の入射と戻り光の観測)を行ってブリュアン散乱光を観測することで、構造物の変形を検出することができる。
本発明では、光ファイバ固定部は、構造物に取り付けられる連結具と、光ファイバを把持する把持部と、連結具に対する把持部の位置を調整することにより相隣接する光ファイバ固定部の把持部間に張設される光ファイバの伸び歪を調整する歪み調整手段とを備えた構成とする。
これによって、光ファイバセンサを設置する際に、光ファイバ固定部間に架け渡される光ファイバの張力を所望の値に設定することができるようになる。このため、光ファイバを、弛みを生じず、かつ、構造物の変形検出に悪影響を及ぼさない範囲の適度な張力が加えられた状態で光ファイバ固定部間に張設することが容易となる。従って、さらなる検出精度向上を図ることができる。
また、前記光ファイバ収納溝は、湾曲して形成されていることが望ましい。
連結具は、構造物に取り付られる連結具取付部と、この連結具取付部を中心とした回転移動による連結具の位置ずれを防ぐ回転防止部とを備え、この回転防止部は、構造物に係止可能とされた構成とすることができる。
これによって、連結具取付部において連結具を構造物に取り付けることで位置ずれが起きないように連結具を構造物に取り付けることができるようになる。このように、連結具の一箇所を構造物に取り付けることによって、連結具を位置ずれしないように取り付けることができることから、光ファイバセンサを設置する操作を容易にすることができる。
本発明の光ファイバセンサは、構造物の所定の設置面に沿って配列設置した光ファイバ固定部間に光ファイバを張設してなる第1センサ部と、光ファイバの少なくとも一部が前記設置面に対し傾斜した方向に張設された第2センサ部とを備えたものとすることができる。これによって、変形が設置面に沿って生じたものである場合に限らず、設置面に対し傾斜した方向に生じたものである場合でも、構造物変形の有無を確認できる。従って、変形検出精度をさらに高めることができる。
また、本発明では、以下に示す構成の構造物変形検査システムを構築することができる。すなわちこの構造物変形検査システムは、構造物の変形を検出する光ファイバセンサと、構造物の変形により生じる光ファイバセンサの変形量を測定する測定手段とを備え、光ファイバセンサが、構造物の複数箇所に設置された光ファイバ固定部と、これら光ファイバ固定部に固定されることで該固定部間に張設されるようにして前記構造物に沿って布設された光ファイバとを備え、前記構造物の変形に伴って相隣接する光ファイバ固定部が互いに接近または離間することによって、これら光ファイバ固定部間に張設された光ファイバの伸び歪が変化するようになっており、測定手段が、前記光ファイバに試験光を入射させる光源と、光ファイバから出射されるブリュアン散乱光を受光信号に変換して出力する受光部と、受光部からの受光信号に基づいて光ファイバの伸び歪量を演算する演算部とを備えている。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光ファイバセンサの一実施形態を、図1を参照して説明する。
本実施形態では、本発明の光ファイバセンサをコンクリートなどからなるとう道に適用した例を説明する。
図1は、本実施形態の光ファイバセンサを用いた構造物の変形検査システムを示すもので、ここに示す変形検査システムは、検査対象となる構造物である第1および第2のとう道51、52の変形を検出する光ファイバセンサ1と、とう道51、52の変形により生じる光ファイバセンサ1の変形量を測定する測定手段2とを備えて構成されている。
【0006】
光ファイバセンサ1は、とう道51、52の複数箇所に設置された光ファイバ固定部3と、これら光ファイバ固定部3に固定されることで、とう道51、52に沿ってその長さ方向にわたって布設された光ファイバ4とを備えている。
光ファイバ4は、弛みを生じず、かつ、とう道51、52の変形検出に悪影響を及ぼさない範囲の適度な張力が加えられた状態で光ファイバ固定部3間に張設されており、とう道51、52の変形に伴って相隣接する光ファイバ固定部3、3が互いに離間することによって、これら光ファイバ固定部3、3間に張設された光ファイバ4に伸び歪が与えられるようになっている。
光ファイバセンサ1では、光ファイバ4を、予めある程度の伸び歪(初期歪)を与えた状態とすることもできる。
【0007】
測定手段2は、光ファイバ4に試験光を入射させる光源(図示略)と、試験光を光ファイバ4に入射させたときに光ファイバ4から出射される後方散乱光であるブリュアン散乱光を受光信号に変換して出力する受光部(図示略)と、受光部からの受光信号に基づいて光ファイバの伸び歪量を演算する演算部(図示略)とを内蔵した光パルス試験器5を備えている。
【0008】
以下、この変形検査システムの使用方法を説明する。
光パルス試験器5の光源を用いて光ファイバ4に試験光を入射すると、光ファイバ4から後方散乱光であるブリュアン散乱光が出射され、受光部に達する。
受光部では、ブリュアン散乱光に応じた受光信号が演算部に出力される。
【0009】
一般に、ブリュアン散乱光の周波数シフト量は、光ファイバの歪みに依存することが知られている。すなわち、歪みが与えられた光ファイバに試験光を入射した時に生じるブリュアン散乱光の波長は、光ファイバに入射した試験光の波長からずれており、この周波数シフト量から、光ファイバの歪み量を把握することができる。
この原理を利用して、演算部において光ファイバ4の伸び歪量を算出することができる。
【0010】
とう道51、52に変形(ひび割れや圧縮変形など)が生じている場合には、この変形が生じた部分に近接して設置された光ファイバ固定部3が変位し、この光ファイバ固定部3と、これに隣接する光ファイバ固定部3とが互いに離間する。これによって、これら光ファイバ固定部3、3間に張設された光ファイバ4に引張力が加わり、光ファイバ4の伸び歪量が増加する。
これに対し、とう道51、52に変形が生じていない場合には、光ファイバ4の伸び歪み量は変化しない。
従って、ブリュアン散乱光を観測することにより光ファイバ4の伸び歪が検出されると、とう道51、52の歪み(変形)発生が検出されたことになり、とう道51、52の歪み(変形)発生を確認できる。
【0011】
また光ファイバ4に予め所定の伸び歪(初期歪)が与えられている場合には、とう道51、52の変形によって相隣接する光ファイバ固定部3、3が互いに接近したときにも、光ファイバ4の伸び歪が減少しブリュアン散乱光の変化が観測されることから、とう道51、52の変形を検出することができる。
【0012】
本実施形態の光ファイバセンサ1は、とう道51、52の複数箇所に設置された光ファイバ固定部3と、これら光ファイバ固定部3に固定されることで固定部3間に張設されるようにしてとう道51、52に沿って布設された光ファイバ4とを備え、とう道51、52の変形に伴って相隣接する光ファイバ固定部3、3が互いに接近または離間することによって、これら光ファイバ固定部3、3間に張設された光ファイバ4の伸び歪が変化するようになっているので、光ファイバ4に試験光を入射させたときに光ファイバ4から出射される後方散乱光であるブリュアン散乱光を観測することによって、とう道51、52の変形に起因する光ファイバ4の伸び歪量の変化を検出することができる。
光ファイバ4は、とう道51、52に沿ってその長さ方向にわたって布設されているため、とう道51、52に変形が生じた場合には、光ファイバ4に十分な伸び歪が生じる。
このため、光ファイバ4に生じた伸び歪量を測定することによって、構造物の変形が全体として小さい場合でも、とう道51、52に生じた変形を確実に検出することができる。
【0013】
また、光ファイバセンサ1は光学式センサであるため、電力を消費する電気式センサに比べ、保守管理に必要なコストの点で有利である。また耐久性に優れ、メンテナンスが容易である。
また、誘導電流などの電磁ノイズの影響を受けやすい電気式センサに比べて外部環境の影響を受けにくいため、検出精度を高めることができる。
さらには、従来の電気式センサに比べ、センサからの信号を受け取るための通信線を別途設置する必要がなく、設置に要する手間およびコストの点で有利である。
従って、とう道51、52の変形を検出する精度を向上させ、しかも設置および保守管理を容易かつ低コストで行うことが可能となる。
【0014】
また、この光ファイバセンサ1では、相隣接する2つの光ファイバ固定部3、3間に架設状態で布設(張設)されている光ファイバ4を1区間として、この区間単位でとう道51、52の変形を検出、監視することができる。
すなわち、光ファイバ4への試験光の入射からブリュアン散乱光の受光までの時間(以下「戻り時間」)から、伸び歪を生じた光ファイバ4の位置(光パルス試験器5からの距離)を計測できることから、とう道51、52の歪み発生位置を光ファイバ4の区間単位で把握できる。
【0015】
次に、上記構造物の変形検査システムのさらに具体的な構成について説明する。図1において、符号53は測定手段2が設置されたビルであり、符号54、55は縦坑であり、符号56はビル53と縦坑54とを結ぶ連絡路である。
上述の第1のとう道51は縦坑54の下部と縦坑55の下部との間に設けられている。第2のとう道52は縦坑54の下部から、とう道51の延在方向に対し異なる方向に延びている。
【0016】
光ファイバセンサ1に用いられる光ファイバ4としては、図2ないし図4に示す構成の光ケーブルを使用することができる。
図2に示す光ケーブル11は、PVC(ポリ塩化ビニル)等の樹脂製の外被11a内に、単心の光ファイバ心線11bと、鋼線などの抗張力体11cを収納した構造になっている。
図3に示す光ケーブル12は、光ファイバ心線11bに代えて複数心(図示例では4心)の光ファイバテープ心線12bが用いられている点で図2に示す光ケーブル11と異なる。
図4に示す光ケーブル13は、外被11a内に、カーボンコート光ファイバ心線13bと、ステンレス等からなる保護管13cとを収納し、保護管13c内に温度補正用光ファイバ13dをルースに収容した構造となっている。
温度補正用光ファイバ13dとしては、SM形光ファイバが好適である。温度補正用光ファイバ13dは、保護管13c内にルースに収容されており、カーボンコート光ファイバ心線13bに伸び歪みが与えられた場合でも、光ファイバ13dには伸び歪みが作用せず、無歪み状態を維持することができるようになっている。温度補正用光ファイバ13dとしては、カーボンコート光ファイバからなる光ファイバ心線等を採用することが耐久性向上の点で好ましい。
【0017】
これら光ケーブル11、12、13では、光ファイバ心線11b、光ファイバテープ心線12b、光ファイバ心線13bを、試験光入射用(変形検出用)の光ファイバとして使用できるようになっている。光ファイバテープ心線12bでは、複数の光ファイバ心線のうち1本を試験光入射用の光ファイバとして使用できるようにすることができる。
以下、第1のとう道51に布設された光ファイバ4を光ファイバ4aと呼び、第2のとう道52に布設された光ファイバ4を光ファイバ4bと呼ぶ。
【0018】
光ファイバ4aは、測定手段2から連絡路56、縦坑54を経て、とう道51に達し、とう道51内において、その長手方向に沿って蛇行するように延在配置されている。
すなわち、光ファイバ4aは、とう道51の長手方向に沿う区画Aと、短手方向に沿う区画Bとが交互に繰り返されつつ、長手方向に沿う帯状部分Cの全面にわたってとう道51内に布設されている。とう道51を経た光ファイバ4aは縦坑55に達し、縦坑55に沿って上方に向けて延在配置されている。
光ファイバ4bは、測定手段2から連絡路56、縦坑54を経て、とう道52の長手方向に沿って蛇行するように延在配置されている。
なお本実施形態では光ファイバ4a,4bをとう道51、52に蛇行するように設置したが、これに限らず、とう道51、52の長手方向に沿って直線的に設置することも可能である。
【0019】
光ファイバ固定部3としては、図5ないし図7に示すものを用いるのが好適である。
ここに示す光ファイバ固定部3は、とう道51、52の内壁に取り付けられる連結具21と、光ファイバ4を把持する把持部である把持ブロック22と、押さえ部材23と、連結具21に対する把持ブロック22の位置を調整することにより光ファイバ4の伸び歪を調整する歪み調整手段である歪み調整ネジ24とを備えている。
【0020】
連結具21は、把持ブロック22が載置される矩形トレイ状の受け部26と、受け部26の一辺から上方に延びる上方延出部27と、上方延出部27の上端から水平に延びる取付部28とを備えている。
受け部26の両側部には、上方に延びる側壁29、29が形成され、両側壁29、29には、それぞれ歪み調整ネジ24が挿通する歪み調整ネジ挿通孔30、30が形成されている。
受け部26の下面には、受け部26の一側から他側にかけてスリット26aが形成されている。
【0021】
取付部28には、連結具21をとう道51、52に取り付けるアンカー33を挿通する連結具取付部であるアンカー挿通孔31が形成されており、アンカー33の使用によって、連結具21をアンカー挿通孔31においてとう道51、52の内壁面に取り付けることができるようになっている。
【0022】
また取付部28の上面には、アンカー挿通孔31から離れた位置に、回転防止部である回転防止ピン36が上方に向けて突出形成されている。
この回転防止ピン36は、連結具21のとう道51、52に対する位置ずれを防ぐためのもので、連結具21がとう道51、52の内壁に取り付けられた状態で、とう道51、52の内壁に形成された嵌合孔37に嵌合することによりとう道51、52に係止し、これによって、連結具21のアンカー挿通孔31を中心とした回転移動による位置ずれを防ぐことができるようになっている。
【0023】
把持ブロック22は、受け部26よりもやや小さい矩形板状に形成されており、その上面には、光ファイバ4を収納する光ファイバ収納溝32が形成されている。光ファイバ収納溝32はS字状に形成されており、その延在方向両端は把持ブロック22の両側面に開放されている。
収納溝32は、収納溝32内面と光ファイバ4との間の摩擦力によって、光ファイバ4を、収納溝32からの引き抜き方向への引張力に抗して収納溝32内に固定できるようになっている。
把持ブロック22の下面には、把持ブロック22を受け部26上に固定する固定ピン35が嵌合する嵌合部34が形成されており、受け部26の下面側からスリット26aを通して固定ピン35を嵌合部34に固定することにより把持ブロック22が受け部26から外れるのを防ぐことができるようになっている。
押さえ部材23は、矩形の薄板状に形成され、把持ブロック22上に積層した状態で把持ブロック22に固定できるようになっている。
【0024】
歪み調整ネジ24、24は、受け部26の側壁29、29に形成された挿通孔30、30に、把持ブロック22に向けて進退可能となるように挿通している。
歪み調整ネジ24、24は、把持ブロック22を両側から挟み込むことによって、把持ブロック22を、受け部26上の任意の位置で固定することができるようになっており、これにより連結具21に対する把持ブロック22の位置を任意に調整できるようになっている。
これによって、歪み調整ネジ24は、相隣接する光ファイバ固定部3,3の把持ブロック22、22間に張設される光ファイバ4の伸び歪を調整することができるようになっている。
なお光ファイバ固定部3としては、汎用の鬼目部材を使用することもできる。
【0025】
測定手段2は、既述の光パルス試験器5と、光スイッチ6と、成端部7とを備えており、ビル53内に引き込まれた光ファイバ4は、光ファイバ心線等が成端部7にて口出しされ、口出しされた光ファイバ心線等は光スイッチ6を経て光パルス試験器5(いわゆるBOTDR)に導入されている。
光スイッチ6は、光ファイバ4a、4bの接続を切り替えることによって各光ファイバ4a,4bのいずれかに試験光を入射することができるようになっている。
【0026】
ここに示す光ファイバセンサ1は、上述の通り、とう道51、52の変形を検出する精度に優れ、しかも設置および保守管理を容易かつ低コストで行うことが可能であるばかりでなく、光ファイバ4がとう道51、52の長手方向に沿って蛇行するように配置されているので、とう道51、52の長手方向に沿う帯状部分Cにおける変形を検出することができる。
従って、とう道51、52の広い範囲を変形検出の対象とすることができる。
【0027】
また、光ファイバ4として、図2に示す光ケーブル11、すなわち外被11a内に、光ファイバ心線11bと抗張力体11cとを収納した構造のものを採用した場合には、この光ケーブル11が、構造が単純であるため安価であることから低コスト化が可能となる。
【0028】
また、光ファイバ4として、図3に示す光ケーブル12、すなわち光ファイバテープ心線12bを用いたものを採用した場合には、光ファイバテープ心線12bが複数(図示例では4本)の光ファイバ心線を有するものであるため、変形検出に利用する光ファイバ心線が破損した場合でも、他の光ファイバ心線を利用することができる。このため、破損時の補修が容易となる。
【0029】
また、図4に示す光ケーブル13、すなわち外被11a内に、光ファイバ心線13bと、保護管13cとを収納し、保護管13c内に温度補正用光ファイバ13dを収容した構造のものを採用した場合には、次のような効果が得られる。
すなわち、温度補正用光ファイバ13dへの試験光の入射により観測されるブリュアン散乱光は、温度補正用光ファイバ13dの温度により強度が変化するため、観測される散乱光の強度は、光ファイバの部分的な温度の違いに対応して異なることとなる。
このため、この散乱光の強度に基づいて所定の理論式から温度を求めることができることから、光ファイバ心線13bからのブリュアン散乱光の計測データの温度補正が可能となり、検出精度をさらに高めることができる。
また、温度補正用光ファイバ13dを保護管13c内にルースに収容した構成としたので、温度補正用光ファイバ13dの無歪み状態を維持し、温度補正用光ファイバ13dの歪みに起因する温度データの精度低下を防ぐことができる。
【0030】
また、図5ないし図7に示す光ファイバ固定部3を採用した場合には、この光ファイバ固定部3が、光ファイバ4を収納する収納溝32が形成された把持ブロック22の、連結具21に対する位置を調整することにより光ファイバ4の伸び歪を調整する歪み調整ネジ24を備えているので、光ファイバセンサ1を設置する際に、光ファイバ固定部3、3間に架け渡される光ファイバ4の張力や初期歪みの値を所望の値に設定することができる。
このため、光ファイバ4を、弛みを生じず、かつ、とう道51、52の変形検出に悪影響を及ぼさない範囲の適度な張力が加えられた状態で光ファイバ固定部3間に張設することが容易となる。従って、さらなる検出精度向上を図ることができる。
【0031】
また連結具21の取付部28に、連結具21をとう道51、52に取り付けるアンカー33が挿通するアンカー挿通孔31と、アンカー挿通孔31を中心とした回転移動による連結具21の位置ずれを防ぐ回転防止ピン36とが形成されているので、アンカー挿通孔31においてアンカー33を用いて連結具21をとう道51、52に取り付けることによって、とう道51、52に対する位置ずれが起きないように連結具21をとう道51、52に取り付けることができる。
このように、連結具21の一箇所をとう道51、52に取り付けることによって、連結具21を位置ずれしないように取り付けることができることから、光ファイバセンサ1を設置する操作を容易にすることができる。
【0032】
また、収納溝32をS字状に形成することによって、光ファイバ4が、S字状に湾曲されている光ファイバ収納溝32によって湾曲されるため、収納溝32に収納された部分の光ファイバ4の長さが、直線的に引き通した場合に比べて長くなる。このため、光ファイバ4と収納溝32内面との間の摩擦力が大きくなり、光ファイバ固定部3からの引き抜き方向への引張力に対する引き抜き耐力が高められ、引張力に対して位置ずれを生じることなく固定状態が安定に維持されるようになる。
従って、光ファイバ4の局所的な把持固定力の集中を回避でき、例えば、一対の鬼目部品による把持固定する構造の光ファイバ固定部に比べて、光ファイバ4を傷めることなく確実に把持固定できる。
【0033】
図8および図9は、本発明の光ファイバセンサの第2の実施形態を用いた構造物の変形検査システムを示すもので、ここに示す変形検査システムでは、図1に示す光ファイバセンサ1における光ファイバ4a,4bに代えて、光ファイバ14、15が用いられた光ファイバセンサ11が用いられている。
【0034】
光ファイバ14は、測定手段2から連絡路56、縦坑54を経てとう道51内をその長手方向に沿って蛇行しつつ縦坑55下部に向けて延び、さらに縦坑55に沿って上方に延び、縦坑55の上部において下方に向きを変えられ、下方に延びて再びとう道51に達し、とう道51内をその長手方向に沿って縦坑54に向けて延び、縦坑54および連絡路56に達している。
光ファイバ15は、測定手段2から連絡路56、縦坑54を経てとう道52内をその長手方向に沿って蛇行しつつ延び、折り返し点52aにおいて逆方向に向けられ、縦坑54に向けて延びている。
【0035】
以下、測定手段2から連絡路56、縦坑54、とう道51を経て縦坑55の上部に達するまでの部分の光ファイバ14を往路光ファイバ14aと呼び、縦坑55上部からとう道51、縦坑54、連絡路56に配置された部分の光ファイバ14を復路光ファイバ14bと呼ぶ。
また測定手段2から連絡路56、縦坑54、とう道52を経て折り返し点52aに達するまでの部分の光ファイバ15を往路光ファイバ15aと呼び、折り返し点52aから縦坑54に向けてとう道52内に延在する部分の光ファイバ15を復路光ファイバ15bと呼ぶ。
【0036】
とう道51、52に配置された往路光ファイバ14a、15aは、図1における光ファイバ4aと同様に、とう道51、52の長手方向に沿う区間Aと、短手方向に沿う区間Bとが交互に繰り返されつつ、とう道51、52の天井部内壁面である設置面57、58に配列設置された光ファイバ固定部3間に張設されている。
これら設置面57、58に設置された光ファイバ固定部3と、これらに張設された往路光ファイバ14a、15aは第1センサ部に相当する。
【0037】
本実施形態の光ファイバセンサにおいて、復路光ファイバ14b、15bは、長手方向に沿って延びる水平部14c、15cと、ほぼ鉛直方向に沿う鉛直部14d、15dとからなるように配置されており、これによって光ファイバ14、15はとう道51、52内に3次元的に配置されている。
鉛直部14d、15dは、とう道51、52の長手方向に間隔をおいて形成されており、鉛直部14d、15dにおいては、復路光ファイバ14b、15bが、ほぼ鉛直下方に延び、とう道51、52の下部に位置する折り返し点14e、15eにおいて鉛直上方に方向を変えられ、鉛直上方に延びるループ状に配置されている。
【0038】
以下、鉛直部14dにおける復路光ファイバ14bの配置について詳細に説明する。
図9に示すように、とう道51の上部および下部の内壁には、それぞれ上部連結部材16および下部連結部材17が固定されている。
これら上部および下部連結部材16、17には、それぞれ光ファイバ固定部3a、3bが取り付けられている。
図9において、上部連結部材16に達した光ファイバ14b、15bは、折曲点18において下方に向けられ、上部連結部材16に取り付けられた光ファイバ固定部3aを経てさらに下方に延び、下部連結部材17に取り付けられた光ファイバ固定部3bに達している。
【0039】
光ファイバ固定部3aから光ファイバ固定部3bに至るまでの間の光ファイバ14bは、弛みを生じず、かつ、とう道51の変形検出に悪影響を及ぼさない範囲の適度な張力が加えられた状態で光ファイバ固定部3a、3b間に張設されており、とう道51の変形に伴って光ファイバ固定部3a、3bが互いに接近または離間することによって、これら光ファイバ固定部3a、3b間に張設された光ファイバ14bの伸び歪が変化するようになっている。
【0040】
光ファイバ固定部3bを経た光ファイバ14bは、下部連結部材17内において、光特性に影響しない範囲の湾曲半径で折り返され(折り返し点14e)、上方に向かって延び、上部連結部材16に達し、折曲点19において水平方向に向けられている。
【0041】
このように、復路光ファイバ14b、15bは、その一部が設置面57、58に対しほぼ垂直な方向に張設されている。復路光ファイバ14b、15bとこれらが固定された光ファイバ固定部3とは第2センサ部に相当する。
なお、上記実施形態では第2センサ部を構成する復路光ファイバ14b、15bの一部が設置面57、58に対しほぼ垂直に延びる構成を例示したが、これに限らず、第2センサを構成する光ファイバの少なくとも一部が設置面57、58に対し傾斜した方向に張設されていればよい。
【0042】
本実施形態の光ファイバセンサ11では、とう道51、52内においてほぼ水平な面内に配置された往路光ファイバ14a、15aと、ほぼ鉛直方向に沿う鉛直部14d、15dを有する復路光ファイバ14b、15bとを有するので、とう道51、52に鉛直方向の変形が生じ、光ファイバ固定部3a、3bが互いに接近または離間した場合には、これら光ファイバ固定部3a、3b間に張設された光ファイバ14b、15bの伸び歪が変化する。
このため、とう道51、52の変形が水平方向に生じたものである場合に限らず、鉛直方向に生じたものである場合でも、とう道51、52の変形の有無を確認できる。従って、変形検出精度をさらに高めることができる。
【0043】
なお、本発明の光ファイバセンサに用いられる光ファイバとしては、光ケーブルに限定されず、例えば、光コード等も採用可能である。光ケーブルを採用する場合でも、光ファイバセンサ部にて伸び歪みが印加される部分のみ、変形しやすい光コード等を採用することも可能である。
また上記実施形態では、本発明の光ファイバセンサをコンクリートなどからなるとう道に適用した例を示したが、本発明の光ファイバセンサによる変形検出対象物は、とう道に限らず、建築物、擁壁、堤体などであってもよい。
建築物の壁、擁壁、堤体などを検出対象物とする場合には、光ファイバセンサをこの検出対象物に張り巡らせることによって、広い範囲にわたる面的な変形検出が可能である。
【0044】
【発明の効果】
本発明の光ファイバセンサにあっては、構造物の複数箇所に設置された光ファイバ固定部と、これら光ファイバ固定部に固定されることで該固定部間に張設されて前記構造物に沿って布設された光ファイバとを備え、前記構造物の変形に伴って相隣接する光ファイバ固定部が互いに接近または離間することによって、これら光ファイバ固定部間に張設された光ファイバの伸び歪が変化するようになっているので、光ファイバに試験光を入射させたときに光ファイバから出射される後方散乱光であるブリュアン散乱光を観測することによって、構造物の変形に起因する光ファイバの伸び歪量の変化を検出することができる。
光ファイバは、構造物に沿って布設されているため、構造物に変形が生じた場合には、光ファイバに十分な伸び歪が生じる。このため、光ファイバに生じた伸び歪量を測定することによって、局所的な変形量が小さい場合でも、構造物に生じた変形を確実に検出することができる。
また、光学式センサであるため、電力を消費する電気式センサに比べ、保守管理に必要なコストの点で有利である。また耐久性に優れ、メンテナンスが容易である。
また、誘導電流などの電磁ノイズの影響を受けやすい電気式センサに比べ、外部環境の影響を受けにくく、検出精度を高めることができる。
さらには、従来の電気式センサに比べ、センサからの信号を受け取るための通信線を別途設置する必要がなく、設置に要する手間およびコストの点で有利である。
従って、構造物の変形を検出する精度を向上させ、しかも設置および保守管理を容易かつ低コストで行うことが可能となる。
【0045】
また光ファイバ固定部を、構造物に取り付けられる連結具と、光ファイバを把持する把持部と、連結具に対する把持部の位置を調整することにより相隣接する光ファイバ固定部の把持部間に張設される光ファイバの伸び歪を調整する歪み調整手段とを備えた構成とすることによって、光ファイバセンサを設置する際に、光ファイバ固定部間に架け渡される光ファイバの張力を所望の値に設定することができる。
このため、光ファイバを、弛みを生じず、かつ、構造物の変形検出に悪影響を及ぼさない範囲の適度な張力が加えられた状態で光ファイバ固定部間に張設することが容易となる。従って、さらなる検出精度向上を図ることができる。
【0046】
また連結具を、構造物に取り付られる連結具取付部と、この連結具取付部を中心とした回転移動による連結具の位置ずれを防ぐ回転防止部とを備え、この回転防止部を、構造物に係止可能に構成することによって、連結具取付部において連結具を構造物に取り付けることで位置ずれが起きないように連結具を構造物に取り付けることができるようになる。
このように、連結具の一箇所を構造物に取り付けることによって、連結具を位置ずれしないように取り付けることができることから、光ファイバセンサを設置する操作を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光ファイバセンサの一実施形態を使用した構造物の変形検査システムの概略構成図である。
【図2】 図1に示す光ファイバセンサに用いられる光ファイバの一例を示す断面図である。
【図3】 図1に示す光ファイバセンサに用いられる光ファイバの他の例を示す断面図である。
【図4】 図1に示す光ファイバセンサに用いられる光ファイバのさらに他の例を示す断面図である。
【図5】 図1に示す光ファイバセンサに用いられる光ファイバ固定部の一例を示す断面図である。
【図6】 図5に示す光ファイバ固定部の構造を示す図である。
【図7】 図6に示す光ファイバ固定部の構造を示す図である。
【図8】 本発明の光ファイバセンサの他の実施形態を使用した構造物の変形検査システムの概略構成図である。
【図9】 図6に示す光ファイバセンサの要部拡大図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
1、11・・・光ファイバセンサ、2・・・測定手段、3、3a、3b・・・光ファイバ固定部、4、4a、4b、14、15・・・光ファイバ、14a,15a・・・往路光ファイバ(第1センサ)、14b、15b・・・復路光ファイバ(第2センサ)、21・・・連結具、22・・・把持ブロック(把持部)、24・・・歪み調整ネジ(歪み調整手段)、31・・・アンカー挿通孔(連結具取付部)、36・・・回転防止ピン(回転防止部)、57、58・・・設置面
Claims (3)
- 構造物の変形を検出する光ファイバセンサであって、構造物の複数箇所に設置された光ファイバ固定部と、これら光ファイバ固定部に固定されることで該固定部間に張設されて前記構造物に沿って布設された光ファイバとを備え、
前記構造物の変形に伴って相隣接する光ファイバ固定部が互いに接近または離間することによって、これら光ファイバ固定部間に張設された光ファイバの伸び歪が変化するようになっており、
光ファイバ固定部は、構造物に取り付けられる連結具と、光ファイバを把持する把持部と、連結具に対する把持部の位置を調整することにより相隣接する光ファイバ固定部の把持部間に張設される光ファイバの伸び歪を調整する歪み調整手段とを備え、
前記把持部には、前記光ファイバを収納する光ファイバ収納溝が形成され、この光ファイバ収納溝は、その内面と前記光ファイバとの間の摩擦力によって、前記光ファイバを、引き抜き方向への引張力に抗して前記光ファイバ収納溝内に固定できることを特徴とする光ファイバセンサ。 - 前記光ファイバ収納溝は、湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバセンサ。
- 連結具は、構造物に取り付られる連結具取付部と、この連結具取付部を中心とした回転移動による連結具の位置ずれを防ぐ回転防止部とを備え、
この回転防止部は、構造物に係止可能とされていることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバセンサ。
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