JP3789739B2 - 光ファイバセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、とう道、ダム、堤体、建物といったコンクリート構造物等の各種構造物の変形を検出する光ファイバセンサの組立方法および光ファイバセンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、とう道、ダム、堤体、崖等の斜面に構築された擁壁、橋梁、建物等のコンクリート構造物の変形の検出は、この構造物の変形発生の可能性のある箇所に、伸縮計、傾斜計等の変位計(電気式センサが採用される)を設置してポイント計測する方法が一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のような変形検出方法では、以下の問題点があった。
(1)ポイント計測であるので、構造物全体の変状規模等の変状の様子を把握することが困難である。構造物全体の変状の様子を把握するには、伸縮計、傾斜計等の変位計を構造物全体に設置する必要があり、設置数が膨大になるため、設置に掛かる手間が膨大になるとともに、構造物全体の変状規模等の変状の様子を把握するには多数の変位計からの計測データから総合的に解析することになり、把握に手間が掛かる。
(2)伸縮計、傾斜計等の変位計として採用される電気式センサは、センサ自体に電源を必要とするため、保守管理の手間が掛かる。
(3)伸縮計、傾斜計等の変位計として採用される電気式センサは、誘導電流等の電磁ノイズの影響を受けやすいため、例えばビル等の建物に設置された電気機器から放射される電磁波によって、誤計測する可能性がある。また、誤計測を防止するために変位計に電磁波シールド構造を採用すると、コストが大幅に上昇してしまう。
(4)伸縮計、傾斜計等の変位計の計測データの収集用の信号線の配線が電源線の他に必要であり、施工に手間が掛かる。
【0004】
ところで、誘導電流等の電磁ノイズの影響を受けない変位センサとして、光ファイバを利用したものが注目されており、光ファイバの長手方向の歪み量の連続的な分布を高精度に観測する方法として、非線形現象の一つであるブリルアン散乱光の周波数シフト量が光ファイバの歪みに依存することを利用した手法が開発されている。しかしながら、構造物の変形検出を行うための光ファイバセンサとしては、構造物に対する取り付け等の施工性に優れるとともに、構造物の変形を光ファイバに効率良く作用させて曲げや伸び、破断等の変形を効率良く作用させ得る構造であることが求められており、これまで、これら条件を満たす適当なものが無かった。さらには、低コスト化の要求もあり、これら条件を満たす光ファイバセンサの開発が必要であった。
【0005】
また、光ファイバへの入射光のブリルアン散乱光の観測を利用したセンサでは、光ファイバの長手方向の歪み量の連続的な分布を高精度に観測する必要から、構造物に対する光ファイバの固定構造が問題となる。
構造物に光ファイバケーブルを固定する構造としては、従来、例えば光クロージャ等にて多用されているように、鬼目金具等の一対の把持部品の間に光ファイバケーブルを挟み込んで締め付け固定するものが多く用いられている。また、光ファイバケーブルをリール状に巻いて固定する構造や、八の字巻き(クリート)にして固定する構造が存在する。さらに、光ファイバケーブルに設けられたテンションメンバを一対のクランプ部品間に挟み込んで締め付ける構造もある。
しかしながら、前述の固定構造では、以下のような問題がある。
【0006】
(1)一対の把持部品間に締め付け固定する構造や、テンションメンバを挟み込んで固定する構造は、ネジ等の締め付けにより固定を実現するものであるため、ネジ等を締め付けるための工具が必要となる上、部品点数が多く、組み立てや固定に手間が掛かる。
(2)一対の把持部品間に締め付け固定する構造では、例えば図15に示すように外皮71を形成する樹脂中に光ファイバ72(光ファイバ心線等)を埋め込んだ光ファイバケーブル73等、外皮の把持力が内部の光ファイバにも作用し得る中実構造の光ファイバケーブルの把持固定に適用すると、この光ファイバケーブル内部の光ファイバをも固定できるが、把持部品間の把持力が非常に大きいと、光ファイバケーブル内部の光ファイバに局所的に歪みを与えて光特性に悪影響を及ぼす可能性がある。光ファイバの光特性に影響を与えないようにするために把持部品間の把持力を低下させると、光ファイバケーブルの外皮の移動は防止できるものの、外皮内の光ファイバをも確実に固定することは困難になり、外皮に対する光ファイバの移動が許容されるケースがある。テンションメンバを固定する構造でも、光ファイバケーブル内部の光ファイバを固定できないことは言うまでも無い。
(3)光ファイバケーブルをリール状に巻いて固定する構造や、八の字巻き(クリート)にして固定する構造では、光ファイバケーブルの固定に手間が掛かる。また、光ファイバケーブル(詳細には光ファイバケーブル内部の光ファイバ心線等の光ファイバ)への試験光の入射後、ブリルアン散乱光が受光、観測されるまでの時間(戻り時間)から、長手方向の歪み量の変化等の異常が観測された位置を特定する場合、巻き付けによる固定に必要な光ファイバケーブルの条長分、位置データを補正する必要があり、異常発生位置の特定に手間が掛かったり、光ファイバケーブルへの試験光の入射、ブリルアン散乱光の観測データの処理を行って構造物の変形を監視するシステムの構成が複雑になったりする。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、
(a)構造物に対する施工が簡単であり、しかも、誘導電流等の電磁ノイズの影響を受けることなく、構造物全体の変状規模等の変状の様子を低コストで簡単に把握できる
(b)光ファイバの光特性に影響を与えること無く、しかも、固定用の条長確保の影響を最小限に抑えて、簡単かつ確実に光ファイバを固定できる光ファイバ固定治具の適用によって、構造物の変形の観測精度の向上を実現できる
光ファイバセンサを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、構造物の変形を光により検出する光ファイバセンサであって、前記構造物に沿って布設された光ファイバの長手方向複数箇所を、構造物の異なる箇所に固定された光ファイバ固定治具にそれぞれ固定して、この光ファイバをその長手方向に隣り合う前記光ファイバ固定治具間に張設してなり、前記光ファイバ固定治具は、光ファイバを挟み込む1対の治具本体を備え、一方または両方の治具本体の相手側の治具本体に臨む合わせ面側に形成された光ファイバ収納溝によって、両治具本体の間に前記光ファイバを収納する光ファイバ収納穴がほぼ真っ直ぐに延在、貫通されるとともに、前記光ファイバ収納穴に収納された光ファイバを相手側の治具本体との間に挟み込む把持突起が前記光ファイバ収納穴に沿って複数連設され、前記光ファイバ収納溝の延在方向一方または両方の端部に位置する前記光ファイバ固定治具の端部に、前記光ファイバ収納穴同士が直列に配列されるようにして光ファイバ固定治具同士を連結する連結部が設けられていることを特徴とする。
また、この光ファイバセンサでは、請求項2記載のように、1対の光ファイバ固定治具間に張設された光ファイバに、初期歪みとして長手方向の伸び歪みが与えられている構成であることがより好ましい。
【0009】
この光ファイバセンサでは、構造物の変形によって、構造物に固定された光ファイバ固定治具間の距離が変動することで、光ファイバ固定治具間に張設された光ファイバに長手方向の歪み量が変化する。ここで、光ファイバに光を入射し、その戻り光を観測した結果、光ファイバの損失増大や、ブリルアン散乱光の周波数シフト量の変化を検出することで、構造物の変形を検出することができる。
【0010】
本発明によって組み立てられる光ファイバセンサでは、非線形現象の一つであるブリルアン散乱光の周波数シフト量が光ファイバの歪みに依存することを利用して、光ファイバの長手方向の歪み量の連続的な分布を高精度に観測することで、構造物の変形を検出、監視することができる。すなわち、歪みが与えられた光ファイバに試験光を入射した時に生じる後方散乱光の一つであるブリルアン散乱光の波長は、光ファイバに入射した試験光の波長からずれており、この周波数シフト量から、光ファイバの歪み量を把握することができる。また、試験光の入射後、ブリルアン散乱光が受光、観測されるまでの時間(戻り時間)により、光ファイバの歪み発生位置の概略を把握することができる。
【0011】
例えば、光ファイバ固定治具間に張設した光ファイバに、ブリルアン散乱光の観測用の光パルス試験器(いわゆるBOTDR)を接続し、この光パルス試験器を用いて光ファイバに光試験(試験光の入射と戻り光の観測)を行ってブリルアン散乱光を観測することで、構造物の変形を検出することができる。光ファイバ固定治具を介して構造物に固定した光ファイバに初期歪みとして長手方向の伸び歪みを与えておき、構造物の伸びや割れ(亀裂発生)、圧縮変形等の変形によって光ファイバ長手方向の歪み量が変化すると、光ファイバの光試験によってブリルアン散乱光を観測することで、構造物の変形を検出できる。前記「歪み量が変化」とは、構造物の変形による光ファイバの長手方向の伸び歪みが初期歪みに比べて増大または減少することであり、この歪み量の変化(以下「伸縮歪」)を検出することで、構造物の変形を検出できる。つまり、構造物に対して固定した光ファイバが構造物の変形と一体的に変形して伸縮歪が与えられると、この伸縮歪を、光ファイバの光試験によって検出することで、構造物の変形を検出できる。また、観測されたブリルアン散乱光の周波数シフト量から、光ファイバの歪み量を把握することができ、これにより、構造物の変形の程度を把握できる。さらに、観測されたブリルアン散乱光の戻り時間から、構造物の変形位置を計測できる。
【0012】
但し、請求項1記載の発明では、初期歪みを与えないで構造物に対して固定した光ファイバの伸び歪み発生のみを伸縮歪として検出することで、構造物の変形を観測する構成も採用可能である。
また、本発明の光ファイバセンサによれば、1本の光ファイバを光ファイバ固定治具を介して構造物に添わせるようにして設けることによって、構造物の広範囲にわたって光ファイバセンサを簡単に組み立てることができる利点がある。しかも、1本の光ファイバによって組み立てられた光ファイバセンサでは、この1本の光ファイバの光試験によって、構造物の変形を広範囲にわたって検出、監視できる。
【0013】
光ファイバに初期歪みとして長手方向の伸び歪みを与えておくと、構造物の変形を確実かつ高精度に検出できるようになる結果、光ファイバの光試験回数を少なくでき、構造物の検出にかかる時間を短縮できるといった利点がある。
すなわち、光ファイバ固定治具間に、長手方向の伸び歪みを与えること無く張設した光ファイバでは、長手方向の歪み分布にばらつきが存在することが多く、この光ファイバの内在歪みが解消される程度の伸び歪みの増大が観測されるまで、構造物の変形の発生を明瞭に把握することが困難であり、結局、繰り返し光試験を実施してブリルアン散乱光を観測することになり、構造物の変形検出まで時間を要することになる。
しかしながら、光ファイバに初期歪みとして長手方向の伸び歪みを与えておくと、1対の光ファイバ固定治具間に張設された光ファイバの長手方向の歪み分布が均等化され、光ファイバの長手方向の歪み分布のばらつきが解消されるから、構造物の変形に伴う光ファイバ固定治具間の距離の変動が、光ファイバ固定治具間に張設された光ファイバの伸縮歪に直接的に確実に作用するようになり、結局、少ない光試験回数により短時間で構造物の変形を検出できるようになる。
【0014】
本発明では、以下の構成を採用することがより好ましい。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の光ファイバセンサにおいて、前記構造物に固定された治具受け具に、1対の治具本体を一体化して前記光ファイバを把持固定した光ファイバ固定治具を固定することで、前記光ファイバ固定治具が前記治具受け具を介して前記構造物に対して固定されるように構成され、前記治具受け具に対する前記光ファイバ固定治具の固定位置が前記光ファイバ収納穴の延在方向に沿った方向に調整可能になっていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の光ファイバセンサにおいて、前記治具受け具は、前記構造物に固定される構造物固定部と、前記光ファイバ固定治具を収納する治具収納穴が貫通された治具取付部とを備え、前記治具収納穴に挿入された前記光ファイバ固定治具の前記治具取付部の両側に突出された部分の外面に形成されているナット螺着部にそれぞれ螺着されたナットが前記治具取付部を挟み込むようにして締結されることで、前記光ファイバ固定治具が前記治具受け具に固定されるようになっていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の光ファイバセンサにおいて、前記光ファイバ収納溝の延在方向一方または両方の端部に位置する光ファイバ固定治具の端部に、前記光ファイバ収納穴を拡張した形状の拡張型開口部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明の1実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1、図2は、構造物1としての断面円形のコンクリート壁体であるとう道の歪み発生を検出する光ファイバセンサ10、20を示す図であって、図1は断面円形の前記構造物1内面側に周方向に沿って光ファイバ2を布設して構成された光ファイバセンサ10、図2は前記構造物1内面側に軸方向に沿って光ファイバ2を布設して構成された光ファイバセンサ20を示す。
【0016】
本実施の形態では、光ファイバ2として光ファイバケーブルを採用した例を説明する。以下、光ファイバ2を「光ファイバケーブル2」と称する場合がある。本実施の形態では、図14に示すように、光ファイバ2は連続する光線路を構成している。
【0017】
光ファイバセンサ10、20は、構造物1の内面周方向あるいは軸方向に沿って布設された光ファイバ2の長手方向複数箇所を、構造物の異なる箇所に治具受け具30を介して固定された光ファイバ固定治具40にそれぞれ固定して、この光ファイバ2の長手方向に隣り合う前記光ファイバ固定治具40間に前記光ファイバ2を張設して構成されている。
光ファイバセンサ10は、具体的には、構造物1の内面周方向に沿って複数の治具受け具30を互いに離間距離を以って配列固定し、各治具受け具30に固定した光ファイバ固定治具40に光ファイバ2を固定して、隣り合う光ファイバ固定治具40間に張設したものである。光ファイバセンサ20は、構造物1の内面軸方向に沿って複数の治具受け具30を互いに離間距離を以って配列固定し、各治具受け具30に固定した光ファイバ固定治具40に光ファイバ2を固定して、隣り合う光ファイバ固定治具40間に張設したものである。
【0018】
図3に示すように、前記光ファイバ固定治具40は、構造物1にアンカー固定される治具受け具30に固定されることで、治具受け具30を介して構造物1に固定されるようになっている。
図4(a)〜(c)に示すように、治具受け具30は、金属等の充分な剛性を有する素材から形成されており、前記構造物1に固定される構造物固定部31と、前記光ファイバ固定治具40を収納する治具収納穴32が貫通された治具取付部33とを一体化した構成になっている。具体的には、前記治具受け具30は概略L字型であり、前記治具取付部33は、概略L字型に成形されたプレートのL字の一側であり、前記構造物固定部31は、前記L字型のプレートのL字の他側34(以下、他側プレート部34)に定着用プレート35を固定した構成になっている。前記定着用プレート35は、前記他側プレート部34に対して、該他側プレート部34を介して前記治具取付部33と対向する側に固定されている。
【0019】
図5、図6に示すように、この治具受け具30を構造物1に固定するには、構造物1に打ち込んだアンカーボルト36の前記構造物1からの突出部分に、治具受け具30の構造物固定部31を、該構造物固定部31に貫通されているボルト穴31aによって挿入し、前記構造物固定部31を介して前記構造物1と対向する側に突出されたアンカーボルト36に螺着したナット37を締め付ける。前記ボルト穴31aは、構造物固定部31を構成する他側プレート部34および定着用プレート35の両方を貫通して形成されている。
【0020】
構造物固定部31は、前記定着用プレート35を構造物1に向けてアンカーボルト36に挿入、固定されるから、構造物1に固定された治具受け具30の治具取付部33は、構造物固定部31を介して構造物1に対する逆側、すなわち、構造物1から突出状態となる。また、ナット37を締め付けると、構造物固定部31の定着用プレート35が構造物1内面に圧接されて、この定着用プレート35から突設されている爪35aが構造物1に食い込むため、これによりアンカーボルト36を中心とする治具受け具30の回転が防止され、治具受け具30をアンカーボルト36回りの所望の向きで確実に固定でき、しかも、固定後もアンカーボルト36回りの回転方向の位置ずれが防止される。
【0021】
図7は、光ファイバ固定治具40を示す図であって、(a)は該光ファイバ固定治具40を構成する1対の治具本体41を分離した状態、(b)は1対の治具本体41を一体化して光ファイバ2を挟み込んで固定した状態を示す。
図7(a)、(b)に示すように、光ファイバ固定治具40は、同様に形成された1対の治具本体41を一体化して光ファイバ2を挟み込んで固定する二つ割り構造になっている。この光ファイバ固定治具40では、図8(a)、(b)に示すように、各治具本体41にほぼ真っ直ぐに延在形成された光ファイバ収納溝42同士を一体化してなる光ファイバ収納穴50内に光ファイバ2を直線状に引き通し状態に収納し、この光ファイバ2を両治具本体41間に挟み込んで固定するようになっており、固定後も、光ファイバ2を真っ直ぐに引き通された状態に維持するようになっている。
【0022】
図8(a)〜(d)は、治具本体41を示す。
治具本体41は、プラスチック等の合成樹脂から形成されており、2つを一体化することで、スリーブ状の光ファイバ固定治具40を構成する。
図8(a)〜(d)において、治具本体41の一体化される相手側の治具本体41に臨む合わせ面41f側には、前記光ファイバ収納溝42が貫通形成されている。この光ファイバ収納溝42は、治具本体41の円弧板状の外壁部41aの内側に互いに平行として多数(例えば5以上)配列状態に設けられたリブ状の把持突起43をそれぞれ貫通して形成されたものである。前記把持突起43は治具本体41内に隙間44を介して互いに平行に連設されており、前記光ファイバ収納溝42は、これらリブ状の把持突起43を面方向に垂直の方向、すなわち厚さ方向に貫通しており、前記把持突起43は前記光ファイバ収納溝42に沿って複数連設状態になっている。1対の治具本体41を一体化すると、両治具本体41の把持突起43同士が一致されて、前記光ファイバ収納穴50に収納された光ファイバ2が両側から把持突起43によって挟み込まれて固定される。これにより、光ファイバ2は、引き通し状態のまま、多数対の把持突起43の対によって、いずれの方向にも移動しないように把持固定され、長手方向への滑り移動等も確実に防止される。
【0023】
図9は、把持突起43近傍を示す図であって、(a)は、図8(a)のA−A線断面矢視図、(b)は図9(a)のB−B線断面矢視図である。
図9(a)に示すように、治具本体41同士を一体化すると、各治具本体41の把持突起43同士が光ファイバ収納溝42部分を除いて突き合わせ状態となり、両側の把持突起43に形成された光ファイバ収納溝42が一致され、一体化されて光ファイバ収納穴50が形成され、この光ファイバ収納穴50内に収納された光ファイバ2が両側の把持突起43間に挟み込まれる。図9(b)に示すように、把持突起43に形成された光ファイバ収納溝42の内面には、光ファイバ収納溝42の延在方向に垂直に延びる細かい突条43aが複数本形成されているから、これにより、特に光ファイバ2の長手方向への移動を防止する引き留め力が充分に確保される。
【0024】
図9(a)に示すように、治具本体41同士は、各治具本体41の合わせ面41f側に突設されている係合爪45を相手側の治具本体41の係合受け部46に嵌め込むようにして係合することで、一体化状態が維持される。また、図8(a)、(b)に示すように、各治具本体41の合わせ面41f側には、該合わせ面41f上に突出された突起47と、この突起47が挿入嵌合される穴48とが設けられており、前記突起47を相手側の治具本体41の穴48に挿入嵌合することで、治具本体41同士を所定位置に位置ずれを生じること無く一体化でき、一体化後の位置ずれも防止できるようになっている。
【0025】
図7(b)に示すように、治具本体41同士を一体化して光ファイバ固定治具40を構成すると、治具本体41の前記光ファイバ収納溝42の延在方向端部に位置する両端部(スリーブ状の光ファイバ固定治具40の軸方向両端部。以下「軸方向両端部」)に設けられた端部壁41b、41c同士が突き合わされる。
図8(c)、(d)に示すように、前記光ファイバ収納溝42は、この端部壁41b、41c、並びに、治具本体41の一方の端部壁41bから該治具本体41の軸方向に沿って外側に突出された突部41dにも貫通されている。端部壁41b並びに突部41dには、前記光ファイバ収納溝42を拡張した形状の拡張型開口部42aが形成されている。一方、治具本体41の軸方向他方の端部壁41cには、別の治具本体41の端部壁41bの突部41dが嵌合される嵌合穴41eが開口されている。この嵌合穴41dは、光ファイバ収納溝42と連続されており、光ファイバ収納溝42の拡張型開口部を形成する。治具本体41同士を一体化すると、図10に示すように、端部壁41b、41cの拡張型開口部42aと嵌合穴41eとによって、光ファイバ2(光ファイバケーブル)を移動や湾曲を許容して収納する拡張型開口部51が軸方向両側に形成される。
【0026】
図7(b)に示すように、光ファイバ固定治具40の軸方向両端部には、光ファイバ固定治具40間の連結用の連結部49である嵌合壁部が設けられている。具体的には、図8(a)〜(c)に示すように、治具本体41の端部壁41bの突部41dは、端部壁41bの、相手側の治具本体41の端部壁41cと突き合わされる合わせ面41f近傍から、治具本体41軸方向に沿って突出されており、前記連結部49は、前記突部41dの端部壁41bからの突出方向先端から、光ファイバ収納溝42の延在方向に垂直な断面方向外側に向けてフランジ状に突出(但し、相手側の治具本体41に対する合わせ面41f側には突出させない)された突壁である。この連結部49である嵌合壁部は、端部壁41bや把持突起43と平行なリブ状の突壁であり、前記端部壁41bとの間には、スリット状の隙間49aが確保されている。
図7(b)に示すように、一対の治具本体41を一体化して光ファイバ固定治具40を組み立てると、各治具本体41の端部の連結部49が光ファイバ固定治具40の軸方向両端部にそれぞれ位置される。
【0027】
図11(a)、(b)に示すように、光ファイバ固定治具40は、前記連結部49を利用することで、前記光ファイバ収納穴50が一直線上に直列に配列されるようにして、複数直列に連結できるようになっている。
すなわち、光ファイバ固定治具40を直列に配列し、隣接する相手側の光ファイバ固定治具40の連結部49(嵌合壁部)を、端部壁41cとこの端部壁41cに隣り合う把持突起43との間に把持突起43同士間と同様に確保された隙間44に嵌合し、隣接する相手側の光ファイバ固定治具40の治具本体41の端部壁41cを、連結部49と端部壁41bとの間の隙間49aに嵌合することで、光ファイバ固定治具40同士を直列に連結することができる。端部壁41cの嵌合穴41eには連結する相手側の光ファイバ固定治具40の端部壁41bから突接されている突部41dが嵌合される。
【0028】
連結部49(嵌合壁部)と隙間44との嵌合、端部壁41cと隙間49aとの嵌合は、いずれも、連結する各光ファイバ固定治具40の、治具本体41の一体化による組み立て作業中に行われる。すなわち、連結する各光ファイバ固定治具40を構成する治具本体41の連結部49(嵌合壁部)と隙間44、端部壁41cと隙間49aをそれぞれ位置決めしてから、治具本体41同士の一体化により各光ファイバ固定治具40を組み立てることで、連結部49(嵌合壁部)と隙間44との嵌合、端部壁41cと隙間49aとの嵌合も同時に行うことができる。複数の光ファイバ固定治具40を連結作業は、各光ファイバ固定治具40を組み立てる作業と大差無く、特別な作業を必要としないので、連結作業は極めて簡単に効率良く行うことができる。
【0029】
図1、図2、図3に示すように、光ファイバセンサ10、20は、構造部1の複数箇所に固定した治具受け具30に前記光ファイバ固定治具40をそれぞれ固定し、光ファイバ固定治具40間に光ファイバ2を張設して組み立てられる。各光ファイバ固定治具40では、1対の治具本体41を一体化するという、極めて簡単な作業によって光ファイバ2を固定できる。この光ファイバ固定治具40を組み立てると、多数対の把持突起43によって光ファイバ2がしっかりと固定され、長手方向の移動等が確実に防止されるので、構造物1の変形等の外部的な影響を受けない限り、光ファイバ固定治具40間での光ファイバ2の張設状態は安定に維持される。
【0030】
治具受け具30に光ファイバ固定治具40を固定するには、光ファイバ2に光ファイバ固定治具40を組み立てて光ファイバ2を把持固定し、光ファイバ2を前記治具受け具30の治具取付部33に形成されたスリット38(図4(a)、(c)参照)を介して治具収納穴32に挿入し、次いで、光ファイバ固定治具40を前記治具収納穴32に挿入する。そして、前記治具収納穴32に挿入された前記光ファイバ固定治具40の外周面(具体的には、円弧板状の外壁部41aの湾曲された外面)の全体にわたって該光ファイバ固定治具40の中心軸回りにネジ溝が螺刻されてなるナット螺着部52に、前記治具取付部33の両側に突出された両端からそれぞれ螺着したナット53を、前記治具取付部33を挟み込むようにして締結することで、前記光ファイバ固定治具40を前記治具受け具30に固定する。この固定を完了すると、両側のナット53の締結力により、治具収納穴32内での回転やぐらつき等を生じることなく、光ファイバ収納穴50を構造物1の延在方向にほぼ沿わせた向きで光ファイバ固定治具40が安定に固定される。
なお、治具取付部33は、構造物1から突出状態になっており、前記光ファイバ固定治具40は、前記治具取付部33の構造物1からの突出方向に垂直の方向に貫通された治具収納穴32に挿入されるようになっているから、これにより、光ファイバ固定治具40は、光ファイバ収納穴50を構造物1の延在方向にほぼ沿わせた向きで治具取付部33に固定されるようになっている。
【0031】
図12(a)、(b)に示すように、ナット53は、ヒンジ部53aを介して回転自在に連結した1対のナット半体53b、53cを一体化することで、外観6角ナットとほぼ同様に組み立てられる二つ割り構造になっている。一方のナット半体53bの他方のナット半体53cとの合わせ面に突設されている係合爪53dを、他方のナット半体53cの側部の係合受け部53eに係合することで、ナット半体53b、53c同士が一体化され、ナット53の組み立て状態(外観6角ナットとほぼ同様の状態)が維持される。
このナット53は、1対のナット半体53b、53cを開いた状態で、ネジ穴53fに光ファイバ2を収納した後、外観6角ナットとほぼ同様に組み立てることで、光ファイバ2を挟み込んで固定した光ファイバ固定治具40のナット螺着部52に対する螺着を、外観6角ナットと同様の回転操作によって実現できる。また、光ファイバ2を挟み込んで固定した光ファイバ固定治具40のナット螺着部52に対して片側からのみナット53を螺着した後、このナット53付きの光ファイバ固定治具40を治具受け具30の治具収納穴32に挿入し、両側からのナット53の締結により固定作業を行うようにすると、ナット53によって、光ファイバ固定治具40を構成する治具本体41同士の一体化状態が拘束され、固定作業の完了まで、一体化状態を安定に維持できるといった利点がある。
【0032】
図1、図2において、光ファイバセンサ10、20では、隣り合う1対の光ファイバ固定治具40間に張設された光ファイバ2に、初期歪みとして長手方向の伸び歪みを与えている。前記伸び歪みは、治具受け具30の治具取付部33を両側から挟み込む1対のナット53(図3参照)の、光ファイバ固定治具40のナット螺着部52に対する螺着位置を、光ファイバ固定治具40の軸方向に変更、調整して、隣り合う1対の光ファイバ固定治具40間に張設される光ファイバ2の長さを調整することで、容易に調整することができる。
【0033】
ところで、光ファイバ2の長手方向に隣り合う1対の光ファイバ固定治具40間では、各光ファイバ固定治具40の光ファイバ収納穴50が同一直線上に位置するとは限らない。例えば、図1に示す光ファイバセンサ10では、各光ファイバ固定治具40の光ファイバ収納穴50は、構造物1の周方向内面である湾曲面の接線方向に向けられており、光ファイバ固定治具40毎に前記光ファイバ収納穴50の向きが異なるため、隣り合う光ファイバ固定治具40間でも、光ファイバ収納穴50の向きが異なる。
この光ファイバ固定治具40では、光ファイバ収納穴50の延在方向両端部に、該光ファイバ収納穴50を拡張した形状の拡張型開口部51をそれぞれ備えているから、この拡張型開口部51の範囲で光ファイバ2の引き出し方向を調整することが可能である。光ファイバ固定治具40からの光ファイバ2の引き出し方向は、必ずしも、光ファイバ収納穴50の延長上でなくても良く、光ファイバ収納穴50に対して傾斜されていても良い。これにより、光ファイバ2を張設する1対の光ファイバ固定治具40が同一直線上に無くても、長手方向の歪み分布に影響を与えること無く光ファイバ2を張設でき、光ファイバセンサ10、20を構成する光ファイバ固定治具40の構造物1に対する設置位置の自由度が向上するといった利点がある。
【0034】
光ファイバセンサ10、20に適用される光ファイバケーブル2としては、例えば、中実構造の光ファイバケーブル(光ファイバケーブルの外皮を形成する樹脂内に歪み検出用の光ファイバ(光ファイバ心線等)を埋め込んだ構造のもの等、固定用の側圧が内部の光ファイバに伝達される構造のもの)が採用される。
図13(a)、(b)は、光ファイバケーブル2の断面構造の一例を示す。なお、説明の便宜上、図13(a)の断面構造の光ファイバケーブル2に符合2A、図13(b)の断面構造の光ファイバケーブル2に符合2Bを付して説明する。
【0035】
図13(a)、(b)に示す光ファイバケーブル2A、2Bは、いずれも、歪み検出用の内部光ファイバ4(多心光ファイバテープ心線)を収納する断面扁平の光ファイバ収納部5と、この光ファイバ収納部5の断面長手方向両側を膨出させた形状の抗張力体収納部6、6aとを備え、全体としても断面扁平に形成されている。テープ状の光ファイバ4は、断面長手方向を光ファイバ収納部5の断面長手方向と一致させて、該光ファイバ収納部5のほぼ中央部に埋設、保護されている。
なお、光ファイバケーブル2の断面形状に対応して、光ファイバ固定治具40を構成する各治具本体41の光ファイバ収納溝42の断面形状、光ファイバ固定治具40の光ファイバ収納穴50の断面形状も、光ファイバケーブル2内部の歪み検出用の内部光ファイバ4に応力集中等を与えること無く、光ファイバケーブル2を挟み込みにより固定できる形状に変更することは言うまでも無い。
【0036】
図13(a)に示す光ファイバケーブル2Aは、抗張力体収納部6に抗張力体としてテンションメンバ7(鋼線)を収納しており、図13(b)に示す光ファイバケーブル2Bは、抗張力体収納部6aに抗張力体として温度補償用光ファイバ心線8を収納している。温度補償用光ファイバ心線8は、ステンレス等からなる保護管8a内に光ファイバ8b(温度補償用光ファイバ。光ファイバ心線等)をルースに収納したものであり、前記保護管8aが抗張力体として機能する。
これら断面構造の光ファイバケーブル2A、2Bでは、光ファイバ収納部5の両側に抗張力体7、8aを収納した抗張力体収納部6、6aが対向配置されているため、扁平断面の長手方向へは曲がり難く、構造物1の変形を歪み検出用の内部光ファイバ4の長手方向に効率良く作用させ、長手方向の歪み量の変化を与えるようになっている。また、多心光ファイバテープ心線である断面扁平の光ファイバ4も、光ファイバケーブル2A、2Bと、断面長手方向が揃えられているため、この断面長手方向への曲げが与えられにくいといった特性がある。
【0037】
光ファイバケーブル2A、2Bとしては、適宜寸法の変更が可能であるが、厚さ寸法t(最大厚さ。光ファイバケーブル2A、2Bでは、抗張力体収納部6、6aの厚さ寸法)が一定に揃えられていれば、光ファイバ固定治具40での把持固定が可能であり、幅寸法wについては、光ファイバ固定治具40に溝状に形成された光ファイバ収納穴50に収納可能な任意寸法を採用できる。光ファイバ固定治具40での把持固定される適切な厚さ寸法tが確保されている光ファイバケーブル2A、2Bであれば、同一の光ファイバ固定治具40を共用できる。
また、光ファイバ収納部5の断面方向両側を膨出させた形状の抗張力体収納部6、6aを備えた断面形状の光ファイバケーブルであれば、光ファイバ固定治具40の把持力を抗張力体収納部6、6aが主に負担することで、把持固定時の光ファイバ収納部5への応力集中を確実に防止できるといった利点もある。このことは、光ファイバ固定治具40での把持固定される適切な厚さ寸法tを有する光ファイバケーブル2A、2Bに共通である。
【0038】
歪み検出用の内部光ファイバ4として、多心光ファイバテープ心線を採用したことにより、この光ファイバ4内の複数本の光ファイバ4a(裸ファイバ、光ファイバ素線等。図13(a)、(b)では4本)のいずれかが損傷を受けるなどによりセンシング不能となっても、他の光ファイバ4aを歪み検出用の光ファイバとして用いることができるから、光ファイバケーブル2A、2Bの寿命を延長でき、長期にわたって使用できる。また、前述のように、光ファイバケーブル2A、2B、光ファイバ4の断面長手方向に曲げが与えられにくい特性により、多心光ファイバテープ心線4を構成するいずれの光ファイバ4aにも、構造物1の変形に対する長手方向の歪み特性が同様に得られることから、歪み検出に使用する光ファイバ4aを変更しても、変更前と全く同様に長手方向の歪み特性が得られ、測定条件の変更が殆ど不要である。
また、光ファイバケーブル2A、2Bに初期歪みとして長手方向の伸び歪みを与えておくと、内部光ファイバ4内の複数本の各光ファイバ4aの初期歪み分布のばらつきを抑え、均等化できるから、これによっても、各光ファイバ4aに同様の長手方向の歪み特性が得られる。
【0039】
図14は、光ファイバセンサ10、20を用いて構成した変形監視システム60の一例を示す図であって、1つのとう道である構造物1(以下「とう道1」と言う場合がある)内の内面周方向に沿って設けられた光ファイバセンサ10と、構造物1の内面軸方向に沿って設けられた光ファイバセンサ20とを、同一の光ファイバ2によって構成し、該光ファイバ2の一端を、構造物1とは別の安全な場所に設けられた観測所61に設置された光パルス試験器62(BOTDR)に接続したものである。
光ファイバセンサ10は、とう道1の内面軸方向の複数箇所にて内面周方向に沿って組み立てられており、隣り合う光ファイバセンサ10間には、光ファイバ2を渡すようにして配線した渡り配線部2aが形成されている。光ファイバ2は、とう道1の軸方向一端の観測所61側からとう道1内に引き込まれて、光ファイバセンサ10と渡り配線部2aとを構成して、とう道1の軸方向他端に到達され、そこから折り返されて、とう道1の軸方向一端まで直線状に延在する光ファイバセンサ20を構成している。光ファイバ2の光パルス試験器62側とは逆側の他端2bには無反射端処理が施されている。
【0040】
この光ファイバセンサ10、20では、構造物1に光ファイバ固定治具40が一体的に固定されており、構造物1が変形すると、光ファイバ固定治具40も構造物1と一体的に変位する。そして、構造物1の変形に伴って隣り合う光ファイバ固定治具40間が離間したり接近したりすると、光ファイバ固定治具40間に張設されている光ファイバ2の長手方向の歪み量が変動することになる。光ファイバ固定治具40間の離間あるいは接近とは、例えばコンクリート壁等の構造物1の伸びや圧縮等の光ファイバ2の布設方向に沿った方向への構造物1の変形に起因するものに限定されず、例えば、前記コンクリート壁等の構造物の膨れや陥没等といった、光ファイバ2の布設方向に垂直な方向への構造物1の変形に起因するものも含まれる。
【0041】
光ファイバ4の長手方向端部に接続した光パルス試験器62(図14中、BOTDR)から光ファイバ2に入射した試験光(光ファイバケーブルや光ファイバコードの場合は、外皮内に収納された光ファイバ心線等の光ファイバへの入射)の後方散乱光の1つであるブリルアン散乱光を観測することで、構造物1の変形発生を監視できる。
構造物1に変形が生じていなければ、光パルス試験器62にて観測されるブリルアン散乱光の周波数シフト量が、各光ファイバセンサ10、20の光ファイバ固定治具40間に張設された光ファイバ2に初期歪みとして与えられた長手方向の伸び歪みに対応する値になっているが、ブリルアン散乱光の周波数シフト量の変動が観測されたなら、光ファイバ2に長手方向の歪み量の変化が生じたことを検出しており、構造物1の歪み発生(変形)を検出している。
【0042】
この変形監視システム60によれば、とう道の周方向の変形を光ファイバセンサ10によって監視し、軸方向の変形を光ファイバセンサ20によって監視するから、単なるポイント監視と異なり、構造物1全体の変形を効率良く監視できる。しかも、構造物1の延在方向(とう道の軸方向)の同じ位置の両光ファイバセンサ10、20の観測データを対応させて変形を監視できるので、変形状態(変形方向、変形範囲等)を具体的に把握できる。さらに、両光ファイバセンサ10、20を一本の光ファイバ2に組み立てたことにより、光ファイバ2に対する1回の光試験により、これら光ファイバセンサ10、20の設置位置の構造物1の変形を監視できるので、少ない光試験回数で構造物1の変形をより迅速に把握でき、例えば、構造物1の崩壊による災害発生の防止に役立てることができる。
【0043】
図1、図2に示すように、光ファイバセンサ10、20では、隣り合う一対の光ファイバ固定治具40間に張設されている光ファイバ2の区間11、21単位で、構造物1の歪み発生を検出、監視することができる。また、光ファイバ2への光の入射からブリルアン散乱光の受光までの時間(以下「戻り時間」)に基づいて、長手方向の歪み量の変化を生じた光ファイバ2の位置(以下「異常発生位置」と言う場合がある。光パルス試験器62からの距離)を計測できるから、これによって、構造物1の歪み発生位置を光ファイバ2の区間11、21単位で把握できる。
【0044】
光ファイバセンサ10、20では、光ファイバ2を直線状に引き通した状態に固定する構成の光ファイバ固定治具40を採用しているため、固定のための光ファイバ2の条長は光ファイバ固定治具40内での収納長のみであり、別途、固定用の条長を必要としないから、入射光の戻り時間に基づく光ファイバ2の異常発生位置を正確に把握でき、位置データの補正も、簡単なもので済むといった利点がある。
【0045】
また、光ファイバ2自体がデータ収集用の信号線として機能するため、別途、データ収集用の信号線の布設が不要であるから、光ファイバセンサ10、20は簡単に組み立てることができ、低コスト化も容易である。
【0046】
この光ファイバセンサ10、20では、各光ファイバ固定治具40にて光ファイバ2をしっかりと固定できるので、区間11、21を形成する一対の光ファイバ固定治具40間に張設した光ファイバ2に初期歪みとして与えた長手方向の伸び歪みをを安定に維持できるとともに、特に光ファイバ固定治具40間の離間方向への変位が生じたときに、光ファイバ固定治具40に対する引き抜き方向への光ファイバ2の移動、位置ずれを生じさせること無く、光ファイバ固定治具40間の離間距離の変動を光ファイバ2に長手方向の伸び歪みの増大として確実に伝達させることができ、構造物1の歪の発生の検出精度を向上できる。
【0047】
光ファイバ固定治具40は、多数の把持突起43によって光ファイバ2を把持固定する構成であり、固定用の強力な側圧を作用させることなく光ファイバ2を確実に固定できるから、したがって、局所的な把持固定力の集中によって光ファイバ2の光特性に悪影響を与えるといった不都合を回避できる。結果、ブリルアン散乱光の観測ノイズを減少させることができるから、これによっても、構造物1の変形の検出精度を向上できる。
また、この光ファイバ固定治具40は、同じ治具本体41である2部品の一体化によって極めて簡単に組み立てることができる。これにより、光ファイバセンサ10、20全体の組み立て作業性をも向上できる。また、2つの治具本体41のみによって構成されているので、低コスト化できるといった利点がある。
【0048】
この光ファイバ固定治具40を、例えば、図13(a)、(b)に示したような中実構造の光ファイバケーブルの固定に適用すると、光ファイバ収納穴50に収納された光ファイバケーブルの固定長全体にわたって固定力が作用することで、内部の歪み検出用の内部光ファイバをも移動しないように確実に固定することができる。歪み検出用の内部光ファイバを固定する固定力は、光ファイバケーブルの固定長全体にわたって作用するので、局所的な固定力の集中を生じさせること無く歪み検出用光ファイバを固定でき、光ファイバの光特性に悪影響を与えずに、確実な固定を実現できる。
採用可能な中実構造の光ファイバケーブルとしては、図13(a)、(b)に示した断面構造のものに限定されず、例えば、歪み検出用の内部光ファイバを複数本収納したもの、ケブラ等からなる抗張力体を内蔵したもの等、各種構成が採用可能である。
【0049】
さらに、図11(a)、(b)に示すように、前記光ファイバ固定治具40は、直列に複数連結することで、光ファイバ2の長手方向の移動を引き留める引留耐力を適宜向上できるといった利点がある。図11(a)、(b)に例示した連結構造であれば、連結部49である嵌合壁部は、治具本体41内部の把持突起43とほぼ同様に機能し、連結部49と端部壁41bとの間の隙間49aは治具本体41内部の把持突起43間の隙間44と同様に機能するため、連結された複数の光ファイバ固定治具40では、その連結位置を含めて一様な光ファイバ2の固定状態が得られ、光ファイバ2内部の歪み検出用の内部光ファイバに与える影響が無い。
なお、光ファイバ固定治具40を複数連結して用いても、治具受け具30に固定する光ファイバ固定治具40はその内の1つで良い。
【0050】
ところで、ブリルアン散乱光の入射光に対する周波数のシフト量は、光ファイバが無歪みの場合でも、約1MHz/℃程度の温度依存性を有するため、数十℃にわたる大きい温度変化が生じる場合には計測データを補正する必要がある。光ファイバは、布設場所の状況や環境、例えば日照や火山地帯の地熱等により、常温よりも数十℃、あるいはそれ以上高い温度に加熱される可能性があるから、より精度の高い監視を行うにはブリルアン散乱光の計測データの温度補償が不可欠である。
【0051】
図13(b)に示す光ファイバケーブル2Bでは、このことを考慮して、伸び歪みが与えられる歪み検出用の内部光ファイバ4とは別に、両側の各抗張力体収納部6a内に温度補償用光ファイバ心線8を埋設している。
温度補償用光ファイバ心線8は、ステンレス等からなる保護管8a内に光ファイバ8b(温度補償用光ファイバ)をルースに収納したものであるから、歪み検出用の内部光ファイバ4に伸び歪みが与えられても、温度補償用光ファイバ8bには伸び歪みは作用せず、無歪み状態を維持でき、この温度補償用光ファイバ8bの光特性に何等影響を与えないようになっている。初期歪みを与えた内部光ファイバ4に伸縮歪が与えられても、温度補償用光ファイバ8bの光特性に何等影響しないことは言うまでも無い。
【0052】
つまり、長手方向の歪みが与えられない温度補償用光ファイバ8bの光試験データは、温度変化の影響のみを反映するから、この温度補償用光ファイバ8bの光試験データを利用することで、歪み検出用の内部光ファイバ4の光試験データを補正することができる。温度補償用光ファイバ8bの光試験データから、ブリルアン散乱光の入射光に対する周波数の温度変化によるシフト量を把握できるから、この把握された周波数のシフト量を、内部光ファイバ4の光試験によって観測されたブリルアン散乱光の周波数のシフト量から差し引くことで(初期歪み分の周波数シフト量も考慮する)、内部光ファイバ4の伸縮歪に起因するブリルアン散乱光の周波数のシフト量を把握できる。
【0053】
また、光ファイバ2の前記光パルス試験器62側から遠い側の端部にて、歪み検出用の内部光ファイバ4と温度補償用の光ファイバ8bとを接続してループ状にし、光ファイバ4、8bの一方からの試験光の入射により両光ファイバ4、8bを光試験し、ブリルアン散乱光を観測することによっても、計測データの温度補償が可能である。この場合、光ファイバ4の光試験結果からは前記初期歪みによるブリルアン散乱光のデータが得られるのに対し、温度補償用の光ファイバ8bの光試験結果からはブリルアン散乱光の検出データが殆ど得られないことから、これにより1回の光試験により得られた計測データから各光ファイバ4、8bの計測データを判別して個別に把握することが可能である。そして、前述と同様に、温度補償用光ファイバ8bの光試験データから把握されたブリルアン散乱光の入射光に対する周波数の温度変化によるシフト量を、内部光ファイバ4の光試験によって観測されたブリルアン散乱光の周波数のシフト量から差し引くことで、内部光ファイバ4の伸縮歪に起因するブリルアン散乱光の周波数のシフト量を把握できる。この温度補償方法によれば、1回の光試験によって、歪み検出用の光ファイバ4と温度補償用の光ファイバ8bの両光ファイバ4、8bを光試験できるから、例えば、複数箇所の光ファイバセンサの光ファイバをそれぞれ光パルス試験器に対して切替接続しつつ歪み発生の有無を監視する場合では、光パルス試験器に対する光ファイバの切替接続回数を減少でき、監視作業の単純化、各光ファイバセンサの光ファイバの光試験間隔(時間)の短縮等を実現できる。
【0054】
計測データの温度補償方法としては、前述のものに限定されず、例えば、温度補償用光ファイバ8bへの入射光のラマン散乱光の後方散乱光を光パルス試験器にて受光観測したデータから、ブリルアン散乱光の計測データを補正する手法も採用可能である。
なお、温度補償用光ファイバ8bは、無歪み状態を維持する必要があるため、例えば、光ファイバ2の途中の適宜箇所に設置した成端箱内等に、温度補償用光ファイバ8bの余長を確保しておき、光ファイバ2に伸び歪みが与えられたときには、ブリルアン散乱光検出用の内部光ファイバ4には伸び歪みが与えられる一方、温度補償用光ファイバ8bは前記余長が光ファイバ8(詳細には保護管8a)内に引き込まれることで無歪み状態が維持される構成等が採用可能である。
【0055】
なお、光パルス試験器62から光ファイバ2に試験光を入射した時に、フレネル反射光が検出されたならば、光ファイバ2内の歪み検出用の光ファイバの破断や接続不良等の断線を検出している。この場合、試験光の入射からフレネル反射光の受光までの経過時間によって光ファイバの断線位置を概略特定できるので、例えば工事等によって誤って切断された光ファイバの切断箇所を容易に発見でき、補修作業時間等を短縮できる。
このように、この変形検出システム60によれば、随時、光パルス試験器62による光ファイバ2の光試験を行うことで、光伝送系に係る故障の監視をも行うことができる。
【0056】
作業員や動物の接触等により、光ファイバ2に初期歪みとして与えられていた長手方向の伸び歪みが減少してしまった場合は、光ファイバ固定治具40のナット螺着部52に螺着されているナット53を回転して該光ファイバ固定治具40の軸方向に移動して、治具受け具30に対する光ファイバ固定治具40の固定位置を変更することで、所望の初期歪みを簡単に回復できる。これにより、光ファイバセンサ10、20の故障を簡単に復旧できる。また、1度、構造物1の変形を検出した光ファイバセンサ10、20でも、光ファイバ2が破断されず光特性に異常がなければ、同様の操作によって光ファイバ2の初期歪みを回復することで、再度、構造物1の変形検出に用いることができる。
【0057】
本発明に係る光ファイバ固定治具の具体的構成は、前記実施の形態に限定されず、適宜設計変更可能であることは言うまでも無い。
本発明に係る光ファイバ固定治具の固定対象の構造物としては、前記断面円形のとう道に限定されず、ビル等の建物の壁や床、橋梁、ダム等の各種コンクリート製堤体など、各種構造物が採用可能である。
光ファイバ固定治具を構造物に固定する治具受け具の具体的構成等は、適宜変更可能である。また、光ファイバ固定治具を治具受け具に固定する固定構造も各種採用可能である。
光ファイバ固定治具の具体的構成は、前記実施の形態に例示したものに限定されず、各種採用可能である。例えば、異なる形状の2つの治具本体を一体化する構成等も採用可能であるが、低コスト化等の点では、同一構成の治具本体41同士を一体化する構成を採用することが有利である。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光ファイバセンサによれば、一対の治具本体に光ファイバを挟み込んで固定する構成の光ファイバ固定治具により、光ファイバの固定を極めて簡単に行うことができる。光ファイバ治具本体は、光ファイバを挟み込む一対の治具本体間にほぼ真っ直ぐに延在形成された光ファイバ収納穴に収納した光ファイバを、該光ファイバ収納穴に沿って複数連設された把持突起によって相手側の治具本体との間に挟み込む構成であるから、光ファイバには固定用の条長を別途確保する必要が無い。また、光ファイバ固定治具における収納長が固定用条長になるから、固定用条長は一定に安定する。したがって、光ファイバへの入射光の戻り光の戻り時間から異常発生個所(ブリルアン散乱光の観測により判明する光ファイバの長手方向の伸び歪みの変化した個所。あるいは、伸び歪み発生個所等。)の位置を特定する際に得られる位置データにおける前記固定用条長分の補正を単純化することができ、前記戻り光の戻り時間に基づく異常発生個所の計測精度の向上、異常発生個所の特定に掛かる時間の短縮、前記固定用条長分の補正を行うシステムの単純化等を実現できる。また、前記構成の光ファイバ固定治具の採用により、光ファイバを固定用の側圧の影響を与えること無く確実に固定できるので、構造物の変形を、光ファイバ固定治具間に張設された光ファイバの長手方向の歪み量の変化(初期歪みとしての伸び歪みが与えられていない場合は、伸び歪みの発生)として確実に作用させることができる。これにより、構造物の変形の検出精度を向上できる。さらに、光ファイバ自体がデータ収集用の信号線として機能するため、別途信号線の布設が不要である、電源を要しないので電源線の布設も不要である、光ファイバの長手方向の歪み量を光によって検出する構成であるため誘導電流の電磁波ノイズの影響を受けない、これらにより設置位置を自由に設定できるといった利点もある。
また、前記光ファイバ収納溝の延在方向一方または両方の端部に位置する前記光ファイバ固定治具の端部に設けられた連結部によって、治具本体同士の一体化により光ファイバが収納、固定される光ファイバ収納穴同士が直列に配列されるようにして光ファイバ固定治具同士を連結できるから、光ファイバの固定力の調整が容易になるといった優れた効果を奏する。
【0059】
請求項2記載の発明によれば、1対の光ファイバ固定治具間に張設された光ファイバに、初期歪みとして長手方向の伸び歪みが与えられているから、初期歪みとしての長手方向の伸び歪みの増加として観測される構造物の変形のみならず、前記伸び歪みの減少として観測される構造物の変形をも検出することができるから、一本の光ファイバによって、構造物の様々な変形現象に対応して、これを検出できる。また、光ファイバに初期歪みとして伸び歪みを与えることで、光ファイバの長手方向の歪み分布の均等化を図ることができ、光ファイバの長手方向での歪み分布のばらつきが解消されることで、構造物の変形の検出精度を向上できる。しかも、この歪み分布の均等化により、光ファイバのブリルアン散乱光を観測する際の誤差解消を目的として光試験を繰り返し行うといった必要が無くなり、光試験回数を減少できるから、これにより、構造物の変形をより迅速に検出することが可能になり、災害による被害発生の回避等に役立てることができる。
【0060】
請求項3記載の発明によれば、前記構造物に固定された治具受け具に対する前記光ファイバ固定治具の固定位置が、治具本体同士の一体化により光ファイバが収納、固定される光ファイバ収納穴の延在方向に沿った方向に調整可能になっているから、光ファイバに初期歪みとして与えた長手方向の伸び歪みの調整、維持、誤作動後の復旧、メンテナンス等を容易に行うことができる。
また、請求項4記載のように、前記治具収納穴に挿入された前記光ファイバ固定治具の前記治具取付部の両側に突出された部分の外面に形成されているナット螺着部にそれぞれ螺着されたナットが前記治具取付部を挟み込むようにして締結されることで、前記光ファイバ固定治具が前記治具受け具に固定されるようになっている構成であれば、光ファイバ収納穴の延在方向に沿った方向への治具取付部に対する光ファイバ固定治具の固定位置の調整、変更等を、ナットの操作によって容易に行うことができる。また、少ない部品点数により、治具取付部に対する光ファイバ固定治具の固定位置の調整、変更を実現できため、低コスト化を図ることができる。
【0062】
請求項5記載の発明によれば、前記光ファイバ収納穴の延在方向一方または両方の端部に位置する光ファイバ固定治具の端部に、前記光ファイバ収納穴を拡張した形状の拡張型開口部が形成されているから、光ファイバ収納穴の延在方向に対して傾斜した向きで光ファイバを光ファイバ固定治具間に張設することが可能になり、構造物に対する光ファイバセンサの設置自由度を向上できるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る光ファイバセンサを示す図であって、とう道の内面周方向に沿った変形検出用の光ファイバセンサを示す正面図である。
【図2】 本発明に係る光ファイバセンサを示す図であって、とう道の内面軸方向に沿った変形検出用の光ファイバセンサを示す正面図である。
【図3】 本発明に係る光ファイバセンサに適用される治具受け具並びに光ファイバ固定治具の構造物に対する固定状態を示す正面図である。
【図4】 図3の治具受け具を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】 図3の治具受け具の構造物に対する固定手段を示す図であって、構造物に打ち込まれたアンカーボルト、ナットを示す。
【図6】 図3の治具受け具の構造物に対する固定状態を示す正面図である。
【図7】 本発明の光ファイバセンサに適用される光ファイバ固定治具を示す図であって、(a)は1対の治具本体を分離した状態を示す正面図、(b)は1対の治具本体を一体化して光ファイバを把持固定した状態を示す正面図である。
【図8】 本発明の光ファイバセンサに適用される光ファイバ固定治具を構成する治具本体を示す図であって、(a)は合わせ面側から見た平面図、(b)は正面図、(c)は(a)の左側の端面を示す側面図、(d)は(a)の右側の端面を示す側面図である。
【図9】 本発明の光ファイバセンサに適用される光ファイバ固定治具を構成する治具本体を示す図であって、(a)は図8(a)のA−A線断面矢視図、(b)は図9(a)のB矢視図である。
【図10】 本発明の光ファイバセンサに適用される光ファイバ固定治具の組み立て状態を示す正面図である。
【図11】 本発明の光ファイバセンサに適用される光ファイバ固定治具の連結状態を示す図であって、(a)は連結位置近傍を示す正面図、(b)は(a)の断面図である。
【図12】 本発明に係る光ファイバセンサに適用される治具受け具に光ファイバ固定治具を固定するナットの一例を示す図であって、(a)は正面図、(b)は、このナットの光ファイバ固定治具に対する螺着前の状態および螺着状態を示す側面図である。
【図13】 本発明の光ファイバセンサに適用される光ファイバケーブルの断面構造の一例を示す断面図であって、(a)は抗張力体としてテンションメンバが埋設された抗張力体収納部を光ファイバ収納部の両側に対向配置した構成の光ファイバケーブル、(b)は保護管内に光ファイバを収納した温度補償用光ファイバ心線を埋設して前記保護管を抗張力体として機能させた抗張力体収納部を光ファイバ収納部の両側に対向配置した構成の光ファイバケーブルを示す。
【図14】 本発明に係る光ファイバセンサを用いて組み立てられた変形監視システムの一例を示す全体斜視図である。
【図15】 中実構造の光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1…構造物、2…光ファイバ(光ファイバケーブル)、10,20…光ファイバセンサ、30…治具受け具、31…構造物固定部、32…治具収納穴、33…治具取付部、40…光ファイバ固定治具、41…治具本体、41f…合わせ面、42…光ファイバ収納溝、43…把持突起、49…連結部(嵌合壁部)、50…光ファイバ収納穴、51…拡張型開口部、52…ナット螺着部、53…ナット。
Claims (5)
- 構造物(1)の変形を光により検出する光ファイバセンサであって、
前記構造物に沿って布設された光ファイバ(2)の長手方向複数箇所を、構造物の異なる箇所に固定された光ファイバ固定治具(40)にそれぞれ固定して、この光ファイバをその長手方向に隣り合う前記光ファイバ固定治具間に張設してなり、
前記光ファイバ固定治具は、光ファイバを挟み込む1対の治具本体(41)を備え、
一方または両方の治具本体の相手側の治具本体に臨む合わせ面(41f)側に形成された光ファイバ収納溝(42)によって、両治具本体の間に前記光ファイバを収納する光ファイバ収納穴(50)がほぼ真っ直ぐに延在、貫通されるとともに、前記光ファイバ収納穴に収納された光ファイバを相手側の治具本体との間に挟み込む把持突起(43)が前記光ファイバ収納穴に沿って複数連設され、
前記光ファイバ収納溝の延在方向一方または両方の端部に位置する前記光ファイバ固定治具の端部に、前記光ファイバ収納穴同士が直列に配列されるようにして光ファイバ固定治具同士を連結する連結部(49)が設けられていることを特徴とする光ファイバセンサ(10、20)。 - 1対の光ファイバ固定治具間に張設された光ファイバに、初期歪みとして長手方向の伸び歪みが与えられていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバセンサ。
- 前記構造物に固定された治具受け具(30)に、1対の治具本体を一体化して前記光ファイバを把持固定した光ファイバ固定治具を固定することで、前記光ファイバ固定治具が前記治具受け具を介して前記構造物に対して固定されるように構成され、前記治具受け具に対する前記光ファイバ固定治具の固定位置が前記光ファイバ収納穴の延在方向に沿った方向に調整可能になっていることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバセンサ。
- 前記治具受け具は、前記構造物に固定される構造物固定部(31)と、前記光ファイバ固定治具を収納する治具収納穴(32)が貫通された治具取付部(33)とを備え、前記治具収納穴に挿入された前記光ファイバ固定治具の前記治具取付部の両側に突出された部分の外面に形成されているナット螺着部(52)にそれぞれ螺着されたナット(53)が前記治具取付部を挟み込むようにして締結されることで、前記光ファイバ固定治具が前記治具受け具に固定されるようになっていることを特徴とする請求項3記載の光ファイバセンサ。
- 前記光ファイバ収納溝の延在方向一方または両方の端部に位置する光ファイバ固定治具の端部に、前記光ファイバ収納穴を拡張した形状の拡張型開口部(51)が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
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