JP4243696B2 - エンコーダ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直線方向または回転方向その他の一自由度(一次元)方向における変位量(位置)を検出するためのエンコーダに関し、特に、磁気センサの出力電圧が温度変動した場合においても、磁性スケールの基準位置を認識することができるエンコーダに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンコーダは、直線方向または回転方向その他の一自由度方向における変位量を検出するためのものであり、例えば、図12に示す一従来例のエンコーダ90においては、被検出体(図示せず)の変位量を検出するための磁性スケール91(図13参照)と、その磁性スケール91との相対的な位置に応じた電圧を出力する磁気センサ92と、その磁気センサ92の出力電圧と第1の所定の電圧とを比較して矩形波の電圧を出力する電圧比較回路93とを備えている。
【0003】
磁性スケール91は、主として比透磁率の大きい材料(いわゆる強磁性体)から成り、ピッチP毎に、比透磁率の小さい材料から成る複数の非磁性部91aが配設されているものである。この複数の非磁性部91aは、略同一の深さに形成された複数の第1非磁性部91bと、その第1非磁性部91bと比較して深く形成された第2非磁性部91cとによって構成されている。
【0004】
磁気センサ92は、複数(本従来例においては、2個)の磁気抵抗素子(MR(Magnetic Resistance)素子)91aと、その磁気抵抗素子91aに磁束を与えるバイアス磁石91bとによって構成されている。この磁気センサ92は、磁性スケール91と磁気センサ92との相対速度に応じた周期の略正弦波が出力されるようにされている。
【0005】
磁気抵抗素子は、その磁気抵抗素子を通過する(よぎる)磁束密度の変化によって特性が大きく変動するものである。このため、2個の磁気抵抗素子91aは直列に接続されており、磁気センサは、この2つの磁気抵抗素子91aの抵抗値比に応じた電圧を出力するのである。
【0006】
上記のように構成されたエンコーダ90によれば、磁気センサ92によって、磁性スケール91との相対的な位置に応じた電圧が出力されると、電圧比較回路93によって、磁気センサ92の出力電圧94(図14参照)と所定の電圧95(図14参照)とが比較されて矩形波の電圧が出力される。ここで、前記したように、磁性スケール91に設けられた非磁性部91aには、第1非磁性部91bよりも深く形成された第2非磁性部91cが設けられている。このため、磁気センサ92の出力電圧94の値は、図14に示すように、第2非磁性部91cの近傍で大きくなる。エンコーダ90は、電圧比較回路93において磁気センサ92の出力電圧94と比較される所定の電圧95の値を適宜の値とすることにより、第2非磁性部91cの近傍のみにおいて、電圧比較回路93より、ハイレベルの電圧96が出力される。従って、エンコーダ90は、磁性スケール91の基準位置を認識することができるのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、磁気抵抗素子は、使用温度(使用中における磁気抵抗素子自体の温度)の変化によって大きく変動する特性を有するものである。このため、磁気センサ92の出力電圧94が温度変動をおこしてしまう。具体的に説明すれば、図15に示すように、低温時の場合には、磁気センサ92の出力電圧94の振幅が全体的に大きくなってしまい、一方、高温時の場合には、図16に示すように、磁気センサ92の出力電圧94がの振幅全体的に小さくなってしまうのである。従って、低温時の場合には、電圧比較回路93よりハイレベルの電圧96が複数出力されてしまうという問題点があり、高温時の場合には、電圧比較回路93によりハイレベルの電圧96が一つも出力されないという問題点があった。換言すれば、磁気センサ92の出力電圧94が温度変動してしまうと、磁性スケール91の基準位置を認識することができないという問題点があった。
【0008】
そこで、案出されたのが本発明であって、第1磁気センサの出力電圧が温度変動した場合においても、磁性スケールの基準位置を認識することができるエンコーダを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために請求項1記載のエンコーダは、磁束密度または透磁率の絶対値が基準位置に相当する部分のみにおいて大きく又は小さくされた磁性スケール(11)と、その磁性スケール(11)の磁束密度または透磁率の値に応じた電圧を出力する、磁気抵抗素子で形成された第1磁気センサ(2a)とを備えたエンコーダにおいて、
前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧に対して90度位相のずれた電圧(52)
を出力する、磁気抵抗素子で形成された第2磁気センサ(2b)と、
その第2磁気センサ(2b)の出力電圧(52)を第1の所定の電圧と比較して矩形波の電圧(53)を出力する第2電圧比較回路(4)と、
その第2電圧比較回路(4)の出力電圧(53)が立ち上がりの際における前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧(51)を前記立ち上がりの際から次の立ち上がりの際まで電圧(57)を出力するか、又は前記第2電圧比較回路(4)の出力電圧(53)が立ち下がりの際における前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧(51)を前記立ち下がりの際から次の立ち下がりの際まで電圧(57)を出力するかのいずれかである第2出力回路(6)と、
その第2出力回路(6)の出力電圧(57)に基づいて、前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとの差に応じた電圧(58)を出力する第3出力回路(7)と、第3出力回路(7)の出力電圧(58)と所定の電圧とを比較することで前記基準位置に対応する出力電圧(58)のみを出力する第3電圧比較回路(8)とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
この請求項1に記載のエンコーダによれば、第1磁気センサにより、磁性スケールの磁束密度または透磁率の値に応じた電圧が出力され、第2磁気センサにより、第1磁気センサの出力電圧に対して90度位相のずれた電圧が出力され、第1電圧比較回路により、第2磁気センサの出力電圧と第1の所定の電圧との差に応じた矩形波の電圧が出力され、第2出力回路により、その第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際または立ち下がりの際における第1磁気センサの出力電圧が出力される。そして、第3出力回路により、第2出力回路の出力電圧に基づいて、即ち、第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際または立ち下がりの際における第1磁気センサの出力電圧に基づいて、第1磁気センサの出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとの差に応じた電圧が出力される。
【0011】
ここで、かかる磁性スケールの磁束密度または透磁率の絶対値は部分的に大きく又は小さくされているので、第1磁気センサの出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとが異なる場合がある。そして、このように第1磁気センサの出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとが異なる場合には、第1磁気センサの出力電圧が温度変動したときにおいても、即ち、第1磁気センサの出力電圧の振幅が全体的に増減したときにおいても、かかる一の波形の大きさと別の波形の大きさとが異なる。このため、前記したように第3出力回路によって第1磁気センサの出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとの差に応じた電圧が出力されれば、第1磁気センサの出力電圧が温度変動した場合においても、磁性スケールの基準位置を認識することができなくなってしまうことが防止される。
【0012】
また、比較対象となる第1磁気センサの一の波形の位相と別の波形の位相とが互いに異なると、この一の波形の大きさと別の波形の大きさとの比較を正確に行うことが困難となってしまう。従って、前記したように第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際または立ち下がりの際における第1磁気センサの出力電圧に基づいた電圧が出力されることにより、比較対象となる第1磁気センサの一の波形の位相と別の波形の位相とが一致される
【0013】
請求項2記載のエンコーダは、請求項1記載のエンコーダにおいて、前記第2出力回路(6)は、第2電圧比較回路(4)の出力電圧(5)の立ち上がりの際に第1磁気センサ(2a)の出力電圧を記憶する第1記憶回路(6e)を備えており、該第2出力回路(6)は、前記第2電圧比較回路(4)の出力電圧(5)の立ち上がりの際に前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧(51)を出力する一方、前記立ち上がりの際以外の際に前記第1記憶回路(6e)に記憶された電圧を出力するようにされているか、または、
前記第2出力回路(6)は、第2電圧比較回路(4)の出力電圧(5)の立ち下がりの際に第1磁気センサ(2a)の出力電圧を記憶する第1記憶回路(6e)を備えており、該第2出力回路(6)は、前記第2電圧比較回路(4)の出力電圧(5)の立ち下がりの際に前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧(51)を出力する一方、前記立ち下がりの際以外の際に前記第1記憶回路(6e)に記憶された電圧を出力するようにされているかのいずれかであることを特徴とするものである。
【0014】
この請求項2記載のエンコーダによれば、請求項1記載のエンコーダと同様に作用する上、第2出力回路により、第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際または立ち下がりの際には、第1磁気センサの出力電圧が出力され、一方、第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際もしくは立ち下がりの際以外の際には、第1記憶回路に記憶された電圧が出力される。ここで、第1記憶回路への第1磁気センサの出力電圧の記憶は、第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際もしくは立ち下がりの際に行われる。即ち、第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際または立ち下がりの際以外の際における第2出力回路の出力電圧が、第1電圧比較回路の出力電圧が立ち上がる際または立ち下がる際における第2出力回路の出力電圧と、略(ほぼ)同一とされる。従って、第2出力回路の出力電圧の単位時間当たりの変位量を検出することにより、磁性スケールの基準位置が認識可能とされる
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、直線方向または回転方向その他の一自由度(一次元)方向における変位量(位置)を検出するためのエンコーダに関するものであり、従来のように磁気センサの出力電圧と所定の電圧とを比較することにより磁性スケールの基準位置(即ち、計測対象物の基準位置)を認識するものではなく、磁気センサ(「特許請求の範囲」の欄に記載の第1磁気センサを意味している。)の出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとの差に応じた電圧を出力することにより磁性スケールの基準位置を認識するものである。従って、本発明に係るエンコーダによれば、磁気センサの出力電圧が温度変動した場合にも、即ち、磁気センサの出力電圧の振幅が全体的に増減した場合にも、磁性スケールの基準位置を認識することができなくなってしまうことを防止することができるのである。以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例であるエンコーダ1のブロック図である。エンコーダ1には、主として、磁気センサ2と、第1電圧比較回路3と、第2電圧比較回路4と、エッジトリガ回路5と、サンプルアンドホールド回路6と、微分回路7と、第3電圧比較回路8と、磁性スケール11とが設けられている。
【0017】
磁気センサ2は、透磁率の大きさに応じた電圧を出力するためのセンサであり、第1磁気センサ2aと、第2磁気センサ2bと、バイアス磁石2c(図3参照)とを備えている。この第1磁気センサ2a又は第2磁気センサ2bによって出力される電圧(即ち、第1磁気センサ2aの出力電圧51、又は第2磁気センサ2bの出力電圧52(図4から図6を参照))は、磁性スケール(図2および図3参照)11との相対的な位置に応じて変化するようにされている。
【0018】
第1磁気センサ2aは、第1磁気抵抗素子2a1と、第2磁気抵抗素子2a2とを備えている。これら第1磁気抵抗素子2a1及び第2磁気抵抗素子2a2は、磁束密度の大きさ(磁場の強弱)を感知するための磁気抵抗素子(MR(Magnetic Resistance)素子)である。「従来の技術」の欄で説明したように、磁気抵抗素子は、使用温度の変化によって特性が大きく変動するものである。このため、第1磁気抵抗素子2a1の一端と第2磁気抵抗素子2a2の一端とは互いに接続されており、一方、第1磁気抵抗素子2a1の他端は電圧源に接続されており、第2磁気抵抗素子2a2の他端は接地されている。即ち、第1磁気抵抗素子2a1及び第2磁気抵抗素子2a2は、直列に接続されており、この第1磁気抵抗素子2a1及び第2磁気抵抗素子2a2には、直流電圧Vccが印可されている。そして、第1磁気センサ2aの出力端子aは、この第1磁気抵抗素子2a1と第2磁気抵抗素子2a2の間に設けられている。従って、第1磁気センサ2aは、第1磁気抵抗素子2a1と第2磁気抵抗素子2a2との抵抗値比に応じた電圧を出力するのである。
【0019】
一方、第2磁気センサ2bは、第1磁気センサ2aの出力電圧51に対して略(ほぼ)90度位相のずれた電圧を出力するものであり、第3磁気抵抗素子2a3と、第4磁気抵抗素子2a4とを備えている。これら第3磁気抵抗素子2a3及び第4磁気抵抗素子2a4も、第1磁気抵抗素子2a1及び第2磁気抵抗素子2a2と同様に、磁束密度の大きさ(磁場の強弱)を感知するための磁気抵抗素子(MR(Magnetic Resistance)素子)である。第2磁気センサ2bは、第1磁気センサ2aと同様に構成されている。具体的には、かかる第3磁気抵抗素子2a3及び第4磁気抵抗素子2a4は、直列に接続されており、この第3磁気抵抗素子2a3及び第4磁気抵抗素子2a4には、直流電圧Vccが印可されている。そして、第2磁気センサ2bの出力端子は、この第3磁気抵抗素子2a3と第4磁気抵抗素子2a4との間に設けられているのである。従って、第2磁気センサ2bは、第3磁気抵抗素子2a3と第4磁気抵抗素子2a4との抵抗値比に応じた電圧を出力するのである。
【0020】
図2は、磁性スケール11の斜視図である。磁性スケール11は、主として比透磁率が大きい材料(いわゆる強磁性体)から成るものであり、図2に示すように、略円柱状に形成されている。この磁性スケール11の側面には、比透磁率の小さい材料から成る複数の非磁性部12が配設されており、互いに隣り合う非磁性部12,12の間には、磁性部13が形成されている。
【0021】
図3は、磁気センサ2と磁性スケール11との位置関係を示した図である。図3に示すように、磁性スケール11の側面に配設された複数の非磁性部12は、ピッチP毎に配設されており、略同一の深さに形成された複数の第1非磁性部12aと、その第1非磁性部12aと比較して浅く形成された一つの第2非磁性部12bとによって構成されている。従って、磁気センサ2の出力電圧51,52が第2非磁性部12bの近傍のみにおいて異なるのである。即ち、磁性スケール11の基準位置を認識することができるのである。
【0022】
非磁性部12の幅Q及び磁性部13の幅Rは、ピッチPの略半分の長さにされている。これは、非磁性部12の幅Qと磁性部13の幅Rとが略同一の幅とされており、磁性部13も非磁性部12と同様にピッチP毎に配設されていることを意味する。このように磁性スケール11に形成された非磁性部12及び磁性部13は所定のピッチP毎に規則正しく配設されているので、第1磁気センサ2aの出力電圧51は略正弦波となるのである。第1磁気センサ2aの出力電圧51が略正弦波となる場合、第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅が最も大きくなる位相は、第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅が「0」となる位相に対して略90度位相のずれた位相である。ところで、前記したように、第2磁気センサ2bの出力電圧52は、第1磁気センサ2aの出力電圧51の位相に対して略90度位相がずれている。従って、第1磁気センサ2aの出力電圧51が略正弦波となる場合においては、第1磁気センサ2aの出力電圧51の一の波形の最大値と別の波形の最大値とを比較する位相を、それらの波形を比較する度に変更しなくとも、磁性スケール11の基準位置を認識する信頼性が損なわれてしまうことを防止することができるのである。
【0023】
一方、磁気センサ2は、磁性スケール11に相対する位置に配設されている。この磁気センサ2の背面側(即ち、磁気センサ2を基準とした場合における磁性スケール11側に対する反対側)に、バイアス磁石2cが配設されている。このバイアス磁石2cは、第1磁気センサ2a及び第2磁気センサ2bに磁束を与えるものである。このバイアス磁石2cから発生する磁束(磁力線)は比透磁率の大きい磁性部13の方へ集中するので、磁性部13の上方の磁束密度が高くなり、一方、非磁性部12の上方の磁束密度は低くなる。このため、磁気センサ2が磁性スケール11に沿って移動させられると、即ち、磁気センサ2と磁性スケール11との相対的な位置が変化すると、磁気センサ2は、正弦波の信号を出力するのである。この正弦波の信号の周期は、磁気センサ2と磁性スケール11との相対的な位置の変化が速ければ短くなり、磁気センサ2と磁性スケール11との相対的な位置の変化が遅ければ長くなる。
【0024】
図1に示す第1電圧比較回路3は、第1磁気センサ2aの出力電圧(即ち、出力端子aにおける電圧)51と第1の所定の電圧との差に応じた矩形波の電圧を出力する回路である。この第1電圧比較回路3は、第1可変抵抗器3aと第1電圧比較器3bとを備えている。第1可変抵抗器3aは、第1の所定の電圧を出力するものであり、この第1可変抵抗器3aの一端は電圧源に接続されており、第1可変抵抗器3aの他端は接地されている。第1電圧比較器3bは、第1磁気センサ2aの出力電圧51と第1可変抵抗器3aの出力電圧51aとの差に応じた矩形波の電圧を出力するものである。
【0025】
第2電圧比較回路4は、第2磁気センサ2bの出力電圧(即ち、出力端子bにおける電圧)52と第2の所定の電圧との差に応じた矩形波の電圧を出力するものである。この第2電圧比較回路4は、第2可変抵抗器4aと第2電圧比較器4bとを備えている。第2可変抵抗器4aは、第2の所定の電圧(本実施例においては、第1の所定の電圧と略同一の電圧)を出力するものであり、この第2可変抵抗器4aの一端は電圧源に接続されており、第2可変抵抗器4aの他端は接地されている。第2電圧比較器4bは、第2磁気センサ2bの出力電圧52と第2可変抵抗器4aの出力電圧52aとの差に応じた矩形波の電圧を出力するものである。
【0026】
エッジトリガ回路5は、第2電圧比較回路4の出力電圧53の立ち上がり又は立ち下がりに応じた電圧を出力する回路であり、位相遅れ回路5aと、エクスクルーシブ・オア(Exclusive-OR)回路5bとを備えている。位相遅れ回路5aは、第2電圧比較回路4の出力電圧53を位相遅れさせた電圧を出力するためのものであり、本実施例では、第1抵抗5a1と第1コンデンサ5a2とによって構成されている。エクスクルーシブ・オア回路5bは、第2電圧比較回路4の出力電圧53と位相遅れ回路5aの出力電圧56との排他的論理和に基づいた電圧を出力するためのものであり、このエクスクルーシブ・オア回路5bの出力電圧は、エッジトリガ回路5の出力電圧54となる。以下、具体的に説明すると、かかるエクスクルーシブ・オア回路5bの出力電圧(エッジトリガ回路5の出力電圧54)は、第2電圧比較回路4の出力電圧53と位相遅れ回路5aの出力電圧56とが共にハイレベルである場合、又は第2電圧比較回路4の出力電圧53と位相遅れ回路5aの出力電圧56とが共にローレベルである場合には、ローレベルとなる。一方、第2電圧比較回路4の出力電圧53と位相遅れ回路5aの出力電圧56とが異なる場合(即ち、第2電圧比較回路4の出力電圧53がハイレベルであり且つ位相遅れ回路5aの出力電圧56がローレベルである場合、又は第2電圧比較回路4の出力電圧53がローレベルであり且つ位相遅れ回路5aの出力電圧56がハイレベルである場合)には、エクスクルーシブ・オア回路5bの出力電圧(エッジトリガ回路5の出力電圧54)はハイレベルとなる。従って、第2電圧比較回路4の立ち上がり及び立ち下がりの有効に活用することができるのである。
【0027】
なお、エクスクルーシブ・オア回路5bにより第2電圧比較回路4の出力電圧53と比較される電圧は、必ずしも、位相遅れ回路5aの出力電圧56、即ち、第2電圧比較回路4の出力電圧53を位相遅れさせた電圧に限られるものではなく、第2電圧比較回路4の出力電圧53を位相進みさせた電圧であっても良い。換言すれば、第2電圧比較回路4の出力電圧53を位相遅れさせる位相遅れ回路5aに代えて、第2電圧比較回路4の出力電圧53を位相進みさせる位相進み回路を配設するようにしても良い。
【0028】
ここで、前記したように、第2電圧比較回路4は、第2磁気センサ2bの出力電圧52と第2可変抵抗器4aの出力電圧52aとの差に応じた矩形波の電圧を出力するものである。従って、第2可変抵抗器4aの出力電圧52aが一定である場合には、第2電圧比較回路4の出力電圧53の一の波形の立ち下がりと其の一の波形の次の波形の立ち下がりとの間の周期(即ち、エッジトリガ回路5の出力電圧54の周期)と、第1磁気センサ2aの出力電圧51の周期とは、一致する。ところで、比較対象となる第1磁気センサ2aの一の波形の位相と別の波形の位相とが互いに異なると、この一の波形の大きさと別の波形の大きさとの比較を正確に行うことが困難となってしまう。しかしながら、前記したようにエッジトリガ回路5の出力電圧54に基づいて第1磁気センサ2aの出力電圧51の一の波形の最大値と別の波形の最大値とを比較するようにすると、換言すれば、第2電圧比較回路4の出力電圧53の立ち下がり又は立ち上がりに基づいて第1磁気センサ2aの出力電圧51の一の波形の最大値と別の波形の最大値とを比較するようにすると、比較対象となる第1磁気センサ2aの一の波形の位相と別の波形の位相とを一致させることができるのである。即ち、第1磁気センサ2aの出力電圧51の一の波形の大きさと別の波形の大きさとの比較を正確に行うことが困難となってしまうことを防止することができ、磁性スケール11の基準位置を認識する信頼性を向上することもできるのである。
【0029】
サンプルアンドホールド回路6は、所定の位相における第1磁気センサ2aの出力電圧51を保持するものであり、本実施例においては、第1磁気センサ2aの出力電圧51を、その第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅が略最大となるところで保持している。かかるサンプルアンドホールド回路6は、第1スイッチ素子6aと、第2スイッチ素子6bと、第3スイッチ素子6cと、第4スイッチ素子6dと、第2コンデンサ6eと、第1オペアンプ6fと、第2第2抵抗6gとを備えている。
【0030】
第1スイッチ素子6a及び第2スイッチ素子6bは、第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅が略最大となる場合にのみ、第1磁気センサ2aの出力電圧51を伝達するためのものであり、第1磁気センサの端子aと第2抵抗6gとの間に直列に接続されている。一方、第3スイッチ素子6c及び第4スイッチ素子6dは、第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅が略最大となる場合に、第1磁気センサ2aの出力電圧51を第2コンデンサ6eに伝達する一方、第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅が略最大となる場合以外の場合に、第2コンデンサ6eの放電電圧が第1オペアンプ6fの逆相入力端子に印可されてしまうことを防止するためのものである。
【0031】
第2コンデンサ6eは、第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅が略最大となるところで其の第1磁気センサ2aの出力電圧51を蓄電するものであり、第2抵抗6gと並列に接続されている。この第2コンデンサ6eには、第1スイッチ素子6a、第2スイッチ素子6b、第3スイッチ素子6c及び第4スイッチ素子6dがオン状態である場合(即ち、閉塞している場合)に、第1磁気センサ2aの出力電圧51が蓄電するようにされている。そして、この第2コンデンサ6eに蓄電された電圧は、第1スイッチ素子6a及び第3スイッチ素子6cの組、又は第2スイッチ素子6b及び第4スイッチ素子6dの組のうち、少なくとも何れか1組のスイッチ素子がオフ状態である場合(即ち、開放している場合)に、放電するようにされている。
【0032】
第1オペアンプ6fは、第1磁気センサ2aの出力電圧51又は第2コンデンサ6eの蓄電電圧のうち何れか一の電圧を出力するものであり、第1スイッチ素子6a及び第2スイッチ素子6bが共にオン状態である場合に、第1磁気センサ2aの出力電圧51を出力する。一方、第1オペアンプ6fは、第1スイッチ素子6a及び第3スイッチ素子6cの組、又は第2スイッチ素子6b及び第4スイッチ素子6dの組のうち、少なくとも何れか1組のスイッチ素子がオフ状態である場合(即ち、開放している場合)に、放電するようにされている。
【0033】
また、前記したように第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅の最大値は、第2非磁性部12bの近傍のみにおいて異なる。即ち、第1磁気センサ2aの出力電圧51の一の波形の最大値と別の波形の最大値とが異なるのである。このため、サンプルアンドホールド回路6の出力電圧57は、第2非磁性部12bの近傍のみにおいて低くなる。このように第1磁気センサ2aの出力電圧51の一の波形の最大値と別の波形の最大値とが異なる場合には、第1磁気センサ2aの出力電圧51が温度変動したときにおいても、即ち、第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅が全体的に増減したときにおいても、かかる一の波形の最大値と別の波形の最大値とが異なる。従って、サンプルアンドホールド回路6の出力電圧57により、第1磁気センサ2aの出力電圧51が温度変動した場合においても、磁性スケール11の基準位置を認識することができなくなってしまうことを防止することができるのである。
【0034】
微分回路7は、サンプルアンドホールド回路6の出力電圧57を微分するものであり、本実施例においては、第3抵抗7aと、第4抵抗7bと、第3コンデンサ7cと、第2オペアンプ7dとによって構成されている。前記したようにサンプルアンドホールド回路6の出力電圧57の最大値は、第2非磁性部12bの近傍のみにおいて異なる。このため、微分回路7の出力電圧58は、サンプルアンドホールド回路6の出力電圧57が変化する位相においてのみ、変化するのである。即ち、微分回路7の出力電圧58の単位時間当たりの変化量を検出することにより、磁性スケール11の基準位置を精密に認識することができるのである。
【0035】
第3電圧比較回路8は、微分回路7の出力電圧58と第3の所定の電圧との差に応じた矩形波の電圧を出力するためのものであり、第3可変抵抗器8aと、第3電圧比較器8bとを備えている。第3可変抵抗器8aは、第3の所定の電圧を出力するものであり、この第3可変抵抗器8aの一端は電圧源に接続されており、一方、第3可変抵抗器8aの他端は接地されている。第3電圧比較器8aは、微分回路7の出力電圧58と第3可変抵抗器8aの出力電圧58aとの差に応じた矩形波の電圧を出力するものである。ここで、微分回路7の出力電圧58が変化する場合、この微分回路7の出力電圧58の単位時間当たりの変化量が正数となる場合と負数となる場合がある。そして、前記した通り微分回路7の出力電圧58と第3の所定の電圧との差に応じた矩形波の電圧を出力することにより、磁性スケール11の基準位置にあたる微分回路7の出力電圧58の変化のみを選択することができるのである。
【0036】
次に、図4から図6を参照して、上記のように構成されたエンコーダ1の動作について説明する。図4は、常温時におけるエンコーダ1のタイミングチャートであり、図5は、低温時におけるエンコーダ1のタイミングチャートであり、図6は、高温時におけるエンコーダ1のタイミングチャートである。なお、図4から図6においては、本発明の理解を容易にするために、磁気センサ2の磁性スケール11に対する移動方向のうち一の移動方向のみについて図示されている。
【0037】
磁気センサ2が磁性スケール11に沿って摺動させられると、第1磁気センサ2aにより、略正弦波の電圧が出力される(図4(b)、図5(b)、及び図6(b)参照)。この第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅の最大値は、第1磁気センサ2aが磁性スケール11の近傍に位置する場合に、最小となる。このように第1磁気センサ2aの出力電圧51が最小となる理由は、磁性スケール11に設けられた非磁性部12は第1非磁性部12aと第2非磁性部12bとによって構成されているが、非磁性部12のうち第2非磁性部12bのみが第1非磁性部12aよりも浅く形成されていることに起因している(図4(a)、図5(a)、及び図6(a)参照)。
【0038】
また、「課題を解決するための手段」の欄で説明したように、第1磁気センサ2aを構成する第1磁気抵抗素子2a1及び第2磁気抵抗素子2a2は、使用温度(使用中における磁気抵抗素子自体の温度)の変化によって大きく変動する特性を有する。このため、第1磁気センサ2aによれば、低温時の場合には、常温時における電圧より高い電圧が出力され(図5(b)参照)、高温時の場合には、常温時における電圧より低い電圧が出力される(図6(b)参照)。
【0039】
一方、磁気センサ2が磁性スケール11に沿って摺動させられると、第2磁気センサ2bにより、第1磁気センサ2aの出力電圧51に対して略90度位相のずれた略正弦波の電圧が出力される(図4(c)、図5(c)、及び図6(c)参照)。この第2磁気センサ2bの出力電圧52の振幅の最大値も、上述した理由と同様の理由により、第2磁気センサ2bが磁性スケール11の近傍に位置する場合に、最小となる。
【0040】
第1磁気センサ2aの出力電圧51が第1電圧比較回路3に入力されると、第1電圧比較回路3により、第1磁気センサ2aの出力電圧51と第1可変抵抗器3aの出力電圧51aとが比較され、これら2つ電圧の差に応じた矩形波の電圧が出力される(図4(d)、図5(d)、及び図6(d)参照)。一方、第2磁気センサ2bの出力電圧52が第2電圧比較回路4に入力されると、第2電圧比較回路4により、第2磁気センサ2bの出力電圧52と第2可変抵抗器4aの出力電圧52aとが比較され、これら2つの電圧の差に応じた矩形波の電圧が出力される(図4(e)、図5(e)、及び図6(e)参照)。
【0041】
第2電圧比較回路4の出力電圧53がエッジトリガ回路5に入力されると、そのエッジトリガ回路5により、第2電圧比較回路4の出力電圧53の立ち上がり又は立ち下がりに応じた電圧が出力される(図4(g)、図5(g)、及び図6(g)参照)。即ち、位相遅れ回路5aにより、第2電圧比較回路4の電圧を位相遅れさせた電圧が出力され(図4(f)、図5(f)、及び図6(f)参照)、エクスクルーシブ・オア回路5bにより、第2電圧比較回路4の出力電圧53と位相遅れ回路5aの出力電圧56との差に応じた電圧が出力されるのである。具体的には、第2電圧比較回路4の出力電圧53と位相遅れ回路5aの出力電圧56とが共にハイレベルである場合、又は第2電圧比較回路4の出力電圧53と位相遅れ回路5aの出力電圧56とが共にローレベルである場合には、ローレベルの電圧が出力される。一方、第2電圧比較回路4の出力電圧53がハイレベルであり且つ位相遅れ回路5aの出力電圧56がローレベルである場合、又は第2電圧比較回路4の出力電圧53がローレベルであり且つ位相遅れ回路5aの出力電圧56がハイレベルである場合には、ハイレベルの電圧が出力されるのである。
【0042】
エッジトリガ回路5によりハイレベルの電圧54aが出力されると、オフ状態であった第2スイッチ素子6b及び第4スイッチ素子6dがオン状態とされる。同様に、第1電圧比較回路3によりハイレベルの電圧55aが出力されると、オフ状態であった第1スイッチ素子6a及び第3スイッチ素子6cがオン状態とされる。そして、第1スイッチ素子6a、第2スイッチ素子6b、第3スイッチ素子6c及び第4スイッチ素子6dが全てオン状態とされると、第1オペアンプ6fにより、第1磁気センサ2aの出力電圧51がそのまま出力されるとともに、第2コンデンサ6eにより、第1磁気センサ2aの出力電圧51が蓄電される。
【0043】
一方、エッジトリガ回路5によりローレベルの電圧54bが出力されると、第2スイッチ素子6b及び第4スイッチ素子6dがオフ状態とされる。同様に、第1電圧比較回路3によりローレベルの電圧55bが出力されると、第1スイッチ素子6a及び第3スイッチ素子6cがオフ状態とされる。そして、第1スイッチ素子6a及び第2スイッチ素子6bのうちの少なくとも何れか一のスイッチ素子がオフ状態とされ、且つ第3スイッチ素子6c及び第4スイッチ素子6dのうちの少なくとも一のスイッチ素子がオフ状態とされると、第1磁気センサ2aの出力電圧51がそのまま出力されず、第1オペアンプ6fにより、第2コンデンサ6eに一端蓄電された第1磁気センサ2aの出力電圧51、即ち、第2コンデンサ6eの放電電圧が出力されるのである。
【0044】
このように、第1スイッチ素子6a、第2スイッチ素子6b、第3スイッチ素子6c及び第4スイッチ素子6dが全てオン状態である場合には、即ち、第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅が略最大となる場合には、第1オペアンプ6fにより、第1磁気センサ2aの出力電圧51がそのまま出力されるとともに、第2コンデンサ6eにより、第1磁気センサ2aの出力電圧51が蓄電される。一方、第1スイッチ素子6a及び第3スイッチ素子6cの組、又は第2スイッチ素子6b及び第4スイッチ素子6dの組のうち、少なくとも何れか1組のスイッチ素子がオフ状態である場合には、即ち、第1磁気センサ2aの出力電圧51の振幅が略最大となる以外の場合には、第2コンデンサ6eの放電電圧が出力される。このため、第1磁気センサ2aの出力電圧51の一の波形の最大値と別の波形の最大値とが異なる場合には、サンプルアンドホールド回路6の出力電圧57の最大値も異なるのである。従って、サンプルアンドホールド回路6の出力電圧57により、第1磁気センサ2aの出力電圧51の一の波形の最大値と別の波形の最大値とを区別することができる。ところで、前記したように、第1磁気センサ2aの出力電圧51は、温度が変化した場合に、振幅の最大値が変動する。しかしながら、この場合においても、第1磁気センサ2aの出力電圧51が磁性スケール11の第2非磁性部12bの近傍に位置するときに、最小となる。即ち、サンプルアンドホールド回路6の出力電圧57により、第2磁気センサ2aの出力電圧51が温度変動した場合においても、磁性スケール11の基準位置を認識することができなくなってしまうことを防止することができるのである。
【0045】
サンプルアンドホールド回路6の出力電圧57が微分回路7に入力されると、微分回路7により、サンプルアンドホールド回路6の出力電圧57が微分される(図4(i)、図5(i)、及び図6(i)参照)。前記したようにサンプルアンドホールド回路6の出力電圧57の最大値は、第2非磁性部12bの近傍のみにおいて異なる。従って、微分回路7によりサンプルアンドホールド回路6の出力電圧57が微分されると、微分回路7の出力電圧58が変化する。従って、この微分回路7の出力電圧58の単位時間当たりの変化量を検出するだけで、磁性スケール11の基準位置を認識することができるのである。
【0046】
微分回路7の出力電圧58が第3電圧比較回路8に入力されると、第3電圧比較回路8により、微分回路の7出力電圧58と第3可変抵抗器8aの出力電圧58aとが比較され、これら2つの電圧の差に応じた矩形波の電圧が出力される(図4(j)、図5(j)、及び図6(j)参照)。ここで、微分回路7の出力電圧58が変化する場合、この微分回路7の出力電圧58の単位時間当たりの変化量が正数となる場合と負数となるときがある。このため、前記した通り微分回路7の出力電圧58と第3の所定の電圧との差に応じた矩形波の電圧を出力することにより、磁性スケール11の基準位置にあたる微分回路7の出力電圧58の変化のみを選択することができるのである。
【0047】
次に、図7から図11までを参照して、上記第1実施例の変形例について説明する。図7は、第2実施例のエンコーダ200のブロック図であり、図8は、磁気センサ2aと磁性スケール211との位置関係を示した図である。図9は、常温時におけるエンコーダ200のタイミングチャートであり、図10は、低温時におけるエンコーダ200のタイミングチャートであり、図11は、高温時におけるエンコーダ200のタイミングチャートである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。なお、第2実施例においても、本発明の理解を容易にするために、磁気センサ2に対する磁性スケール211の移動方向のうち一の移動方向のみについて図示されている。
【0048】
図7及び図8に示すように、第2実施例のエンコーダ200には、主として、磁気センサ2と、第1電圧比較回路3と、第2電圧比較回路4と、エッジトリガ回路5と、サンプルアンドホールド回路6と、微分回路7と、第3電圧比較回路8と、磁性スケール211と、反転回路209とが設けられている。
【0049】
図8に示す第2磁性スケール211は、第1実施例のエンコーダ1の磁性スケール11と略同一に形成されている。第2磁性スケール211と磁性スケール11との異なる点を説明すると、磁性スケール11においては、第1非磁性部12aと比較して浅く形成された第2非磁性部12bが配設されているが、第2磁性スケール211においては、第2非磁性部12bの代わりに、第1非磁性部12aと比較して深く形成された第3非磁性部212bが配設されている。従って、第2実施例の磁気センサ2(第1磁気センサ2a及び第2磁気センサ2b)の出力電圧の振幅は、第3非磁性部212bの近傍のみにおいて大きくなるのである。
【0050】
一方、図7に示す反転回路209は、第1電圧比較回路3の出力電圧を反転するものである(図9(d2)、図10(d2)、及び図11(d3)参照)。このように、第1電圧比較回路3の出力電圧を反転することにより、第1磁気センサ2aの出力電圧の振幅が略最小となる位相において、第1磁気センサ2aの出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとの比較をすることができる。即ち、第1磁気センサ2a及び第2磁気センサ2b)の出力電圧の振幅が第3非磁性部212bの近傍のみにおいて大きくなる場合においても、第1磁気センサ2aの出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとの比較をすることができるのである。
【0051】
なお、第2実施例のエンコーダ200の動作は、第1実施例のエンコーダ1の動作と同様な動作である。このため、図9から図11にタイミングチャートを図示し、第2実施例のエンコーダ200の動作の説明は、省略する。
【0052】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察することができるものである。
【0053】
例えば、本実施例によれば、磁性スケール11の側面に磁性部11bと非磁性部11aとが交互に形成されており、磁気センサ2は、磁気センサ2と磁性スケール11との相対的な位置が変化した場合に、磁性部11bおよび非磁性部11aの非透磁率の大きさに応じた電圧51,52を出力する。しかしながら、磁気センサ2は、必ずしも、かかる非透磁率の大きさに応じた電圧51,52を出力するものにかぎられるものではなく、例えば、磁性スケールが磁石材である場合には、その磁性スケールの磁束密度の大きさに応じた電圧を出力するようにしても良い。
【0054】
なお、後述する「符号の説明」の欄において、「発明の詳細な説明」の欄に記載された用語と「特許請求の範囲」の欄に記載された用語との対応が記載されている。しかしながら、当然に、この記載は、「特許請求の範囲」の欄に記載された各用語の意義を限定することを、意図するものではない。また、「特許請求の範囲」の欄に記載の「記憶する」は、メモリその他の記憶回路に記憶しておくことのみを意味するものではなく、コンデンサその他の蓄電回路に蓄電することの意味をも含むものとする。
【0055】
【発明の効果】
請求項1記載のエンコーダによれば、第1磁気センサにより、磁性スケールの磁束密度または透磁率の値に応じた電圧が出力され、第2磁気センサにより、第1磁気センサの出力電圧に対して90度位相のずれた電圧が出力され、第1電圧比較回路により、第2磁気センサの出力電圧と第1の所定の電圧との差に応じた矩形波の電圧が出力され、第2出力回路により、その第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際または立ち下がりの際における第1磁気センサの出力電圧が出力される。そして、第3出力回路により、第2出力回路の出力電圧に基づいて、即ち、第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際または立ち下がりの際における第1磁気センサの出力電圧に基づいて、第1磁気センサの出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとの差に応じた電圧が出力される。
【0056】
ここで、かかる磁性スケールの磁束密度または透磁率の絶対値は部分的に大きく又は小さくされているので、第1磁気センサの出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとが異なる場合がある。そして、このように第1磁気センサの出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとが異なる場合には、第1磁気センサの出力電圧が温度変動したときにおいても、即ち、第1磁気センサの出力電圧の振幅が全体的に増減したときにおいても、かかる一の波形の大きさと別の波形の大きさとが異なる。このため、前記したように第3出力回路によって第1磁気センサの出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとの差に応じた電圧が出力されれば、第1磁気センサの出力電圧が温度変動した場合においても、磁性スケールの基準位置を認識することができなくなってしまうことが防止される
【0057】
また、比較対象となる第1磁気センサの一の波形の位相と別の波形の位相とが互いに異なると、この一の波形の大きさと別の波形の大きさとの比較を正確に行うことが困難となってしまう。従って、前記したように第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際または立ち下がりの際における第1磁気センサの出力電圧に基づいた電圧が出力されることにより、比較対象となる第1磁気センサの一の波形の位相と別の波形の位相とが一致される
【0058】
請求項2記載のエンコーダによれば、請求項1記載のエンコーダと同様に作用する上、第2出力回路により、第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際または立ち下がりの際には、第1磁気センサの出力電圧が出力され、一方、第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際もしくは立ち下がりの際以外の際には、第1記憶回路に記憶された電圧が出力される。ここで、第1記憶回路への第1磁気センサの出力電圧の記憶は、第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際もしくは立ち下がりの際に行われる。即ち、第1電圧比較回路の出力電圧の立ち上がりの際または立ち下がりの際以外の際における第2出力回路の出力電圧が、第1電圧比較回路の出力電圧が立ち上がる際または立ち下がる際における第2出力回路の出力電圧と、略(ほぼ)同一とされる。従って、第2出力回路の出力電圧の単位時間当たりの変位量を検出することにより、磁性スケールの基準位置が認識可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるエンコーダのブロック図である。
【図2】 上記実施例のエンコーダを構成する磁性スケールの斜視図である。
【図3】 磁気センサと磁性スケールとの位置関係を示した図である。
【図4】 常温時におけるエンコーダのタイミングチャートである。
【図5】 低温時におけるエンコーダのタイミングチャートである。
【図6】 高温時におけるエンコーダのタイミングチャートである。
【図7】 第2実施例のエンコーダのブロック図である。
【図8】 第2実施例のエンコーダを構成する磁気センサと磁性スケールとの位置関係を示した図である。
【図9】 第2実施例のエンコーダの常温時におけるタイミングチャートである。
【図10】 第2実施例のエンコーダの低温時におけるタイミングチャートである。
【図11】 第2実施例のエンコーダの高温時におけるタイミングチャートである。
【図12】 従来技術のエンコーダのブロック図である。
【図13】 従来技術のエンコーダを構成する磁気センサと磁性スケールとの位置関係を示した図である。
【図14】 従来技術のエンコーダの常温時におけるタイミングチャートである。
【図15】 従来技術のエンコーダの低温時におけるタイミングチャートである。
【図16】 従来技術のエンコーダの高温時におけるタイミングチャートである。
【符号の説明】
1,200 エンコーダ
2a 第1磁気センサ
2b 第2磁気センサ
3 第1電圧比較回路(第3電圧比較回路)
4 第2電圧比較回路(第1出力回路の一部、及び、第1電圧比較回路)
5 エッジトリガ回路(第1出力回路の一部)
5a 位相遅れ回路(第1出力回路の一部)
5b エクスクルーシブ・オア回路(第1出力回路の一部)
6 サンプルアンドホールド回路(第1出力回路の一部、及び、第2出力回路
6e 第2コンデンサ(第1出力回路の一部、並びに、第1記憶回路および第1蓄電回路または第2記憶回路および第2蓄電回路)
7 微分回路(第1出力回路の一部、第3出力回路、及び微分回路)
8 第3電圧比較回路(第1出力回路の一部、第3出力回路、及び第2電圧比較回路)
11,211 磁性スケール

Claims (2)

  1. 磁束密度または透磁率の絶対値が基準位置に相当する部分のみにおいて大きく又は小さくされた磁性スケール(11)と、その磁性スケール(11)の磁束密度または透磁率の値に応じた電圧を出力する、磁気抵抗素子で形成された第1磁気センサ(2a)とを備えたエンコーダにおいて、
    前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧に対して90度位相のずれた電圧(52)
    を出力する、磁気抵抗素子で形成された第2磁気センサ(2b)と、
    その第2磁気センサ(2b)の出力電圧(52)を第1の所定の電圧と比較して矩形波の電圧(53)を出力する第2電圧比較回路(4)と、
    その第2電圧比較回路(4)の出力電圧(53)が立ち上がりの際における前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧(51)を前記立ち上がりの際から次の立ち上がりの際まで電圧(57)を出力するか、又は前記第2電圧比較回路(4)の出力電圧(53)が立ち下がりの際における前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧(51)を前記立ち下がりの際から次の立ち下がりの際まで電圧(57)を出力するかのいずれかである第2出力回路(6)と、
    その第2出力回路(6)の出力電圧(57)に基づいて、前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧の一の波形の大きさと別の波形の大きさとの差に応じた電圧(58)を出力する第3出力回路(7)と、第3出力回路(7)の出力電圧(58)と所定の電圧とを比較することで前記基準位置に対応する出力電圧(58)のみを出力する第3電圧比較回路(8)とを備えていることを特徴とするエンコーダ。
  2. 前記第2出力回路(6)は、第2電圧比較回路(4)の出力電圧(5)の立ち上がりの際に第1磁気センサ(2a)の出力電圧を記憶する第1記憶回路(6e)を備えており、該第2出力回路(6)は、前記第2電圧比較回路(4)の出力電圧(5)の立ち上がりの際に前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧(51)を出力する一方、前記立ち上がりの際以外の際に前記第1記憶回路(6e)に記憶された電圧を出力するようにされているか、または、
    前記第2出力回路(6)は、第2電圧比較回路(4)の出力電圧(5)の立ち下がりの際に第1磁気センサ(2a)の出力電圧を記憶する第1記憶回路(6e)を備えており、該第2出力回路(6)は、前記第2電圧比較回路(4)の出力電圧(5)の立ち下がりの際に前記第1磁気センサ(2a)の出力電圧(51)を出力する一方、前記立ち下がりの際以外の際に前記第1記憶回路(6e)に記憶された電圧を出力するようにされているかのいずれかであることを特徴とする請求項1記載のエンコーダ。
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