JP4243187B2 - HIV−1のgp41のクリプティックエピトープを模倣するペプチド - Google Patents

HIV−1のgp41のクリプティックエピトープを模倣するペプチド Download PDF

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Description

本発明は、応用微生物学及びワクチン開発の領域にあり、HIV−1のgp41上のクリプティックエピトープ(cryptic epitope)、及びこのクリプティックエピトープ又はその必須部分を模倣する合成ペプチド、及び哺乳動物宿主においてHIV−1中和抗体を誘発するためのこれらのペプチドの適用に関する。本発明は、さらに、これらのペプチドのいずれかにより誘発されたHIV−1中和抗体、及び前記HIV−1中和抗体の作用の阻害又は防止に有効な抗イディオタイプ(idiotypic)抗体に関する。
特異的抗体の存在は、多数のヒトウイルス性疾患に対する防護において重要な役割を果たしていることが示されている。しかしながら、HIV感染における体液性免疫応答の役割には、未だ議論の余地がある。
中和抗体力価がしばしば低い、急速に疾患が進行している者とは対照的に、長期にわたり進行しない者において見出されるような広い中和免疫応答の発達は、疾患進行を遅延させることが示されている。他の研究は、高い中和抗体力価を有する母親は、新生児にウイルスを伝達する可能性が低いことを示唆している。中和抗体の存在と疾患の顕在化との間には一般的に相関が観察される。さらに、HIV特異的抗体応答の減衰は、しばしば不幸な診断を予測する。
HIV−1感染における抗体の役割を研究するため、多数の動物及びヒトにおける試験が実施された。チンパンジー及びマカーク(macaques)にHIV−1特異的中和抗体を注入した後、HIV又はキメラサル/ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)を静脈内又は粘膜へチャレンジ(challenge)することにより、感染又は疾患進行が防止された。HIV−1に対するモノクローナル又はポリクローナルの抗体調製物による受動免疫の陽性効果も、ヒト有志者における多くの試験において観察された。
例えば、2個のヒトモノクローナル抗体2F5(ブダペスト条約に基づく国際寄託機関であるECACCに受託番号90091704として寄託された。)及び2G12(ブダペスト条約に基づく国際寄託機関であるECACCに受託番号93091517として寄託された。)は、第一相臨床試験において有益な効果を示した。HIV陽性患者への両抗体の反復注入は、ウイルス負荷及び感染末梢単核細胞(PBMC)の減少をもたらし、CD4+ Tリンパ球の増加及び補体活性化をもたらした。
現在のところ、保存されたエピトープを認識する、高い治療的可能性を有していることが既知のモノクローナル抗体の数は少ない(スザ(D’Souza)ら、J Infect Dis 1997;175:1056−1062)。3個のモノクローナル抗体(mAb)2F5、2G12(ブチャチャー(Buchacher)ら、AIDS Res Hum Retroviruses 1994;10:359−369)及びIgG1b12(バートン(Burton)ら、Science 1994;266:1024−1027)のみが、有意なクロスクレード(cross−clade)抗ウイルス活性を示すことが報告されている。
HIV−1エンベロープ上の保存された中和B細胞エピトープに対するモノクローナル抗体の同定は、受動免疫戦略(strategies)にとって価値があり得るだけでなく、広い体液性免疫応答の誘導に基づくワクチン設計のための重要な情報も与える。T細胞エピトープに排他的に基づくワクチンは、HIV−1感染に対する防御にとっておそらく充分ではないであろうことが示されている(パレン(Parren)ら、AIDS 1999;13(suppl A):S137−S162)。
数年前、本発明者らは、HIV−1陽性ドナーに由来するヒト末梢血リンパ球の不死化により、33個のHIV−1に対するヒトモノクローナル抗体のパネル(panel)を確立した。このパネルのうち、2個のモノクローナル抗体(2F5、2G12)が、HIV−1の実験用単離物及び初代(primary)単離物の強力な阻害剤であることが同定された。mAb 2F5及び2G12は、さらに開発され、間もなく、最も強力な中和抗体のうちの二つであることが認識された。
当初はIgG3抗体であったモノクローナル抗体4E10(ブダペスト条約に基づく国際寄託機関であるECACCに受託番号90091703として寄託された。)は、抗体血清学プロジェクト(Antibody Serological Project)(ASP)の評価プログラムに含まれ、いくつかの実験用株を中和するこが示された(スザ(D’Souza)ら、AIDS 1994;8:169−181)。
mAb 4E10は、本発明において、重鎖(heavy chains)の定常領域が組換えmAb 2F5及び2G12のものと同一であるIgG1クラス抗体として、連続CHO細胞系においてクローニングされた。驚くべきことに、IgG3からIgG1へのこのクラススイッチの後、mAb 4E10は、増加した中和効力を示した。さらに、予想に反して、IgG3バージョンではなくIgG1バージョンのmAb 4E10は、mAb 2F5及び2G12による第一相臨床試験に参加したHIV−1陽性個体に由来する初代単離物全てを中和した唯一の抗体であった。また、それは、mAb 2F5及び2G12の一方又は両方による中和に対して非感受性であった初代HIV−1単離物を中和した。
従って、従来既知であったクラスIgG3のmAb 4E10(ブダペスト条約に基づく国際寄託機関であるECACCに受託番号90091703として寄託された。)と比較して有意に増加したHIV−1中和活性を有し、mAb 2F5及び2G12の一方又は両方による中和に対して非感受性の初代HIV−1単離物を中和する、改良されたクラスIgG1の4E10抗体を提供することが、本発明の目的である。診断及び治療の目的のための、そしてIgG1クラスのmAb 4E10のHIV−1中和作用を阻害又は防止することができる抗イディオタイプ抗体の誘発又はスクリーニングのための、改良されたIgG1クラスmAb 4E10(以後、4E10−IgG1と呼ぶ)の使用の方法を提供することが、本発明のもう一つの目的である。gp41上の4E10エピトープの必須部分を少なくとも模倣するそのような抗イディオタイプ抗体を提供すること、そしてこれらの抗イディオタイプ抗体のうちの1個又は複数個を含有している産物(products)、特に抗HIV−1ワクチン、及びにそれらの使用を提供することが、本発明のさらにもう一つの目的である。
「4E10」という用語は、本明細書において以下使用されるように、特記しない限り、ヒトモノクローナル抗体4E10のIgG3バリアント(variant)及びIgG1バリアントの両方をさす。しかしながら、実施例及び対応する図面においては、そこに開示された実験は4E10のIgG1バリアントを使用して実施されたため、「4E10」という用語は、典型的にはIgG1バリアントをさす。「4E10−IgG3」という用語は既知の4E10のIgG3バリアントを、「4E10−IgG1」という用語は4E10のIgG1バリアントを排他的にさすものとする。mAb 4E10−IgG3は、登録番号90091703の下でECACCに寄託されたハイブリドーマ細胞系により産生され、4E10−IgG1は、ブダペスト条約に基づく国際寄託機関であるECACCに受託番号01110665として寄託されたCHO細胞系により発現される。両バリアントは、HIV−1のgp41上の同一エピトープを認識する。しかしながら、それらはHIV−1中和能が著しく異なっている。
さらに、mAb 4E10が、2F5エピトープのC末端側の位置にあるgp41上のこれまで未知であったエピトープを認識することが、本明細書に開示される。異なるクレードのT細胞系馴化(T−cell line adapted)(TCLA)HIV−1単離物及び初代HIV−1単離物に対するmAb 4E10のスクリーニングは、この抗体の中和能が、少なくとも2F5及び2G12と同程度に強力であり得ることを示している。他のよく特徴付けられた中和モノクローナル抗体と比較された、4E10−IgG1のインヴィトロ(in vitro)中和特性が、本明細書に記載される。
従って、mAb 4E10により認識されるHIV−1のgp41上に位置する結合エピトープの必須部分を少なくとも模倣する合成ペプチドを提供することが、本発明のもう一つの目的である。ウイルス又はウイルスの一部、例えばウイルスタンパク質のような適当な免疫原性担体と組み合わせられた、又はそれらに共有結合的に連結された、そのような合成ペプチドを提供することが、本発明のさらなる目的である。また、前記合成ペプチドのうちの少なくとも1個、又は適当な免疫原性担体と組み合わせられた、もしくはそれらと連結された前記合成ペプチドのうちの少なくとも1個、又は4E10に対して有効な少なくとも1個の抗イディオタイプ抗体、又は前記ペプチド及び/もしくは抗イディオタイプ抗体の任意の組み合わせを含有しているワクチンを提供することも、本発明の目的である。
また、場合によって、好ましくは2F5及び2G12からなる群より選択される少なくとも1個の他の抗体との混合物として、適当な担体と組み合わせられたmAb 4E10−IgG1を含む、薬学的組成物を提供することも、本発明の目的である。
HIV−1のリスクが高い人々、又はHIV−1に感染した人々の予防的又は治療的な処置における、特に、エイズの防止又は治療のための、そのような薬学的組成物及びワクチンの使用を提供することが、本発明のさらにもう一つの目的である。
エイズ臨床試験グループ抗体選択ワーキンググループ(AIDS Clinical Trials Group Antibody Selection Working Group)の評価プログラムにおいては、mAb 2F5、2G12及びIgG1b12のみが、抗HIV−1受動免疫療法のための有力な候補であることが同定された。本明細書に提示された本発明者らの最近の所見は、4E10−IgG1が、匹敵する抗ウイルス能を有する付加的な抗体であることを示している。
エピトープマッピング研究は、4E10がgp41の外部ドメイン上のエピトープを認識することを明らかにした。4E10は、gp160MNペプチド2030(QTQQEKNEQELLELDKWASL)とも、GGGLELDKWASLペプチドとも結合しないため、アミノ酸LDKWAからなる2F5コアエピトープが、4E10のgp160MNペプチド2031(LLELDKWASLWNWFDITNWL)との結合に本質的に寄与している可能性は低い。この領域に後続するアミノ酸が4E10による認識を担っているという結論が、マッピング用のペプチドライブラリーを利用した付加的なエピトープマッピング研究により確認された。
その結果は、4E10コアエピトープが、実際2F5エピトープのC末端側に位置しており、TCLA単離物HTLV IIIMNのgp41のaa672から677(NWFDIT)と同一であるか又はそれに相当する6アミノ酸(aa)の配列を少なくとも含むことを示した。
本文中、「相当する」という用語は、4E10エピトープのアミノ酸配列が、明示されたHIV−1単離物のgp41のアミノ酸配列と同一であってもよいし、又は遺伝暗号の縮重により、もしくは異なるHIV−1単離物間のバリエーションにより、それらから逸脱していてもよいことを意味する。しかしながら、逸脱している配列は、mAb 4E10により認識される結合モチーフ又はエピトープを依然として提示していなければならず、例えば、それらは、スクリーニングの道具として4E10を使用することにより、gp41断片を含有しているライブラリーから検出可能でなければならない。例えば、HTLV IIIMNのgp41のaa672から677にある配列NWFDITは、単離物HXB2のgp41の同一の位置に見られる配列NWFNITと等価(equivalent)又は相同(homolog)である。等価又は相同な配列のさらなる例には、以下に制限はされないが、SWFGIT、TWFGIT、NWFSITが含まれる。
自然感染中にgp41により誘導される抗体の大多数が、aa598から604及び644から663(HIV−1 HXB2による番号付け;スー(Xu)ら、J Virol 1991;65:4832−4838)の近傍の残基に対するものである。これらの抗体は、ウイルスの複製を阻害せず、補体により媒介されるメカニズムによりウイルスの感染性を増強するものすらある。現在のところ、mAb 2F5が、強力なクロスクレード中和特性を示す唯一記載されている抗gp41抗体であった。興味深いことに、2F5様の特異的抗体は、HIV−1感染個体の血清中に稀にしか見出されない。HIVIG(70人を超えるHIV−1陽性供血者の血清をプールしたもの)は、有意なgp160及び/又はgp41との2F5様の特異的結合を示さない。2F5が結合するgp41上の領域は、自然感染中、明らかにヒト免疫系に対してクリプティック(cryptic)である。
gp41上のこの領域に対するもう1個の広域中和抗体mAb 4E10(2F5コアエピトープのC末端側にマッピングされているエピトープ)に関する本明細書に記載された結果は、この領域が、ウイルスの感染性及び複製にとって不可欠であることを確証している。いずれの抗体も、感染細胞及び遊離ウイルスとは微弱にしか結合しないが、強力な中和活性を示すため、本発明者らは、ウイルス複製の阻害のための2F5及び4E10の類似したメカニズムを提案する。さらに、ウイルスを2個のモノクローナル抗体のいずれかと共にプレインキュベートしても、4E10又は2F5の抗ウイルス効率が改良されなかった、シンシチウム阻害アッセイ(syncitia inhibition assay)から得られた結果は、この仮説を補強し得る。
従って、両mAbが、HIV−1の高活性侵入阻止剤(中和剤)であるが、遊離ウイルス及びHIV−1感染細胞とは極微弱にしか結合しないという所見を考慮すると、gp41上のこの融合性領域は、HIV−1の宿主細胞との融合のイベントの間にのみ露出されるとの結論が下される。それは、一方では、自然感染におけるこれらの中和2F5エピトープ及び4E10エピトープのクリプティック性の付加的な説明を与える。
他方で、これらの抗体の両方の組み合わせによる中和に対して非感受性のHIV−1単離物は、現在のところ全く見出されていない。これは、gp41の外部ドメインのこの特定の領域が、適当な免疫原性担体上に適切に提示されれば、又は抗イディオタイプ抗体により模倣された場合、高度に有効な抗HIV−1療法の可能性を保持していることの重要な指標であり、この領域は、HIV−1に対する能動免疫のためのワクチンの製造のための有望な候補となる。
従って、一つの実施形態において、本発明は、HIV−1のgp41の断片であり、TCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa672から677に相当するアミノ酸配列を含む、HIV−1の標的細胞への侵入を妨害し、好ましくはHIV−1中和免疫応答を誘導するペプチド少なくとも1個を含む、HIV−1感染に対する能動免疫のためのワクチンに関する。もう一つの実施形態において、本発明は、前記のペプチドのうちの少なくとも1個、及び/又はTCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa672から677に相当するアミノ酸配列を含むHIV−1のgp41の断片を模倣する、mAb 4E10の結合パラトープと反応性の少なくとも1個の抗イディオタイプ抗体を含有しているワクチンに関する。ワクチンは、適当な、即ち薬学的に許容される担体をさらに含み得る。
mAb 4E10は、2F5又は2G12を使用した場合に適用可能な濃度に匹敵する極めて低い濃度でも、HIV−1のTCLA株及び初代株のウイルス複製を阻害する。それは、その他のテストされたmAbと比較した場合、類似したクロスクレード抗ウイルス活性を発揮する。2F5及び4E10は近接したエピトープを認識するが、組み合わせてテストした場合、それらは相互に拮抗しない。4E10は、最近実施されたmAb 2F5及び2G12を利用した第一相臨床試験に参加した無症候性HIV患者から得られたHIV−1単離物に対して、2F5及び2G12の各々よりさらに有効であることが判明した。他方で、4E10は、オーストリアの末期エイズ患者から過去に得られた単離物6個のうち1個のみを中和した。4E10に対して比較的耐性の単離物(92UG029)が、現在の初代単離物のパネルの中に、もう1個だけ存在した。これらの6個の耐性単離物(即ち、5個の過去に得られた耐性単離物及び1個の現在の単離物)が、宿主細胞侵入のための唯一の補助受容体としてCXCR4を使用していることは、注目に値する。マクロファージ向性又は二重向性(dualtropic)の表現型を示した他の単離物は、全て、mAb 4E10により容易に阻害された。対照的に、侵入のためにCXCR4を使用する全てのTCLAウイルスが、低い4E10濃度で阻害された。しかしながら、細胞系に基づくシンシチウムアッセイにおいて中和非感受性TCLA株により得られた結果は、初代ウイルスを用いたPBMCに基づくアッセイとは比較可能でないのかもしれない。
HIV−1感染のための高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の開発は、少なくとも先進諸国においては、HIV−1陽性個体の状況を劇的に改良した(カーペンター(Carpenter)ら、JAMA 2000;283:381−390)。にもかかわらず、重篤な副作用及びHAART耐性ウイルスの発生のため、付加的な標的部位に作用する新たな療法アプローチが緊急に必要とされている。現在は、モノクローナル抗体、抗体様分子及びペプチドを含む侵入阻害剤に焦点が当てられている。mAb 2F5及び2G12は、既に、特に組み合わせ使用された場合、HIV−1陽性有志者において顕著な抗ウイルス効率を示している。従って、本発明者らは、mAb 4E10の結合特徴を有する付加的なHIV−1中和抗体を提供する。
従って、本発明の一つの実施形態において、TCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa672から677(aaNWFDIT)に相当するアミノ酸配列と結合する、公開されているヒトmAb 4E10−IgG3以外のHIV−1中和モノクローナル抗体が提供される。好ましい実施形態において、この抗体は、mAb 2F5及び/又はmAb 2G12による中和に対して非感受性のHIV−1変異体すら中和する。この型の中和抗体の一つの代表は、mAb 4E10−IgG1、即ち既知のmAb 4E10−IgG3のIgG1バリアントである。
ここで、mAb 4E10−IgG3に関するいくつかの先行技術情報が、明らかに誤っていたことが指摘される。ブチャチャー(Buchacher)ら(AIDS Research And Human Retroviruses 10(4),1994,359−369)は、mAb 4E10が、gp41アミノ酸aa824から830位(HIV−1株BH10に関する番号付け)にあるC末端エピトープと結合することを証明する結果を公開した。
それらの実験を繰り返したところ、そのような所見は確認され得なかった。
また、そこに報告されたMHCクラスIIタンパク質との交差反応も観察されなかった。アミノ酸EGTDRVIを含有している関連ペプチド2047及び2048との相互作用は、見出されなかった。
mAb 4E10−IgG3を、有望な抗HIV特性を有しない多くのさほど興味深くない抗体のうちの1個にすぎないとしている、そのような誤解を招きやすい先行技術の情報にも関わらず、本発明者らは、CHO細胞における組換え発現によりIgG3からIgG1へ表現型を変化させた後、再度その抗体を比較阻害アッセイに供した。前述のように、IgG1バリアントを用いた中和実験から得られた結果は、予想外に良好であり、有望であり、そして本発明者らの予想をはるかに越えていた。
mAb 4E10−IgG1は、2F5抗体及び2G12抗体の一方又は両方の中和を回避したウイルスも中和することが示されたため、さらに、2F5と4E10−IgG1との組み合わせによる中和に対して非感受性のHIV−1単離物は見出され得なかったため、4E10−IgG1は、例えば受動免疫のための強大な道具になると考えられる。
従って、一つの実施形態において、本発明は、TCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa672から677に相当するアミノ酸配列と結合するHIV−1中和モノクローナル抗体(最も好ましい抗体はmAb 4E10−IgG1である)少なくとも1個を含む、哺乳動物細胞のHIV−1感染の阻害又は防止のための薬学的組成物に関する。もう一つの好ましい実施形態において、薬学的組成物は、少なくとも1個の他の中和抗HIV−1抗体と組み合わせられた、好ましくはmAb 2F5及び2G12のうちの少なくとも1個と組み合わせられたmAb 4E10−IgG1を含む。
さらにもう一つの実施形態において、本発明は、mAb 4E10の結合パラトープと反応性であり、かつ4E10エピトープ又はその必須部分(essentioal part)を模倣する、即ちTCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa672から677に相当するアミノ酸配列を含むHIV−1のgp41の断片を模倣する抗イディオタイプ抗体の誘発又はスクリーニングのための、mAb 4E10、場合によってはそのIgG1バリアントの使用に関する。
さらにもう一つの実施形態において、本発明は、TCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa672から677に相当するアミノ酸配列を含むHIV−1のgp41の断片を模倣する、mAb 4E10の結合パラトープと反応性の抗イディオタイプ抗体に関する。有利には、抗イディオタイプ抗体は、TCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa672から677に相当する前記アミノ酸配列の片側又は両側に、HIV−1のgp41に見られるものと同一の組成及び同一の順序で存在する1個以上の隣接アミノ酸を含む断片を模倣する。
4E10−IgG1により免疫された哺乳動物宿主の血清をスクリーニングすることにより例えば入手され得る抗イディオタイプ抗体は、HIV−1の標的細胞への侵入を、特にウイルス−細胞融合の段階で妨害することが好ましい。抗イディオタイプ抗体は、インヴィトロのみならず、哺乳動物レシピエントにおいてインヴィヴォ(in vivo)でも、HIV−1中和免疫応答を誘導することも好ましい。
本発明のさらなる好ましい実施形態は、従属クレームに記載されている。
本明細書に記載された本発明がより完全に理解され得るよう、以下に実施例が示される。この実施例は、例示のみを目的とするものであり、いかなる点においても本発明を制限するものとして解釈されてはならない。
以下の材料及び方法が、後述の実施例1から7において使用された。
a)モノクローナル抗体
ヒトモノクローナル抗体4E10、2F5、2G12及び3D6の作製、産生、及び特徴決定は、以前に記載されている(スザ(D’Souza)ら、J Infect Dis 1997;175:1056−1062;クナート(Kunert)ら、Biotechnol Bioeng 2000;67:97−103)。簡単に説明すると、抗体産生ハイブリドーマ(hybridomas)が、組み合わせポリエチレングリコール/電気融合法により作製された。無症候性HIV−1陽性ドナーに由来するPBMCが、マウスヒトヘテロミエローマ(heteromyeloma)細胞系CB−F7と融合させられた。ハイブリドーマ上清が、HIV特異的抗体産生に関してスクリーニングされ、陽性クローンが、ELISA、ウエスタンブロット及び免疫蛍光アッセイによりさらに分析された。安全な大量製造を可能にするため、そして2F5及び4E10のアイソタイプをIgG3からIgG1へ変化させるため、抗体は、IgG1(κ)としてチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)において組換え発現させられた。後述の実施例1から7に記載された当研究には、2F5抗体及び4E10抗体の組換えCHO IgG1バージョンが使用された。
4E10、2F5及び2G12は、同一の定常領域を含有しており、当初のハイブリドーマクローンに由来する可変部分のみが異なっている。
2G12はgp120上のコンフォメーション感受性エピトープを認識し、mAb 2F5はgp41の外部ドメイン上のELDKWAモチーフを認識し、そして4E10はgp41上の異なるエピトープを認識する。3D6は、gp41イムノドミナントループ内のエピトープ(アミノ酸GCSGKLICTTAVPWNAS)を認識し、全てのシンシチウム阻害アッセイにおいて非中和対照として機能した。
ヒトmAb IgG1b12は、デニス・バートン博士(Dr.Dennis Burton)(The Sripps Research Institute)から好意により提供された。その作製は、バートン(Burton)ら、Science 1994;266:1024−1027に記載されている。IgG1b12は、CD4結合ドメインとオーバーラップしているエピトープを認識し、CD4/gp120相互作用を阻害することが示された。
HIVIGは、NABI(Boca Raton、Florida、USA)により調製され、複数のHIV−1陽性患者に由来する精製されたポリクローナルHIV−1特異的免疫グロブリンを含有していた。98%の単量体IgGを含有している調製物が、ジョン・マスコラ博士(Dr.John Mascola)から好意により提供された。
b)細胞
シンシチウム阻害アッセイ用のAA−2細胞系は、NIHエイズ・リージェント・リファレンス・プログラム(AIDS Reagent Reference Program)から入手された(M.ハーシュフィールド(Hershfield)により提供された)。細胞は、10%熱不活化FCS及び4mM L−グルタミンが補足されたRPMI−1640(Biochrom、Berlin、Germany)を含有している細胞培養培地(CCM)において週1回2回継代された。
ウイルス中和アッセイ用のPBMCは、HIV陰性有志者に由来する血液の400*gでのフィコール(Ficoll)勾配遠心分離により得られた。
細胞は、使用前に2日間、20U/mL IL−2及び抗生物質(ペニシリン100U/mL、ストレプトマイシン100μg/mL;Biochrom、Berlin、Germany)が補足されたCCMにおいてフィトヘマグルチニン(Sigma、St.Louis、MO)により刺激(stimulate)された。
c)ウイルス
HIV−1初代単離物92BR021/030、92RW009/021、92TH14/21/24及び92UG001/029/037は、HIVの単離及び特徴決定のためのWHOネットワーク(WHO Network for HIV Isolation and Characterization)から得られ、MRCエイズ・リージェント・プロジェクト(AIDS Reagent Project)により提供された。
ウイルスWYG、WRF、WHM、WRB及びWSCは、オーストリアの末期エイズ患者より過去に単離された。S2/02、S2/03、S2/04、S2/05、S2/06、S2/08、S2/09及びP6/71と名付けられた単離物は、無症候性HIV−1陽性有志者から、2F5及び2G12による1999/2000年の第一相臨床試験の間に単離された。ウイルスは、刺激されたPBMC上で増殖させられ、無細胞上清としてテストされた。
TCLAウイルスHTLV−IIIB、HTLV−IIIMN及びHTLV−IIIRFは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)及びNIHエイズ・リサーチ・アンド・リファレンス・リージェント・プログラム(AIDS Research and Reference Reagent Program)により提供された感染H9細胞に由来し;cl82はE.M.フェンヨー博士(Dr.E.M.Fenyo)より提供された。ストックは、AA−2細胞上で増殖させられ力価測定された。50%組織培養感染価(TCID50)は、リード(Reed)及びミュンチ(Muench)(Reed LJ and Muench H;AM J Hygiene 1938;27:493−497)の方法に従い計算された。
<実施例1>
ELISAによるエピトープマッピング
4E10エピトープのマッピングのため、アナスペック社(AnaSpec,Incorporated)により製造されたHTLV−IIIMNの34個のオーバーラップしているgp41ペプチド(aa501から856、表1)を、エイズ・リサーチ・アンド・リファレンス・リージェント・プログラム(AIDS Research and Reference Reagent Program)より得た(番号2015から2049)。これらのペプチドの大部分が20アミノ酸長であり、連続ペプチド間には10アミノ酸のオーバーラップがあった。ペプチドGGGLELDKWASLは研究室内(in−hause)で合成された。
短縮型大腸菌組換えgp41MNペプチドは、NIBSCセントラライズド・ファシリティ・フォー・エイズ・リージェント(Centralised Facility for AIDS Reagents)を通してJ.レイナ博士(Dr.J.Raina)より提供された。ワクシニア組換えgp160IIIBは、イムノ(Immuno)−AG(Austria)からの寄贈であった。
マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp、Roskilde、Denmark)を、0.1M炭酸ナトリウム緩衝液中の1μg/mLという一定濃度又は10μg/mLから出発した段階希釈の合成ペプチドgp41MN又はgp160IIIBにより+4℃で一夜コーティングした。プレートを、0.1%トゥイーン(Tween)20を含有しているPBSで洗浄し、37℃で2時間2%スキムミルクでブロッキング(block)した。洗浄後、4E10又は2F5の段階希釈物(500ng/mLから出発)又は一定濃度(100ng/mL)を、1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、RTで1時間西洋ワサビペルオキシダーゼ(Zymed、San Francisco、CA)と結合したヤギ抗ヒトIgG(g)と共にインキュベートした。プレートを洗浄し、0.03%H202を含有している1,2−o−フェニレンジアミン二塩酸(OPD;Sigma、St.Louis、MO)染色溶液により現像した。
2.5N H2SO4により反応を停止させた後、光学密度(OD)を492/620nmで測定した。
競合研究については、オーバーラップしているgp41MNペプチド全て、GGGLELDKWASL及びgp41MNをテストした。一定濃度の4E10(250ng/mL)を、37℃で2時間、ペプチドの段階希釈物(合成ペプチドについては50μg/mL、gp41については5μg/mLから出発)と共にプレインキュベートした後、ペプチド2031又はgp41(1μg/mL)でコーティングされたプレートへ添加した。
共焦点顕微鏡検査及びフローサイトメトリーによる免疫蛍光分析
共焦点顕微鏡検査については、初代HIV−1ウイルス(S2/02、S2/04、S2/08)を感染させたPBMCを、37℃で1時間、スライド(Biorad、Munchen、Germany)に付着させた。同一ドナーの未刺激の未感染PBMC及び分裂促進因子により刺激された未感染PBMCを、陰性対照とした。スライドをPBSで洗浄し、20分間PBS中の5%スキムミルクによりブロッキングした。抗体4E10、2F5、2G12及びHIVIGを、100μg/mLの濃度で適用し、+4℃で1時間インキュベートした。細胞をPBS/スキムミルクで洗浄し、FITC標識ポリクローナルヤギ抗ヒトIgG(g)(Sigma、St.Louis、MO)と共に1時間インキュベートした。PBSによる徹底的な洗浄の後、細胞を20分間パラホルムアルデヒド(3%)で固定し、続いてPBSで洗浄した。蛍光シグナルを、バイオラド(Biorad)MRC600共焦点顕微鏡で可視化した。
別法として、PBMCの染色の前にパラホルムアルデヒド固定を行い、インキュベーション工程を37℃で行う、同一の実験を実施した。
フローサイトメトリー分析については、HIV−1感染PBMC(単離物S2/02、S2/04)、PHA−Pにより刺激された未感染細胞及び未刺激の未感染細胞を、洗浄し、+4℃で30分間10%FCSを含有しているPBSによりブロッキングした。PBMCを、氷上で1時間、4E10、2F5及びHIVIG(100μg/mL)と共にインキュベートした。PBS/FCSによる洗浄の後、細胞を、再び氷上で1時間、ポリクローナルFITC標識ヤギ抗ヒトIgG(g)と共にインキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、室温で1時間3%パラホルムアルデヒドで固定した後、ファックス・バンテージ(FACS−Vantage)(Becton Dickinson、San Jose、CA)で分析した。
シンシチウム阻害アッセイ
シンシチウム阻害は、以前に記載されたように(パーチャー(Purtscher)ら、AIDS Res Hum Retroviruses 1994;10:1651−1658)、読み取りとしてシンシチウム形成を用いて、指標細胞系としてAA−2細胞を使用して査定した。簡単に説明すると、CCM(5μg/mL;Sigma、St.Louis、MO)を含有しているポリブレン中の抗体の段階希釈物を、37℃で1時間102から103TCID50/mLのウイルスと共にプレインキュベートした後、AA−2細胞を添加した。細胞を5日間インキュベートした後、シンシチウム形成を評価した。実験は、1希釈段階につき4から8個のレプリケート(replocates)を用いて実施した。1ウェル当たり少なくとも1個のシンシチウムの存在を、HIV−1感染の指標と見なした。50%阻害濃度(IC50)は、リード(Reed)及びミュンチ(Muench)、AM J Hygiene 1938;27:493−497の方法に従い計算した。実験は、2F5、2G12及び4E10を用いて実施した。
全てのアッセイに、感染力価を確認するための接種物のウイルス力価決定を含めた。別の実験においては、抗体及びウイルスのプレインキュベーション工程を省略した。
中和アッセイ
hu−mAb 4E10(=4E10−IgG1)、2F5(2F5−IgG1)、2G12及びIgG1b12の中和活性を、以前に記載されたようにして(パーチャー(Purtscher)ら、AIDS Res Hum Retroviruses 1994;10:1651−1658)、PBMCに基づく中和アッセイにおいて決定した。抗体の段階希釈物を、37℃で1時間ウイルスと共にプレインキュベートした後、PBMCを添加し、さらに7日間インキュベートした。実験は1希釈段階につき4個のレプリケートを用いて実施した。アッセイ終了時に、高感度p24−ELISA(ステインドル(Steindl)ら、J Immunol Methods 1998;217:143−151)により、ウイルス増殖を測定した。対照培養物におけるp24抗原産生に対するmAb含有培養物におけるp24抗原産生の比率を、インプットp24を考慮に入れて計算し、50%の阻害を引き起こすmAb濃度(μg/mL)を線形回帰分析により決定した。各アッセイには、実際のTCID50を決定するためのウイルス力価決定を含めた。ウイルス力価が102から103TCID50の間にある場合にテストを妥当と見なし、最大の複製はインプットp24より少なくとも5倍高いp24濃度をもたらした。
mAb組み合わせの相乗作用の決定
組み合わせられたmAbの相乗中和効果の計算は、チョウ−タラレイ(Chou−Talalay)(チョウ(Chou)TC及びタラレイ(Talalay)、Adv Enzyme Regul 1984:22:27−55)の方法に従って決定した。簡単に説明すると、50%の阻害を達成するために必要な単一mAbの量を、mAbの組み合わせを使用した場合に必要とされる濃度と比較した。組み合わせ指数(CI)を、方程式CI=(D1)/(Dx)1+(D2)/(Dx)2に基づき計算した。(Dx)1及び(Dx)2は、50%の中和を達成するために必要とされた単独のmAb1及びmAb2の濃度であり、(D1)及び(D2)は組み合わせて使用した場合のmAb1又はmAb2の用量である。CI<1は相乗作用を示し、CI=1は相加効果(additive)を示し、CI>1は拮抗(antagonism)を示す。
結果:
4E10の結合領域を決定するため、ELISAにより、三十四(34)個のオーバーラップしているgp41MNペプチドを、4E10との反応性に関してテストした。最小2F5 gp41−エピトープを含むペプチドGGGLELDKWASLを陰性対照として使用し、gp41MN及びgp160IIIBを陽性対照とした。
両抗体が同一のエピトープを認識する可能性を探求するため、2F5を平行してテストした。4E10は、ペプチド2031、gp160(図1及び表1)及びgp41と用量依存的に結合した。他のペプチドは、4E10との有意な反応性を示さなかった。2F5は同一のペプチドと結合し、さらにペプチド2030(図1及び表1)及びGGGLELDKWASLペプチドと結合した(全部、ELDKWA配列を含有している)。
Figure 0004243187
全ての合成gp41MNペプチド及びgp41を用いて実施された競合研究により、ペプチド2031及びgp41のみが4E10と反応することが確認された(gp160はテストしていない)。一定量の4E10のペプチド2031及びgp41の段階希釈物とのプレインキュベーションのみが、mAb 4E10のgp41(図3(A))又はペプチド2031(図3(B))との結合の用量依存的な阻害をもたらした。他のペプチドは、4E10の結合を阻害することができなかった。
上記の結果より、本発明者らは、4E10の最小結合エピトープ(コアエピトープ)が、ペプチド2031上に完全に存在し、2F5のELDKWASエピトープの後に位置しており、aa配列LWNWFDITNWL(gp41のaa670から680位;TCLA単離物HTLV−IIIMNによる番号付け)内に存在するとの結論を下した。より小さなペプチドを使用したより詳細なマッピングによって、aa配列NWFDIT(HTLV IIIMNのgp41のaa672から677)を含む6アミノ酸のコアエピトープが明らかとなった。しかしながら、このコアエピトープを合成ペプチドの形態で、好ましくは適当な免疫原性担体と組み合わせて、又はそれと連結させて免疫感作目的のために使用する場合には、この六量体アミノ酸配列の片側又は両側に隣接しているアミノ酸が、最良の中和効率を達成するのに有利であるかもしれない。
従って、HIV−1のgp41の断片であり、TCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa672から677に相当するアミノ酸配列を含む、HIV−1の標的細胞への侵入を妨害し、好ましくはインヴィトロ及び哺乳動物宿主のインヴィヴォにおいてHIV−1中和免疫応答も誘導する、そのような合成ペプチドを提供することが、本発明の目的である。
一つの実施形態において、本発明の合成ペプチドは、そのアミノ酸配列の片側又は両側に、HIV−1のgp41に見られるものと同一の組成及び同一の順序で存在する1個以上の隣接アミノ酸を含む。本発明の合成ペプチドは、23個以下のアミノ酸から構成されることが好ましい。また、1個以上の隣接アミノ酸が、TCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa658から680(EQELLELDKWASLWNWFDITNWL)に相当する位置においてHIV−1のgp41に見られるものと同一の組成及び同一の順序で存在することも好ましい。
4E10のコアエピトープ及び拡張コアエピトープ、即ち、NWFDIT、SWFGIT、TWFGIT、NWFSIT、LWNWFDITNWL、LLELDKWASLWNWFDITNWL、EQELLELDKWASLWNWFDITNWLからなる群より選択されるアミノ酸配列と同一であるか又は(相同性により)それらに相当するアミノ酸配列を含む合成ペプチドの両方のみならず、コアエピトープと拡張コアエピトープとの間のaa配列を有する任意のペプチドも、抗HIV−1ワクチンの製造のため、そしてmAb 4E10に対する抗イディオタイプ抗体の誘発及びスクリーニングのため、使用され得る。しかしながら、遺伝暗号の縮重による、又は異なるHIV−1単離物間のバリエーションによるこれらのaa配列の小規模な改変も、前記のmAb 4E10のコアエピトープ及び拡張コアエピトープのペプチドの範囲内に包含されることが強調される。
さらに、もう一つの好ましい実施形態によると、本発明の合成ペプチドは、適当な免疫原性担体と組み合わせられる。それらは、例えばインフルエンザウイルス又はインフルエンザウイルス赤血球凝集素のような、ウイルス又はウイルスタンパク質に共有結合的に連結されることが、特に好ましい。その他の担体、特にウイルスエンベロープタンパク質も、適当であり得る。
<実施例2>
4E10結合特徴の免疫蛍光分析
以前に報告された(ブチャチャー(Buchacher)ら、前記参照)、4E10の、感染PBMCの表面上に存在するHIV−1抗原との相互作用、及び可能性のあるMHCクラスIIとの交差反応性を研究するため、本発明者らは、4E10の、未刺激HIV−1陰性PBMC、PHA−Pにより刺激されたHIV−1陰性PBMC、及びHIV−1感染PBMCとの結合研究を実施した。共焦点顕微鏡検査及びフローサイトメトリーを使用した間接免疫蛍光により、4E10の結合を、2F5、2G12及びHIVIGの結合と比較した。
有意な結合は、感染細胞にのみ検出され、2G12及びHIVIGは強く結合し、4E10及び2F5は弱い反応性のみを示した(示されないデータ)。また、4E10が、2F5、2G12及びHIVIGより強く未感染PBMCと結合することはなかった。37℃で染色された予め固定された細胞と比較して、+4℃で染色された未固定細胞に関して得られた結果には差が観察されなかった。
<実施例3>
T細胞系馴化(TCLA)HIV−1株によるシンシチウム阻害アッセイ
AA−2細胞におけるTCLA単離物HTLVIIIB、HTLVIIIRF、HTLVIIIMN及びcl82によるシンシチウム形成を阻害するヒトモノクローナル抗体4E10(=4E10−IgG1)の能力を、mAb 2F5及び2G12の対応する能力と比較した。MAb 2G12は、V1ループ、V2ループ及びV3ループ又はCD4結合部位に無関係なgp120上のコンフォメーション感受性グリコシル化依存性のエピトープを認識する(トルコラ(Trkola)ら、J Virol 1996;70:1100−1108)。4E10及び2F5は、4個のウイルス全てのシンシチウム形成を阻害したが、2G12はHTLV−IIIMNを中和しなかった(表2)。
Figure 0004243187
gp41のイムノドミナントループ内のエピトープを認識するmAbである3D6(ブチャチャー(Buchacher)ら、前記参照)は、非中和対照として機能し、シンシチウム形成を阻害することができなかった。4E10の50%阻害濃度は、MN株に対する0.3μg/mLからRF株に対する12.5μg/mLまでの範囲であった。2F5及び2G12は、2G12がHTLV−IIIMNウイルスを中和しなかったことを除き、ほぼ同等に低い濃度でTCLA株を中和した。
4E10は、HTLVIIIMNに対する最も強力なmAbであり、2F5はHTLVIIIB及びcl82に対する最も強力なmAbであり(0.3μg/mL)、2G12は他の2個のmAbより低い濃度(2.4μg/mL)でHTLVIIIRFを中和した。
<実施例4>
ウイルスとmAbとのプレインキュベーションのシンシチウム阻害に対する影響
標的細胞へ添加する前にウイルスを抗体と共にプレインキュベートした場合の影響を決定するため、別法としてプレインキュベーション工程なしのアッセイを実施した。ウイルス(HTLVIIIRF)及びmAb(4E10、2F5、2G12)を、同時にAA−2細胞に添加した。4E10(−IgG1)及び2F5(−IgG1)については、プレインキュベーションを行った場合と行わなかった場合とで結果は異ならなかったが、2G12については、1時間のプレインキュベーション工程の後に300%という劇的な増加が観察された。
<実施例5>
初代HIV−1単離物の中和
次に、PBMCに基づく中和アッセイにおいて、異なるクレードの初代単離物のパネルに対するmAb 4E10(−IgG1)の中和活性を、2F5、2G12、IgG1b12の対応する活性と比較した。
IgG1b12は、gp120上のCD4結合ドメインとオーバーラップしている不連続のエピトープと結合する(バートン(Burton)ら、Science 1994;266:1024−1027を参照のこと)。50%の中和が達成されたmAb濃度が、表3に示される(2回の独立の実験から得られた値)。
Figure 0004243187
4E10は、50μg/mL未満の濃度で、テストされた単離物22個中18個を中和し、2F5は22個中20個、2G12は22個中13個、IgG1b12は6個中5個を中和した。例えば、4E10は、単離物S2/05に対して2G12と同等の活性を有し、2F5及びIgG1b12より高活性であった(図2)。中和されたウイルスに関してウイルスの複製の50%の阻害を達成するのに必要な平均濃度は、5.7μg/mL(4E10)、2.6μg/mL(2F5)、0.7μg/mL(2G12)及び12.4μg/mL(IgG1b12)であった。4個の抗体全てに耐性のウイルスは存在しなかった。さらに、各ウイルスは、抗gp41抗体4E10又は2F5のうちの少なくとも1個により中和され、22個中16個の単離物が両方のmAbにより中和され、22個中2個が4E10のみにより、22個中4個が2F5のみにより中和された。
<実施例6>
ハイブリドーマmAb 4E10−lgG3及びCHO組換えmAb 4E10−IgG1の中和活性の比較
PBMCに基づく中和アッセイを、初代HIV−1単離物を用いて実施した(実施例5を参照のこと)。
Figure 0004243187
結果は、印象的に、既知のmAb 4E10−IgG3と比べたmAb 4E10−lgG1の中和効率の顕著な増加を証明している。
<実施例7>
mAb 4E10及び2F5の組み合わせ適用
4E10及び2F5は近接したエピトープを認識するため、初代ウイルスの中和における2F5及び4E10の可能性のある阻害性相互作用を、2F5抗体又は4E10抗体のいずれかを含有している調製物を、2個の抗体の組み合わせ(1:1比率)を含有している調製物と比較することにより、5個の異なる初代ウイルス(S2/02、S2/03、S2/04、S2/06及びS2/08)に関して研究した。2F5(−IgG1)と4E10(−IgG1)との組み合わせは、全ての実験において、わずかに相乗的又は相加的な効果(CI≦1)をもたらし;いずれの実験においても、拮抗的な効果は検出されなかった。2G12及びIgG1b12も含めた、初代単離物P6/71を用いた付加的な実験の結果が、図4(A)、図4(B)及び図4(C)に示されている。この実験に関する組み合わせ指数(CI50)は、4E10と2F5との組み合わせで0.64、4E10と2G12との組み合わせで0.23、4E10とIgG1b12との組み合わせで0.87であり、2G12及びIgG1b12も、4E10と拮抗せず、相乗的ではないにしても相加的な効果を示すことを示している。
Figure 0004243187
2F5及び4E10のペプチド2030、2031及びgp160IIIBとの結合。ペプチドの二倍段階希釈物を、ELISAプレートに一夜コーティングした後、一定量の4E10又は2F5(100ng/mL)と共にインキュベートした。結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合したヤギ抗ヒトIgG(γ)により検出した。 2F5、2G12、4E10及びIgG1b12による初代単離物S2/05の中和。アッセイは、複製マーカーとしてp24産生を使用してPBMCで実施した。mAbを含まない培養物におけるp24の量は、195ng/mLであった。 mAb 4E10をgp41又はペプチド2031と共にプレインキュベートした後の、(図3(A))gp41又は(図3(B))ペプチド2031が予めコーティングされたELISAプレートとのmAb 4E10の結合の阻害。ペプチドgp41又は2031の二倍段階希釈物を、一定量の4E10(250ng/mL)と共にプレインキュベートした後、gp41又はペプチド2031がコーティングされたプレートへ添加した。抗体の結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合したヤギ抗ヒトIgG(γ)により検出した。 4E10、2F5(図4(A))、2G12(図4(B))、IgG1b12(図4(C))及び二重組み合わせ(1:1)による初代単離物P6/71の中和。50%中和における組み合わせ指数(CI50)が示されている。アッセイは、複製マーカーとしてp24産生を使用してPBMCで実施された。mAbを含まない培養物におけるp24の量は、96ng/mLであった。相乗作用は、CI<1を相乗作用の指標とするチョウ−タラレイ(Chou−Talalay)の方法により決定した。

Claims (11)

  1. TCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa672から677(NWFDIT)、NWFNIT,SWFGIT,TWFGIT,又は、NWFSITを有するアミノ酸配列と結合し、かつ、ECACC受託番号90091704のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体2F5、及び/又は、ECACC受託番号93091517のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体2G12による中和に対して非感受性のHIV−1変異体を中和する活性を有する、ECACC受託番号90091703のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体4E10−IgG3以外のHIV−1中和モノクローナル抗体であって、
    前記HIV中和モノクローナル抗体が、ECACC受託番号01110665のチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)から産生されるモノクローナル抗体4E10−IgG1である
    ことを特徴とするHIV−1中和モノクローナル抗体。
  2. 請求項1に記載の抗体を含有することを特徴とする、哺乳動物細胞のHIV−1感染の阻害又は防止に使用される医薬組成物
  3. 前記医薬組成物が、請求項1に記載の抗体のほか、1つ以上の前記抗体とは別のHIV−1中和抗体を含有することを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 前記医薬組成物が、ECACC受託番号90091704のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体2F5、及び、ECACC受託番号93091517のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体2G12のうち一方又は両方を含有することを特徴とする請求項2または3に記載の医薬組成物。
  5. HIV−1感染に対して使用される医薬組成物の製造用の、ECACC受託番号01110665のチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)から産生されるモノクローナル抗体4E10−IgG1。
  6. 前記医薬組成物が、ECACC受託番号90091704のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体2F5、及び、ECACC受託番号93091517のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体2G12のうち一方又は両方による中和に対して非感受性のHIV−1株による哺乳動物細胞の感染の阻害又は防止に使用されるものであることを特徴とする請求項5に記載のECACC受託番号01110665のチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)から産生されるモノクローナル抗体4E10−IgG1。
  7. モノクローナル抗体4E10−IgG1の4E10結合パラトープと反応性であるペプチドの誘発、または、スクリーニング用の、ECACC受託番号01110665のチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)から産生されるモノクローナル抗体4E10−IgG1。
  8. 前記ペプチドが、抗イディオタイプ抗体であることを特徴とする請求項7に記載のECACC受託番号01110665のチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)から産生されるモノクローナル抗体4E10−IgG1。
  9. 前記ペプチドが、TCLA単離物HTVL IIIMNのgp41のaa672から677(NWFDIT)、NWFNIT,SWFGIT,TWFGIT,又は、NWFSITを有するアミノ酸配列を含むHIV−1のgp41の断片を模倣するペプチドであることをと特徴とする請求項7または8に記載のECACC受託番号01110665のチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)から産生されるモノクローナル抗体4E10−IgG1。
  10. 請求項1に記載のHIV−1中和モノクローナル抗体を含有することを特徴とする、HIV−1感染に対して哺乳動物レシピエントに能動免疫を与えるための医薬組成物。
  11. ECACC受託番号90091704のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体2F5、及び、ECACC受託番号93091517のハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体2G12のうち一方又は両方である、請求項1に記 載のHIV−1中和モノクローナル抗体とは別のHIV−1中和モノクローナル抗体を含有することを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
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