JP4242605B2 - Emi記録装置及び信号変換装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁障害(EMI:ElectroMagnetic Interference)の記録装置に関し、特にペースメーカーに対するEMIの記録装置に関する。
本発明は又、心電図波形とペーシングパルスとを併せて記録することを可能にする信号変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
不整脈等、心臓の脈動に関する疾患に対処する方法として、ペースメーカーが広く用いられている。ペースメーカーは主に患者の体内に埋め込まれ、所定の周期で心臓に微弱な電流を供給することにより、脈動を制御するものである。近年ではペースメーカーの高機能化が進み、心臓の脈動を監視して必要な場合のみ電流を供給するものや、加速度、体温、呼吸数、心電図のQT時間等を検出し、パルス発生周期を自動的に変化させるもの、心電図の特定波形に同期させてパルスを発生させるもの、供給する電流の波形を制御可能なものなど、様々な機能レベルのペースメーカーが存在する。
【0003】
一方、携帯電話に代表される無線通信機器の急激な普及やコンピュータ機器の小型化により、ペースメーカーの近くに電磁波発生体が存在する可能性もまた増加している。電磁波によりペースメーカーが影響を受けること自体は電車内等でも報知されており、社会的にも知られるところとなってきている。しかし、ペースメーカーの使用者と健常者とは外見から区別できないこともあり、また電源を切る手間もあり、実際には混雑した電車内等の人が密集する環境においても多くの携帯電話は電源を切られることなく使用されている。
【0004】
逆にペースメーカーを使用している側から見れば、いつどこでペースメーカーがEMIによる影響を受けるのか分からず、不安を抱えて日常生活を送ることになりかねない。このため、実際にどのような事象がペースメーカーの動作に使用を与えるのかを調査し、ペースメーカーの使用者及び健常者に認知させることが重要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ペースメーカーが内蔵するメモリは電力消費を抑える目的もあり容量に余裕がない。そのため、障害が発生した場合、その原因を特定するに十分な量の情報を記録に用いるには不十分である。
【0006】
また、実際に使用されているペースメーカーを用いてこのような調査を行うことはできないため、ペースメーカーに対するEMI評価には、人体モデルが用いられてきた。従来人体モデルとして用いられているIrnischのモデルは、EMIによって人体内に生じる電磁現象の再現という点では優れているが、携帯して使用するには不向きであり、日常生活で受けるEMIの記録に使用することはできない。
【0007】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、場所を問わず、かつ正確に、ペースメーカーに対するEMIの影響を記録可能なEMI記録装置を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、EMIの測定を心電波形の記録と同時に、かつ簡便に行うことを可能とする信号変換装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、ペースメーカーに対するEMIを記録するEMI記録装置であって、被験者の心電信号を取得するための電極と、被験者の体表面に取り付けた、自己心拍を認識した際にペーシングパルスを出力する動作モードに設定されたペースメーカーに接続され、当該ペースメーカーが出力するペーシングパルスを受信し、所定のレベル及び波形を有する記録用信号に変換する信号変換手段と、電極を介して取得した心電信号と、記録用信号とを記録する記録手段を有することを特徴とするEMI記録装置に存する。
【0009】
また、本発明の別の要旨は、心電計を用いてペースメーカーに対するEMIを記録させるための信号変換装置であって、被験者の心電信号を取得するための電極と、被験者の体表面に取り付けた、自己心拍を認識した際にペーシングパルスを出力する動作モードに設定されたペースメーカーとに接続され、電極から心電信号を、ペースメーカーからペーシングパルスをそれぞれ受信する入力手段と、ペーシングパルスを、心電計が記録可能なレベル及び波形を有する記録用信号に変換する信号変換手段と、心電信号と記録用信号とをそれぞれ別個の心電信号として出力する出力手段とを有することを特徴とする信号変換装置に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明をその好適な実施形態に基づき詳細に説明する。
(装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係るEMI記録装置を使用してペースメーカー23に対するEMIの測定を行う場合の全体構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係るEMI記録装置は、本体100と、心電図測定用の電極22及び、電極22とペースメーカー23からの信号を変換する変換回路21とから構成される。
【0011】
本実施形態において、本体100及び心電図用電極22は従来使用されている携帯型の心電計、例えばホルタ心電計の本体及び電極を流用可能である。テープ駆動による誤差を無くすため、半導体メモリ等にデータを記録する所謂ディジタル心電計であることが好ましい。
【0012】
図1において、1はROM2に格納されている制御プログラムを実行してEMI記録装置全体の制御を司るCPU、2はCPU1が実行するプログラムや処理に必要なパラメータ等を記憶するROM、3は各種処理経過等を一時的に記憶するRAM、4は被験者から収集した心電図波形及びペースメーカー23の出力パルス波形等をディジタルデータの形式で記憶する記憶装置としての書き込み可能な不揮発性メモリである。本実施形態において記憶装置4はフラッシュメモリやカード型のハードディスクドライブ等の着脱可能な記録媒体を用いる。
【0013】
この記憶装置を記録装置本体100から取り外して生体情報処理装置にセットすることにより、記憶装置に記録された心電図波形やペースメーカー23の出力パルス波形等を読み出し、処理することができる。もちろん、記録装置ごと生体情報処理装置に接続するための通信インタフェース20を設け、通信インタフェース20を介して不揮発性メモリ4内に記録された情報を生体情報処理装置40に転送してもよい。生体情報処理装置40は図1に示すように公衆電話網やLAN、インターネット等の通信網30を介して接続されても、ケーブル等により直接接続されても良い。
【0014】
計時部5は装置内時計であり、CPU1の動作クロックとして用いられるほか、測定時間の記録等にも用いられる。表示部6は電極22から検出した心電図波形やペースメーカー23から取得した出力パルス波形等を表示する表示部であり、例えばLCDで構成される。操作部7はキーやボタン、タッチパネル等から構成され、EMI記録装置に対する各種設定や指示の入力に用いられる。本実施形態においては、操作部7はCPU1の入力ポートに接続されており、CPU1はこの入力ポートを読み込むことによりいつでも操作部7からの入力を検出することができる。
【0015】
また、A/D(アナログ−ディジタル)変換部10は変換回路21を介して入力されたアナログ形式の心電波形及びペースメーカー23の出力パルス波形を所定のサンプリング条件でサンプリングし、ディジタル情報に変換する。加速度データ検出部11は被験者の移動情報(姿勢情報等)を検出する。
【0016】
電源回路9はEMI記録装置の動作に必要な電力を供給する。電源回路9は例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池と、安定化回路等から構成される。
【0017】
変換回路21は、心電図用電極22からの心電信号とペースメーカー23の出力パルス波形に所定の波形変換処理を行い、変換後の波形を本体100のA/D変換部10へ供給する。
【0018】
(変換回路21の構成)
図2は、本実施形態における変換回路21の構成例を示す回路図である。変換回路21は高出力、短時間のパルス波形であり、そのままでは心電計で記録できないペーシングパルスを記録可能な波形に変換して出力することを主な目的とした回路である。具体的には、ペーシングパルスのレベルを心電信号と同等の、あるいは少なくとも心電計で記録が可能なレベルを有し、かつ心電図と併せて出力する際にパルスの出力が明確に分かる程度の持続時間を有する信号に変換して出力する。従って、この目的を達成できれば変換後の波形はどのようなものであっても構わないが、本実施形態においては矩形パルスに変換するものとする。
【0019】
図2において、ペースメーカー23のリード線は入力端子A、Bに接続される(ペースメーカー23が双極型(バイポーラ)の場合。単極型(ユニポーラ)では入力端子Aのみに接続)。入力端子には擬似人体抵抗(ここでは1kΩ)が並列に接続され、変換回路21の入力インピーダンスを調整することで変換回路21自体がEMIの影響を受けることを防止している。
【0020】
ペースメーカー23のリード線が入力端子に接続されると、スイッチ221が閉じ、変換回路21へ電源が投入される。入力端子Aから供給されるペーシングパルスは、発振回路222へ入力され、発振回路222はペーシングパルスから所定のパルス幅(ここでは数10msec)を有するパルス波形を生成する。このパルス波形はさらにクランプ回路223においてレベル変換され、心電計である本体100で記録可能なレベル、具体的には数mVのレベルに変換される。
【0021】
クランプ回路223から出力される記録用信号であるペーシングパルスは、2ch側の心電信号として本体100へ供給される。
【0022】
一方、心電図用電極22からの心電信号は、変換回路21によって特に処理する必要はないが、ペーシングパルスと心電信号とを別系統で本体100へ入力する構成とすると、構成が煩雑になるため、本実施形態においては心電図用電極22からの心電信号も変換回路21に入力し、1ch側の心電信号として変換後のペーシングパルスとまとめて本体100に供給する構成としている。このように構成することで、1つのコネクタで心電信号とペーシングパルスとを本体100へ供給することが可能である。
【0023】
(EMIの記録)
本装置を用いてペースメーカー23へのEMIを記録する場合、ペースメーカー23の装着及び接続を除き、その手順は通常のホルタ心電計を用いた心電図記録時の手順とほぼ同一である。
【0024】
例えば、まず、装置本体100を、被験者のベルトに通すか、ホルスター等を用いて被験者に装着させる。次に、ペースメーカー23をテープもしくは柔軟性のあるバンド等により、被験者の体表面に装着する。この際、実際に植え込みが行われる部位に対応した位置の体表面(左前胸部)に装着することが好ましい。また、ペースメーカー23が双極型であれば体表面に接して取り付ける必要はないが、単極型にも対応できるよう、原則として体表面に取り付けるものとする。ペースメーカー23を取り付けたら、リード線を変換回路21に接続する。また、心電図用電極22も体表面に装着する。心電図用電極22の装着位置は通常ホルタ心電計で用いられる部位でよい(例えば、右前胸部及び左右腹部)。そして、心電図用電極22の手前側を変換回路に接続する。そして、最後に変換回路21の出力を本体100に接続する。変換回路21は必要に応じて被験者の衣服や体表面等に取り付ける。
【0025】
また、ペースメーカー23はEMIを検出した場合にペーシングパルスを出力するように動作モードを設定することが好ましい。具体的にはICHD(Inter-Society Commission on Heart Disease Resources)コードにおける第3文字(応答様式)を”T(トリガ/同期)”に設定する。従って、ペースメーカー23の動作モードは
VVTモード(心室同期型、R波同期型、R波トリガ型)
AATモード(心房トリガ型、P波トリガ型)
VATモード(心房同期型、P波同期型)
等となる。
【0026】
なお、応答様式を”I(抑制)”としてもEMIの周波数及びペーシングレートによってはEMIを記録可能であるが、より確実かつ容易に記録を行うためには”T”とすることが好ましい。
【0027】
ペースメーカー23は常時動作しているものとすると、本体100の操作部7を用いて記録開始を指示することにより記録動作が開始する。
すなわち、A/D変換部10では、変換回路21から供給される心電信号及びペーシングパルスを所定レベルまで増幅した後、所定の周波数、ビット数でサンプリングしてディジタル信号に変換し、CPU1はこのディジタル信号を計時部5の計時時刻情報とともに不揮発性メモリ4の所定領域に順次書き込んでいく。
【0028】
このようにして、予め設定された時間又は不揮発性メモリ4の記憶容量の許す限り心電図信号及びペーシングパルスの検出及び記録動作を継続する。なお、不揮発性メモリ4の記憶容量がなくなった場合には、記録動作を中止する様に動作しても、あるいは、再び最初に書き込んだところから上書きし、常に最新の所定時間分の信号が記録されている状態となるように制御してもよい。
【0029】
(実施例)
上述したEMI記録装置を用いて、以下のようにEMIの記録を行った。健常な成人男性3名(平均年齢28歳)の左前胸部ににスエーデン国、ペースセッターAB社製の植え込み型ペースメーカーREGENCY SR+ 2400Lを取り付けた。ペースメーカーの動作モードはVVTモードに設定し、ペーシングレートを50ppmに設定した。また、本体にはフクダ電子(株)製デジタルホルター心電計FM−120を用い、1chに心電信号を、2chにペーシングパルスを入力するように変換回路21を形成した。変換回路21はペーシングパルスを1.5mV、50msecの矩形パルスに変換するように構成した。
【0030】
図3に、EMIが無い場合の心電波形及びペーシングパルス(の変換波形)を示す。上段が心電波形、下段がペーシングパルスを示す。図3から分かるように、ペーシングパルスは設定された周期で出力されており、周期に乱れはない。
【0031】
この状態で、故意にEMIを発生させた場合の波形図を図4に示す。図4において、”S”で示すタイミングでEMIを発生させた。この結果、対応する位置に矢印を付したペーシングパルス波形が記録された。これは、VVTモードに設定されたペースメーカー23が、EMIをR波と誤認してパルスを発生したものと考えられる。
【0032】
このように、本実施形態によるEMI記録装置を用いることにより、ペースメーカーに対するEMIを正確に、かつ簡便に記録することが可能である。特に、変換回路21を用いることにより、従来用いられている心電計を用いてペーシングパルスを記録できるため、従来の機器を有効利用できる上、心電波形とEMIの記録を同時にかつ容易に行うことが可能である。
【0033】
【他の実施形態】
上述の実施形態においては、本体100として汎用のホルタ心電計を流用する構成としたため、変換回路21が本体100の外部に接続される構成を説明したが、変換回路21を本体100に内蔵しても良い。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、場所を問わず、かつ正確に、ペースメーカーに対するEMIを記録することが可能となるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るEMI記録装置構成例と周辺機器との接続関係を示すブロック図である。
【図2】図1における変換回路21の構成例を示す回路図である。
【図3】図1に示すEMI記録装置によって記録した、正常時の心電波形及びペーシングパルス波形を示す図である。
【図4】図1に示すEMI記録装置によって記録した、異常時の心電波形及びペーシングパルス波形を示す図である。
Claims (5)
- ペースメーカーに対するEMIを記録するEMI記録装置であって、
被験者の心電信号を取得するための電極と、
被験者の体表面に取り付けた、自己心拍を認識した際にペーシングパルスを出力する動作モードに設定されたペースメーカーに接続され、当該ペースメーカーが出力するペーシングパルスを受信し、所定のレベル及び波形を有する記録用信号に変換する信号変換手段と、
前記電極を介して取得した心電信号と、前記記録用信号とを記録する記録手段を有することを特徴とするEMI記録装置。 - 前記記録手段が心電計であり、前記信号変換手段が、前記ペーシングパルスを前記心電計が記録可能なレベル及び波形を有する記録用信号に変換することを特徴とする請求項1記載のEMI記録装置。
- 前記記録用波形が、矩形パルス波形であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のEMI記録装置。
- 時刻を測定する計時手段をさらに有し、
前記記録手段が、前記電極を介して取得した心電信号と、前記記録用信号とを、前記計時手段が測定した時刻とともに記録することを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のEMI記録装置。 - 心電計を用いてペースメーカーに対するEMIを記録させるための信号変換装置であって、
被験者の心電信号を取得するための電極と、被験者の体表面に取り付けた、自己心拍を認識した際にペーシングパルスを出力する動作モードに設定されたペースメーカーとに接続され、前記電極から心電信号を、前記ペースメーカーからペーシングパルスをそれぞれ受信する入力手段と、
前記ペーシングパルスを、前記心電計が記録可能なレベル及び波形を有する記録用信号に変換する信号変換手段と、
前記心電信号と前記記録用信号とをそれぞれ別個の心電信号として出力する出力手段とを有することを特徴とする信号変換装置。
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