JP4242209B2 - タイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法および該製造方法により製造されるタイヤ用部材付きタイヤホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気圧センサや温度センサ等のタイヤ用部材をタイヤホイールに取り付ける方法として、タイヤホイールのリムにセンサ取り付け穴を加工し、この穴にセンサを挿入するようにしたり、あるいは、バルブステム取り付け穴を利用し、バルブステムとセンサとを一体的に構成すること(例えば、特許文献1、2参照。)が知られている。
【0003】
しかしながら、上述するリムにセンサ取り付け穴を設けた場合には、リムの強度や気密性等のリム本来の機能を低下させる問題があり、また、上述する特許文献1、2に記載のバルブステム取り付け穴を利用する場合には、振動、遠心力、および、ブレーキドラムのオーバーヒートなどにより発生する熱等によりセンサが取り付けられたバルブステムごと緩む問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−307069号公報
【特許文献2】
特開平11−342712号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上述した問題を解決し、さらに、高い硬化性を示し、タイヤ用部材への熱伝導を抑制することができる、タイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法および該製造方法により製造されるタイヤ用部材付きタイヤホイールの提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、1液型室温硬化性樹脂と多孔質体とを用いたタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法が、上述した問題を解決し、さらに、高い硬化性を示し、タイヤ用部材への熱伝導を抑制することができるタイヤ用部材付きタイヤホイールを製造できることを見出し本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)に記載のタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法、および、下記(5)に記載のタイヤ用部材付きタイヤホイールを提供する。
【0007】
(1)タイヤホイールにタイヤ用部材を取り付けてなるタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法であって、
タイヤホイールとタイヤ用部材との間の少なくとも一部に多孔質体を有し、該タイヤホイールと該多孔質体とを1液型室温硬化性樹脂を用いて接着させる多孔質体接着工程を具備し、
上記1液型室温硬化性樹脂が、1液型湿気硬化性ウレタン樹脂であり、
上記多孔質体の比重が、0.05〜2.0g/cm 3 であるタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法(第1の態様)。
【0008】
(2)上記多孔質体の比重が、0.1〜0.8g/cm 3 である上記(1)に記載のタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法。
【0009】
(3)上記タイヤホイールと前記多孔質体との接着場所が、上記タイヤホイールのリムウェル部である上記(1)または(2)に記載のタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法。
【0010】
(4)さらに、上記多孔質体と上記タイヤ用部材とを接着させるタイヤ用部材接着工程を具備する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法。
【0011】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法により製造されるタイヤ用部材付きタイヤホイール(第2の態様)。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1の態様に係るタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)は、タイヤホイールにタイヤ用部材を取り付けてなるタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法であって、タイヤホイールとタイヤ用部材との間の少なくとも一部に多孔質体を有し、該タイヤホイールと該多孔質体とを1液型室温硬化性樹脂を用いて接着させる多孔質体接着工程を具備し、上記1液型室温硬化性樹脂が、1液型湿気硬化性ウレタン樹脂であり、上記多孔質体の比重が、0.05〜2.0g/cm 3 であるタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法である。
また、本発明の製造方法においては、上記多孔質体接着工程の他に、上記多孔質体と上記タイヤ用部材とを接着させるタイヤ用部材接着工程を具備していることが好ましい。なお、上記多孔質体と上記タイヤ用部材とが、一体形成されている場合や、接着以外の固定手段により固定されている場合には上記タイヤ用部材接着工程は必要ない。
以下に、本発明の製造方法に用いるタイヤホイール、タイヤ用部材、多孔質体および1液型室温硬化性樹脂について詳述する。
【0013】
<タイヤホイール>
上記タイヤホイールは、従来公知のタイヤホイールであれば特に限定されず、その具体例としては、アルミ製のホイール(アルミホイール)、スチール製のホイール、マグネシウム製のホイール等が好適に挙げられる。
【0014】
<タイヤ用部材>
上記タイヤ用部材とは、タイヤ内部(タイヤおよび/またはタイヤホイール)に設置することができる従来公知のセンサ、装置等の部材のことであり、その具体例としては、上述したように空気圧センサや温度センサ等が好適に挙げられるが、他の例としては、具体的には、回転数検出装置(例えば、アンチロックブレーキシステム(ABS)に使用される磁気センサなど)、ICチップ(例えば、製造年月日・製造場所等の情報が記録された集積回路など)等が挙げられる。
また、上記タイヤ用部材の材質としては、一般的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン6、ナイロン66、熱可塑性ウレタン、ポリカーボネート、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が例示されるが、本発明においては、上記タイヤ用部材の材質は特に限定されない。
【0015】
上記タイヤ用部材の形状は、センサ、装置等の部材や、上記タイヤホイールとの接着場所により異なるため特に限定されず、平面状のものであっても、曲面状のものであってもよい。ここで、平面状のものとしては、具体的には、奥行きが1〜5cm程度、幅が3〜8cm程度、高さが0.5〜2cm程度の平板状のものが好適に例示される。
また、上記タイヤ用部材の質量は、センサ、装置等の部材によって異なるため特に限定されないが、一般的には10〜40g程度である。
【0016】
<多孔質体>
上記多孔質体とは、内部に大小さまざまな孔をもつ固体のことであり、後述する多孔質体接着工程もしくはタイヤ用部材接着工程において溶融(例えば、接着剤による溶解)せず、さらに第2の態様であるタイヤ用部材付きタイヤホイールとして使用する際に発生する熱に耐性を有するものであれば特に限定されない。
このような多孔質体としては、具体的には、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、フッ素系エラストマー、各種オレフィン系エラストマー、ポリエステル、アクリル樹脂、綿、絹などの繊維からなる編織物、不織布、フェルトおよび発泡体等の有機系多孔質体;シリカ・アルミナ系、ゼオライト系、多孔質ガラス、多孔質セラミック等の無機系多孔質体が挙げられる。
これらのうち、不織布または発泡体、特にウレタンからなる発泡体のシート(ウレタン発泡シート)、アクリルからなる発泡体のシート(アクリル発泡シート)を用いることが、孔径のコントロールが容易であり、生産性に優れるという利点がある理由から好ましい。
【0017】
本発明においては、上記多孔質体は、上記タイヤホイールと上記タイヤ用部材との間の少なくとも一部に形成されており、上記タイヤ用部材と一体形成されていてもよい。
また、上記多孔質体は、比重が0.05〜2.0g/cm3であり、0.1〜0.8g/cm3であることがより好ましい。多孔質体の比重がこの範囲であれば、該多孔質自体の強度が十分となり、また、該多孔質内を通る空気の通り道が十分に確保され、上記タイヤホイールとの接着に用いる上記1液型室温硬化性樹脂の硬化が進行し易くなる理由から好ましい。
さらに、上記多孔質体の形状は、その材料により適宜選択されるため特に限定されないが、平面状であることが好ましく、その平均厚さは、0.1〜5mm程度であることが好ましく、0.3〜3mm程度であることがより好ましい。平均厚さがこの範囲であれば、ブレーキ部で発生する熱(例えば、ブレーキドラムのオーバーヒートなどにより発生する熱等)の上記タイヤ用部材への熱伝導が抑制される理由から好ましい。
【0018】
このような多孔質体を上記タイヤホイールと上記タイヤ用部材との間の少なくとも一部に形成する本発明の製造方法は、該多孔質体中の空気を利用することができる理由から、該タイヤホイールと該多孔質体との接着に用いる上記1液型室温硬化性樹脂の硬化性が向上し、また、該多孔質体の接着面中央部における硬化性(以下、「深部硬化性」という)も良好となるため有用である。
【0019】
<1液型室温硬化性樹脂>
上記1液型室温硬化性樹脂とは、1液で室温硬化する樹脂のことであり、空気中の酸素および/または湿気により硬化性を示す樹脂を包含する。
このような1液型室温硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ポリサルファイド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらのうち、ウレタン樹脂であることが空気中の湿気により硬化する速度が速く、硬化後の強度が良好となる理由から好ましい。
【0020】
上記ウレタン樹脂とは、ポリオール化合物と過剰のポリイソシアネート化合物(すなわち、水酸基に対して過剰のイソシアネート基)を反応させて得られる反応生成物(以下、「ウレタンプレポリマー」という)であって、一般的に、0.5〜5質量%のイソシアネート基を分子末端に含有する。
【0021】
このようなウレタンプレポリマーを生成するポリイソシアネート化合物としては、公知の1液型のポリウレタン樹脂組成物の製造に用いられるものが使用でき、その具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6 XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;上記各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
また、上記ウレタンプレポリマーを生成するポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオールを用いることができる。これらのポリオール化合物のうち、少なくともポリエーテルポリオールを用いる場合、すなわち、ポリエーテル骨格を有するポリオールがウレタンプレポリマーに含まれる場合には、硬化前の樹脂の粘度や、硬化物の弾性が優れることになるため好ましい。
【0023】
ここで、ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール;ポリオキシテトラメチレンオキサイド等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンその他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸その他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトン等の開環重合体が挙げられる。
【0024】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の低分子ポリオールが挙げられる。
【0025】
上記ウレタン樹脂であるウレタンプレポリマーは、上述のポリオール化合物と過剰量のポリイソシアネート化合物とを反応させて製造することができる。
上記ポリイソシアネート化合物と上記ポリオール化合物との反応は、該ポリイソシアネート化合物と該ポリオール化合物とを、イソシアネート基/水酸基が、1.2〜5.0、好ましくは1.5〜3.0となる当量比で混合させて行う。該当量比がこの範囲であれば、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適当となる理由から好ましい。また、このウレタンプレポリマーの製造は、通常のウレタンプレポリマーと同様の方法で行うことができ、例えば、上述の当量比のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、50〜100℃で加熱攪拌することによって行うことができる。また、必要に応じて、有機錫化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いることもできる。
【0026】
上記ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を1分子当たり平均で2.0個以上有していることが好ましく、2.1個以上有していることがより好ましく、イソシアネート基含有量(NCO%)で表すと、該NCO%は、0.3%以上、好ましくは0.5%以上である。ここで、NCO%とは、ウレタンプレポリマーの全質量に対するイソシアネート基の質量%を表す。
ウレタンプレポリマーのNCO%がこの範囲であれば、樹脂の硬化性、硬化物の物性(例えば、引張り強さ、伸び等)、接着性が優れる理由から好ましい。
【0027】
このようなウレタンプレポリマーとしては、市販品として横浜ゴム社製のWS202、日本シーカ社製のシーカフレックス等を用いることができる。
【0028】
上記シリコーン樹脂とは、シロキサン結合により主鎖結合を形成し、末端に加水分解・縮合性シリル基を有する重合体からなる樹脂のことである。
このようなシリコーン樹脂としては、具体的には、例えば、反応性シラノール基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンに予め加水分解性シラン化合物を反応させたものが挙げられ、市販品として信越化学工業社製の高強度接着剤(商品名:KE4866、KE4898)等を用いることができる。
ここで、上記加水分解性シラン化合物としては、具体的には、例えば、メチルトリスメチルエチルケトオキシムシラン、メチルトリスアセトキシシラン、メチルトリスメトキシシラン、メチルトリスシクロヘキシルアミノシラン、メチルトリスイソプロペノキシシラン等が挙げられる。
【0029】
上記変成シリコーン樹脂とは、下記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素官能基を末端もしくは側鎖に有する重合体からなる樹脂のことである。なお、末端以外の骨格部分としては、ポリエーテル骨格、ポリアクリレート骨格、ポリイソブチレン骨格等で構成されていることが知られている。
【0030】
【化1】
Figure 0004242209
【0031】
式中、R1 は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R2 は炭素数1〜12のアルキル基を表し、nは0〜2の整数を表す。
このような変成シリコーン樹脂としては、市販品として鐘淵化学社製のMSポリマーやエピオン等を用いることができる。
【0032】
上記ポリサルファイド樹脂とは、ポリスルフィド結合により主鎖結合を形成し、末端にメルカプト基を有する重合体からなる樹脂のことである。
このようなポリサルファイド樹脂としては、市販品として東レ・ファインケミカル社製のLPシリーズ等を用いることができる。
【0033】
上記エポキシ樹脂とは、1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物からなる樹脂であって、一般的に、エポキシ当量が90〜2000である。
このようなエポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、具体的には、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物や、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、さらにナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;
フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型、三官能型、テトラフェニロールエタン型等の多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;
ダイマー酸等の合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
下記式(2)で表されるN,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂;
【0034】
【化2】
Figure 0004242209
【0035】
下記式(3)で表されるトリシクロ〔5,2,1,02,6 〕デカン環を有するエポキシ化合物、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエンとメタクレゾール等のクレゾール類もしくはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる公知の製造方法によって得ることができるエポキシ化合物;
【0036】
【化3】
Figure 0004242209
式中、mは、0〜15の整数を表す。
【0037】
脂環型エポキシ樹脂;東レチオコール社製のフレップ10に代表されるエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂;ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂;ポリブタジエン、液状ポリアクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含有するゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、このようなエポキシ樹脂としては、市販品としてジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート154等を用いることができる。
【0038】
以下に、本発明の製造方法における多孔質体接着工程およびタイヤ用部材接着工程について詳述する。
<多孔質体接着工程>
上記多孔質体接着工程は、上記タイヤホイールと上記多孔質体とを上記1液型室温硬化性樹脂を用いて接着させる工程であり、具体的には、上記1液型室温硬化性樹脂を塗布した上記多孔質体を、上記タイヤホイール上に該1液型室温硬化性樹脂が接触するように0.01〜5MPa、好ましくは0.1〜3MPaの圧力で押さえた後、該圧力を解除し、室温(0〜40℃、例えば25℃)下において、1〜48時間、好ましくは6〜24時間硬化させることで、上記タイヤホイールと上記多孔質体とを接着させる工程である。
ここで、上記多孔質体接着工程において用いる上記1液型室温硬化性樹脂の平均厚さは、該1液型室温硬化性樹脂を塗布する上記多孔質体の形状により適宜選択されるため特に限定されないが、0.01〜2mm程度であることが好ましく、0.1〜1mm程度であることがより好ましい。1液型室温硬化性樹脂の平均厚さがこの範囲であれば、硬化後の強度が良好となり、また、硬化時間が短くなる理由から好ましい。
また、上記多孔質体接着工程における上記タイヤホイールと上記多孔質体との接着場所は特に限定されないが、上記タイヤホイールにおけるリムウェル部であることが好ましく、バルブと反対側のリムウェル部であることがより好ましい。
さらに、上記多孔質体接着工程における上記タイヤホイールと上記多孔質体との接着面積は、上記接着場所によっても異なるが、一般的には10〜30cm2 程度である。
【0039】
<タイヤ用部材接着工程>
上記タイヤ用部材接着工程は、上記多孔質体と上記タイヤ用部材とを接着させる工程である。
ここで、上記タイヤ用部材接着工程における接着とは、上述した1液型室温硬化性樹脂を用いた接着であっても、従来公知の他の硬化性樹脂(例えば、2液型エポキシ樹脂、2液型ウレタン樹脂等)を用いた接着であってもよいが、上記多孔質体接着工程と同様の1液型室温硬化性樹脂を用いた接着であることが、後述するように該多孔質体接着工程および該タイヤ用部材接着工程を同時に進行させることができる理由から好ましい。
したがって、上述した1液型室温硬化性樹脂を用いた場合の上記タイヤ用部材接着工程は、具体的には、上記1液型室温硬化性樹脂を塗布した上記多孔質体に、上記タイヤ用部材を該1液型室温硬化性樹脂に接触させるように0.01〜5MPa、好ましくは0.1〜3MPaの圧力で押さえた後、該圧力を解除し、室温(0〜40℃、例えば25℃)下において、1〜48時間、好ましくは6〜24時間硬化させることで、上記多孔質体と上記タイヤ用部材とを接着させる工程である。
なお、上述したように、上記多孔質体と上記タイヤ用部材とが、一体形成されている場合や、接着以外の固定手段により固定されている場合には上記タイヤ用部材接着工程は必要ない。
【0040】
また、上記タイヤ用部材接着工程は、上記多孔質体が上記タイヤホイールと上記タイヤ用部材との間の全面に取り付けられている場合においては、上記タイヤ用部材と上記多孔質体のみとを接着させる工程となり、上記多孔質体が上記タイヤホイールと上記タイヤ用部材との間の一部分に取り付けられている場合においては、上記タイヤ用部材と、上記多孔質体および上記タイヤホイールと、を接着させる工程となる。
ここで、上述する「上記多孔質体が上記タイヤホイールと上記タイヤ用部材との間の全面に取り付けられている場合」とは、図1(A)の本発明のタイヤ用部材付きタイヤホイールの構成の一例を示す一部切欠き側面図(符号:タイヤ用部材1、多孔質体2、タイヤホイール3、1液型室温硬化性樹脂4、1液型室温硬化性樹脂5)に表されるように、タイヤ用部材1とタイヤホイール3との間の全面にわたって多孔質体2が介在している場合のことである。
同様に、「上記多孔質体が上記タイヤホイールと上記タイヤ用部材との間の一部分に取り付けられている場合」とは、図1(B)の本発明のタイヤ用部材付きタイヤホイールの構成の一例を示す一部切欠き側面図(符号:タイヤ用部材11、多孔質体12、タイヤホイール13、1液型室温硬化性樹脂14、1液型室温硬化性樹脂15)に表されるように、タイヤ用部材11とタイヤホイール13との間の一部分において多孔質体12が介在、すなわち1液型室温硬化性樹脂14と1液型室温硬化性樹脂15とが接触している場合のことである。
【0041】
本発明の製造方法においては、上記多孔質体接着工程および上記タイヤ用部材接着工程は、同時に進行させても、どちらか一方を進行させた後に他方を進行させてもよい。
ここで、上記多孔質体接着工程および上記タイヤ用部材接着工程を同時に進行させる場合において、該多孔質体接着工程および該タイヤ用部材接着工程は、具体的には、例えば、上記多孔質体に上記1液型室温硬化性樹脂を塗布した後、上記タイヤホイールおよび上記タイヤ用部材に該1液型室温硬化性樹脂が接触するように、該多孔質体を該タイヤホイールおよび該タイヤ用部材で挟むことにより進行させることができる。
【0042】
本発明の第2の態様に係るタイヤ用部材付きタイヤホイール(以下、「本発明のタイヤ用部材付きタイヤホイール」という)は、上述した本発明の第1の態様に係るタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法により製造されるタイヤ用部材付きタイヤホイールである。
【0043】
このような構成を有する本発明の製造方法およびタイヤ用部材付きタイヤホイールは、上述したように、タイヤホイールとタイヤ用部材との間の少なくとも一部に形成される多孔質体中の空気を利用することができる理由から、該タイヤホイールと該多孔質体との接着に用いる上記1液型室温硬化性樹脂の硬化性が向上し、また、深部硬化性も良好となるため有用である。さらに、ブレーキ部で発生する熱の上記タイヤ用部材へのタイヤホイールを経由した熱伝導が抑制されるため有用である。
【0044】
【実施例】
以下に実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
多孔質体であるイノアックコーポレーション製のウレタン発泡シート(商品名:Poron NH−48 1.2t;寸法:奥行き3cm、幅6cm、厚さ1mm)の両面に、1液型湿気硬化性シリコーン樹脂である信越化学工業社製の高強度接着剤(商品名:KE4898)を0.3mm厚となるように塗布したものを、PBT製のタイヤ用部材(寸法:奥行き3cm、幅6cm、高さ0.8cm)とアルミホイールとの間に、該タイヤ用部材の奥行きおよび幅に合わせた状態で挟み、0.3MPaの圧力で押さえつけた。その後、上記圧力を解除した状態で、23℃、60%相対湿度(RH)の条件下、24時間硬化させ、タイヤ用部材付きタイヤホイールを製造した。24時間経過後の硬化状態を後述する手剥離試験により確認した結果、深部硬化性を有していることが分かった。
【0045】
(実施例2)
多孔質体であるイノアックコーポレーション製のアクリル発泡シート(寸法:奥行き3cm、幅6cm、厚さ1mm)の両面に、1液型湿気硬化性ウレタン樹脂である横浜ゴム社製のウレタン接着剤(商品名:WS−202)を0.3mm厚となるように塗布したものを、PBT製のタイヤ用部材(寸法:奥行き3cm、幅6cm、高さ0.8cm)とアルミホイールとの間に、該タイヤ用部材の奥行きおよび幅に合わせた状態で挟み、0.3MPaの圧力で押さえつけた。その後、上記圧力を解除した状態で、23℃、60%RHの条件下、12時間硬化させ、タイヤ用部材付きタイヤホイールを製造した。12時間経過後の硬化状態を後述する手剥離試験により確認した結果、深部硬化性を有していることが分かった。
【0046】
(比較例1)
PBT製のタイヤ用部材(寸法:奥行き3cm、幅6cm、高さ0.8cm)の3cm×6cmの面に1液型湿気硬化性シリコーン樹脂である信越化学工業社製の高強度接着剤(商品名:KE4898)を0.3mm厚となるように塗布し、塗布面とアルミホイールとを接触させ0.3MPaの圧力で押さえつけた。その後、上記圧力を解除した状態で、23℃、60%RHの条件下、24時間硬化させ、タイヤ用部材付きタイヤホイールを製造した。24時間経過後の硬化状態を後述する手剥離試験により確認した結果、深部硬化性を有していないことが分かった。
【0047】
(比較例2)
PBT製のタイヤ用部材(寸法:奥行き3cm、幅6cm、高さ0.8cm)の3cm×6cmの面に1液型湿気硬化性ウレタン樹脂である横浜ゴム社製のウレタン接着剤(商品名:WS−202)を0.3mm厚となるように塗布し、塗布面とアルミホイールとを接触させ0.3MPaの圧力で押さえつけた。その後、上記圧力を解除した状態で、23℃、60%RHの条件下、12時間硬化させ、タイヤ用部材付きタイヤホイールを製造した。12時間経過後の硬化状態を後述する手剥離試験により確認した結果、深部硬化性を有していないことが分かった。
【0048】
<手剥離試験>
上記実施例1、2および比較例1、2で製造したタイヤ用部材付きタイヤホイールにおける硬化状態を確認は、実施例においてはアルミホイールと多孔質体との界面付近を、比較例においてはアルミホイールとタイヤ用部材との界面付近をナイフでカットし、該カット部を手剥離して、その剥離状態を目視することで行い、上述する深部硬化性の有無を評価した。
【0049】
【発明の効果】
以上で説明したように、本発明のタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法およびタイヤ用部材付きタイヤホイールは、高い硬化性(深部硬化性)を示し、タイヤ用部材への熱伝導を抑制することができるため有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(A)および(B)は、本発明のタイヤ用部材付きタイヤホイールの構成の一例を示す一部切欠き側面図である。
【符号の説明】
1,11:タイヤ用部材
2,12:多孔質体
3,13:タイヤホイール
4,14,5,15:1液型室温硬化性樹脂

Claims (5)

  1. タイヤホイールにタイヤ用部材を取り付けてなるタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法であって、
    タイヤホイールとタイヤ用部材との間の少なくとも一部に多孔質体を有し、該タイヤホイールと該多孔質体とを1液型室温硬化性樹脂を用いて接着させる多孔質体接着工程を具備し、
    前記1液型室温硬化性樹脂が、1液型湿気硬化性ウレタン樹脂であり、
    前記多孔質体の比重が、0.05〜2.0g/cm 3 であるタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法。
  2. 前記多孔質体の比重が、0.1〜0.8g/cm 3 である請求項1に記載のタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法。
  3. 前記タイヤホイールと前記多孔質体との接着場所が、前記タイヤホイールのリムウェル部である請求項1または2に記載のタイヤホイールの製造方法。
  4. さらに、前記多孔質体と前記タイヤ用部材とを接着させるタイヤ用部材接着工程を具備する請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用部材付きタイヤホイールの製造方法により製造されるタイヤ用部材付きタイヤホイール。
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