添付図面を参照して、本発明のヒートポンプシステムを実施するための最良の形態を以下に説明する。以下の説明では空調機を例として説明するが、本発明のヒートポンプシステムは、冷蔵庫、冷凍庫および給湯器にも適用可能である。また、本発明のヒートポンプシステムの熱源としては、大気の他にも、海水、河川・湖沼の水、地下水または地中熱を用いることができる。
(第1の実施形態)
図2に示す本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプシステムは、熱源側系統Aと負荷側系統Bとから構成されている。熱源側系統Aおよび負荷側系統Bは、プロパンガス冷媒および二酸化炭素冷媒がそれぞれ充填されている。熱源側系統Aと負荷側系統Bとは、カスケード熱交換器16において熱的に接続されている。したがって、熱源側系統Aと負荷側系統Bとにそれぞれ充填されているプロパンガス冷媒と二酸化炭素冷媒とはカスケード熱交換器16において熱交換される。
熱源側系統Aは、圧縮機13を有する圧縮機部と、熱源側熱交換器15と、膨張弁36および37を有する膨張弁部と、負荷側系統Bの熱交換部位32とともにカスケード熱交換器を形成している熱交換部位31とを備えるヒートポンプを形成している。
圧縮機部は、圧縮機13と、圧縮機13から吐出されたプロパンガス冷媒から油分を回収するオイルセパレータ21と、圧縮機13とオイルセパレータ21とに接続されているアキュムレータ23と、ポートdが逆止弁46を介してオイルセパレータ21に接続されており、ポートbが熱交換部位30を介してアキュムレータ23に接続されている四方弁25とから形成されている。ここで、圧縮機部においては、四方弁25の切替えにより、ポートaとポートcとでプロパンガス冷媒の吸入口と吐出口とが切替わる。また、圧縮機13は、図示されないインバータによって回転数が制御される。
膨張弁部は、熱交換部位31に接続されている膨張弁37と、膨張弁37と熱源側熱交換器15とに接続されている膨張弁36とを備えている。ここで、膨張弁36と膨張弁37との間の配管には、膨張弁36に近いほうから順に、接続部位a−1と、開閉弁61と、逆止弁45と、開閉弁62と、接続部位a−2とが介設されている。また、レシーバ27と、熱交換部位30とともに過冷却器20を形成している熱交換部位29と、逆止弁44とがこの順に接続されて成る直列系のレシーバ27側は、開閉弁61と逆止弁45との間の配管に接続されており、逆止弁44側は開閉弁61と接続部位a−1との間の配管に接続されている。また、開閉弁63が、接続部位a−2と開閉弁62との間の配管と、熱交換部位29と逆止弁44との間の配管とに接続されている。さらに、逆止弁42が、膨張弁36と熱源側熱交換器15との間の配管と、接続部位a−1とに接続されており、逆止弁43が、膨張弁37と熱交換部位31との間の配管と、接続部位a−2とに接続されている。
そして、熱源側熱交換器15の膨張弁36に接続されていないほうの接続口は四方弁のポートcに接続されており、熱交換部位31の膨張弁37に接続されていないほうの接続口は四方弁のポートaに接続されている。これにより、圧縮機13を有する圧縮機部と、熱源側熱交換器15と、膨張弁36および37を有する膨張弁部と、熱交換部位31とが接続される。
熱源側系統Aにおいては、四方弁25を切替えることにより、熱源側熱交換器15において熱源側である大気から吸収した熱をカスケード熱交換器16において負荷側系統Bの二酸化炭素冷媒へと放出することと、カスケード熱交換器16において負荷側系統Bの二酸化炭素冷媒から吸収した熱を熱源側熱交換器15において熱源側である大気へと放出することとが切替わる。また、熱源側系統Aには過冷却器20が設けられているが、過冷却器20を設けない構成としても熱源側系統Aはヒートポンプとして機能する。熱源側系統Aは、過冷却器20を設けることによって、運転効率が向上している。
次に、負荷側系統Bの構成を説明する。負荷側系統Bは、圧縮機14を有する圧縮機部と、負荷側熱交換器17〜19と、膨張弁38を有する膨張弁部と、熱交換部位32とを備えるヒートポンプを形成している。
圧縮機部は、圧縮機14と、圧縮機14から吐出された二酸化炭素冷媒から油分を回収するオイルセパレータ22と、圧縮機14とオイルセパレータ22とに接続されているアキュムレータ24と、ポートhが逆止弁47を介してオイルセパレータ22に接続されており、ポートfがアキュムレータ24に接続されている四方弁26と、四方弁26のポートeとポートgとに両側の接続口がそれぞれ接続されている開閉弁67とを備えている。さらに、圧縮機部においては、ポートgとポートgに接続されている開閉弁67の接続口との間の配管に接続部位b−1が設けられており、ポートeとポートeに接続されている開閉弁67の接続口との間の配管に接続部位b−2が設けられている。さらに、接続部位b−2とポートeとの間の配管には、逆止弁49と接続部位b−5とが逆止弁49を接続部位b−2側にして介設されている。さらに、接続部位b−1とポートgとの間の配管には接続部位b−6が介設されている。そして、接続部位b−5と接続部位b−6とが配管で接続され、この配管に開閉弁68と絞り弁56とが絞り弁56を接続部位b−5側にして介設されている。ここで、圧縮機部においては、四方弁26の切替えにより、ポートeとポートgとで二酸化炭素冷媒の吸入口と吐出口とが切替わる。また、圧縮機14は図示されないインバータによって回転数が制御される。
膨張弁部は、熱交換部位32と負荷側熱交換器17とを接続している膨張弁38と、膨張弁38と熱交換部位32との間の配管に設けられている接続部位b−3と、膨張弁38と負荷側熱交換器17との間の配管に設けられている接続部位b−4と、接続部位b−3とb−4とを接続するレシーバ28とを有している。膨張弁部においては、接続部位b−3とレシーバ28との間の配管に開閉弁64が介設されており、レシーバ28と接続部位b−4との間の配管に開閉弁66と逆止弁48とが開閉弁66をレシーバ28側にして介設されている。さらに、膨張弁部においては、接続部位b−4と負荷側熱交換器17との間の配管に流量調整弁71が介設されている。接続部位b−4と流量調整弁71との間の配管から分岐している配管は、途中でさらに分岐して流量調整弁72および73をそれぞれ介して負荷側熱交換器18および19にそれぞれ接続されている。
また、接続部位b−2から延伸している配管は、三つに分岐して分岐したそれぞれが負荷側熱交換器17〜19にそれぞれ接続されている。そして、レシーバ28と開閉弁66との間の配管と、逆止弁49と接続部位b−5との間の配管とを直列関係を有する開閉弁65と絞り弁55とが接続している。
負荷側熱交換器17〜19および流量調整弁71〜73は、室内ユニット12に組み込まれている。室内ユニット12に組み込まれていない負荷側系統Bの構成要素と熱源側系統Aとは、室外ユニット11に組み込まれている。なお、本実施形態においては、負荷側熱交換器が複数設けられているが、負荷側熱交換器は一つであってもよい。
次に、本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプシステムの冷房時の動作状態について図2を用いて説明する。
熱源側系統Aの冷房時の動作状態について図2を用いて説明する。プロパンガス冷媒が冷房時において循環する第1熱源側循環系A−1が図2に示されている。圧縮機13から吐出されたプロパンガス冷媒蒸気は、オイルセパレータ21において油分が分離回収され、四方弁25をポートdからポートcへと通過して熱源側熱交換器15に流入する。プロパンガス冷媒は、熱源側熱交換器15において大気に熱を放出して凝縮し、レシーバ27に飽和液状態で貯留される。レシーバ27から流出したプロパンガス冷媒は、過冷却器20において熱交換部位29を通過する際に、熱交換部位30のプロパンガス冷媒に熱を放出して過冷却液となる。そして、プロパンガス冷媒は、膨張弁37を通過する際に絞り膨張してその圧力および温度が低下するとともに、一部が蒸発して湿り蒸気となる。湿り蒸気状態のプロパンガス冷媒は、カスケード熱交換器16において熱交換部位31を通過する際に熱交換部位32の二酸化炭素冷媒から熱を吸収して蒸発する。熱交換部位31から流出したプロパンガス冷媒は、過冷却器20において熱交換部位29のプロパンガス冷媒から熱を吸収し、四方弁25をポートaからポートbへと通過し、アキュムレータ23を経由して圧縮機13に還流する。そして、プロパンガス冷媒は、圧縮機13により圧縮されてその圧力および温度が上昇して吐出される。
負荷側系統Bの冷房時の動作状態について説明する。二酸化炭素冷媒が冷房時において循環する第1負荷側循環系B−1が図2に示されている。二酸化炭素冷媒は一定の循環圧力に保たれたまま第1負荷側循環系B−1を循環する。カスケード熱交換器16の熱交換部位32において、熱交換部位31のプロパンガス冷媒に熱を放出して凝縮した二酸化炭素冷媒は、開閉弁64を通過してレシーバ28に流入し、飽和液の状態で貯留される。レシーバ28から流出した二酸化炭素冷媒は、開閉弁66と、逆止弁48と、接続部位b−4とを順に通過したのち、三つに分流して負荷側熱交換器17〜19にそれぞれ流入する。ここで、負荷側熱交換器17〜19のそれぞれに流入する二酸化炭素冷媒の流量は、流量調整弁71〜73によってそれぞれ調整される。二酸化炭素冷媒は、負荷側熱交換器17〜19において、負荷側である室内空気から熱を吸収して蒸発する。蒸発して気体状態となった二酸化炭素冷媒は、負荷側熱交換器17〜19から流出し、合流して一つの流れとなり、接続部位b−2と、開閉弁67と、接続部位b−1とを順に通過してカスケード熱交換器16の熱交換部位32に還流する。この二酸化炭素冷媒の循環は、負荷側熱交換器17〜19を熱交換部位32に対して重力に関して下に配置することにより、二酸化炭素冷媒の液ヘッド差による自然循環によりなされる。また、第1負荷側循環系B−1は、圧縮機14および膨張弁38のいずれも含んでいないため、圧縮機14または膨張弁38が第1負荷側循環系を循環する二酸化炭素冷媒の抵抗となることはない。図2に示すヒートポンプシステムが空調機として使用される場合には、熱交換部位32が配置されている室外ユニット11は建物の屋上に設置されるので、熱交換部位32と室内に配置されている負荷側熱交換器17〜19との間で二酸化炭素冷媒は自然循環する。なお、自然循環では二酸化炭素冷媒の循環流量が不足する場合や、負荷側熱交換器17〜19を熱交換部位32に対して重力に関して上に配置する場合には、第1熱源側循環系B−1に循環ポンプ(図示せず)を介設し、この循環ポンプによって二酸化炭素冷媒の循環をおこなってもよい。
図2に示す本発明のヒートポンプシステムの冷房時においては、熱源側系統Aによるヒートポンプサイクルと、負荷側系統Bによる二酸化炭素冷媒を二次冷媒として用いた熱輸送サイクルとが同時に行なわれることにより、負荷側熱交換器17〜19において室内空気から吸収された熱が熱源側熱交換器15において大気中に放出されて冷房が行なわれる。ここで、負荷側系統Bは、二酸化炭素冷媒の潜熱により熱を輸送するので、顕熱により熱を輸送するブラインシステムに比較して効率がよい。また、負荷側系統Bにおいては、二酸化炭素冷媒の循環が自然循環により行なわれる場合には、循環のための動力が不要であり、また、循環ポンプを補助的に用いた場合であっても、わずかの動力しか必要とならない。したがって、本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプシステムは、運転効率が向上している。
本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプシステムの暖房時の動作状態について図3を用いて説明する。
はじめに、熱源側系統Aの暖房時の動作状態について説明する。プロパンガス冷媒が暖房時において循環する第2熱源側循環系A−2が図3に示されている。圧縮機13から吐出されたプロパンガス冷媒蒸気は、オイルセパレータ21において油分が分離回収され、四方弁25をポートdからポートaへと通過して熱交換部位31に流入する。プロパンガス冷媒は、熱交換部位31において熱交換部位32の二酸化炭素冷媒に熱を放出して凝縮する。プロパンガス冷媒は、逆止弁43と、開閉弁62と、逆止弁45とを順に通過してレシーバ27に流入し、飽和液の状態で貯留される。レシーバ27から流出したプロパンガス冷媒は、過冷却器20において熱交換部位29を通過する際に、熱交換部位30のプロパンガス冷媒に熱を放出して過冷却される。そして、過冷却液の状態のプロパンガス冷媒は、膨張弁36を通過する際に絞り膨張してその圧力および温度が低下するとともに、一部が蒸発して湿り蒸気となる。湿り蒸気状態のプロパンガス冷媒は、熱源側熱交換器15を通過する際に熱源側である大気から熱を吸収して蒸発する。熱源側熱交換器15から流出したプロパンガス冷媒は、四方弁25をポートcからポートbへと通過した後、過冷却器20において熱交換部位29のプロパンガス冷媒から熱を吸収する。熱を吸収したプロパンガス冷媒は、アキュムレータ23を経由して圧縮機13に還流する。そして、プロパンガス冷媒は、圧縮機13により圧縮されてその圧力および温度が上昇して吐出される。
負荷側系統Bの暖房時の動作状態について説明する。二酸化炭素冷媒が暖房時において循環する第2負荷側循環系B−2が図3に示されている。圧縮機14から吐出された超臨界状態の二酸化炭素冷媒は、オイルセパレータ22において油分が分離回収され、逆止弁47を通過したのち、四方弁26をポートhからポートeへと通過する。二酸化炭素冷媒は、さらに、接続部位b−5と、逆止弁49と、接続部位b−2とを順に通過した後、三つに分流して負荷側熱交換器17〜19にそれぞれ流入する。三つに分流した二酸化炭素冷媒は、負荷側熱交換器17〜19においてそれぞれ負荷側である室内空気に熱を放出して温度が低下する。ここで、負荷側熱交換器17〜19は、ガスクーラーとして機能している。負荷側熱交換器17〜19からそれぞれ流出した二酸化炭素冷媒は、流量調整弁71〜73をそれぞれ通過したのち、合流して一つの流れとなる。合流した二酸化炭素冷媒は、接続部位b−4と膨張弁38とを順に通過する。二酸化炭素冷媒は、膨張弁38を通過する際にその圧力および温度が低下し、飽和液と飽和蒸気とを含む湿り蒸気となる。湿り蒸気状態の二酸化炭素冷媒は、熱交換部位32を通過する際に熱交換部位31のプロパンガス冷媒から熱を吸収して蒸発する。熱交換部位32から流出した二酸化炭素冷媒は、接続部位b−1およびb−6を順に通過し、さらに四方弁25をポートgからポートfへと通過し、アキュムレータ24を経由して圧縮機14に還流する。そして、二酸化炭素冷媒は、圧縮機14により圧縮されてその圧力および温度が上昇して超臨界状態となって吐出される。
図3示す本発明のヒートポンプシステムの暖房時においては、熱源側系統Aによるヒートポンプサイクルと、負荷側系統Bによるヒートポンプサイクルとが同時に行なわれることにより、熱源側熱交換器15において熱源側である大気から吸収された熱が負荷側熱交換器17〜19において負荷側である室内空気に放出されて暖房が行なわれる。したがって、本発明のヒートポンプシステムは、二つのヒートポンプを用いて暖房をおこなうため、運転効率が向上している。
本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプシステムのデフロスト時の動作状態について図4を用いて説明する。
熱源側系統Aにおいては、図4に示すプロパンガス冷媒がデフロスト時に循環する経路は、図2に示す第1熱源側循環系A−1と一致している。そして、熱源側系統Aのデフロスト時の動作状態は冷房時の動作状態と同様であるので、熱源側系統Aについては説明を省略する。
負荷側系統Bのデフロスト時の動作状態について説明する。二酸化炭素冷媒がデフロスト時に循環するデフロスト循環系B−3が図4に示されている。圧縮機14から吐出された二酸化炭素冷媒蒸気は、オイルセパレータ22において油分が分離回収され、逆止弁47を通過し、四方弁26をポートhからポートgへと通過して接続部位b−6に流入する。二酸化炭素冷媒は、接続部位b−6において、接続部位b−1を通過してカスケード熱交換器16へ向かう第1分流と、開閉弁68を通過して絞り弁56へ向かう第2分流とに分流する。第1分流の二酸化炭素冷媒は、カスケード熱交換器16において熱交換部位32を通過する際に熱交換部位31のプロパンガス冷媒に熱を放出して凝縮し、開閉弁64を通過したのち、レシーバ28に飽和液の状態で貯留される。レシーバ28から流出した第1分流の二酸化炭素冷媒は、開閉弁65と絞り弁55とを順に通過する。第1分流の二酸化炭素冷媒は、絞り弁55を通過する際に絞り膨張してその圧力が圧縮機14の吸入側の圧力まで低下するとともに温度が低下し、一部が蒸発して湿り蒸気となる。湿り蒸気状態の第1分流の二酸化炭素冷媒は、接続部位b−5において絞り弁56を通過して圧縮機14の吸入側の圧力となった第2分流の二酸化炭素冷媒と合流する。ここで、第1分流の二酸化炭素冷媒に含まれている飽和液は、第2分流の二酸化炭素冷媒から熱を吸収して蒸発する。合流して蒸気状態となった二酸化炭素冷媒は、四方弁26をポートeからポートfへと通過し、アキュムレータ24を経由して圧縮機14に還流する。そして、二酸化炭素冷媒は、圧縮機14により圧縮されて吐出される。このとき、二酸化炭素冷媒は、圧縮機から圧縮仕事にるエネルギーを受け取るため、温度が上昇する。ここで、絞り弁56を有している接続部位b−5と接続部位b−6との間の配管はホットガスバイパスとして機能している。
図4に示すように、本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプシステムのデフロスト時においては、熱源側系統Aによるヒートポンプサイクルと、負荷側系統Bによるサイクルとが同時に行なわれることにより、圧縮機13および14による圧縮仕事のエネルギーが熱源側熱交換器15において熱として放出される。この放出される熱により熱源側熱交換器15に付着した霜が融解して霜取りが行なわれる。デフロストによって熱源側熱交換器15における熱交換が促進されるため、本発明のヒートポンプシステムの運転効率が向上する。
(第2の実施形態)
図5に示す本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムは、熱源側系統Aと負荷側系統B’と冷水系統Wとから構成されている。熱源側系統Aおよび負荷側系統B’には、プロパンガス冷媒および二酸化炭素冷媒がそれぞれ充填されている。熱源側系統Aと負荷側系統B’とは、カスケード熱交換器16において熱的に接続されており、カスケード熱交換器16においてプロパンガス冷媒と二酸化炭素冷媒とは熱交換される。冷水系統Wは、負荷側系統B’の二酸化炭素冷媒によって氷蓄熱が行なわれる氷蓄熱槽78を有している。また、蓄熱された氷により得られる冷水は、水−二酸化炭素熱交換器76において負荷側系統B’の二酸化炭素冷媒と熱交換される。
図5に示す熱源側系統Aの構成は、図2に示す熱源側系統Aの構成と同様である。したがって熱源側系統Aの構成についての説明は省略する。
負荷側系統B’の構成を説明する。負荷側系統B’は、圧縮機14を有する圧縮機部と、負荷側熱交換器17〜19と、膨張弁38を有する膨張弁部と、熱交換部位32とを備えるヒートポンプを形成している。
圧縮機部は、圧縮機14と、オイルセパレータ22と、アキュムレータ24と、逆止弁47と、四方弁26と、開閉弁67とを備えている。これらの接続関係は図2に示す接続関係と同様である。さらに、圧縮機部においては、ポートgとポートgに接続されている開閉弁67の接続口との間の配管に接続部位b’−1が設けられている。また、ポートeとポートeに接続されている開閉弁67の接続口との間の配管には、開閉弁67に近いほうから順に接続部位b’−2と、接続部位b’−3と、三方弁75とが設けられている。ここで、三方弁75のポートiは四方弁26のポートeに接続されており、ポートjは接続部b’−3に接続されている。圧縮機部においては、四方弁26の切替えにより、ポートeとポートgとで二酸化炭素冷媒の吸入口と吐出口とが切替わる。
つぎに、膨張弁部の構成について説明する。膨張弁部は、熱交換部位32と接続部位b’−2とを接続している膨張弁38と、接続部位b’−3と負荷側熱交換器17とを接続している二つのポートを有する切替え器77と、接続部位b’−3と切替え器77のポートlとの間の配管に介設されている熱交換部位33と、切替え器77のポートmと負荷側熱交換器17との間の配管に介設されている流量調整弁71と、切替え器77のポートmと流量調整弁71との間の配管に設けられている接続部位b’−4とを有している。ここで、切替え器77は、ポートlとポートmとの間の切替え器77の内部流路を、逆止弁51と、逆止弁52と、膨張弁39のいずれか一つを経由するように切替える。逆止弁51は、内部流路をポートlからポートmへと通過する方向の流れのみを通過させ、逆止弁52は、逆方向の流れのみを通過させる。また、膨張弁部においては、膨張弁38と熱交換部位32との間の配管に接続部位b’−5が設けられており、接続部位b’−5と接続部位b’−4とがレシーバ28を介して接続されている。そして、接続部位b’−5とレシーバ28との間の配管に開閉弁64が介設されており、レシーバ28と接続部位b’−4との間の配管に開閉弁65が介設されている。接続部位b’−4と流量調整弁71との間の配管から分岐している配管は、途中でさらに分岐して流量調整弁72および73をそれぞれ介して負荷側熱交換器18および19にそれぞれ接続されている。
三方弁75のポートkに接続されている配管のポートkに接続されていない側の端部は、三つに分岐して負荷側熱交換器17〜19にそれぞれ接続されている。また、接続部位b’−1は、熱交換部位32の接続部位b’−5に接続されていない側の接続口に接続されている。さらに、氷蓄熱槽78に配設されている製氷用熱交換器35は、一方の接続口が逆止弁50を介して接続部位b’−1と熱交換部位32との間の配管に接続されており、他方の接続口が開閉弁66を介してレシーバ28と開閉便65との間の配管に接続されている。
冷水系統Wは、氷蓄熱槽78と、冷水循環ポンプ79と、熱交換部位34とが環状に接続されて形成されている。熱交換部位34は、負荷側系統B’の熱交換部位33とともに冷水系統Wを循環する冷水と負荷側系統B’を循環する二酸化炭素冷媒とを熱交換する水−二酸化炭素熱交換器76を形成している。
負荷側熱交換器17〜19および流量調整弁71〜73は、室内ユニット12に組み込まれている。室内ユニット12に組み込まれていない負荷側系統B’の構成要素と、熱源側系統Aと、冷水系統Wとは、室外ユニット11’に組み込まれている。なお、本実施形態においては、負荷側熱交換器が複数設けられているが、負荷側熱交換器は一つであってもよい。
本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムは、氷蓄熱をおこない、蓄熱により得られる冷水を利用して放冷冷房をおこなうことができる。熱源側系統Aのプロパンガス冷媒は、氷蓄熱時において図5に示す第1熱源側循環系A−1を循環する。図5に示す第1熱源側循環系A−1は、図2に示す第1熱源側循環系A−1と一致している。そして、熱源側系統Aの氷蓄熱時における動作状態は、第1の実施形態のヒートポンプシステムについて説明した冷房時における動作状態と同様である。すなわち、熱源側系統Aは、カスケード熱交換器16において負荷側系統B’から熱を吸収して熱源側熱交換器15において熱源側である大気に放出する。
負荷側系統B’の二酸化炭素冷媒は、氷蓄熱時において図5に示す氷蓄熱循環系B’−4を循環する。氷蓄熱循環系B’−4を循環する二酸化炭素冷媒は、一定の循環圧力に保たれている。カスケード熱交換器16の熱交換部位32において、熱交換部位31のプロパンガス冷媒に熱を放出して凝縮した二酸化炭素冷媒は、接続部位b’−5と、開閉弁64とを順に通過してレシーバ28に流入し、レシーバ28において飽和液の状態で貯留される。レシーバ28から流出した二酸化炭素冷媒は、開閉弁66を通過して、製氷用熱交換器35に流入する。二酸化炭素冷媒は、製氷用熱交換器35を通過する際に氷蓄熱層78に貯められている水から熱を吸収して蒸発する。このとき、氷蓄熱層78に貯められている水は、熱を奪われて凍結し、その結果、氷蓄熱がなされる。蒸発して気体となった二酸化炭素冷媒は、製氷用熱交換器35から流出し、逆止弁50を通過してカスケード熱交換器16の熱交換部位32に還流する。この二酸化炭素冷媒の循環は、製氷用熱交換器35を熱交換部位32に対して重力に関して下に配置することにより、二酸化炭素冷媒の液ヘッド差による自然循環によりなされる。また、氷蓄熱循環系B’−4は、圧縮機14または膨張弁38を含んでいないため、圧縮機14または膨張弁38が氷蓄熱循環系B’−4を循環する二酸化炭素冷媒の抵抗となることはない。なお、自然循環では二酸化炭素冷媒の循環流量が不足する場合や、製氷用熱交換器35を熱交換部位32に対して重力に関して上に配置する場合には、氷蓄熱循環系B’−4に循環ポンプ(図示せず)を介設し、この循環ポンプによって二酸化炭素冷媒の循環をおこなってもよい。
放冷冷房時において、氷蓄熱によって得られた冷水が循環する冷水循環系W−1が図5に示されている。氷蓄熱槽78に貯めれれている冷水は、冷水循環ポンプ79により水−二酸化炭素熱交換器76の熱交換部位34を循環して氷蓄熱槽78に還流する。このとき冷水は熱交換部位34において熱交換部位33の二酸化炭素冷媒から熱を吸収する。
放冷冷房時に二酸化炭素冷媒が循環する放冷冷却循環系B’−5が図5に示されている。二酸化炭素冷媒は一定の循環圧力に保たれたまま放冷冷却循環系B’−5を循環する。水−二酸化炭素熱交換器76の熱交換部位33において、熱交換部位34の冷水に熱を放出して凝縮し、飽和液となった二酸化炭素冷媒は、切替え器77において逆止弁51を経由する内部流路をポートlからポートmへと通過したのち三つに分流し、負荷側熱交換器17〜19にそれぞれ流入する。ここで、負荷側熱交換器17〜19のそれぞれに流入する二酸化炭素冷媒の流量は、流量調整弁71〜73によってそれぞれ調整される。二酸化炭素冷媒は、負荷側熱交換器17〜19において、負荷側である室内空気から熱を吸収して蒸発する。蒸発して気体となった二酸化炭素冷媒は、負荷側熱交換器17〜19から流出し、合流して一つの流れとなる。合流した二酸化炭素冷媒は、三方弁75をポートkからポートjへと通過し、さらに、接続部位b’−3を通過して水−二酸化炭素熱交換器76の熱交換部位33に還流する。この二酸化炭素冷媒の循環は、負荷側熱交換器17〜19を熱交換部位33に対して重力に関して下に配置することにより、二酸化炭素冷媒の液ヘッド差による自然循環によりなされる。図5に示すヒートポンプシステムが空調機として使用される場合には、熱交換部位33が配置されている室外ユニット11’は建物の屋上に設置されるので、熱交換部位33と室内に配置されている負荷側熱交換器17〜19との間で二酸化炭素冷媒は自然循環する。なお、自然循環では二酸化炭素冷媒の循環流量が不足する場合や、負荷側熱交換器17〜19を熱交換部位33に対して重力に関して上に配置する場合には、放冷冷却循環系B’−5に循環ポンプ(図示せず)を介設し、この循環ポンプによって二酸化炭素冷媒の循環をおこなってもよい。
本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムにおいては、夜間に氷蓄熱がおこなわれ、氷蓄熱により得られた冷水によって昼間に放冷冷房がおこなわれる。このようにすることによって、割安な深夜電力を利用して昼間の冷房をおこなうことが可能である。また、夜間の氷蓄熱においては、気温の低い夜間の大気が熱源として用いられるため、運転効率が向上する。さらに、二酸化炭素冷媒が自然循環によって放冷冷却循環系をB’−5循環する場合には、放冷冷房時における本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムの消費電力はゼロであるので、高い運転効率が達成される。
本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムにおいては、放冷冷却による冷房中に夜間に氷蓄熱された冷熱を使い切った場合には、通常の冷房運転を行なえばよい。
本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムの冷房時の動作状態について図6を用いて説明する。
熱源側系統Aのプロパンガス冷媒は、冷房時において図6に示す第1熱源側循環系A−1を循環する。図6に示す第1熱源側循環系A−1は、図2に示す第1熱源側循環系A−1と一致している。そして、熱源側系統Aの冷房時における動作状態は、第1の実施形態のヒートポンプシステムについて説明した冷房時における動作状態と同様である。すなわち、熱源側系統Aは、カスケード熱交換器16において負荷側系統B’から熱を吸収して熱源側熱交換器15において熱源側である大気に放出する。
次に負荷側系統B’の冷房時の動作状態について説明する。二酸化炭素冷媒が冷房時において循環する第1負荷側循環系B’−1が図6に示されている。二酸化炭素冷媒は一定の循環圧力に保たれたまま第1負荷側循環系B’−1を循環する。気体状態の二酸化炭素冷媒は、カスケード熱交換器16の熱交換部位32において、熱交換部位31のプロパンガス冷媒に熱を放出して凝縮し、接続部位b’−5と開閉弁64とを順に通過してレシーバ28に流入し、レシーバ28において飽和液の状態で貯留される。レシーバ28から流出した二酸化炭素冷媒は、開閉弁65と接続部位b’−4とを順に通過したのち、三つに分流して負荷側熱交換器17〜19にそれぞれ流入する。ここで、負荷側熱交換器17〜19にそれぞれ流入する二酸化炭素冷媒の流量は、流量調整弁71〜73によってそれぞれ調整される。二酸化炭素冷媒は、負荷側熱交換器17〜19において、負荷側である室内空気から熱を吸収して蒸発する。蒸発して気体となった二酸化炭素冷媒は、負荷側熱交換器17〜19から流出し、合流して一つの流れとなる。そして、二酸化炭素冷媒は、三方弁75をポートkからポートjへと通過し、さらに、接続部位b’−3と、接続部位b’−2と、開閉弁67と、接続部位b’−1とを順に通過してカスケード熱交換器16の熱交換部位32に還流する。この二酸化炭素冷媒の循環は、負荷側熱交換器17〜19を熱交換部位32に対して重力に関して下に配置することにより、二酸化炭素冷媒の液ヘッド差による自然循環によりなされる。本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムが空調機として使用される場合には、熱交換部位32が配置されている室外ユニット11’は建物の屋上に設置されるので、熱交換部位32と室内に配置されている負荷側熱交換器17〜19との間で二酸化炭素冷媒は自然循環する。なお、自然循環では二酸化炭素冷媒の循環流量が不足する等の場合には、第1負荷側循環系B’−1に循環ポンプ(図示せず)を介設し、この循環ポンプによって二酸化炭素冷媒の循環をおこなってもよい。
本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムの冷房時においては、図6に示すように、熱源側系統Aによるヒートポンプサイクルと、負荷側系統B’による二酸化炭素冷媒を二次冷媒として用いた熱輸送サイクルとが同時に行なわれることにより、負荷側熱交換器17〜19において負荷側である室内空気から吸収された熱が熱源側熱交換器15において大気中に放出されて冷房が行なわれる。ここで、負荷側系統B’は、二酸化炭素冷媒の潜熱により熱を輸送するので、顕熱により熱を輸送するブラインシステムに比較して効率がよい。また、負荷側系統B’においては、二酸化炭素冷媒の循環が自然循環により行なわれる場合には、循環のための動力が不要であり、また、循環ポンプを補助的に用いた場合であっても、わずかの動力しか必要とならない。したがって、本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムにおいては、運転効率が向上している。
次に、本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムの暖房時の動作状態について図7を用いて説明する。本発明のヒートポンプシステムは、暖房時において氷蓄熱により得られる冷水を利用する。
熱源側系統Aのプロパンガス冷媒は、暖房時において図7に示す第2熱源側循環系A−2を循環する。図7に示す第2熱源側循環系A−2は、図3に示す第2熱源側循環系A−2と一致している。そして、熱源側系統Aの暖房時における動作状態は、第1の実施形態のヒートポンプシステムについて説明した暖房時における動作状態と同様である。すなわち、熱源側系統Aは、熱源側熱交換器15において熱源側である大気から熱を吸収してカスケード熱交換器16において負荷側系統B’に放出する。
つぎに、負荷側系統B’の暖房時の動作状態について説明する。二酸化炭素冷媒が暖房時において循環する第2負荷側循環系B’−2が図7において示されている。圧縮機14から吐出された超臨界状態の二酸化炭素冷媒は、オイルセパレータ22において油分が分離回収され、四方弁26をポートhからポートeへと通過し、さらに三方弁75をポートiからポートkへと通過し、それから三つに分流して負荷側熱交換器17〜19にそれぞれ流入する。三つに分流した二酸化炭素冷媒は、ガスクーラーとして機能する負荷側熱交換器17〜19においてそれぞれ室内空気に熱を放出して温度が低下する。負荷側熱交換器17〜19から流出した二酸化炭素冷媒は、合流して一つの流れとなり、接続部位b’−4を通過してポートmから切替え器77に流入する。二酸化炭素冷媒は、切替え器77において開閉弁69と逆止弁52とを経由する内部流路を通過してポートlから流出し、熱交換部位33に流入する。二酸化炭素冷媒は、熱交換部位33において、熱交換部位34の冷水に熱を放出して冷却される。冷却された二酸化炭素冷媒は、接続部位b’−3と、接続部位b’−2とを順に通過して膨張弁38に圧送される。二酸化炭素冷媒は、膨張弁38を通過する際に絞り膨張してその圧力および温度が低下する。膨張弁38から流出した二酸化炭素冷媒は、熱交換部位32を通過する際に熱交換部位31のプロパンガス冷媒から熱を吸収して蒸発する。熱交換部位32から流出した気体状態の二酸化炭素冷媒は、接続部位b’−1を通過し、さらに四方弁25をポートgからポートfへと通過し、アキュムレータ24を経由して圧縮機14に還流する。そして、二酸化炭素冷媒は、圧縮機14により圧縮されてその圧力および温度が上昇して超臨界状態となって吐出される。
冷水系統Wの暖房時の動作状態について説明する。氷蓄熱槽78において氷蓄熱された氷により得られた冷水は、図7に示す冷水循環系W−1を循環する。冷水循環ポンプ79は、氷蓄熱槽78に貯められた冷水を水−二酸化炭素熱交換器76の熱交換部位34に循環させる。このとき冷水は、熱交換部位34において熱交換部位33の二酸化炭素冷媒から熱を吸収し、二酸化炭素冷媒を冷却する。
図7に示す本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムの暖房時においては、熱源側系統Aによるヒートポンプサイクルと、負荷側系統B’によるヒートポンプサイクルとが同時に行なわれることにより、熱源側熱交換器15において熱源側である大気から吸収された熱が負荷側熱交換器17〜19において負荷側である室内空気に放出されて暖房が行なわれる。このとき、二酸化炭素冷媒が水−二酸化炭素熱交換器76において冷却されるため、運転効率が向上する。
次に、本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムのデフロスト時の動作状態について図8を用いて説明する。本発明のヒートポンプシステムは、デフロスト時において氷蓄熱により得られる冷水を利用する。
図8に示す熱源側系統Aにおいて、プロパンガス冷媒がデフロスト時に循環する経路は、図2に示す第1熱源側循環系A−1と一致している。そして、熱源側系統Aのデフロスト時における動作状態は、第1の実施形態のヒートポンプシステムについて説明した冷房時における動作状態と同様である。すなわち、熱源側系統Aは、カスケード熱交換器16において負荷側系統B’から熱を吸収して熱源側熱交換器15において熱源側である大気に放出する。
負荷側系統B’のデフロスト時の動作状態について説明する。二酸化炭素冷媒がデフロスト時に循環するデフロスト循環系B’−3が図8に示されている。圧縮機14から吐出された二酸化炭素冷媒蒸気は、オイルセパレータ22において油分が分離回収され、逆止弁47を通過し、さらに、四方弁26をポートhからポートgへと通過する。二酸化炭素冷媒は、さらに、接続部位b’−1を通過したのちカスケード熱交換器16に流入する。二酸化炭素冷媒は、カスケード熱交換器16において熱交換部位32を通過する際に熱交換部位31のプロパンガス冷媒に熱を放出して凝縮し、開閉弁64を通過したのち、レシーバ28に飽和液の状態で貯留される。レシーバ28から流出した二酸化炭素冷媒は、開閉弁65と、接続部位b’−4と、切替え器77とを順に通過する。二酸化炭素冷媒は、切替え器77においては、ポートmから切替え器77に流入し、膨張弁39を経由する内部流路を通ってポートlへと通過する。二酸化炭素冷媒は、膨張弁39を通過する際に絞り膨張してその圧力と温度が低下する。膨張弁39を通過した二酸化炭素冷媒は、熱交換部位33を通過する際に熱交換部位34の冷水から熱を吸収して蒸発し、気体状態となる。気体状態となった二酸化炭素冷媒は、三方弁75をポートjからポートiへと通過し、さらに、四方弁26をポートeからポートfへと通過し、アキュムレータ24を経由して圧縮機14に還流する。そして、二酸化炭素冷媒は、圧縮機14により圧縮されて高圧側に吐出される。
次に、冷水系統Wのデフロスト時の動作状態について説明する。氷蓄熱槽78において氷蓄熱された氷により得られた冷水は、図8に示す冷水循環系W−1を循環する。冷水循環ポンプ79は、氷蓄熱槽78に貯められた冷水を水−二酸化炭素熱交換器76の熱交換部位34に循環させる。このとき冷水は、熱交換部位34において熱交換部位33の二酸化炭素冷媒へ熱を放出する。
デフロスト時においては、氷蓄熱槽78の底近くの冷水を冷水循環系W−1に循環することで、熱交換部位34を循環する冷水の温度は水の密度が最大となる4℃程度となる。したがって、水−二酸化炭素熱交換器76において、二酸化炭素冷媒が冷水から熱を吸収するためには、圧縮機14の回転数と膨張弁39の絞り開度とを操作することで、二酸化炭素冷媒の熱交換部位33における蒸発温度を1℃に制御すればよい。
本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムのデフロスト時においては、熱源側系統Aによるヒートポンプサイクルと、負荷側系統B’によるヒートポンプサイクルとが同時に行なわれることにより、圧縮機13および14による圧縮仕事のエネルギーと、水―熱交換器76において二酸化炭素冷媒が冷水から熱として吸収したエネルギーとが熱源側熱交換器15において熱として放出される。この放出される熱により熱源側熱交換器15に付着している霜が融解して霜取りが行なわれる。デフロストによって熱源側熱交換器15における熱交換が促進されるため、本発明のヒートポンプシステムの運転効率が向上する。
図9は本発明の実施形態に係るヒートポンプシステムの冷房運転条件の一例を示すためのp−h線図であり、図9(A)は高温側であるプロパンガス冷媒について示し、図9(B)は低温側である二酸化炭素冷媒について示す。ここで、圧力は縦軸にpで表され、エンタルピは横軸にhで表されている。図9は、冷房時の定格条件である外気温度35℃DB、室内温度27℃DB/19℃WBにおける運転条件の一例を示している。
図9(A)においては、プロパンの臨界点、飽和液線および飽和蒸気線が、点C、曲線XCおよび曲線CYでそれぞれ示されており、さらに、13℃、25℃、36℃における等温線の一部が示されている。本発明の第1および第2の実施形態に係るヒートポンプシステムの冷房時におけるプロパンガス冷媒の状態変化を表すヒートポンプサイクルP−1が示されている。ヒートポンプサイクルP−1は、圧縮過程P−1−1と、高圧過程P−1−2と、膨張過程P−1−3と、低圧過程P−1−4とから成る。圧縮過程P−1−1において、過熱蒸気状態のプロパンガス冷媒は圧縮機13により圧縮されて圧力およびエンタルピが増加する。このとき同時に、プロパンガス冷媒の温度も上昇している。また、圧縮過程P−1−1におけるエンタルピの増加は、圧縮機13による圧縮仕事のエネルギーに等しい。圧縮機13から吐出されたプロパンガス冷媒の圧力は凝縮圧力P1となっている。ここで、凝縮圧力P1はプロパンの凝縮温度が45℃となる圧力である。プロパンガス冷媒は、圧縮過程P−1−1につづく高圧過程P−1−2において、圧力が凝縮圧力P1で一定に保たれたままエンタルピが減少する。ここで、高圧過程P−1−2は、冷却過程P−1−2−1と、凝縮過程P−1−2−2と、過冷却過程P−1−2−3とから成る。冷却過程P−1−2−1および凝縮過程P−1−2−2は、熱源側熱交換器15において二酸化炭素冷媒が熱源側である大気に熱を放出する過程である。過冷却過程P−1−2−3は、熱源側熱交換器15から流出したプロパンガス冷媒が、過冷却器20の熱交換部位29において、熱交換部位30のプロパンガス冷媒に熱を放出して過冷却状態となる過程である。プロパンガス冷媒は、冷却過程P−1−2−1において熱を放出し、温度が低下して45℃の飽和蒸気となる。飽和蒸気となったプロパンガス冷媒は、凝縮過程P−1−2−2においてさらに熱を放出し、凝縮して飽和液となる。凝縮過程P−1−2−2においては、プロパンガス冷媒の温度は凝縮温度T1である45℃で一定に保たれる。過冷却過程P−1−2−3においては、プロパンガス冷媒は、熱交換部位29において熱を放出し、温度が36℃まで低下して過冷却液となる。高圧過程P−1−2につづく膨張過程P−1−3においては、プロパンガス冷媒は、膨張弁37を通過して絞り膨張する。膨張過程P−1−3においては、プロパンガス冷媒は、エンタルピが一定に保たれたまま圧力が蒸発圧力P2に低下する。ここで、蒸発圧力P2はプロパンの蒸発温度が7℃となる圧力である。膨張過程P−1−3は、過冷却液状態のプロパンガス冷媒が飽和液となる第1膨張過程P−1−3−1と、飽和液となったプロパンガス冷媒の一部が蒸発して湿り蒸気となる第2膨張過程P−1−3−2とから成る。プロパンガス冷媒の温度は、膨張過程P−1−3において蒸発温度T2である7℃に低下する。膨張過程P−1−3につづく低圧過程P−1−4においては、プロパンガス冷媒は、圧力が蒸発圧力P2で一定に保たれたままエンタルピが増加する。低圧過程P−1−4は、蒸発過程P−1−4−1と、第1過熱過程P−1−4−2と、第2過熱過程P−1−4−3とから成る。蒸発過程P−1−4−1と、第1過熱過程P−1−4−2とは、カスケード熱交換器16の熱交換部位31においてプロパンガス冷媒が熱交換部位32の二酸化炭素冷媒から熱を吸収する過程である。プロパンガス冷媒は、蒸発過程P−1−4−1において蒸発して飽和蒸気となり、さらに、第1過熱過程P−1−4−2において過熱蒸気となって温度が13℃に上昇する。第2過熱過程においては、カスケード熱交換器16から流出したプロパンガス冷媒は、過冷却器20において熱交換部位30を通過する際に、熱交換部位29のプロパンガス冷媒から熱を吸収し、温度が25℃に上昇する。ここで、蒸発過程P−1−4−1においてはプロパンガス冷媒の温度は蒸発温度T2である7℃に保たれる。熱交換部位30を通過したプロパンガス冷媒が圧縮機13に還流して、ヒートポンプサイクルP−1が繰り返される。
図9(B)においては、二酸化炭素の臨界点、飽和液線および飽和蒸気線が、点C’、曲線X’C’および曲線C’Y’でそれぞれ示されており、さらに、13℃における等温線の一部が示されている。本発明の第1および第2の実施形態に係るヒートポンプシステムの冷房時における二酸化炭素冷媒の状態変化を表すサイクルC−1が示されている。サイクルC−1においては、二酸化炭素冷媒の圧力は、二酸化炭素冷媒が第1負荷側循環系B−1およびB’−1を循環する循環圧力P3で一定に保たれている。図9(B)に示す例では、循環圧力P3は、二酸化炭素の飽和温度が10℃となる4.5MPaである。サイクルC−1は、二酸化炭素冷媒のエンタルピが増加する放熱過程C−1−1と減少する吸熱過程C−1−2とから成る。放熱過程C−1−1においては、二酸化炭素冷媒はカスケード熱交換器16の熱交換部位32において熱交換部位31のプロパンガス冷媒に熱を放出する。放熱過程C−1−1は、過熱蒸気状態の二酸化炭素冷媒の温度が低下して飽和温度T3である10℃の飽和蒸気となる冷却過程C−1−1−1と、温度が飽和温度T3である10℃に保たれたまま二酸化炭素冷媒が凝縮して飽和液となる凝縮過程C−1−1−2とから成る。吸熱過程C−1−2においては、二酸化炭素冷媒は負荷側熱交換器17〜19において負荷側である室内空気から熱を吸収する。吸熱過程C−1−2は、飽和液状態の二酸化炭素冷媒が、飽和温度T3である10℃に保たれたまま蒸発して飽和蒸気となる蒸発過程C−1−2−1と、二酸化炭素蒸気の温度が上昇して温度13℃の過熱蒸気となる過熱過程C−1−2−2とから成る。図9(B)から明らかなように、二酸化炭素冷媒が熱交換部位32において放熱過程C−1−1により放出する熱量と、負荷側熱交換器17〜19において吸熱過程C−1−2により吸収する熱量とは等しい。
図10は本発明の実施形態に係るヒートポンプシステムの暖房運転条件の一例を示すためのp−h線図であり、図10(A)は高温側である二酸化炭素冷媒について示し、図10(B)は低温側であるプロパンガス冷媒について示す。ここで、圧力は縦軸にpで表され、エンタルピは横軸にhで表されている。図10は、暖房時の定格条件である外気温度7℃DB/6℃WB、室内温度20℃DBにおける運転条件の一例を示している。
図10(A)においては、二酸化炭素の臨界点、飽和液線および飽和蒸気線が、点C’、曲線X’C’および曲線C’Y’でそれぞれ示されており、さらに、10℃および25℃における等温線の一部が示されている。本発明の第1および第2の実施形態に係るヒートポンプシステムの暖房時における二酸化炭素冷媒の状態変化をそれぞれ表すヒートポンプサイクルC−2およびC−3が示されている。
ヒートポンプサイクルC−2は、圧縮過程C−2−1と、高圧過程C−2−2と、膨張過程C−2−3と、低圧過程C−2−4とから成る。圧縮過程C−2−1において、過熱蒸気状態の二酸化炭素冷媒は圧縮機14により圧縮されて圧力およびエンタルピが増加する。このとき同時に、二酸化炭素冷媒の温度も上昇している。また、圧縮過程C−2−1におけるエンタルピの増加は、圧縮機14による圧縮仕事のエネルギーに等しい。圧縮機14から吐出された二酸化炭素冷媒は、超臨界状態となっており、そのときの圧力は高圧圧力P4である。高圧圧力P4は、本運転条件において8MPaとなされており、二酸化炭素の臨界圧力CPよりも高い。圧縮過程C−2−1につづく高圧過程C−2−2は、負荷側熱交換器17〜19において二酸化炭素冷媒が負荷側である室内空気に熱を放出する過程である。二酸化炭素冷媒は、高圧過程C−2−2において、圧力が高圧圧力P4で一定に保たれたままエンタルピが減少する。このとき、二酸化炭素冷媒は冷却されて温度が25℃になる。冷却されて25℃となった二酸化炭素冷媒は、膨張過程C−2−3において、膨張弁38を通過する際に絞り膨張する。膨張過程C−2−3においては、二酸化炭素冷媒は、エンタルピが一定に保たれたまま圧力が蒸発圧力P5に低下する。ここで、蒸発圧力P5は二酸化炭素の蒸発温度が15℃となる圧力である。本運転条件においては、蒸発圧力P5は二酸化炭素の臨界圧力CPより低い5.1MPaである。膨張過程C−2−3は、二酸化炭素冷媒が飽和液となる第1膨張過程C−2−3−1と、飽和液となった二酸化炭素冷媒の一部が蒸発して湿り蒸気となる第2膨張過程C−2−3−2とから成る。二酸化炭素冷媒の温度は、膨張過程C−2−3において蒸発温度T5である15℃に低下する。膨張過程C−2−3につづく低圧過程C−2−4においては、二酸化炭素冷媒は、圧力が蒸発圧力P5で一定に保たれたままエンタルピが増加する。低圧過程C−2−4は、二酸化炭素冷媒が熱交換部位32において熱交換部位31のプロパンガス冷媒から熱を吸収する過程である。低圧過程C−2−4は、蒸発過程C−2−4−1と、過熱過程C−2−4−2とから成る。二酸化炭素冷媒は、蒸発過程C−2−4−1において蒸発して飽和蒸気となり、さらに、過熱過程C−2−4−2において過熱蒸気となって温度が25℃に上昇する。ここで、蒸発過程C−2−4−1においては二酸化炭素冷媒の温度は蒸発温度T5である15℃に保たれる。熱交換部位32から流出した二酸化炭素冷媒が圧縮機14に還流して、ヒートポンプサイクルC−2が繰り返される。
ヒートポンプサイクルC−3は、圧縮過程C−3−1と、高圧過程C−3−2と、膨張過程C−3−3と、低圧過程C−3−4とから成る。圧縮過程C−3−1は圧縮過程C−2−1と同様であるので説明を省略する。圧縮過程C−3−1につづく高圧過程C−3−2において、二酸化炭素冷媒は、圧力が高圧圧力P4で一定に保たれたままエンタルピが減少する。高圧過程C−3−2は、二酸化炭素冷媒の温度が25℃まで低下する第1高圧過程C−3−2−1と、温度がさらに低下して10℃となる第2高圧過程C−3−2−2とから成る。第1高圧過程C−3−2−1は、高圧過程C−2−2と同様であるので説明は省略する。第2高圧過程C−3−2−2は、二酸化炭素冷媒が熱交換部位33において熱交換部位34の冷水に熱を放出する過程である。二酸化炭素冷媒は、つづく膨張過程C−3−3において、膨張弁38を通過して絞り膨張する。膨張過程C−3−3においては、二酸化炭素冷媒は、エンタルピが一定に保たれたまま圧力が蒸発圧力P5に低下し、同時に温度が低下する。膨張過程C−3−3につづく低圧過程C−3−4においては、二酸化炭素冷媒は、圧力が蒸発圧力P5で一定に保たれたままエンタルピが増加する。低圧過程C−3−4は、二酸化炭素冷媒が熱交換部位32において熱交換部位31のプロパンガス冷媒から熱を吸収する過程である。低圧過程C−3−4は、第1低圧過程C−3−4−1と、蒸発過程C−3−4−2と、過熱過程C−3−4−3とから成る。第1低圧過程C−3−4−1においては、二酸化炭素冷媒は、過冷却液の状態から温度が上昇して蒸発温度T5である15℃の飽和液となる。さらに、二酸化炭素冷媒は、蒸発過程C−3−4−2において蒸発して飽和蒸気となり、過熱過程C−3−4−3において温度が上昇して25℃の過熱蒸気となる。ここで、蒸発過程C−3−4−2においては二酸化炭素冷媒の温度は蒸発温度T5である15℃に保たれる。熱交換部位32から流出した二酸化炭素冷媒が圧縮機14に還流して、ヒートポンプサイクルC−3が繰り返される。図10(A)から明らかなように、ヒートポンプサイクルC−3においては、ヒートポンプサイクルC−2よりも運転効率が向上している。
図10(B)においては、プロパンの臨界点、飽和液線および飽和蒸気線が、点C、曲線XCおよび曲線CYでそれぞれ示されており、さらに、5℃、13℃、15℃における等温線の一部が示されている。本発明の第1および第2の実施形態に係るヒートポンプシステムの暖房時におけるプロパンガス冷媒の状態変化を表すヒートポンプサイクルP−2が示されている。ヒートポンプサイクルP−2は、圧縮過程P−2−1と、高圧過程P−2−2と、膨張過程P−2−3と、低圧過程P−2−4とから成る。圧縮過程P−2−1において、過熱蒸気状態のプロパンガス冷媒は圧縮機13により圧縮されて圧力およびエンタルピが増加する。このとき同時に、プロパンガス冷媒の温度も上昇している。また、圧縮過程P−2−1におけるエンタルピの増加は、圧縮機13による圧縮仕事のエネルギーに等しい。圧縮機13から吐出されたプロパンガス冷媒の圧力は凝縮圧力P6となっている。ここで、凝縮圧力P6は、プロパンの凝縮温度が20℃となる圧力である。プロパンガス冷媒は、圧縮過程P−2−1につづく高圧過程P−2−2において、圧力が凝縮圧力P6で一定に保たれたままエンタルピが減少する。ここで、高圧過程P−2−2は、冷却過程P−2−2−1と、凝縮過程P−2−2−2と、過冷却過程P−2−2−3とから成る。冷却過程P−2−2−1および凝縮過程P−2−2−2は、プロパンガス冷媒が、熱交換部位31において熱交換部位32の二酸化炭素冷媒に熱を放出する過程である。過冷却過程P−2−2−3は、熱交換部位31から流出したプロパンガス冷媒が、過冷却器20の熱交換部位29において、熱交換部位30のプロパンガス冷媒に熱を放出する過程である。プロパンガス冷媒は、冷却過程P−2−2−1において熱を放出し、温度が低下して20℃の飽和蒸気となる。飽和蒸気となったプロパンガス冷媒は、凝縮過程P−2−2−2においてさらに熱を放出し、凝縮して飽和液となる。凝縮過程P−2−2−2においては、プロパンガス冷媒の温度は凝縮温度T6である20℃で一定に保たれる。過冷却過程P−2−2−3においては、プロパンガス冷媒は、熱交換部位29において熱を放出して温度が低下し、13℃の過冷却液となる。高圧過程P−2−2につづく膨張過程P−2−3においては、プロパンガス冷媒は、膨張弁36を通過して絞り膨張する。膨張過程P−2−3においては、プロパンガス冷媒は、エンタルピが一定に保たれたまま圧力が蒸発圧力P7に低下する。ここで、蒸発圧力P7はプロパンの蒸発温度が−1℃となる圧力である。膨張過程P−2−3は、過冷却液状態のプロパンガス冷媒が飽和液となる第1膨張過程P−2−3−1と、飽和液となったプロパンガス冷媒の一部が蒸発して湿り蒸気となる第2膨張過程P−2−3−2とから成る。プロパンガス冷媒の温度は、膨張過程P−2−3において蒸発温度T7である−1℃に低下する。膨張過程P−2−3につづく低圧過程P−2−4においては、プロパンガス冷媒は、圧力が蒸発圧力P7で一定に保たれたままエンタルピが増加する。低圧過程P−2−4は、蒸発過程P−2−4−1と、第1過熱過程P−2−4−2と、第2過熱過程P−2−4−3とから成る。蒸発過程P−2−4−1と、第1過熱過程P−2−4−2とは、熱源側熱交換器15においてプロパンガス冷媒が熱源側である大気から熱を吸収する過程である。プロパンガス冷媒は、蒸発過程P−2−4−1において蒸発して飽和蒸気となり、さらに、第1過熱過程P−2−4−2において過熱蒸気となって温度が5℃に上昇する。第2過熱過程においては、熱源側熱交換器15から流出したプロパンガス冷媒は、過冷却器20において熱交換部位30を通過する際に、熱交換部位29のプロパンガス冷媒から熱を吸収し、温度が15℃に上昇する。ここで、蒸発過程P−2−4−1においてはプロパンガス冷媒の温度は蒸発温度T7である−1℃に保たれる。熱交換部位30を通過したプロパンガス冷媒が圧縮機13に還流して、ヒートポンプサイクルP−2が繰り返される。
本発明の第1および第2の実施形態に係るヒートポンプシステムは、内外温度差の小さい冷房運転時には1台の圧縮機を使用し、内外温度差の大きい暖房運転時には2台の圧縮機を使用する。したがって、冷房運転時に使用する熱源側系統Aの圧縮機13としては、冷房時の負荷に対応した出力のものを選択すればよく、暖房運転時に熱源側系統Aの圧縮機13と併せて使用する負荷側系統BおよびB’の圧縮機14としては、圧縮機13および14の出力の合計が暖房時の負荷に対応した出力となるものを選択すればよい。
本発明の第1および第2の実施形態に係るヒートポンプシステムにおいては、熱源側系統Aにプロパンガス冷媒を用いており、負荷側系統BおよびB’に二酸化炭素冷媒を用いている。したがって、これらの実施形態に係るヒートポンプシステムにおいては、従来のHFC冷媒を用いる空調機に比較して、地球温暖化に影響を与えるHFC冷媒が100パーセント削減されている。また、熱源側系統Aにおいては、プロパン以外の自然冷媒を用いてもよい。自然冷媒としては、プロパンおよび二酸化炭素の他に、アンモニア、イソブタン、水が知られている。
また、本発明のヒートポンプシステムにおいては、負荷側系統に二酸化炭素冷媒を用いて熱源側系統にHFC冷媒を用いる構成とすることも可能である。この場合のHFC冷媒の削減量は、10馬力相当機において比較すると、負荷側熱交換器が一つのシングル機の場合で50パーセント、負荷側熱交換器が複数のマルチ機の場合で80パーセントである。このように、ヒートポンプシステムの負荷側系統にのみ自然冷媒を用いた場合であっても、HFC冷媒の使用量が削減される。また、本発明のヒートポンプシステムにおいては、ヒートポンプシステムを設置する際に現地での配管工事が必要となる負荷側系統に環境への影響が小さい自然冷媒を用いることで、配管工事のときにHFC冷媒が漏れることが防がれている。そして、熱源側系統の冷媒配管を全て工場内で組立てることで、組立時にHFC冷媒が環境に漏れることを防ぐことと、熱源側系統の冷媒配管の信頼性を向上させることとが達成される。
上記から明らかなように、本発明のヒートポンプシステムにおいては、HFC冷媒の使用量が削減されているため、地球温暖化防止に寄与する。
図11は、本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプシステムの期間消費電力量を従来機と比較して示す図であり、図11(A)は東京における期間消費電力量の比較を示し、図11(B)は仙台における期間消費電力量の比較を示す。ここで、比較対象とされている従来機はトップクラスの省エネ機である。また、期間消費電力量は、10馬力相当機の場合として計算されている。
図11(A)に示されるように、冷房期間における従来機の期間消費電力量が3,570kWhであるのに対し、本発明のヒートポンプシステムの期間消費電力量は2,870kWhであるので、従来機の90パーセントの消費電力量である。暖房期間における従来機の期間消費電力量が6,060kWhであるのに対し、本発明のヒートポンプシステムの期間消費電力量は5,730kWhであるので、従来機の95パーセントの消費電力量である。したがって年間では、従来機の期間消費電力量が9,630kWhであるのに対し、本発明のヒートポンプシステムの期間消費電力量は8,600kWhであるので、従来機の89パーセントの消費電力量である。
図11(B)に示されるように、冷房期間における従来機の期間消費電力量が1,650kWhであるのに対し、本発明のヒートポンプシステムの期間消費電力量は1,320kWhであるので、従来機の80パーセントの消費電力量である。暖房期間における従来機の期間消費電力量が15,050kWhであるのに対し、本発明のヒートポンプシステムの期間消費電力量は12,830kWhであるので、従来機の85パーセントの消費電力量である。したがって年間では、従来機の期間消費電力量が16,700kWhであるのに対し、本発明のヒートポンプシステムの期間消費電力量は14,150kWhであるので、従来機の85パーセントの消費電力量である。
図11(A)および(B)に示されるように、本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプシステムは、従来のトップクラスの省エネ機に比較して年間の消費電力量が東京で11パーセント仙台で15パーセント節減されている。したがって、本発明のヒートポンプシステムは、運転効率の向上による省エネルギー化が図られているため、地球温暖化防止に寄与する。
本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムにおいては、カスケード熱交換器16において冷却された二酸化炭素冷媒を氷蓄熱槽78に配設されている製氷用熱交換器35に循環させ、夜間電力によって製氷することで氷蓄熱槽78に蓄熱している。そして、昼間には、夜間に蓄熱された氷により得られた冷水で二酸化炭素冷媒を冷却し、冷却された二酸化炭素冷媒を負荷側熱交換器17〜19に循環することで冷房をおこなっている。本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムは、最大100パーセントのピークカット運転と、ピークシフト運転とを達成することが可能である。
図12は、本発明の第2の実施形態に係る蓄熱を利用するヒートポンプシステムの定格条件成績係数を従来機と比較して示す図である。
図12に示されるように、ピークカット運転モードで冷房をおこなった場合の従来機の成績係数が6.0であるのに対し、本発明のヒートポンプシステムの成績係数は25である。ピークシフト運転モードで冷房をおこなった場合の従来機の成績係数が3.7であるのに対し、本発明のヒートポンプシステムの成績係数は6.6である。また、標準運転モードで暖房をおこなった場合の従来機の成績係数が3.8であるのに対し、本発明のヒートポンプシステムの成績係数は4.1である。本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムは、蓄熱により得られた冷水を利用して膨張弁38に導入される二酸化炭素冷媒を過冷却しているため、従来機よりも高い成績係数となっている。本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプシステムの成績係数は、冷房時においても暖房時においても従来機を上回っており、特に、ピークカット運転モードで冷房をおこなった場合において非常に高い値を示している。上記から明らかなように、本発明のヒートポンプシステムは、運転効率の向上による省エネルギー化が図られているため、地球温暖化防止に寄与する。