JP4236430B2 - マグネット治具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁コイルの磁力によってワークを保持するマグネット治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数のワークを突き合わせて保持する場合、これらを工作台に載置してメカクランパにより保持していた。
また、例えば特開平5−69266号公報に示されるように、電磁コイルの励磁によってワークを保持する方法は従来より実施されていたが、これらのものは複数の電磁コイルを同時に励磁して一種類のワークを保持する構成になっていた。また、特開2000−312989号公報に示されるように、マグネットによりワークを位置決めした後にバキューム吸着によりクランプする薄板のクランプ方法が用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
メカクランパを使用する場合、多種のワークを混合生産しようとすればワークの形状毎に複数系統のメカクランパを設けなければならず、またワークとメカクランパとの干渉にも注意を払って治具の設計をしなければならなかった。また、設備の稼動開始後に新たな形状のワークに対応する場合には設計変更に多くの時間とコストを要していた。この問題を解決するため、本願の発明者らは多数の電磁コイルによりワークを磁力によって保持することにより、メカクランパを排除し、様々な形状のワークにフレキシブルに対応できるという知見を得、鋭意研究を重ねた。しかしながら、この方法では大きさや形状の異なる様々なワークに対応するため、治具の表面は出っ張りのないフラットな形状にしなければならず、このために複数のワークを当接させた状態で保持する場合には、これらを隙間無く確実に保持することは困難であった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので複数のワークを容易に位置決めして保持可能なマグネット治具の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るマグネット治具は、複数の電磁コイルを治具本体に散在させて固定し、それら電磁コイルの磁力によってワークを保持するマグネット治具において、互いに独立して通電状態を変更可能な複数の電力系統を備えると共に、各電磁コイルを何れの電力系統に接続したかによってグループ分けし、治具本体に複数の凹部を形成すると共に、各凹部の奥面に、異なる電力系統に接続された複数の待受コネクタ部を設け、各電磁コイルを前記各凹部に対して挿抜可能な複数の軸状エレメントに含めると共に、それら各軸状エレメントの一端に、各電磁コイルに接続された突入コネクタ部を設け、軸状エレメントをその軸心周りの回転位相を変えて凹部に挿入することで、突入コネクタ部が何れかの待受コネクタ部に択一的にコネクタ接続されるように構成し、さらに、突入コネクタ部と待受コネクタ部とをコネクタ接続した状態で、軸状エレメントを凹部に抜け止めする係止部を備えたところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のマグネット治具において、軸状エレメントに、回転位相を判別するための目印を設けたところに特徴を有する。
【0010】
【発明の作用及び効果】
<請求項1及び2の発明>
請求項1の構成では、複数のグループに分けた電磁コイルを、それら各グループ毎に異なるタイミングで励磁することで、マグネット治具の異なる部位に異なるワークを保持することができる。これにより、複数のワークを複数回に分けて治具に保持させることが可能になり、一度に複数のワークを保持させなければならなかった従来のものに比べて、作業の単純化が図られる。また、軸状エレメントをその軸心周りの回転位相を変えて凹部に挿入することで、軸状エレメント先端の突入コネクタ部が凹部奥面の何れかの待受コネクタ部にコネクタ接続されて、電磁コイルが何れかの電力系統に択一的に接続される。これにより、各グループに属する電磁コイルの配置を変更することができ、形状が異なる種々のワークに対応することができる。さらに、軸状エレメントに、その回転位相を判別するための目印を設けておけば(請求項2の発明)、各電磁コイルが何れの電力系統に接続されているかを容易に判別することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態のマグネット治具10に備えた治具本体11は上面が平坦になっており、その上面に複数の凹部12が開口している。それら凹部12は、例えば、縦横複数列のマトリックス状に配置され、各凹部12の内部には、軸状エレメント13が挿入組み付けされている。
【0014】
軸状エレメント13は、図2に示すように電磁コイル14を内蔵した円柱部13Aの下面から脚部15を垂下した構造をなす。また、円柱部13Aの外周面のうち上端寄り位置からは、フランジ18が張り出しており、円柱部13Aの上端面には、中心部に雌螺子17が切られている。
【0015】
脚部15は、図4(A)に示すように、軸状エレメント13の軸心からずれた位置に配置され、その脚部15の先端からは1対の雄端子金具16,16が延びている(図1参照)。また、各雄端子金具16,16のうち脚部15に埋設された基端部分には、電磁コイル14の端末が接続されている。そして、これら脚部15と雄端子金具16とにより本発明に係る突入コネクタ22が構成されている。
【0016】
図2に示すように、治具本体11のうち上壁20の下方には空間が備えられ、その上壁20に丸孔21を貫通形成することで前記した各凹部12が構成されている。丸孔21には、大径部21Aと中径部21Bと小径部21Cとが上側から順番に備えられて、丸孔21の下方に向かうに従って段付き状に窄まった構造をなしている。そして、丸孔21のうち最下端の小径部21Cに、軸状エレメント13の円柱部13Aが挿入され、小径部21Cと中径部21Bとの段差面に、軸状エレメント13のフランジ18が突き当てられて挿入方向で位置決めされている。また、この位置決め状態では、軸状エレメント13の上面が上壁20の上面と面一になり、フランジ18の上面が中径部21Bと大径部21Aとの段差面21Dと面一になる。
【0017】
前記段差面21Dには、軸状エレメント13を凹部12内に抜け止めするための係止爪23(本発明の「係止部」に相当する)が設けられている。係止爪23は、例えば、板金をL字形に屈曲して一辺に長孔23Aを形成してなり、その一辺を段差面21Dに敷設して前記長孔23Aに通したボルト24を上壁20の螺子孔に螺合することで治具本体11に取り付けられている。そして、ボルト24を緩めると、係止爪23がスライド可能となり、係止爪23の先端をフランジ18上に係止させた状態とその係止を解除した状態とに変更することができる。
【0018】
さて、凹部12の奥面には、待受コネクタユニット25が設けられている。待受コネクタユニット25は、治具本体11の下壁29に埋設されて前記丸孔21に対向配置されている。待受コネクタユニット25の上面には、図4(B)に示すように、4つの端子挿入部26が設けられている。これら端子挿入部26は、同図の左側に示された2つの端子挿入部26,26によって第1待受コネクタ部27Aが構成され、同図の右側に示された2つの端子挿入部26,26によって第2待受コネクタ部27Bが構成されている。
【0019】
これら第1及び第2の各待受コネクタ部27A,27Bを構成する1対の端子挿入部26,26は、軸状エレメント13の突入コネクタ22に備えた1対の雄端子金具16,16に対応し、内部に雌端子金具26T,26T(図5参照)を備える。そして、図2と図3とに示すように、軸状エレメント13の軸周りの回転位相を180度変更して軸状エレメント13を凹部12に差し込むことで、その軸状エレメント13の突入コネクタ22が凹部12内の何れか一方の待受コネクタ部27A,27Bにコネクタ結合されて、各雄端子金具16が何れかの待受コネクタ部27A,27Bの雌端子金具26Tに導通接続される。
【0020】
図5には、本実施形態のマグネット治具10の電気的な構成が示されている。マグネット治具10には、第1及び第2の電力系統31,32が設けられている。これら第1及び第2の電力系統31,32は、互いに独立して通電状態を変更することができる。具体的には、第1電力系統31は、電源V1に接続された給電ラインL10とGNDとの間に複数の並列ラインL11を接続してなる。そして、各並列ラインL11の途中部分に設けた断絶部分の両端末が、各凹部12の第1待受コネクタ部27Aに備えた雌端子金具26Tに接続されている。これにより、軸状エレメント13の突入コネクタ22が第1待受コネクタ部27Aにコネクタ接続されると、その軸状エレメント13に内蔵された電磁コイル14が第1電力系統31に接続される。また、給電ラインL10の途中には第1給電スイッチ28Aが設けられ、この第1給電スイッチ28Aをオン・オフすることによって、全ての並列ラインL11が通電可能な状態と通電不能な状態とに切り換えられる。
【0021】
一方、第2電力系統32は、第1電力系統31と共通の電源V1に接続された給電ラインL20とGNDとの間に複数の並列ラインL21を接続してなる。そして、各並列ラインL21の途中部分に設けた断絶部分の両端末が、各凹部12の第2待受コネクタ部27Bに備えた雌端子金具26Tに接続されている。これにより、軸状エレメント13の突入コネクタ22が第2待受コネクタ部27Bにコネクタ接続されると、その軸状エレメント13に内蔵された電磁コイル14が第2電力系統32に接続される。また、給電ラインL20の途中には第2給電スイッチ28Bが設けられ、この第2給電スイッチ28Bをオン・オフすることによって、全ての並列ラインL21が通電可能な状態と通電不能な状態とに切り換えられる。
【0022】
本実施形態のマグネット治具10の構成は以上の通りであり、以下、図1に示した第1及び第2のワーク50,51をマグネット治具10に保持する場合と、図6に示した第3及び第4のワーク52,53をマグネット治具10に保持する場合とを例に挙げて、本発明の作用・効果について説明する。
【0023】
第1のワーク50は、例えば矩形の板金であり、図1の二点鎖線で示したように、マグネット治具10の上面のうち一角部寄りに配された縦横3×3列計9個の凹部12を覆うようにしてマグネット治具10上に敷設することが可能である。
【0024】
一方、第2のワーク51は、長方形の板金の一角部から第1のワーク50を切除した構造をなしており、マグネット治具10の上面のうち第2のワーク51に覆われる前記した計9個の凹部12を除いた残りの凹部12を覆うようにしてマグネット治具10上に敷設することが可能である。
【0025】
そこで、例えば、前記計9個の凹部12に挿入される9個の軸状エレメント13を第1電力系統31に接続して第1グループとし、残りの凹部12に挿入される軸状エレメント13を第2電力系統32に接続して第2グループにする。
【0026】
そして、第1及び第2の給電スイッチ28A,28Bをオフの状態にしておき、例えば、第2のワーク51を第2グループの軸状エレメント13群の上に敷設してから、第2給電スイッチ28Bのみをオンする。すると、第2グループの軸状エレメント13群に内蔵された各電磁コイル14が励磁され、第2のワーク51がマグネット治具10に保持される。
【0027】
次いで、この状態で第1のワーク50をマグネット治具10上に敷設する。このとき、第1グループの軸状エレメント13群に内蔵の各電磁コイル14は励磁されていないので、凹部12の位置を容易に調整することができる。一方、第2のワーク51は第2グループの軸状エレメント13群によって固定されているので、第1のワーク50が第2のワーク51に当接しても位置ずれを起こすことはない。これにより、第2のワーク51に対して第1のワーク50を容易に位置合わせることができる。また、この時点で第2のワーク51は磁化されており、周辺には磁界が発生しているので、第1のワーク50を第2のワーク51に密着させやすいという効果もある。そして、所定の位置に第1のワーク50を位置合わせしたところで、第1給電スイッチ28Aをオンする。これにより、第1グループの軸状エレメント13群に内蔵の各電磁コイル14が励磁されて、第1のワーク50がマグネット治具10に保持される。
【0028】
さて、図6に示すように、上記した第1及び第2のワーク50,51とは異なる形状の第3及び第4のワーク52,53をマグネット治具10にセットする場合には、以下のようにして対応することができる。
【0029】
ここで、第3のワーク52は円板状をなす。一方、第4のワーク53は、長方形の板金に第3のワーク52に対応した丸孔54を形成した構造をなす。そして、例えば、マグネット治具10の上面における中央部分の4個の凹部12に丸孔54を対応させて第4のワーク53をマグネット治具10上に敷設し、それら中央部分の4個の凹部12に対応させて第3のワーク52を敷設することが可能である。
【0030】
そこで、例えば、前記4個の凹部12に挿入される計4個の軸状エレメント13を第1電力系統31に接続して第1グループとし、残りの凹部12に挿入される軸状エレメント13を第2電力系統32に接続して第2グループにする。そのためには、マグネット治具10を前記第1及び第2のワーク50,51に対応した仕様から第3及び第4のワーク52,53に対応した仕様に変更すべく、幾つかの軸状エレメント13を凹部12に挿入組み付けし直す必要がある。具体的には、図2に示したボルト24を緩め、係止爪23を軸状エレメント13から離す方向にスライドし、軸状エレメント13を引き抜く。このとき、図3に示すように、軸状エレメント13の上面の雌螺子17に吊りボルト19を螺合することで引き抜き作業を容易に行うことができる。
【0031】
そして、引き抜いた軸状エレメント13を軸中心周りに180度回転させて、再度、凹部12に押し込む。これにより、軸状エレメント13の電磁コイル14が接続される電力系統(31,32)が変更される。そして、再度、係止爪23を軸状エレメント13側にスライドしてフランジ18に係止し、ボルト24を締め付ける。これにより、マグネット治具10が仕様変更が完了する。
【0032】
このように本実施形態のマグネット治具10では、2つのグループに分けた軸状エレメント13に内蔵の電磁コイル14を、それら各グループ毎に異なるタイミングで励磁することで、マグネット治具10の異なる部位に異なるワーク51,50を保持することができる。これにより、両ワーク50,51を2回に分けて治具に保持させることが可能になり、一度に複数のワークを保持させなければならなかった従来のものに比べて、作業の単純化が図られる。しかも、各電磁コイル14を何れかの電力系統(31,32)に択一的に接続することで、各グループに属する電磁コイル14の配置を変更することができるので、形状が異なる種々のワークに対応することができる。
【0033】
また、全ての電磁コイル14によらなくても十分なワーク保持力が得られる場合には、全ての凹部12に軸状エレメント13を設けずに間引きしてもよい。これにより、凹部12の数分の軸状エレメント13を用意する必要がなく、低コスト化が図れるとともに省電力化も実現できる。またさらに、第2のワーク51を治具に仮置きした状態で作業者が見ることのできる軸状エレメント13を回転させればよいので、作業の確実性が担保される。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)前記実施形態では、突入コネクタ22を何れかの待受コネクタ部27A,27Bに択一的に接続する構成であったが、図7に示すように各電磁コイル14を、第1及び第2の電力系統31,32の何れか一方に択一的に接続する選択スイッチ35を設けた構成にしてもよい。この場合、軸状エレメントを逐一を挿入し直す手間がなくなる。
【0035】
(2)前記実施形態では、軸状エレメント13は円柱状であったが角柱状(例えば、四角柱、六角形柱等)であってもよい。
【0036】
(3)前記実施形態のマグネット治具10は、2つの電力系統31,32を備えた構成であったが、3つ以上の電力系統を備えた構成にしてもよい。
【0037】
(4)前記実施形態では、軸状エレメント13の回転位相を180度変更することで、各電磁コイル14を2つの電力系統31,32の何れかに接続する構成であったが、電磁コイル14が接続される電力系統を変更する際の回転位相は、180度以外であってもよい。具体的には、例えば、マグネット治具に3つの電力系統を設けた場合、120度ずつ軸状エレメントの回転位相をずらすことで、その軸状エレメントに備えた電磁コイルを3つの電力系統の何れかに接続する構成にしてもよい。
【0038】
(5)また、軸状エレメントには、その回転位相を判別するための目印を設けることが好ましい。このようにすれば、目印の向きに基づいて電磁コイルが何れの電力系統に接続されているかを容易に判別することができる。
【0039】
(6)またさらに、第1のワーク50を保持する電磁コイル14の極性(N/S)を第2のワーク51を保持する電磁コイル14の極性は逆になるようにすると、さらにワークを密着させることができる。これは電磁コイル14に流れる電流の向きが逆になるように回路を構成することにより容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るマグネット治具の斜視図である。
【図2】凹部に軸状エレメントを挿入した状態の側断面図
【図3】軸状エレメントの回転位相を変更して凹部に挿入した状態の側断面図
【図4】(A)軸状エレメントの底面図
(B)待受コネクタユニットの平面図
【図5】マグネット治具の電気的構成を示した回路図
【図6】ワークを変更した場合のマグネット治具の斜視図
【図7】マグネット治具の変形例を示した回路図
【符号の説明】
10…マグネット治具
11…治具本体
12…凹部
13…軸状エレメント
14…電磁コイル
22…突入コネクタ
23…係止爪(係止部)
27A…第1待受コネクタ部
27B…第2待受コネクタ部
31…第1電力系統
32…第2電力系統
35…選択スイッチ
50〜53…ワーク
Claims (2)
- 複数の電磁コイルを治具本体に散在させて固定し、それら電磁コイルの磁力によってワークを保持するマグネット治具において、
互いに独立して通電状態を変更可能な複数の電力系統を備えると共に、前記各電磁コイルを何れの電力系統に接続したかによってグループ分けし、
前記治具本体に複数の凹部を形成すると共に、前記各凹部の奥面に、異なる前記電力系統に接続された複数の待受コネクタ部を設け、
前記各電磁コイルを前記各凹部に対して挿抜可能な複数の軸状エレメントに含めると共に、それら各軸状エレメントの一端に、前記各電磁コイルに接続された突入コネクタ部を設け、
前記軸状エレメントをその軸心周りの回転位相を変えて凹部に挿入することで、前記突入コネクタ部が何れかの前記待受コネクタ部に択一的にコネクタ接続されるように構成し、
さらに、前記突入コネクタ部と前記待受コネクタ部とをコネクタ接続した状態で、前記軸状エレメントを前記凹部に抜け止めする係止部を備えたことを特徴とするマグネット治具。 - 前記軸状エレメントに、前記回転位相を判別するための目印を設けたことを特徴とする請求項1に記載のマグネット治具。
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