JP4232529B2 - コリオリ加速度を考慮した涙滴形タンク内スロッシングのメカニカルモデル作成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コリオリ加速度を考慮した涙滴形タンク内スロッシングのメカニカルモデル作成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
低重力あるいは無重力の宇宙空間を航行する衛星には、スピン衛星と呼ばれる衛星があり、該スピン衛星は自転しつつ航行を行うようになっている。
【0003】
而して、スピン衛星では、推薬液を収納するタンクとして、略半球状の外殻の開口部側に円錐状の外殻を、略半球状の外殻から離れる方向へ向けて先細りとなるよう接続した、いわゆる涙滴形タンクが使用されており、斯かる涙滴形タンクの一例は図10に示されている。
【0004】
図10中、1は涙滴形タンク(以下単にタンクという)であり、該タンク1は、スピン衛星の自転軸であるスピン軸Zから離れた位置に、円錐状の外殻の先細り状の先端がスピン軸Zを基準として外方へ向くよう、配設され、先細り状の円錐部の先端には推薬液2の取出し口3が設けられている。
【0005】
又、タンク1の中心軸zは、タンク1の半球状の外殻の頂部が中心軸zに近接し円錐状の外殻に設けた取出し口3が中心軸zから離反するよう、スピン軸Zに対し傾斜角度γで傾いている。
【0006】
なお、図10中、Ωはスピン衛星のスピン軸Zに対するタンク1のスピン角速度、aはタンク1の半球状の外殻の部分の半径、Lはスピン軸Zからタンク1の半球状の外殻の半径aの起点となる点までの最短距離、θCはタンク1における円錐状の外殻のタンク1の中心軸zに対する半頂角、gはスピン衛星が推進加速することによりスピン衛星に作用する慣性力である見掛けの重力、xはタンク1の円錐状の外殻の取出し口3側の頂点を通り中心軸zに直交する座標軸、yは中心軸zと座標軸xの交点を通ると共にx、y軸に直交する方向(図10の場合は紙面と直交する方向)へ延在する座標軸である。
【0007】
図10に示すごとき構造のタンク1を用いるのは、スピン衛星のスピンによる遠心力と見掛け上の重力gを利用して、推薬液(液体)2を常に取出し口3に保持するためである。
【0008】
一方、航行中のスピン衛星の機体に揺れ等による強制加速度外乱が作用すると、タンク1内で推薬液2の振動(スロッシング)が生じるが、これは推薬液2の揺れに伴い生じる動圧がタンク1を介して機体に伝達され、その結果機体に力及びトルクを作用させるため、機体の姿勢を制御するための姿勢制御系にとって望ましくない外乱となる。
【0009】
従って、スピン衛星の設計に際しては、推薬液2のスロッシングが機体に及ぼす力やトルクを考慮に入れた姿勢制御系の設計が重要な課題となり、斯かる設計を行うためにはタンク1内の推薬液2のスロッシングの状態を解析すると共にその解析結果からスロッシングと等価な動特性(固有振動数及びタンク1に及ぼす力やトルク)を持った設計マスばねモデル(メカニカルモデルという)を作成することが必要である。
【0010】
ところが、推薬液2のような液体は、連続体であるため、制御対象としての取扱いが難しく、設計に便利ではない。そこで、設計を容易に行うためにタンク1内の推薬液2を図11に示すような設計マスばねモデルに置き換え、設計マスばねモデルのパラメータm,m0,k,l,l0を適切な値に設定してそのデータを基に制御系を設計することが従来から行われている。
【0011】
ここで、適切な値に設定するとは、置き換えられた設計マスばねモデル系ともとの推薬液2のスロッシング系とで、タンク1に及ぼす力、トルクの強制加速度外乱に対する周波数特性が、重要な低い周波数帯域において一致するように設定することである。
【0012】
又、図11のパラメータ中、mはタンク1内においてタンク1の中心軸zに直交する方向であるx方向へ可動な可動物体の質量、m0はタンク1内に固定された固定物体の質量、kは可動物体のばね定数、lはタンク1の円錐状の外殻の頂点に設定したx軸、y軸、z軸の原点から可動物体までの距離、l0は原点から固定物体までの距離である。
【0013】
ところで、マスばね系の設計モデルを作成するにあたっては、その前の段階としてスロッシングの解析が必要であるが、斯かるスロッシングの解析手段として従来から有限要素法(FEM)等の数値解析手法と解析的手法が知られている。
【0014】
数値解析手法の場合には、一般に妥当な精度の解を得るためには、計算領域となる液体を多数の要素に分割し、分割した要素ごとに多数の独立点の物理量を未知変数として方程式を解く必要がある。従って細かい要素分割が必要で、自由度が膨大となり、計算時間が長くなって計算コストが嵩むという問題がある。
【0015】
一方、解析的手法では、細かい要素分割が不要で計算コストを安価にすることはできるが、一般に解析的手法を適用できるのは、円筒形タンクのごとき軸対称の場合、すなわち軸対称問題の場合である。
【0016】
しかるに、図10に示すごとき涙滴形のタンク1内の推薬液2のスロッシングは、スピン軸Zと見掛け上の重力gの方向がタンク1の軸対称軸である中心軸zに全く一致しない典型的な非軸対称問題となって解析的な手法の適用は困難であり、従って上述のごとき非軸対称問題の算定に対しては数値的手法に依存せざるを得ず、計算時間が長く掛り、計算コストが嵩むという弊害を排除することができない。
【0017】
特許出願人は、スピン軸に対して中心軸が所定の角度傾斜した涙滴形タンクの中心軸と涙滴形タンク内の液面の周方向の所定の位置を通る、液体の縦断面を想定し、各液体の縦断面において極座標を取り、該極座標と液面のタンク壁面に接する部分の周方向座標とで構成した球形座標を用いて液体運動を支配するラプラス方程式∇2Φ=0(Φは速度ポテンシャル)の解を直交関数の重ね合せにより解析的に決定し、直交関数展開により液体運動を離散化して問題を展開係数に関する連立一次方程式に帰着させ、該連立方程式を解いて設計マスばねモデルを作成するという特許出願を行った(特許文献1参照)。
【0018】
【特許文献1】
特開平11−053341号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の発明では、球座標の軸をタンク円錐部の頂点からとるようにして涙滴形タンクの加振に対するスロッシングの周波数特性の評価を行っており、また、コリオリ加速度を考慮していない。この発明は、コリオリ加速度を省略しても、作成した設計マスばねモデルがタンクに付けられて回転させられれば、コリオリ加速度を受けることになるので、問題ないだろうと考えられてなしたものである。
【0020】
しかし、上記特許文献1に示された涙滴形タンク内スロッシングの設計マスばねモデルの作成において、コリオリ加速度を定量的に考慮することができれば、実際のスロッシングの周波数特性により近似した設計マスばねモデルが作成できて衛星の姿勢制御性の精度向上に寄与できる。
【0021】
本発明は、上述の実情に鑑みてなしたもので、涙滴形タンク内の推薬液のような液体のスロッシングのごとき非軸対称問題に対し、解析的アプローチを可能にし、以って計算時間の短縮、計算コストの削減が可能で、且つ実際のコリオリ加速度を含むスロッシング系の周波数特性を高い精度で近似できる、コリオリ加速度を考慮した涙滴形タンク内スロッシングのメカニカルモデル作成方法を提供することを目的としてなしたものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、スピン軸に対して中心軸が所定の角度傾斜したスピン衛星における涙滴形タンクの液面の中央で液面と直交する第3の座標軸と該第3の座標軸と直交し且つ互いに直交した第1及び第2の座標軸を有する直交座標系を設定し、且つ前記第3の座標軸回りに周方向座標をとり、該周方向座標の0度から360までの間を複数区間に分割し、その各区間について液面とタンク壁面との交線でタンク壁面に接線を引き、この接線と前記第3の座標軸との交点を原点とする球座標を設定し、前記涙滴形タンクのスロッシング系において第1の座標軸方向にタンクを加振したときにタンクが受ける第1の座標軸方向の力と第2の座標軸回りのモーメントの周波数特性を求めて、この第1の座標軸方向加振での周波数特性を近似的に表わせる設計マスばねモデルを作成し、また、第2の座標軸方向にタンクを加振したときにタンクが受ける第2の座標軸方向の力と第1の座標軸回りのモーメントの周波数特性を求めて、この第2の座標軸方向加振での周波数特性を近似的に表わせる設計マスばねモデルを作成し、一方、非ポテンシャル流にも適用可能な変分原理、解の表示を導入してコリオリ加速度により分離したスロッシングの固有振動数を評価し、該評価した分離固有振動数を近似的に表わすように前記各設計マスばねモデルのばね定数を修正することを特徴とするコリオリ加速度を考慮した涙滴形タンク内スロッシングのメカニカルモデル作成方法、に係るものである。
【0024】
請求項2に記載の発明は、前記各設計マスばねモデルのばね定数の修正は、各設計マスばねモデルにコリオリ加速度が作用したときに生じる第1の座標軸と第2の座標軸の加振方向の連成項に固有振動数の分離度合を制御する定数を導入し、各加振方向のばね定数を前記評価したスロッシングの分離固有振動数に合わせて修正することを特徴とする請求項1に記載のコリオリ加速度を考慮した涙滴形タンク内スロッシングのメカニカルモデル作成方法、に係るものである。
【0025】
上記手段によれば、以下のように作用する。
【0026】
涙滴形タンクの加振に対するスロッシングの周波数特性の評価に際し、球座標の軸が液面と大体直角に液面の中央近くで交わるようにしてタンク円錐部のどこからでもとれるようにし、解の表示を、どの座標方向にも直交関数となる直交モード関数の重ね合わせで与えることにより、非ポテンシャル流にも適用可能にしてコリオリ加速度を含むスロッシングの周波数特性が解析的方法で評価可能となり、自由度が低減し、従って従来の有限要素法の数値的手法に比べてスロッシング系の解析、延いては設計マスばねモデル作成のための計算時間が短くなり、計算コストが安価になる。
【0027】
従って、前記解の表示に基づき、まず、コリオリ加速度を考慮せずに、液面とほぼ平行で互いに直交する2つの加振方向について周波数特性を近似的に表わす設計マスばねモデルを別個に作成し、次に、これらの設計マスばねモデルを連成させてコリオリ加速度による固有振動数の分離が取り込めるようにし、コリオリ加速度により分離したスロッシングの固有振動数を評価して、この評価した分離固有振動数を近似的に表わせるように前記各設計マスばねモデルのばね定数を修正するようにしたので、コリオリ加速度を含む実際のスロッシング系の周波数特性に非常に近似した周波数特性を持つ設計マスばねモデルが作成できる。
【0028】
このように、スロッシング系によるコリオリ加速度を含むスロッシングの周波数特性と近似した周波数特性を持つ設計マスばねモデルの作成が可能になることによって、衛星に対するスロッシングの影響を正確に評価して衛星の姿勢制御性を大幅に向上させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1〜図4は本発明の形態の概要を示す概念図であり、図1は本発明を適用する涙滴形タンクとその座標系を示す概念図、図2は力参照座標とメカニカルモデルの概念図、図3は球座標の設定方法の概念図、図4は球座標の原点と軸を決める座標変換の概念図である。
【0031】
1.方法の詳細
[問題の設定と手順]
図1に示す液滴形タンク1は、円錐形と球形の部分とが接合された形をしており、円錐部の母線をスピン軸とほぼ平行となるように傾けて設置されている。このため、スピンによる遠心力と推進加速度による重力のうちどちらが支配的な場合にも、推薬液2をその取出し口3(円錐部の頂点)に保持できる機能をもつ。図1で、
a:球形部の半径
θC :円錐部の半頂角
Ω:スピン角速度
g:推進加速度による重力
γ:タンクの中心線がスピン軸方向となす角(θCよりわずかに大きい角)
Lcent、Hcent:タンクの球形部中心のスピン軸からの距離、基準面からの高さ
(X,Y,Z):空間に固定された座標系
(x,y,z):衛星に固定された座標系
α:タンクの球形部中心の位置を規定する角
(x',y',z'):(x,y,z)をz軸回りにα回転させた座標系
([x],[y],[z]):タンク参照座標系([z]がタンクの中心線でz'x'面内にある)。(x',y',z')をy'軸回りに180度−γだけ回転させ、原点を円錐部頂点まで移動させて得られる。
【0032】
目的は、液面にほぼ平行な互いに直交する2方向にタンクが加振された時、この加振に対するスロッシングによる力とモーメントの周波数応答を近似的に表せるメカニカルモデル(設計マスばねモデル)を作成することである。以下の手順でこのようなメカニカルモデルを作成する:
(1)力参照座標系(加振方向と着目する力、モーメントの方向を決める座標系)を図2のように設定する。図2で、
(〈x〉,〈y〉,〈z〉):力参照座標系。(x',y',z')をy'軸回りに180度−回転させ、原点を(x',y',z')=(x'0,0,z'0)まで移動させて得られる。〈γ〉,x'0,z'0は、〈z〉軸が液面と液面中央付近で大体直角に交わるように設定する(あとの適用例参照)。したがって図2は重力が支配的で液面がほとんど水平な場合である。
(2)解析的方法の適用を可能にする球座標を設定する(ステップI)。
(3)コリオリ加速度を省略したスロッシング系において、
〈x〉方向のタンク加振加速度
【外1】
に対する、タンクに作用する〈x〉方向の力と〈y〉軸回りのモーメントの周波数特性
を求める(ステップII〜V)。
(4)このスロッシングに対して図2のメカニカルモデル5を考え、以下の条件:〈x〉方向のタンク加振加速度
【外2】
を受けた時の、タンクに作用する〈x〉方向の力と〈y〉軸回りのモーメントの周波数特性が、(3)で求めたスロッシング系のものと一致する
を満たすようにメカニカルモデル5の以下のパラメータを定める(ステップVI)。
m1、m0:スロッシュマス、固定マス
l1、l0:スロッシュマス、固定マスの取付け位置
k1:スロッシュマス取付けばね6のばね定数
(5)方向のタンク加振加速度
【外3】
に対しても上の(3),(4)同様にメカニカルモデル5を作成する。
(6)コリオリ加速度により分離したスロッシングの固有振動数を評価する。このために非ポテンシャル流にも適用可能な変分原理、解の表示を導入する。
(7)(4),(5)のメカニカルモデル5を、(6)で評価したスロッシング周波数特性を近似的に表わせるものに修正する。具体的には、メカニカルモデル5にコリオリ加速度が作用したときに生じる2加振方向の連成項に固有振動数の分離度合いを制御する定数を導入し、2加振方向のばね6のばね定数を(6)で評価したスロッシングの分離固有振動数に合わせて修正する(ステップVII、VIII)。
【0033】
以上が本発明の実施の形態において推薬液のスロッシングの設計マスばねモデル5(メカニカルモデル)の作成を行う際の概要であり、これらは[I]〜[VIII]のステップに分けられる。
【0034】
即ち、
[I]球座標系の導入
[II]液体の運動方程式
[III]静的液面形状
[IV]重力、遠心力下での変分原理
[V]重力、遠心力下でのスロッシング解析
[VI]重力、遠心力下でのメカニカルモデル作成
[VII]コリオリ加速度による分離固有振動数の算定
[VIII]修正メカニカルモデル
【0035】
次に、上記[I]〜[VIII]のステップについて詳述する。
【0036】
スロッシング解析は以下の仮定下で行う。(i)液体は非圧縮完全流体、タンクは剛体とする。(ii)回転座標系からみた流速成分、液面の静的平衡位置からの振動変位は微小で、線形理論が適用できる。
【0037】
[I]球座標系の導入
液滴形タンクに関する液体運動解析は、液体の静的形状が非軸対称であるため解析的取り扱いが困難であり、CFDに頼るのが通例であるが、以下のように球座標を設定すれば液体運動の特性関数系を解析的に決定して直交関数展開法を適用することができ、これによって、CFDに比べ計算時間、コストが著しく低減できる利点が得られる。まず、図3のように
([x']、[y']、[z']);[z']軸が液面の中央付近と大体直角に交わる直交座標系
を設定し、[z']軸回りに周方向座標φをとり、φの0度から360度までの区間をN個の区間に分割する。尚本文中のφは、下記各式中においては
【外4】
と記載するが、同一のものを表わす。その各区間
φj−0.5Δφ≦φ≦φj+0.5Δφ
(Δφ=2π/N; φj=0.5Δφ+(j−1)Δφ; j=1,2,...N) …(1)
について、液面Mとタンク壁面4との交線でタンク壁面4に接線を引き(平面φ=φj内で)、この接線と[z']軸との交点を原点として球座標ORθφを設定する(周方向分割区間を表わす添え字jは数式の煩雑さを避けるため省略する)。このような球座標設定の例を2つのjの値について図3に示す。このような球座標を用いて、静的平衡時の液面M、振動している液面F、タンク壁面Wを
M:R=RM(θ), F:R=RF(θ,φ,t)=RM(θ)+ζ(θ,φ,t),W:R=RW(θ) …(2a,b,c)
と表わす。ここで
RM(θ):静的平衡時の液面のR座標
RW(θ):タンク壁面のR座標
ζ(θ,φ,t):液面の振動変位
【0038】
式(2)のような表わし方には以下の利点がある。すなわち、液面変位がタンク壁面でタンク壁面に沿う(接する)べきであるという運動学的適合性を、タンク壁面が湾曲していても変位ベクトルの1方向成分(R成分)のみの設定で満足でき、幾何学的取り扱いが便利である。
【0039】
ひとつ注意すべきことは、図3で原点Oがあるφでタンクの上側から下側に飛び移ることがあり、このようなφで+R方向に定義された液面変位ζが不連続に変化することである。これに対しては、原点がタンクの上側、下側のどちら側にあるかに応じて−1,1をとるパラメータεを導入してζを符号反転させ、−εζ(液体領域から外側への液面変位)を連続関数とみて特性関数で展開する配慮を施す(式(18))。
【0040】
2つの座標系(図3参照)
([x'],[y'],[z']):球座標参照座標系
([x],[y],[z]): タンク参照座標系
の関係は、原点移動とオイラー(Euler)角による回転(図4)で一般的に与えておく:
【数1】
ここで、回転に対応する行列成分の一例は
E11=cosφEcosθEcosΨE−sinφEsinΨE,
E12=cosφEcosθEsinΨE−sinφEsinΨE,E13=cosφEsinθE …(3b)
(φE,θE,ΨE):オイラー角
【0041】
[II]液体の運動方程式
液体の運動方程式は次式で与えられる。
(δvx)/(δt)−2Ωvy+1/ρ(δP)/(δx)=0,(δvy)/(δt)+2Ωvx+1/ρ(δP)/(δy)=0,(δvz)/(δt)+1/ρ(δP)/(δz)=0 …(4a,b,c)
ここで
P=p−ρgz−(1/2)ρΩ2(x2+y2) …(5)
vx,vy,vz:流速成分
p:圧力
ρ:液体の密度
尚本文中のδは、下記各式中においては
【外5】
と記載するが、同一のものを表わす。
【0042】
運動方程式(4)をステップ[I]で導入した球座標に変換し、加振加速度による慣性力を考慮して次式を得る。
【0043】
【数2】
ここで
f1(θ,φ)=cos(R,y)cos(θ,x)−cos(R,x)cos(θ,y)
f2(θ,φ)=cos(R,y)cos(φ,x)−cos(R,x)cos(φ,y)
f3(θ,φ)=cos(θ,y)cos(φ,x)−cos(θ,x)cos(φ,y) …(7)
【0044】
[III]静的液面形状
スロッシング解析に先立ち、遠心力と重力との静的平衡条件によって決まる静的液面形状を求めておく必要がある。運動方程式(6)で、流速と加振加速度を0におき、圧力pを静圧pstとみなしてつりあい方程式に帰着させる。この式を積分してp=C1(C1は積分定数)すなわち
pst=ρ[gz+(1/2)Ω2(x2+y2)]+C1 …(8)
を得る。pstが未知形状の液面z=zst(x,y)において0になる条件より、液面形状を表わす関数形zst(x,y)が決定される:
z=zst(x,y)=−(Ω2/2g)(x2+y2)−(C1/ρg) …(9)
定数C1はタンクの液体充填率より定まる。式(9)より、静的液面は回転放物面である。
【0045】
[IV]重力、遠心力下での変分原理
式(6)で圧力pを以下のように表わす:
p=pst+pslo+pimp …(10)
ここで
pst: ステップ[III]で決定した静圧。
pslo: 液面の振動によって発生するスロッシュ圧(未知)。
pimp: 衝撃圧力。タンクの強制加速度によって液体が一体となって剛体移動する際の慣性によって生じ、次式によって与えられる。
【数3】
ここで液面M上での平均圧力0の条件より
【数4】
【0046】
式(10)を運動方程式(6)に代入して静的な関係(8)を考慮し、コリオリ加速度を省略すると
(δ/δt){vR,vθ,vφ}T=−grad(pslo/ρ) …(13)
なる関係が導かれるので、スロッシュ圧と
(δ/δt)Φ=−pslo/ρ …(14)
の関係にある速度ポテンシャルΦが存在する。そこで、速度ポテンシャルで表わされた変分原理[文献(1)の式(19)、文献(2)の式(18)]を適用し、さらに文献(3)p.600にならい速度ポテンシャルΦの代わりにスロッシング圧力psloと流体変位成分
【数5】
で表わして時間に関する部分積分を行う。そして、変分原理中に現れる法線ベクトルなどを球座標で表示し、液面境界条件を線形近似して次式を得る。
【0047】
【数6】
(f4(θ,φ),f5(θ,φ):タンクの位置によって決まる関数、表記省略)
【0048】
[V]重力、遠心力下でのスロッシング解析
この変分原理をガレルキン法によりモード方程式に変換する。解を解析的に表示するためにステップ[I]で導入した球座標が効力を発揮する。圧力の解をラプラス方程式の解としてもとめ、次にこの結果を式(13)に用い時間積分して流体変位成分の解を導く:
【数7】
ここで、右辺に現れる特性関数系は下記の通りである。
【0049】
【数8】
ここで
Ll:規格化定数
λmkとΘmk:次の境界値問題の解として定まるk番目の固有値、固有関数
Θ''+cotθΘ'+[λ−(m2/sin2θ)]Θ=0 …(22)
Θ'=0 at θ=θmax …(23)
αmk1:方程式α(α+1)=λmkの2根、すなわち
αmk1=1/2[−1−(1+4λmk)1/2],αmk2=1/2[−1+(1+4λmk)1/2]
【0050】
式(17),(18)を変分原理(16)の強制加速度項を省略した式に代入し、未定定数Amklq,Cmkqの変分に関する停留条件を課して、これらの未定定数に関する同次1次方程式系を導く。これは固有値問題の形
(−ω2M+K)X=0 …(24)
(X:Amklq,Cmkqを並べた列ベクトル)
になり、さらにCmkqのみに関する固有値問題に縮小できて、これを解くことにより固有振動数とモード関数を決定する。
【0051】
メカニカルモデル5(図2参照)を
2つの加振方向:〈x〉,〈y〉
について求めるが、各モデルともその加振方向に振動するモードのうちの最低次モードについて求める。これらのメカニカルモデル5は、独立かつ同様に求められるので、図2紙面内の加振方向についてのみ説明する:解をモード関数で次のように表わす。
【0052】
【数9】
【0053】
式(25-27)を変分原理(16)に代入してモード座標q(t)に関して変分をとり、次の形のモード方程式を導く:
【数10】
タンクが液体から受ける動的な力とモーメントを、タンク壁での動圧を積分して計算すると、次のような形に表わされる:
【数11】
(A,B,C,Dは定数)
モード方程式(28)の正弦波加振
【数12】
に対する定常振動解を求め、式(29)に代入すると力、モーメントの加振加速度に対する周波数応答が以下のように求められる。
【0054】
【数13】
【0055】
[VI]重力、遠心力下でのメカニカルモデル作成
図2のメカニカルモデル5が同様な加振(30)を受けたときのスロッシュマスの運動方程式、タンクに作用する力、モーメントを計算し、以下の式を得る。
【0056】
【数14】
ここで
P0〈x〉=Ω2cos2〈γ〉,P1〈x〉=Ω2(cos2〈γ〉−sin2〈γ〉),
P2〈x〉=Ω2x'0sin〈γ〉+gcos〈γ〉 …(34)
【0057】
式(32),(33)より、メカニカルモデルの力、モーメントの正弦波加振(30)に対する応答を計算すると
【数15】
ここで
ω〈x〉,mech=[(k1〈x〉−m1〈x〉P0〈x〉)m1〈x〉 ]1/2 …(36)
【0058】
式(31)の力、モーメントが式(35)の力、モーメントに任意の加振周波数ωfについて等しい条件より、メカニカルモデルの諸定数が次のように定まる。
【0059】
m0〈x〉=−A〈x〉β〈x〉−B〈x〉,m1〈x〉=A〈x〉β〈x〉/(1+ω〈x〉 −2P0〈x〉),k1〈x〉=m1〈x〉(ω〈x〉 2+P0〈x〉) …(37a,b,c)
l0〈x〉=(C〈x〉β〈x〉+D〈x〉)/(−m0〈x〉),l1〈x〉=(C〈x〉β〈x〉ω〈x〉 2−m1〈x〉P2〈x〉)/(k1〈x〉+m1〈x〉P1〈x〉) …(38a,b)
【0060】
[VII] コリオリ加速度による分離固有振動数の算定
ステップ[V]で定まる固有振動数は2つの加振方向で大体等しく(図7参照)、ひとつの固有振動数ω0,sloとみなせる。この固有振動数がコリオリ加速度の影響で2つの固有振動数ω1,sloとω2,sloに分離する。本ステップ[VII]ではメカニカルモデル修正のための第一歩として、これらの値を予測する。コリオリ加速度のある場合にはラプラス方程式の理論が使えないので、より一般的な変分原理と解の表示が必要になる。まず、変分原理として、運動方程式(6)を変分表示して式(16)に付加した次式を用いる。
【0061】
【数16】
ここで
【数17】
【0062】
次に、解の表示について考える。ラプラス方程式が使えないので、Rに依存する部分にも一般的な直交関数を使いたい。しかしRの上下限RW、RMが一定でなくθの関数として変化するのが問題である。このような場合の従来からの頻用手法は、θの定義域を多くの区間に分割し、その各区間ごとに解を、局所的に一定な不連続固有値と、独立な一般化座標で表わし、これらの一般化座標を隣接区間との境界での連続条件から決める方法であった。このような方法とは異なり、本評価法では次式
【数18】
のように解を表わし、固有値に相当するcosの中の
π(l−1)/(Rw−RM) …(43)
を連続関数として扱いその微分を考慮することによって隣接区間との境界での連続性を満たさせ、θの定義域全体に渡って共通の一般化座標
amklq,bmklq,cmklq,dmklq,emkq
を使うことによって自由度数、計算時間、コストの低減を計る。式(41),(42)を式(40)に代入し、一般化座標に関する変分計算を実行すると
(−ω2Ms+iωCs+Ks)Xs=Fs …(44)
の形の行列方程式が導かれる。ここで
Ms,Ks:質量および剛性行列
Cs:コリオリ加速度項に由来する逆対称行列
Xs:一般化座標を並べた列ベクトルである
【0063】
これを解いて共振ピ−クの現れる周波数を捜すと、スロッシングの基本次固有振動数がコリオリ加速度によって2つに分離した値ω1,sloとω2,sloが分かる。
【0064】
[VIII] 修正メカニカルモデル
ひとつのマスm1が加振2方向にそれぞれ別のばね定数のばね6でタンクにつながれ、タンクがz軸回りにスピンを受けた場合を考え、このマスの加振2方向の運動方程式を導くと、
【数19】
ここで
k1〈x〉, k1〈y〉:加振2方向のばね定数
u,v:加振2方向の動的変位
【0065】
これに基づき、ステップ[VI]のメカニカルモデル5(式(32)ともう一方の加振方向に対して同様に導かれる式、省略)を修正したメカニカルモデル5を次のように表わす。
【0066】
【数20】
ここで
m1〈x〉、m1〈y〉:〈x〉,〈y〉方向の運動に関する慣性マスでステップ[VI]で求めた値とする。
c: コリオリ加速度による連成項によって生ずる固有振動数の分離の度合いをコントロールする定数;
k'1〈x〉、k'1〈y〉:分離した固有振動数の値を調整するための修正ばね定数
【0067】
そして力、モーメントは次式によって与えられる:
【数21】
【0068】
式(46)の振動数方程式は
Aω4+Bω2+C=0 …(48)
ここで
A=m1〈x〉m1〈y〉
B=m1〈y〉(−k'1〈x〉+m1〈x〉Ω2cos2〈γ〉)+m1〈x〉(−k'1〈y〉+m1〈y〉Ω2)−4m1〈x〉m1〈y〉Ω2cos2〈γ〉・c2
C=(k'1〈x〉−m1〈x〉Ω2cos2〈γ〉)(k'1〈y〉−m1〈y〉Ω2) …(49)
【0069】
式(48)のω2に関する2根の平均と差が、ステップ[VII]で求めた分離固有振動数の2乗の平均と差にそれぞれ等しい条件を課すと
(−B)/(2A)=(ω1,slo 2+ω2,slo 2)/2,((B2−4AC)1/2)/A=ω2,slo 2−ω1,slo 2 …(50a,b)
式(50a),(50b)よりBを消去して
C/A=ω1,slo 2ω2,slo 2 …(51)
を導き、式(49)を代入すると、次のようになる。
【0070】
ω1,slo 2ω2,slo 2=(k'1〈x〉−m1〈x〉Ω2cos2〈γ〉)/m1〈x〉・(k'1〈y〉−m1〈y〉Ω2)/m1〈y〉 …(52)
【0071】
式(52)の右辺の第1、2因数が積ω1,sloω2,sloに等しくなるようにk'1〈x〉、k'1〈y〉を定める。このようにして求めたメカニカルモデル5の周波数応答が、スロッシングの周波数応答の共振挙動をよく表わすことを、次節で確かめる。
【0072】
2.適用例
まず、重力のみでスピンのない場合についてステップ[VI]のメカニカルモデルのパラメータを計算した。その結果を図5に示す。
【0073】
図5の(a)は固有振動数ω1〈x〉/2π、ω1〈y〉/2π(Hz)、
(b)は スロッシュマスm1〈x〉、m1〈y〉(kg)、
(c)はスロッシュマスm1〈x〉、m1〈y〉(液体の全質量mliquidで無次元化した値)、
(d)はスロッシュマスの取付け位置l1〈x〉、l1〈y〉(球形部半径で無次元化した値)、
(e)は固定マスの取付け位置l0〈x〉、l0〈y〉(球形部半径で無次元化した値)である(重力支配下; 実線、一点鎖線は〈x〉、〈y〉加振に対する値)。
[a=0.25m,θC=40deg,γ=43deg,Lcent=0.5m,Hcent=0m,α=0,Ω=0rpm,g=2m/s2,ρ=1009kg/m3;
力参照座標(〈x〉,〈y〉,〈z〉)の傾き〈γ〉=0、原点の(x',y',z')座標(Lcent,0,Hcent+a(図2参照);
球座標参照座標([x'],[y'],[z'])の傾き(φE,θE,ΨE)=(0,−38°,0),原点の[x],[y],[z])座標(0.14,0,0.17)m(図3,4参照)]
【0074】
注意すべきことは、スロッシュマスが液体充填率の増加とともに単調増加せず、途中の充填率で最大となることである。この理由は、充填率が100%に近づくと液面の面積が小さくなって拘束が強くなり、一方、低い充填率では全液体量が小さいためスロッシュマスも小さくなるためである。以上の結果、スロッシュマスは中間より多少高い充填率で最大となる。
【0075】
本計算法は、静的平衡時の液体形状が非軸対称な場合を対象として考案したものであるが、検証のため、円錐部を小さく(円錐部の頂角を大きく)して球形タンクに近づけた場合についてメカニカルモデルのパラメータの計算を行い、過去の文献(4)と比較して図6に示した。
【0076】
図6の(a)は無次元固有振動数ω1〈x〉/(g/a)1/2、ω1〈y〉/(g/a)1/2、
(b)はスロッシュマスm1〈x〉、m1〈y〉(液体の全質量mliquidで無次元化した値)、
(c)はスロッシュマスの取付け位置l1〈x〉、l1〈y〉(球形部半径で無次元化した値)、
(d)は固定マスの取付け位置l0〈x〉、l0〈y〉(球形部半径で無次元化した値)である(重力支配下、球タンクに帰着させて検証、文献(4)p.13の結果と別曲線で表わせないほど一致;実線、一点鎖線は、〈x〉、〈y〉加振に対する値)。
[a=0.25m,θC=70deg,γ=22deg,Lcent=0.5m,Hcent=0m,α=0,Ω=0rpm,g=2m/s2,ρ=1009kg/m3;
力参照座標(〈x〉,〈y〉,〈z〉)の傾き〈γ〉=0、原点の(x',y',z')座標(Lcent,0,Hcent+a)(図2参照);
球座標参照座標([x'],[y'],[z'])の傾き(φE,θE,ΨE)=(0,−17°,0),原点の[x],[y],[z])座標(0.07,0,0.01)m(図3,4参照)]
【0077】
文献(4)の結果との一致は非常によいことを確認している。
【0078】
図7に本題のスピンのある場合のメカニカルモデルのパラメータの計算結果を示す。
【0079】
図7の(a)は固有振動数ω1〈x〉/2π、ω1〈y〉/2π(Hz)、
(b)は スロッシュマスm1〈x〉、m1〈y〉(kg)、
(c)はスロッシュマスm1〈x〉、m1〈y〉(液体の全質量mliquidで無次元化した値)、
(d)はスロッシュマスの取付け位置l1〈x〉、l1〈y〉(球形部半径で無次元化した値)、
(e)は固定マスの取付け位置l0〈x〉、l0〈y〉(球形部半径で無次元化した値)である(実線、一点鎖線は〈x〉、〈y〉加振に対する値)。
[a=0.25m,θC=40deg,γ=43deg,Lcent=0.5m,Hcent=0m,α=0,Ω=20rpm,g=2m/s2,ρ=1009kg/m3;
力参照座標(〈x〉,〈y〉,〈z〉)と球座標参照座標([x'],[y'],[z'])はタンク対象座標([x],[y],[z])に一致(図2,3参照)]
【0080】
スピンによって生じる液面の勾配は、液面がタンク中心線と交わる位置で
dz'/dx'
が−0.8から−1.3となる程度であり、重力が小さいためかなり大きく、コリオリ加速度による固有振動数の分離も次にみるように顕著である。
【0081】
図8、9は、ステップ[VIII]の修正メカニカルモデルによって、ステップ[VII]の解析で求めたスロッシングによる力とモーメントの周波数応答が近似的に表わせることを示したものである。
【0082】
図8は
【数22】
に対する力、モーメントの周波数応答[液体充填率48%;実線、メカニカルモデル;点線、スロッシング系;他のパラメータは図7と同じ]を表わし、図9は
【数23】
に対する力、モーメントの周波数応答[液体充填率48%;実線、メカニカルモデル;点線、スロッシング系;他のパラメータは図7と同じ]を表わす。スロッシュマスが大きいため重要な中間的充填率の代表値について示した。特に分離した2つの固有振動数の間の帯域での一致がよく、2つの固有振動数の外側で多少一致が悪くなるのは、スロッシング系の計算結果では隣接するモードの寄与が含まれるためである(低周波数側にも内部振動と呼ばれるモードがある)。特に、コリオリ加速度による2加振方向の振動の連成によって、以下のことが起こる点に注意が必要である。
【0083】
〈x〉方向加振に対しても〈y〉方向の力、〈x〉方向のモーメントが生じる(これらはコリオリ加速度なしの場合には出ない)
〈y〉方向加振に対しても〈x〉方向の力、〈y〉方向のモーメントが生じる(これらはコリオリ加速度なしの場合には出ない)
【0084】
これらの連成によって生じる力、モーメント成分の位相変化が修正メカニカルモデルとスロッシング系とで一致している。
【0085】
文献
[1] Utsumi, M., 1998, "Low-gravity Propellant Slosh Analysis Using Spherical Coordinates," Journal of Fluids and Structures, 12, pp. 57-83.
[2] Utsumi, M., 2000, "Low-gravity Sloshing in an Axisymmetrical Container Excited in the Axial Direction," ASME Journal of Applied Mechanics, 67, pp. 344-354.
[3] Utsumi, M., 2000, "Development of Mechanical Models for Propellant Sloshing in Teardrop Tanks," Journal of Spacecraft and Rockets, 37, pp. 597-603.
[4] NASA SP-8009, NASA Space Vehicle Design Criteria (Structures), Propellant Slosh Loads, August 1968.
【0086】
尚、本発明は上記形態例にのみ限定されるものではなく、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ること、等は勿論である。
【0087】
【発明の効果】
本発明のコリオリ加速度を考慮した涙滴形タンク内スロッシングのメカニカルモデル作成方法よれば、以下のような優れた効果を奏し得る。
【0088】
涙滴形タンクの加振に対するスロッシングの周波数特性の評価に際し、球座標の軸が液面と大体直角に液面の中央近くで交わるようにしてタンク円錐部のどこからでもとれるようにし、解の表示を、どの座標方向にも直交関数となる直交モード関数の重ね合わせで与えることにより、非ポテンシャル流にも適用可能にしてコリオリ加速度を含むスロッシングの周波数特性が解析的方法で評価可能となり、自由度が低減し、従って従来の有限要素法の数値的手法に比べてスロッシング系の解析、延いては設計マスばねモデル作成のための計算時間が短くなり、計算コストが安価になる。
【0089】
従って、前記解の表示に基づき、まず、コリオリ加速度を考慮せずに、液面とほぼ平行で互いに直交する2つの加振方向について周波数特性を近似的に表わす設計マスばねモデルを別個に作成し、次に、これらの設計マスばねモデルを連成させてコリオリ加速度による固有振動数の分離が取り込めるようにし、コリオリ加速度により分離したスロッシングの固有振動数を評価して、この評価した分離固有振動数を近似的に表わせるように前記各設計マスばねモデルのばね定数を修正するようにしたので、コリオリ加速度を含む実際のスロッシング系の周波数特性に非常に近似した周波数特性を持つ設計マスばねモデルが作成できる。
【0090】
このように、スロッシング系によるコリオリ加速度を含むスロッシングの周波数特性と近似した周波数特性を持つ設計マスばねモデルの作成が可能になることによって、衛星に対するスロッシングの影響を正確に評価して衛星の姿勢制御性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する涙滴形タンクとその座標系を示す概念図である。
【図2】力参照座標とメカニカルモデルの概念図である。
【図3】球座標の設定方法の概念図である。
【図4】球座標の原点と軸を決める座標変換の概念図である。
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は重力のみでスピンのない場合についてステップVIのメカニカルモデルのパラメータを計算した結果を示す線図である。
【図6】(a)、(b)、(c)、(d)は円錐部を小さくして球形タンクに近付けた涙滴形タンクについてパラメータを計算して過去の文献と比較して示した線図である。
【図7】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は本題のスピンのある場合の計算結果を示す線図である。
【図8】(a)、(b)、(c)、(d)はステップVIIIの修正メカニカルモデルによって、ステップVIIの解析で求めたスロッシングによる力とモーメントの周波数応答が近似的に表せることを示した線図である。
【図9】(a)、(b)、(c)、(d)はステップVIIIの修正メカニカルモデルによって、ステップVIIの解析で求めたスロッシングによる力とモーメントの周波数応答が近似的に表せることを図8と異なる条件で示した線図である。
【図10】涙滴形タンクの概要を説明するための縦断面図である。
【図11】図10に示す涙滴形タンクの設計マスばねモデルを図示化した概念図である。
【符号の説明】
1 涙滴形タンク
4 タンク壁面
5 設計マスばねモデル
6 ばね
M 液面
m1 マス
k ばね定数
Claims (2)
- スピン軸に対して中心軸が所定の角度傾斜したスピン衛星における涙滴形タンクの液面の中央で液面と直交する第3の座標軸と該第3の座標軸と直交し且つ互いに直交した第1及び第2の座標軸を有する直交座標系を設定し、且つ前記第3の座標軸回りに周方向座標をとり、該周方向座標の0度から360までの間を複数区間に分割し、その各区間について液面とタンク壁面との交線でタンク壁面に接線を引き、この接線と前記第3の座標軸との交点を原点とする球座標を設定し、前記涙滴形タンクのスロッシング系において第1の座標軸方向にタンクを加振したときにタンクが受ける第1の座標軸方向の力と第2の座標軸回りのモーメントの周波数特性を求めて、この第1の座標軸方向加振での周波数特性を近似的に表わせる設計マスばねモデルを作成し、また、第2の座標軸方向にタンクを加振したときにタンクが受ける第2の座標軸方向の力と第1の座標軸回りのモーメントの周波数特性を求めて、この第2の座標軸方向加振での周波数特性を近似的に表わせる設計マスばねモデルを作成し、一方、非ポテンシャル流にも適用可能な変分原理、解の表示を導入してコリオリ加速度により分離したスロッシングの固有振動数を評価し、該評価した分離固有振動数を近似的に表わすように前記各設計マスばねモデルのばね定数を修正することを特徴とするコリオリ加速度を考慮した涙滴形タンク内スロッシングのメカニカルモデル作成方法。
- 前記各設計マスばねモデルのばね定数の修正は、各設計マスばねモデルにコリオリ加速度が作用したときに生じる第1の座標軸と第2の座標軸の加振方向の連成項に固有振動数の分離度合を制御する定数を導入し、各加振方向のばね定数を前記評価したスロッシングの分離固有振動数に合わせて修正することを特徴とする請求項1に記載のコリオリ加速度を考慮した涙滴形タンク内スロッシングのメカニカルモデル作成方法。
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