JP4231358B2 - 木材の腐朽診断方法及びこの方法に用いる木材の腐朽診断薬 - Google Patents

木材の腐朽診断方法及びこの方法に用いる木材の腐朽診断薬 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材の腐朽診断方法及びこれに用いる木材の腐朽診断薬に関する。また、本発明は木材の簡易な腐朽診断方法及びこれに用いる木材の腐朽診断キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
木材は建築用材を中心に広範に使用されている優れた材料であるが、生物による劣化(生物劣化)を受けやすいという欠点がある。
【0003】
木材の生物劣化は、シロアリ等の昆虫による食害と木材腐朽菌等の微生物による腐朽に大別される。前者は目視乃至簡単な検査で判別可能であるが、後者は木材中での腐朽菌の生育によるため目視のみでは判別不可能な場合が多い。しかも腐朽菌の生育は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等の構造物質の代謝分解を伴うため、木材質量の数%〜10%程度の腐朽度(一般に質量減少として評価される。)でも木材強度が半減する。特に褐色腐朽菌による木材の腐朽は建築用材に頻発するため、腐朽初期段階で木材の腐朽の有無を確実に判定する方法が求められている。
【0004】
この問題に対処するためには、定期的に腐朽の有無をチェックすることが肝要である。従来の腐朽検出方法は、(1)木材の打診、触診、(2)腐朽木材サンプルからの菌の培養、(3)釘状の器具(ピロディン)を打ち込む際の抵抗による検出、(4)超音波の伝達度の変化やアコースティックエミッション(AE)を利用した検出等が考案されてきた。
【0005】
しかし、(1)木材の打診や触診では腐朽初期を検出できず、しかも判定が曖昧である。(2)菌の培養は結果を得るまでに長期間を要し、専門的な技術が必要である。(3)ピロディンはバネの力によりスチール製ピンを木材に打ち込み貫入深さから腐朽程度を判断するものであるが、供試木材の密度や品質に依存するため定量的な結果は得られず腐朽初期を検出できない。(4)音波探傷やアコースティックエミッション(AE)は大掛かりな装置を用いるためコストが掛かる上、専門知識と技術が必要である。このように、従来の腐朽検出方法にはいずれも問題があり、広く使用されるには至っていない。
【0006】
そこで、抗原抗体反応を利用した検出方法も提案されている。
例えば、非特許文献1(J. W. Palfreyman et al., "Immunological Methods for the Detection and Characterisation of Wood Basidiomycetes", Biodeterior 7, 709-713 (1988))には、マツオウジ(Lentinus lepideus)やカワラタケ(Coriolus versicolorTrametes versicolor)を用いてその調製した抗血清により、菌の検出が可能であることが記載されている。この文献によれば、前記抗血清はBasidiomycetes属の他の担子菌や一部の黴菌も検出できるとされている。しかし、抗血清に反応を示した菌種名は記載されていない。また、対照(菌を接種していない血清)に対しても種々の菌が反応したとされている。一般に腐朽が疑われる木材の表面にはカビ類を含む種々の菌が存在しており、これらにも反応する検出法では木材腐朽菌の検出法として有効でない。
【0007】
非特許文献2(C. A. Clausen et al., "Early detection of brown-rot decay in southern yellow pine using immunodiagnostic procedures", Wood Sci. Technol. 26, 1-8 (1991))は、複数の腐朽菌由来の抗原を混合し、ウサギに接種して得た抗血清によりそれら複数の腐朽菌の検出が可能であることを示している。しかし、この方法は複数の菌を培養する必要があるため操作が煩雑である。また、この文献では質量減少、ELISA法、凝集法(活性炭/ラテックス)及びドットブロットについて比較を行なっているが、凝集法では低腐朽度でも反応が見られる反面、高腐朽度でも陰性結果が得られるなど信頼性が低い。酵素結合免疫吸着定量法(ELISA法)では一部の腐朽菌を検出できず、ドットブロット法では全体に検出感度が低い。
【0008】
また、非特許文献3(Yoon Soo Kim et al., "The Use of ELISA for the Selection of White- and Brown-Rot Fungi", Holzforschung 45, 403-406 (1991))でも、腐朽菌で感作したウサギから得た抗血清を用いたELISA法を検討し、特定の腐朽菌を用いて得た抗血清に対しては当該菌種のみ強い反応を示すことが示されている。例外としてポスティア・プラセンタ(Postia placenta)に基づく抗血清に対しては他の菌も反応も示すが、その態様はELISA法の実施条件により変化する。なお、ポスティア・プラセンタ(Postia placenta)は日本には生息しない腐朽菌であり(侵入しないように規制措置が取られている。)日本では利用できない。
【0009】
特許文献1(米国特許第5,563,040号)は、信頼性、非特異性に欠けていた従来法を考慮して、より確実な検出法を提案している。具体的には、ポリエステル布に捕捉ゾーンとキャリアーゾーンとを設け、捕捉ゾーンには腐朽菌抗原に特異的な第一の抗体(モノクローナル抗体)を固定し、キャリアーゾーンには腐朽菌抗原に対する第二の抗体(ポリクローナル抗体)を有色ビーズ上に固定しておく方法を開示している。試験に際しては、木材試料の抽出液にポリエステル布を(キャリアーゾーン側を下にして)浸漬する。抽出液中に腐朽菌抗原が存在する場合には、これが有色ビーズ上の第二抗体に結合し、毛管現象による液の上昇に伴い液中の抗原が第二抗体を有色ビーズとともに上方に引き上げ、捕捉ゾーンにおいて第一の抗体とさらに結合して第一の抗体−抗原−第二抗体(有色ビーズ)からなる複合体を形成する。このように有色ビーズが捕捉ゾーンに捕捉されて形成するラインを目視で確認し、腐朽菌の有無を判定するというものである。しかし、この文献では、ポスティア・プラセンタ(Postia placenta)由来のキシラナーゼに対する抗体をモノクローナル抗体として用いた場合のみの効果が確認されていることから、日本に存在する木材腐朽菌についての効果は予想できない。
【0010】
このように、従来考案されている抗原抗体反応を利用した検出方法では、多種にわたる木材腐朽菌を同時に検出し、かつ、木材腐朽菌以外の菌を検出しないという課題は解決されていない。
【0011】
【特許文献1】
米国特許第5,563,040号
【非特許文献1】
J. W. Palfreyman et al., "Immunological Methods for the Detection and Characterisation of Wood Basidiomycetes", Biodeterior 7, 709-713 (1988)
【非特許文献2】
C. A. Clausen et al., "Early detection of brown-rot decay in southern yellow pine using immunodiagnostic procedures", Wood Sci. Technol. 26, 1-8 (1991)
【非特許文献3】
Yoon Soo Kim et al., "The Use of ELISA for the Setection of White- and Brown-Rot Fungi", Holzforschung 45, 403-406 (1991)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、日本に存在する木材腐朽菌全般について、多種にわたる木材腐朽菌による木材の腐朽を同時に検出し、かつ、木材腐朽菌以外を検出しない木材腐朽の診断方法及びその方法に用いる診断薬を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、日本国内に天然に存在するオオウズラタケ等の木材腐朽菌を培養して得られる分子量1,000〜100,000のタンパク質を抗原として動物に感作することにより得られる抗体が、前記タンパク質を得るのに用いた木材腐朽菌のみならずそれ以外の木材腐朽菌によって腐朽した木材抽出液に対しても広く反応を示す一方、木材腐朽菌以外の菌が生育した木材抽出液には有意の反応を示さないという結果を得て、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の木材の腐朽診断方法、これに用いる木材の腐朽診断薬、木材の簡易な腐朽診断方法及び木材の腐朽診断キットを提供する。
(1) 木材腐朽菌を培養して得られる分子量1,000〜100,000のタンパク質を抗原として動物を感作して得た抗体を、被検木材抽出液と接触させる抗原抗体反応により、被検木材の腐朽を判定する木材の腐朽診断方法。
(2) 木材腐朽菌を液体培養して得られる分子量1,000〜100,000のタンパク質を抗原として動物を感作して得た抗体を、被検木材抽出液と接触させる抗原抗体反応により、複数種の木材腐朽菌による被検木材の腐朽を判定する前記1の木材の腐朽診断方法。
【0015】
(3) 前記タンパク質が、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)、キチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum)、イドタケ(Coniophora puteana)、ナミダタケ(Serpula lacrymans)、カワラタケ(Trametes versicolor)、キカイガラタケ(Gloeophyllum sepiarium)からなる群より選択される木材腐朽菌のうちの1種類の培養によって得られるものである前記1または2の木材の腐朽診断方法。
(4) 前記タンパク質が、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)の培養によって得られるものである前記3の木材の腐朽診断方法。
【0016】
(5) オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)、キチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum)、イドタケ(Coniophora puteana)、ナミダタケ(Serpula lacrymans)、カワラタケ(Trametes versicolor)、キカイガラタケ(Gloeophyllum sepiarium)からなる群より選択される1種または2種以上の木材腐朽菌による木材の腐朽を判定する前記1乃至4のいずれかの木材の腐朽診断方法。
(6) 抗原抗体反応による判定がドットブロット法または酵素結合免疫吸着定量法(ELISA法)により行なわれる前記1乃至5のいずれかに記載の木材の腐朽診断方法。
【0017】
(7) 木材腐朽菌を培養して得られる分子量1,000〜100,000のタンパク質を抗原として動物を感作して得た抗体を含有し、被検木材から得た抽出液と接触させることにより木材腐朽菌による木材の腐朽を判定する木材の腐朽診断薬。
(8) 前記抗体が、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)、キチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum)、イドタケ(Coniophora puteana)、ナミダタケ(Serpula lacrymans)、カワラタケ(Trametes versicolor)、キカイガラタケ(Gloeophyllum sepiarium)からなる群より選択される1種類の木材腐朽菌を培養して得た分子量1,000〜100,000のタンパク質を動物に感作して得られたものである前記7に記載の木材の腐朽診断薬。
【0018】
(9) 前記抗体が、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)を培養して得た分子量1,000〜100,000のタンパク質を動物に感作して得られたものである前記8に記載の木材の腐朽診断薬。
(10) 前記抗体が、木材腐朽菌を液体培地中10〜40℃の温度範囲での培養後、培養ろ液を限外ろ過またはゲルろ過して得られる分子量1,000〜100,000のタンパク質を含む抗原溶液を用いて動物から得たものである前記7乃至9のいずれかに記載の木材の腐朽診断薬。
【0019】
(11) 抗体が抗血清として含有されている前記7乃至9のいずれかに記載の木材の腐朽診断薬。
(12) 抗体が精製タンパク質として含有されている前記7乃至9のいずれかに記載の木材の腐朽診断薬。
(13) 抗体がポリクローナル抗体として含有されている前記12に記載の木材の腐朽診断薬。
(14) 抗体がモノクローナル抗体として含有されている前記7乃至9のいずれかに記載の木材の腐朽診断薬。
【0020】
(15) スポット位置を指示または記録し得るように構成されたデバイス内に多孔性の膜を設けたドットブロット用基板と、前記7乃至14のいずれかに記載の腐朽診断薬とを含む木材の腐朽診断キット。
(16) ドットブロット用基板上に腐朽度既知の木材から得た標準試料をスポットしてある前記15に木材の腐朽診断キット。
(17) スポット位置を指示または記録し得るように構成されたデバイス内に多孔性の膜を設けたドットブロット用基板を用意し、この基板のスポット位置に被検木材抽出液をスポットし、前記6に記載の木材の腐朽診断方法をドットブロット法により行なう木材の腐朽診断方法。
(18) ドットブロット用基板に予め腐朽度既知の木材から得た標準試料をスポットしておき、この標準試料スポットとの比較により腐朽度を診断する前記17の木材の腐朽診断方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
(A)木材の腐朽診断方法
本発明の木材の腐朽診断方法は、日本国内に天然に存在する木材腐朽菌を液体培養して得た分子量1,000〜100,000のタンパク質を抗原として動物に感作して得た抗体を、試験しようとする木材から得た抽出液と接触させることにより抗原抗体反応によって木材中の木材腐朽菌由来の代謝産物の有無や量を判定して木材の腐朽(度)を診断するものである。
【0022】
用い得る木材腐朽菌は、日本国内に天然に存在する木材腐朽菌である。好適な木材腐朽菌の例としては、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)、キチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum)、イドタケ(Coniophora puteana)、ナミダタケ(Serpula lacrymans)、カワラタケ(Trametes versicolor)、キカイガラタケ(Gloeophyllum sepiarium)が挙げられる。オオウズラタケが最も好ましい。
【0023】
培養は液体培養により行なわれる。培地としては、種々の液体培地を用い得るが、特にセロビオースまたは上記菌による代謝によってセロビオースを生じ得るオリゴ糖もしくは多糖類、すなわち、β−グルカンを主要炭素源として含有する培地が好ましい。培地中のセロビオース濃度は通常、0.01〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。一般的には、この他に既知の任意の窒素源(硝酸アンモニウム等)、チアミン、ペプトンまたは場合によっては酵母エキスを含有させ、さらに、微量元素(K、Ca、Mg、B、Mn、Zn、Cu、Mo、Fe等)を添加する。
【0024】
培養条件は上記の菌種の生育が可能な条件であればよいが、通常は10〜40℃、好ましくは20〜30℃の範囲で、5時間〜6ヶ月、好ましくは1週間〜1ヶ月の間、振とう培養あるいは静置培養する。
【0025】
培養後、培養ろ液から分子量範囲1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜100,000を分画する。分画は例えば限外ろ過膜またはゲルろ過によって行なうことができるが、これ以外でも上記分子量範囲をタンパク質の損傷なしに分取できる方法であればよい。
【0026】
得られたタンパクを抗原として用いて慣用の方法により動物を感作する。
感作時のタンパク質濃度は通常0.01〜100mg/mlであり、好ましくは0.1〜10mg/mlの範囲である。抗原を含む溶液の調製は、生物に悪影響を与えない任意の緩衝液が使用可能であるが、好ましくはPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)を用いることができる。
【0027】
このようにして調製された抗原溶液は、アジュバントを適当な比(例えば、1:1)で混合して用いることができる。好適なアジュバントの例としては、結核菌由来のアジュバント(フロイントの完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント)、RIBIアジュバント、百日咳アジュバント、無機アジュバント(アルミニウムアジュバント)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。もっとも、タンパク質の分画分子量や被感作動物の種類によっては必ずしもアジュバントを用いる必要はない。
【0028】
被感作動物の例としては、ウサギ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、マウスなどの哺乳類、アヒル、ニワトリなどの鳥類が挙げられる。前記抗原溶液または抗原溶液とアジュバントとの混合液をこれらの動物の皮下あるいは筋肉内に注入する。0.5〜8週間程度、好ましくは1〜3週間の間隔を置いて1〜6回程度の再感作を行なってもよい。通常は数週間程度経過した後、動物から血液を採取し、これを遠心分離に掛けて血清を分離する。例えば、最初の感作後0.5〜8週間(好ましくは1〜3週間)後に2回目の皮下注射を行ない、さらに0.5〜8週間(好ましくは1〜3週間)後に3回目の皮下注射を行ない、さらに0.5〜8週間(好ましくは1〜3週間)後に4回目の皮下注射を行ない、0.5〜4週間(好ましくは1〜3週間)後に全採血を行なう。もっとも、ここに記載した免疫スケジュールはあくまでも一例であり、抗原に対して十分な免疫応答が認められる免疫スケジュールであればよい。
【0029】
本発明では、この抗血清をそのまま用いることも可能であるが、必要に応じて、得られた抗血清をプロテインAもしくはGカラム等のアフィニティカラムにより精製してもよい。また、慣用の方法により、モノクローナル抗体を調製して用いてもよい。
【0030】
なお、前述のC. A. Clausen et al.(非特許文献2)は、複数の腐朽菌由来の抗原を混合し、ウサギに接種してそれぞれの抗体を混合物として得ているが、本発明方法では単一種の腐朽菌から得たタンパク質を接種して抗体を得るだけですべての国内腐朽菌の検出が可能である。
【0031】
木材腐朽度の診断は、試験しようとする木材試料(被検木材試料)から得た抽出液と前記抗体とを接触させることにより行なう。被検木材試料としては、木材切断片、木材のドリル片、のこくず、または木粉等、検査を行う木材から採取した試料が挙げられる。こうした試料を以下の抽出用溶媒に浸漬等して抽出を行なう。抽出用溶媒は、水性溶媒、好ましくは、非イオン系界面活性剤等の界面活性剤、糖類、無機塩類等の浸透圧調整剤、無機塩類、有機酸の塩等のpH調整剤等の1種以上を水に添加したものである。界面活性剤は特に限定されないが、タンパク質変性の少ないものが好ましく、例えば、トライトンXシリーズ(例えば、トライトンX−100)などが挙げられる。緩衝液としては、例えば、PBS(リン酸緩衝化食塩水)などが挙げられ、pHは4〜10、好ましくはpH6〜9の範囲とする。抽出時間は任意の時間を設定可能であるが、好ましくは1分から1時間である。また抽出効率を向上させるために超音波処理あるいはホモジナイザー処理を併用することも有用である。
【0032】
上記抗体溶液及び被検木材試料抽出液を用いて抗原抗体反応により木材の腐朽を判定する。このような判定方法としては、酵素結合免疫吸着定量法(ELISA)、ドットブロット(Dot−Blot)またはイムノスポット、EIA、イムノクロマトグラフィー等を用いることができるが、好ましくはELISA及びドットブロットを用いることができる。
【0033】
本発明では、ELISA及びドットブロットとして行なわれるすべての方法を含むが、典型的には、抗体溶液を利用して標的抗原(木材腐朽菌抗原)を探索し、標識抗体(検出用抗体)を用いて試料中の標的抗原の有無を判定するものである。すなわち、まず、上述した抗体溶液と被検木材試料抽出液を接触させる。被検木材試料に腐朽菌が存在する場合には、抽出液中にその菌体または腐朽菌由来抗原が含まれるので、接触部で前記抗体と腐朽菌由来抗原の複合体が形成される。一方、抗体を得るのに用いた動物(例えば、ウサギ)に対する別の抗体(例えば、ヤギの抗ウサギIgG抗体)に適当なリポーター分子(酵素、蛍光体、発色試薬、放射性同位元素など)を結合した標識抗体を用意しておき、これをさらに作用させる。試料中に前記複合体が含まれる場合は、標識抗体がさらに結合して第2複合体が形成される。未結合の標識抗体を除去した後、酵素反応、蛍光、発色、放射能の有無や量を測定する。
【0034】
用いる酵素(典型的にはペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ等)、発色試薬、放射性物質などは免疫学的検定法で慣用されており、本発明でも慣用法に従って製造するか、または市販品を用いることができる。
【0035】
以下、ELISAについて具体的な操作例を記載するが、条件は代表的な範囲であって、これに限定されるものではない。
ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製のマイクロタイタープレートに被検木材試料抽出液を一定量、例えば100μl添加する。0〜50℃、好ましくは30〜40℃で、1分〜24時間好ましくは30分〜3時間インキュベートする。マイクロタイタープレートを任意の濃度の界面活性剤(好ましくは0.05%Tween20)を含む緩衝液(好ましくはPBS)での洗浄を1〜10回好ましくは2〜3回繰り返す(以下、同様の操作を「洗浄」と略す。)。次にブロッキング緩衝液(BSA(ウシ血清アルブミン)等の一般的なタンパク質を含む緩衝液好ましくはPBS)をマイクロタイタープレートに加え、0〜50℃、好ましくは30〜40℃で、1分〜24時間好ましくは30分〜3時間インキュベートする。次いで、マイクロタイタープレートを洗浄する。
【0036】
緩衝液、好ましくはPBSで希釈した抗体溶液を、マイクロタイタープレートに一定量例えば100μl添加し、0〜50℃、好ましくは30〜40℃で、1分〜24時間、好ましくは30分〜3時間インキュベートする。マイクロタイタープレートを洗浄した後、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼあるいはβ−ガラクトシダーゼ等の酵素を結合させたウサギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、マウス等の哺乳類、好ましくはヤギの抗ウサギIgG抗体溶液を一定量例えば100μlマイクロタイタープレートに添加し、0〜50℃、好ましくは30〜40℃で、1分〜24時間、好ましくは30分〜3時間インキュベートする。マイクロタイタープレートを洗浄した後、用いた酵素の基質(検出用基質)溶液を一定量例えば100μlマイクロタイタープレートに加え、室温で0.1分〜24時間好ましくは1〜60分反応させ、分光光度計にて吸光度を測定する。検出用基質は、酵素との反応により吸収波長が変化するもの(好ましくは水溶性の基質)であれば特に限定されず、ELISA法で慣用されているものでよい。例えば、用いた酵素がアルカリホスファターゼの場合pNPP(4−ニトロフェニルリン酸。前記アルカリホスファターゼの基質)を用いることができる。
【0037】
ドットブロットも一般的な方法で可能であるが、以下に一例を記載する。
セルロースあるいはニトロセルロース等のセルロース修飾体、ガラス、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等からなる多孔性の膜状材料(以下膜と略す。)に被検木材試料抽出液を一定量例えば10μlスポットする。0秒〜1週間、好ましくは1分〜10分間乾燥させる。膜を任意の濃度の界面活性剤(好ましくは0.05%Tween20)を含む緩衝液(好ましくはPBS)にて1〜10回、好ましくは2〜3回洗浄する(以下、同様の操作を「洗浄」と略す。)。
【0038】
次にブロッキング緩衝液(BSA(ウシ血清アルブミン)等の一般的なタンパク質を含む緩衝液、好ましくはPBS)に膜を浸し、0〜50℃、好ましくは30〜40℃で、1分〜24時間好ましくは30分〜3時間インキュベートする。膜を洗浄する。緩衝液好ましくはPBSで希釈した抗体溶液に膜を浸し、0〜50℃、好ましくは30〜40℃で、1分〜24時間好ましくは30分〜3時間インキュベートする。膜を洗浄する。アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼあるいはβ−ガラクトシダーゼ等の酵素を結合させたウサギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、マウス等の哺乳類、好ましくはヤギの抗ウサギIgG抗体溶液に膜を浸し、0〜50℃、好ましくは30〜40℃で、1分〜24時間、好ましくは30分〜3時間インキュベートする。膜を洗浄する。用いた酵素の基質(検出用基質)溶液に膜を浸し、室温で0.1分〜24時間、好ましくは1〜60分反応させ、膜上のスポット部位における呈色を観察する。検出用基質は、酵素との反応により吸収波長が変化し、水溶解度が低下する基質であれば特に限定されず、ドットブロット法で慣用されているものでよい。例えば、用いた酵素がアルカリホスファターゼの場合BCIP/NBT(アルカリ性ホスファターゼ活性染色プレミックス基質)を用いることができる。
【0039】
(B)木材の腐朽診断薬
このように、日本国内に天然に存在する木材腐朽菌を液体培養して得た分子量1,000〜100,000、好ましくは5,000〜100,000のタンパク質を抗原として動物に感作して得た抗血清または精製タンパク質、ポリクローナル抗体は、上述のように、被感作(免疫)動物に対する適当な検出用抗体と組み合わせて木材腐朽度の診断薬として利用できる。
また、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の場合には、これをスチレンビーズ等に固定して凝集の有無による診断用製品とすることもできる。
【0040】
(C)木材の腐朽度の簡易診断方法及び簡易診断用キット
本発明の木材の腐朽診断は、以下のような診断用基板と組み合わせてより簡便かつ確実に行なうことができる。
すなわち、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の板に幅0.5〜10cm、長さ1〜50cm、深さ0.1〜10cm、より好ましくは幅1〜5cm、長さ5〜20cm、深さ0.5〜2cmの溝を設けたものを用意する。溝が底を有する有底枠体(容器状)でも底を有しない無底の枠体でもよい(以下、デバイスと言う。)。セルロースあるいはニトロセルロース等のセルロース修飾体、ガラス、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、PVDF等から成る多孔性の膜状の材料(以下、膜と略する)をデバイスの溝に収まるように切断し、デバイスの溝に設置する。この時、スポットされる部分を除く膜の少なくとも1箇所をデバイスの溝面内に接着することで、その後の作業が円滑に行なえる。
【0041】
木材腐朽度の診断に際しては、上記デバイスを基板として試験を行なう。すなわち、先に述べた「木材の腐朽診断方法」に従って、家屋等の木材建築物の腐朽が疑われる部位から数箇所(例えば5箇所)から被検木材試料を採取し、それぞれの被検木材抽出液を得る。この5箇所の被検木材抽出液をデバイスの溝に収まった膜にスポットし、以下、先に述べたドットブロットの方法に従って腐朽判定を行なう。
【0042】
この場合、膜上に適正な間隔を空けてスポットを滴下させ、スポット部位における呈色を観察しやすいように、デバイスのスポット部位に対応して枠の形状を設計することができる。例えば、デバイスの溝を挟む枠部分に目盛りやダイヤマーク等を設けて所定のスポット数に応じた最適間隔でのスポッティングを促すとともに、試料番号との対応を筆記できるようなスペースを設ける。このようにすることで、膜のどの位置にスポットがなされているか、それぞれのスポットがどの試料に対応するかが明確にわかり、1枚のデバイスで複数の試料を同時かつ確実に検査できる。また、基板または膜上に腐朽度既知の試料から得た標準スポットを設けておくことが好ましい。すなわち、木材腐朽菌による腐朽の有無はスポットの呈色により判断できるが、腐朽度既知の試料を予めスポットしておくことにより、被検木材から得た試料によるスポットとこの標準試料スポットとで吸光度(肉眼観察の場合は濃度)を比較して、腐朽の程度を定量的に評価できる。標準スポットは、一般に質量減少等から腐朽度が判明している木材(例えば、質量減少率1%、3%、5%、7%、10%等の木材)から得た標準試料をスポットすることにより設けることができる。標準試料スポットは1つでもよいし、腐朽度の異なる複数のスポットでもよい。
【0043】
さらに、前記デバイスを、円形、楕円形、矩形等の開口部を設けたカバープレートと前述のように溝内に膜を設けた基板との組み合わせとしてもよい。カバープレートの幅は溝の幅とほぼ同じとし、溝内に嵌合するようにする。スポッティングを行なう際にはカバープレートで膜を覆って開口部内に抽出液をスポットする。洗浄等の際にはカバープレートを外し、最終判定時には再びカバープレートを被せる。この場合もカバープレートの開口部に番号を刻印しておくか、試料番号との対応を筆記できるようなスペースを設けておけば、それぞれのスポットがどの試料に対応するかが明確にわかる。
【0044】
本発明の診断薬及び診断方法は、種々の木材に対して有効である。本発明の診断薬及び診断方法が適用できる木材としては、アカマツ、カラマツなどのマツ類およびスギ、ペイツガ、ヒノキなどが挙げられる。また、判定可能な木材腐朽菌としては、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)、キチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum)、イドタケ(Coniophora puteana)、ナミダタケ(Serpula lacrymans)、カワラタケ(Trametes versicolor)、キカイガラタケ(Gloeophyllum sepiarium)などが挙げられる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、日本国内の典型的な木材腐朽菌による木材の腐朽の有無を短時間で簡単に判定できる。本発明方法は木材腐朽菌による木材の腐朽を特異的に判定可能であり、表面在住菌およびその代謝産物には反応しないため誤診断のおそれが極めて低い。また、本発明の木材腐朽菌の診断薬は、単一種の木材腐朽菌を動物に感作させて得られるため、製造が容易であるとともに、均一な製品の供給が容易である。
【0046】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施例1:抗体の作成
(1)抗原の調製
1%セロビオース、0.2%NH4NO3、0.2%KH2PO4、0.05%MgSO4・7H2O、0.01%CaCl2・2H2O、0.57ppmH3BO4、0.036ppmMnCl2・4H2O、0.31ppmZnSO4・7H2O、0.039ppmCuSO4・5H2O、0.018ppm(NH46Mo724・4H2O、0.015ppmFeSO4・7H2O、1ppmチアミン塩酸塩、0.5%ペプトン、0.05%酵母エキスを含む液体培地(pH5.5)50mlを500ml容培養フラスコに入れ、綿栓をし、オートクレーブ滅菌(121℃、30分)を行なった。
【0048】
この培地にオオウズラタケ(Fomitopsis palustris (Berk. Et Curt.) Gilbn.& Ryv. FFPRI 0507)を接種し、27℃で2週間静置培養し、得られた培養液をグラスフィルターにてろ過し培養ろ液を得た。培養ろ液を限外ろ過膜(Ultrafree-15, バイオマックス100メンブレン装着ユニット、ミリポア社製)でろ過し、分子量100,000以下の画分を得た。この画分を限外ろ過膜(Ultrafree-15, バイオマックス5メンブレン装着ユニット、ミリポア社製)で濃縮後、等量のPBSで3回洗浄し、分子量5,000〜100,000の画分を得た。得られた画分をPBSで希釈してタンパク質濃度約0.7mg/mlとし、この溶液を抗原溶液とした。
【0049】
(2)ポリクローナル抗体の調製
(1)で得られた抗原溶液を用いてポリクローナル抗体の調製を行なった。抗原溶液にフロイントの完全アジュバントを1:1に混合した。これをウサギの皮下、10箇所に注射した。2週間後、再度皮下注射をおこなった。さらに2週間後、再度皮下注射を行なった。さらに2週間後、再度皮下注射を行なった。1週間後全採血を行なった。全血を30分放置後、遠心分離により抗血清を分離した。得られた抗血清をプロテインAアフィニティカラム(Protein A Kit, SIGMA社製)により精製してポリクローナル抗体溶液を得た。
【0050】
実施例2:ELISA法による検定
(1)腐朽木片及び腐朽木片抽出液の調製
培養基としてスギ辺材10個及び純水20mlを500ml容三角フラスコに入れ、綿栓した後、オートクレーブ滅菌(121℃、30分)した。
この三角フラスコを7本用意し、木材腐朽菌であるオオウズラタケ(Fomitopsis palustris)、キチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum)、イドタケ(Coniophora puteana)、ナミダタケ(Serpula lacrymans)、カワラタケ(Trametes versicolor)及び木材表面汚染菌であるペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum;JISかび抵抗性試験用菌株)、グリオクラジウム・ビレンス(Gliocladium virens Miller;JISかび抵抗性試験用菌株、旧名Trichoderma viride)の7種類の菌株をそれぞれ接種し24℃で4週間保温した。
【0051】
4週間後、腐朽した木片から、手動ドリルを用いて小木片状の木材試料を採取し、この木材試料1g当り、0.1% Triton X−100を含むPBS(pH7.4)5mlを添加し、10分間放置することにより、被検木片からの抽出液を得た。
【0052】
(2)ELISA法による木材腐朽判定
ポリスチレンで出来たマイクロタイタープレート(NUNC-IMMUNO PLATE, ナルジェヌンクインターナショナル社製)に各被検木材試料抽出液及び対照(抽出液のみ)を100μl添加した。
プレートを37℃で1時間インキュベートした。次いで、マイクロタイタープレートを0.05%Tween20を含むPBSで2回洗浄(以下、この操作を単に「洗浄」という。)した。次にブロッキング緩衝液(1%BSA、0.05%Tween20を含むPBS)をマイクロタイタープレートに100μl加え、37℃で1時間インキュベートした。次いで、マイクロタイタープレートを洗浄した。
【0053】
(2)で取得した抗体溶液をPBSで希釈し、マイクロタイタープレートに100μl添加し、1時間インキュベートした。次いで、マイクロタイタープレートを洗浄した。アルカリホスファターゼを結合させたヤギの抗ウサギIgG抗体溶液(SIGMA社製)を100μlマイクロタイタープレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、マイクロタイタープレートを洗浄した。0.1%pNPP(4−ニトロフェニルリン酸)溶液を100μlマイクロタイタープレートに加え、室温で30分反応させ、分光光度計にて405nmの吸光度を測定した結果を図1に示す。
【0054】
その結果、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)、キチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum)、イドタケ(Coniophora puteana)、ナミダタケ(Serpula lacrymans)、カワラタケ(Trametes versicolor)については有意な吸光度変化が観察されたが、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)とグリオクラジウム・ビレンス(Gliocladium virens Miller)では対照と比べ有意の吸光度変化は認められなかった。
【0055】
本発明で提案した抗体を用いたELISAにより、日本において一般的に認められる5種の木材腐朽菌で腐朽した木材を検出できること、この方法は木材腐朽菌以外の表面汚染菌を検出せず、木材腐朽菌による木材の腐朽に特異的な検出方法であることが明らかとなった。
【0056】
実施例3:ドットブロット法による木材腐朽判定
木材抽出液は実施例2と同様にして調製し、ニトロセルロース膜(ニトロセルロースメンブレン0.45μm、BIO-RAD社製、以下「膜」と略す。)に被検木材試料抽出液を10μl及び対照をスポットした。この膜を10分間乾燥させた。膜を0.05%Tween20を含むPBSにて2回洗浄した(以下、この操作を単に「洗浄」という。)。次にブロッキング緩衝液(1%BSA、0.05%Tween20を含むPBS)に膜を浸し、37℃で10分間インキュベートした。次いで、膜を洗浄した。
【0057】
(2)で取得した抗体溶液をPBSで希釈し、膜を浸し、37℃で10分間インキュベートした。膜を洗浄した後、アルカリホスファターゼを結合させたヤギの抗ウサギIgG抗体溶液(SIGMA社製)に膜を浸し、37℃で、10分間インキュベートした。膜を洗浄した後、BCIP/NBT溶液(AP発色キット、BIO-RAD社製)に膜を浸し、室温で10分間反応させ、膜上のスポット部位における呈色を観察した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
Figure 0004231358
【0059】
表1に示すように、本発明で提案した抗体を用いたドットブロットにより、日本において一般的に認められる5種の木材腐朽菌で腐朽した木材を検出できること、この方法は木材腐朽菌以外の表面汚染菌(ペニシリウム・フニクロスム及びグリオクラジウム・ビレンス)を検出せず、木材腐朽菌による木材の腐朽に特異的な検出方法であることが明らかとなった。またドットブロット法では、より迅速に被検木材の腐朽判定が行なえることが明らかとなった。さらに、標準試料スポットを設けた測定キット/方法を用いれば、より信頼度が高く定量的な木材腐朽度の診断を容易に行なうことができ極めて有用である。
【0060】
【産業上の利用可能性】
本発明の木材腐朽診断薬は、オオウズラタケ等の褐色腐朽菌だけでなくカワラタケ等の白色腐朽菌による木材腐朽に対しても明確な反応を示すため、建築材、保存木材などにおける腐朽度の判定に有用である。また、本発明の木材腐朽菌の診断薬は、単一種の木材腐朽菌を動物に感作させることにより得ているため、製造が容易であるとともに、均一な製品の供給が容易であり、建材一般に対して広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例2による菌種ごとの吸光度変化を示すグラフ。

Claims (15)

  1. オオウズラタケ (Fomitopsis palustris) 、キチリメンタケ (Gloeophyllum trabeum) 、イドタケ( Coniophora puteana )、ナミダタケ (Serpula lacrymans) 、カワラタケ (Trametes versicolor) 、及びキカイガラタケ (Gloeophyllum sepiarium) からなる群より選択される1種類の木材腐朽菌をセロビオースを主要炭素源として含有する液体培地により培養して得られる分子量1,000〜100,000のタンパク質を抗原として動物を感作して得た抗体を、被検木材抽出液と接触させる抗原抗体反応により、複数種の木材腐朽菌による被検木材の腐朽を判定する木材の腐朽診断方法。
  2. 前記タンパク質が、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)の培養によって得られるものである請求項1に記載の木材の腐朽診断方法。
  3. オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)、キチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum)、イドタケ(Coniophora puteana)、ナミダタケ(Serpula lacrymans)、カワラタケ(Trametes versicolor)、キカイガラタケ(Gloeophyllum sepiarium)からなる群より選択される1種または2種以上の木材腐朽菌による木材の腐朽を判定する請求項1または2に記載の木材の腐朽診断方法。
  4. 抗原抗体反応による判定がドットブロット法または酵素結合免疫吸着定量法(ELISA法)により行なわれる請求項1乃至のいずれかに記載の木材の腐朽診断方法。
  5. オオウズラタケ (Fomitopsis palustris) 、キチリメンタケ (Gloeophyllum trabeum) 、イドタケ( Coniophora puteana )、ナミダタケ (Serpula lacrymans) 、カワラタケ (Trametes versicolor) 、及びキカイガラタケ (Gloeophyllum sepiarium) からなる群より選択される1種類の木材腐朽菌をセロビオースを主要炭素源として含有する液体培地により培養して得られる分子量1,000〜100,000のタンパク質を抗原として動物を感作して得た抗体を含有し、被検木材から得た抽出液と接触させることにより木材中の木材腐朽菌による木材の腐朽を判定する木材の腐朽診断薬。
  6. 前記抗体が、オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)を培養して得られた分子量1,000〜100,000のタンパク質を動物に感作して得たものである請求項に記載の木材の腐朽診断薬。
  7. 前記抗体が、木材腐朽菌を液体培地中10〜40℃の温度範囲での培養後、培養ろ液を限外ろ過またはゲルろ過して得られる分子量1,000〜100,000のタンパク質を含む抗原溶液を用いて動物から得たものである請求項5または6に記載の木材の腐朽診断薬。
  8. 抗体が抗血清として含有されている請求項5または6に記載の木材の腐朽診断薬。
  9. 抗体が精製タンパク質として含有されている請求項5または6に記載の木材の腐朽診断薬。
  10. 抗体がポリクローナル抗体として含有されている請求項に記載の木材の腐朽診断薬。
  11. 抗体がモノクローナル抗体として含有されている請求項5または6に記載の木材の腐朽診断薬。
  12. スポット位置を指示または記録し得るように構成されたデバイス内に多孔性の膜を設けたドットブロット用基板と、請求項乃至11のいずれかに記載の腐朽診断薬とを含む木材の腐朽診断キット。
  13. ドットブロット用基板上に腐朽度既知の木材から得た標準試料をスポットしてある請求項12記載の木材の腐朽診断キット。
  14. スポット位置を指示または記録し得るように構成されたデバイス内に多孔性の膜を設けたドットブロット用基板を用意し、この基板のスポット位置に被検木材抽出液をスポットし、請求項に記載の木材の腐朽診断方法をドットブロット法により行なう木材の腐朽診断方法。
  15. ドットブロット用基板に予め腐朽度既知の木材から得た標準試料をスポットしておき、この標準試料スポットとの比較により腐朽度を診断する請求項14に記載の木材の腐朽診断方法。
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