JP4231054B2 - 末端に官能基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法 - Google Patents

末端に官能基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法 Download PDF

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本発明は、末端に官能基、具体的には、アルケニル基あるいは架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法、ならびに、該重合体を用いた硬化性組成物に関する。
末端に官能基を有する重合体は、そのもの単独、あるいは適当な硬化剤と組み合わせることによって架橋し、耐熱性、耐久性等の優れた硬化物を与えることが知られている。中でも末端にアルケニル基、あるいは架橋性シリル基を有する重合体はそれらの代表例である。末端にアルケニル基を有する重合体はヒドロシリル基含有化合物を硬化剤として用いることにより、あるいは光反応を利用することにより架橋硬化する。また、架橋性シリル基を末端に有する重合体は、適当な縮合触媒の存在下、湿分を吸収することにより硬化物を与える。
このような、アルケニル基あるいは架橋性シリル基を末端に有する重合体の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド等のポリエーテル系重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレンあるいはそれらの水素添加物等の炭化水素系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン等のポリエステル系重合体等が例示され、主鎖骨格と架橋形式に基づき、様々な用途に用いられている。
上に例示した、イオン重合や縮重合で得られる重合体の一方で、ラジカル重合で得られるビニル系の重合体で末端に官能基を有するものは、まだほとんど実用化されていない。ビニル系重合体の中でも、(メタ)アクリル系重合体は、高い耐候性、透明性等、上記のポリエーテル系重合体や炭化水素系重合体、あるいはポリエステル系重合体では得られない特性を有しており、アルケニル基や架橋性シリル基を側鎖に有するものは高耐候性の塗料等に利用されている。
アルケニル基あるいは架橋性シリル基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリル系重合体を簡便な方法で得ることができれば、側鎖に架橋性基を有するものに比較して硬化物物性の優れた硬化物を得ることができる。従って、これまで多くの研究者によって、その製造法が検討されてきたが、それらを工業的に製造することは容易ではない。
特許文献1には、連鎖移動剤としてアルケニル基含有ジスルフィドを用いる、両末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体の合成法が、また、特許文献2には、ヒドロキシル基を有するジスルフィドを用いて、両末端にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系重合体を合成し、さらにヒドロキシル基の反応性を利用して両末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体の合成法が開示されているが、これらの方法で両末端に確実にアルケニル基を導入することは容易ではない。一方、特許文献3には連鎖移動剤として、架橋性シリル基を有するジスルフィド化合物を用いた両末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造法が、また、特許文献4には架橋性シリル基を有するヒドロシラン、ハロゲン化シランを用いることによる、両末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造法が開示されているが、これらの方法においても、両末端に確実に架橋性シリル基を導入することは困難であり、満足な特性を有する硬化物を得ることはできない。末端に確実に官能基を導入するためには、連鎖移動剤を大量に使用しなければならず、製造工程上問題である。
特開平5−255415号公報 特開平5−262808号公報 特開昭59−168014号公報 特開昭61−133201号公報
従って、本発明においては、末端にアルケニル基あるいは架橋性シリル基を、従来の方法に比較して高い比率で有する(メタ)アクリル系重合体の製造法ならびにそれらを用いた硬化性組成物を提供することを課題とする。
上記課題のうち、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合方法によって得られる、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンをアルケニル基含有置換基に変換することにより得られる。
−CH−C(R)(CO)(X) (1)
(式中、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
このような製造法の具体例としては、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合方法によって一般式1で示す構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに、重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも1つのアルケニル基を併せ持つ化合物を反応させる方法、あるいは、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に、アルケニル基を有する有機金属化合物を反応させる方法、等が挙げられる。また、アルケニル基を有するハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いて、片末端にアルケニル基を有し、他の末端に式1の構造を有する(メタ)アクリル系の重合体を製造し、その末端のハロゲンをアルケニル基含有置換基に変換することによっても、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。
このような方法で得られる、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、(A)末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体、および(B)ヒドロシリル基含有化合物、を含有する硬化性組成物に用いられる。末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合方法によって得られる、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを、架橋性シリル基含有置換基に変換することにより製造することができる。このような製造法の具体例としては、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合方法によって一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに、重合性のアルケニル基と架橋性シリル基を併せ持つ化合物を反応させる方法が挙げられる。また、架橋性シリル基を有するハロゲン化物を開始剤として用いて、片末端に架橋性シリル基を有し、他の末端に式1で示される構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらにその末端のハロゲンを架橋性シリル基含有置換基に変換することによっても得ることができる。
また、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に、架橋性シリル基を有するヒドロシランを付加させることによっても製造することができる。このようにして得られる末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、硬化性組成物として用いることができる。
また、本発明で得られる末端に架橋性の官能基を有する(メタ)アクリル系重合体は、分子量分布が狭いという特徴も有する。
以下に本発明を詳述する。
まず、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造法は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合方法によって得られる、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンをアルケニル基含有置換基に変換することを特徴とする。
−CH−C(R)(CO)(X) (1)
(式中、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
末端にハロゲンを有する(メタ)アクリル系重合体の製造法としては例えば、ハロゲン化物を連鎖移動剤(テローゲン)として用いる重合において、四塩化炭素や四臭化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等を用いる方法が利用されてきた。しかしこの方法では両末端に確実にハロゲンを導入することは困難である。
この方法に対し、最近精力的に研究されているリビングラジカル重合を用いると、末端にハロゲンが高い比率で導入される(例えば、Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614,Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866、あるいはSawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721を参照)。これらの方法はラジカル重合でありながら重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.1〜1.5)重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
このリビングラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に、反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するエステル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物が開始剤として用いられる。触媒としては、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体が用いられる。金属種としては特に1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄が好適である。具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、酢酸第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2’−ビピリジル、およびその誘導体、1,10−フェナントロリン、およびその誘導体等の配位子が添加される。また、二価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。この触媒を使用するときは、その活性を高めるためにトリアルコキシアルミニウム等のアルミニウム化合物が添加される。さらに、二価の塩化鉄のトリストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)も触媒として好適である。
この重合法を用いて架橋性の(メタ)アクリル系重合体を得るために、開始点を2個以上有する有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物が開始剤として用いられる。具体的に例示するならば、
o−,m−,p−XCH−C−CHX、o−,m−,p−CHC(H)(X)−C−C(H)(X)CH、o−,m−,p−(CHC(X)−C−C(X)(CH
(ただし、上の化学式中、Cはフェニレン基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
ROC−C(H)(X)−(CH−C(H)(X)−COR、ROC−C(CH)(X)−(CH−C(CH)(X)−COR、RC(O)−C(H)(X)−(CH−C(H)(X)−C(O)R、RC(O)−C(CH)(X)−(CH−C(CH)(X)−C(O)R、
(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、nは0〜20の整数、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
XCHC(O)CHX、CHC(H)(X)C(O)C(H)(X)CH、(CHC(X)C(O)C(X)(CH、CC(H)(X)−(CH−C(H)(X)C
(上の式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
XCHCO−(CH−OCOCHX、CHC(H)(X)CO−(CH−OCOC(H)(X)CH、(CHC(X)CO−(CH−OCOC(X)(CH
(上の式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数)
XCHC(O)C(O)CHX、CHC(H)(X)C(O)C(O)C(H)(X)CH、(CHC(X)C(O)C(O)C(X)(CH、o−,m−,p−XCHCO−C−OCOCHX、o−,m−,p−CHC(H)(X)CO−C−OCOC(H)(X)CH、o−,m−,p−(CHC(X)CO−C−OCOC(X)(CH、o−,m−,p−XSO−C−SOX、
(上の式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
この重合において用いられる(メタ)アクリル系のモノマーとしては特に制約はなく、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等である。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもかまわない。また、必要に応じてスチレンやα−メチルスチレン、アクリロニトリル等の他のビニル系モノマーを共重合させることはなんら差し支えない。
重合は無溶剤または各種の溶剤中で行うことができる。また、重合は室温〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは50〜150℃である。
末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、上記の重合で得られる、末端にハロゲンを有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを変換することによって得ることができる。
そのような方法として、まず、上記の重合により、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに、重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも1つのアルケニル基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法が挙げられる。上記の重合では、重合末端は重合活性を保持しており、新たにビニル系モノマーを添加すれば、再び重合が進行する。従って、重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも1つのアルケニル基を併せ持つビニル系モノマーを添加すれば、重合活性なアルケニル基部分にラジカル付加反応が起こり、他のアルケニル基は未反応のまま残って、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体が得られるわけである。このような第2のモノマーは、第1の重合が終了して重合体を単離してから、触媒とともに添加して新たに反応させてもよいし、重合の途中で(in−situ)添加して反応させてもよい。後者の場合、第1の重合のモノマー転化率は高いほどよく、好ましくは80%以上である。80%以下であると、アルケニル基が分子末端ではなく、側鎖に分布し、硬化物の機械特性を損なうことになる。
この際、このような重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも1つのアルケニル基を併せ持つ化合物は、重合末端の数(リビング重合であるので、開始剤の開始点の数にほぼ等しい)と等しい量を添加すれば、原理的にすべての末端に一つずつのアルケニル基が導入されることになるが、全末端にアルケニル基を確実に導入するためには、過剰量、具体的には、末端の数に対し、1〜5倍用いるのがよい。5倍より多く用いると重合体の末端に高密度でアルケニル基が導入されることになり、硬化物物性上好ましくない。
重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも1つのアルケニル基を併せ持つ化合物としては特に制限はないが、例えば、一般式2
C=C(R)−R−R−C(R)=CH(2)
(式中、R、Rは水素またはメチル、Rは−C(O)O−(エステル基)、またはo−、m−、p−フェニレン基、Rは直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。)
で示される化合物が挙げられる。Rがエステル基のものは(メタ)アクリレート系化合物、Rがフェニレン基のものはスチレン系の化合物である。一般式2におけるRとしては、メチレン、エチレン、プロピレン等のアルキレン基、o−,m−,p−フェニレン基、ベンジル基等のアラルキル基、−CHCH−O−CH−や−O−CH−等のエーテル結合を含むアルキレン基等が例示される。
これらの中でも、入手が容易であるという点から、
C=C(H)C(O)O(CH−CH=CH、HC=C(CH)C(O)O(CH−CH=CH
(上記の各式において、nは0〜20の整数)
C=C(H)C(O)O(CH−O−(CHCH=CH、HC=C(CH)C(O)O(CH−O−(CHCH=CH
(上記の各式において、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o−,m−,p−ジビニルベンゼン、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCH=CH、o−,m−,p−HC=CH−C−CH−C(CH)=CH、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCHCH=CH、o−,m−,p−HC=CH−C−OCHCH=CH、o−,m−,p−HC=CH−C−OCH−C(CH)=CH、o−,m−,p−HC=CH−C−OCHCHCH=CHo−,m−,p−HC=C(CH)−C−C(CH)=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−CHCH=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−CHC(CH)=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−CHCHCH=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−OCHCH=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−OCH−C(CH)=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−OCHCHCH=CH
(ただし、上記化学式中、Cはフェニレン基を示す。)
が好ましい。
末端にアルケニル基を導入する方法としては、このほかに、式1で示される末端にハロゲンを有する重合体に対し、アルケニル基を有する各種の有機金属化合物を作用させて、ハロゲンを直接置換する方法を用いることもできる。このような有機金属化合物としては、有機リチウム、有機ナトリウム、有機カリウム、有機マグネシウム、有機錫、有機亜鉛、有機銅等が挙げられる。特に式1のハロゲンと選択的に反応し、カルボニル基との反応性が低いという点で、有機錫、有機銅化合物が好ましい。
アルケニル基を有する有機錫化合物としては、特に制限はないが、一般式3で示される化合物が好ましい。
C=C(R)C(R)(R)Sn(R10(3)
(式中、R、R、Rは水素、または炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基で互いに同じでも異なっていてもよい。R10は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基)
式3の有機錫化合物の具体例を示すならば、アリルトリブチル錫、アリルトリメチル錫、アリルトリ(n−オクチル)錫、アリルトリ(シクロヘキシル)錫等が例示される。一般式3で示されるアルケニル基含有有機錫化合物は、一般式1の末端ハロゲンとラジカル機構で反応するので、(メタ)アクリル系モノマーの重合途中で添加してもよいし、一般式1の末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を一旦単離してからあらためて反応させてもよい。後者の場合、反応は加熱のみによっても進行するが、反応を促進させるためにアゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を加えてもよい。
アルケニル基を有する有機銅化合物としては、ジビニル銅リチウム、ジアリル銅リチウム、ジイソプロペニル銅リチウム等が例示される。
末端ハロゲン基のアルケニル基への変換方法としては、さらに、ハロゲンを末端に有する(メタ)アクリル系重合体に対し、金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてハロゲンをメタル化し、しかる後に、アルケニル基を有する求電子化合物と反応させる方法を用いることも可能である。
金属単体としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。これらのうち、メタル化された部分(エノレートアニオン)が他のエステル基を攻撃したり転移するような副反応が起こりにくいという点から亜鉛が特に好ましい。有機金属化合物の具体例としては、有機リチウム、有機ナトリウム、有機カリウム、Grignard反応剤等の有機マグネシウム、有機アルミニウム、有機亜鉛化合物等が挙げられる。ハロゲンを効率的にメタル化させるためには、有機リチウム、有機マグネシウムを用いるのが好ましい。
アルケニル基を有する求電子化合物としては各種のものを使用することができる。例えば、ハロゲンやアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物、アルケニル基を有するカルボニル化合物、アルケニル基を有するイソシアネート化合物、アルケニル基を有する酸ハロゲン化物等である。これらのうち、ハロゲンやアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物を用いると、主鎖にヘテロ原子が導入されず、(メタ)アクリル系重合体の本来の特徴である耐候性が失われないので好ましい。
このような脱離基含有アルケニル化合物の中でも、反応性が高いという理由で、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化イソプロペニル、臭化イソプロペニル、ヨウ化イソプロペニル、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル、3−クロロ−1−ブテン、3−ブロモ−1−ブテン、3−ヨード−1−ブテン、3−クロロ−2−メチル−1−プロペン、3−ブロモ−2−メチル−1−プロペン、3−ヨード−2−メチル−1−プロペン、アリルアセテート、3−アセトキシ−1−ブテン、3−アセトキシ−2−メチル−1−プロペン、塩化−4−ビニルベンジル、塩化−4−アリルベンジル、臭化−4−ビニルベンジル、臭化−4−アリルベンジルが好ましく、さらに入手が容易であるという点で塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル、アリルアセテートが特に好ましい。
式1の末端のハロゲンに対し、金属単体または有機金属化合物を作用させてメタル化し、さらにアルケニル基含有求電子化合物を反応させることを特徴とする、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法において、好ましい反応剤の組み合わせは、金属として亜鉛を用い、求電子化合物として上記のような、脱離基を有するアルケニル基含有化合物を使用することである。この反応をより円滑に進めるために各種の触媒を使用することができる。そのような触媒としては、例えば、一価の銅化合物(例えば塩化銅、臭化銅)、二価の銅化合物(例えば銅アセチルアセトナート)、0価のNi化合物(例えば、テトラキストリフェニルホスフィンニッケル:Ni(PPh)、0価のPd化合物(例えば、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム:Pd(PPh)等である。
末端にアルケニル基を導入する方法として、さらに、一般式1に示すような末端にハロゲンを有する(メタ)アクリル系重合体の末端をヒドロキシル基含有置換基に変換し、しかる後に、ヒドロキシル基の反応性を利用する方法が挙げられる。
末端をヒドロキシル基含有置換基に変換する方法としては各種の反応を利用することが出来る。例えば、上記の重合法によって一般式1で示す末端を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに重合性のアルケニル基と水酸基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法、一般式1で示すハロゲン末端を有する(メタ)アクリル系重合体に対し、金属単体または有機金属化合物を作用させてハロゲンをメタル化し、アルデヒドあるいはケトン等のカルボニル化合物と反応させる方法、ハロゲンを水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物で直接置換する方法、ハロゲンをポリアルコールで置換する方法等である。
末端にヒドロキシル基を導入する方法としてはこの他に、水酸基を有するハロゲン化物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合により、片末端に水酸基を有し他の末端に式1で示すハロゲンを有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、しかる後に、ハロゲン末端を上述した方法で水酸基含有置換基に変換する方法、さらにそれらハロゲンを置換することができる同一または異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングする方法が挙げられる。
このようにして得られた末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、塩化アリルのようなアルケニル基含有ハロゲン化物とナトリウムメトキシドのような塩基を作用させる方法、アリルイソシアネート等のアルケニル基含有イソシアネート化合物を作用させる方法、(メタ)アクリル酸クロリドのようなアルケニル基含有酸ハロゲン化物をピリジン等の塩基の存在下に反応させる方法、(メタ)アクリル酸のようなアルケニル基含有カルボン酸を脱水縮合触媒の存在下に反応させる方法等が挙げられる。
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる(メタ)アクリル系重合体の製造法において、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いれば、開始末端にアルケニル基を有し、停止末端が式1の構造を有する(メタ)アクリル系重合体が得られる。このようにして得られる重合体の停止末端のハロゲンをアルケニル基含有置換基に変換すれば、両末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては特に制限はないが、例えば、一般式4に示す構造を有するものが例示される。
1112C(X)−R13−R14−C(R)=CH(4)
(式中、Rは水素、またはメチル基、R11、R12は水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、またはアラルキル、または他端において相互に連結したもの、R13は、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、R14は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
これらの化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基あるいはフェニル基と結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。
置換基R11、R12の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R11とR12は他端において連結して環状骨格を形成していてもよく、そのような場合、−R11−R12−は例えば、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CHCHCHCHCH−、等が例示される。
一般式4で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、
XCHC(O)O(CHCH=CH、HCC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH、(HC)C(X)C(O)O(CHCH=CH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH
Figure 0004231054
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
XCHC(O)O(CHO(CHCH=CH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
Figure 0004231054
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHCH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式5で示される化合物が挙げられる。
C=C(R)−R14−C(R11)(X)−R15−R12 (5)
(式中、R、R11、R12、R14、Xは上記に同じ、R15は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、または、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
14は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R15としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。R14が直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R15としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
式5の化合物を具体的に例示するならば、
CH=CHCHX、CH=C(CH)CHX、CH=CHC(H)(X)CH、CH=C(CH)C(H)(X)CH、CH=CHC(X)(CH、CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH(CH、CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH、CH=CHCHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CHCHC(H)(X)−C、CH=CH(CHC(H)(X)−C、CH=CH(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、
o−,m−,p−CH=CH−(CH−C−SOX、o−,m−,p−CH=CH−(CH−O−C−SOX、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
等である。
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合方法によって(メタ)アクリル系のモノマーを重合すると、片末端にアルケニル基を有し、他の末端には式1で示される構造を有する(メタ)アクリル系重合体が得られる。式1のハロゲン含有末端を、アルケニル基含有置換基に変換すれば、両末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体が得られる。そのような変換方法としては特に制限はなく、これまでに述べた方法をすべて用いることが可能である。
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いると、片末端がアルケニル基、他の末端が式1で示されるハロゲン末端である重合体が得られるが、この重合体の式1のハロゲンを置換できる、同一または異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングさせることによっても、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。
式1で示される末端ハロゲンを置換できる、同一または異なった官能基を合計2個以上有するものとしては特に制限はないが、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリチオール、およびそれらの塩、アルカリ金属硫化物等が好ましい。
これらの化合物を具体的に例示するならば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ピナコール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、3,3’−(エチレンジオキシ)ジフェノール、α,α’−ジヒドロキシ−p−キシレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、および、上記ポリオール化合物のアルカリ金属塩、
エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、α,α’−ジアミノ−p−キシレン、および上記ポリアミン化合物のアルカリ金属塩、
シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,7−ヘプタンジカルボン酸、1,8−オクタンジカルボン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、および上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩、
1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2−メルカプトエチルエーテル、p−キシレン−α,α’−ジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、および、上記ポリチオール化合物のアルカリ金属塩、
硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、等である。
上記のポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリチオールを用いる際は、置換反応を促進させるために、塩基性化合物が併用され、その具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
上記の各種の方法で得られる、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、これを主剤とする硬化性組成物にすることができる。
この硬化性組成物は、(A)上記のいずれかの方法により得られる、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体、および(B)ヒドロシリル基含有化合物、を含有する硬化性組成物である。
(A)成分の末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は単独で用いても、また、2種類以上を混合して用いても良い。(A)成分の分子量としては特に制限はないが、500〜50000の範囲にあるのが好ましい。500以下であると、(メタ)アクリル系重合体の本来の特性が発現されにくく、50000以上であると、非常に高粘度あるいは溶解性が低くなり、取り扱いが困難になる。
(B)成分のヒドロシリル基含有化合物としては特に制限はなく、各種のものを用いることができる。すなわち、一般式9または10で表される鎖状ポリシロキサン
18 SiO−[Si(R18O]−[Si(H)(R19)O]−[Si(R19)(R20)O]−SiR18 (9)
HR18 SiO−[Si(R18O]−[Si(H)(R19)O]−[Si(R19)(R20)O]−SiR18 H (10)
(式中R18およびR19は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R20は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基、aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100の整数を示す)、
一般式11で表される環状シロキサン
Figure 0004231054
(式中R21およびR22は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R23は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基、dは0≦d≦8、eは2≦e≦10、fは0≦f≦8の整数を示し、かつ3≦d+e+f≦10である)を用いることができる。
これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもかまわない。これらのシロキサンの中でも(メタ)アクリル系重合体との相溶性の観点から、フェニル基を有する、一般式12、13で示される鎖状シロキサンや、一般式14、15で示される環状シロキサンが好ましい。
(CHSiO−[Si(H)(CH)O]−[Si(CO]−Si(CH(12)
(CHSiO−[Si(H)(CH)O]−[Si(CH){CHC(H)(R24)C}O]−Si(CH(13)
(式中、R24は水素またはメチル基、gは2≦g≦100、hは0≦h≦100の整数、Cはフェニル基を示す)
Figure 0004231054
(式中、R24は水素、またはメチル基、iは2≦i≦10、jは0≦j≦8、かつ3≦i+j≦10である整数、Cはフェニル基)
(B)成分の少なくとも2個以上のヒドロシリル基を有する硬化剤としてはさらに、分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物に対し、式9〜15に示したヒドロシリル基含有化合物を、反応後にも一部のヒドロシリル基が残るようにして付加反応させて得られる化合物を用いることもできる。分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物としては、各種のものを用いることができる。例示するならば、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン等の炭化水素系化合物、O,O’−ジアリルビスフェノールA、3,3’−ジアリルビスフェノールA等のエーテル系化合物、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート等のエステル系化合物、ジエチレングリコールジアリルカーボネート等のカーボネート系化合物が挙げられる。
式9〜15に示した過剰量のヒドロシリル基含有化合物に対し、ヒドロシリル化触媒の存在下、上に挙げたアルケニル基含有化合物をゆっくり滴下することにより該化合物を得ることができる。このような化合物のうち、原料の入手容易性、過剰に用いたシロキサンの除去のしやすさ、さらには(A)成分の重合体への相溶性を考慮して、下記のものが好ましい。
Figure 0004231054
重合体(A)と硬化剤(B)は任意の割合で混合することができるが、硬化性の面から、アルケニル基とヒドロシリル基のモル比が5〜0.2の範囲にあることが好ましく、さらに、2.5〜0.4であることが特に好ましい。モル比が5以上になると硬化が不十分でべとつきのある強度の小さい硬化物しか得られず、また、0.2より小さいと、硬化後も硬化物中に活性なヒドロシリル基が大量に残るので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のある硬化物が得られない。
重合体(A)と硬化剤(B)との硬化反応は、2成分を混合して加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒が添加される。このようなヒドロシリル化触媒としては、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、および遷移金属触媒が挙げられる。
ラジカル開始剤としては特に制限はなく各種のものを用いることができる。例示するならば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタール等が挙げられる。
また、遷移金属触媒としては、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh,RhCl,RuCl,IrCl,FeCl,AlCl,PdCl・HO,NiCl,TiCl等が挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもかまわない。触媒量としては特に制限はないが、(A)成分のアルケニル基1molに対し、10−1〜10−8molの範囲で用いるのが良く、好ましくは10−3〜10−6molの範囲で用いるのがよい。10−8molより少ないと硬化が十分に進行しない。またヒドロシリル化触媒は高価であるので10−1mol以上用いないのが好ましい。
本発明の2成分(A)、(B)、および必要に応じてヒドロシリル化触媒を混合し硬化させれば、発泡等の現象を伴うことなく、深部硬化性に優れた均一な硬化物が得られる。硬化条件については特に制限はないが、一般に0℃〜200℃、好ましくは30℃〜150℃で10秒〜24時間硬化するのがよい。特に80℃〜150℃の高温では10秒〜1時間程度の短時間で硬化するものも得られる。硬化物の性状は用いる(A)成分の重合体および(B)成分の硬化剤の主鎖骨格や分子量に依存するが、ゴム状のものから樹脂状のものまで幅広く作成することができる。本組成物から得られる硬化物の具体的な用途を挙げるならば、シーリング材、接着剤、粘着材、弾性接着剤、塗料、粉体塗料、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、ガスケット、各種成形材料、人工大理石等である。
本発明の、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造法と同様に、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合方法により得られる、一般式1で示す末端にハロゲンを有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを変換することによって得ることができる。
そのような変換方法として、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合方法によって一般式1に示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに、重合性のアルケニル基と架橋性シリル基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法が挙げられる。この方法は、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造法において例示した方法と同じ原理に基づくものである。この場合も、第2のモノマーは、第1の重合が終了して重合体を単離してから、触媒とともに添加して、新たに反応させてもよいし、重合の途中で(in−situ)添加して反応させてもよい。後者の場合、第1の重合のモノマー転化率は高いほどよく、好ましくは80%以上である。80%以下であると、架橋性シリル基が分子末端ではなく、側鎖に分布し、硬化物の機械特性を損なうことになる。このような重合性のアルケニル基と架橋性シリル基を有する化合物は全末端の数に対し、等量添加すれば原理的にすべての末端に架橋性シリル基が導入されるが、全末端に架橋性基を確実に導入するためには、過剰量、具体的には、末端の数に対し、1〜5倍用いるのがよい。5倍以上用いると重合体の末端に高密度で架橋性基が導入されることになり、硬化物物性上好ましくない。
このような、重合性のアルケニル基と架橋性シリル基を併せ有する化合物としては特に制限はないが、具体的に例示するならば、一般式6
C=C(R)−R−R−[Si(R162−b(Y)O]−Si(R173−a(Y)(6)
(式中、R、RおよびRは、一般式2におけるR、R、Rに同じ、R16およびR17は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R16またはR17が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。)で示される化合物が挙げられる。Rが−C(O)O−(エステル基)の場合は(メタ)アクリレート系の化合物であり、Rがフェニレン基である場合はスチレン系の化合物である。
上記Yで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、具体的には、水素、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられ、加水分解性がマイルドで取り扱いやすいという点から、アルコキシ基が特に好ましい。該加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、a+mb、すなわち、加水分解性基の総和は、1〜5の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素基中に2個以上結合するときは、それらは同一であっても、異なっていてもよい。架橋性ケイ素化合物を構成するケイ素原子は、1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合により連結されたケイ素原子の場合には20個程度まであってもよい。
一般式6におけるR16やR17の具体例としては、例えば、メチル基やエチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、R’がメチル基やフェニル基等である(R’)SiO−で示されるトリオルガノシリル基等が挙げられる。
これらの中でも、加水分解性シリル基の反応性がマイルドで取扱いやすく、また、入手が容易であるという点で、
C=C(H)CO−(CH−Si(OCH、HC=C(H)CO−(CH−Si(CH)(OCH、HC=C(H)CO−(CH−Si(OC、HC=C(H)CO−(CH−Si(CH)(OC、HC=C(H)CO−(CH−Si(OC、HC=C(H)CO−(CH−Si(CH)(OC、HC=C(CH)CO−(CH−Si(OCH、HC=C(CH)CO−(CH−Si(CH)(OCH、HC=C(CH)CO−(CH−Si(OC、HC=C(CH)CO−(CH−Si(CH)(OC、HC=C(CH)CO−(CH−Si(OC、HC=C(CH)CO−(CH−Si(CH)(OC
(上記の各式中、nは2〜20の整数)
C=C(H)CO−(CH−O−(CH−Si(OCH、HC=C(H)CO−(CH−O−(CH−Si(CH)(OCH、HC=C(H)CO−(CH−O−(CH−Si(OC、HC=C(H)CO−(CH−O−(CH−Si(CH)(OC、HC=C(H)CO−(CH−O−(CH−Si(OC、HC=C(H)CO−(CH−O−(CH−Si(CH)(OC、HC=C(CH)CO−(CH−O−(CH−Si(OCH、HC=C(CH)CO−(CH−O−(CH−Si(CH)(OCH、HC=C(CH)CO−(CH−O−(CH−Si(OC、HC=C(CH)CO−(CH−O−(CH−Si(CH)(OC、HC=C(CH)CO−(CH−O−(CH−Si(OC、HC=C(CH)CO−(CH−O−(CH−Si(CH)(OC
(上記の各式中、nは1〜20の整数、mは2〜20の整数)
o−,m−,p−HC=CH−C−(CH−Si(OCH、o−,m−,p−HC=CH−C−(CH−Si(CH)(OCH、o−,m−,p−HC=CH−C−O−(CH−Si(OCH、o−,m−,p−HC=CH−C−O−(CH−Si(CH)(OCH
(但し、上記化学式中、Cはフェニレン基、nは2〜20の整数。)
が好ましい。
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる(メタ)アクリル系重合体の製造法において、架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物を開始剤として用いれば、片末端に架橋性シリル基を有し、他の末端が式1の構造を有する(メタ)アクリル系重合体が得られる。このようにして得られる重合体の停止末端のハロゲンを架橋性シリル基含有置換基に変換すれば、両末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。その変換方法としては、既に記載した方法を使用することができる。
架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては特に制限はないが、例えば一般式7に示す構造を有するものが例示される。
1112C(X)−R13−R14−C(H)(R)CH−[Si(R162−b(Y)O]−Si(R173−a(Y)(7)
(式中、R、R11、R12、R13、R14、R16、R17、a、b、m、X、Yは上記に同じ)
式7の化合物を具体的に例示するならば、
XCHC(O)O(CHSi(OCH、CHC(H)(X)C(O)O(CHSi(OCH、(CHC(X)C(O)O(CHSi(OCH、XCHC(O)O(CHSi(CH)(OCH、CHC(H)(X)C(O)O(CHSi(CH)(OCH、(CHC(X)C(O)O(CHSi(CH)(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数、)
XCHC(O)O(CHO(CHSi(OCH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH、XCHC(O)O(CHO(CHSi(CH)(OCH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−XCH−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH、o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−XCH−C−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−Si(OCH、o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−Si(OCH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CHSi(OCH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CHSi(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに、一般式8で示される構造を有するものが例示される。
(R173−a(Y)Si−[OSi(R162−b(Y)−CH−C(H)(R)−R14−C(R11)(X)−R15−R12 (8)
(式中、R、R11、R12、R14、R15、R16、R17、a、b、m、X、Yは上記に同じ)
このような化合物を具体的に例示するならば、
(CHO)SiCHCHC(H)(X)C、(CHO)(CH)SiCHCHC(H)(X)C、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、(CHO)Si(CHC(H)(X)−C、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−C、(CHO)Si(CHC(H)(X)−C、(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等が挙げられる。
架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物を開始剤として用いると、片末端が架橋性シリル基、他の末端が式1で示されるハロゲン末端である重合体が得られるが、この重合体の式1のハロゲンを置換できる、同一または異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングさせることによっても、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。この方法は、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造法において説明した方法と同じ原理に基づくものであり、既に例示した、式1のハロゲンを置換できる官能基を2個以上有する化合物をすべて用いることができる。
末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造法としては、この他に、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に、架橋性基を有するヒドロシラン化合物を付加させる方法が挙げられる。末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体としては、既に説明した方法により得られるものをすべて好適に用いることができる。
ヒドロシラン化合物としては特に制限はないが、代表的なものを示すと、一般式16
H−[Si(R162−b(Y)O]−Si(R173−a(Y)(16)
(式中、R16、R17、Y、a、bは、一般式6におけるそれらと同じである。)
で表される化合物が例示される。
上記Yで示される加水分解性基、およびR16、R17の具体例としては、既に一般式6の説明で例示したものと同様なものが挙げられる。
これらヒドロシラン化合物の中でも、特に一般式17
H−Si(R173−a(Y)(17)
(式中、R17、Y、aは前記と同じ。)で表される架橋性基を有するヒドロシラン化合物が、入手容易な点から好ましい。一般式16または17で示される架橋性基を有するヒドロシラン化合物の具体例としては、
HSiCl、HSi(CH)Cl、HSi(CHCl、HSi(OCH、HSi(CH)(OCH、HSi(CHOCH、HSi(OC、HSi(CH)(OC、HSi(CHOC、HSi(OC、HSi(C)(OCH、HSi(COCH、HSi(C)(OCH、HSi(C(OCH)、HSi(CH)(OC(O)CH、HSi(CHO−[Si(CHO]−Si(CH)(OCH、HSi(CH)[O−N=C(CH
(但し、上記化学式中、Cはフェニル基を示す)
等が挙げられる。
このような架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に付加させる際には、ヒドロシリル化触媒が使用され、既に述べたものをすべて用いることができる。
上記のようにして得られた、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、これを主成分とする硬化性組成物にすることができる。
主成分である(メタ)アクリル系重合体は、単独で用いても、また、2種類以上を混合して用いてもよい。また、その分子量については特に制限はないが、500〜50000の範囲にあるのが好ましい。分子量が500以下であると、(メタ)アクリル系重合体の本来の特性が発現されにくく、また、50000以上であると、ハンドリングが困難になる。
末端に加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は水分と接触すると架橋反応により3次元化して硬化する。加水分解速度は温度、湿度、加水分解性基の種類により変化するので、使用条件に応じて適切な加水分解性基を選択しなければならない。また、加水分解性シリル基を末端に有する(メタ)アクリル系重合体は、保存時には水分との接触を可能な限り断つ必要がある。
硬化反応を促進するために硬化触媒を添加してもよい。触媒としては、アルキルチタン酸塩、有機ケイ素チタン酸塩、オクチル酸錫やジブチル錫ジラウレートのようなカルボン酸の金属塩、ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等のアミン塩、ならびに他の酸性触媒および塩基性触媒を使用しうる。使用量としては特に制限はないが、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体に対し、0.01〜5重量%用いるのが好ましい。
主成分である末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体に、必要に応じて縮合触媒を混合し硬化させれば、均一な硬化物を得ることができる。硬化条件としては特に制限はないが、一般に0〜100℃、好ましくは10〜50℃で1時間〜1週間程度である。硬化物の性状は用いる重合体の主鎖骨格や分子量に依存するが、ゴム状のものから樹脂状のものまで幅広く作成することができる。
上記の組成物より得られる硬化物の具体的な用途を挙げるならば、シーリング材、接着剤、粘着材、弾性接着剤、塗料、粉体塗料、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、成形材料、人工大理石等である。
本発明によれば、これまで製造するのが困難であった、末端にアルケニル基あるいは加水分解性シリル基を高い比率で有する、(メタ)アクリル系重合体を簡便に得ることができ、それらの官能基が確実に末端に導入されているので、硬化特性の優れた硬化物を得ることができる。
以下に、この発明の具体的な実施例を示すが、この発明は、下記実施例に限定されるものではない。
製造例1
(2−アリロキシエチルメタクリレートの合成)撹拌機、温度計、還流冷却管、ディーンスターク管を取り付けた三つ口フラスコに、メタクリル酸(137.7g、1.6mol)、エチレングリコールモノアリルエーテル(80.7g、0.8mol)、p−トルエンスルホン酸(0.76g、4.0mmol)、およびトルエン(650mL)を仕込んだ。120℃で5時間反応させた後、p−トルエンスルホン酸を0.12g追加し、さらに同じ温度で6時間反応させ、p−トルエンスルホン酸を0.1g追加した。同じ温度でさらに9時間反応させて反応を終了した。この間、液体クロマトグラフィーでメタクリル酸とエチレングリコールモノアリルエーテルを追跡し、転化率は最終的に98%に達した。NaHCO水溶液を加えて中和し、2層を分離した。水層をトルエンで1回抽出し、有機層をCaClで乾燥した後、揮発分を減圧下留去した。粗生成物を減圧蒸留する(60℃、2mmHg)ことにより、下式に示す2−アリロキシエチルメタクリレートを98.7g得た(収率73%)。
C=C(CH)CO(CHOCHCH=CH
実施例1
30mLの耐圧ガラス反応容器に、アクリル酸ブチル(2.5mL、2.24g、17.45mmol)、α,α’−ジブロモ−p−キシレン(92.5mg、0.35mmol)、臭化第一銅(50mg、0.35mmol)、2,2’−ビピリジル(163mg、1.05mmol)、および酢酸エチル(2mL)、アセトニトリル(0.5mL)を仕込み、窒素ガスを10分間吹き込んで溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、1時間反応させた。室温に冷却した後、製造例1で得られたアリロキシエチルメタクリレート(600mg、3.5mmol)を窒素ガス雰囲気下で添加して封管した。混合物を80℃に加熱し、1時間反応させた。混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、生成した不溶固体をろ過した後、濾液を希塩酸で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去し、下式に示す両末端にアルケニル基を有するポリアクリル酸ブチルを1.97g得た(重合収率88%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により6700、分子量分布は1.60であった。また、オリゴマー1分子当たりに導入されたアルケニル基は、HNMR分析より、5.4個であった。
Figure 0004231054
実施例2
実施例1において、アクリル酸ブチルのかわりにアクリル酸メチルを使用する以外は全く同様にして、下式の構造を有する両末端にアルケニル基を有するポリアクリル酸メチルを得た(収率93%)。重合体の数平均分子量はGPC測定により(ポリスチレン換算)により7900、分子量分布は2.0であった。また、オリゴマー1分子当たりに導入されたアルケニル基は、H NMR分析より平均3.3個であった。
Figure 0004231054
実施例3
50mLの耐圧ガラス反応容器に、アクリル酸ブチル(10mL、8.94g、69.8mmol)、α,α’−ジブロモ−p−キシレン(370mg、1.4mmol)、臭化第一銅(200mg、1.4mmol)、2,2’−ビピリジル(433mg、2.8mmol)、およびメチルイソブチルケトン(10mL)を仕込み、窒素ガスを10分間吹き込んで溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、20分反応させた。室温に冷却した後、混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、生成した不溶固体をろ過した後、濾液を希塩酸で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去し、両末端に臭素を有するポリ(アクリル酸ブチル)を5.21g得た(58%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により3700、分子量分布は1.41であった。
次に、30mLの耐圧反応管に、上記のようにして得られたポリ(アクリル酸ブチル)(2.0g)、p−ジビニルベンゼン(281mg、2.16mmol)、臭化第一銅(77mg、0.54mmol)、2,2’−ビピリジル(167mg、1.08mmol)、およびメチルイソブチルケトン(4mL)を仕込み、窒素ガスを10分間吹き込んで溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、30分反応させた。室温に冷却した後、混合物を酢酸エチル(10mL)で希釈し、生成した不溶固体をろ過した後、濾液を希塩酸で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去し、下式に示す両末端にアルケニル基を有するポリ(アクリル酸ブチル)を2.11g得た。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により7300、分子量分布は2.47であった。また、オリゴマー1分子当たりに導入されたアルケニル基は、H NMR分析より、2.1個であった。
Figure 0004231054
実施例4
30mLの耐圧ガラス反応容器に、アクリル酸ブチル(5mL、4.47g、34.9mmol)、α,α’−ジブロモ−p−キシレン(180mg、0.69mmol)、臭化第一銅(98mg、0.69mmol)、2,2’−ビピリジル(319g、2.06mmol)、および酢酸エチル(4mL)、アセトニトリル(1ml)を仕込み、窒素ガスを10分間吹き込んで溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、1時間反応させた。混合物を冷却後、窒素雰囲気下でアリルトリブチル錫(0.51mL、1.64mmol)を添加し、100℃で1時間反応させた。混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、生成した不溶固体をろ過した後、濾液を希塩酸で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去し、下式に示す両末端にアルケニル基を有するポリアクリル酸ブチルとブロモトリブチル錫の混合物を得た(収量4.48g)。重合体の数平均分子量はGPC測定により(ポリスチレン換算)により7700、分子量分布は1.33であった。また、オリゴマー1分子当たりに導入されたアルケニル基は、H NMR分析より、1.6個であった。
Figure 0004231054
実施例5
30mLの耐圧ガラス反応器に、アクリル酸メチル(5mL、4.78g、55.6mmol)、α,α’−ジブロモ−p−キシレン(292mg、1.11mmol)、臭化第一銅(159mg、1.11mmol)、2,2’−ビピリジル(518mg、3.3mmol)、および酢酸エチル(4mL)、アセトニトリル(1mL)を仕込み、真空脱揮を2回行って溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、2.7時間反応させた。室温に冷却した後、アリルトリブチル錫(0.82mL、2.66mmol)を添加し、80℃で6時間反応させた。混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、生成した不溶固体をろ過した後、濾液を希塩酸で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去した。粗生成物を少量のアセトンに溶かし、ヘキサンで再沈殿を2回行い、下式に示す両末端にアルケニル基を有するポリアクリル酸メチルを得た(収量2.80g)。重合体の数平均分子量はGPC測定により(ポリスチレン換算)により7000、分子量分布は1.26であった。また、オリゴマー1分子当たりに導入されたアルケニル基は、H NMR分析より、1.7個であった。
Figure 0004231054
製造例2
(アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の製造1)
50mLの2口フラスコを窒素置換し、2−アリルオキシエタノール(2.5mL、23.4mmol)、ピリジン(3mL)、およびTHF(10mL)を仕込んだ。溶液を0℃に冷却し、2−ブロモプロピオン酸クロライド(2mL、19.52mmol)をゆっくり滴下した。そのままの温度で1時間撹拌を続けた後、酢酸エチル(10mL)を加え、生成したピリジンの塩酸塩を濾過により除去した。濾液を希塩酸(10mL)、NaHCO水溶液(10mL)、さらにブライン(10mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧化留去した。得られた粗生成物を減圧蒸留することにより、下式に示すアリルオキシエチル−2−ブロモプロピオネートを得た。(78.5〜81℃(1.3mmHg)、2.986g)。
CHC(H)(Br)C(O)O−CHCH−O−CHCH=CH
製造例3
(アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の製造2)
50mLの2口フラスコを窒素置換し、5−ヘキセン−1−オール(2.81mL、23.4mmol)、ピリジン(3mL)、およびTHF(10mL)を仕込んだ。溶液を0℃に冷却し、2−ブロモプロピオン酸クロライド(2mL、19.52mmol)をゆっくり滴下した。そのままの温度で1時間撹拌を続けた後、酢酸エチル(10mL)を加え、生成したピリジンの塩酸塩を濾過により除去した。濾液を希塩酸(10mL)、NaHCO水溶液(10mL)、さらにブライン(10mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧化留去した。得られた粗生成物を減圧蒸留することにより、下式に示すヘキセニル−2−ブロモプロピオネートを得た。(82〜83℃(2.3mmHg)、3.101g)。
CHC(H)(Br)C(O)O−(CH−CH=CH
実施例6
30mLの耐圧ガラス反応容器に、アクリル酸ブチル(2.5mL、2.24g、17.45mmol)、製造例2で得られたアルケニル基を有する開始剤(165mg、0.698mmol)、臭化第一銅(100mg、0.698mmol)、2,2’−ビピリジル(218mg、1.40mmol)、アセトニトリル(0.5mL)、酢酸エチル(2mL)を仕込み、窒素ガスを10分間吹き込んで溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、50分反応させた。室温に冷却した後、混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、生成した不溶固体をろ過した後、濾液を希塩酸で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去して、片末端にアルケニル基、他の末端には臭素を有するポリ(アクリル酸ブチル)を1.90g得た(79%)。重合体の数平均分子量はGPC測定により(ポリスチレン換算)により3600、分子量分布は1.51であった。また、オリゴマー1分子当たりに導入されたアルケニル基は、H NMR分析より、0.75個であった。
次に、撹拌子、還流冷却管を備えた50mLの3つ口フラスコに、上記のようにして得られた重合体(1.90g)、NaS・9HO(70.2mg、0.293mmol)、およびエタノール(3mL)を仕込み、還流温度で3時間撹拌した。室温に冷却した後、酢酸エチル(10mL)、希塩酸(10mL)を加え、2層を分離した。有機層を希塩酸とブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した後、揮発分を減圧下留去することにより、下式に示す両末端にアルケニル基を有するポリ(アクリル酸)ブチルを1.69g得た。重合体の数平均分子量はGPC測定により(ポリスチレン換算)により5100、分子量分布は1.73であった。
Figure 0004231054
実施例7
30mLの耐圧ガラス反応容器に、アクリル酸メチル(5mL、4.78g、55.5mmol)、2−メチル−2−ブロモプロピオン酸アリル(0.354mL、460mg、2.22mmol)、臭化第一銅(318mg、2.22mmolmmol)、2,2’−ビピリジル(1.04g、6.66mmol)、アセトニトリル(1mL)、酢酸エチル(4mL)を仕込み、真空脱気を3回行って溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を80℃に加熱し、3時間反応させた。室温に冷却した後、混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、生成した不溶固体をろ過した後、濾液を希塩酸で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去して、片末端にアルケニル基、他の末端には臭素を有するポリ(アクリル酸ブチル)を3.93g得た(75%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により2700、分子量分布は1.48であった。また、オリゴマー1分子当たりに導入されたアルケニル基は、H NMR分析より、0.81個であった。
次に、撹拌子、還流冷却管を備えた50mLの3つ口フラスコに、上記のようにして得られた重合体(1.17g)、NaS・9HO(57.6mg、0.240mmol)、およびエタノール(2mL)を仕込み、還流温度で3時間撹拌した。室温に冷却した後、酢酸エチル(10mL)、希塩酸(10mL)を加え、2層を分離した。有機層を希塩酸とブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した後、揮発分を減圧下留去することにより、下式に示す両末端にアルケニル基を有するポリ(アクリル酸)ブチルを1.11g得た。重合体の数平均分子量はGPC測定により(ポリスチレン換算)により4200、分子量分布は1.71であった。
Figure 0004231054
実施例8
100mLの耐圧ガラス反応容器に、アクリル酸ブチル(10mL、8.94g、69.8mmol)、製造例2で得られたアルケニル基を有する開始剤(332mg、1.40mmol)、臭化第一銅(200mg、1.40mmol)、2,2’−ビピリジル(433mg、2.80mmol)、アセトニトリル(2mL)、および酢酸エチル(8mL)を仕込み、窒素ガスを10分間吹き込んで溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、1.5時間反応させた。室温に冷却した後、p−ジビニルベンゼン(364mg、2.80mmol)を窒素ガス雰囲気下で添加して封管した。混合物を100℃に加熱し、2時間反応させた。混合物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、生成した不溶固体をろ過した後、濾液を希塩酸で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去し、下式に示す両末端にアルケニル基を有するポリアクリル酸ブチルを6.43g得た(69%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により3900、分子量分布は5.35であった。また、オリゴマー1分子当たりに導入されたアルケニル基は、H NMR分析より、1.73個であった。
Figure 0004231054
実施例9〜14
硬化物の作成
実施例1、2、3、6、7、8で得られた両末端にアルケニル基を有する重合体をトルエンに溶解し、重合体と等量の珪酸アルミ(協和化学製:キョーワード700PEL)を添加して1時間撹拌し、重合体中の微量不純物を除去した。次に、精製されたポリ(アクリル酸エステル)と、下式に示す多価ハイドロジェンシリコン化合物、および、0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体(8.3×10−8mol/Lキシレン溶液)をよく混合した。多価ハイドロジェンシリコン化合物の使用量は、重合体のアルケニル基とハイドロジェンシリコン化合物のヒドロシリル基がモル比で1/1.2となる量、また、白金触媒の使用量は、重合体のアルケニル基に対して、モル比で10−4〜10−3当量とした。
このようにして得られた組成物の一部を130℃のホットプレート上にて硬化試験を行い、ゲル化時間を測定した。また、残りの組成物を減圧下に脱気し、型枠に流し込んで加熱硬化させ、ゴム状の硬化物を得た。硬化物をトルエンに24時間浸漬し、前後の重量変化からそのゲル分率を測定した。結果を表1に示した。
Figure 0004231054
Figure 0004231054
実施例15
30mLの耐圧ガラス反応容器に、アクリル酸ブチル(5mL、4.47g、34.9mmol)、α,α’−ジブロモ−p−キシレン(185mg、0.70mmol)、臭化第一銅(100mg、0.70mmol)、2,2’−ビピリジル(1.09g、7.0mmol)、およびアセトニトリル(5mL)を仕込み、真空脱揮を3回行って溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、6時間反応させた。混合物を酢酸エチル(mL)で希釈し、生成した不溶固体をろ過した後、濾液を希塩酸で3回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去し、両末端に臭素を有するポリ(アクリル酸ブチル)を得た(3.04g、重合収率68%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により5200、分子量分布は1.17であった。次に、30mLの耐圧反応管に、上で得られた両末端に臭素を有するポリ(アクリル酸ブチル)(1g)、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(285mg、1.15mmol)、臭化第一銅(27.6mg、0.193mmol)、2,2’−ビピリジル(300mg、1.93mmol)、および酢酸エチル(3mL)を仕込み、130℃で6時間反応させたところ、下式に示す末端にトリメトキシシリル基を有するポリ(アクリル酸ブチル)を得た。
Figure 0004231054
実施例16
30mLの耐圧ガラス反応容器に、アクリル酸ブチル(5mL、4.47g、34.9mmol)、α,α’−ジブロモ−p−キシレン(185mg、0.70mmol)、臭化第一銅(100mg、0.70mmol)、2,2’−ビピリジル(217mg、1.40mmol)、酢酸エチル(4mL)、およびアセトニトリル(1mL)を仕込み、窒素バブリングを10分間行って溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、2時間反応させた。混合物を冷却した後、メチルジメトキシシリルプロピルメタクリレート(650mg、2.8mmol)を添加し、100℃で2時間反応させた。混合物を冷却後、酢酸エチル(20mL)で希釈し、生成した不溶固体をろ過した後、濾液を塩化アンモニウム水溶液で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、揮発分を減圧下留去し、下式に示す両末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリ(アクリル酸ブチル)を4.78g得た(90%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により7100、分子量分布は1.74であった。また、H NMR分析により、一分子あたりに導入されたシリル基は3.2個であった。
Figure 0004231054
次に、上記のようにして得られた両末端に架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸ブチル)(2.5g)と硬化触媒((株)日東化成製、U−220、75mg)をよく混合し、型枠に流し込んで、減圧乾操器を用いて室温で脱泡した。室温に7日間放置することにより、均一なゴム状硬化物が得られた。ゲル分率は54%であった。

Claims (5)

  1. (A)末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体、及び、(B)ヒドロシリル基含有化合物、を含有する硬化性組成物であって、
    (A)成分の末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合方法によって一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに、一般式2で示す化合物を反応させることによって得られるものである
    ことを特徴とする硬化性組成物。
    −CH−C(R)(CO)(X) (1)
    (式中、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
    C=C(R)−R−R−C(R)=CH (2)
    (式中、R、Rは水素またはメチル、Rは−C(O)O−(エステル基)、またはo−、m−、p−フェニレン基、Rは直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい。)
  2. 開始剤である有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物が、アルケニル基を有するハロゲン化物である請求項記載の硬化性組成物。
  3. アルケニル基を有するハロゲン化物が、一般式4、または5で示される化合物である請求項記載の硬化性組成物。
    1112C(X)−R13−R14−C(R)=CH (4)
    (式中、Rは水素、またはメチル基、R11、R12は水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、または他端において相互に連結したもの、R13は、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−、m−、p−フェニレン基、R14は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
    C=C(R)−R14−C(R11)(X)−R15−R12 (5)
    (式中、R、R11、R12、R14、Xは上記に同じ、R15は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、または、o−,m−,p−フェニレン基)
  4. (A)末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体、及び、(B)ヒドロシリル基含有化合物、を含有する硬化性組成物であって、
    (A)成分の末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物、または、アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる重合方法によって、片末端にアルケニル基、他の末端に一般式1で示される構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに一般式1のハロゲンを置換することのできる、同一または異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングすることによって得られるものである
    ことを特徴とする硬化性組成物。
    −CH−C(R)(CO)(X) (1)
    (式中、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
  5. 一般式1のハロゲン末端どうしのカップリング反応を、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリチオール、およびそれらの塩、アルカリ金属硫化物からなる群より選ばれる化合物を用いて行う請求項記載の硬化性組成物。
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