JP4228623B2 - ディーゼル排ガス浄化用装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンからの排ガス中に含まれるパティキュレート(粒子状物質)を捕集するとともに、排ガス中の有害成分を浄化するディーゼル排ガス浄化用装置に関し、詳しくはNOX吸着材を用いてパティキュレートの酸化速度を向上させたディーゼル排ガス浄化用装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガソリンエンジンについては、排ガスの厳しい規制とそれに対処できる技術の進歩とにより、排ガス中の有害成分は確実に減少されてきている。しかし、ディーゼルエンジンについては、有害成分がパティキュレート(粒子状物質:炭素微粒子、サルフェート等の硫黄系微粒子、高分子量炭化水素微粒子)として排出されるという特異な事情から、規制も技術の進歩もガソリンエンジンに比べて遅れている。
【0003】
現在までに開発されているディーゼルエンジン用排ガス浄化装置としては、大きく分けてトラップ型の排ガス浄化装置(ウォールフロー)と、オープン型の排ガス浄化装置(ストレートフロー)とが知られている。このうちトラップ型の排ガス浄化装置としては、セラミック製の目封じタイプのハニカム体(ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下DPFとする))が知られてる。このDPFは、セラミックハニカム構造体のセル下流端の開口部を目詰めしたガス流入側セルと、セル上流端の開口部を目詰めしたガス流出側セルと、ガス流入側セルとガス流出側セルを区画し、ガス流通の際のフィルタとなるセル隔壁を持つものであり、セル隔壁の細孔で排ガスを濾過してセル隔壁にパティキュレートを捕集することで排出を抑制するものである。
【0004】
このようなDPFとしては、DPFのセル隔壁にアルミナなどからコート層を形成し、そのコート層に白金(Pt)などの酸化触媒を担持した連続再生式DPFが主に用いられている。この連続再生式DPFによれば、捕集されたパティキュレートが酸化触媒によって比較的低温で酸化・燃焼されるため、パティキュレートを捕集と同時にあるいは捕集と連続して燃焼させることでDPFを再生することができる。
【0005】
連続再生式DPFとしては、様々なものが知られている。例えば特許3012249号公報には、排ガスからNOxを生成させる触媒モノリス体とDPFとを別々に設け、触媒モノリス体をフィルタ上流に配し、そこで生じたNOxを下流側のDPFで捕集されたパティキュレートに供給するパティキュレート除去装置が開示されている。この場合、NOXはパティキュレートに対する気体酸化剤として作用し、NOXとパティキュレートの気体−固体間の反応によってパティキュレートの燃焼はおこなわれる。
【0006】
また、特公平7−106290号公報には、アルカリ土類金属酸化物に白金族金属を担持した酸化触媒をDPFにコートし、パティキュレートと触媒金属との間に起こる固体−固体間の反応を利用したパティキュレート連続酸化フィルタが開示されている。
【0007】
この他にも、パティキュレートの連続酸化が起こり難い低温条件下において排ガス中のNOXを吸着し、高温条件下でこのNOXを放出し供給する様な、NOX吸着材を用いたディーゼル排ガス浄化用フィルタ型触媒も開発されている。このディーゼル排ガス浄化用フィルタ型触媒によると、NOXによってパティキュレートを燃焼させる固体−気体間の反応と触媒金属とパティキュレートとの間に起こる固体−固体間の反応との両方を用いることで、パティキュレートの燃焼をより良好におこなうことができる。さらに、このパティキュレートの燃焼パティキュレートの連続酸化が起こりやすい高温条件下でおこなわれることから、パティキュレートの燃焼はより効率よくおこなわれることとなる。
【0008】
しかし、近年排ガス浄化への要求は高まる一方であり、更なる排ガス浄化技術の向上が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、パティキュレートの燃焼をより効率よくおこなうことのできるディーゼル排ガス浄化用装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の第1のディーゼル排ガス浄化用装置は、排ガス流路に設けられるディーゼル排ガス浄化用装置であって、ガス流通の際のパティキュレートのフィルタとなるフィルタ部と、該フィルタ部とガス流通可能に連通している易流部とを有し、該易流部における基材のガス流通抵抗は、該フィルタ部における基材のガス流通抵抗よりも低く、該フィルタ部には酸化触媒が設けられ、該易流部にはNOX吸着材が担持され、該易流部は該フィルタ部の周方向の外周側に配置されて該フィルタ部と接する壁面で該フィルタ部に対してガス流通可能に連通し、該易流部の排ガス流れ方向の上流側には該易流部へのガス流入を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽する上流側ガス開閉弁が設けられていることを特徴とする。
前記課題を解決する本発明の第2のディーゼル排ガス浄化用装置は、排ガス流路に設けられるディーゼル排ガス浄化用装置であって、ガス流通の際のパティキュレートのフィルタとなるフィルタ部と、該フィルタ部とガス流通可能に連通している易流部とを有し、該易流部における触媒コート量は、該フィルタ部における触媒コート量よりも少なく、該フィルタ部には酸化触媒が設けられ、該易流部にはNOX吸着材が担持され、該易流部は該フィルタ部の周方向の外周側に配置されて該フィルタ部と接する壁面で該フィルタ部に対してガス流通可能に連通し、該易流部の排ガス流れ方向の上流側には該易流部へのガス流入を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽する上流側ガス開閉弁が設けられていることを特徴とする。
前記課題を解決する本発明の第3のディーゼル排ガス浄化用装置は、排ガス流路に設けられるディーゼル排ガス浄化用装置であって、ガス流通の際のパティキュレートのフィルタとなるフィルタ部と、該フィルタ部とガス流通可能に連通している易流部とを有し、該易流部は該フィルタ部の排ガス流れ方向の上流側に配置され、該フィルタ部には酸化触媒が設けられ、該易流部にはNOX吸着材が担持され、該易流部は該フィルタ部の周方向の外周側に配置されて該フィルタ部と接する壁面で該フィルタ部に対してガス流通可能に連通し、該易流部の排ガス流れ方向の上流側には該易流部へのガス流入を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽する上流側ガス開閉弁が設けられていることを特徴とする。
【0011】
一般に、連続再生式DPFにおいては、フィルタとなるセル隔壁(以下、フィルタ隔壁とする)に堆積したパティキュレートを完全に燃焼させ除去することは非常に困難である。したがって、DPFを再生した後でもパティキュレートの燃え残りがフィルタ隔壁上に堆積し、この堆積が進行すると、フィルタ隔壁に目詰まりが生じる場合がある。また、DPFの場合、周方向の外周側は温度の上昇しにくい部分であることから、この部分に位置するフィルタ隔壁は特にパティキュレートの堆積が進行しやすい部分となる。
【0012】
パティキュレートの堆積が進行し、フィルタ隔壁に目詰まりが生じた場合、フィルタ隔壁上に捕集されたパティキュレートと触媒金属との固体−固体間の反応は起こり難いものとなる。さらに、目詰まりによってパティキュレートへの気体酸化剤の供給もおこなわれ難くなり、パティキュレートと気体酸化剤との固体−気体間の反応もまた起こり難いものとなる。このため、目詰まりを起こしたDPFは排ガスの浄化能が低下する。この場合DPFを交換する必要があるが、DPFを頻繁に交換することはコスト面から好ましくない。
【0013】
本発明のディーゼル排ガス浄化用装置においては、パティキュレートを捕集しパティキュレートのフィルタとなるフィルタ部と、NOX吸着材が担持されている易流部とが別々に設けられ、易流部はフィルタ部よりも優先的に排ガスが流入する構成となっている。ここで、NOX吸着材とは上述したように低温条件下でNOXを吸着し高温条件下ではNOXを放出する作用を持つものである。
【0014】
このため、この構成によると低温条件下では排ガス中のNOXは主に易流部に吸着され、パティキュレートはフィルタ部に主に捕集されることとなる。また、易流部とフィルタ部とはガス流通可能に連通していることから、高温条件下では、易流部のNOX吸着材に吸着されたNOXが放出され、フィルタ部へ流入し、このフィルタ部に捕集されているパティキュレートを酸化・燃焼することとなる。したがって、パティキュレートが堆積するフィルタ部へのNOX、すなわち気体酸化剤の供給は、フィルタ部のパティキュレートの堆積に関わらず良好におこなわれることとなり、パティキュレートの燃焼は効率よくおこなわれることとなる。
【0015】
さらに、上記易流部の排ガス流れ方向の下流側に、上記易流部からのガス流出を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽する下流側ガス開閉弁を配置することもできる。
【0016】
上記フィルタ部および前記易流部の排ガス流れ方向の下流部には、NOX吸蔵還元触媒が設けられたNOX浄化部が配置されているものとすることができる。
【0017】
そして、上記フィルタ部および上記易流部の排ガス流れ方向の下流部には、ガス流通の際のパティキュレートのフィルタとなり上記酸化触媒が設けられた第2のフィルタ部を配置することもできる。
【0018】
さらに、上記第2のフィルタ部と並列に、排ガス流通抵抗の小さいバイパス部を配置し、上記第2のフィルタ部と上記バイパス部とはバイパス切換弁によって切換されるものとすることもできる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるディーゼル排ガス浄化用装置は、フィルタ部と易流部とを有する。
【0020】
フィルタ部は、ガス流通の際のパティキュレートのフィルタとなる部分である。このフィルタ部の基材としては、上述したような通常のウオールフロー型のもの、すなわちDPFを用いることができる。フィルタ部にはパティキュレートのフィルタとなるフィルタ隔壁が設けられ、フィルタ部に流入した排ガスはこのフィルタ隔壁を通過してフィルタ部外部へ流出する。
【0021】
また、フィルタ部のフィルタ隔壁には、酸化触媒が設けられている。酸化触媒としては、多孔質酸化物と触媒金属とを含みパティキュレートを酸化・燃焼させることができるものであれば、通常のDPFに用いられるものを用いることができる。例えば、多孔質酸化物としては、Al23、ZrO2、CeO2、Fe23,TiO2,SiO2などの酸化物あるいはこれらの複数種からなる複合酸化物を使用することが好ましい。このうち、CeO2やCeO2/ZrO2は酸素吸蔵放出能を有することから、浄化性能をより向上させるためにはこれらをを用いることがより好ましい。
【0022】
また、これら多孔質酸化物にPr,La,Y等の耐熱性向上剤をさらに加えることもできる。
【0023】
触媒金属としてはPt,Fe,Mn,Co,Ni,Cu,Pd,Rh,Agなどの既知の触媒金属から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0024】
なお、多孔質酸化物の量は基材の体積1リットルあたり50g〜300gであることが好ましく、触媒金属の量は基材の体積1リットルあたり0.5g〜15gが好ましい。これより多くなるとフィルタ部の圧損が上昇し、これより少なくなるとパティキュレートの酸化・燃焼が良好に行われない。なお、本明細書において基材の体積とは、基材の嵩の量を表す。
【0025】
易流部は、フィルタ部よりも優先的に排ガスが流入する部分である。この易流部は、例えばフィルタ部の排ガス流れ方向の上流側に配置することで、この易流部にフィルタ部よりも優先的に排ガスが流入する構成とすることもできる。あるいは、易流部の基材をフィルタ部の基材よりもガス流通抵抗が低くなるように形成し、この易流部を排ガス流れ方向に対してフィルタ部と並列に配置することもできる。さらには、易流部とフィルタ部とを同じ基材で形成し、易流部への触媒等のコート量をフィルタ部よりも少ないものとすることもできる。
【0026】
易流部の基材をフィルタ部よりもガス流通抵抗の低いものとするためには、易流部をストレートフロー型のものとすることもできるし、フィルタ部と比較してガス流通抵抗の低いウォールフロー型のものとすることもできる。ここで、ウォールフロー型のものとする場合、フィルタ隔壁のパティキュレート捕集能によって、使用前の状態でのガス流通抵抗が同じであっても、使用開始後の状態でのガス流通抵抗は異なる場合がある。このことから、この場合のガス流通抵抗とは、ディーゼル排ガス浄化用装置を使用している状態、すなわち、パティキュレートが堆積した条件下におけるガス流通抵抗を指し、本発明においては、基材1リットルあたりパティキュレートが1g堆積した状態でのガス流通抵抗を指す。
【0027】
易流部の基材をフィルタ部と比較してガス流通抵抗の低いウォールフロー型のものとする場合には、例えばフィルタ部の基材に対して易流部の基材の細孔径を大きなものにしたり,気孔率を高くしたり,セル径を大きくしたりすることで、所望のガス流通抵抗を有する易流部を形成することができる。
【0028】
易流部に担持されるNOX吸着材としては、ZrO2,ゼオライト,スピネル,MgAl24,Al23等の塩基性を持つものまたは酸性および塩基性の両性を持つもので、低温条件下でNOXを吸着し高温条件下でNOXを脱離するものが使用できる。ここで本発明でいう低温条件および高温条件とは、通常の酸化触媒の酸化活性が発揮される温度域である350℃を基準とし、これより高い温度域を高温条件としこれより低い温度域を低温条件とするものである。例えばZrO2は、室温〜350℃の温度条件下でNOXを吸着し、350℃〜400℃の温度条件下でNOXを脱離する特性をもつ。
【0029】
また、NOX吸着材にLa,K,Caの少なくとも一種を添加することが好ましい。NOX吸着材にこれらを添加することで、NOX吸着材の耐久性を向上させることができる。このLa,K,Caは、ZrO2をNOX吸着材として用いる場合に添加することが特に好ましい。
【0030】
また本発明において、易流部はNOX吸着材とともに触媒金属を担持する構成とすることもできる。NOX吸着材とともに触媒金属を担持することで、NOX吸着材へ吸着されるNOX量を増大させることができる。
【0031】
ここで用いる触媒金属としては、Pt,Pd,Agなどの酸化触媒能を持つ貴金属を用いることが好ましい。ここで、例えばPdは、それ自体にNOX吸着能を持つことから、NOX吸着能をさらに向上させたい場合にはPdを用いることが好ましい。さらに酸化触媒は、アンミン系Ptおよび硝酸Pdのどちらか一種あるいは二種の混合物の状態で用いることが好ましく、また、コロイドPt,Pt−Pd複合コロイド,もしくはPtコロイドと硝酸Pdの混合物の状態で用いることがより好ましい。
【0032】
コロイド状のPtやPdはメタルに近い状態で担持される。このような状態で担持されたPtやPdは、担持された後に焼成などによって高温条件下に曝された場合にも酸化され触媒活性が低下する不具合を回避することができ、より高い触媒活性を保持することができる。
【0033】
なお、NOX吸着材の量は基材の体積1リットルあたり50g〜300gであることが好ましく、触媒金属の量は基材の体積1リットルあたり0.5g〜10gが好ましい。これより多くなるとフィルタ部の圧損が上昇し、これより少なくなるとNOXの良好な吸着が行われない。
【0034】
いずれの場合も、易流部とフィルタ部とはガス流通可能に連通した構造を有するものである。ここで、フィルタ部と易流部との連通はガス流通可能なものであればよく、例えばガスのみでなくパティキュレートが流通可能な構成であっても良い。すなわち、排ガスが優先的に流通する易流部よりフィルタ部方向へのパティキュレートの流通をおこなうことも可能である。
【0035】
また、このNOX吸着材は易流部のみならずフィルタ部にも担持させることができる。NOX吸着材をフィルタ部にも担持させる場合、フィルタ部の基材にまずNOX吸着材を担持させ、その上層にフィルタ部の酸化触媒を設けることが好ましい。その理由は以下の通りである。
【0036】
酸化触媒とパティキュレートとの反応は固体−固体間の反応であるため、酸化触媒はパティキュレートと接触し易い位置に配置されることが好ましい。したがって、酸化触媒はパティキュレートが捕集される表層部に設けられていることが好ましい。これに対して、NOX吸着材より放出されるNOXとパティキュレートとの反応は気体−固体間の反応である。このため、NOX吸着材とパティキュレートとは多少離間して配置されていてもガス流通が可能な状態であれば反応が生じる。一般に酸化触媒は、微細な細孔を有して形成されるものであるため、この酸化触媒はガス流通可能なものである。したがって、NOX吸着材を酸化触媒の下層に設けても、このNOX吸着材から放出されたNOXは酸化触媒を通過してパティキュレートに到達することとなり、NOXとパティキュレートとの気体−固体間の反応は生じることとなる。
【0037】
本発明のディーゼル排ガス浄化用装置において、易流部をフィルタ部の周方向の外周側に配置し、この易流部とフィルタ部とが接する壁面で易流部とフィルタ部とのガス流通をおこなうものとした上で、易流部の排ガス流れ方向の上流側に易流部へのガス流入を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽する上流側ガス開閉弁を設ける構成とすることもできる。
【0038】
本発明において易流部は排ガスが優先的に流入する部位であることから、低温条件下で上流側ガス開閉弁が易流部へのガス流入を開放した状態では、排ガスは易流部に優先的に流入する。このため、パティキュレートの連続酸化が起こり難い低温条件下においてNOXは易流部のNOX吸着材に吸着される。
【0039】
上流側ガス開閉弁としては、易流部へのガス流入を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽するものであればよく、その構造や材質を特に限定するものではないが、後述する高温条件下でのパティキュレートの捕集を確実におこなうためには、この高温条件下での易流部への排ガス流れを確実に遮蔽できるものであることが望ましい。この上流側ガス開閉弁の開閉は既知の開閉機構でおこなうことができる。また、高温条件下および低温条件下の判断は、易流部あるいはフィルタ部に既知の温度センサを配置し、ここで検出した温度によっておこなうことができる。また、この上流側ガス開閉弁の開閉は、後述する下流側ガス開閉弁やバイパス切換弁の開閉動作と連動しておこなうものとすることもできる。
【0040】
ここで、易流部の基材は上述したようにストレートフロー型のものであってもよくウォールフロー型のものであっても良い。易流部の基材をウォールフロー型のものとする場合には、この低温条件下においてパティキュレートの少なくとも一部は易流部のフィルタ隔壁に捕集される。ここで、この易流部とフィルタ部との連通をガスだけでなくパティキュレートも流通可能なものとする場合には、パティキュレートの一部が易流部よりフィルタ部に流入し、フィルタ部のフィルタ隔壁に捕集される場合もある。
【0041】
また、易流部の基材をストレートフロー型のものとした場合には、この低温条件下においてはパティキュレートは易流部より流出する。易流部より流出したパティキュレートは、易流部とフィルタ部との連通がパティキュレート流通可能なものである場合など、パティキュレートの少なくとも一部がフィルタ部に流入し捕集される場合もあるし、また、パティキュレートの一部が易流部およびフィルタ部によって捕集されることなく流出する場合もある。この場合、後述するような第2のフィルタ部を設けることで、ここで流出するパティキュレートを回収することも可能である。
【0042】
高温条件下では、上流側ガス開閉弁が易流部へのガス流入を遮断する。易流部へのガス流入が遮断されることで、排ガスはフィルタ部に流入することとなり、この場合、フィルタ部にはパティキュレートとともに排ガス中のNOXも流入する。さらに、高温条件下では易流部に吸着されていたNOXが脱離され、このNOXもまたフィルタ部に流入する。このため、パティキュレートの連続酸化が起こりやすい高温条件下においては、パティキュレートの酸化・燃焼は、酸化触媒,高温条件下で排ガス中に存在するNOXとともに低温条件下でNOX吸着材によって吸着されていたNOXによってもおこなわれることとなり、効率の良いパティキュレートの酸化が行われこととなる。
【0043】
また、この構成によるとNOXはフィルタ部の外周部よりフィルタ部内部に流入することとなる。ウォールフロー型フィルタの外周部は、通常パティキュレートの酸化が起こり難くパティキュレートの堆積が進行し易い部位であるが、この構成によると、フィルタ部の外周部に捕集されたパティキュレートはさらにその外周側より流入したNOXによって酸化されることとなる。したがって、パティキュレートの堆積は抑制されることとなり、フィルタ隔壁の目詰まり等のパティキュレート堆積に由来する不具合が抑制されるこことなる。
【0044】
またさらに、易流部の排ガス流れ方向の下流側に、易流部からのガス流出を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽する下流側ガス開閉弁を設けることもできる。この下流側ガス開閉弁は、易流部からのガス流出を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽するものであるため、低温条件下において易流部のNOX吸着材に吸着されたNOXが高温条件下でより確実にフィルタ部に流入することとなり、パティキュレートの酸化はより効率よくおこなわれることとなる。この下流側ガス開閉弁は上流側ガス開閉弁と同様の形状に形成することができ、上流側ガス開閉弁と同様の開閉機構で開閉することができる。
【0045】
フィルタ部および易流部の排ガス流れ方向の下流部に、NOX吸蔵還元触媒が形成されたNOX浄化部を配置することもできる。NOXはパティキュレートを酸化するとともに自身はNOにまで還元されるが、フィルタ部および易流部の排ガス流れ方向の下流部にNOX浄化部を配置することで、このNOX浄化部に設けられたNOX吸蔵還元触媒によってさらにN2にまで還元されて浄化される。
【0046】
このNOX吸蔵還元触媒としては、既知のものを用いることができる。たとえば、K、Na、Li、Csなどのアルカリ金属、Ba、Caなどのアルカリ土類、La、Yなどの希土類から選ばれる少なくとも一つのNOX吸蔵材と上述した酸化触媒に用いられる触媒金属等を適宜組み合わせて用いることができる。
【0047】
また、NOX吸蔵材の量は、基材の体積1リットルあたり0.5g〜35gであることが好ましい。また、触媒金属の量は基材の体積1リットルあたり1g〜10gであることが好ましい。これはNOX浄化が良好に行われる範囲である。
【0048】
NOX吸蔵還元触媒の量は、基材の体積1リットルあたり50g〜300gであることが好ましい。これはNOXの浄化を良好におこなうことができる範囲である。
【0049】
また、NOX浄化部を配置しない場合は、フィルタ部のガス流出孔側にNOX吸蔵還元触媒を設けることが好ましい。ガス流入孔よりフィルタ部に流入した排ガスは、フィルタ隔壁を通過してガス流出孔側に移動する。この際、排ガス中のパティキュレートはフィルタ隔壁のガス流入孔側に捕集されることとなるため、ガス流出孔側にはパティキュレートの酸化・燃焼に用いられた後のNOXが流入する。したがって、このフィルタ部のガス流出孔側にNOX吸蔵還元触媒を設けることで、パティキュレートの酸化・燃焼を良好におこないつつ、NOXの浄化をおこなうことができる。
【0050】
また、フィルタ部および易流部の排ガス流れ方向の下流部に、ガス流通の際のパティキュレートのフィルタとなり前記酸化触媒層を有する第2のフィルタ部を設けることもできる。この第2のフィルタ部を設けることで、上述したように、パティキュレートの一部が易流部およびフィルタ部によって捕集されることなく流出する場合にもパティキュレートを回収すること可能となる。この第2のフィルタ部はフィルタ部と同様のものとすることができ、また、この第2のフィルタ部に設けられる酸化触媒はフィルタ部と同様のものである。
【0051】
ここで、NOX浄化部を設ける場合には、この第2のフィルタ部はNOX浄化部の排ガス流れ方向の上流側に配置することが好ましい。第2のフィルタ部に捕集されたパティキュレートを酸化する場合にもNOXによる気体−固体間の反応を用いる方が、パティキュレートの酸化が良好なものとなるからである。
【0052】
さらに、第2のフィルタ部と並列に、排ガス流通抵抗の小さいバイパス部を設けることができ、このバイパス部と第2のフィルタ部とはバイパス切換弁によって切換されるものとすることもできる。このバイパス切替弁は、フィルタ部や易流部より流出した排ガスの流路を第2のフィルタ部またはバイパス部方向に切替するものである。このバイパス切替弁は、第2のフィルタ部およびバイパス部の排ガス流れ方向の上流側のみに設けることもできるし、排ガス流れ方向の上流側と下流側の両方に設けることもできる。バイパス切替弁を排ガス流れ方向の下流側にも設ける場合は、第2のフィルタ部より流出した排ガスのバイパス部への逆流や、バイパス部より流出した排ガスの第2のフィルタ方向への逆流を防止することができるため、排ガス流れをより良好に制御することができる。
【0053】
高温条件下、すなわち易流部への排ガス流入が遮蔽されフィルタ部に排ガスが流入している状態では、パティキュレートはフィルタ部に捕集されるため、第2のフィルタ部でパティキュレートの捕集をおこなう必要はない。また、第2のフィルタ部はウォールフロー型に形成されていることから、第2のフィルタ部でパティキュレートの捕集をおこなう必要がない場合に排ガスを第2のフィルタ部に流通させることで、余計な圧損が発生し、高いエンジンの出力を得ることが難しい場合がある。したがって、エンジンの出力を向上させるためには余計な圧損をなるべく低減させる必要があるが、上述したように、排ガスの浄化のためには第2のフィルタ部を配置してパティキュレートの捕集をより確実におこなう方が好ましいという背反した事象がある。
【0054】
このため、第2のフィルタ部とは別に、第2のフィルタ部よりも排ガス流通抵抗の低いバイパス部を設けて、第2のフィルタ部が不要となる高温条件下において排ガスの流路をバイパス部方向に切替することで、第2のフィルタ部が不要となる条件下での余計な圧損を低減させて、高いエンジンの出力を得ることが可能となる。
【0055】
バイパス部は単に管状の形状を有し管内部が排ガス流路となるようなものでも良いし、この管内部にNOX吸蔵還元触媒等を担持させたものでも良い。あるいはこのバイパス部をストレートフロー型のものや排ガス流通抵抗が非常に低いウォールフロー型のものとし、さらにNOX吸蔵還元触媒等を担持させることも可能である。
【0056】
ここで、第2のフィルタ部にパティキュレートが捕集されている場合は、このパティキュレートを酸化・燃焼させる必要がある。この場合、バイパス部に排ガスを流通させると第2のフィルタ部の温度はパティキュレートを酸化・燃焼させるのに十分なものとならない。したがって、第2のフィルタ部にパティキュレートが堆積しているような場合は、バイパス開閉弁を第2のフィルタ部方向に切替することによって、ここに堆積しているパティキュレートを酸化・燃焼させた後にバイパス切替弁をバイパス部方向に切替することが好ましい。
【0057】
第2のフィルタ部へのパティキュレートの堆積は、第2のフィルタ部の排ガス流れ方向の上流側と下流側とにそれぞれ圧力センサを配置して、この2つの圧力センサから検出される圧力の差(差圧)を測定することで、検出することが可能である。ここで用いられる圧力センサは既知のものを用いることができる。また、このバイパス切替弁の切替と、上述した上流側ガス開閉弁および下流側ガス開閉弁の開閉動作とは連動しておこなうものとすることもできる。
【0058】
また、上述した構成以外にも、フィルタ部でのパティキュレートの排ガス流れの上流側と排ガス流れの下流側とに各々圧力センサを設けて、フィルタ部の圧損を測定し、この圧損をバイパス切替弁の切替に反映させることもできる。すなわち、フィルタ部の基材を細孔径の比較的大きなもので形成するような場合、このフィルタ部へのパティキュレートの堆積量が少ない条件下では、一部のパティキュレートがこのフィルタ部のフィルタ隔壁を通り抜ける場合がある。この場合、バイパス切替弁を第2のフィルタ部方向に切替して排ガスを第2のフィルタ部に流入させ、この第2のフィルタ部によって、第1のフィルタ部を通り抜けたパティキュレートを捕集することもできる。この場合、一定量のパティキュレートがフィルタ部に堆積すると、フィルタ部からのパティキュレートの通り抜けは低減するため、バイパス切替弁をバイパス部方向に切替することで第2のフィルタ部に由来する圧損を低減させることができる。
【0059】
本発明のディーゼル排ガス浄化用装置は、空燃比でリーン雰囲気にある一般のディーゼル排ガス中でも用いることができるが、常時はリーン雰囲気にあり、間欠的にリッチ雰囲気となるように制御された排ガス中で用いることが望ましい。リーン雰囲気下では捕集されたパティキュレートが酸化触媒あるいはNOXで酸化・燃焼して除去されるとともに、排ガス中のHCおよびCOが浄化され、かつNOX吸蔵還元触媒にNOXが吸蔵される。そして間欠的にリッチ雰囲気とすることでNOX吸蔵還元触媒からNOXが脱離・還元され、NOX吸蔵還元触媒層のNOX吸蔵能を回復することができ、高いNOX浄化能を長期間維持することができる。このように間欠的にリッチ雰囲気となるようにするには、空燃比を制御してもよいし、排ガス中に燃料などの還元成分を導入することも好ましい。
【0060】
上述した空燃比の制御や上流側ガス開閉弁,下流側ガス開閉弁およびバイパス切替弁の制御は別途設けた演算手段によっておこなうことができる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面を基にして説明する。
【0062】
(実施例1)
本発明の実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置は、ストレートフロー型の易流部をフィルタ部の周方向の外周側に配置したものである。また、本実施例1において易流部の排ガス流れ方向の上流側には上流側ガス開閉弁が設けられ、排ガス流れ方向の下流側には下流側ガス開閉弁が設られている。本実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置の上流側ガス開閉弁および下流側ガス開閉弁の閉状態における模式断面図を図1に示し、本実施例1の上流側ガス開閉弁の開状態の正面図を図2に,閉状態の正面図を図3に示し、開状態の側面図を図4に示す。
【0063】
本実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置1は、ウォールフロー型のフィルタ部2と、このフィルタ部2の周方向の外周側に配置されたストレートフロー型の易流部3とを有する。本実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置1は断面φ103mm、長さ155mmに形成されている。このうち易流部3の部分の基材は、容積0.65リットル,気孔率40%,セル密度62cells/cm2であり、セル上流端4とセル下流端5とがそれぞれ開口して壁厚0.1mmの隔壁6によって区画されたガス流通孔7が形成されているコージェライト製多孔質セラミックハニカム構造体よりなる。本実施例1において、易流部3の基材の各隔壁6の表面および/または内部には、ZrO2からなるNOX吸着材とPtコロイドと硝酸Pdの混合物(Pt−Pd複合コロイド)からなる触媒金属が担持されている。本実施例1の易流部3において、NOX吸着材および触媒金属の担持量は、基材の体積1リットルあたりZrO2240g,Ptコロイド2g,硝酸Pd2gであった。
【0064】
フィルタ部2の部分の基材は、容積0.65リットル,気孔率65%,セル密度46.5cells/cm2のコージェライト製多孔質セラミックハニカム構造体であり、セル上流端8とセル下流端9とがそれぞれ目詰めされてガス流入孔10およびガス流出孔11が形成されているものである。また、ガス流入孔10とガス流出孔11とは壁厚0.3mmのフィルタ隔壁12によって区画されている。また、本実施例1において、フィルタ部2のガス流入孔10を区画するフィルタ隔壁12のガス流入孔10側の表面および/または内部には、CeO2からなる多孔質酸化物とFeからなる触媒金属が担持されている。本実施例1のフィルタ部2において、多孔質酸化物および触媒金属の担持量は、基材の体積1リットルあたりCeO2150g,Fe7.5gであった。
【0065】
また、易流部3とフィルタ部2とは体積の比率が1:1となるように形成されている。
【0066】
本実施例1において、易流部3とフィルタ部2とは同心円状に形成されたものであり、このうち易流部3はドーナッツ状に形成されている。本実施例1において、上流側ガス開閉弁(弁1)と下流側ガス開閉弁(弁2)とは同じ形状に形成されている。弁1を例に挙げると、この弁1は同一形状の2枚の弁片13よりなる。各々の弁片13は半円平板の円心部分が半円状に切り欠きされた形状に形成され、2枚の弁片13を合わせると易流部3に対応したドーナッツ状の平板となるように形成されている。各々の弁片13は、易流部3に対して円直径部分14を軸として回動するように配置されている。したがって、閉状態において易流部3は各々の弁片13によって遮蔽され、また、開状態において各々の弁片13の円直径部分14を軸とする回動によって開放されることとなる。
【0067】
易流部3の所定位置には熱電対からなる温度センサ15が設けられている。この温度センサ15により測定された温度条件にしたがって上述した弁1および弁2の回動を制御する。すなわち、温度センサ15によって測定された易流部3内の温度は図示しない演算部に送られる。ここで、易流部3内の温度が350℃以上の場合を高温条件とし350℃未満の場合を低温条件と判断して、図示しない回動モータの駆動をおこなう。高温条件時には回動モータの駆動により円直径部分14を中心として各々の弁片13を易流部3を遮断する方向に回動させる。また、低温条件時には回動モータの駆動により各々の弁片13を易流部3を開放する方向に回動させる。
【0068】
以下に本実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置1の易流部3およびフィルタ部2の製作方法を示す。
【0069】
本実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置1の易流部3とフィルタ部2とは、別々にコートをおこない焼成した後に一体に組み合わせられるものである。このうちフィルタ部2は以下のように制作された。
(1)Fe(NO33・9H2O(市販品,純度=99wt%)192.3gを純粋に溶かした水溶液1リットルを調製した。
(2)CeO2粉末500gを(1)の水溶液に入れ、120℃で攪拌した。
(3)6時間後、120℃の乾燥機の中に入れて水分をとばした。
(4)乾燥後、500℃で2時間焼成し、その後に解砕した。
(5)(4)で得られたFe(5wt%)/CeO2の粉末526.3gおよびセリアゾル100gを純水に入れコート液を調製した。このとき、固形分量が20wt%となるようにした。
(6)フィルタ部2の基材を(5)で調製したコート液に2分間浸漬させた。
(7)フィルタ部2の基材を、浸漬させた方向から5秒間吸引し、その後逆方向から1秒間吸引した。
(8)浸漬・吸引後フィルタ部2の基材を室温で乾燥させた後に120℃で乾燥させ、さらに250℃で乾燥させ、乾燥終了後秤量した。
(9)基材1リットルあたりのコート量が150gになるまで(6)〜(8)を繰り返した。
(10)基材1リットルあたりのコート量が150gになったら、500℃で2時間の焼成をおこなった。
【0070】
(1)〜(10)の工程によって、フィルタ部2の基体にFeおよびCeO2が担持されて、ディーゼル排ガス浄化用装置1のフィルタ部2が制作された。
【0071】
本実施例では上述したように、最初にFe/CeO2を調製する乾固担持法によってCeO2へのFeの担持をおこなったが、担持法はこれに限定されるものではなく、例えばイオン交換等によっておこなうこともできる。
【0072】
易流部3の制作は以下のようにおこなった。
(11)Ptコロイド薬液(Pt=4.0wt%,PVP使用)150gを純水に溶かした水溶液1リットルを調製した。
(12)(1)のPtコロイド水溶液にZrO2粉末600gを入れて120℃で攪拌した。
(13)6時間後、120℃の乾燥機の中に入れて水分をとばした。
(14)乾燥後、500℃で2時間焼成し、その後に解砕した。
(15)(14)で得られた粉末606gおよびジルコニアゾル200gを混ぜた水溶液を調製した。このとき、固形分量が40wt%となるようにした。
(16)易流部3の基材に(15)で調製したコート液を流し込み、逆側から吸引した。
(17)コート量が242g/Lとなるまでコートできたら、120℃で乾燥しその後500℃で2時間焼成した。。
(18)硝酸Pd薬液(Pd=4.5wt%)44.4gを純水に溶かした水溶液1リットルを調製した。
(19)(17)でコートされた易流部3の基材を90℃に保った(18)の水溶液中に繰り返し浸漬し取りだした。
(20)約3時間後、水溶液の色が透明になったら易流部3を取り出し、120℃で乾燥させ500℃で2時間焼成した。
【0073】
(11)〜(20)の工程によって、易流部3の基体にコロイドPt,硝酸PdおよびZrO2が担持されて、ディーゼル排ガス浄化用装置1の易流部3が制作された。
【0074】
本実施例では乾固担持法によってZrO2へのコロイドPtの担持をおこなったが、担持法はこれに限定されるものではなく、例えばイオン交換等によっておこなうこともできる。
【0075】
(1)〜(10)の工程で制作されたフィルタ部2と(11)〜(20)の工程で制作された易流部3とを組み合わせ一体化させて本実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置1のフィルタ部2と易流部3とを得た。
【0076】
本実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置1における排ガスの浄化機構を以下に説明する。
【0077】
本実施例1において、易流部3はフィルタ部2よりもガス流通抵抗が低く形成されている。したがって、易流部3にはフィルタ部2よりも優先的に排ガスが流入する。
【0078】
低温条件下において、排ガスがガス流通孔7より易流部3に流入すると、易流部3に担持されたNOX吸着材によって排ガス中のNOXが吸着される。一方、排ガス中のパティキュレートは易流部3より流出して、易流部3の排ガス流れ方向の下流部に配置されているフィルタ部2のガス流入孔10に流入する。ガス流入孔10に流入したパティキュレートは、フィルタ隔壁12に捕集され、フィルタ隔壁12に担持されている酸化触媒によって一部が酸化・燃焼される。
【0079】
高温条件下においては、酸化触媒の触媒活性は高くなりフィルタ部2のフィルタ隔壁12に捕集されているパティキュレートの連続酸化がおこなわれる。
【0080】
また、高温条件下において、弁1および弁2が易流部3へのガス流入および易流部3からのガス流出を遮蔽するため、排ガスはフィルタ部2に流入することとなる。したがって、排ガス中のパティキュレートがフィルタ隔壁12に捕集されると同時に、フィルタ部2に捕集されたパティキュレートの酸化・燃焼が排ガス中のNOXによっておこなわれる。
【0081】
さらに、易流部3のNOX吸着材に吸着されていたNOXは放出されて易流部3より流出し、ガス流入孔10よりフィルタ部2に流入するため、このNOXによってもパティキュレートの酸化・燃焼がおこなわれる。したがって、パティキュレートの酸化・燃焼は、酸化触媒とNOXとの両方の作用によっておこなわれることとなり、パティキュレートの燃焼は効率の良いものとなる。
【0082】
そして、この構成によると、高温条件下において易流部3より流出する排ガスは下流側ガス開閉弁によって誘導されて確実にフィルタ部2に流入する。したがって、低温条件下でNOX吸着材に吸着されたNOXは高温条件下で確実にフィルタ部2に流入することとなり、排ガス中のNOXを気体酸化剤として無駄なく利用することが可能となる。
【0083】
また、本実施例1において易流部3はフィルタ部2の周方向の外周側に配置されているため、NOX吸着材より放出されたNOXは易流部3と接するフィルタ部2の外周部よりフィルタ部2に流入する。したがって、パティキュレートの酸化はフィルタ部2の外周部より行われることとなり、フィルタ部2の外周部に堆積したパティキュレートはこのNOXによって良好に酸化・燃焼されることとなる。このため、本実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置1においては、パティキュレートの堆積が生じやすいフィルタ部2の外周部においてもパティキュレートの堆積は抑制され、上述した効果に加えて、ディーゼル排ガス浄化用装置1のパティキュレート堆積による劣化を抑制することが可能となる。
【0084】
さらに、本実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置1において、フィルタ部2の周方向の外周部に易流部3が配置されていることから、この易流部3がフィルタ部2の断熱材としての作用も有する。このため、比較的低温となり易いフィルタ部2外周部の温度は高温に保たれ易くなり、外周部におけるパティキュレートの酸化・燃焼はより生じ易いものとなり、パティキュレートの堆積はより抑制されることとなる。
【0085】
(実施例2)
本発明の実施2のディーゼル排ガス浄化用装置は、ウォールフロー型の易流部を実施例1と同じフィルタ部の周方向の外周側に配置したものである。また、本実施例2のディーゼル排ガス浄化用装置は、易流部の構造以外は実施例1と同様に形成されたものである。本実施例2のディーゼル排ガス浄化用装置の模式断面図を図5に示す。
【0086】
本実施例2のディーゼル排ガス浄化用装置16において、易流部17の基材としては、コージェライト製多孔質セラミックハニカム構造体を用いた。この多孔質セラミックハニカム構造体は容積0.65リットル,気孔率70%,セル密度46.5cells/cm2であり、セル上流端18とセル下流端19とがそれぞれ目詰めされてガス流入孔20およびガス流出孔21が形成されているものである。また、ガス流入孔20とガス流出孔21とは壁厚0.3mmのフィルタ隔壁22によって区画されている。また、本実施例2において、易流部17のガス流入孔20およびガス流出孔21を区画するフィルタ隔壁22の表面および/または内部には、実施例1と同じNOX吸着材および触媒金属が実施例1と同量担持されている。
【0087】
本実施例2のディーゼル排ガス浄化用装置16は、易流部17がウォールフロー型に形成されていることから、易流部17によってもパティキュレートの捕集がおこなわれること以外は実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置16と同様の排ガスの浄化機構を有するものである。また、易流部17に捕集されたパティキュレートの酸化・燃焼は、低温時に流入するNOXおよび高温時に放出されるNOXの一部によっておこなわれる。
【0088】
(実施例3)
本発明の実施例3のディーゼル排ガス浄化用装置は、実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置のフィルタ部のガス流出孔を区画するフィルタ隔壁に、さらにNOX吸蔵還元触媒を設けたものである。本実施例3のディーゼル排ガス浄化用装置の模式断面図を図6に示す。
【0089】
本実施例3のディーゼル排ガス浄化用装置23はNOX吸蔵還元触媒を有するものであり、このNOX吸蔵還元触媒はBaよりなるNOX吸蔵剤とPtよりなる触媒金属とより構成されるものである。このNOX吸蔵還元触媒はフィルタ部24のガス流出孔25を区画するフィルタ隔壁26の表面および内部に、基材の体積1リットルあたり27.4gのBaおよび2gのPtが担持されて形成されている。
【0090】
また、本実施例3においてNOX吸蔵還元触媒は、実施例1における酸化触媒と同様の工程で形成されている。
【0091】
本実施例3のディーゼル排ガス浄化用装置23は、パティキュレートを酸化・燃焼することでNOXより生成したNOが、NOX吸蔵還元触媒でN2にまで還元されて浄化されること以外は、実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置23と同様の排ガスの浄化機構を有するものである。
【0092】
(実施例4)
本発明の実施例4のディーゼル排ガス浄化用装置は、実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置の排ガス流れ方向の下流側に、さらにNOX浄化部を配置したものである。本実施例4のディーゼル排ガス浄化用装置の模式断面図を図7に示す。
【0093】
本実施例4のディーゼル排ガス浄化用装置27のNOX浄化部28は、易流部29と同じ基材を用い、この基材に実施例3と同じNOX吸蔵還元触媒を設けたものである。
【0094】
本実施例4において、NOX吸蔵還元触媒は基材の体積1リットルあたり27.4gのBaおよび2gのPtが担持されて形成されている。
【0095】
本実施例4のディーゼル排ガス浄化用装置27は、パティキュレートを酸化・燃焼することでNOXより生成したNOが、NOX吸蔵還元触媒でN2にまで還元されて浄化されること以外は、実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置27と同様の排ガスの浄化機構を有するものである。
【0096】
また、本実施例4のディーゼル排ガス浄化用装置27は実施例3のディーゼル排ガス浄化用装置27とは同様の作用を有するが、実施例3のディーゼル排ガス浄化用装置27よりも圧損を低減させたものである。すなわち、本実施例4ではNOX吸蔵還元触媒がフィルタ部30とは別に設けたストレートフロー型のNOX浄化部28に形成されている。ストレートフロー構造は圧損をほとんど生じないことから、このストレートフロー型のNOX浄化部28にNOX吸蔵還元触媒を設け、フィルタ部30の触媒コート量を低減させることで、ディーゼル排ガス浄化用装置27に生じる圧損の総量を低減させることが可能となる。
【0097】
(実施例5)
本発明の実施例5のディーゼル排ガス浄化用装置は、実施例4のディーゼル排ガス浄化用装置のNOX浄化部の直前に第2のフィルタ部とバイパス部とを並列に配置し、第2のフィルタ部およびバイパス部の排ガス流れ方向の上流側と、下流側とに各々バイパス切替弁を配置したものである。本実施例5のディーゼル排ガス浄化用装置の模式断面図を図8に示す。
【0098】
本実施例5において、第2のフィルタ部31の基材としては、断面φ103mm、長さ155mmのコージェライト製多孔質セラミックハニカム構造体を用いた。この多孔質セラミックハニカム構造体は容積1.3リットル,気孔率65%,セル密度46.5cells/cm2であり、セル上流端32とセル下流端33とがそれぞれ目詰めされてガス流入孔34およびガス流出孔35が形成されているものである。また、ガス流入孔34とガス流出孔35とは壁厚0.3mmのフィルタ隔壁36によって区画されている。また、本実施例5において、第2のフィルタ部31のガス流入孔34を区画するフィルタ隔壁36の表面および内部には、CeO2からなる多孔質酸化物とFeからなる触媒金属が担持されている。本実施例5の第2のフィルタ部31において、多孔質酸化物および触媒金属の担持量は、基材の体積1リットルあたりCeO2150g,Fe7.5gであった。
【0099】
また、本実施例5においてバイパス部37としてはサス製の管を用いた。バイパス部37と第2のフィルタ部31との分岐部にはバイパス切替弁38が設けられている。このうちバイパス部37およびフィルタ部39の排ガス流れ方向の上流側に配置されるバイパス切替弁38を弁3とし、下流側に配置されるバイパス切替弁38を弁4とする。この弁3および弁4の動作は、弁1および弁2の動作と関連して制御される。
【0100】
本実施例5においては、実施例1と同じ位置に設けられた温度センサ40以外にもフィルタ部39の排ガス流れ方向の上流側および下流側に第1の圧力センサ41が設けられ、第2のフィルタ部31の排ガス流れ方向の上流側および下流側に第2の圧力センサ42が設けられている。
【0101】
第1の圧力センサ41はフィルタ部39の圧損を測定するものであり、第2の圧力センサ42は第2のフィルタ部31の圧損を測定するものである。ここで測定した圧力は図示しない演算部に送られ、この演算部で温度条件とも関連して制御される。この制御機構を示すフローチャートを図9に示し、以下に本実施例5のディーゼル排ガス浄化用装置の浄化機構を説明する。
【0102】
エンジンの動作がスタートすると、まず、易流部43の温度センサ40の値が演算部にて読み込まれ(ステップ100)、温度が350℃以上か否かの判断がおこなわれる(ステップ101)。温度が350℃以下の低温条件の場合では、ステップ102によって弁1および弁2は開状態となり、易流部43への排ガスの流入は開放される。このとき、弁3および弁4は第2のフィルタ部31方向に切替される。このため、易流部43より流出した排ガスは第2のフィルタ部31方向に誘導され、この第2のフィルタ部31によって易流部43より流出したパティキュレートの捕集がおこなわれる。所定時間が経過した後に、再度ステップ100に戻り、易流部43の温度センサ40の値が演算部にて読み込まれ、ステップ101によって温度が350℃以上か否かの判断がおこなわれる。このステップ100および101は、温度が350℃以上となるまで繰り返しおこなわれる。
【0103】
温度が350℃以上の高温条件の場合では、ステップ103に進み、弁1および弁2が閉状態となり、易流部43が遮蔽されてフィルタ部39への排ガスの流入がおこなわれ、フィルタ部39によるパティキュレートの捕集と燃焼とがおこなわれる。このとき同時に易流部43のNOX吸着材に吸着されていたNOXがフィルタ部39方向に流入する。この場合弁3および弁4は第2のフィルタ部31方向に切替されて、フィルタ部39より流出した排ガス流れを第2のフィルタ部31方向に誘導する。この後に、ステップ104によってフィルタ部39前後に配置された圧力センサの値が演算部にて読み込まれ、ステップ105によるフィルタ部39前後での差圧、すなわちフィルタ部39の圧損が所定の値より大きいか否かの判断がおこなわれる。
【0104】
本実施例において、フィルタ部39はパティキュレートが多少堆積した状態で使用することを想定して形成されており、使用初期段階のパティキュレートの体積が非常に少ない状態においては、フィルタ部39からのパティキュレートの多少のすり抜けが発生する。したがって、フィルタ部39前後での差圧が所定の値より小さい場合、すなわち、フィルタ部39へのパティキュレートの堆積量が少なくフィルタ部39からのパティキュレートのすり抜けが発生する場合には、ステップ106により弁1および弁2の閉状態は維持され、かつ、第2のフィルタ部31におけるパティキュレートの捕集は継続される。ここでいう差圧の所定の値とは、気孔率や平均細孔径等のフィルタ部39の構造によって適宜設定されるものである。所定時間が経過した後に、再度ステップ104に戻り、フィルタ部39前後の圧力センサの値が演算部にて読み込まれ、ステップ105により差圧が所定の値より大きいか否かの判断がおこなわれる。このステップ104および105は、差圧が所定の値を超えるまで繰り返しおこなわれる。
【0105】
フィルタ部39前後の差圧が所定の値を超える場合、ステップ107に進み、第2のフィルタ部31前後の圧力センサの値が演算部にて読み込まれ、ステップ108によって第2のフィルタ部31前後での差圧、すなわち第2のフィルタ部31の圧損が所定の値より大きいか否かの判断がおこなわれる。ここでいう差圧とは、第2のフィルタ部31へのパティキュレートの堆積が進行しこの第2のフィルタ部31の再生が必要となるような差圧のことである。差圧が所定の値より大きい場合、ステップ109によって第2のフィルタ部31への排ガスの流入は継続される。したがって、第2のフィルタ部31は高温条件となり、この第2のフィルタ部31に捕集されたパティキュレートの酸化が行われる。所定時間が経過した後に、再度ステップ107に戻り、第2のフィルタ部31前後の圧力センサの値が演算部にて読み込まれ、ステップ108による差圧が所定の値より大きいか否かの判断がおこなわれる。このステップ107および108は、差圧が所定の値以下となるまで繰り返しおこなわれる。
【0106】
第2のフィルタ部31前後の差圧が所定の値以下である場合、第2のフィルタ部31へのパティキュレートの堆積はないため、ステップ110に進み、弁2はバイパス部37方向に切り替えられる。このため、ディーゼル排ガス浄化用装置の圧損はさらに低減される。また、所定時間が経過した後に、再度ステップ100に戻り、ステップ100からステップ110が繰り返される。
【0107】
(比較例)
本比較例のディーゼル排ガス浄化用装置は、ウォールフロー型の基体に酸化触媒を設けたフィルタ部と、実施例5のNOX浄化部と同じNOX浄化部を有するものである。本比較例のディーゼル排ガス浄化用装置の模式断面図を図10に示す。
【0108】
本比較例のディーゼル排ガス浄化用装置において、フィルタ部44の基材としては、断面φ103mm、長さ155mmのコージェライト製多孔質セラミックハニカム構造体を用いた。この多孔質セラミックハニカム構造体は容積1.3リットル,気孔率65%,セル密度46.5cells/cm2であり、セル上流端45とセル下流端46とがそれぞれ目詰めされてガス流入孔47およびガス流出孔48が形成されているものである。また、ガス流入孔47とガス流出孔48とは壁厚0.3mmのフィルタ隔壁49によって区画されている。また、本比較例において、フィルタ部44のガス流入孔47を区画するフィルタ隔壁49の表面および内部には、CeO2からなる多孔質酸化物とFeからなる触媒金属が担持されている。本比較例のフィルタ部44において、多孔質酸化物および触媒金属の担持量は、基材の体積1リットルあたりCeO2150g,Fe7.5gであった。
【0109】
本比較例のディーゼル排ガス浄化用装置においてはこのフィルタ部44でパティキュレートの捕集がおこなわれるとともに、フィルタ部44に設けられた酸化触媒によってパティキュレートの酸化・燃焼がおこなわれる。そして、フィルタ部44より流出した排ガスは、このフィルタ部44の排ガス流れ方向の下流側に配置されているNOX浄化部50に流入し、このNOX浄化部で排ガス中のNOXは還元される。
【0110】
(ディーゼル排ガス浄化用装置性能試験)
実施例5および比較例のディーゼル排ガス浄化用装置について、ディーゼル排ガス浄化用装置性能試験を行った。試験は以下の通り行った。
【0111】
(I)まず、実施例および比較例のディーゼル排ガス浄化用装置の排ガス流れ方向の上流側に1.8Lコモンレールディーゼルエンジンを接続した。このエンジンをエンジン回転数2000rpmで駆動して、ディーゼル排ガス浄化用装置にこのエンジンより排出される排ガスを流通させた。このとき温度条件は100℃の低温条件としたことにより、実施例6のディーゼル排ガス浄化用装置においては上流側ガス開閉弁および下流側ガス開閉弁を開状態として、易流部への排ガス流入を開放した。この状態で排ガスを30分間流通させるとともにNOX浄化部より流出したNOXの総量を測定し、このNOXの総量と別途測定した30分間に流通する排ガス中のNOXの総量とにより100℃の温度条件におけるNOX浄化率を算出した。
【0112】
(II)次にエンジン回転数はそのままで温度条件を350℃の高温条件とした。このとき実施例6のディーゼル排ガス浄化用装置においては上流側ガス開閉弁および下流側ガス開閉弁は閉状態であり、易流部への排ガス流入は遮断されて排ガスはフィルタ部へ流入する。このとき、リーン/リッチ=55sec/5secを1サイクルとした雰囲気変動操作をおこない、この1サイクルあたりのNOX浄化部より流出したNOXの総量を測定し、このNOXの総量と(I)と同じ30分間に流通する排ガス中のNOXの総量とにより1サイクルあたりのNOX浄化率を求めた。また、この操作を400℃の温度条件においてもおこなった。
【0113】
(III)(II)の操作終了後、実施例6のディーゼル排ガス浄化用装置においてはフィルタ部と易流部との一体型フィルタを、比較例のディーゼル排ガス浄化用装置においてはフィルタ部を取り外し、電気炉で600℃,3時間の温度条件で焼成をおこなった。この焼成でフィルタ部に堆積したパティキュレートが酸化・燃焼しフィルタの再生がおこなわれた。焼成後各々のディーゼル排ガス浄化用装置を組立した。
【0114】
(IV)(I)の操作を再度行い、そののちに100℃の温度条件でフィルタ部に30分間排ガスを流入させて、パティキュレートを堆積させた。
【0115】
(V)フィルタ部にパティキュレートが堆積したディーゼル排ガス浄化用装置に、350℃,入りガスのパティキュレート量0.5g/L・hrの条件で排ガスの流通を開始した。流通開始後、入りガスのパティキュレート量を増加させ、フィルタ部の圧損上昇率が0となるパティキュレート量を測定してフィルタ部のパティキュレート酸化速度を求めた。ガス流通条件はトルク,燃料噴射量,流入空気量を調整することで設定した。
【0116】
(II)の操作で得られたNOX浄化率を図11に示す。また、(V)の操作で得られたフィルタ部のパティキュレート酸化速度を図12に示す。
【0117】
図14に示されるように、実施例のディーゼル排ガス浄化用装置は比較例よりも高いパティキュレート酸化速度を示す。これは、100℃の低温条件下でNOX吸着材により吸着されたNOXが350℃の高温条件下で放出され、フィルタ部内に侵入したことで、このNOXによってフィルタ部の外周部に堆積したパティキュレートが酸化・燃焼されたためであると考えられる。
【0118】
また、図13に示すように、実施例のディーゼル排ガス浄化用装置は比較例と比べて100℃の温度条件下におけるNOX浄化率が向上している。これは、NOX吸着材によってNOXが吸着されたためであると考えられる。
【0119】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明のディーゼル排ガス浄化用装置によると、易流部とフィルタ部とを設け、易流部で吸着したNOXをフィルタ部に供給する構成としたことでNOXを無駄なく利用することができ効率の良いパティキュレートの酸化を行うことができる。
【0120】
さらに、フィルタ部の周方向の外周側に易流部を配置する場合には、フィルタ部におけるパティキュレートの酸化は周方向の外周部よりおこなわれる。このため、パティキュレートが堆積しやすい外周部においてもパティキュレートの酸化が良好におこなわれるため、フィルタ部の圧損の上昇を抑制することができ、また、パティキュレート堆積によるフィルタの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1のディーゼル排ガス浄化用装置の上流側ガス開閉弁および下流側ガス開閉弁の閉状態における模式断面図である。
【図2】本発明の実施例1の上流側ガス開閉弁の開状態の正面図である。
【図3】本発明の実施例1の上流側ガス開閉弁の閉状態の正面図である。
【図4】本発明の実施例1の上流側ガス開閉弁の開状態の側面図である。
【図5】本発明の実施例2のディーゼル排ガス浄化用装置の模式断面図である。
【図6】本発明の実施例3のディーゼル排ガス浄化用装置の模式断面図である。
【図7】本発明の実施例4のディーゼル排ガス浄化用装置の模式断面図である。
【図8】本発明の実施例5のディーゼル排ガス浄化用装置の模式断面図である。
【図9】本発明の実施例5のディーゼル排ガス浄化用フィルタ型触媒における各弁の制御機構を示すフローチャートである。
【図10】比較例のディーゼル排ガス浄化用装置の模式断面図である。
【図11】本発明のディーゼル排ガス浄化用装置と比較例のディーゼル排ガス浄化用装置とのNOX浄化率を表すグラフである。
【図12】本発明のディーゼル排ガス浄化用装置と比較例のディーゼル排ガス浄化用装置とのフィルタ部のパティキュレート酸化速度を表すグラフである。
【符号の説明】
1:ディーゼル排ガス浄化用装置 2:フィルタ部 3:易流部 4:セル上流端 5:セル下流端 6:隔壁 7:ガス流通孔 8:セル上流端 9:セル下流端 10:ガス流入孔 11:ガス流出孔 12:フィルタ隔壁 13:弁片14:円直径部分 15:温度センサ
16:ディーゼル排ガス浄化用装置 17:易流部 18:セル上流端 19:セル下流端 20:ガス流入孔 21:ガス流出孔 22:フィルタ隔壁
23:ディーゼル排ガス浄化用装置 24:フィルタ部 25:ガス流出孔 26:フィルタ隔壁
27:ディーゼル排ガス浄化用装置 28:NOX浄化部 29:易流部 30:フィルタ部
31:第2のフィルタ部 32:セル上流端 33:セル下流端 34:ガス流入孔 35:ガス流出孔 36:フィルタ隔壁 37:バイパス部 38:バイパス切替弁 39:フィルタ部 40:温度センサ 41:第1の圧力センサ 42:第2の圧力センサ 43:易流部
44:フィルタ部 45:セル上流端 46:セル下流端 47:ガス流入孔
48:ガス流出孔 49:フィルタ隔壁 50:NOX浄化部

Claims (4)

  1. 排ガス流路に設けられるディーゼル排ガス浄化用装置であって、ガス流通の際のパティキュレートのフィルタとなるフィルタ部と、該フィルタ部とガス流通可能に連通している易流部とを有し、
    該易流部における基材のガス流通抵抗は、該フィルタ部における基材のガス流通抵抗よりも低く、
    該フィルタ部には酸化触媒が設けられ、該易流部にはNOX吸着材が担持され
    該易流部は、該フィルタ部の周方向の外周側に配置されて該フィルタ部と接する壁面で該フィルタ部に対してガス流通可能に連通し、
    該易流部の排ガス流れ方向の上流側には該易流部へのガス流入を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽する上流側ガス開閉弁が設けられていることを特徴とするディーゼル排ガス浄化用装置。
  2. 排ガス流路に設けられるディーゼル排ガス浄化用装置であって、ガス流通の際のパティキュレートのフィルタとなるフィルタ部と、該フィルタ部とガス流通可能に連通している易流部とを有し、
    該易流部における触媒コート量は、該フィルタ部における触媒コート量よりも少なく、
    該フィルタ部には酸化触媒が設けられ、該易流部にはNOX吸着材が担持され
    該易流部は該フィルタ部の周方向の外周側に配置されて該フィルタ部と接する壁面で該フィルタ部に対してガス流通可能に連通し、
    該易流部の排ガス流れ方向の上流側には該易流部へのガス流入を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽する上流側ガス開閉弁が設けられていることを特徴とするディーゼル排ガス浄化用装置。
  3. 排ガス流路に設けられるディーゼル排ガス浄化用装置であって、ガス流通の際のパティキュレートのフィルタとなるフィルタ部と、該フィルタ部とガス流通可能に連通している易流部とを有し、
    該易流部は該フィルタ部の排ガス流れ方向の上流側に配置され、
    該フィルタ部には酸化触媒が設けられ、該易流部にはNOX吸着材が担持され
    該易流部は該フィルタ部の周方向の外周側に配置されて該フィルタ部と接する壁面で該フィルタ部に対してガス流通可能に連通し、
    該易流部の排ガス流れ方向の上流側には該易流部へのガス流入を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽する上流側ガス開閉弁が設けられていることを特徴とするディーゼル排ガス浄化用装置。
  4. さらに、前記易流部の排ガス流れ方向の下流側には前記易流部からのガス流出を低温条件下で開放し高温条件下で遮蔽する下流側ガス開閉弁が設けられている請求項1〜3のいずれかに記載のディーゼル排ガス浄化用装置。
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