JP4220886B2 - 誘電体共振器及び誘電体フィルタ並びに無線通信機器 - Google Patents
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Description
ミリ波帯における受動素子の課題は、小型化、低コスト化である。低コスト化に対して問題となっているのは、小さな寸法に対する量産可能な加工精度である。通常、マイクロ波帯で大量生産している技術をミリ波へ応用しようとすると部品が小さくなりすぎるため、量産可能な加工精度では、寸法のばらつきが大きくなってしまう。このため、部品の単価が高いという結果となってしまっていた。
前記誘電体共振器をミリ波帯へ用いるためには、開口部の直径を小さくする必要があるが、開口部が小さくなればなるほど、上下の開口部の軸ずれに対する共振周波数の設計値からのずれが大きくなると予想される。
また、本発明は、製造工程を簡略化でき、低コスト化できる誘電体共振器及び誘電体フィルタ並びにこの誘電体フィルタを用いた無線通信機器を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の誘電体共振器は、下部導体及び上部導体と、前記下部導体の上に接触して配置された誘電体基板と、誘電体基板の上に接触して配置された中間導体とを有し、前記中間導体から前記上部導体までが、支持部材を介して隔てられてその間に空間が形成され、前記中間導体に開口部を形成し、この開口部を介して前記誘電体基板を前記空間に露出させているものである。
前記開口部の形状は円形であってもよい。
使用する周波数において、電波を空間の中に閉じこめて共振させるためには、誘電体共振器の周囲は導体で遮蔽されるか、又は遮断領域となる構造に上下導体などが配置された構造であることが必要である。前者の例として、前記支持部材が筒状導体、例えば円筒状導体であり、前記上部導体が筒状導体の底面を形成するとともに、その筒状導体の開口端を、前記開口部を含む中間導体に接触させている構造が示される。後者の例として、上下導体間を電磁波が横方向に伝搬する場合に、伝搬モードが遮断領域となるような構造の導波管を実現するように、上下導体間隔などの寸法、誘電体基板の厚みや比誘電率、空間を満たす誘電体の比誘電率などが選ばれている。
すなわち、本発明の誘電体フィルタは、下部導体及び上部導体と、前記下部導体の上に接触して配置された誘電体基板と、誘電体基板の上に接触して配置された中間導体とを有し、前記中間導体から前記上部導体までが、支持部材を介して隔てられてその間に空間が形成され、前記中間導体に複数の開口部を形成し、これらの開口部を介して前記誘電体基板を前記空間に露出させ、高周波信号を入力する入力電極と高周波信号を出力する出力電極とを持つことを特徴とする。
また、本発明の誘電体フィルタは、下部導体及び上部導体と、前記下部導体の上に接触して配置された第1の誘電体基板と、該第1の誘電体基板の上に接触して配置された第1の中間導体と、前記上部導体の下に接触して配置された第2の誘電体基板と、該第2の誘電体基板の下に接触して配置された第2の中間導体とを有し、前記第1 の中間導体から前記第2 の中間導体までが、支持部材を介して隔てられてその間に空間が形成され、前記第1 および第2 の中間導体にそれぞれ開口部を形成し、これらの開口部を介して前記第1 および第2 の誘電体基板を前記空間に露出させ、高周波信号を入力する入力電極と高周波信号を出力する出力電極とを持つことを特徴とする。
前記開口部の形状は円形であってもよい。
誘電体共振器の周囲は導体で遮蔽されるか、又は遮断領域となる高さに導体が配置された構造である。例えば、前記支持部材が筒状導体であり、その筒状導体の両側の開口端を、前記開口部を含む第1および第2の中間導体に接触させる構造があげられる。
図1は、本発明の誘電体共振器の一例を示す縦断面図である。この図1において、誘電体共振器は、グランドとなる下部導体5bの上に、誘電体基板1を配置し、該誘電体基板1の上に、開口部4が形成された導体5aを設置し、導体5aの上部に間隔Mを隔てて、導体2aを配置した構造となっている。下部導体5b、導体5a、導体2aはともに円板形状を有し互いに平行に配列されている。
特に、セラミック材料を用いれば、セラミック誘電体の比誘電率は通常5から25と、樹脂基板に比べて高いので、誘電体層を薄くでき、素子の小型化に有効である。また、セラミック材料を用いると、一般に、樹脂基板に比べて誘電損失が低いため、フィルタの高Q化に対して有効である。
前記導体5aには、導体2aを支持する円筒状部材3が結合されている。円筒状部材3も導体からなる。開口部4の直径をDsとし、導体5a、導体2aで構成される空洞の直径をDとしている。誘電体基板1の厚みをt、開口部4の厚みをgとする。誘電体基板1の厚みt及びその比誘電率εは、共振周波数の高周波信号を減衰させるような値に選ばれる。詳しくいえば、誘電体基板1は、導体5bと導体5aで挟み込まれた平行平板の構造となっている。平行平板の端から電波が飛び出さないためには、平行平板の遮断周波数fcを超えない周波数領域で設計を行う必要がある。従来のマイクロ波帯では、あまり考慮する必要がなかったが、ミリ波帯では波長が短いので、誘電体基板1の厚みtが厚く、比誘電率εが高い試料では、遮断周波数fcを超える場合も生じる。平行平板の遮断周波数fcは、次式で表される。
したがって、誘電体基板1の厚みt、比誘電率εは、使用する周波数がカットオフ周波数fcを超えないように選ぶ。
本発明の誘電体共振器が、ミリ波帯において有効である理由を説明する。
この誘電体共振器は、TE010モードを利用しており、電界は、誘電体共振器の下部導体5bの表面でゼロになり、それから上方向に増大する。このため、下部導体5bに接して配置された誘電体基板1に蓄積されるTE010モードの電界エネルギーは、図10に示した従来のTE010モード誘電体共振器の誘電体基板1に蓄積される電界エネルギーに比べて小さくなる。
これらの図3(a),図3(b)において、誘電体フィルタは、グランドとなる下部導体5bの上に、誘電体基板1を配置し、該誘電体基板1の上に、開口部4a,開口部4bが形成された導体5aを設置し、導体5aの上部に間隔Mを隔てて、導体2aを配置した構造となっている。下部導体5b、導体5a、導体2aはともに長方形の形状を有し互いに平行に配列されている。
開口部4aと開口部4bは、共振器同士で所望の結合係数が得られるような距離xを有して配置される。
この図4において、下部導体5b上に誘電体基板1aを配置し、該誘電体基板1aに、開口部4aが形成された導体5aを設置している。また、上部導体5c上に誘電体基板1bを配置し、該誘電体基板1bに、開口部4bが形成された導体5dを設置している。導体5a、5dは支持部材3により支持されている。支持部材3は、導体でも誘電体でもよい。誘電体であるときはそれ自体遮蔽効果がないので、支持部材3の高さMを、使用する周波数において、上下導体間を電磁波が横方向に伝搬する場合に伝搬モードが遮断領域となるような高さに選ぶ必要がある。
この図4の誘電体フィルタは、縦に並べられた誘電体共振器の結合を利用した構造であり、図3の構造に比べて、誘電体フィルタの横幅を小さくすることができる。また、二つの開口部4a,4bは、従来の図10の構造のように厳密に重なっている必要はなく、多少の寸法のずれが許容される点でも、優れている。
高周波信号は、開口部4aから開口部4cへ結合し、開口部4cから開口部4dへ結合し、開口部4dから開口部4bへと結合する。これにより誘電体共振器が四段のフィルタ接続となっている。
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
例えば、入力電極または出力電極の少なくとも一方または両方は、コープレナ線路、ストリップ線路、または非放射性の線路を使用することができる。
信号の入出力は、幅w, 厚さhの、特性インピーダンス50Ωに設計された、上下空気層となっているマイクロストリップ線路により行った。
単一誘電体共振器の導体損によるQcは2600となった。
まず初めに結合係数k12の計算をHFSSにより行った。誘電体共振器の間隔xに対する結合係数k12の変化を図7に示す。これより、x=1.52mmのとき、必要なK12=0.0015を得た。
最後に、得られた寸法x,yを図6の構造に適応して、HFSSを用いてフィルタの反射パラメータS11、伝送パラメータS12の計算を行った。この結果を図9に示す。
2a、2b・・・導体板
3・・・支持部材
4、4a、4b、4c、4d・・・開口部
5a、5b、5c、5d・・・導体
6a、6b・・・マイクロストリップ線路
Claims (14)
- 下部導体及び上部導体と、前記下部導体の上に接触して配置された誘電体基板と、該誘電体基板の上に接触して配置された中間導体とを有し、
前記中間導体から前記上部導体までが、支持部材を介して隔てられてその間に空間が形成され、
前記中間導体に開口部を形成し、この開口部を介して前記誘電体基板を前記空間に露出させていることを特徴とする誘電体共振器。 - 前記開口部が円形である請求項1記載の誘電体共振器。
- 前記支持部材が筒状導体であり、前記上部導体が筒状導体の底面を形成するとともに、その筒状導体の開口端を、前記開口部を含む前記中間導体に接触させている請求項1又は請求項2記載の誘電体共振器。
- 前記筒状導体が円筒状導体である請求項3記載の誘電体共振器。
- 前記誘電体基板の厚み及び比誘電率は、使用する周波数が、前記誘電体基板が前記下部導体および前記中間導体によって挟み込まれた平行平板の遮断周波数を超えないように、設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の誘電体共振器。
- 前記支持部材を介して形成される空間が誘電体で充填されている請求項1〜請求項5のいずれかに記載の誘電体共振器。
- 前記空間を充填している誘電体が空気である請求6記載の誘電体共振器。
- 下部導体及び上部導体と、前記下部導体の上に接触して配置された誘電体基板と、該誘電体基板の上に接触して配置された中間導体とを有し、
前記中間導体から前記上部導体までが、支持部材を介して隔てられてその間に空間が形成され、
前記中間導体に複数の開口部を形成し、これらの開口部を介して前記誘電体基板を前記空間に露出させ、
高周波信号を入力する入力電極と高周波信号を出力する出力電極とを持つことを特徴とする誘電体フィルタ。 - 下部導体及び上部導体と、前記下部導体の上に接触して配置された第1の誘電体基板と、該第1の誘電体基板の上に接触して配置された第1の中間導体と、前記上部導体の下に接触して配置された第2の誘電体基板と、該第2の誘電体基板の下に接触して配置された第2の中間導体とを有し、
前記第1の中間導体から前記第2の中間導体までが、支持部材を介して隔てられてその間に空間が形成され、
前記第1および第2の中間導体にそれぞれ開口部を形成し、これらの開口部を介して前記第1および第2の誘電体基板を前記空間に露出させ、
高周波信号を入力する入力電極と高周波信号を出力する出力電極とを持つことを特徴とする誘電体フィルタ。 - 前記開口部が円形である請求項8又は請求項9記載の誘電体フィルタ。
- 前記支持部材が筒状導体であり、その筒状導体の両側の開口端を、前記開口部を含む第1および第2の中間導体に接触させている請求項8又は請求項9記載の誘電体フィルタ。
- 前記筒状導体が円筒状導体である請求項11記載の誘電体フィルタ。
- 前記入力電極又は出力電極の少なくとも一方又は両方は、マイクロストリップ線路で形成されている請求項8〜請求項12のいずれかに記載の誘電体フィルタ。
- 前記請求項8〜請求項13のいずれかに記載の誘電体フィルタを搭載した無線通信機器。
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