JP4216680B2 - 腫瘍・ケロイド等治療剤 - Google Patents
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Description
このうちのひとつに、厚生労働省の(難病)特定指定疾患であるvon Recklinghauzen(フォン レックリングハウゼン)病、またの名前をneurofibromatosis(以下「NF」という)・神経線維腫症と呼ばれるものがある。残念なことに、現在に至るまで、内科的薬物療法は存在しない。
NFは、思春期前より発生し、外表皮面に大小さまざまな比較的柔らかい半球状結節が無数にできるものであり、一人の患者に200ないし300個の神経線維腫が発生し、醜状を呈するので、精神的に耐え難いものである。
抗癌剤であるブレオマイシンが悪性の扁平上皮癌に有効であることから、NFに少量のブレオマイシンを長期間局所注入する治療が試みられたこともあったが、その効果は判然としたものではなく(たとえば、非特許文献1参照)、確立された治療法ではない。
従って、この神経線維腫症の治療法としては、現在も、外科的切除のみが唯一確実な腫瘍摘除・腫瘍縮小の方法である。
ケロイドにおいても切除手術を伴う場合には、同様の問題があった。
また、簡便に使用でき、安価な腫瘍・ケロイド等治療剤を提供することにある。
さらに、入院することなく、通院によりこれら症状の治療を、従来方法とは異なり短期間内に行なえるようにすることである。
以上のことから、全体としての医療費の削減を行なえるようにすることも目的である。
この請求項1の発明にかかる腫瘍・ケロイド等治療剤は、塩化メチルロザニリンを有効成分とする神経線維腫、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕用治療剤である。
この請求項2の発明にかかる腫瘍・ケロイド等治療剤は、注射剤である請求項1に記載の神経線維腫、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕用治療剤である。
この請求項3の発明にかかる腫瘍・ケロイド等治療剤は、注入剤である請求項1に記載の神経線維腫、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕用治療剤である。
この請求項4の発明にかかる腫瘍・ケロイド等治療剤は、軟膏剤である請求項1に記載の神経線維腫、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕用治療剤である。
この請求項5の発明にかかる腫瘍・ケロイド等治療剤は、貼付剤である請求項1に記載の神経線維腫、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕用治療剤である。
また、本発明の腫瘍・ケロイド等治療剤によれば、腫瘍・ケロイド等の消滅・縮退に外科的方法をとらなくてすむことから、患者に苦痛を与えることがない。特に、フォン レックリングハウゼン病においては、一個体の外表に無数に発生する神経繊維腫を切除手術する必要ある場合やケロイド等の患部が大きい場合における、長年月にわたるステロイド局所注射療法が、精神的に患者へ与えるプレッシャーやストレスの増強を大幅に抑制する点で効果は多大なものである。特に、治療効果が必ずあること、患者に大きな精神的負担を強いることがないという点で、患者に大きな希望を与えるものである。
そして、抗癌剤やステロイド剤を用いるわけではないので、不要にして不愉快、かつ、QOL(クオーリティ オブ ライフ)低下の原因となる副作用を患者に与えることもない。
さらに、入院が必要でなく、安価な薬剤を使用しうることから、医療費を軽減できるという効果は大きい。特に、入院を必要とせず、通院により腫瘍・ケロイド等を消滅させうることから、時間的・費用的にも患者の負担を軽減できる効果は国民医療費の膨張しつづける現在、その意義は大きいと考えられる。
なお、塩基性色素の一つである塩化メチルロザニリンは、クリスタルバイオレット、ピオクタニンブルー、ゲンチアナバイオレット等とも称されるCAS No.:548−62−9の化学物質である。
また、整形外科、形成外科、外科の手術野、乳腺外科の切開線のマーキング、瘻孔の確認、褥瘡等に、日常当然のように頻用される。
本発明においては、塩化メチルロザニリンの使用量はその使用態様にもよるが、0.01%以上、15%以下、好ましくは、0.1%以上であり、10%以下である。0.01%以下においては本発明の目的を達成することができず、15%を超えると、壊死性物質である塩化メチルロザニリンの作用が強く働き、腫瘍・ケロイド等周囲の正常細胞にも影響を与えるおそれがあるからである。
麻酔作用を有する薬剤としては、コカイン、プロカイン、クロロプロカイン、テトラカイン、リドカイン、メピバカイン、プロピトカイン、ブピバカイン、ジプカイン、エチルアルコール、キシロカイン等が挙げられる。
また、炎症を防止する薬剤としてはステロイド性抗炎症剤(たとえば、ヒドロコルチゾン)、非ステロイド性抗炎症剤(たとえば、アセチルサリチル酸)等がある。
たとえば、溶解補助剤(たとえば、安息香酸ナトリウム)、酸化防止剤(たとえば、ピロ亜硫酸ナトリウム)、キレート剤(たとえば、EDTA)、緩衝剤(たとえば、クエン酸塩)、保存剤(たとえば、パラオキシ安息香酸エステル類)、無痛化剤(たとえば、塩酸キシロカイン)等が添加されていてもよい。
注射部位は腫瘍・ケロイド等部位に直接、或は腫瘍・ケロイド等の基底部等に注射することができる。なお、腫瘍基底部とは、腫瘍部と正常細胞部の境界領域を、ケロイド等の基底部とは、ケロイド等と正常細胞部の境界領域をいう。
また、1回当たりの局所注射剤量は0.5〜2ml、好ましくは1ml程度までであり、複数の該部位へ局所注射を行なっても、患者に与える負担はすくない。
なお、該部位へ直接局所注射するにあたっては、該部位が柔らかいため、局所注射は容易になしうる。特に、フォン レックリングハウゼン病にあっては、半球状結節は最大でも3cm程度であり、一個の半球状結節に一度の注射で薬剤を投与することができる。
また、薬剤全投与完了後(最終局所注射終了後)に半球状結節の基底部を結紮することにより、半球状結節の消滅を促進することができる。
腫瘍・ケロイド等治療剤を注入剤の形で、注入部位は腫瘍・ケロイド等部位に直接、或は腫瘍の基底部に注入することができる。
脂肪、脂肪油、ラノリン、ワセリン、パラフィン、ろう、樹脂、プラスティック、グリコール類、高級アルコール、グリセリン、水、乳化剤、懸濁化剤、または他の適当な添加剤を原料とし、またはこれらを基材とし、医薬品を加え、混和して全質を均等にしたものである。
なお、保存剤、酸化防止剤、湿潤剤等が添加されていてもよい。
また、軟膏の調剤法としては練合法、溶融法等があるが、そのいずれを用いるかは、基材により適合した方法が採られる。
軟膏は、基材により油脂性、乳剤性、水溶性、懸濁性軟膏に分類されるが、これらのいずれであってもよい。
なお、乳剤性基剤を用いた、水中油滴型(バニシングクリーム)・油中水滴型(コールドクリーム)はクリーム剤と称されるが、軟膏剤に含まれる。
また、懸濁性基剤にはヒドロゲル基剤・リオゲル基剤があり、ゲル剤と称されるが、軟膏剤に含まれる。
また、麻酔剤や抗炎症剤、抗菌剤等が添加されていてもよい。
また、貼付剤に用いられる薬剤としては、軟膏剤と同様の薬剤が使用される。
また、本発明の腫瘍・ケロイド等治療剤はケロイド等にも適用される。
なお、ケロイド等とは、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕をいう。
肥厚性瘢痕は、創面に一致して隆起する紅色調の硬い瘢痕であり、増大時には掻痒や圧痛が強いものである。
瘢痕ケロイドは、難治性であり、自然消退が容易に期待できないものである。
真正ケロイドは、もとの創部の範囲を越えて拡大し、腫瘤状にるいるいと盛り上がったものである。
肥厚性瘢痕同様、瘢痕ケロイド、真正ケロイドともに、掻痒、自発痛は強大なものである。
本発明による腫瘍・ケロイド等治療剤を適用するに、これらのケロイドの区別なく適用されうる。
フォン レックリングハウゼン病患者の直径約3cmの半球状結節そのものに、塩化メチルロザニリンの1%水溶液0.7mlを(表1、No.1)、注射器により、注入した。本治療剤を注入していない患部、及び注入した患部の状態を図1に示す。
なお、治療剤の注入直後において、半球状結節の周囲に遊出・拡散した場合であっても、時間の経過とともに、図1に示されるように、塩化メチルロザニリンは半球状結節部に収斂した。これは、病理的には周辺組織に拡散した異物として認識され、大喰細胞により食細胞活動(phagocytosis)がおこるものと推量される。
本結節には、計3回の局所注射を行なった。3回注射後には図2に示されるように、結節部に塩化メチルロザニリンが収斂していること、結節の表面が乾燥状態を示していることが認められる。
注射剤の組成につき表1に示す。
図3に示すように、半球状結節は消失しており、本治療剤の効果が認められる。
このように、大きい(約3cm)半球状結節であっても、約1月で消失し、入院することもなく、通院あるいは自宅での治療が行なえることから、患者の精神的・肉体的・費用的プレッシャーやストレスは、摘除手術を行なう場合よりも各段に少ないであろうことが推測される。
なお、本治療剤を患部に注入した際に、痛みや発赤が認められた。発赤は、ステロイドクリームの塗布により緩解した。
なお、治療する半球状結節の位置を特定するために、半球状結節18を示す。
なお、治療する半球状結節の位置を特定するために、半球状結節20を示す。
なお、治療した半球状結節の位置を特定するために、半球状結節18、20を示す。
神経線維腫組織42は主として周辺で少し残存しているものの、組織は主に退行性変化と壊死、細胞核の断片等が多数見られるところが特徴である。
広範囲に組織壊死40が生じており、空泡変性34、36を呈するところも認められ、組織破壊性変化が進んだ結果と考えられる。
ごく一部に炎症部位38が認められる。
なお、塩化メチルロザニリンによる組織、細胞の染色は認められず、これの集積、貯留も見られない。
表1のNo.2の注射剤を用いたところ、発赤は認められたが、患者は痛感が著しく軽減したことを認め、実施例1と同様、半球状結節は消失が認められた。
なお、本実施例においては、注射剤を4回にわたり、患部に局所注射を行なった。
局所注射後の血液検査結果を表2に示す。
表2より白血球数が増加しているが、これは、注射剤の腫瘍内への注入により炎症が生じ、その結果増加したものであろう。
また、肝機能に関係するALP、LDH、LAPの値が減少傾向を示しており、興味のある現象であるが、その理由については明らかでない。
好中球はやや増加傾向示しているが、これは好中球が塩化メチルロザニリンを異物として認識し、遊走、粘着、貧食、消化といった過程をへて、生体防御機能の主役を演じる白血球であることから、組織破壊による破砕片等に対応するために、このような傾向を示したものであろう。
CRP:C反応性蛋白質試験
GOT:グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ
GPT:グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ
ALP:アルカリフォスファターゼ
LDH:乳酸デヒドロゲナーゼ
LAP:白血球アルカリフォスファターゼ
表1のNo.3の注射剤を用いたところ、患者は痛感を訴えたが、図1に認められるような発赤は見られず、半球状結節の消失が認められた。
表1のNo.4の注射剤を用いたところ、患者は痛感が著しく軽減したことを認め、図1に認められるような発赤は見られず、半球状結節の消失が認められた。
表1のNo.4注射剤を真性ケロイドに用いたところ、図8に認められるように、ケロイドの縮小が認められた。注射剤使用前後のケロイドの状況を図6ないし図8に示す。
真性ケロイドは、フォン レックリングハウゼン病の半球状結節のように柔らかくはないため、注射剤の注入は一部にとどまったが、全体的にケロイドの褪縮が認められる。
12 半球状結節
14 治療剤を注射した半球状結節
16 発赤部
18 特定の半球状結節
20 特定の半球状結節
30 半球状結節部の従断面(病理組織像)
32 腫瘍の表皮(組織破壊のため剥がれている)
34 壊死に伴う空疱変性
36 壊死に伴う空疱変性
38 炎症反応が盛んな部位
40 広範囲組織壊死に陥っている部分
42 神経線維腫組織
50 真性ケロイド部
52 真性ケロイド
54 治療剤注射部
Claims (5)
- 塩化メチルロザニリンを有効成分とする神経線維腫、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕用治療剤。
- 注射剤である請求項1に記載の神経線維腫、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕用治療剤。
- 注入剤である請求項1に記載の神経線維腫、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕用治療剤。
- 軟膏剤である請求項1に記載の神経線維腫、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕用治療剤。
- 貼付剤である請求項1に記載の神経線維腫、真正ケロイド、瘢痕ケロイド、肥厚性瘢痕用治療剤。
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