JP4214685B2 - 耐熱性容器の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂のシートを熱成形して得られる容器の製法に関するもので、より詳細には耐熱変形性、耐衝撃性及び外観特性に優れた容器の製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステルは、耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れており、或る程度のガスバリアー性をも有することから、各種の包装容器として広く使用されている。
このような包装容器の一例として、延伸または未延伸の熱可塑性ポリエステルをシート成形してなるフランジ付容器がある。
【0003】
特開昭59−53852号公報には、熱可塑性樹脂シートを、該シートの幅減少率を10%以下に維持しつつ一軸延伸し、次いで得られた一軸配向シートを熱成形することを特徴とする透明容器の製造方法が記載されている(従来技術1)。
【0004】
特公平1−27850号公報には、結晶化度30%以下、面配向指数0.02〜0.15の二軸延伸ポリエステルシートを圧空により、該ポリエステルの結晶化温度(Tc℃)以下、(Tc−70)℃以上の温度に加熱された加熱型に沿わせて成形し、得られた成形品を加熱型との接触により熱処理し、次いで加熱型に略対応する形状を有する冷却型を前記加熱型に嵌合させ、しかる後に加熱型側から圧空を吹き込んで成形品を冷却側に強制的に移し沿わせて、冷却型との接触により冷却することを特徴とするポリエステルシートの熱成形方法が記載されている(従来技術2)。
【0005】
特公平4−36534号公報には、蓋材と熱接着せしめるための熱接着部を備えた容器であって、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル製シートを成形して得たものであり、前記熱接着部の結晶化度が20%未満であり、該容器の底部及び(または)側部の結晶化度が20%以上であることを特徴とするポリエステル容器が記載されており、この容器はオーブナブルトレイなどとして有用なことも記載されている(従来技術3)。
【0006】
特許第2947486号公報には、その延伸温度でシート状の熱可塑性材を形成中、その側壁頂部への付着を防止しながらブロー成形することにより二軸延伸中間体をつくり、前記中間体を予め設定されたサイズ、形状及びテクスチュアの雄型上に設置し、前記中間体及び型を前記熱可塑性材の延伸温度よりも高い温度で加熱し前記型の表面上で前記中間体を熱収縮させ、前記熱収縮中間体を冷却し、そして、前記型から前記熱収縮中間体を取り出すこと、からなる二軸延伸熱可塑性製品を製造する方法が記載されている(従来技術4)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術1は、成形用のシートとして一軸延伸シートを使用するものであるが、この成形法では容器の透明性を向上させることは可能であっても、容器の耐熱性に関しては未だ改善の余地がある。
【0008】
一方、従来技術2は、成形用のシートとして二軸延伸シートを使用するものであるが、この成形法では容器の耐熱性を向上させることは可能であっても、容器の耐衝撃性の点では未だ十分満足しうるものではない。
【0009】
更に、これらの従来技術1及び2は、成形すべきシートとして予め延伸されたシートを用いるものであるが、そのために格別の延伸工程が必要であり、そのためのコストもかかるので、未延伸シートを使用し、容器特性の点で望ましい分子配向は容器成形の段階で付与することが望ましく、耐熱性や、耐衝撃性、更には透明性などの特性は、格別の工程を必要とすることなく、容器成形の段階で得られることが好ましい。
【0010】
従来技術3は、加熱可塑化された非晶質のポリエステルシートを、結晶化温度に維持された金型を用いて、トレイなどに成形し、底部及び/または側部を熱結晶化させるものであるが、側部を延伸により分子配向させることの開示はなく、得られる容器は耐衝撃性や透明性の点で未だ不十分のものと解される。
【0011】
従来技術4は、ブロー成形により二軸延伸中間体を製造し、この中間体を雄型上で加熱収縮させて最終容器を製造するものであるが、この方法では、雄型上で中間体の熱収縮のための加熱と熱収縮中間体の賦形並びに取り出しのための冷却との両方が必要であり、熱経済の点でも、型占有時間が長く、生産性が低い点でも未だ不満足なものである。
【0012】
したがって、本発明の目的は、未配向或いは非晶質の熱可塑性ポリエステルのシートから形成されていながら、容器の側壁部のみならず、容器の底部中心部も耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れているシート成形容器の製法を提供するにある。
本発明の更に他の目的は、雌型での熱固定とプラグでの冷却とに機能分離されており、その結果型内での占有時間を短縮し、生産性を向上させることが可能な容器の製法を提供するにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、非晶質の熱可塑性ポリエステルを備えたシートを固相成形して得られる予備成形体を熱収縮させて中間体とし、前記中間体を、前記ポリエステルの結晶化開始温度以上に加熱された最終成形用雌型内で圧空成形すると共に成形体を熱固定し、次いで成形体内を減圧に維持することにより最終容器形状であるプラグ外面に沿って成形体を収縮させ、賦形し、冷却することを特徴とする耐熱性容器の製造方法が提供される。
本発明においては、シートの固相成形を、クランプ金型及び予備成形用雌型でクランプしたシートを予備成形用プラグで押圧し且つシートとプラグとの間に加圧気体を供給することにより行うことが好ましく、この場合、シートの成形に際し、シート温度を熱可塑性ポリエステルのガラス転移点(Tg)+15℃〜ガラス転移点+40℃の温度に維持すること、プラグをガラス転移点-30℃〜ガラス転移点+20℃の温度に維持すること、予備成形用雌型を熱可塑性ポリエステルのガラス転移点+10℃〜ガラス転移点+50℃の温度に維持すること、が好ましい。
また、本発明においては、予備成形体を中間体成形用プラグで支持して調温された中間体成形用雌型内に挿入し、プラグ外面に沿って成形体を収縮させ、賦形し、冷却することを特徴とする加熱収縮させて中間体を得ることが好ましく、この場合、中間体成形用雌型が結晶化開始温度以上の範囲の温度に維持されていること、中間体成形用プラグが中間体成形用雌型の温度よりも低く且つ80乃至110℃の範囲の温度に維持されていること、予備成形体の表面積が中間体の表面積の1.1倍乃至1.5倍であること、が好ましい。
更に、本発明においては、最終成形用雌型が熱可塑性ポリエステルの結晶化開始温度以上の温度に維持されていること、最終容器用プラグが熱可塑性ポリエステルのガラス転移点−20℃〜ガラス転移点+20℃の範囲の温度に維持されること、が好ましい。
【0014】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明では、耐熱性容器の製造を、予備成形体の成形、中間体の成形及び最終容器の成形の三段階で行うが、中間体の成形及び最終容器の成形が何れも、固相成形体の加熱(熱固定)、成形体の熱収縮及び熱収縮物の冷却・賦形で行うことが顕著な特徴である。
【0015】
すなわち、固相成形を一段で行うことにより、最終容器の器壁には、胴部のみならず底部中心にも顕著な分子配向(面配向)を付与することが可能となり、また固相成形に続く熱固定を二段で行うことにより配向結晶化を促進することが可能となると共に、熱固定に続いて熱収縮を行わせることにより、歪みの緩和も有効に行われることになる。
【0016】
このため、本発明による耐熱性容器では、容器の自立性や自立安定性の点で重要な底部においても、ボイル殺菌等の加熱殺菌時における熱変形が有効に防止されると共に、容器胴部は落下衝撃に耐える耐衝撃性に優れたものとなり、更に最も配向されにくい底部においてすら球晶の生成も防止されるため、衝撃性に優れるだけでなく透明性にも優れるなど外観特性のきわめて良好なものとなっている。
【0017】
また、熱固定と冷却・賦形との間で熱収縮を行わせることにより、加熱部と冷却部とが機能分離されるので、同一部分で加熱と冷却とを行う場合に比して、熱効率が良好となり、しかも型内での占有時間をも短縮できるという効果が得られる。このため、本発明の方法によると、エネルギーコストを低減させ、生産性をも向上させ得るという利点が達成されるものである。
【0018】
[ポリエステル]
ポリエステルシートとしては、ポリエステル単層のシートも使用できるし、ポリエステルと他の樹脂層との多層シートも使用できる。
【0019】
本発明において、シートの少なくとも一層を構成するポリエステルとしては、熱可塑性ポリエステルが芳香族ジカルボン酸を主体とするカルボン酸成分と脂肪族ジオールを主体とするアルコール成分とから誘導されたポリエステル、特に前記カルボン酸成分の50モル%以上がテレフタール酸成分からなり且つ前記アルコール成分の50モル%以上がエチレングリコール成分からなるポリエステルが挙げられる。
上記条件を満足する限り、このポリエステルは、ホモポリエステルでも、共重合ポリエステルでも、或いはこれらの2種類以上のブレンド物であってもよい。
【0020】
テレフタル酸成分以外のカルボン酸成分としては、イソフタール酸、ナフタレンジカルボン酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。
【0021】
一方、エチレングリコール以外のアルコール成分としては、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタンなどのアルコール成分を挙げることができる。
【0022】
適当な熱可塑性ポリエステルの例は、決してこれに限定されないが、ポリエチレンテレフタレートが最も好適であり、他に、ポリエチレン/ブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/2,6−ナフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレートや、これらとポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、或いはこれらの2種以上とのブレンド物などが挙げられる。
【0023】
ポリエステルは、フィルム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度〔IV〕は0.5以上、特に0.6乃至1.5の範囲にあるのが成形性や機械的性質、耐熱性などの点でよい。
【0024】
ポリエステル中には、エチレン系重合体、熱可塑性エラストマー、ポリアリレート、ポリカーボネートなどの改質樹脂成分の少なくとも1種を含有させることができる。この改質樹脂成分は、一般にポリエステル100重量部当たり50重量部迄の量、特に好適には5乃至35重量部の量で用いるのが望ましい。
【0025】
エチレン系重合体として、例えば低−、中−或いは高−密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
これらの内でも、アイオノマーが好適なものであり、アイオノマーのベースポリマーとしては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、イオン種としては、Na、K、Zn等のものが使用される。
【0026】
熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が使用される。
【0027】
ポリアリレートとしては、二価フェノールと二塩基酸とから誘導されたポリエステルとして定義され、二価フェノールとしては、ビスフェノール類、例えば 2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、4−ヒドロキシフェニルエーテル、p−(4−ヒドロキシ)フェノール等が使用されるが、ビスフェノールA及びビスフェノールBが好適である。二塩基酸としては、テレフタール酸、イソフタール酸、2, 2−(4−カルボキシフェニル)プロパン、4, 4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4, 4’−ジカルボキシベンゾフェノン等が使用される。
ポリアリレートは、上記単量体成分から誘導されたホモ重合体でもよく、また共重合体でもよい。また、その本質を損なわない範囲で、脂肪族グリコールと二塩基酸とから誘導されたエステル単位との共重合体であってもよい。これらのポリアリレートは、ユニチカ社のUポリマーのUシリーズ或いはAXシリーズ、UCC社のArdelDー100、Bayer社のAPE、Hoechst社のDurel、DuPont社のArylon、鐘淵化学社のNAP樹脂等として入手できる。
【0028】
ポリカーボネートは、二環二価フェノール類とホスゲンとか誘導される炭酸エステル樹脂であり、高いガラス転移点と耐熱性とを有することが特徴である。ポリカーボネートとしては、ビスフェノール類、例えば、 2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、
1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、
1, 1−ビス(4ーヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1, 2−ビス(4ーヒドロキシフェニル)エタン等から誘導されたポリカーボネートが好適である。
【0029】
本発明に用いるシートには、それ自体公知のプラスチック用配合剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、充填剤、着色剤等を配合することができる。成形容器を不透明化する目的には、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、アルミナ、シリカ、各種クレイ、焼せっこう、タルク、マグネシヤ等の充填剤やチタン白、黄色酸化鉄、ベンガラ、群青、酸化クロム等の無機顔料や有機顔料を配合することができる。
【0030】
本発明に用いるプラスチックシートは、容器の大きさ等によっても相違するが、一般に0.5乃至5mm、特に1乃至3mmの厚みを有することが、容器の強度や成形性の点で好ましい。
【0031】
本発明の容器は、上記ポリエステル単層からなっていてもよく、またガスバリアー性樹脂、リサイクルポリエステル樹脂、酸素吸収性樹脂等の他の樹脂層との積層体からなっていてもよい。
他の樹脂層は、2層構成で内層或いは外層として用いることもできるし、また3層構成で中間層として用いることもできる。
ガスバリアー性樹脂としては、公知の任意のもの、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン樹脂(Ny)、ガスバリアー性ポリエステル樹脂(BPR)、環状オレフィン系共重合体などを用いることができる。
【0032】
ガスバリアー性樹脂層としては、ビニルアルコール含有量が40乃至85モル%、特に50乃至80モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体が適している。
エチレン−ビニルアルコール共重合体の分子量は、フィルムを形成し得るに足る分子量であれば特に制限はないが、一般には、フェノール85重量%と水15重量%との混合溶媒中、30℃の温度で測定して、固有粘度(I.V.)が0.07乃至0.17dl/gの範囲にあるのがよい。
【0033】
ガスバリアー性樹脂の他の例として、ナイロン樹脂、例えばナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6/ナイロン6,6共重合体、キシリレン基含有ポリアミドを挙げることができる。
ナイロン樹脂を構成するω−アミノカルボン酸成分としては、ε−カプロラクタム、アミノヘプタン酸、アミノオクタン酸等が挙げられ、ジアミン成分としては、ヘキサメチレンジアミンのような脂肪族ジアミン、ピペラジンのような脂環族ジアミン、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンなどが挙げられ、二塩基酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、セバシン酸、スベリン酸等、芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
特にバリアー性に優れたものとして、ジアミン成分の35モル%以上、特に50モル%以上がm−キシリレン及び/又はp−キシリレンジアミンであり、二塩基酸成分が脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸であり、所望により全アミド反復単位当たり25モル%以下、特に20モル%以下のω−アミノカルボン酸単位を含むポリアミドが挙げられる。
用いるポリアミドは、96重量%硫酸を使用し、1g/100mlの濃度及び25℃の温度で測定して0.4 乃至4.5 の相対粘度(ηrel )を有することが望ましい。
【0034】
ガスバリアー性樹脂として、ガスバリアー性ポリエステルを用いることもできる。このガスバリアー性ポリエステルの1種(以下、BPRと記すこともある。)は、重合体鎖中に、テレフタル酸成分(T)とイソフタル酸成分(I)とを、
T:I=95: 5乃至 5:95
特に 75:25乃至25:75
のモル比で含有し且つエチレングリコール成分(E)とビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン成分(BHEB)とを、
E:BHEB=99.999:0.001 乃至2.0 :98.0
特に 99.95 :0.05 乃至40 :60
のモル比で含有する。BHEBとしては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが好ましい。
このポリエステル(BPR)は、少なくともフィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般にフェノールとテトラクロルエタンとの60:40の重量比の混合溶媒中、30℃の温度で測定して、0.3 乃至2.8 dl/g、特に0.4 乃至1.8dl/g の固有粘度[η]を有することが望ましい。
【0035】
リサイクルポリエステル(PCR)としては、使用済みポリエステル容器を回収し、異物を除去し、洗浄し、乾燥して得られる粒状乃至粉末状のポリエステルが使用される。これらのリサイクルポリエステルは、前述した方法で測定した固有粘度(IV)が0.60乃至0.75の範囲にあることが好ましい。
リサイクルポリエステルは、単独で使用することもできるし、バージンのポリエステルとのブレンド物として用いることもできる。リサイクルポリエステルが低下した固有粘度を有する場合には、バージンのポリエステルとブレンドして用いることが好ましく、この場合、リサイクルポリエステル:バージンのポリエステルの配合比は、9:1乃至2:8の重量比にあることが好ましい。
このリサイクルポリエステル(PCR)層は、バージンのポリエステルでサンドイッチされた3層以上の多層構造で用いるのがよい。
【0036】
他の樹脂層としては、酸素吸収性樹脂層を用いることができる。酸素吸収性樹脂層としては、金属系の酸化触媒と酸化性有機成分とを含有するものが使用される。
酸化性有機成分としては、遷移金属系触媒の触媒の作用により、空気中の酸素により酸化を受ける樹脂であり、(i)炭素側鎖(a)を含み、且つ主鎖または側鎖にカルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基及びカルボニル基から成る群より選択された少なくとも1個の官能基(b)を含む樹脂、(ii)ポリアミド樹脂、(iii) エチレン系不飽和基含有重合体などが使用される。
金属系の酸化触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属成分が好ましいが、他に銅、銀等の第I族金属:錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を挙げることができる。これらの金属成分の内でもコバルト成分は、酸素吸収速度が大きく、特に好適なものである。
遷移金属系触媒は、上記遷移金属の低価数の無機酸塩或いは有機酸塩或いは錯塩の形で一般に使用される。これらの触媒は、樹脂当たり100乃至1000ppmの量で用いるのがよい。
【0037】
本発明の容器は、上述したポリエステル樹脂層及びガスバリアー性樹脂層等に加えて、任意の他の樹脂層を含有していることができる。
例えば、ポリエステル層とガスバリアー性樹脂層との間に熱接着性がない場合には、両樹脂層間に接着剤樹脂層を介在させることができる。
接着剤樹脂としては、特に限定されないが、酸変性オレフィン系樹脂、例えば、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンなどを用いることができる。
【0038】
[容器の製造方法]
本発明の製造方法では、非晶質の熱可塑性ポリエステルを備えたシートを固相成形して得られる予備成形体を熱収縮させて中間体とし、前記中間体を、前記ポリエステルの結晶化開始温度以上に加熱された最終成形用雌型内で圧空成形すると共に成形体を熱固定し、次いで成形体内を減圧に維持することにより最終容器形状であるプラグ外面に沿って成形体を収縮させ、賦形し、冷却することにより、耐熱性容器とする。
【0039】
(1)予備成形体への成形:
本発明において、シートの固相成形による予備成形体の成形は、クランプ金型及び予備成形用雌型でクランプしたシートを予備成形用プラグで押圧し且つシートとプラグとの間に加圧気体を供給することにより行うことが好ましい。
この場合、シートの成形に際し、シート温度を熱可塑性ポリエステルのガラス転移点(Tg)+15℃〜ガラス転移点+40℃の温度に維持するのがよい。上述したガラス転移点+15℃〜ガラス転移点+40℃の範囲は、PET樹脂が最も効率的に配向結晶化する温度域であり、これよりもシート温度が低いと、成形時樹脂が過延伸状態になり白化現象が生じる。また、これよりもシート温度が高いと、配向結晶化が十分起こらず、後のヒートセット工程で熱結晶化による白化現象が生じる傾向がある。
【0040】
また、予備成形体の成形に際しては、プラグを熱可塑性ポリエステルのガラス転移点−30℃〜ガラス転移点+20℃の温度に維持することが好ましい。プラグ温度がこの温度域以外であると、延伸成形中のプラグとの接触により、接触部の樹脂温度が変化し、均一な延伸が行われない傾向がある。
【0041】
更に、予備成形用雌型を熱可塑性ポリエステルのガラス転移点+10℃〜ガラス転移点+50℃の温度に維持することが好ましい。効率的な予備成形体底部の配向結晶化促進を行うため、雌金型は熱可塑性ポリエステルのガラス転移点+10℃〜ガラス転移点+50℃に温調する必要がある。
【0042】
予備成形体への延伸成形に用いるプラグは、樹脂シートを延伸成形するものであるから、少なくとも一定範囲の表面積を有することが必要である。一般にプラグの表面積が熱可塑性樹脂シートの被成形面積の3倍以上であること、特に5乃至10倍であることが好ましい。
尚、熱可塑性樹脂シートの被成形面積とは、シート成形に際してフランジとして拘束される部分よりも内側のシートの面積をいう。
プラグの表面積倍率が上記範囲を下回ると、形成される容器に十分な分子配向を付与することが困難となり、容器の機械的強度が不十分となり、また容器の耐熱性が低下したり、或いは熱固定の際に器壁の白化が生じたりするので好ましくない。
【0043】
(2)中間体への成形:
予備成形体から中間体への成形は、予備成形体を中間体成形用プラグで支持して調温された中間体成形用雌型内に挿入し、プラグ外面に沿って成形体を収縮させ、賦形し、冷却することにより行うのが好ましい。
【0044】
中間体成形用雌型は、熱可塑性ポリエステルの結晶化開始温度以上の温度に維持されていることが好ましい。雌型温度が高いほど、成形体の熱収縮は効率的に発生するが、温調をこの範囲よりも低く設定すると、プラグ外表面に沿った形状に成形体を収縮させることはできない。
【0045】
一方、中間体成形用プラグが中間体成形用雌型の温度よりも低く且つ80乃至110℃の範囲の温度に維持されていることが好ましい。プラグは雌型温度よりも低い温度域に設定する必要がある。上記範囲よりも低いと熱伝導により成形体には効率的な加熱が行われず、前記熱収縮時間が長くなる。また、この範囲より高いと成形体は十分な冷却がされず、後の離型工程後、収縮変形してしまう。
【0046】
本発明では、予備成形体の表面積が中間体の表面積の1.1倍乃至1.5倍であることが歪み除去及び成形性の点で好ましい。すなわち、この表面積の倍率が上記範囲を下回ると、熱収縮による歪みの除去が十分に行われず、一方上記範囲を上回ると、収縮不足によって中間体表面にしわが発生したり、中間体への賦形性が低下するので好ましくない。
【0047】
(3)最終容器への成形:
本発明の方法においては、最終成形用雌型が熱可塑性ポリエステルの結晶化開始温度以上の温度に維持されていることが好ましい。雌型は結晶化促進のため、結晶化開始温度以上に温調する必要があり、この温度での熱固定により、配向結晶化が十分に進行して、最終容器の耐熱性が向上する。
【0048】
また、最終容器用プラグが熱可塑性ポリエステルのガラス転移点−20℃〜ガラス転移点+20℃の範囲の温度に維持されることが好ましい。この範囲より温度低いと熱伝導により前記熱固定工程が効率的に行われなくなり、この範囲より高いと冷却が十分行われなくなり、後の離型工程後、成形体が収縮変形してしまうおそれがある。
【0049】
本発明では、最終成形用雌型の表面積が最終容器用プラグの表面積の1.01倍乃至1.10倍であることが歪み除去及び成形性の点で好ましい。すなわち、この表面積の倍率が上記範囲を下回ると、熱収縮による歪みの除去が十分に行われず、一方上記範囲を上回ると、最終容器表面にしわが発生したり、最終容器への賦形性が低下するので好ましくない。
【0050】
[容器の特徴]
本発明の方法による容器は、熱可塑性ポリエステル層を備えたシートからの熱成形で形成され、フランジ部、胴部及び閉塞底部を備えているが、容器底部の熱可塑性ポリエステルの結晶化度が15%以上であり、且つ容器底部が実質上透明でしかもX線回折で面指数(010)に明確な回折ピークを有するという特徴を有している。
【0051】
すなわち、この容器では、熱可塑性ポリエステルのシートの熱成形で形成されていながら、容器底部の熱可塑性ポリエステルが、15%以上の結晶化度を有することにより優れた耐熱性を有し、またX線回折で面指数(010)に明確な回折ピークを示すことにより優れた耐衝撃性を有し、しかも容器底部が実質上透明であるという驚くべき組合せ特性を示す。
【0052】
シート成形容器の場合、胴部には延伸による分子配向を導入することは比較的容易であるが、底部には延伸による分子配向を導入することが比較的困難であるという問題がある。一方、シート成形容器においても、容器底部の諸物性が実用的見地から重要であり、例えば容器底部に十分な分子配向が導入されていない場合、容器の落下衝撃などにより容器底部に割れなどを発生しやすい。また、容器底部の耐熱性が不足する場合には、加熱殺菌に際して底部に変形を生じて容器の自立性や自立安定性が損なわれることになる。
しかも、シート成形容器に耐熱性付与の目的で、熱固定などの熱処理を行う場合には、底部の白化傾向が著しく、このように底部に白化を生じた容器では、包装体の購入者に内容物の変質(例えばオリの析出)が生じているのではないかという疑念を与えかねないという問題もある。
【0053】
本発明の方法によると、容器底部中心にも、X線回折で面指数(010)に明確な回折ピークを有するように面配向を付与すると共に、底部の結晶化度を15%以上にすることにより、優れた耐衝撃性と耐熱性とが得られると共に、底部中心の白化も有効に防止され、透明性が底部中心においても維持されるという利点が得られるものである。
【0054】
一般に、ポリエチレンテレフタレートの結晶構造は、三斜晶系であり、その格子定数は次のとおりであることが知られている。
a= 4.56オングストローム
b= 5.94オングストローム
c=10.75オングストローム
α=98.5゜
β=118゜
γ=112゜
【0055】
ポリエチレンテレフタレートの結晶単位格子における原子配列を示す図1において、ポリエチレンテレフタレートの分子鎖はc軸方向に延びていると共に、c軸方向の各稜線に位置しており、ベンゼン環を含む面は面指数(100)の面にほぼ沿っている。
【0056】
容器壁を構成する熱可塑性ポリエステルの結晶構造及び配向特性は、湾曲PSPC(Position Sensitive Proportional Counter )マイクロディフラクトメータ(PSPC−MDG)を用いて測定することができる。すなわち、PSPC−MDGの試料ホルダーに、容器壁面に垂直にX線を入射すると共に容器軸方向と直交方向に装置の光学的鉛直方向とが一致するように取り付ける。X線をコリメータで細束ビームにし、サンプル面に垂直に入射させ、回折線の位置(2θ)と強度とをPSPCに記録させる。
【0057】
図2は、このようにして測定した本発明の容器の底部中心についてのX線回折像の一例を示している。
【0058】
図3は、結晶ポリエチレンテレフタレートの容器胴部について求めたPSPC−MDGによるX線回折像である。
結晶ポリエチレンテレフタレート(PET)についての前述したPSPC−MDGの測定では、一般に面指数(010)、(−110)、(100)及び(105)の面の回折ピークが顕著であり、この結晶単位格子の各面(hkl)と回折角2θとの関係を示すと次の表のとおりである。
【0059】
Figure 0004214685
【0060】
図2に示す本発明のPET容器底部のX線回折像と、図3に示す結晶PETのX線回折像とを対比すると、本発明による容器底部では、面指数(010)の面の回折ピークは顕著であるのに対して、面指数(100)の面の回折ピークは消失していることが明らかである。
【0061】
PETの結晶において、ベンゼン環を含む面は面指数(100)の面にほぼ沿っていることは既に指摘したとおりであるが、前述した面指数(010)の面は(100)のベンゼン面とX軸及びY軸方向に直行する関係にある。
本発明の容器底部において、図2に示すX線回折像、即ち、面指数(010)の面の回折ピークは顕著であるのに対して、面指数(100)の面の回折ピークは消失しているX線回折像を示すということは、この容器底部では容器底部壁面と平行にベンゼン面が配列していると考えると合点がゆくものとなる。
【0062】
即ち、このX線回折法では、ベンゼン面が試料シート面にほぼ平行になっているとすると、(100)面の回折は測定されず、これに対しほぼ垂直になった(010)面の回折が測定される。かくして、(010)面の回折ピーク強度が大きいということは、エチレンテレフタレート単位のベンゼン面がシート面と平行になっているということであり、逆に(100)面の回折ピーク強度が大きいということは、エチレンテレフタレート単位のベンゼン面がフィルム面に対して傾いており、平行になっていないということを意味している。
かくして、本発明による容器においては、底部中心においても器壁の面配向が顕著に生じているという事実が明らかとなる。
【0063】
本発明による容器の底部中心では、器壁が15%以上の結晶化度を有している。本明細書において、結晶化度とは、密度法による結晶化度、すなわち下記式(1)
Figure 0004214685
式中、ρ :測定密度(g/cm
ρam:非晶密度(1.335 g/cm
ρc :結晶密度(1.455 g/cm
密度測定は、n−ヘプタン−四塩化炭素系密度勾配管(株式会社池田理化)を作成し、20℃の条件下で行う。
により求められる値をいう。
【0064】
本発明による容器では、底部中心も結晶化されているが、この結晶はラメラ型の結晶(球晶)ではなく、配向結晶であるため、耐熱性のみならず耐衝撃性にも優れており、しかも透明性にも優れているという利点がある。
【0065】
本発明の容器における底部中心の器壁は、スガ試験機(株)製ヘーズメーターを用いて測定して一般に20%以下、特に 10%以上のヘーズを示す。
【0066】
本発明による容器において、底部中心の器壁が面配向により結晶化されていることは、既に指摘したとおりであるが、この配向結晶化の程度は、下記式(2)
U=H(010)/H(−110) ‥(1)
で示した配向結晶化傾向(U)で評価することができる。
式中、H(010)はX線回折で面指数(010)における回折強度を回折角度2θが10゜から35゜の範囲でバック除去(ベースライン補正)を行った補正値であり、H(−110)はX線回折で面指数(−110)における回折強度を同様に補正した値である。
すなわち、PSPC−MDGによる面指数(010)の回折ピーク強度が、器壁の面配向の程度に関連していることは、既に説明したとおりであるが、式(1)の配向結晶化傾向(U)は、この回折ピーク強度H(010)を、面指数(−110)の回折ピーク強度で基準化して示したものであって、この値が大きいほど配向結晶化の程度が大きいことを示している。
本発明では、この配向結晶化傾向(U)は底部中心において1.3以上であることが、耐衝撃性、耐熱性及び透明性の点で好ましい。
【0067】
【実施例】
本発明を添付図面に示す実施例に基づき以下に詳細に説明する。
添付図面において、
図4は第一段成形(予備成形体への成形)におけるシートのクランプ工程を示す側断面図であり、
図5は第一段成形におけるシートの延伸・賦形工程を示す側断面図であり、
図6は第一段成形において形成された予備成形体を示す側断面図であり、
図7は第二段成形(中間体への成形)における型内挿入工程を示す側断面図であり、
図8は第二段成形における熱収縮工程を示す側断面図であり、
図9は第二段成形における冷却・賦形工程を示す側断面図であり、
図10は第二段成形において形成された中間体を示す側断面図であり、
図11は第三段成形(最終成形体への成形)における型内挿入工程を示す側断面図であり、
図12は第三段成形における熱固定工程を示す側断面図であり、
図13は第三段成形における収縮・賦形工程を示す側断面図であり、
図14は第三段成形において形成された最終成形体の離型工程を示す側断面図である。
【0068】
(装置の構成)
本発明の製法の第一段成形に用いる装置は、図4に示すとおり、大まかにいって、プラグ11、雌型12及びクランプ金型13からなっている。
また、第二段成形に用いる装置は、図7に示すとおり、大まかにいって、プラグ21、雌型22及びクランプ金型23からなっている。
更に、第三段成形に用いる装置は、図11に示すとおり、大まかにいって、プラグ31、雌型32及びクランプ金型33からなっている。
【0069】
第一段成形用プラグ11は、ポリエステルシート4を予備成形体5に延伸成形するためのアシストとなるためのものであり、第二段成形用プラグ21は予備成形体5を中間体6に収縮賦形させるための外形を有するものであり、第三段成形用プラグ31は、中間体6を最終成形体7に収縮賦形するための外形を有している。
【0070】
より詳細には、プラグ11、プラグ21、プラグ31は、共通して、その外面の上方に容器のスタック部となる短い円筒部分14とこの円筒部分の下方に接続され、下方に径の縮小するテーパー部15とを備えている。プラグ11、21、31の底部周辺には下方に小間隔だけ断面が下向きにほぼ円弧状になるよう突出した環状リム部16が設けられており、この環状リム部16の内方にはこのリム部の下端よりも上方に小間隔だけ突出した底パネル部17が位置している。プラグ11、21、31の軸方向には、圧空及び減圧のための気体通路18が設けられている。
【0071】
本発明に用いる第一段成形用の雌型12は、圧空により形成される予備成形体5の形状を規定するものであり、一方第二段成形用雌型22は予備成形体5を加熱し、中間体6に収縮させるものであり、第三段成形用雌型32は、中間体6を加熱して熱固定すると共に、最終成形体7に収縮させるためのものである。
【0072】
より詳細には、雌型12、雌型22、雌型32には、共通して、対となったクランプ型13、クランプ型23、クランプ型33と協動して樹脂シート、予備成形体或いは中間体の周縁部を把持するための把持面25が上部に設けられている。また、雌型の中心部には気体排出及び供給のための気体通路26が形成されている。
【0073】
クランプ金型13、23、33は、雌型の把持面と協動して、樹脂シート、予備成形体或いは中間体の周縁部をクランプするものであって、短い中空の筒状体からなっている。即ち、このクランプ金型13、23、33は、雌型の円筒状内面とほぼ同じ径の内面34を有していると共に、その下端には円盤状の樹脂シートの周縁部を把持するための把持面35が設けられている。
プラグ11(21、31)、雌型12(22、32)及びクランプ金型13(23、33)は同軸に配置されており、プラグ11(21、31)と雌型12(22、32)とは相互に噛み合い且つ離隔するように軸方向(図において上下方向)に相対的に移動可能に設けられており、クランプ金型13(23、33)も同様に軸方向に移動可能に設けられている。
【0074】
(第一段成形)
シートクランプ工程:
図4において、プラグ11及び雌型12の何れか一方は上昇位置、他方は下降位置にあり、延伸温度に加熱された樹脂シート4が雌型12とクランプ金型13との間に供給される。
ポリエチレンテレフタレートのシート4を105℃の成形温度まで昇温させた後、クランプ金型13及び雌型12でクランプし、成形を開始する。
この例で用いたポリエチレンテレフタレートは、固有粘度(IV)が0.8及びガラス転移点(Tg)が70℃であり、シートの厚さが1.2mmのものである。
【0075】
延伸・賦形工程:
図5に示すように、温調されたプラグ11の降下によりシート4は延伸、配向結晶化が促進される。その直後プラグ通気孔18及びプラグと成形体の空隙から圧空(0.6MPa)、更に必要ならば雌型通気口26からのバキュームを導入することにより、成形体は100℃に温調された雌型12に押しつけられ、雌型内壁形状に賦形される。
【0076】
予備成形体:
プラグ11を上昇させ、クランプ全型13、雌型12を閉くことにより、配向結晶化された予備成形体5が取りだされる。
予備成形体5は、図6に示すとおり、円筒状の胴部51、胴部の下端につながる閉塞底部52及び胴部の上端につながるフランジ部53から成っている。
【0077】
(第二段成形)
第一段成形で形成された予備成形体5から中間体6を成形する。
型内挿入工程:
図7において、予備成形体5をプラグ21で支持し、雌型22内に挿入する。
【0078】
熱収縮工程:
図8において、予備成形体5には、180℃に温調された雌型22の内壁からの熱伝達により熱収縮が発生する。
冷却・賦形工程:
図9に示すように、予備成形体5の収縮は、やがてプラグ21の外表面まで達し、ほぼ同時にプラグ通気口18及びプラグと成形体の空隙からのバキューム、更に必要ならば雌型22の通気口26からの圧空により、成形体は110℃に温調されたプラグ21の外表面で冷却・賦形される。
【0079】
中間体:
クランプ金型23、雌型22を閉き、プラグ21を上昇させることにより、収縮した中間体6が取りだされる。この際必要ならば外部吹きつけエアーにて中間体を冷却して、速やかに離型を行う。
形成される中間体6は、図10に示すとおり、円筒状の短いスタック部61とそれに連なる下向きに径の縮小するテーパー部62とを備えており、テーパー部の下端は下向きに突出した環状リム部63を介して底部パネル部64で閉塞している。また、スタック部61の上端にはフランジ部65が形成されている。
【0080】
(第三段成形)
第二段成形で製造した中間体6から最終成形体7を成形する。
型内挿入工程:
図11において、中間体6をプラグ31で支持し、雌型32内に挿入する。
【0081】
(ヒートセット工程)
図12において、プラグ通気口18及びプラグと成形体の空隙から圧空(0.6MPa)及び必要ならぱ雌型通気口26からバキュームを導入することにより、成形体6aを200℃に温調された雌型32の表面に押しつけ、ヒートセットを行う。
【0082】
(収縮・賦形工程)
次いで、図13に示すとおり、雌型32からの熱伝達により、成形体は熱収縮を開始する。また、プラグ31の通気口18及びプラグと成形体の空隙からバキュームを、更に必要ならば雌型32の通気口26から圧空を導入することにより、成形体の収縮はプラグ31の外表面まで達し、90℃に温調されたプラグ31との接触により、成形体は最終成形体7に冷却・賦形される。
【0083】
(離型工程)
最後に、図14に示すとおり、雌型32、クランプ金型33を閉き、プラグ31を上昇させることにより、最終成形体7は外部に取りだされる。
【0084】
本発明を次の例により更に説明する。
実施例中の測定は次の通り行った。
1.耐熱性
満注容積を測定後の空容器を90℃の熱水中で30分間の熱処理を施した後に取り出し、室温まで放冷後に再度容器満注容積を測定した。熱処理前後に於ける容器変化率を下式から求め耐熱性を下記のように評価した。
Figure 0004214685
容積変化率 評価
1.0%未満 優
1%以上2%未満 良
2%以上4%未満 可
4%以上 不可
【0085】
2.耐衝撃強度
容器に水を満注充填後、ヒートシーラー(シンワ機械(株)製)を用い、最内面がポリエステル層で構成された蓋材と容器フランジ部をシール温度230℃でヒートシール密封した。シール後、90cmの高さから容器底部を下方に向けコンクリートの床面に10回を上限として落下させた。サンプル数はn数=10個で行い、各サンプルが破損するまでの平均回数で下記のように評価した。
平均破損回数 評価
8〜10回 優
6〜 7回 良
4〜 5回 可
1〜 3回 不可
【0086】
3.透明性
容器全体の透明性を目視により評価した。
【0087】
[実施例1]
シート成形機を用いて、ポリエチレンテレフタレート樹脂(三井化学(株)製、SA135)を溶融押出成形し、厚さ1.2mm、巾320mmである実質的に非晶なシートを作成した。このシートを300mm角に切断後、圧空真空成形機(浅野研究所製、FK-0431)を用い、シートを95℃に加熱した。その後に型締めを行い、ヒーターで100℃に加熱した予備成形用雌型とクランプ型の各把持面で保持した状態で、50℃に温調されたプラグをエアシリンダーにより駆動させ、シートを固相成形すると共にプラグ側から0.6MPaの圧空を吹き込み口径66mm、表面積159cmの予備成形体を作成した。
次工程で、前記予備成形体を180℃に加熱した予備成形用雌型とクランプ型で保持した後、110℃に加熱され容器内面形状とほぼ同形状のプラグを予備成形体内に挿入した状態でプラグ側を減圧にし、予備成形体を雌型からの輻射熱で加熱収縮させてプラグ表面に密着させ容器形状とほぼ同形状の口径66mm、表面積130cmの中間体を作成した。予備成形体と中間体の表面積比を表1に示す。
更に次の工程で、中間体をポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶化開始温度以上である180℃に加熱した最終成形用雌型とクランプ型で保持した後、プラグ側から0.6MPaの圧空を吹き込み中間体を雌型に密着させて熱固定を行った。その後、90℃に温調され容器内面形状とほぼ同形状のプラグを中間体内に挿入した状態でプラグ側を減圧にして中間体をプラグ表面に密着させ容器形状に賦形させると共にプラグ温度まで冷却した後に取り出した。その後、フランジ周辺部をトリミングして容器口径66mm、容器高さ53mm、内容積158ccの実質上透明な容器を得た。
この容器の透明性、耐熱性及び耐衝撃性評価結果は表1に示すように、全てにおいて優れていた。
【0088】
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(三井化学(株)製、SA135)から実施例1と同様に同形状の予備成形体及び中間体を作成した。
更に次の工程で、中間体をポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶化開始温度以上である130℃に加熱された最終成形雌型とクランプ型で保持した後、実施例1と同様に同形状の実質上透明な容器作成を行った。
この容器の透明性、耐熱性及び耐衝撃性評価結果は表1に示すように、全てにおいて優れていた。
【0089】
[実施例3]
多層シート成形機を用いて、内外層がポリエチレンテレフタレート樹脂(三井化学(株)製、J125T)、中間層がポリメタキシレンアジパミド(三菱瓦斯化学(株)製、MXD6、6007)及び中間層と内外層間の接着材が酸変性エチレン・ブテン共重合体(三菱化学(株)製モディックF512)で構成された厚さ1.2mm、巾320mmでありポリエチレンテレフタレート層が実質的に非晶な3種5層のシートを作成した以外は、実施例1と同様に同形状の実質上透明な容器を得た。
この容器の透明性、耐熱性及び耐衝撃性評価結果は表1に示すように、全てにおいて優れていた。また、バリア性も良好な結果であった。
【0090】
[実施例4]
多層シート成形機を用いて、内外層がポリエチレンテレフタレート樹脂(三井化学(株)SA135)、中間層がリサイクルされたポリエチレンテレフタレート材(よのペットボトルリサイクル(株)、クリアフレーク)で構成された厚さ1.2mm、巾320mmの実質的に非晶な2種3層のシートを作成した。このシートから作成した予備成形体の形状が、口径66mm、表面積130cmであること以外は実施例1と同様に同形状の中間体作成及び実質上透明な容器作成を行った。
この容器の透明性、耐熱性及び耐衝撃性評価結果は表1に示すように、全てにおいて優れていた。
【0091】
[実施例5]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(三井化学(株)製、SA135)から実施例1と同様に同形状の予備成形体を作成した。
次工程では、前記予備成形体を180℃に加熱された中間体成形雌型とクランプ型で保持させ、プラグを挿入せずに予備成形体を雌型からの輻射熱により加熱収縮させて口径66mm、表面積120cmの中間体を作成した。予備成形体と中間体の表面積比は表1に示す。
次に、前記中間体から実施例1と同様に容器口径66mm、容器高さ53mm、内容積158ccの実質上透明な容器を得た。
この容器の透明性、耐熱性及び耐衝撃性評価結果は表1に示すように、全てにおいて優れていた。
【0092】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(三井化学(株)製、SA135)から実施例1と同様にシートを作成した。このシートから作成した予備成形体の形状が、口径66mm、表面積199cmであること以外は実施例1と同様に予備成形体を作成した。
次工程で、前記予備成形体を実施例1と同様に加熱収縮させたが、予備成形体の加熱収縮量が不十分であり、プラグ形状に収縮せず中間体を得ることが出来なかった。
【0093】
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(三井化学(株)製、SA135)から実施例1と同様にシートを作成した。このシートから作成した予備成形体の形状が、口径66mm、表面積135cmであること以外は実施例1と同様に同形状の中間体作成及び容器作成を行った。
この容器の透明性、耐熱性及び耐衝撃性評価結果は表1に示すように、容器底部が白化し透明性が劣ると共に耐衝撃性も劣っていた。
【0094】
[比較例3]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(三井化学(株)製、SA135)から実施例1と同様に同形状の予備成形体及び中間体を作成した。
更に次の工程で、中間体をポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶化開始温度以下である90℃に加熱された最終成形雌型とクランプ型で保持した後、実施例1と同様に同形状の実質上透明な容器作成を行った。
この容器の透明性、耐熱性及び耐衝撃性評価結果は表1に示すように、耐熱性が劣っていた。
【0095】
【表1】
Figure 0004214685
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、非晶質の熱可塑性ポリエステルを備えたシートを固相成形して得られる予備成形体を熱収縮させて中間体とし、前記中間体を、前記ポリエステルの結晶化開始温度以上に加熱された最終成形用雌型内で圧空成形すると共に成形体を熱固定し、次いで成形体内を減圧に維持することにより最終容器形状であるプラグ外面に沿って成形体を収縮させ、賦形し、冷却することにより、未配向或いは非晶質の熱可塑性ポリエステルのシートから形成されていながら、容器の側壁部のみならず、容器の底部中心部も耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れているシート成形容器を製造することができる。
本発明の製造方法によれば、雌型での熱固定とプラグでの冷却とに機能分離されており、その結果型内での占有時間を短縮し、生産性を向上させることが可能であるという利点も達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリエチレンテレフタレートの結晶単位格子における原子配列を示す説明図である。
【図2】本発明の容器の底部中心についてのX線回折像の一例を示す図である。
【図3】結晶ポリエチレンテレフタレートの容器胴部について求めたPSPC−MDGによるX線回折像である。
【図4】第一段成形(予備成形体への成形)におけるシートのクランプ工程を示す側断面図である。
【図5】第一段成形におけるシートの延伸・賦形工程を示す側断面図である。
【図6】第一段成形において形成された予備成形体を示す側断面図である。
【図7】第二段成形(中間体への成形)における型内挿入工程を示す側断面図である。
【図8】第二段成形における熱収縮工程を示す側断面図である。
【図9】第二段成形における冷却・賦形工程を示す側断面図である。
【図10】第二段成形において形成された中間体を示す側断面図である。
【図11】第三段成形(最終成形体への成形)における型内挿入工程を示す側断面図である。
【図12】第三段成形における熱固定工程を示す側断面図である。
【図13】第三段成形における収縮・賦形工程を示す側断面図である。
【図14】第三段成形において形成された最終成形体の離型工程を示す側断面図である。

Claims (11)

  1. 非晶質の熱可塑性ポリエステルを備えたシートを固相成形して得られる予備成形体を熱収縮させて中間体とし、前記中間体を、前記ポリエステルの結晶化開始温度以上に加熱された最終成形用雌型内で圧空成形すると共に成形体を熱固定し、次いで成形体内を減圧に維持することにより最終容器形状であるプラグ外面に沿って成形体を収縮させ、賦形し、冷却することを特徴とする耐熱性容器の製造方法。
  2. シートの固相成形を、クランプ金型及び予備成形用雌型でクランプしたシートを予備成形用プラグで押圧し且つシートとプラグとの間に加圧気体を供給することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. シートの成形に際し、シート温度を熱可塑性ポリエステルのガラス転移点(Tg)+15℃〜ガラス転移点+40℃の温度に維持することを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. プラグを熱可塑性ポリエステルのガラス転移点−30℃〜ガラス転移点+20℃の温度に維持することを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 予備成形用雌型を熱可塑性ポリエステルのガラス転移点+10℃〜ガラス転移点+50℃の温度に維持することを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
  6. 予備成形体を中間体成形用プラグで支持して温調された中間体成形用雌型内に挿入し、プラグ外面に沿って成形体を収縮させ、賦形し、冷却することにより加熱収縮させた中間体を得ることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の方法。
  7. 中間体成形用雌型が熱可塑性ポリエステルの結晶化開始温度以上の範囲の温度に維持されていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 中間体成形用プラグが、中間体成形用雌型の温度よりも低く且つ80乃至110℃の範囲の温度に維持されていることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
  9. 予備成形体の表面積が、中間体の表面積の1.1倍乃至1.5倍であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の方法。
  10. 最終成形用雌型が熱可塑性ポリエステルの結晶化開始温度以上の温度に維持されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の方法。
  11. 最終容器用プラグが熱可塑性ポリエステルのガラス転移点−20℃〜ガラス転移点+20℃の範囲の温度に維持されることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の方法。
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